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若い樹

女学園もの…と言うジャンルがあるのかどうか分からないが、過去に何本か同じような女子校を舞台にした作品を観たことがあるが、これはそうした内容の1本である。

昔から、日本映画には女性向けの映画もたくさん作られていたのだが、正直、男性向けの作品ほどには目だたないものが多い。

それはおそらく、二本立て興行の添え物扱いで上映されていたものが多かったためかもしれない。

何故、添え物風になるのかと言えば、メインになり易いスター主演映画には男女とも観客が来るが、女性向けの映画だと、ほぼ女性層しか観に来ないために、客層が狭まり動員がさほど期待できなかった…と言う判断があったためではないか。

添え物扱いなので、メインほど予算もかけられてないし、内容も地味なものが多い。

「ゴジラ」(1954)で一躍有名監督になった…と思われがちな本多監督ですら、この時期になっても、こうした地味なプログラムピクチャーの監督もやっていたと言うことである。

それでも、青春ものには大体共通する要素があり、この作品、女性にしか楽しめないと言うようなものではない。

地方から上京した純朴なヒロインが、スポーツを通じて、友情や苦悩を味わって行くと言った内容で、典型的な青春学園ものパターンである。

60年代のTV青春学園ものの嚆矢とも言うべき、石原慎太郎原作「青春とはなんだ」(1965)の女性版のようにも見える。

青春もの自体は、石坂洋次郎原作「青い山脈」(1949)の頃からあるが、スポーツを絡めて…となると、若大将シリーズの第一作「大学の若大将」ですら1961年の作品なので、この作品はそれより早いと言うことになる。

時代が違うのでさすがにそっくりと言う訳ではないが、雰囲気としては、後のTVで人気を博した女の子向けスポ根もの、例えば「サインはV」とか「アタックNo.1」等に通じるものも感じる。

地方から上京して来たヒロインの純朴さ、頑張り屋、優しさ…などと言ったキャラ設定や、女の子同士の男の子を巡る足の引っ張り合い、大人が言い聞かせると泣いてすぐ解決…と言ったような展開などは、マンガ風のステレオタイプのようにも思えるが、あくまでもティーン向け映画なので、分かり易さ重視…と言うことなのだろう。

女性原作者なので、女学園での女生徒たちの争いごとなどはありがちなことなのかもしれない。

彼女たちの争いの元になるイケメン大学生を演じているのは、この当時のお馴染み山田真二。

甘いマスクの俳優兼歌手である。

ヒロイン役は、コロコロした印象の青山京子。

決して美人タイプではないが、愛嬌があり、みんなから親しまれるキャラクターだと思う。

他の女学生たちには顔なじみがないが、全員大人びて見える。

実際、実年齢は20歳以上の女優さんたちだったのではないかと想像する。

東宝作品なので、志村喬や大村千吉、谷晃と言った東宝特撮でもお馴染みの顔ぶれが登場するのは分かるが、松竹のイメージが強い佐野周二が先生役で出ているのが珍しいように感じた。

調べてみると、この時期の佐野周二は各社の映画に出るようになっており、東宝にも何本か出演している。

この作品では、志村喬と同じく、落ち着いた「大人」を演じている。

全体としては、50年代の青春ものにありがちな、やや理想主義的と言うか、優等生的な展開になっており、時代を感じる反面、今観ていても、嫌味のない清々しい作品である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1956年、東宝、小糸のぶ原作、池田一朗脚色、本多猪四郎脚本+監督作品。

針金細工を背景にタイトル&キャストロール

「熊本-東京」行き列車に乗っていた女子高生小泉浩子(青山京子)は、ちょうど酔っぱらいのおっさんたちのボックス席に1人だけ座っていたため、ずっと迷惑していた。

駅に停まったので、向かい席のおっさん(大村千吉)に手伝ってもらい、窓を開けてお茶を買おうとするが、「お茶ば頂戴!」と、熊本弁で売り子に声をかけても無視されてしまう。

おまけに、御国言葉をおっさんたちから笑われてしまう。

1人のおっさん(谷晃)が、国はどこだい?と笑いながら聞いて来たので、「知りまっしぇん!」と憤慨した広子は席を立ち、洗面所に行って、鏡を前に「しぇん」「せん」と何度も訛を修正しようとしてみる。

席に戻って来ると、自分の席に、酔っぱらいの仲間らしき、別のおっさんが勝手に座っており、自分の席と変わってくれと頼んで来る。

しかし、浩子は、断固として嫌です!と拒否する。

すると、さっき国はどこかと聞いたおっさんが、姉ちゃん、許してや。悪気でしたんじゃないんやなどと、下品な大阪弁を使いながら、浩子に抱きついて来る。

その時、いい加減にしたまえ!さっきから、君たちの為にどれだけ他の客が明和気うしているか分からないのか!と叱りつけた若者がいた。

学生服姿の大学生堀田卓夫(山田真二)だった。

その時、車掌がやって来たので、おとなしくなった酔っぱらいたちは、熱海に着いた所で全員降りてしまう。

周囲に大人がいなくなったので、席が近かった堀田と浩子は自然と会話をしていた。

熊本土産の「朝鮮飴」を座席の横に置いた浩子は、両親が亡くなり、これから東京の伯母の家に行く所だと教える。

言葉の違いに不安がっていた浩子に、東京は言わば日本の植民地みたいなもので、標準語をしゃべっている人ばかりではないから気にしない方が良い。僕は品川で降りるから、失敬…と言って先に降りて行く。

清華女学院

学校に出かけた浩子が控え室で待っていると、好奇心で窓から覗いて来る女の子たちに気づき、ちょっと変顔をして見せる。

そこにやって来た担任の篠原先生(佐野周二)が教室まで案内してくれることになる。

途中、篠原先生は、浩子がピンポンをやっていたことを確認すると、この学校もピンポンは強いよと教える。

教室に入り、転校生として、篠原先生が浩子を紹介すると、浩子が、何も分かりまっしぇん…、ばってん、ばってん…、宜しゅうお願いします!としどろもどろで挨拶すると、全員が笑い出す。

すると、一番後ろに座っていた沢崎邦子(宮桂子)が立ち上がり、失礼じゃないですか、人の言葉を笑うなんて。皆さんも色々流行語や新語などを使いますし、全員が正しい標準語をしゃべっているか分かりません。先生も笑ってましたが、教育者としていかがなものでしょうか?と発言する。

それを聞いた篠原はちょっと当惑したように、確かに笑ったことは反省するが、それは決して軽蔑の笑いじゃなくて、小泉君の素朴さに対する好感だったんだよ。僕らの善意だけは認めて欲しいなと反論すると、沢崎も認めますと答えたので、全員が拍手して解決する。

早速、篠原先生の古典の授業が始まるが、その時、浩子の所に廻って来たメモには、あなたのあだ名は「ばってんさん」に決まりましたと書かれていたので、浩子は苦笑する。

休み時間、廊下に出た浩子は、沢崎に、さっきはどうも…と礼を言うが、沢崎は取りつく島もなく行ってしまう。

その時、浩子に近づいて来たクラスメイトたちは、あの人にあまり興味を持たない方が良いわ。とても気位が高く、みんなもちょっと距離を置いているの。勉強はクラス一だけどねと情報を教えてくれる。

放課後、浩子は篠原先生からピンポンやろうと声をかけられ、卓球部の部屋に連れて来られる。

長谷川君、小泉君とやってみてくれと篠原先生が声をかけ、2人は練習を始めるが、他の女子部員たちは、あの人誰?ばってんさんなどと噂し合っていた。

なかなかやるじゃないと感心する声を聞いていた篠原先生は、卓球部に入ってもらおうとキャプテンの矢部ミサ子(飛鳥みさ子)に言う。

しかし、一緒に観ていた大畑春枝(河美智子)などは、随分強引なプレイね。フォームなんてなってないわよと陰口を聞く。

浩子は、おばのやっている蕎麦屋「薮新」に帰って来る。

虐められなかったかい?と心配して聞いて来たのは、伯母かつ子(清川虹子)だったが、小学生の息子康夫(伊東隆)は、こんな大きいのに虐められないよ!50円の飛行機を買っても良いでしょう?と母親に甘えて来る。

担任の先生は卓球部の先生でしたと伯母に浩子が報告すると、姉ちゃん、ピンポンの選手?と康夫が聞いて来る。

今日はあんたの普段着を買いに行こうと思ってたんだよ。これから一緒に行こうとかつ子が出かける準備を始めると、二階で勉強していたはずの康夫がやって来て、自分も行くと言ってかつ子にせがむので、仕方なく一緒にデパートに連れて行ってやることにする。

すると、調理場にいた使用人の政どん(井上大助)がデパートに行くのなら250円の飛行機じゃなきゃって行ってるよと康夫が言い出したので、余計なことを言うんじゃないよ!とかつ子は政どんに注意する。

翌日の卓球部では、女生徒たちが、さっきピンちゃんが来たわよと噂していた。

すると、練習中だった長谷川華子(森啓子)は、何故か表情が代わり、矢部に交代を頼むと、自分は椅子に腰を降ろす。

ピンちゃんとは、実はコーチとして清華女学院に卓球を教えに来ていた堀田卓夫の事だった。

学生卓球界No.1と言われる堀田は、郷里に錦を飾って帰京して来た所だった。

手みやげをもらって帰って来た挨拶をされた篠原先生は、あの連中もコーチが来ないと練習に身が入らないようなんだと苦笑する。

そして、今度優秀な転校生が入ったよと篠原先生は教える。

卓球部にやって来た堀田は、転がって来た玉を拾い上げるが、それを追って来たのが浩子だったので、君、ここに転校したのか?と笑顔で話しかける。

すると、他の女子部員たちが、堀田君、知ってるの?と聞いて来る中、矢部ミサ子が堀田と浩子を正式に紹介する。

堀田は、長谷川が、少し気分が悪いと言って休んでいるのに気づく。

女子部員たちから、ばってんさん、ピンちゃんとどこで会ったの?と聞かれた浩子は、仕方なく、汽車の中で会っただけよと浩子が説明する。

その後、浩子は、長谷川が校舎の階段の所で、篠原先生から指輪を注意されている所に偶然出くわす。

篠原先生は、長谷川の手を出させ指輪を抜かせると、きれいな手じゃないか。これ以上指輪なんかはめる必要あるかい?と優しく言い聞かせ、その場で指輪は返して行く。

その長谷川とすれ違った浩子が洗面所に入ると、そこに手紙が落ちていることに気づき拾い上げて読むと、すぐに元の位置に置いて洗面所を後にするが、その時、同じ卓球部の大畑春枝とすれ違う。

その直後に洗面所に入った大畑は、やはり、床に落ちていた手紙を拾い上げると中身を読む。

それは、2人きりで会いたい。明日4時、地下鉄ホームの渋谷よりで H子…などと書かれた堀田卓夫へのラブレターだった。

大畑はその手紙を、浩子か書いたものと決めつけ、すぐに卓球部の部員たち全員に知らせると、このままでは卓球部のメンツに関わるなどと言い出し、放課後、査問会を開くことになる。

英語の授業中、浩子は廻って来たメモを拡げて読むと、そこには、卓球部のみんなが怒っています。屋上でお待ちしています。邦子と書かれてあった。

屋上に行ってみると、そこにメモを書いた沢崎が待っており、堀田への手紙を書いたのはあなたじゃないの?と聞いて来る。

違うと浩子が答えると、男女関係には気をつけた方が良いわね。男なんて絶対信用しない方が良いわ。実は姉が家出したの、好きな人が出来て…。平気で私や母を捨てて行ったのも、男のせいよ。私は男の人、みんなが憎いの!大嫌い!と沢崎は告白する。

そして、あなたは、つまらない事件に巻き込まれて素朴さを失わないでねと言うので、浩子はありがとうと礼を言う。

放課後の部室、浩子は、堀田への手紙を書いたかどうか部員たちから吊るし上げられていた。

浩子は否定するが、矢部さんがさっき読んでみせた時、中味を知っていたみたいじゃないの!と大畑が追求して来る。

中味は知ってるの。洗面所で拾って読んだの。そして、読んじゃ行けない内容だと分かったので、又そこに置いておいたの。大畑さんでしょう?あの後これを拾ったの。どうしてこんなことをするの?「H子」なんてイニシャル、私だけじゃないわ。大畑春枝さん、あなたもそうじゃない?長谷川華子さんも、杉山久子さんも、みんなイニシャル「H」でしょう?どうしてこんな事件にしなくちゃいけないの?と浩子は悔しそうに訴える。

そこに堀田がやって来て、どうしたんだ?と聞いて来たので、いたたまれなくなった浩子は今日は失礼しますと挨拶して帰り、矢部は、手紙は私が預かります。内容は申し上げられません。卓球部の名誉のためですから、堀田さんが知る必要はないことですと堀田に答える。

帰宅した浩子を待ち受けていたかつ子は、今日、学校で酷く虐められたんだって?アサさんの娘さんが教えてくれたんだよと言い出す。

もしや手紙を書いたかもしれないと思って…とかつ子が案じるので、書きません、私と浩子は強く否定する。

本当?じゃあ、篠原先生の所へ話しに行くからね。バカにしてる!などとかつ子が興奮して言い出したので、浩子は止めて下さいと必死に止める。

あんたがそう言うんなら止めるけど、私はあんたのこと、本当の娘だと思っているので、むやみに腹が立ってね…とかつ子は弁解する。

浩子も、もう仮病がバレたのでと言い、店の手伝いをすることにする。

その夕方、店にひょっこりやって来て、天ぷら蕎麦を注文したのは篠原先生だった。

かつ子が挨拶に来ると、お宅はここだったんですねと篠原先生も驚く。

浩子の家とは知らずに入ったのだった。

浩子は、店の手伝いをした後、今風呂に行っていると教えたかつ子は、これ幸いとばかり、浩子のことで先生のお耳に入れたいことが…と切り出す。

政どんは、客が浩子の先生だと知ると、サービスしちゃおうと言い、呼ぶんに天ぷらをソバに乗せてやる。

話を聞き終わった篠原先生は、良く調べてから注意しましょう。

やっぱり田舎から転校して来たりすると虐められるんですかね?とかつ子が聞くと、女の子特有の嫉妬心や競争心が原因でしょうね、女の子と言う者は実に厄介なもので、叱るとすねるし、褒めるとつけあがる。とにかく女と言う者は手におえんです…と言い終わった所で、行ってる相手がかつ子と気づき、バツが悪そうに謝る。

しかし男勝りのかつ子は、そんな言葉で一々怒るような女ではなかった。

先頭の女湯から出た浩子は、ちょうど男湯の方から出て来た堀田と鉢合わせにたので驚く。

堀田の方も驚いたようで、家はこの近く?と聞いて来る。

踏切から三町ばかり向うの「薮新」と言うお蕎麦屋なの。いつも征夫風呂屋が休みだったのでこっちに来たのよと浩子が言うと、今日は早く帰ったようだけど、何か学校で面白くないことあったのかい?と堀田は聞く。

君はみんなから吊るし上げられていたようだけど、もうすぐ大会出場選手を決めないと行けない大事な時期だと案じる堀田は、自分ちは反対側だけど、タバコを買うついでにこちらに来たと言い、タバコ屋の前で別れるが、そんな仲睦まじい2人の姿を偶然目撃したのは、駅から降り立った大畑ら女子3人だった。

浩子と別れた堀田に声をかけて来たのは、級友の馬場次郎左衛門 太刀川洋一)だった。

頼みを聞いてくれと言うので、堀田は下宿に連れて来て、君が来るのが分かっていたら、蕎麦屋のこと別れて来た所だから、天丼でも頼んでおけば良かったな…と堀田は残念がる。

そんな堀田に馬場は、聞いたぞ、ラブレター事件。君は艶福家だ、羨ましいよなどと言い出したので、堀田は事件の詳細を聞く。

ばってんさんが君にラブレターを書き、それを他の女の子が見つけて大騒ぎになったらしい。君は女の子たちに取って憧れの君らしい。さっきも駅前で女の子たちが君をみていたよと教えた馬場は、今度ボートの番人のバイトを始めることにしたのだが、手元不如意で多摩川まで行く電車賃がないので、80円ばかり貸して欲しいと言う。

100円札を渡した堀田は、今日は泊まっていけば良いのにと勧めるが、そうもいかん。夜は夜で犬の代わりに屋敷の番人をやっているのでと言い、馬場はさっさと帰ってしまう。

翌日、学校に行った浩子は、大崎たちから部室に呼びだされ付いて行ったので、それに気づいた沢崎もそっと後を付けて行く。

浩子は卓球部の女子部員たちから、昨日、ピンちゃんと一緒にお風呂に行ったの?と追求される。

浩子は、お風呂屋で偶然一緒になっただけと弁明するが、大畑が夕べ一緒に行ったのを見たと言うので、どうしてそう物事を考えるのか?と浩子は大畑に反論する。

しかし、大畑は、疑っているのは私だけじゃないわと言い返す。

浩子は、当番日誌があるでしょう?手紙の筆跡を調べて下さいと申し出たので、矢部は、他も徹底的に調べましょうと言う。

すると、集まっていた部員の中、長谷川だけは深刻な顔になる。

その後、体育の時間、矢部は、他のクラスメイトと共に体操着に着替えてグラウンドに出るが、その間、教室内に置かれていた矢部の制服から、手紙を抜き取った者がいた。

放課後、矢部は、手紙がなくなったと卓球部の部員たちに報告し困惑していた。

大畑などは疑いの目を自然と浩子に向ける。

その頃、校門の前で待ち受けていた沢崎は、やって来た堀田を呼び止めると、自分は小泉さんの友達だが、これから小泉さんと付き合うのは止めて下さい。彼女は気が強いから黙っているけど、このままじゃ学校にいられなくなります。

彼女をそっとしておいて下さいと頼む。

しかし、堀田が女学院の中に入ろうとするので、部室に行くんですか?と沢崎が聞くと、篠原先生に釈明をして帰りますと堀田は答える。

ホッカからコーチ辞任を告げられた篠原先生は、大会前に君に辞められては困るんだよ。本当に女の子って困るな〜と悩む。

その後、部室に行ってみた篠原先生は、矢部や大畑が、大切な証拠を探すんですと紛失した手紙探しに躍起になりかけていたので、君たちは、そんな手紙、探さなくて良いと諭す。

これは私たちだけの問題です!と大畑は反発して来るが、堀田君、辞めたよと伝えた篠原先生は、僕も腹が立ってねと部員たちに伝える。

学生がレターを書くなんて!と部員たちが言うので、確かに、褒められるようなことじゃないけど、そんなに目くじらを立てて騒ぐようなことなのかい?純情可憐なもんじゃないか?大体何故、君たちはなくなった手紙の詮議なんかをしているんだ?そこには女の嫉妬心、焼き餅焼きが潜んでいる。良く自分の心の奥底に潜んでいるものを考えてごらん。手紙がなくなったことは天のめぐみだ。そうだろう?矢部君と篠原先生が噛んで含めると、矢部はハイと言いながら泣き出す。

11月23日に迫っている関東高校大会の出場選手を決めなくては行けない大切な時期だ。みんな練習だ!と篠原先生は矢部らに言い聞かす。

そんな中、やはり長谷川が沈んでいた。

やがて、浩子と矢部らが、出場者を決めるための内部試合を始め、浩子が矢部を打ち負かす。

その結果、代表選手は、小泉浩子、長谷川華子、矢部ミサ子、補欠に大畑春枝と大石ヒロミが決まる。

長谷川は明るい表情を取り戻し、明日は、多摩川で静養しましょうと部員たちに提案する。

翌日、浩子らは多摩川の貸しボートに乗ることにするが、そんな彼女らに川下の方の貸しボート屋でバイトしていた堀田と馬場が気づく。

浩子も一緒だと堀田が気づくと、そんなもんだよ、女の子の喧嘩なんて…と馬場が言う。

ボートに乗り込んだ大畑らも、堀田に気づくと川下のボートやの方に近づこうとする。

その時、山田は、禁止されているのに、モーターボートが接近して来るのに気づき、大声を上げて制止するが、外国人が女を乗せて操縦していたモーターボートはそのまま、貸しボートが何隻も集まっていた水域に突進して来る。

その結果、危険を感じ、方向転換しようとした浩子たちのボートはひっくり返り、長谷川が隣のボートとの間に手を挟まれ、左手を負傷してしまう。

山田と堀田は、そんな長谷川を、近くに停まっていたジャリトラックに乗せてもらい、高嶋病院に連れて行く。

長谷川は輸血が必要と言うことで、同じB型の浩子が自ら進んで輸血をする。

連絡を受けた篠原先生も病院に駆けつける。

長谷川は幸い大事には至らなかったが、当分、自宅療養と言うことになる。

そんなある日、浩子は、長谷川の自宅に見舞いに行く。

出迎えた長谷川は元気を取り戻しており、あなたの輸血のお陰よと浩子に感謝する。

浩子はアルバイトで買ったと言い。花束をやって来た母親(一の宮あつ子)に渡すと、あなた、アルバイトしてらっしゃるの?と驚かれる。

蕎麦屋をやっているので、出前などを手伝うと、お小遣いをもらえるんですと浩子が説明すると、大事にしますねと礼を言いながら花を持って行く。

皆さん、お元気?あなた、沢崎さんと仲が良いのね?と長谷川が聞くと、でもこの頃妙なの。私を避けようとして…と浩子は、沢崎の態度の変化を打ち明ける。

すると、長谷川は、私、お詫びしなくちゃいけない事があるの。あの手紙、私が書いたの。自分で書いといて、吊るし上げる方に付いたりして…、でも手紙を取ったのは私じゃないの。今でも気味悪いわと告白し、私、これから、あなたを見習うわと浩子を褒める。

すると浩子は、私、あなたがピンちゃんを好きなこと分かるわ。私も好きなの。私たちはまだ成長途中よ。男を観る目もこれから成長するはず。今は自分を育てることに専念しましょうと言い、2人はすっかり意気投合する。

その時、廊下に、母親が父親(志村喬)を連れて来るが、部屋の中から華子と浩子の愉快そうな笑い声が聞こえて来たので、なるほどのびのびしとるなと感心するが、家の父の手なんか熊よなどと言う華子の声が聞こえて来たので、父親は自分の手を観ながら、良い友達が出来たなと妻に話しかけ、部屋の中に入って浩子に挨拶する。

そして、華子には、この熊のような手でお尻を叩いてやろうか?と華子に笑いかけると、あら、聞いてたの?と華子と浩子は愉快そうに笑う。

そこに、母親がケーキを運んで来る。

長谷川家を辞去した浩子は、道ばたで牛乳配達の自転車を止め、苦しそうに塀に身体を寄せかけていた沢崎を発見し、どうしたの?身体の具合が悪いんじゃないの?と声をかけながらかけよる。

浩子が沢崎を自宅に送り届けると、病気がちらしく、布団を敷いたままの母親(沢村貞子)が横に布団を敷いて沢崎を寝かすと、色々とすみません。私が寝たり起きたりなものだから…と貧しい生活を恥じるように言う。

しかし、寝ていた沢崎は、もう帰って頂戴。私、誰の世話にもなりたくないの!と言い出したので、母親は叱るが、お母さんもいつもそう言ってるじゃない!みんなに同情するように教えないでね、特に義援金募集なんて絶対なさらないでね。お情けが我慢できないの!と我を張る。

浩子は帰るついでに、配達用の自転車を返して来ますと母親に告げ、沢崎家を後にする。

浩子が帰った後、邦子さん、どうしてあんな事を言うの?と母は沢崎に聞く。

すると沢崎は、あの人たちに同情してもらいたくないの。一時的な同情なんてまっぴらよと布団の中から答える。

一方、牛乳屋に自転車を返しに行った浩子は、店主(富田仲次郎)に、沢崎の給料の前借りが出来ないかと交渉してみる。

店主は、配達人がいなくなっただけで困るのに…と困惑するが、配達を浩子が代わってやると言い出すと承知し、その後、給料を沢崎の家に持って行ってやる。

これはあげる訳じゃない。直ったら、働いて返してもらうんだからと行って母親に渡すと、何も知らない母親や近所のばあさんは感激する。

その後、沢崎の代わりに牛乳配達を始めた浩子だったが、馬場の家に配達に言った時、うちはすみれ牛乳だ。今日から他にすると言いながら、配達した牛乳を返そうとする。

理由は、君がアルバイトの動議に反しているからだ。昨日まで来ていたのは君と同じ学生アルバイトだったはずだ。その仕事を取るのは良くないなどと言うので、沢崎さんなら病気です。私がその代わりにやっているんですと浩子が説明すると、急に態度が変わり、あの子の家の住所を教えてくれと言い出す。

牛乳はどっちを取るのですか?と言うと、もちろんすみれ牛乳さと今返却した牛乳を再度受け取る馬場に、私が配達をしていることは言わないで下さいねと念を押した浩子は、沢崎の家を教えてやる。

馬場は、その後、出かけた母の校正の手伝いを1人でやっていた沢崎の家に来ると、病気なんだってね。お見舞いに来ましたと言い、すぐ食べられるものばかりだからと言いながら、持って来たジュースや缶詰を出す。

しかし沢崎がつっけんどんな態度なので、そう言うのは「精神的動脈硬化」って言うんだよとからかった馬場は、校正やってるんですか?良し引き受けた!と一方的に言い、しくじると母に叱られますと言う沢崎に、大学の雑誌でやったことがあるんだ。お母さんに宜しく!明日、又来ます!と言い、原稿用紙を奪い取るように帰って行く。

帰宅途中の篠原先生は、牛乳配達をしている浩子の後ろ姿を偶然目撃する。

次の日の授業中、疲労のあまり居眠りをしていた浩子が、顔を洗いに行って良いですか?眠くてたまらんです!と手を挙げて発言したので、篠原先生は笑って許可する。

そんなある日、長谷川が久しぶりに部室に顔を出し、明日から学校へも戻れると言うが、そこに小泉の姿がないので不思議がる。

すると、彼女、最近、全然練習に来ないのよ。少し思い上がりねと大畑が言う。

その頃、牛乳配達で馬場の家にやって来た浩子に、沢崎君は良くなった。後一週間もすれば起きることが出来ると馬場は教える。

そこに堀田がやって来て、馬場から聞いたけど、バイトをやってたんじゃ練習出来ないんじゃない?と心配する。

浩子は、篠原先生に所へ行って、代表を辞めさせてもらおうと思って…と打ち明ける。

一方、長谷川は「薮新」に来て、かつ子に浩子の様子を聞いていた。

かつ子は、浩子なら今先生の所へ行った。あの子今、牛乳配達してるんだよ。ちょっと訳ありでね…と長谷川に教える。

長谷川はその足で、すみれ牛乳の店に行って店主に会う。

篠原の家にやって来た堀田は、庭先から障子を開けて中を覗いた所、部屋の中で居眠りをしている浩子を発見、微笑むとそっと障子を閉め、ちょうど帰って来た篠原先生に、ちょっと歩きませんかと誘う。

話なら部屋で…と篠原先生が言うので、小泉君が寝てるんです。酷く疲れているようなので…と堀田が説明すると、篠原先生もすぐに事情を察し、近所をぶらつくことにする。

小泉君が牛乳配達していることを知っていますか?と堀田が聞くと、沢崎のためさ、偉いよ、なかなか出来んことだと篠原先生も知っていることを打ち明ける。

後、一週間くらいやらなければ行けないらしく、本人が可哀想です。クラスで話したら?と堀田が提案すると、それじゃあ沢崎が可哀想だ。ただでさえ肩身が狭いのに…。彼女たちは若い樹のようなものだ。その成長を邪魔しないようにしようじゃないかと篠原先生は言う。

堀田は、もう1度、コーチをやらせてくれませんか?と申し出る。

話し終えた2人が篠原先生の家に戻って来ると、家政婦さんが寝ている浩子に毛布をかけてやっていたのに気づく。

そんな浩子を起こさないように、頑張るんだぞ、ばってんさんと篠原先生は笑顔で囁きかける。

すみれ牛乳の店主は、やって来た浩子に、お前さん、ピンポンの選手なんだって?今日から夕方の配達はしなくて良いよ。夕方だけでもやりたいって配達人がいてね…と言う。

卓球部の方は、堀田がコーチとして復帰したこともあり、全員張り切って練習を続ける。

そんなある日、自動車に一緒に乗っていた長谷川の両親は、牛乳配達をしている娘の姿を目撃し驚く。

関東高校卓球選手権大会

浩子は矢部とペアを組んで試合に臨む。

堀田もコーチとして清華女学院の応援席に参加していた。

浩子たちは決勝戦まで勝ち進む。

その時、馬場が沢崎を伴い試合会場にやって来る。

堀田は、状況を聞きに来た馬場に、疲労が祟っているよと浩子のことを教える。

浩子と矢部ペアは、徐々に相手にリードを許されるようになり、浩子は目が霞んで来て、ついに試合中倒れてしまう。

結果、決勝戦では敗退してしまう。

控え室に戻って来た部員たちは、小泉さんがあんなにならなければ…、矢部さんが可愛そうよなどと、浩子を責める愚痴を言い出す。

そこに、医務室から浩子が戻って来て謝罪する。

馬場と共に控え室に来ていた長谷川は、責めるなら私を責めて下さい!と言い出す。

私の為に牛乳配達をしてくれたので、練習が出来なかったんですとみんなに訴えると、堀田さんにあなたとの付き合いを辞めるように頼んだのも私です!と浩子に告白し、泣き出す。

それを聞いていた矢部や女子部員たちはみんな泣き出す。

又、いつか、堀田さんの手紙を取ったのも…と沢崎が続けようとした時、つまらんことを言うな!と言って、沢崎の発言を封じたのは篠原先生だった。

手紙がなくなったのは天の恵みだったんだ。矢部も小泉も全力を尽くして頑張ったんだから良いじゃないか。これ以上勝負に拘るのはスポーツマン精神に反する!と篠原先生は言い聞かせる。

女子部員たちは浩子に駆け寄り、謝罪の言葉をかける。

そこに、応援に来ていた康夫も、姉ちゃん!と駆け寄って来る。

さっぱりしたろう?これで君の精神的動脈硬化も全快だと馬場は沢崎に微笑みかける。

優勝旗は来年の為に取っておこうと篠原先生はみんなに言い聞かせ、全員、頷くと、先生を中心に整列し、試合場の学校を後にするのだった。