ビクトル・ユーゴーの原作…と言うよりは、有名なミュージカルの映画化作品らしい。
全編、セリフは歌…と言うミュージカル特有の作りになっている為、あらすじを語ることはあまり意味がない。
歌は素晴らしくスケール感もあるが、正直、予算の関係なのか、VFXの質はイマイチな印象で、特に夜景とか暗いシーンになると、平板な絵のように見えてしまう部分がなくもない。
ただ内容も歌も完成している感じで、特に哀れなファンティーヌやエボニーヌらの境遇は涙を誘う。
子役のガブローシュも巧く、特にその死に様は絶品。
だが、宗教観の違いなのか、ラスト近くで、死を間近に控えたバルジャンを迎えにファンティーヌが登場するのは違和感を覚えた。
天国へ導く天使のイメージなのだろうが、観ようによっては死神にも見える。
ファンティーヌにとってのバルジャンは、娘コゼットを立派に育ててくれた恩人としての感謝の気持ちがあると同時に、自分を死に追いやった間接的な加害者でもあることへの恨みもあるのではないかと想像するからだ。
天使か悪魔か?
古典的なマンガ表現のようにも見え、物語中、最もシリアスな場面なのに、何故か笑いたくなって来てしまった。
とは言え、ミュージカルに限らず、歌がある映画は良いものだと改めて再認識させられた。
それくらい、歌の力って強いのだ。
ミュージカルが流行らないと言われた日本で、この作品が珍しく当たったことを素直に喜びたい。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼ |
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2012年、イギリス映画、ヴィクトル・ユーゴー原作、クロード=ミシェル・シェーンベルク+アラン・ブーブリル+ハーバート・クレッツマー+ウィリアム・ニコルソン脚本、トム・フーパー監督作品。 1815年 海中からカメラが海上に浮き上がると、嵐の中、巨大な難破船が港に引き上げられている。 多くの囚人たちが、その舟を綱で引っ張り上げていた。 ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、たった1つのパンを盗んだだけで、20年も刑に服していた男だった。 囚人たちが舟を引き上げ、疲れきって牢へ戻ろうとしている中、1人の看守ジャベール(ラッセル・クロウ)が、囚人番号24601号ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)1人を呼び止め、旗を取って来いと命じる。 ジャン・バルジャンは、黙って戻ると、水に濡れ重くなった巨大な国旗の付いた折れたマストを、たった1人で担ぎ上げ、歯を食いしばってジャベールの元まで持って来る。 ジャベールは自分の名前を相手に告げると、仮釈放になったと教える。 ただし、どこへ行っても彼が危険人物であることが証明書に書いてあると言う。 仮釈放されたジャン・バルジャンは、雪山を越え、新しい町へ向かうと仕事を探しまわるが、仮釈放書に書かれた要危険人物の文字を見た人々で彼を雇い入れる者はなかった。 仕事にありつけず、空腹を抱えたまま、とある教会の外で寝ていた彼に声をかけたのは、牧師だった。 牧師は、ジャン・バルジャンに食事と一晩の暖かい寝床を提供してくれたが、その夜、ジャン・バルジャンは、教会の銀食器などを盗んで逃亡する。 翌日、警官に連れられて教会に戻って来たジャン・バルジャン。 警官は、ジャン・バルジャンが持っていた銀食器を、もらった物だと言っていますが?と牧師に伝えるが、それを聞いた牧師は、その通りですと答えただけではなく、これもやろうと思っていたと言いながら、銀の燭台まで差し出して来る。 この牧師の好意に打たれたジャン・バルジャンは、今までの人を信じられず、悪に染まりきった自分を反省し、神に懺悔すると、自らのそれまでの卑しい考え方を変えることにする。 そして、身分証明書そのものを破り捨てたジャン・バルジャンは、その町を出て行く。 1820年 モントルイユ 貧しい民衆が世の不満を歌う中、新しく、町の警察署長に赴任して来たジャベールが馬に乗ってやって来る。 そんな町中の縫製工場では、朝から晩まで女工たちが過酷な労働に堪えていた。 労働条件に文句を言おう物なら、直ちに職を失い、食べることが出来なかったのである。 そんな中、女工の1人ファンティーヌ(アン・ハサウェイ)は、その美貌故に、工場長から良く話しかけられていた。 それを妬む他の女工たち。 ファンティーヌが工場長の言いなりになっていたのは、病気の娘の薬代欲しさの為だった。 娘は今、宿屋の主人に預けていた。 そんな工場に、工場主で市長が視察にやって来る。 何と、その市長と言うのは、身分を隠して別人に成り済ましていたジャン・バルジャンその人だった。 ジャン・バルジャンは、着任の挨拶に来たジャベールの姿を見かけ、内心怯えていた。 ファンティーヌ、娘の為に、少し金を欲しいと工場長に渡さそうと持っていた手紙を、嫉妬した他の女工に奪われ、もみ合いの喧嘩になる。 主任は、ファンティーヌに首を言い渡したので、ファンティーヌはその場にいた工場長で市長のジャン・バルジャンに、自分には病気の娘があるので、解雇は勘弁して欲しいと懇願するが、詳しい叙情を知らないジャン・バルジャンは、主任の現場判断に抗議すること理由はなかった。 市長としてのジャン・バルジャンに、挨拶をしに来たジャベールは、かつての囚人の面影を思い出し、どこかでお会いしたことがあるような?と話しかけるが、バルジャンは否定する。 しかし、工場を出たバルジャンは、壊れた荷車の下敷きになっていた老人を発見、自ら怪力で荷車を持ち上げ、その老人を救出するが、その一部始終を目撃したジャベールは、市長らしからぬその怪力に、昔逃げた囚人の姿を重ね、以後、この市長に疑いの目を向けるようになる。 一方、工場を首になったファンティーヌは、金を得る為に街娼になるしかなかった。 夜の裏町にやって来たファンティーヌは、すぐさま金を欲しがっていた彼女に、髪を売れば金になるとか、歯を売れば…と囁きかけ、彼女の長い髪を切り、歯を抜いてしまう。 街娼に成り果てたファンティーヌは、次第に身体も弱って行くが、客を取らないと、娘の為の金が得られない。 あまりにもみじめな境遇に陥ったファンティーヌは「夢破れても」を歌う。 ある夜、淫売の検挙をしにジャベールがやって来たので、ファンティーヌは病気の娘がいるので、逮捕だけは勘弁して欲しいと頼むが、ジャベールは聞かなかった。 その時、ジャン・バルジャンもやって来て、私は彼女を信じる!とファンティーヌをかばうと、どうしてこんな身分になったのだ?と尋ねる。 すると、ファンティーヌは、あなたのお陰で、工場を解雇されたからじゃないの!と言うと、バルジャンの顔につばを吐きかける。 バルジャンは、驚くと共に、ファンティーヌが病に冒されていると気づくと、病院まで抱えて行ってやる。 付き添ったジャン・バルジャンは、娘は必ず連れて来てやると約束するが、衰弱しきったファンティーヌの寿命は尽きかけていた。 そこにやって来たジャベールは、失礼ながら、市長を逃亡者ではないかと疑い、確認するためパリに照会していたが、その返事によると、その逃亡者は捕まったそうです。無礼をお許し下さいと謝罪する。 ジャン・バルジャンは、君は役目を果たしただけだと慰め、特に叱ることもなく帰すが、その後で、その身替わりが捕まったと言うことは自分に取ってチャンスではないかと自問し始める。 正直に自分が名乗り出れば、せっかく今の身分を勝ち得ていた苦労が水泡に帰すことは分かっていた。 しかも、自分が今捕まれば、工場で働いている大勢の従業員たちが路頭に迷うことになる。 だが黙っていたら、無実の罪の男を死刑にすることになる。 迷ったジャン・バルジャンは髪に問う、私は誰だと! そして、無実の男が裁かれようとしていた裁判所でに出頭したジャン・バルジャンは、自分こそジャン・バルジャン本人だと告白する。 入院したファンティーヌは、意識を失いかけ、会えない娘コゼットの夢を見ていた。 そんなファンティーヌに一時的に会いに来たジャン・バルジャンは、娘さんは私が探して守ろうと約束する。 お願い!愛していると伝えて…と、娘をジャン・バルジャンに託したファンティーヌは息絶える。 そこに、ジャベールがやって来て、又、鎖につながれるんだ!と言い渡すが、彼女の娘を守る約束をしたので、その子を探す3日間だけ猶予をくれと言いながら、ジャン・バルジャンは窓から病院の横を流れていた川に飛び込む。 ファンティーヌの娘コゼットは、客に無理矢理酒を飲ませ、泥酔した客の財布を盗んだり、客を騙して悪どい商売をしていた宿屋夫婦の小間使いのような生活を送っていた。 まだ小さいのに部屋の掃除をさせられ、他の子供のように遊ぶことさえ許されなかった。 一方、コゼットと同じ年頃の宿屋夫婦の実の娘エボニーヌは、当然ながら過保護気味に甘やかされて育てられていた。 その日、コゼットは、暗くなってから、森の中にある井戸からの水汲みを女将に命じられ怯えていた。 しかし、怖いと云っても聞き入れてもらえず、宿から追い出されるように、バケツを持って1人森へと向かうしかなかった。 暗い森の中で、周囲の闇に怯えながら水を汲んでいたコゼットは、1人の見知らぬ中年男から声をかけられたので身をすくめる。 その男こそ、コゼットを探し求めていたジャン・バルジャンで、コゼットの名前を確認すると、コゼットが持っていた重たいバケツを持ってやり、一緒に宿まで戻って来ると、主人と女将に、コゼットを引き取りたいので、欲しい金はいくらでも出すと申し出る。 夫婦は、欲深く、この子は病気がちで、薬代も高くついたので…などと言い、バルジャンから高額の金を受け取る。 バルジャンがコゼッットを連れ、宿を出て行った直後、馬に乗ったジャベールがやって来て、コゼットはいるかと聞く。 宿の主人と女将は、今、見知らぬ男が連れて行ったと教え、ジャベールが去ると、あいつからもっとふんだくっておけば良かったと相談しあうのだった。 その頃、早くもすっかり自分に身をゆだね、無邪気に寝入ってしまったコゼットを観ながら、ジャン・バルジャンは、これまで経験がなかった幸福感に浸るようになる。 パリの北門までやって来たジャン・バルジャンは、すでにジャベールが検問を敷いたことに気づき、コゼットを隠すと回廊の中に逃げ込む。 しかし、ジャベールは、その建物の中にまで執拗に追って来る。 塀をよじ上ったジャン・バルジャンは、とある教会に逃げ込む。 そこにいた老人に助けてくれ!頼むと訴えると、市長さん!とバルジャンに呼びかけたのは、工場の前で荷車の下敷きになっていた所をバルジャンに助けられた老人フォーンショだった。 あなたは命の恩人だとバルジャンを向かえたその老人に助けられたバルジャンは、またもや、神に助けられたと感じ、今後はコゼットとの暮らしを大切にしようと誓うのだった。 一方、バルジャンに逃げられたジャベールは、必ず捕まえてみせると心に誓っていた。彼は自分のしていることが正しい道だと信じていたからだ。 1832年 象を模した巨大な作り物の中から出て来た貧民窟育ちの子供ガブローシュは、現状に不満を募らせ、革命の歌を歌っていた大学生ら若者ら共鳴していた。 そんな血気盛んな大学生の1人マリウス(エディ・レッドメイン)は、裕福な育ちにも関わらず、革命を画策する仲間に参加していた。 そんなマリウスに心惹かれていたのは、成長した宿屋の娘エボニーヌ(サマンサ・バークス)であった。 しかし、そんなエボニーヌの気持ちに気づいていなかったマリウスは、町で、ジャン・バルジャンと歩いていた成長したコゼット(アマンダ・サイフリッド)を見かけ、たちまち恋に落ちてしまう。 一方、コゼットとジャン・バルジャンに物乞いをして、コゼットの顔を思い出したのは、今やすっかり落ちぶれていた宿屋夫婦だった。 2人は側にいたジャバールに近づくと、今の紳士は何故姿を消した?と慌てて逃げ出したバルジャンのことを告げ口し、奴と一緒にいた娘は、奴にさらわれた私たちの娘だと噓を付く。 コゼットに気づいた者がもう一人いた。幼い頃、一緒に育ったエボニーヌだった。 エボニーヌは、片想いの相手マリウスが、今やコゼットに夢中になってしまったことに気づくと、マリウスを喜ばせたい一心で、コゼットのことを知っていると打ち明ける。 すると、喜んだマリウスは、すぐにコゼットの住まいを探してくれと頼む。 エボニーヌは自らの複雑な気持ちを抑え、コゼットを探し始める。 マリウスは、革命を叫ぶ仲間アンジョルラス(アーロン・トゥヴェイト)たちと共に酒を飲み、歌を歌う。 そこに、将軍が死んだとの知らせが届く。 いよいよ時は来た!と彼らは雄叫びを上げる。 そこにエボニーヌがコゼットの家を見つけた事を知らせにやって来るが、マリウスがすっかりコゼットに夢中な事を知ると落ち込む。 一方、とある屋敷住まいをしていたコゼットは、いつまでも自分を大人と認めてくれないバルジャンに抵抗を覚えていた。 父と信じるバルジャンが、自分の過去のことを一切口にしないことも寂しく感じていた。 屋敷の外に出たコゼットだったが、そこに、エボニーヌに案内されてマリウスがやって来る。 マリウスはエボニーヌに感謝するが、言われたエボニーヌは哀しかった。 門の外から中庭を観たマリウスは、そこにあのコゼットが立っていることに気づくと、マドモアゼル!と呼び掛け、自分の名を名乗る。 コゼットも、自分の名を名乗る。 2人の会話を近くで観ていたエボニーヌは、自分は身を引くしかないのだと悟るのだった。 その時、家の中からバルジャンがコゼットを呼んだので、マリウスとコゼットの逢瀬は短かった。 エボニーヌの側に近づいて来たのは、父である元宿屋の主人だった。 ここにあの爺さんと娘がいるんだな?と宿屋の主人は聞くが、エボニーヌは悲鳴を上げるわよと抵抗する。 すると、宿屋の主人は反抗的なエボニーヌにビンタをするのだった。 外の気配に気づいたバルジャンは、とうとうここも気づかれたかと焦り、コゼットにまた暮らしを帰るため、引っ越しの仕度をするように急かすのだった。 コゼットは、又急に引っ越すことに驚きながらも、先ほど会ったマリウスに知らせようと、密かに書いた手紙を門の所へ挟んでおく。 しかし、その手紙を取り、中を読んだのは、まだその場に残っていたエボニーヌだった。 エボニーヌは、その手紙を胸に、雨の中、ずぶぬれになりながら、マリウスの心に自分がいない不幸を歌うのだった。 一方、ジャン・バルジャンは、又1日、何とか生き延びたことに安堵していた。 マリウスは、コゼットに愛にまた門の所にやって来るが、コゼットは屋敷の中で、又自分は遠くへ行き、独りぽっちと哀し気に歌っていた。 コゼット、マリウス、エボニーヌの3人の哀し気な歌が重なる。 マリウスは、コゼットへの想いに惹かれながらも、仲間たちと革命に参加することを決意する。 その頃、学生たちの不穏な動きに気づいていたジャベールは、虎視眈々とその阻止に向け待ち受けていた。 翌日、王の行進が町中にやって来る。 それを見守る群衆の中には、革命を狙う学生たちとエボニーヌやガブローシュらが潜んでいた。 彼ら学生は、自分たちが蜂起すれば、民衆も味方すると信じていたのだった。 そんな群衆の中に、一般人に扮したジャベールも混じっていた。 王の馬車が間近に迫った時、革命の歌を歌い出した学生たちが飛び出し、アンジョルラスらが馬車の上に飛び乗ると、マリウスも赤旗を振りながら、共に戦おう!と民衆に呼びかける。 マリウスも飛び出し、旗を振ると、今こそ奮起のとき!と呼びかける。 すぐさま、護衛の騎馬兵たちが接近して来たので、馬車の上に乗っていたマリウスたちは銃を出して応戦しようとする。 兵隊が発砲し、一般の女性が撃たれる。 それをきっかけに、銃撃戦が始まり、ジャベールは、近くにいた護衛兵と戦ってみせると、若者らに味方であるように見せかける。 そして、敵の作戦を偵察に行く役を自ら買って出る。 学生たちは、近くの民家から家具類を持ち出すと、通りにバリケードを気づいて籠城する。 その夜、バリケードに戻って来たジャベールは、相手は大軍であり、かなり危ない。作戦を盗み聞いたが、今夜はやって来ない!と学生たちに報告する。 ところが、そんなジャベールに、嘘つき!今晩は!警部殿と呼びかけたのは、いつも追いかけられていたガブローシュだった。 その言葉で、ジャベールの正体を知った学生たちは、その場でジャベールを縛り上げ、側の居酒屋の中に監禁することにする。 ジャベールは、こんなことは子供の遊び、反逆者には死だ!と言いながら抵抗する。 その直後、近づいて来る兵隊の足音が聞こえると、付近の民家は皆窓を固く閉ざしてしまう。 民衆は、誰1人、学生に加担しようとはしなかった。 マリウスは、革命の失敗を知り、自らの死を覚悟する。 兵隊たちは容赦なく銃撃を続け、バリケードの一部は大きく崩れる。 そうした中、エボニーヌは瓦解した家具の下敷きになっていた。 虫の息のエボニーヌは、近づいたマリウスに、隠し持っていたコゼットからの手紙を差し出し、今まで隠していたことを詫びる。 雨に濡れながら、今こそマリウスの側にいれる幸せに包まれながら、エボニーヌは息を引き取る。 エボニーヌの自分への愛を知ったマリウスは、死んだエボニーヌの額にキスをしてやる。 そして、マリウスは、ガブローシュを呼び寄せると、ジャン・バルジャンへの手紙を託す。 そこには、コゼットへの愛と今の窮地、死ぬのは嫌だろ言う後悔の気持ちが書かれてあった。 ガブローシュからその手紙を受け取ったバルジャンは、この若者を捜さなければ!と決意する。 すぐさま、学生が籠城しているバリケードの通りにやって来たバルジャンは、学生たちが、死体から奪った兵隊の服を着ていることに気づく。 撃つな!味方だ!と呼びかけながら、学生たちに合流したバルジャンは、スパイのジャベールが捕まっている事を知ると、自分に処刑させてくれと頼み、ガブローシュが銃を手渡す。 納屋の中に縛られたジャベールを連れ込んだバルジャンは、復讐しろ!さあ、殺せ!逃がせば、又お前を捕まえるぞ!とけしかけるジャベールを逃がすと、もし俺が生きていたら、マラルメ通り5番地へ来い!と告げ、空中に向けて発砲してみせる。 マリウスたち学生は、全員死を覚悟し、酒の回し飲みをしていた。 そんなマリウスの様子を観ていたバルジャンは、彼はまるで我が子のようだ、神よ、彼を家に帰したまえと祈っていた。 学生たちが用意していた火薬は、雨に濡れて役に立たなくなっていた。 そんな中、ガブローシュが、バリケードの外で死んでいる兵隊の弾を取ってくれば良いと言い出し、学生たちが止めるのも聞かず、バリケードから出て行く。 すぐさま、兵隊が発砲して来るが、最初の一発は外れる。 バリケードの中の学生たちは戻れ!と呼びかけるが、おそれを知らないガブローシュはさらに弾の収集を続けようとする。 その時、さらに兵隊が撃って来て、ガブローシュはその場に倒れ息を引き取る。 何とか、バリケードの中に、その死体を引き寄せたバルジャンは、幼いガブローシュの死体を抱きしめ嘆く。 兵隊たちは大砲を前面に出すと、とどめを刺しに来る。 アンジョルラスが警戒を呼びかけるが、大砲が撃たれ、兵隊たちが前進を開始する。 次々に学生たちが撃たれる中、マリウスも撃たれ倒れる。 それを観たバルジャンは、気絶したマリウスの身体を肩に背負い、その場を脱出する。 その直後、学生たちは全員射殺されていた。 ジャベールは、学生たちの血で染まった道にやって来ると、ジャン・バルジャンの死体を探す。 死んだ学生の身体が路上に並べられていたが、バルジャンの死体はなかった。 幼いガブローシュの死体を目の当たりにしたジャベールは、さすがに気が引けたのか、自分の胸についていた勲章を外し、ガブローシュの死体の胸に付けてやる。 その後、ジャベールは、バルジャンの姿を求め、近隣を必死に探し始める。 マリウスの身体を背負ったバルジャンは、排水溝の中に潜んでいたが、そのすぐ外にジャベールがやって来ると、中を覗かれて気づかれないように、自ら突っ張っていた手を離し、下水の中に落下して行く。 下水の中に落ちたマリウスの指から、指輪を抜き取ったのは、物乞いになっていたエボニーヌの父で元宿屋の主人だった。 その時、水中で気絶していたバルジャンが目覚めたので、死体だと思っていた主人は腰を抜かす。 バルジャンは、再びマリウスの身体を背負うと、下水からの脱出口を探すが、その前に立ちふさがったのはジャベールだった。 やはり、下水が怪しいと、先に張っていたのだった。 バルジャンは、この男は無実だ。病院へ連れて行くまで1時間待て!と声をかけるが、俺に慈悲を見せた男が今度は慈悲を乞うのか?とジャベールは嘲り、今度は撃つ!と銃を向けながら警告する。 しかし、その直後、ジャベールはその銃を下水の中に投じてしまう。 バルジャンはそんなジャベールをその場に残し、黙って下水から外に出て行く。 1人残ったジャベールは、自分が今までして来たことへの疑問を歌い始める。 下水から出て、橋の上に上がったジャベールは、最後の最後まで自分を問いつめ、そのあげく、橋から真っ逆さまに身を投ずるのだった。 マリウスは、いつしか病院で気づき、仲間たちが全員死んでしまった中、何故か、自分1人が生き残ったことを知ると、落ち込んでいた。 自分が何故助かったのかも分からなかった。 マリウスは孤独になった自分に絶望し、泣き出す。 しかし、彼には今、コゼットがいた。 コゼットは、日ごとに開腹して、徐々に過去のことは忘れているマリウスのことをバルジャンに報告する。 それを聞いたバルジャンは喜んでいた。 コゼットの愛が実りそうだったからだ。 バルジャンは、マリウスとコゼットの結婚を認める。 ある日、結婚を許してくれた感謝しにやって来たマリウスに、バルジャンは伝えておきたいことがあると言うと、昔、自分は、妹の子供に与える為、パンを1つ盗んだ罪で19年間も牢に入っていた。その後、仮釈放されたが、許可証を破いて逃げた。自分が捕まればコゼットは1人になる。その娘が君と言う伴侶を向かえた今日限り、自分は姿を消すと打ち明ける。 話を聞いたマリウスは衝撃を受けながらも、決して、あなたの過去のことはコゼットには言わないと約束する。 それに感謝したバルジャンは、会えば別れがつらくなるので、コゼットにはこのまま会わずに消えると言い、馬車に乗って旅立ってしまう。 後から、これまで父親として育ててくれたバルジャンがいなくなったことを知ったコゼットは嘆く。 そんなコゼットに、マリウスは夫として慰めるのだった。 やがて、マリウスとコゼットの結婚式が盛大に執り行われる。 その結婚式に、貴族を装い紛れ込んでいたのは、あの元宿屋の主人と女将夫婦だった。 元主人はマリウスに近づくと、500フランを出せば、良いことを教えてやる。 俺は、コゼットの父親だと名乗っていたジャン・バルジャンの居場所を知っている。 革命が失敗した日、ジャン・バルジャンは肩に男の死骸を担いで逃げ出したのを目撃した。 これがその死体が付けていた指輪だと出してみせるが、それを見たマリウスは、僕のだ!と驚く。 何と言う巡り合わせ!僕を救ってくれたのはジャンだったのか!と気づくと、金をせびる宿主を殴りつけ、今、バルジャンがいる場所はどこだ!と元主人に詰め寄る。 元主人は、修道院さ…と渋々教える。 元宿屋の主人と女将は、結婚式からつまみ出されてしまう。 その頃、1人、修道院に籠っていたジャン・バルジャンは、年老いて、死が間近に迫っている自分を哀れんでいた。 夢の中で、コゼットが泣いていた。 今こそ召したまえ、あなたのお側へ…と、バルジャンは神に祈っていた。 そんなバルジャンの元にマリウスと共に駆けつけて来たコゼットは嘆く。 何故、私の元を去ったの?バルジャンの過去の事を知らないコゼットは問いかける。 マリウスも、自分の命を救ってくれた礼を言う。 パパ、生きて!とコゼットは励ます。 バルジャンは、私が死んだ後、憎しみに満ちた自分が愛を知った物語、私の最後の告白をお読みとコゼットに告げる。 そんなバルジャンの側には、天国からファンティーヌが迎えに来ていた。 さあ、この手を取って!とコゼットは呼びかけるが、ジャン・バルジャンは、迎えに来たファンティーヌと共に、その場を歩み去って行く。 忘れないで…、かつて語れた真実… 若者たちの歌が聞こえるか? コゼットマリウスは、死んだバルジャンを前にしてしっかり抱き合う。 革命の歌が聞こえて来る。 巨大なバリケードを築いた学生たちが、大勢の民衆と共に革命の歌を歌っていた。 ファンティーヌも歌っていた。 明日は来る! |
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