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天使が俺を追い駈ける

往年の日活が得意にしていたナンセンスコメディだが、当時16歳くらいだったらしい可愛い盛りの吉永小百合さんから惚れられる三木のり平と言う設定がまずおかしい。

夢オチか何かかと予想していたら、最後まで2人はラブラブと言う信じられないような展開になっている。

要領が悪く、仕事も巧くいかず、女にも振られたので、世をはかなんで自殺をしようとしていた男が、逃げ込んできた殺し屋に自分殺しを依頼した所、それ以来、次々と幸運が舞い込み、ステキな彼女まで出来たので、何とか殺される事から逃げようとすると言うドタバタで、三木のり平が、その信じられないような運命に翻弄される男をいつものとぼけた表情で演じている。

その主人公の人柄に惚れてしまう殺し屋を演じているのは脱線トリオの八波むと志、さらに千葉信男や女性陣も、いつしか主人公を手助けするようになる。

冒頭からラストまでアイデアが目一杯詰め込まれており、臭いお涙要素などもないので、からっとした笑いを楽しむことができる。

クライマックスのビルの大時計にしがみつく辺りのアイデアが、有名な「ロイドの要心無用」(1923)からのいただきなのがちょっと残念だが、後半はスクリーンプロセスやその他、初歩的な特撮(担当:天羽四郎)を用いた追っかけギャグで見せてくれる。

小百合ちゃんが主人公を好きになる動機が曖昧だったり、その後も主人公を愛し続ける辺りに不自然さを感じないでもないが、あくまでも男の願望コメディと言う事だろう。

劇中、「何はなくとも江戸むらさき」の看板がわざとらしく登場したり、留置場に入れられた主人公がおにぎりをもらって食べる時に、懐から「江戸むらさき」の瓶を取り出す辺りは当時の日活お得意のタイアップだったのだろうが、当時から三木のり平が「桃屋」の宣伝をしていた事が分かる。

事故を防ぐ為と言うこともあったのだろうが、アパートに設置されているコイン投入型の自動ガス供給ボックスなどが珍しい。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、日活、小野田勇脚本、井田探監督作品。

三人のガンマンが横並びで銃を構えているマンガを背景にタイトル

キャスト、スタッフロール中、まずは左のガンマンが倒れている絵になり、続いて右のガンマンも倒れて、真ん中のガンマンだけが立っている絵に変わる。

夜の町並み

その中にある「希望荘」と言う木造アパートの一室の窓のカーテンに、首を吊った人間のシルエットが写っている。

そのシルエットの主は、今正に部屋の中で首を吊ろうとしていた三本木六平(三木のり平)だった。

しかし、なかなか決心がつかず、思い切ってロープの輪っかに首を入れ、足下の踏み台を倒したものの、あえなくロープが切れ、六平は床に落ちてしまったので、下の部屋で寝ていたたまみ(和田悦子)が起きだして、窓から上に、ちょっと静かにしてよ!と文句を言う。

六平は、窓から、すみません、ちょっと事情があってと下の部屋に詫びると、今度は机の引き出しから小刀を取り出し、それを咽に突き刺そうとするが痛そうで突けない。

やけになった六平は、机の前の壁に貼ってあった女の写真を小刀で突く。

次に六平は、ガスコンロの自動元栓に10円を入れガスを出すと、布団に横になってみる。

しかし、自動元栓ではすぐにガスが止まってしまう。

六平は10円をまた入れに行き、布団に寝直すが、又してもすぐにガスは止まってしまう。

ズボンのポケットを探っても、もう10円はないので、机の引き出しを探してみると、10円が見つかったので、三たび自動元栓にコインをいれ、コンロのホースを口にくわえて横になる。

しかし、そのホースはガス管から外れていたので、結局、中途半端に噴出したガスで部屋が臭くなっただけで死ねそうにもなかった。

仕方なく、布団からはい出して来た六平は窓を開けようとするが、何故か、反対側の窓が閉まってしまう。

何度かやり直して、ようやく開いた所に、誰かがその窓から侵入して来る。

外にはパトカーのサイレン音が聞こえていた。

黒いコート姿のその侵入者は、早く窓を閉めろと急かす。

仕方がないので、言う通り窓を閉めた六平は、ドアの鍵を開けようとするが、何をするんだ?と侵入者に止められたので、空気が悪くなっちゃったので開けないと…、部屋臭くないですか?と六平は聞く。

すると侵入者は、今鼻が詰まっているので分からないと言いながら、煙草をくわえ、火を点けようとする。

六平は慌てて止めようとするが、間に合わず、部屋は大爆発、侵入者も六平も真っ黒ぼろぼろ状態になってしまう。

その後、ガスが使えないので…と言い訳し、六平は殺し屋のヌーベルの莫(八波むと志)と言う侵入者に茶の代わりに水を差し出していた。

茶菓子も出すと、この岩おこしは旨いと言いながら莫は食べるが、それは実は去年の春頃買ったカステラなんですと六平が説明すると、慌てて吐き出す。

そんな莫に六平は、あなたが本当の殺し屋なら、ズドンと一発、お願いします。実は自殺しかけていた所なんですと六平は頼む。

莫は驚いたようだったが、壁の女の写真を観ると、失恋か?とすぐに事情を察する。

(回想)六平は、自分はセールスマンをやっている三本木六平と言うが、生来要領が悪く、不器用なこともあり、上司の課長(西村晃)からいつも叱られてばかりいる上に、人の借金の保証人になったばかりに、50万を背負い込んでしまい、高利か死に追われている。

さらに、愛人のつもりだった喫茶店のウエイトレスにも男がおり、自分は全く相手にされていなかった事が分かったと打ち明ける。

(回想明け)話を聞き終わった莫は、事情は分かったが、俺は商売だからダメだ。殺し屋には殺し屋のルールがある。金にならない殺しはやっちゃいけないことになっている。お前さん金はあるのか?最低でも3本は欲しいが、お前さんは特別にこれで良いと人差し指を1本出す。

100円ですか?と六平が聞くと、ふざけるな!10万だと莫が言うと、六平は持っていた全財産を莫の前に差し出す。

650円しかなかった。

莫は、おまえ、生命保険には入っているかと聞くと入ってないと六平が答えたので、少し手間はかかるがやってやれない事もないと言いだす。

翌日、六平は振られた相手のユメ子(久迩恭子)がいる喫茶店に向かう。

その日も、夢子は恋人らしき男といちゃついていた。

六平は店の中に入ると、待っていた莫のテーブルに向かう。

そこには見知らぬ女も同席しており、莫はお前の内縁の妻になる南条エリ(小園蓉子)だと紹介する。

そこに注文を取りに来た夢子は、六平に優しくしているエリを睨みながら、こっそり六平の足を蹴って行く。

それに気づいた莫は、エリさんに嫉妬したようだなと愉快そうに笑い、3人で東邦生命と言う保険会社に向かう。

そこでまずは健康診断を受け、担当医(神戸瓢介)から、脈なし、脳なしなどと言われるが、何とか審査を通過し、受け取りは内縁の妻のエリと言うことで、その場で第一回の払い込みをエリがすると、契約はあっさり成立してしまう。

これで、明日から六平が交通事故ででも死亡すれば500万の保険金が降りるんですねと莫は確認する。横でそれを聞いていた六平は、トラックだけは止めて下さいねと莫に頼む。

その後、六平は目隠しをされ、車でとある町中のビルの中に莫とエリに連れて来られる。

そのビルの一室に案内された六平は、そこが莫の勤める「殺人請負会社」である事を知る。

壁には「社訓」なる物まで貼ってあり、玩具のピストルを腰に下げたガンマンのような子供(謝国泰)が茶を二つ入れだす。

その一つの湯飲みに、薬のようなものを入れるのを観ていた六平は、毒を入れられたと思い込み、先に莫に湯飲みを取らせ、違う湯飲みを手にするが、莫は笑いながら、今は給仕で、入れたのは俺の薬のセンブリだと言う。

事実、六平が飲んだ湯飲みの茶は苦かったので、六平は自分の勘違いに気づく。

莫は、自分はまだ人殺しをした事がない平社員で、今度のお前の殺人で保険金を手にすれば課長になれるんだと言う。

そこへ入って来た大河原と言う社長(嵯峨善兵)は、殺しの依頼をした六平に愛想良く挨拶をし、4〜5日のうちに殺してごらんにいれますと言う。

そして大河原に紹介された専務(井東柳晴)と傷害部長(加原武門)なる男が、寸志ですと言いながら六平にのし袋を手渡す。

それにはお香典と書かれてあったので六平は驚くが、中には10万も入っていると言うのでさらに驚く。

どうせ500万が入るので、10万などなんでもない、自由に使ってくれと大河原は笑い、莫も、保険に入っていきなり死んだら怪しまれるからなと言う。

しかし、六平は10万などと言う大金を持ちなれた事がないので、使い方など分からないと戸惑う。

すると、一緒に話を聞いていたエリが、今頃珍しい人ね。だったら私が教えてあげようかしらと言いながら六平に色っぽく迫って来る。

そんなエリと莫が六平を連れて来たのは「クラブ プロディール」

フロアステージでは、「スリー・ピンキーズ」と言う3人娘が歌っていた。

六平はエリに誘われ、チークダンスを踊るが、どうも踊りに馴染めない。

テーブルに戻って来た六平に、やけにモテてたじゃないかと莫がからかいながらビールを勧める。

しかし、あのエリさんには気を付けた方が良い、あの人は社長のこれだからねと小指を立てて忠告した莫だったが、その小指に、近づいて来たエリが煙草の火をくっつけたので、驚いた莫は指を引っ込め逃げ出す。

しかし、六平は、エリさんのようにきれいで優しい人に会ったのはおっかさん以来ですなどと満更でもなさそうだったので、それを聞いたエリは喜ぶ。

ところが、そんな六平たちのテーブルに近づいて来たのは大河原社長で、慌てたエリは、大河原について席を離れてしまう。

1人でテーブルに残された六平だったが、そこに転がり込んで来たのは、見覚えのある少女久美(吉永小百合)だった。

その久美は、六平も良く知る高利貸しの金丸から逃げて来たらしく、すぐに金丸(冬木京三)が近づいて来る。

久美に事情を聞くと、母親が病気なので金を借りたのだが、今月の利息を許してやるから付き合えと迫られたのだと言う。

いくら借りたのかと聞くと、久美は5万と答えるが、金丸は、とんでもない。元利合計で9万9千円だと言うではないか。

しかし、それを聞いた六平は、持っていた香典袋をそっくり金丸に渡し、10万入っているから釣りの千円と証文を返せと迫る。

金丸は驚きながらも、証文と千円を渡し、あんたには50万の借金が残っているんだよと言いながら帰って行く。

六平は久美から感謝されるが、今有り金全部金丸に渡したので、この店の支払いが出来なくなった事に気づく。

すると、近づいて来たエリが、ここの勘定くらい私が払うし、千円余っているのなら使っちゃえば?男と言えば、酒、女、ギャンブルでしょう?と言い、六平と久美をルーレットの場所に連れて行く。

六平は訳も分からず、適当な所に千円札を置く。

そしてふと壁を観ると、そこに書かれていた大きなトランプの絵のクイーンの顔(三木のり平-二役)が微笑んで来たではないか。

ルーレットの結果は六平の一人勝ちだった。

久美は喜び、六平が賭けた金は次々に当たり、金額がどんどん増えて行くので、嬉しくなった六平は、着ていた上着を洋服掛けにかける。

すると、同じテーブルで負けが込んで来た男も同じように熱くなり、洋服掛けに上着をかけるが、その上着は六平のものとそっくりだった。

その後も1人勝ちする六平の様子を、近くに座っていた怪し気な中国人がじっと見つめていた。

六平は、又見た壁画のトランプのクイーンが、首を横に振ったので、勝負を止める事にし、チップを全部金にしてカバンに詰めてもらうと、洋服掛けから上着を取って着るが、何だか身体が重く感じる。

外に出ようとした六平と久美に、店の用心棒たちが付いて来て、カバンの金を返せと迫る。

六平は抵抗するが、用心棒の1人がその身体に飛びついて来て、上着の前が広がってしまう。

すると、背広の内側には、拳銃やナイフなど、殺しの道具がびっしり詰まっていたので、それを見た用心棒たちはビビって、カバンを返すと逃げて行く。

六平は、上着を間違えて来た事に気づき、店の中に戻ろうとするが、その店の中から銃声が響き、出て来た中国人が、こっちに来なさいと表に2人を連れ出すと、君は三本木六平君だね?と言い、あまりこんな所には来ない方が良いと忠告して逃がしてくれる。

その後、公園のブランコで、殺される契約をしたと言う六平の話を聞いた久美は驚く。

六平は、このお金も君に上げるよと言い、カバンに詰まった金も渡そうとするが、あなた死ぬ理由がない!ここに、ざっと7〜800万くらいあるじゃないですかと久美は諭す。

でも、僕は脳なしだから…と六平は言うので、今の仕事に向いてないだけよ。このお金で好きな事始めれば良いじゃないと少女は言い、女性に振られたと聞くと、他の人じゃいけないの?例えば、私!久美って呼んで!私、六平さんの事、好き!と言い出したので、すっかり舞い上がった六平はブランコからずり落ちてしまう。

久美はそんな六平の額にキスをして、恥ずかしそうに帰って行く。

希望荘の前に帰って来た六平に、送って来た客3人(島田三郎、宇月一、橋本雅之)に絡まれていたたまみが助けを求めてしがみついて来る。

客たちは六平に喧嘩を売って来るが、六平が上着を拡げて裏地を見せると、底には拳銃や武器がびっしり詰まったままだったので、怖じ気をふるった送り狼たちは逃げて行く。

感激したたまみは、自分の部屋に来ないか?と誘って来るが、御宅の部屋は男子禁制なんでしょう?と六平は断り、入口の所にいた管理人のおばさん(近松良枝)に、部屋代堪ってましたね。三ヶ月分払いますと言い、持って来たカバンの中から金を取りだす。

そのカバンの中に札束がぎっしりつまっているのを見たおばさんは、娘の光子(香山光子)にその事を話す。

保険屋に勤めている光子は、投資信託買ってもらうわと張り切る。

翌朝、寝ていた六平の部屋に勝手に入って来たたまみと管理人親子は、あっけにとられている六平を丁寧に起こしたり顔を拭いてやったり面倒を見る。

朝刊まで渡された六平は、あんまりツキ過ぎるのも考えものだな〜と贅沢な愚痴を言う。

会社に出勤すると、エレベーターガールの久美と出会う。

六平が乗り込むと、夕べ、私が上げたものを覚えている?返して!と言い、ドアを閉めてしまう。

エレベーターは、六平と久美の2人きりを乗せ、しばらく上下する。

他の社員たちがエレベーターの前で待っていると、ドアが開き、久美に手を添えた六平の姿が目撃される。

エレベーターを意気揚々と降りた六平は、課長室の前で、中から聞こえて来る高利貸しの金丸の声に気づく。

どうやら、課長が金丸から借金をして、その返済を迫られて謝っている所のようだったので、勝手に部屋に入り込むと、いくら課長は借りているんだと金丸に聞く。

35000円と聞いた六平は、自分が借金の保証人となっていた50万を、持って来たカバンから取り出し払うと、上着の内ポケットから35000円取り出し、ついでに払ってやる。

そして、買える金丸から自分と課長の分の証文を受け取って、片方を課長に渡す。

課長は恩にきるとすっかり感謝し、今日は急用がありまして…と申し出た六平の願いをあっさり許し、今日はセールスに出た事にしておきますと頭を深く足れ部屋を送り出す。

課長は感激のあまり、泣いていた。

再びエレベータに乗った六平が、久美に今日は休みになった事を知らせると、私も早引けをしようと言い出した久美は、さっき返してもらったものをやっぱり上げるわと言い出し、又、2人きりのエレベーターは勝手に上下を繰り返し始める。

喫茶店にいたユメ子は、付き合っていたあの常連客が村山と言う横領犯だったと新聞に載っていたので、がっかりしていた。

そこに六平がやって来たので、ユメ子は恥も外聞もなくよりを戻そうと近づくが、そこに入って来たのが久美で、六平はその久美とさっさと店を出て行ってしまう。

外に出た久美は、その殺し屋の会社がどこにあるか分からないの?と聞いて来るが、目隠しをされていたので…と六平は答えるしかなかった。

エリさんが知っているかもしれないわ!と気づいた久美は、「クラブ プロディール」にやって来てみるが、店の玄関には「営業停止」の貼紙があった。

困惑した2人が通用口の方へ廻ってみると、そこに見知らぬ男(殿山泰司)が立っており、南条エリさんを知りませんか?と聞くと、ここの社長の大河原権六と一緒に逃げたらしいと言う。

途方に暮れた六平と久美は、近くの建築現場の横を通って帰っていたが、その時、現場のロープに登って遊んでいた子供が降りられなくなりぶら下がって助けを求めていたので、驚いた六平はそれを助けるため足を急がせる。

その途端、今まで2人が歩いていた地面に、建材が落下して来る。

上を見上げると、殺し屋たちが落としたようで、傷害課長がミスした部下たちを叱りつける。

それに気づいた久美が、殺し屋さ〜ん!用があるんです!と呼びかけるが、殺し屋たちは逃げてしまう。

その後、手を繋いで歩いていた六平と久美の背後から一台の車が接近して来て、いきなりスポードを上げると、2人を轢き殺そうとする。

それに気づいた2人は、避けようとして、とある屋敷の鉄門の中に倒れ込んでしまう。

すると、その家の住人らしき外国人女性(リー・スミス)が、大丈夫ですか?と声をかけて来て、自分の車で送ってくれると言い出す。

希望荘まで送ってもらい中に入ると、管理人のおばさんが、光子!大変だよ!敵が2人も現れたよ!と久美と外国人女性の事を見て教えるが、当の六平と久美はそんな管理人を無視して二階の自分の部屋に上がって行く。

慌てて付いて上がった管理人のおばさんが、気を利かして、自分で六平の部屋の鍵を開けドアを開けてやると、ドアの上に誰かが仕掛けたらしい包丁が何本も落下して来る。

それを観た六平と久美は立ちすくんでしまう。

「国際文化クラブ」と称した国際殺し屋大会が催され、大河原社長が日本代表として、世界各国からやって来た殺し屋たちを出迎えていた。

その中に、「香港リリー」と名乗ってやって来たのは、夕べ、六平と久美を車に乗せてくれたあの外国人女性だった。

リリーは、大河原が部下たちに、たった1人の男を殺すのに何時間かかっているんだ!と叱りつけているのを聞きつけ、日本の殺し屋ダメね。4流でしょう。殺し屋は腕です。私なら3日で殺せます。私が成功したらいくらくれます?と発言する。

大河原は100万!と答えるが、リリーは、500万!保険金全部です!と要求する。

この取引を聞いていた他の国の殺し屋たちも乗り気になり、自分も参加させてくれと手を上げる。

そんな殺し屋大会の出席者の中に、あの怪し気な中国人王竜伯(金子信雄)も混じっていた。

大河原と一緒に参加していた莫は、この会話を聞き、そんなの人権蹂躙じゃないか!六平が可哀想だよ!と不満を口にする。

一方、大河原から六平の写真を見せられたリリーも驚いていた。

夕べ、自分が助けてやったあの男だったからだ。

そんな中、莫を部屋の外に呼びだした王は、さっきお前は、六平が可哀想だと言っていたが、あれは本心か?と確認する。

その後、リリーは希望荘の六平を訪ねると、大河原と人物を探していると言う六平に、私の国の新聞社に調べてもらいましたと噓を言い、車で連れ出す。

崖の所へやって来たリリーは、すぐ向うの会員ホテルに大河原がいます…と言い、六平を車の外におびき出す。

そして、あれは何ですか?と海の方を指差しながら六平に尋ね、崖っぷちに立たせると、背中を押そうとするが、その時、近くに停まっていた車のクラクションが聞こえる。

車でクラクションを鳴らしたのは王だった。

しかし、リリーはためらわず六平の背中を押して崖から突き落とす。

車を降りて近づいて来た王は、女流No.1も乱暴ですねと笑いかけ、奴は大丈夫ですよ。下を覗いてごらんなさいと言う。

半信半疑でリリーが崖の下を覗き込むと、大勢の人間が救命シートを張って、落ちて来た六平を見事にキャッチしていた。

その側には莫もおり、残念でした!と嬉しそうに手を振って来る。

王は悔しがるリリーに、競争ですからね〜と笑いかける。

その後、六平に会った王は、何故、六平を助けたのか不思議がる莫と六平に、戦時中、自分は六平のお兄さんに助けられたのだと打ち明ける。

自分は中国軍の捕虜、兄さんは日本の軍医だった。あなたはお兄さんと瓜二つね。その目玉と大きな鼻!と王は言う。

王は、莫と六平を希望荘に送って来ると、六平の部屋の中を観察し、この部屋はどこからでも狙われると案じ、もうわずかな辛抱なんだが…と呟く。

その時、部屋の中でコチコチと音が聞こえたので、王が注意を促し、莫や留守番をしていた久美も部屋の中を探し始める。

目覚ましじゃないか?と机の上の時計を莫が指すが、六平は、これは壊れているんだと言う。

やがて、六平の商売用のカバンの中から時限爆弾が出て来て、後10秒しか時間がないことが分かったので、全員部屋を飛び出して避難するが、商売道具のカバンと言うこともあり、六平だけが部屋の中に戻って来て、その時限爆弾を窓から裏庭に投げ捨てる。

次の瞬間、大爆発が起き、アパートの住人は大騒ぎを始め、警官も駆けつけて来る。

そして、六平の部屋にやって来た警官(玉井謙介)が、お前課!今、爆弾を捨てたのは!と聞いて来る。

側にいた久美は否定しようとするが、何故か玉井謙介は、あっさり自分が捨てました。面白かった。又やろうなどと言い出し、その場で手錠をかけられてしまう。

心配する久美に六平は、大丈夫だよ、一番安全な所に連れて行かれるんだからと言い聞かせる。

警察の留置場に入れられ、毛布の固まりの上に腰を降ろした六平だったが、その固まりは、鉄腕虎(千葉信男)と言う巨漢が寝ていたのだと分かり驚く。

その虎に、監視がおにぎりの差し入れを持って来てやる。

身体が大きいので、署内の食事だけでは足りなかろうと特別に許可してやったものらしい。

早速、大きなおにぎりを食べ始めた虎だったが、物欲しそうにしていた六平にも1つくれる。

六平は、そのお礼に、持っていた「江戸紫」の瓶を出し、2人でおにぎりに付けて食べ始めるが、その内、六平の口の中から紙テープのようなものが出て来たのに気づいた虎は、それを引っ張りだし、そこに書かれていた文面を読むと、親分の一大事にこんな所にいて…と悔しがる。

六平が訳を聞くと、名前を名乗った虎は、自分は殺し屋なのだが、親分が今、ある男の命を取る賭けに参加しており、その手助けをしてやれないと言う。

その男の名を聞くと、三本木六平だと言うので、ここもあんまり安全じゃないな…と六平は肩をすくめる。

その夜、寝ていた六平は、虎から叩き起こされ、自分はこれから脱獄をする。お前一人残して騒がれても困るので一緒に来いと言われたので困惑するが、断っても相手が承知ないので、仕方なく脱獄を手伝う事にする。

自分が踏み台となり、上に乗った虎が、その怪力で窓の鉄格子をねじ曲げてしまう。

かくして2人は脱獄に成功し、虎は六平に、賞金が入ったら一杯おごるぜと声をかけ、途中で別れる。

ところが、大河原社長の元に帰って来た虎は、今別れて来た男こそ、賭けの対象である三本木六平だと知らされ唖然とする。

さらに、そんな目だつお前がここに逃げて来たら俺らまで捕まってしまうじゃないか!お前の為に巻き添えを食うんだ!と大河原が言うので、親分の為に出て来たんですぜと虎は心外そうに反論するが、殺し屋は自分の事だけ考えてりゃ良いんだと言われたので、じゃあ、あっしも自分の事だけ考えましょうと言い残し、部屋を後にしようとする。

そんな虎の後頭部をステッキで殴りつけ気絶させた大河原は、子分たちに地下室に閉じ込めておくように命じる。

うろうろされていたのでは迷惑だったからだ。

猿ぐつわを噛まされ縛られた状態で気づいた虎は、同じ部屋の中に莫も縛られて捕まっているのを発見する。

ヌーベルの莫なんて名前だけは新しいくせに古くさい人情出しやがって…と、社長室で大河原は莫を監禁した理由をエリに説明していた。

エリが、でも六平の居場所が分からないでしょうと言うと、六平の居場所が分かる方法があるぜ。男ってものは好きな女の元に帰って来るもんだと大河原はエリに笑いかける。

その部屋に連れて来られたのは縛られた久美だった。

錆びたのを出しなと大河原が言うので、子分が鎖を渡すと、違うナイフだ!と叱りつける。

その後、大河原は、久美を連れて喫茶店にやって来る。

大河原は、そこにいた六平に、契約を取り消したいのなら保険会社に行きましたと誘う。

その頃、地下室に閉じ込められていた莫の紐をエリが解いてやっていた。

あの人、何だか放っとけないのよと、六平の事をエリは案ずる。

すると、側で縛られていた虎も、俺も力を貸すぜ。もう親分には愛想が尽きた。1晩だけだったけど、あいつが気に入ったんだと言うので、そちらのロープもほどいてやる。

喫茶店にやって来た莫、エリ、虎の3人だったが、ウェイトレスが保険会社に六平は言ったと言うので、急いで自分たちもそこへ向かう。

六平は大河原とその子分にとあるビルの屋上に連れて来られ、そこから飛び降りるんだと迫られていた。

言うことを聞かないとこの娘の命がないぞと、久美の頭に子分が銃を突きつけているのでどうする事も出来なかった。

覚悟を決めた六平は、屋上の淵に上がると飛び降りる。

しかし、本能的に角のポールにしがみついてしまい、とってもダメです。おっこっちゃったら怪我しますから…と言いながら、屋上に戻って来る。

そこへ、莫、エリ、虎の3人が登って来て、久美に拳銃を突きつけていた子分に飛びかかり、虎も子分たちと戦い始める。

エリは久美を縛っていた縄をほどいてやる。

大河原に迫られ、又、六平は飛び降りるが、又這い上がって来て、屋上を逃げ廻る。

六平はビルの窓枠沿いに逃げるが、大河原と2人の子分が執拗に追って来る。

ビルの下には世界中の殺し屋が集まっており、上の様子を見守っていたので、ここで失敗したら恥だぞ!と大河原は子分等に檄を飛ばす。

そして大河原は、拳銃を撃ったので、一瞬、六平は撃たれたかと思い腹を押さえる。

しかし、何でもなかったが、銃弾がベルトを切断していたため、ズボンがずり落ちるので、それを必死に上げながら逃げるしかなかった。

六平が勇気を奮って隣のビルに飛び移って逃げたので、大河原たちも同じように飛び移るが、1人の部下が落下してしまう。

六平も、次のビルの屋上から落ちかけ、必死に途中の階の窓にしがみついて中に入ろうとするが、そこは若い娘の部屋だったので、六平に気づいた娘は、失礼ね!と言いながら窓を閉めてしまう。

それで、六平は指を挟まれ落ちかけ、何とか角の雨樋にしがみつく。

そんな六平目がけて、又、大河原が発砲する。

六平は落下し、大きな時計の長針にしがみつく。

時刻は10時14分だったので、長針は横を向いており、何とか助かったと思った六平だったが、何故かいきなり長針が急速に下を向き始める。

どうやら時計が壊れてしまったらしく、10時半になったら、長針は真下を向いてしまうので捕まっていられない状態になる。

一緒に追って来た子分はそれを指摘するが、それまで待ってられるか!と言うや、大河原はまた発砲する。

そんな中、六平は必死に長針に掴まり続ける。

そんな六平を助けようと、莫と虎は屋上からロープを下ろし、六平に先の輪っかに足を入れるように声をかける。

それを下から見ていたリリーは、拳銃で六平を撃とうとするが、その拳銃を撃ち落としたのは、側に立っていた王だった。

そして、王が合図をすると、ビルの陰に隠れていた警官隊が一斉に姿を現し、道路に揃っていた殺し屋たちを一斉に検挙し始める。

王は、抵抗しようとする殺し屋たちに、武器を捨てろ!と声をかける。

その内、長針は45分の位置へ急速に上がりだし、時計の針は12時になる。

六平は、莫たちが降ろしてくれたロープの先の輪っかに片足を引っかけ、それを虎が怪力で引っ張り上げる。

屋上に引き上げられた六平は、嫌!もう殺し屋は嫌!と喚くが、駆け寄って来た久美が、顔の汗を拭いてくれる。

そこに王がやって来て、全く運が良い人ですねと六平の事を感心する。

王は実は香港特別警察Gメンで、あなたのお陰で世界中の殺し屋を捕まえることができました。もう少しの辛抱ですと言ったでしょう?と笑うと、あなたの事は今回の功労者として世界中の警察に連絡しておきましたと六平に言う。

教会での久美と六平の結婚式には、莫や虎も出席していた。

六平と久美がキスをしようとすると、牧師(三笠謙)が急にストップをかけ、リリーにかかっていた賞金が三本木君に贈られてきましたと報告し、ぜは、接吻をどうぞと促す。

ところが、三笠謙ガキスをしようとすると、又ストップがかかり、カジナリオ警察やラーマ警察、マドロ警察などから賞金が届きましたと(左とん平)が連絡に来る。

こういう事が続き、六平と久美の前には賞品の山が築かれてしまう。

どこまでついてるのかしら!と出席していたエリは呆れる。

牧師が、最後の接吻をどうぞと声をかけるが、賞品の山に隠れて肝心の花婿、花嫁の姿が見えなくなっていた。

莫たちが、その山を崩してみると、その後ろ側には誰もいなかった。

六平と久美は、教会の外に逃げ出していたのだった。

六平は花束の花をちぎりながら、久美と共にどこまでも走って行くのだった。