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白い手 美しい手 呪いの手

怪獣特撮ドラマを得意としていた円谷プロが低予算で作ったTV用怪奇ドラマ。

特撮と言うほどの技術は使われておらず、基本的には、人間の手の付け根部分を巧く隠して撮っているだけのもの。

部分的に、マネキンの手のようなものをピアノ線で引っ張ったりしているのを編集で繋いでいるが、その編集がなかなか巧みなので、そこそこ特撮っぽく見えるのがミソ。

TVドラマだけに、画角が狭いと言うか、俳優のアップが多く、背景部分はあまり写らないように工夫されている。

背景がたくさん写ると、その部分に色々工夫しなければいけなくなり、予算や手間隙がかかるからだろう。

だから、キャスティングも含め、全体的に安っぽく、映画のような深みはないのだが、お茶の間でただで見る分にはまあそこそこ楽しめる出来にはなっている。

見所は、ベテラン山田吾一と岸田森の怯え演技くらいだろうか?

この2人は特に、かつて記者や冷静な科学捜査官役をやっているだけに、全く逆のへたれ演技が興味深い。

生意気で嫌なお嬢さん役を演じている長谷直美も印象に残る。

渥美国泰演じる嫌な部長役や、原良子演じる勝気なママ役も、テレビで見る分にはなかなか巧い。

作られた時代も古いし、今、何かを期待して観るとどうと言うことの内容だし、ホラーとしても特に怖いと云うほどの事もないのだが、当時の2時間ドラマと言うものが何となく分かる作品である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1979年、テレビ朝日+円谷プロ、若槻文三原案+脚本、富本壮吉監督作品。

ショーウィンドーの中に飾ってある青い縞模様のネクタイを観ていたのは白川ユキ子(堀越陽子)といずみ(木村理恵)の姉妹だった。

いずみは、姉のユキ子が目に留めたそのネクタイを、センスあるんじゃないと褒める。

その時、ユキ子が妹のいずみに行く予定のコンサートの時間を確認すると、いけない!と叫んでいずみは1人でコンサートへ出かけて行く。

1人になったユキ子は、今観ていた青いネクタイを手に取って、嬉しそうに購入する。

タイトル

「東亜通商」ビル

食品部で、部下たちにてきぱきと的確な指示を出していたのは、エリート社員の南条真(荻島真一)だった。

そんな南条に電話がかかって来る。

電話の相手はいずみで、姉のユキ子と一緒に昼食を取らないかと言う誘いだったので、南条は会社近くのオープンカフェで姉妹と出会う。

南条の胸元を観たいずみは、先日ショーウィンドーで観た青いネクタイをしていたので、姉のユキ子が買ったのだと気づき、姉を冷やかす。

そんないずみに、どう?ピアノはと聞くと、すっかり自信をなくしたといずみは言い、横に座っていたユキ子が、いずみの3年先輩がイタリアから帰って来てコンサートを開いたんですよと説明する。

それを聞きに言ったいずみは、才能の違いを痛感し自信をなくしたらしかった。

真さん、結婚の事、夕べいずみに話したのと南条にユキ子が打ち明けたので、いずみは、姉を宜しく御願いしますと南条に頼む。

その時、南条に電話がかかって来たと店員が呼びに来たので、南条は席を外す。

いずみはユキ子に、良い奥さんになってねと話しかけるが、何故かユキ子が浮かない顔をしているので、どうしたの?私の事はもう心配しなくても良いのよ。この4年間、学費も出してもらったけど、もう来年卒業だし、母さんの形見のイヤリングで作ったお揃いのヒスイの指輪を付けたら?と勧める。

そこに戻って来た南条が、用事が出来たので、おごってあげる事ができなくなったと詫びて会社に戻ろうとしたので、真さん…と雪子は呼びかけるが、何?と戸惑ったように振り返った南条の顔を観ると、良いんですとそれ以上は何も語らなかった。

帰って行く南条を観ながら相変わらず表情が暗いユキ子に、どうしたの?姉さん…といずみは不思議そうに尋ねる。

(回想)僕に女?何言ってるんだよ。そう情事が終わった直後のベッドに寝ていた南条は服を着るユキ子に問いかけていた。

何となくそんな気がしたの。あなた、私の事、うるさくなって来たんじゃないの?帳簿を操作させた事があるんで別れられなくなったんじゃないかしら?とユキ子が心配そうに聞くと、南条は笑って否定していた。

(回想明け)会計検査が今頃あるなんて!2ヶ月前に終わったばかりじゃないか!会社に戻った南条を呼びだした小田部長(渥美国泰)はそう切り出す。

白川ユキ子に会って来たそうだが、彼女の口から帳簿を操作した事がバレたら、俺も君も背任横領をやっており、このままでは花山社長も産業庁の宮崎も一蓮托生だと小田部長が狼狽していたので、部長は、渡辺専務の直系じゃないんですか?と南条は聞く。

しかし、渡辺専務に何と言うんだ?背任横領をしましたと言うのか!といら立った様子の小田部長が、白川を使って何とかならんかね?付き合っているそうじゃないかと聞いて来たので、別に惚れているから付き合っている訳じゃなく、部長が無理に…と言いかける。

すると、又小田部長は不機嫌そうになり、俺の命令で4年も付き合ったと言うのかね!と皮肉ると、渡辺専務のお嬢さんはどうだ?香さんから相談されたんだよ、良かったら、まとめてやろうか?と南条に持ちかけて来る。

その日、小田部長は愛人のチエ(原良子)を呼び出し、白川ユキ子の事を打ち明ける。

会社の金3億の中から、ハナヤマ食品をトンネルにして、産業庁に5000万流れたんだと聞いたチエは、愉快そうに、あんたもお終いねと答える。

「緑ヶ丘音楽大学寮」でピアノの練習をしていたいずみの元に姉のユキ子から電話があり、今夜うちに来ない?真さんの事で話があるのと言われたので承知する。

一方、その電話を終えたユキ子は、近づいて来た南条から今夜ここに来て欲しいんだと紙切れを手渡される。

和田部長から、その日「ハーレーマンション」に呼びだされていたハナヤマ食品の社長花山(山田吾一)は、こ、殺す!と和田部長の話を聞き悲鳴を上げていた。

背後で同じ話を聞いた産業庁の宮崎(岸田森)は怯えて、持っていたコーヒーカップがガチガチと音を立たせる。

南条もその部屋にいた。

和田部長は、そんな花山にあんたも5000万受け取っているんだ!それ以外に方法があるなら教えてくれ!と引導を渡す。

すると、花山が、そっちの筋もんを知っているので頼もうか?等と言いだしたので、そんな事をしたら一生搾り取られるのが落ちだと和田部長は反対する。

その間、すっかりブルっていた宮崎は、突然、降りると言い出すが、あんただけ降りる事なんてできない事くらい分かってるだろう!と和田は叱りつける。

その頃、ユキ子は、南条から渡された紙に書かれた住所を頼りに、タクシーで麻布のマンションに向かっていた。

俺たちは一蓮托生だ。これまで共同で倒して来た敵もいたし、その中には家族心中して来たものだっているんだ!と和田部長は宮崎と花山社長に迫る。

その時、玄関ブザーが鳴り、ユキ子がやって来たので、代表して南条がドアを開け、ユキ子を中に招き入れる。

ユキ子は、そこに和田部長もいたので戸惑うが、おめでとう、南条君から仲人を頼まれたよと和田部長が笑顔で言って来たので安堵する。

君は早くにご両親を亡くしたんだって?4年も南条君と付き合っていたなんて会社じゃ誰も知らんだろうなどと和田部長はユキ子に話しかける。

その間、ユキ子の背後に経っていた南条は、その日はめていたユキ子からプレゼントされたネクタイを外すと、いきなりユキ子の首を絞め始める。

ユキ子は、側の花瓶を倒しながら床に倒れる。

床に散らばった花の中で、ユキ子は息絶えてしまう。

それを恐ろし気に見守る宮崎と花山社長。

その直後、またもや玄関ブザーが鳴り、どうなの?と言いながらチエが入って来ると、和田部長は、終わった…とだけ答える。

チエが持って来たのは、電動ノコギリだった。

浴室に運び込んだユキ子の遺体を電動ノコギリでバラバラにしようとするが、手伝わせた宮崎は怯えきってしまい全く役に立たない。

仕方がないので、チエが自分で電動ノコギリを回し、宮崎の観ている前でユキ子の遺体を切断して行く。

途中、耐えきれなくなった宮崎が浴室から逃げ出してしまったので、チエは、誰か手伝ってよ!と苛立たしそうに叫び、和田は花山社長を押したので、仕方なく花山が浴室に入る事になる。

その頃、姉のアパートにやって来たいずみは、ブザーを押しても返事がないので、不思議がりながらも、姉から渡されていた合鍵で部屋の中に入り、どこに行っちゃったのかしら?と呟いていた。

浴室で6つに切断したユキ子の遺体は、半径50km以内の場所に埋める事にした…と地図を前に和田が説明を始める。

それ以上遠方に捨てるとなると、その日の彼らのアリバイが作れないからだった。

午前3時までは、和田がチエの店でアリバイを作る事になっていた。

遺体を捨てる場所は、東京、神奈川、千葉と、バラバラになっており、それは例え遺体が発見されたとしてもすぐに自分たちに容疑がかからないようにする為の用心だった。

宮崎に課せられた任務は、丹沢に首を捨てに行く事だった。

山奥に向かった宮崎は、林の中に穴を掘って首を埋める。

胴体を任せられたのは花山で、印旛沼に胴体部分を包んだ布を橋から投げ込んで沈める。

南条は、手足を都内3カ所と奥多摩に遺棄するよう命じられたので、1つめはマンホールの中に捨て、2つ目は工事現場に埋め、3つ目は奥多摩の吊り橋の上から投下するが、遺体を入れて来たトランクの中を確認した所、もう一つあるはずの包みが見当たらなかった。

その頃、チエのやっているバーで計画用の地図を焼いていた和田部長は、南条から電話を受け、3つしか捨てなかったんだが、もう一つ包みがマンションに残っていなかったか?と聞いて来たので、そんなはずはない。確認して早く帰って来い!といら立ったように和田は命じる。

すでに、花山社長は店に来ており、そこに憔悴しきった宮崎も帰って来る。

電話を終えた南条は、もう1度、捨てた包みの事を思い出していたが、どう考えても3つしか捨てておらず、もう一つ包みがどこかにあるはずだった。

花山社長が持って行った包みが大きかったから、きっとその中に紛れ込んだに違いないと南条は自分に言い聞かせていた。

しかし、最後の遺体、ヒスイの指輪をしたユキ子の左手は、殺されたマンションの浴室の湯船の影に落ちており、その指が静かに動き始めていた。

もうダメだ!チエの店にいた宮崎が叫びだす。

和田部長は、今日の9時から午前3時まで、みんなこの店で麻雀をやっていた事にするんだと説明し、チエも、何があってもお互いにアリバイを証明し合うのよと念を押す。

洗面所に駆け込んだ宮崎は、浴室で切断されるユキ子の遺体の幻影が脳裏から消えず、懸命に何も付いてないてから血を洗い流すように手を洗い始めるが、ふと床下に目をやると、ドアの下の隙間から中に入り込もうとしている指を目撃、絶叫しながら店に戻って来る。

店に戻って来ていた南条と花山社長が洗面所に行ってみるが、何も異常は発見できなかったので、首を傾げながら戻って来ると、何を観たんですか?と宮崎に問いかける。

しかし、宮崎は、錯覚だったのかもしれん。否、錯覚だったのだろうと自ら言い聞かし、そそくさと店を出て行ってしまう。

それを見ていた和田部長は、宮崎は危ないな…と危惧する。

帰りの車の中でも、宮崎は、浴室でのユキ子の遺体切断シーンを思い浮かべていた。

その時、フロントガラスに女の左手が貼り付いて来たので、驚愕して車を止めた宮崎は、降りて踏切の方へと逃げ出す。

警報が鳴り、遮断機が降りていたが、女の手から逃れるように線路内に踏み入った宮崎は、線路に頭を乗せしがみついてしまう。

そこに、新宿行きの小田急線が近づいて来る。

産業庁の宮崎課長が鉄道自殺したと言う報道が新聞に載る。

富士見警察署では、塚さんこと大塚刑事(長門裕之)が上司(早川雄三)から、宮崎の遺体を追って火葬場まで行った事に苦情を言われていた。

宮崎が始発電車に撥ねられた時、周囲には誰もいなかったと運転手も言っており、自殺である事は明白だったし、ましてや管轄違いの事故だったからである。

それでも大塚刑事は、あんなに怯えた表情の遺体を観たのは始めてですと、その異常性を強調するが、警察には縄張り…、否、管轄と言うのがあるんだ!と手厳しく小言を食ってしまう。

一応しょげた振りをして自分の机に座った大塚刑事だったが、あの男、一体何に怯えていたんだろう?ただ事じゃない…と呟く。

出かけようと、玄関にやって来た大塚刑事は、受付でもめている女性と遭遇し手分けを聞くと、あなたは刑事さんですね?姉を探して下さい。姉に何があったか調べて下さい!と訴えて来たので、失踪届けを出して下さいと諭そうとする、相手の眼の真剣さに何かを感じ、取りあえずアパートまで同行してみる事にする。

その女性こそ、姉のユキ子がいなくなって警察に着た妹のいずみだった。

ユキ子の部屋の中はきれいに整えられていた。

いずみは、姉はいつもこうなんですと説明し、夕べ来てくれと言うので10時ちょっと前に来ましたが、姉は帰って来ませんでした。真さんの話があると言っていました。姉の婚約者で東西通商の社員ですと話す。

最期の言葉を聞いた大塚は眼を光らせ、鉄道自殺した産業庁の課長も東西通商の連中と麻雀をやっていたと言ってたけど…と思い出す。

いずみは、姉は親代わりになってずっと私の事を世話してくれたんですと頼むので、大塚刑事は、分かった、できるだけの事はしようと約束する。

その頃、印旛沼では、花山が捨てたユキ子の胴体部分の包みが浮かび上がっていた。

その包みを岸の方に推しているのは、ヒスイの指輪をはめたユキ子の左手だった。

胴体部分が発見され、千葉県警に印旛沼遺体切断事件捜査本部が設置される。

警視庁から電話での照会があり、遺体は死後1週間くらい、年齢は25〜30歳くらいの女性。切断には鉈のようなものではなく、電動のこのようなものを使ったようだと千葉県警の刑事は伝える。

遺体安置所にやって来たのは、いずみを連れた大塚刑事だった。

検死官から、遺体の左の乳房のしたに痣のようなものがある。遺体は明日の9時から火葬にすると聞いた大塚刑事は、さすがに観る勇気はないであろういずみの代わりに自分が遺体を確認してみる。

そして、刷毛で履いたような薄い痣があると伝えると、いずみは姉と確信したのか、棺にすがりついて鳴き始める。

その頃、和田部長と「ハーレーマンション」で会っていたチエは、マンションの2階買ったんですって?私の名義にしといてね。もうここには住めないでしょう?あなた、あのバスルーム使える?ここは南条さんに住まわせれば良いじゃないと話していた。

南条君には専務のお嬢さんが熱心でね。明後日の俺の誕生日にやって来るそうだと和田は答える。

南条さんに気づかれるようなことにでもなったら、何もかもおじゃんねとチエは言う。

千葉県警の無人の遺体安置所に置かれていた棺の蓋が開き始める。

開いていたのは、ユキ子の左手だった。

その夜、帰宅途中だった南条に、白川ユキ子さん、知ってるでしょう?と声をかけたのは、同僚の刑事(樋浦勉)を連れた大塚刑事だった。

千葉で胴体見つかったんですと伝えると、南条は驚き、話を聞く場所としてチエの店に連れて来る。

白川ユキ子と婚約していましたね?と大塚が聞くと、南条は、解消しました。男ができたんでね、彼女に…と言うので、それは誰です?と聞くと、そう言うのを調べるのが、あんたたちの商売でしょう?と皮肉で返される。

水曜日の夜はどこにいました?と大塚が事件当夜の事を聞くと、側にいたチエに、ねえママ、ここで麻雀したの、水曜日だったよね?と南条は聞き、チエも、ええ、あの日は、バーテンさんが急病で休みだったし、ペンキの塗り替え作業も残っていたので、店を休んで麻雀をやったんです。メンバーは「東亜通商」の野田部長と南条さん、花山社長と産業庁の宮崎さん…と答え、宮崎さんはあの後すぐ自殺なさって驚きましたと付け加える。

すると、納得したような顔になった大塚は、柱に鼻を近づけ、ペンキを塗り替えたのはここですね?私は人一倍鼻が利くんでね…と笑いながら同僚と店を出て行く。

それを見送った南条は、嫌な奴だな。匂いもしないのに…と顔をしかめる。

そんな南条に、アリバイがしっかりしてるんだから大丈夫よとチエは小声で話しかけて来る。

店を出た同僚刑事は、本部との連絡電話で、千葉県警の遺体が盗まれたと言っているんですがねと驚いたように伝える。

その後、チエは、自分のマンションに帰って来るが、二階なので、エレベーターを使わず階段を登ろうとするが、その時、ふと後ろを観ると、ヒスイの指輪をはめた女の左手が階段を登って来るではないか。

驚いて部屋に飛び込もうとしたチエだったが、扉が閉まらない。

下を見ると、女の手が挟まって中に入ろうとしているのだった。

チエは怯えながらも必死で靴で手を蹴りだして扉を閉め、鍵をかけるが、天井裏からガサゴソ音が聞こえて来る。

その音の方を注目すると、壁の上の通風口を外して女の手が飛び出して来ると、チエの首を絞め始める。

何とかその手を振り払って逃げようとしたチエだったが、その足首を女の手が握りしめて来る。

それも振り払い、部屋の外に飛び出したチエは階段を駆け上ってマンションの屋上に登る。

しかし、そこでも女の手が飛びかかって来て首を絞めて来たので、格闘しているうちにバランスを崩したチエは、屋上から落下し、地上に叩き付けられる。

その足下から、女の手が離れて行く。

南条は、新しく住むようになった「ハーレーマンション」で一人怯えていたが、そこに玄関ブザーが鳴り、やって来たのは和田部長だった。

今夜チエが自殺して、今、警察に呼びだされて来た所だと言う。

自殺なのは間違いなく、1人で飛び降りるのを、向かいのマンションから観ていた人がいたと言うのを聞いた南条は、そう言えば、今夜のニュースで、印旛沼の遺体が盗まれたそうですね。一体、誰が何の為にそんな事をしているんでしょう?誰が事件の事を知っているんじゃ?と怯えるが、和田はそんな南条を落ち着かせ、明日の事は分かってるな?と誕生会の事を念を押す。

翌日、和田部長の屋敷で、盛大な誕生会が開かれ、渡辺専務の娘香(長谷直美)も花を持ってやって来る。

さっそく、南条は和田の指示通り、香のご機嫌を取る為に一緒に庭を散策する。

香は、専務の娘らしく生意気で、今日ここに来ているのは、全部パパの部下じゃないとバカにするので、南条が僕も香さんの部下ってことですか?とへりくだると、あなたは私の愛の僕よなどと言う。

そこに、和田家のお手伝いに案内され、大塚刑事がやって来たので、香はお手伝いを高圧的に叱りつける。

南条が忌々しそうに、うちのOLの事を調べている刑事さんと照会すると、香は、私はこの人のフィアンセなのと自己紹介する。

「シャナール」のママが自殺したのを知ってますか?あの日、麻雀してた人が2人も自殺した。偶然とは思えませんなと大塚が切り出すと、知っていると南条は答える。

白川ユキ子さんの事はどうなんですか?妹の和泉さんがいくらあなたに連絡してもできないと言っています。どうして避けているんですか?夕べ、あれからどこへ?としつこく大塚が聞くので、まっすぐ帰りましたよと南条はいら立ったように答える。

さすがに場違いな所に来たと察したのか、庭先から帰って行く大塚を観ながら、白川ユキ子って誰なの?何故、あなたに聞きに来るの?と聞くが、南条が何も答えない事に不機嫌になった香は、すぐさま1人で帰ろうとする。

それに気づいた和田が南条に近づいて来て、どうしたんだ?行きたまえ!と急かす。

仕方なく、香の後を追って外に出た南条は、香の乗るオープンカーに乗せてもらいドライブに出かける。

そんな2人の様子を、物陰に隠れていた大塚刑事は興味深そうに見送っていた。

大塚はその後、いずみと会うと、今、南条に会って来た。専務の娘と結婚するらしいよと伝える。

それを聞いたいずみは、じゃあ、姉が邪魔になって…と悔しがる。

解剖の結果、盗まれた遺体の死亡時刻は、姉さんが失踪したその日だと大塚は教える。

何かあったんだわ。南条さんが姉さんを殺したのだとしたら、私、絶対に許さない!といずみは泣き出してしまう。

その頃、オープンカーを飛ばす香は、対向車線を迫って来るトラックに怯えている様子の南条を笑いながら、これから別荘に行くと教える。

白川ユキ子の事で何か誤解してるんじゃないですか?と南条が聞くと、怖い?つまらない女と付き合っているとしたら、私を侮辱している事よ。もしそうだったら、このまま車をぶつけてやるわと激しいことを言う。

南条は、香さんとなら本望ですよなどと精一杯のお愛想を言う。

やがて、2人は湖でモーターボートに乗るが、湖の中央付近に来た時、急に、香が操縦していたボートが止まってしまう。

ガソリンは満タンだし、止まる原因が分からなかったので、いら立った香は、南条に早くエンジンを調べてよ!と命令する。

そのボートの近くに、あのヒスイの指輪をはめた女の手が近づいていた。

やがて、ボートがその場で回転を始めたので、香は怯え、ますますいら立って、南条に早く修理するように急かす。

舟底を何かがこするような音がするので、岩をこすってるんだ!と南条が言うと、ここは一番深い所よ!と香は反論する。

南条は、良く分からないながらエンジンをいじっていたが、その時、水中から飛び出して来た女の手が自分の手を握って湖に惹き込もうとしたので、慌てて振り払う。

すると、やがて、エンジンは自然に直り、ボートはまた動き出したので、何とか助手席に戻った南条と香は出発するが、近くの桟橋の支柱に女の手がしがみついている事には気づかなかった。

その頃、寮の部屋でピアノを弾いていたいずみは、いずみ!いずみ!と自分を呼ぶユキ子の声が聞こえたような気がしたので、ガラス戸の方に目をやると、そこに水の中にいるように揺らめく姉ユキ子の姿が浮き上がる。

悔しいの…、悔しいの…とユキ子は言うので、私に何が話したかったの?といずみが聞くと、痛いのよ、身体中が…と自分の身体を抱きしめるようにユキ子の霊は言う。

あれはやっぱり、お姉さんだったのね?印旛沼の…といずみが聞くと、ユキ子の霊は静かに頷く。

一体誰が…、南条?と聞くと、悔しいのよ…と言うだけで、ユキ子の姿は消え去って行く。

その頃、丹沢の山の奥に埋められていた包みが、ユキ子の左手に引きづり出されていた。

その包みは、ユキ子の頭部が入っており、包みをほどきむき出しになったその髪を掴んだ左手は空中を飛んで行く。

林の中を飛ぶユキ子の顔。

その夜、自宅二階の寝室のベッドに入ろうと毛布をめくった花山社長は、そこにユキ子の頭部が置いてあるのを発見、腰を抜かす。

あなた!どうかなさったの?と下から妻が呼びかけて来たので、慌てた花山はドアノブを押さえ、いや!何でもない、今日はしてで寝てくれ。ちょっと調べ物があるんだと声をかけ、二階に上がって来させないようにする。

そして、毛布に包んだ首をベランダから下に落とし、すぐに階段を降りて外に出ると今捨てた首を庭に拾いに行くが、ベランダの下には毛布が落ちているだけで首はなくなっていた。

呆然としながら家に戻り、階段を登りかけた花山だったが、妻が背後から心配して話しかけて来たので仰天してしまう。

取りあえず、妻をなだめ、又二階の寝室に戻って椅子に腰掛けた花山だったが、足下のテーブルの下に首がある事に気づき仰天する。

勇気を奮い立たせ、花山はシーツに包んだ首を階段の方へ引きずって行く事にするが、何ごとかと妻が声をかけて来たので、触るな!と叱りつけた花山は、それを車の後部座席に乗せると車を発車させる。

家に残された妻は、あまりにおかしな行動を取る夫の姿に戸惑い泣き出していた。

花山が車でやって来たのは、ハナヤマ食品第二冷凍倉庫だった。

無人の冷凍倉庫の扉を開き、その中にシーツに包んだ首を引きずって行く花山だったが、扉の開閉スイッチ盤に女の手が張り付いて、スイッチを操作し始めた事には気づかなかった。

突然、背後の扉が閉まったので、驚いて戻った花山だったが、ドアを叩いても叫んでも、無人の夜の倉庫で気づくものは誰もいなかった。

女の手が冷凍倉庫内の温度を急激に下げたので、花山はすぐに踞り、そのまま凍死してしまう。

翌日、冷凍倉庫内で花山の凍死体が見つかり、刑事たちは家から連れて来た妻に身元を確認させる。

その現場に来ていた大塚刑事は、花山の遺体を調べた後、これは事故じゃない!殺しだ!と断言し、現場近くに落ちていたシーツを見つけ首を傾げる。

花山社長が死んだと聞かされた和田部長は驚く。

その日、南条が住む「ハーレーマンション」に大塚刑事がやって来て、今日は会社を休んだんですか?と聞く。

疲れているのでねと南条は答えるが、とうとう殺人事件になりましたね。うちの管轄なんですよと大塚は告げる。

あなたのアリバイに関わる5人のうち、殺されたのが3人、後は野田部長とあんただけになりましたね。今度の事件では指紋が出ましたよ。車と冷凍倉庫からと大塚が告げると、女ですか?と南条は口を滑らせてしまう。

それを聞いた大塚は、指紋に男と女の区別はないんですがね…と苦笑し、その場は帰って行く。

一人残った南条は、それにしても誰が殺したんだ?ひょっとすると、手だ!あの白い手が…と、湖で掴まれた手の事を思い出す。

その時、バスルームの方から何か物音が聞こえて来る。

それは、あの手が蠢いていたのだった。

翌日、出社した南条を呼んだ和田部長は、何故昨日欠勤した?お嬢さんが来て怒ってたぞ。たまにはお嬢さんを誘って飯を食え!と叱りつける。

刑事が昨日来たと南条が言うと、奴等は証拠がなくても揺さぶりをかけて来るんだ。おまえがへまをやれば、俺も破滅だ。専務の娘だけはしくじるな!そんな事になればお終いだぞと和田部長は指示を出す。

富士見署では、指紋が割れた、ホシは白川ユキ子だと大塚が上司に伝えていたが、それを聞いた上司は、違うよ!白川ユキ子は殺されてバラバラにされたんだ。それとも、手が歩き回っているとでも言うのかい?お前さん、気は確かかい?と呆れたようだった。

その頃、南条がすんでいた「ハーレーマンション」のバスルームでは、ユキ子の白い手が、自分の首を引っ張って来ていた。

すでにバスルームには、胴体と手足が全部揃っていた。

一方、いずみは、自分のヒスイの指輪を観ながら、お姉さん…と泣いていた。

ある晩、南条に誘われて2人きりで食事をしていた香は、ヨーロッパに行かない?2人きりでと話し、あなたは一度病院へ行って良く観てもらったら?神経科の先生に診てもらうのよ。あなた変だわ。湖に行った日から…などと一方的に話しかけていたが、そんな香のフォークを動かす手を観ていた南条は、それがあの白い手に見えて来て、思わずフォークで香の右手の甲を突き刺してしまう。

その後、自宅に庭先からふらりとやって来た南条を見かけた和田は、女房は芝居見物だ、入れよと中に上がらせ、会計検査が終わった。何も出て来なかった。白川ユキ子はきちんとしてくれていたんだと教える。

それを聞いた南条は愕然とし、じゃあ、殺す事なかったじゃないですか!みんな殺されたんですよ。ユキ子の手にやられたんですよ。たった今、香さんの手を刺してしまったんです!と南条は告白したので、驚いた和田はバカ!と叱りつけてしまう。

そして、どんな事になっても俺の名前は出すなよと念を押すが、もはや、正気を失ったような南条は、宮崎もチエも殺されたんだ!ユキ子の手に!後はあんたと俺だ。違う!手じゃない!いずみだ!と急に南条は訂正する。

あの妹は何もかも知っているに違いない。ユキ子から何もかも聞いていて、復讐しているんだ…、いずみを何とかしなくちゃ…と独り言のように呟くと、そのままふらふらと出て行ってしまう。

1人残った和田部長の方に、突如白い手がつかみ掛かって来る。

その手をふるい落とし、居間に逃げ込んだ和田は、白い手の幻影に襲われ、床の間に置いてあった日本刀を抜くと、がむしゃらに振り回し始める。

やがて、刀の先が畳に突き刺さり、バランスを失った和田はその横に倒れ込んでしまう。

すると、畳に刺さっていた刀が、倒れ込んだ和田の首に触れ、血が噴き出す。

その死体の側で白い手が蠢いていた。

公衆電話からいずみを呼びだした南条は、姉さんの事で話があるので西麻布にある「ハーレーマンション」の709号室まで来て欲しいと告げる。

承知して電話を切ったいずみは、念のために、前にもらっていた名刺を頼りに富士見署を呼びだすと大塚刑事を呼んでもらおうとするが、出かけていると言う。

仕方なく、1人で南条のマンションに行く事に決めたいずみは、もしかすると殺されるかもしれない。お姉さんと同じように…と考えるが、でも行って全ての真相を暴く!と決意する。

その頃、大塚刑事は、気になって来てみた和田の家の中で、首を日本刀で切断され、血まみれの和田の遺体を発見していた。

いずみは、「ハーレーマンション」709号室に来て、南条に中に招き入れられていた。

姉さん殺した奴、自殺したんですか?と南条が聞いて来たので、生きていますよ、南条さん?あなたが殺したんでしょう?邪魔になったんで…といずみが迫ると、やっぱり、姉さんから何もかも聞いていたんですね?と睨んで来た南条は、手を伸ばしていずみの首を絞め始める。

その時、南条の手首を掴んだのは、あのユキ子の白い手だった。

怯えた南条は、気絶して倒れたいずみを残して浴室の方へと逃げる。

すると、そこに、ユキ子のバラバラになった遺体が全部揃っているのを発見する。

遺体の各部からそれぞれユキ子の霊が起き上がって来て合体する。

そのユキ子の霊が南条の首を締め付けて来る。

その時、気絶したいずみは眼を覚ますが、ふと寝室の方に目をやると、ユキ子の霊がベッドに南条の首を絞めたまま押し付けた形で、足下から消えて行く所だった。

南条は、自分の両手で自分の首を絞めている形で絶命していた。

その胸元には、ユキ子の指にはめられていたヒスイの指輪が残っていた。

そこに、いずみさん!と呼びかけながら大塚刑事がやって来る。

倒れていたいずみの側に大塚が来ると、手が!姉さんの手が!といずみはベッドルームを指差す。

ベッドの上で死んでいた南条の胸元に落ちていたヒスイの指輪を拾い上げた大塚刑事は、この事はね、誰にどう説明したって信じちゃもらえないだろうね。いずみさん、裏切りも復讐ももう終わったんだ。忘れようよ、もう…、ねえ?と話しかける。

思わず泣き出すいずみ。

雨が降りだした中、駆けつけた警察がマンション内の検死をする中、大塚刑事はいずみの肩をそっと抱き、雨降る外へと連れて帰るのだった。