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梶原一騎原作コミックの映画化

通常、この種の勧善懲悪アクションものの展開と言うのは、雑魚レベルの敵から徐々に倒して行き、最後は最強のラスボスと対決する…と言うパターンではないかと思う。

どうしてそう言うパターンになるかと言うと、言うまでもなく、後半になるにつれ敵が弱くなると緊迫感が減じ、つまらないからだろう。

そのつまらないパターンを実践している珍しい作品が本作で、国際的なマフィアの殺し屋たちが物語途中で全滅し、最後に残った敵は、米兵相手に売春を斡旋している頭のいかれたチンピラ3兄弟…

最後の最後の敵は、その中でもナイフが得意なチンピラ次男坊…では、緊迫感も盛り上がりもほとんどないのも仕方ないだろう。

低予算で量産されていた2本立てプログラムピクチャーの1本だから…と言うのは分かるが、通常、いくら低予算であっても、構成的には最後の最後に一番の見せ場、壮絶な戦いを持って来るはず。

例え、敵はそんなに強くなくても、ビジュアル的に戦い振りを盛り上げてしかるべきである。

そうした工夫も欠片も感じられない。

子供向けヒーローものにでも良く出て来る、単なる海岸の岩場での戦いでしかない。

勝負はほとんど一瞬にして終わり、盛り上がり感ゼロ!

とにかく、麻薬を奪われて日本に追って来たマフィアたちが弱過ぎる!

発想としては、世界に名を知られる「マフィア」が放った刺客たちが、思わぬ日本のサイコ兄弟に全滅させられたと言う意外性を描きたかったのだろうが、その「サイコ兄弟」の表現が普通過ぎて、何これ?とあっけにとられる展開に見えてしまうのだ。

これが例えばハリウッドB級映画なら、酒場の地下室には、彼ら3兄弟の残虐性を示す無数の死体や拷問の跡が残っていた…などと言ったホラー風の表現も可能だったかもしれないが、日本ではどうやっても噓にしか見えない。

つまり、3兄弟版「黒い家」みたいな路線に持って行っていれば、別な怖さも出たかもしれないが、この時代にはそこまでのサイコ発想は出なかったのだろう。

結局、暴力による女の支配と売春と麻薬と言う従来のヤクザの稼ぎ方と同じ表現では、3兄弟も大きな組織を背後に持たない「はぐれもの」にしか見えず、怖さも強さも感じられないのだ。

マンガ原作なので、もう少し奇抜なアイデアも期待していたが、最初の方の妹の陵辱シーン以外、これと言ってアイデアを感じさせるシーンはなかった。

マンガ原作云々以前に、全体的にアイデアがなさ過ぎるのだ。

空手映画としては迫力不足な上に、青年コミックだったと記憶しているが、それにしてはお色気描写も希薄で見せ場に乏しい。

ヒロイン役が大映出身の渥美マリと言うのがちょっと珍しいが、この時期の彼女はやや肥満が始まっている。

劇中、大山倍達本人の記録フィルムのようなものも出て来るが、当時はこの程度の映画でも、子供相手の宣伝にはなっていたのかも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1973年、東映、梶原一騎+中城健原作、中西隆三脚本、鷹森立一監督作品。

教会の鐘の音が東映会社クレジットに重なる。

教会から出て来た外国人男が、子供を抱き上げる。

子供から離れた直後、その男サルバドール・ピッコロは、手首に北斗七星の刺青があるイエローマフィアに銃撃され蜂の巣になって息絶える。

その事件を目撃した日本人が1人いた。

タイトル

飛んでいる旅客機が、3人の男たち(室田日出男、高月忠、溝口久夫)によって、突然ハイジャックされる。

乗客を人質に500万ドルを要求する犯人たちは、羽田を経由してアラブに向かうと宣言すると、乗客たちに銃を突きつけながら、手を頭の後ろで組めと命じる。

しかし、1人だけ新聞を読んでいる客がいたので、逆らうと撃つぞ!と犯人が脅すと、そっちが死ぬぞ…と答えたその客牙直人(千葉真一)は、次の瞬間、犯人の胸を突いて倒す。

もう1人の犯人も倒した直人に、動くな!と3人目の犯人(室田日出男)が銃を向ける。

直人は、素直に両手を上げたかに見えたが、右手に持っていた火の点いたタバコを相手の顔目がけ弾き飛ばすと、ひるんだ相手に向かって大きくジャンプして蹴り倒す。(ここまでキャスト、スタッフロールの背景)

羽田にパンナムのジャンボ機が降り立ち、たった1人でハイジャック犯を倒した牙直人の共同インタビューが行われる。

今回の活躍でテルアビブ事件の日本人の汚名を晴らされたのはナショナリズムからですか?との質問に、直人は、単なるコマーシャリズムですと即答する。

私が所属する徹心会空手を皆さんに知ってもらいたかったからですと続けた直人は、どなたかコーラをと言い出す。

記者たちがコーラ瓶を差し出すと、その場で深く呼吸を吸い込み、気合いと共に手刀でコーラの瓶を横に斬ってしまう。

この技が可能なのは、私と大東徹源先生だけです。

その名を聞いた記者たちは、猛牛を一突きで殺したと言われる先生ですね?と声が上がる。

しかし、その程度の怪し気な情報で判断されては困ると答えた直人は、先生は徹心会を飛び出して3年、山にこもって不自由な修行したのです。

それでも、邪道と言われ、牛殺しの罵られ、単身渡米した徹源先生(大山倍達)は、プロボクサーやプロレスラー相手に戦って来た。

しかし、日本は冷酷だった。

徹源先生があまりにも強かったからだ。

私もアメリカ全土での武者修行の結果、PRの必要性を痛感。ここでポロボディーガードビジネス「ゴッドハンド」を発表します。TVをご覧になった方で興味がある方はぜひ申し込んで頂きたいと直人はテレビカメラの前で言い放つ。

そのTV中継を観ていた女の手がスイッチを切る。

教会の二階にある妹春日マキ(渡辺やよい)の部屋に帰って来た直人は、兄さん、どう言うつもり?3年振りに帰って来たと思ったら…と文句を言われたので、マスコミを利用して名声を掴むんだと答え、反対だわ、そんなコマーシャリズムと言われてしまう。

しかし、俺が徹心会を認めさせるんだと直人は反論すると、マキは乱暴よと呆れる。

兄さん、3年前、用心棒としてヤクザと戦ったのに…とマキが心配すると、空手では飯が食えないからな。教会の二階が「ゴッドハンド\の事務所と言うのもうってつけじゃないか。お前は助手だと直人は一方的に命じる。

その時、階段を登って来るヒールの男が聞こえ、やがてドアがノックされる。

入って来た女性美輪伶子(渥美マリ)は、拝見しましたわTV…と言い、直人の方は、第一号と言う訳ですかと笑顔で迎え入れ、妹のマキを空手初段ですと紹介するが、二段になったわと訂正させる。

伶子は私の護衛を今夜から4日間お願いしたいと言って来たので、相手は?と聞いた直人は、敵を知る事が守る事の条件だと言う。

しかし、伶子は答えなかったので、プライバシーと言う訳か…と苦笑した直人は、費用は1000万、前金500万頂こうと告げる。

小切手で良い?車の中のダッシュボードの中にあるのと伶子が答えると、マキが車のキーを預かり取りに向かう事にする。

教会の前に停めてあった伶子の車に近づいたマキに、ナイフを持った暴漢が襲いかかる。

真樹は果敢に空手で立ち向かおうとする。

遅いな…と呟いた直人が窓から下を覗くと、教会の十字架の影の中に倒れた全裸の真樹の姿が見えたので、驚いて外に飛び出すと、マキ!と呼びかけながら抱き起こす。

真樹の左手には、「nostra cosa」の文字がナイフで刻まれていた。

奴等、あんたと間違えたんだ。「nostra cosa」とはイタリア語で我々のものと言う意味。マフィアの目が光っていると言うことだな?と二階にマキを運び込んで傷の手当をしながら、直人は驚いている伶子に告げる。

伶子はその場で小切手に金額を書き込み、直人のボディガードの仕事は始まる。

伶子のホテルに付いてきた直人は、部屋の中に入ると、素早く部屋中をチェックし、狙撃を避ける為に窓際には絶対近づかない事だねと注意する。

ナイトキャップを付き合って下さらない?と伶子は頼むが、直人は、今日から3日間は酒を飲まないと断る。

5年振りの東京…、変わったわ店、5日後にはパリ…と呟いた伶子はお休みと言う。

何かあったらいつでも呼んでくれと言い、直人は別室に引き取り、伶子はベッドに横たわる。

その直後、伶子は床のカーペットの下と、側のソファの中からナイフが突き出すのを観て硬直する。

ナイフはソファの座る部分の布を斬り裂き、中に潜んでいた殺し屋2人、床下から出現した殺し屋の計3名が姿を現す。

恐怖で声も出ない伶子は、さらに口を手で塞がれる。

別室でくつろいでいた直人は、寝室の異常を察知、3人の暴漢は伶子を浴室に連れ込む。

戻って来た1人の殺し屋が、直人のいる部屋のドアに向かって銃撃を浴びせるが、そのドアの向うから突き出して来た直人の拳が1人を倒す。

浴室では、足を天井から吊るされ、水を注ぎ込む浴槽に顔を押し付けられられた伶子が、本当に知らないのよ!と叫んでいた。

機関銃を持っていた殺し屋がドアから出て来た直人を狙うが、直人は先に倒した男を盾にし、仲間が蜂の巣になるぞ!と警告する。

しかし、機関銃を持った男はためらう事なく発砲、直人の盾になった男の左手は切断されてしまう。

直人は、機関銃を持った男も倒すと、浴室から出て来た賊も倒し、その男が逃げ出した後、浴室の水を止めると、宙づりにされた伶子を救出する。

ベッドに寝かせた伶子に、もう大丈夫だと声をかける直人。

部屋に落ちていた賊の左手を拾い上げた直人は、その手首に入っていた北斗七世の刺青を確認、イエロー・マフィア、7人の殺し屋…、後5人か…と呟く。

そして、奴等は何故あんたを殺さずリンチしたんだ?と聞くが、伶子は知らないわよと突っぱねるので、警察を呼ぼうか?と脅すと、こんな所にいられないわねと伶子は言う。

逃げ出すなら今のうちだぜと直人は忠告する。

翌日、「パシフィック・カンパニー」の社長室にやって来たのは、専務の鷹見鋭次(内田良平)だった。

社長の海老名謙三(伊達三郎)は、連絡はついたか?準備は出来ていると伝えてくれ。相手は女1人だ、分かってるな?と鷹見に告げる。

その後、車でホテルにやって来た鷹見は、815号室の前に立ってノックをする。

直人が覗き窓で相手を確認するが、伶子は、プライベートなお客よと声をかけて来る。

それでも、念のため、中に入ってきた鷹見の身体を調べる直人に、TVで派手に売ってた人だろ?早速巧いスポンサーが見つかったって訳だと鷹見は苦笑する。

この部屋に飛び込んで来るまで3秒かかりますと言い残し、直人は別室に引き下がる。

何故雇った?と扉の向こうに消えた直人を観ながら鷹見が聞くと、夕べ、殺されかかったわと伶子は答える。

ニューヨークからマフィアの仲間を連れて来たんだろうと鷹見は、昔、うらぶれたバーで男を漁っていたのは16の頃だろう?俺も観る目がなかったよ。これほどの女になるとは思わなかったと言う。

昔の私じゃないわと言う伶子に、あの晩券は他の役にも立っているのか?などと野卑な事を言いながら、鷹見は抱きついて来る。

そんな鷹見に帰ってよ!と拒絶した伶子は、ビジネスの話しましょうと告げる。

すると鷹見は、俺とおめえでお互いの儲けを倍にしねえか?社長は5億用意していると言う。おめえはブツだ。俺のやり方良く知っているはずだと言い出し、昔と変わってない…と伶子が呆れると、おめえは昔より、ずっと良くなっていると迫って来る。

あんたには昔泣かされたわ…と伶子は答える。

夜の米軍基地

とあるバーでは、軍人らしき外国人たちが女相手に踊っていた。

1人の酔った外国人が、店内で踊っていた半裸のストリッパー(殿岡ハツエ)に抱きついて来る。

それを見ていた店を経営している三兄弟の次男、熊沢徹(郷英治)は、その酔った外国人を殴りつけ、ナイフを出して突きつけると、弟の女だと告げる。

その間に、ストリッパーは、三兄弟の末っ子熊沢茂(滝波錦司)が奥へと連れて行く。

奥の部屋では、三兄弟の長兄熊沢猛(山本麟一)が、米兵から金を受け取り、又、ブツでも流してくれよと笑いかけ、カーテンの奥で女を抱いていた米兵にはタイムオーバーよと声をかけていた。

徹は、米兵と寝るのを拒否する女を殴りつけ、嫌なら嫌で良いんだぞ!とナイフをちらつかせ、女が着ていたシャツを斬り裂いて脅し付け、無理矢理客と一緒に二階へ行かせる。

その時、兄貴!と繁が声をかけたので、猛と徹が店の中を覗いてみると、そこには直人を連れた伶子がいた。

徹は、TVに出ていた空手野郎だと呟く。

あの女、場違いだぜ。アメ公漁るようなタマじゃないと猛は不思議がりながらも、銭の匂いがして来たぜとほくそ笑む。

1人の米兵と踊り始めた伶子は、明日朝2時にと囁きかける。

米軍基地側の中古自動車屋に直人は伶子を乗せた車を停めていたが、そこにいた徹から煙草の火を…と声をかけられる。

直人は素直にライターを差し出してやるが、徹は、ズボンのベルトに装着したナイフを抜こうと油断なく身構えていた。

しかし、相手の隙を見いだせなかったのか、良いライターだ、又借りたいぜと言うだけだった。

直人は、暇があったら、お前さんたちの店に飲みに行くぜと答えたので、つけにしてやるぜと徹も返す。

そうした2人の会話を、猛も近くから眺めていた。

伶子が乗り込んだ車を運転し、直人は走り去る。

その夜、基地の入口近くで車を停め、じっと様子をうかがっていた伶子と直人。

その入口の門番兵は、昼間バーで伶子と踊っていたあの米兵だった。

その米兵が懐中電灯を回し合図をして来たので、車を入口に近づけると、伶子は3000ドルを米兵に手渡す。

米兵は、OK、ジョーが待っていると伶子に告げる。

入口を入り奥に進むと、そこで待ち受けていた黒人兵ジョーが鉄条網の扉を開き、車を中に招き入れる。

ジョーが用意していたのは、ベトナム戦で戦死した米兵の遺体だった。

ジョーは伶子から3000ドル受け取ると、ベトナムも停戦したので、これで国に帰れると喜び、さらにボーナスを寄越せと言うと、伶子に抱きついて来る。

すぐに、車を降りた直人がジョーを羽交い締めにし、棺桶の中に入ってもらうぞと脅す。

ジョーは慌てて、ジョークだよと弁解する。

棺桶を積み込んで車を基地から出した直人は、尾行して来た車に気づき、途中でまいて隠れる。

魚籠して来た車は気づかず通り過ぎて行ったので、マフィアじゃないな、マフィアならあんな付け方はしないと直人は呟く。

尾行していた車を運転していたのは鷹見だった。

あんたを狙っている奴じゃないのか?と直人は伶子に聞く。

その時、突然他の車が近づいて来て発砲して来たので、直人は車を発車させる。

何とか、追手を振り切った直人だったが、積んで来た棺桶の蓋が開いてることに気づき、一旦車を停めると、背後のドアを開け、棺の中をあらためる。

直人は、遺体の胸や義手になっていた部分からビニール袋に入った麻薬らしき白い粉を数個見つける。

その白い粉がどれだけ人を苦しめるか知っているか?狙われる理由はあると言い、新聞を伶子に投げ与える直人。

その新聞には、マフィアのボスだったピッコロ銃殺事件の記事が載っていた。

そうよ、私はピッコロの女よと伶子は打ち明ける。

マフィアのボスの女と5億のブツ…、女を売れば、ボディガードの信用を失うだろう…と直人は苦笑する。

私が掴んだ最後のチャンスなのよと言う伶子に、契約は後1日、命の保証はしようと直人は告げる。

やがて、直人と伶子は空港に到着する。

それで良いわ…と伶子は答える。

三兄弟のバーでは、手に入れた大金で泥酔しきった米兵ジョーが、今夜はドンチャン騒ぎだ!故郷に帰れるんだ!と喜んでいた。

そんなジョーを、見張り兵が早く帰れと諌める。

その門番兵を殴りつけ、雨の降る外へ逃げ出し車に乗り込むジョー。

その後部座席から、北斗七星の刺青のある手がジョーの首に伸びる。

その様子を店から眺めているのは三男の茂だった。

門番兵はバーの奥に連れ込まれ、猛たちから殴られ、あの女は何を運んでいたんだ!と尋問されていた。

しかし、拷問をし過ぎ、門番兵はその場で死んでしまったので、こいつ、本当に知らなかったようだな…と徹が言う。

七つ星か?聞いたことがあるぜ、マフィアの…と、徹が門番の身体から見つけた北斗七星のマークが入ったナイフを観た猛が呟く。

翌日、鷹見は、新幹線が見えるとあるビルの中の駐車場に来ていた。

そこに伶子と直人がやって来る。

伶子に、ブツは間違いねえな?と確認する鷹見。

伶子が先に車に乗り込むと、運転席の床にスカーフを巻いた固まりがあったので、不審に思い、スカーフを取ってみると、その下にあったのはジョーの首だった。

それを観た直人は、警告だなと呟き、伶子もマフィアよと答える。

鷹見も気味悪そうに、車の中の首を観る。

取引は止めた方が良いと直人は伶子に警告するが、伶子は行くと言い張る。

取引場所に伶子、直人、鷹見が来ると、子分を従えた海老名謙三がやって来たので、鷹見は社長だと伶子に紹介する。

海老名は直人を観て、なるほど、頼りになりそうな護衛だと笑う。

伶子が持って来たアタッシュケースの中の麻薬を味見してみる相手。

伶子の方も、相手のトランクの中の鐘を確認しようとすると、海老名たちは銃を突きつけて来る。

どうせ、マフィアの組織から手に入れたブツじゃないかと嘲った海老名は、鷹見に伶子と直人を消せと命じる。

躊躇する鷹見に、まずはボディガードから片付けろ!撃つんだ!と声を荒げる海老名。

次の瞬間、銃を取り出した鷹見は、海老名とその配下2人をその場で射殺すると、安心しな、どうせこうなる予定だったんだと伶子に告げる。

伶子が相手が持って来たトランクを開けると、中に入っていたのは札束ではなく、雑誌の切れ端ばかりだった。

それを見た直人は、なるほど…、キツネとタヌキのバカし合いか…と苦笑し、伶子が真ヤクの入ったケースを手にすると、どこからともなく発砲して来たので、直人は、逃げろ!と叫ぶ。

鷹見も一緒にその場を逃げ出し、直人は伶子を守りながら何とかそのビルから脱出しようとする。

黒いコートを着た男たちの姿が確認出来た。

マフィアの七つ星の連中だった。

直人は、近くにあった競輪場の中に逃げ込むと、襲って来た1人をまず倒し、銃を撃って来たもう1人の盾にする。

拳銃を捨てろ!と直人は相手に怒鳴る。

その時、相手にお背中にナイフが刺さり倒れる。

他のマフィア連中も次々に倒れて行く。

猛や徹の姿を見つけた直人は、奴等だ!と警戒する。

猟銃を抱えて近づいて来た猛は、星が全部消えたな…と不敵に笑う。

マフィアの七つ星を全滅させたと言うことだった。

三男茂が運転する車が直人目がけて突っ込んで来たので、直人は大きくジャンプし、車の上を飛び越える。

鷹見に迫る三兄弟。

店に鷹見を連れて来た猛は、思い出したぜ!覚えがある。ハマでチンピラ相手に役の横流しをしているケチな奴等だ。それがマフィアに狙われるとは…と鷹見の顔を見て言うので、アメ公相手に商売をしている兄弟は聞いていると鷹見も答える。

あの2人の車はどこだ?と聞く兄弟に、あのスケには凄腕のボディガードが付いている。マフィアを倒したあの男、その坊やじゃ無理だぜとポッキーをかじっていた茂を観ながら鷹見は言い、酒をぐい飲みする。

怒った茂が飛びかかろうとするのを止める猛。

その頃、伶子と逃げ切った直人は、いつまでそのブツを持っているつもりだ。必ず殺されるんだぞと警告していた。

これと5億の金を手に入れるため、私は持っていると伶子は答える。

腹が減っているから勝てるんだと直人が言うと、女が勝つには何を信じたら良いの?身体さえ、私を裏切って男にすがろうとする。10カラットのエメラルド…、私が買ったの…と言いながら指輪を見せる伶子。

あなたは空手ね。似てるわと言う伶子に、違うね、お金にならなかった。食う為だ!と答えた直人は静かに伶子とキスをする。

そして、私は男を利用して、それを捨てもするわ…と嘲って来た伶子の頬を叩く。

すると、伶子の方も直人をぶって来る。

直人と喧嘩別れした伶子は1人町中を歩く。

先ほど直人からビンタされた事を思い出しながら…

その時、何者かの視線を感じ、逃げ始める伶子。

追って来る人影。

地下道を抜け、階段を登ると、踊り場の所に待っていたのは茂だった。

茂はナイフを取り出すと、言いな、ブツはどこにある?言わねえと大事な鼻を削ぐぜ!と聞きながら迫って来るが、その時、階段の上に直人が立っていることに気づく。

ナイフを突き出した茂だったが、あっさり直人に右手をへし折られてしまう。

そこに近づいて来たのが徹で、ナイフを付いて来るが、直人は大きくジャンプして避ける。

決着は必ず付けるぜと言い残し、徹は茂を抱えて立ち去って行く。

直人の方も、左手から出血していた。

徹のナイフはただものではなかった。

そんな直人に駆け寄って来る伶子。

店に戻って来た茂は、事情を聞いた猛から、中やろう!1人で出て行きやがって!透がいなかったらこうは行かなかったんだぞ!と叱られていた。

店で待っていた鷹見は、やっぱりあんたたちには敵わなかったようだな…と三兄弟を嘲る。

てめえ、死にてえのか!と凄んで来た徹に、あの女をおびき出すことができるのは俺だけだと鷹見は笑う。

夜の11時56分

ホテルに戻っていた伶子は、直人に詫びていた。

しかし、直人はビジネスだと答え、伶子も、そう、ビジネスねと頷く。

11時59分、部屋の電話がかかって来る。

その電話に出た伶子は、そう…、分かったわと答えて切る。

12時きっかりになったので、伶子は残金500万の小切手を切る。

そして、さよなら…と直人に手渡す伶子。

翌日、伶子は1人車で、夕べの電話で指定されたヨットハーバーにやって来る。

ブツの入ったアタッシュケースを持って降り立った伶子を待ち受けていたのは、電話をかけて来た鷹見だった。

しかし、その鷹見の背後に隠れていたのは三兄弟だった。

番犬はどうした?と聞いて来た鷹見に、放してやったわ。どっかで餌を探しているでしょうと答える伶子。

気をつけろ!キ○ガイ野郎が3人狙っているぜと鷹見が忠告すると、そうかい?後ろには3人死神が付いているぜと言いながら茂が近づいて来る。

俺たちを甘く見過ぎたようだなと言いながら迫って来た茂を捕まえ、銃を頭に突きつけた鷹見は、近寄ると、坊やを撃つぜ!と残りの兄たちに呼びかける。

ツキが廻って来たようだと笑う鷹見。

じりじりと迫って来る猛と徹。

そんな場所に、直人も近づいていた。

猛が猟銃を撃って来たので、鷹見は茂を撃って逃げようとするが、その背中に、徹が投げたナイフが突き刺さる。

その間、直人は伶子をかばいながら、近くの岩場に逃げ込む。

猟銃を撃って来る猛。

ここを動くな!と伶子に伏せさせた直人は、大きくジャンプし、猛の猟銃をまっ二つにへし折る。

そして、猛の両目を突いて潰すと脇腹に突きを決め倒す。

気がつくと、徹が岩場に立っていた。

メガネを取った徹の目は、兄と弟を失った悔しさに潤んでいた。

直人は大きくジャンプし、徹がナイフを投げて来る。

次の瞬間、直人は徹を蹴り倒していた。

まだ息があった鷹見が起き上がるのに気づいた直人は、伏せろ!と警告するが、立ち上がった伶子は、鷹見の撃った銃弾に倒れる。

駆け寄って抱き起こした直人に、負けたわ…、賭けに…と伶子は呟く。

俺も貧乏人のガキだったんだよ。今、ボディガードやっているのも、空手では食えなかったのさと直人が打ち明けると、貧乏は嫌…、私はこれだけに行きて来た…と呟き、麻薬の袋を握った伶子は息絶える。

そんな伶子と直人を夕日が照らしていた。

やりましたね、牙さん!今回の海外旅行の目的は?

またもや記者を集めて共同インタビューを開いた直人は、日本国内ばかりでなく、次は世界だよ!と笑顔で答えるのだった。