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眠狂四郎卍斬り

市川雷蔵亡き後、松方弘樹主演で作られた新しい「眠狂四郎」シリーズの1本。

話の冒頭、ひな人形を盗み出すエピソード部分は、鶴田浩二主演版「眠狂四郎無頼控」(1956)と同じである。

その後は、旅に出た狂四郎に色仕掛けで近づいて来る刺客たちとの戦いと言ういつものパターン。

松方弘樹の狂四郎も特に悪くはないが、もう大映倒産間近の時期に作られただけに、予算をかけられなかったのか、ゲスト陣は当時新人だった田村正和と松岡きっこ、さらには中谷一郎、加藤嘉、内田朝雄、伊達三郎…と、それなりに脇役陣も揃っているものの、ロケもセットも小規模で、特にセットの類いはきちんとしたものが作れなかったのか、照明の闇ででごまかしているようにしか見えないのが惜しい。

全盛期の大映だったら、主役の交代にふさわしい大物ゲストや、もっと大掛かりな見せ場を作ったのではないかと思う。

狂四郎の出生の秘密を冒頭の回想部で描き、酔狂を好む世捨て人風のキャラクター紹介、狂四郎が女に情をかけぬ謂れ、バテレンを憎む所など、新シリーズとしての最低限の解説を交えながら、次々に襲いかかる薩摩の隠密たちとの戦いも描いて行くと言ったアイデアはそれなりに工夫が感じられるが、如何せん、全体的に地味な演出ばかりなので、作品全体も今一つ弾まないものになっている。

それでも、興味深いのは、TVで狂四郎役を演じた田村正和が登場し、狂四郎と同じく、異人の血を引く子としてライバル関係の役を演じていること。

互いに相手を意識しあい、互いに惹かれあう存在として描かれている。

これまでにも、田村正和は時代劇に出ているが、この作品での姿形はなかなか美しい。

次の狂四郎役に抜擢されたのも頷ける。

ひょっとしたら、原作者である柴田錬三郎氏、この作品での正和さんを見て、TV版の主役に推薦したのかもしれないなどと想像したりもする。

松方弘樹にとっては、大映の悪い時期に引き受けてしまった不運な仕事であり、特に彼の狂四郎像が悪い訳ではないので、シリーズそのものも、もう少し継続して欲しかった気がする。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1969年、大映、柴田錬三郎原作、依田義賢脚本、池広一夫監督作品。

暗闇の中、数本の蝋燭の明かりの中に浮かぶ裸身の女…

部屋の中には、不気味な絵が飾ってあり、宣教師のような男が呪文を唱えている。

やがて、宣教師は、グラスから血に見える液体を裸の女の首筋辺りに垂らす。

白い着物を着た女は、側に寝ていた赤ん坊に目をやり、その直後、懐剣を取り出すと自らの胸に突き出す。

その途端、寝ていた赤ん坊が泣き出す。

橋の袂に踞っていた物乞い女(小柳圭子)が抱いていた赤ん坊が泣き出したので、そこに近づいた眠狂四郎(松方弘樹)は、お前の子か?望まれずしてこの世に生を受けた子のように見える…と話しかける。

ヤクザな男に騙され、散々貢がされたあげく、捨てられました…。この子はその後に生まれたのでございますと女は言う。

生まれた子に罪はない。お前がなさねばならぬことは、その子を俺のような男に育てぬことに努めることだ…と言った狂四郎は、小判を数枚投げ与えて、驚く物乞いを尻目に、1人、夜の橋を渡って行く。

タイトル

狂四郎は、暗闇の中、駕篭から縛られた裸の女が転げ出して騒いでいる現場に行き当たる。

白覆面姿の男たちが護衛をしており、狂四郎が近づくと威嚇して来たので、斬られたくない覚悟あるか?と剣を抜いた狂四郎は円月殺法で覆面たちを斬り捨てる。

覆面たちが逃げた後、閉まっていた駕篭の扉を開けた狂四郎は、中で怯えていた裸の女に、どこに送り届ければ良いのだ?と聞く。

女は、元のお屋敷に送り届けて下さいませと頼む。

屋敷まで送り届けた狂四郎に、青い腰巻き姿の女は、ご案内いたしますと言いながら、床が敷かれた寝室へと誘う。

野暮なことを聞くようだが、俺にどうしろと?と狂四郎が聞くと、女は、私をご自由になさいませと答え、布団の中に潜り込む。

掛け布団を剥ぎ、女の身体に触れた狂四郎、この震えよう、生娘の証拠だが、何故、この無頼の男に身をさらすのか?言えんのか?それとも、言ってはならぬと言われているのか?と聞きながら、身を重ねる。

下に寝ていた女は、手足を狂四郎の手足に羽交い締めのように絡み付かせて来た瞬間、ふすまが開いて、槍や刀を手にした侍が部屋に乱入し、眠り狂四郎!この危機、良く逃れてみせるか!と言いざま、槍を突き出して来る。

狂四郎は、女を身体に絡み付かせたまま、布団から前方に飛び出すと、空中で回転して刀を抜き女を斬る。

立ち上がった狂四郎は、お手前方の役割は終わった。女を連れて舞台を下がってもらおうと侍たちに言う。

すると、侍たちはすぐさま引き下がり、1人の老侍が部屋に入って来る。

某は岸和田藩江戸留守居役…と説明し始めた家老内藤主水(永田靖)に、ご老人!お断りしておくが、俺は一藩の浮沈に関わる一大事などと言う泣き言なら一切耳を貸さんことにしている。また主君を守らんとする忠義心を汲んでくれと言われても興味が湧かん男だ…と狂四郎はいきなり釘を刺す。

暴挙の段、お憤りはもっともながら…と内藤が詫びようとすると、否、俺を誘う趣向の面白さ、礼を言わせて頂こう。だが、ご依頼の儀がいかなることであれ、引き受けるかどうかは勝手にすると狂四郎は言うので、お願いでござる!女を1人犯して頂きたいと内藤は頭を下げる。

当藩の高輪の上屋敷に、将軍家より拝領のひな道具一式があるのでござるが、その守役として昨年上がりましたる理江と申す娘、たちまち殿のお気に入り、この女中の申すことならいかなこともお聞き遊ばすほどの盲愛振り、我らの手ではいかようにも始末の付けようがございません…と内藤が言うので、好き者のバカ殿が女中を抱く…何も騒ぐほどのこともあるまい…と狂四郎は興ざめするが、それが…、その女中、薩摩藩より差し向けられた間者と知れましたのじゃ。直ちに殿のお耳に入れ、お諌め申し上げましたが、何としてもお信じあそばされませんと内藤は訴える。

それで俺に女を犯させて、不義者として成敗すると言う筋書きか…と得心した様子の狂四郎に、ご推察の通りでござると感服する内藤。

世評では、薩摩の島津、岸和田の岡部、双方とも男盛りで知恵も廻るし野心も強いと聞く…、家斉の子家慶が将軍となれば、当然、老中筆頭は水野越前、幕閣の顔ぶれも変わる。それに食い込むには島津か岡部…、負けられん、大きな賭けだな…と狂四郎は呟く。

その間者の探っているのは何だ?江戸屋敷でさばかれる密貿易の品の隠し場所か?どうやら図星のようだな?と、狂四郎は、無言の内藤の顔色を観て言い放つ。

眠殿、もはや隠し立てはいたさぬ。薩摩がその確証を掴んで公儀に訴え出れば、我が岸和田藩はお取り潰し…と言いかけた内藤の言葉を遮るように、大名同志の争いなど一切興味を持たぬ男だが、先ほども言ったように、俺を誘う趣向が気に入った。女を犯せとの依頼、引き受けようと狂四郎は答える。

お引き受け下さるか!と喜んだ内藤は、では、今宵、子の刻、潜り戸の錠を外しておき申す。必ず出向かれるであろうな?と念を押すが、それに断っておくが、俺自身、試してみたいことがある。いずれ分かる。楽しみにして頂こう…と狂四郎は意味ありげに答える。

その後、賭場にやって来た狂四郎は、イカサマを使ったと暴かれ、客から袋叩きになりかけていた壺振りを見て、この場を俺に任せぬか?この壺振りの身柄を俺が預かりたいと申し出る。

安五郎(北野拓也)と言うその壺振りを外に連れ出した狂四郎は、お前の身ごなしの軽いのを借りて、これから押し込み強盗をやる。命がけだが金ははずむと申し出たので、安五郎は、ご冗談を!と驚く。

その時、虚無僧の一団が近づいて来たので、やがてここは修羅場となる。高輪の岸和田藩の上屋敷の側で待ってろと安五郎に言い聞かし、その場から立ち退かせる。

そして、目の前にやって来た込む僧たちに向かって、早々に出向かれたな、薩摩の隠密衆!と狂四郎は呼びかけ、趣向も粋だと微笑む。

眠狂四郎!岸和田藩留守居番に何の依頼を受けたかは知らんが、もし御主が岸和田藩と関わりを持ったのなら、直ちに手を引いてもらおうと首領らしき男が言うので、断ると申したら?と狂四郎が聞くと、斬る!と返される。

面白い!次元流を拝見しよう…と狂四郎は言う。

すると、隠密衆は縦一列に並んで刀を構えたので、相変わらずお固いことだ。多剣をもって一剣を襲うは薩摩隼人の面目に賭けて出来ぬと言う所か?と狂四郎が苦笑する。

その通り!我らは一騎打ちを掟としている。1人が倒れたら次の1人がその屍を乗り越えて行く。眠狂四郎!我らが次元流、見事受けるか?と隠密衆の先頭の男は言う。

参ろう!と答えた狂四郎は、先頭の男から次々と9人の隠密を倒して行くと、御主、異人の子か?と狂四郎は最後に残った髪の色が違う男に聞く。

それがどうした?と相手が答えると、姓名を聞いておこうと狂四郎は言う。

梅津一郎太(田村正和)と相手は答える。

異人を親に持つ御主が、何故薩摩藩の為に命を賭ける?と狂四郎が聞くと、俺の母はな、屋久島奉行の娘だった。父に従って屋久島に渡って二年後、帰って来た時には俺を抱いていたと言う。

では父のことは?と狂四郎が聞くと、知らんと一朗太は言う。

祖父は帰藩の挨拶を済ませた後、母を刺し、自分も死んだ。天涯孤独となった俺を薩摩の人は暖かく育ててくれた。その薩摩の為に今俺が働く…、当然のことだと一朗太。

滑稽だとは思わぬか?と狂四郎が聞くと、ならば聞く、狂四郎、貴様の生き方が滑稽ではないと言うのか?不貞無頼の輩に堕落して、世のすねもの、ひねくれ者で暮らす。独りよがりもいい加減にしろ!と一朗太は言い返して来る。

行け!今俺は御主を斬る気にならんと狂四郎は言うと、否行かん。俺は貴様をこの手で斬りたいと一朗太は答える。

何故?と問うと、貴様の父親はオランダの転びバテレン。貴様に同情などされる覚えはないと一朗太は言うので、同情ではない!俺と同じ髪の色をした男がどう生きて行くか、その行く末をこの目で確かめてみたい…と狂四郎は答え、問答無用だ!と言って斬り掛かって来た一朗太の剣を交わし、そのまま、死に急ぎはしないことだと言い残し、立ち去ろうとする。

斬る!俺は必ず貴様を斬る!俺の為にも、薩摩の為にもな…と一朗太は吐き出すように言う。

その後、狂四郎は、高輪の岸和田藩上屋敷にやって来る。

確かに、その中の一室には、豪華なひな壇が飾ってあった。

狂四郎は、就寝中だった女中理江(南美川洋子)の部屋に忍び込むと、その身体に覆いかぶさり、できるな?女!間者はいかなる辱めを受けようとも観念しろと教えられているはずだと囁きかけ、女の帯を解くと、暗闇の中犯す。

事が終わった狂四郎が行灯に灯を灯そうとすると、灯だけはお許しを…と理江は懇願するが、礼儀を知って忍び込んだものではない。我慢してもらおうと言い、灯を灯した狂四郎は、理江と言ったな?自ら求めて間者となり、屋敷に上がったのではあるまい?そなたの正体を知る闖入者と通じたのだ。覚悟は出来ていよう。悪びれぬことだと言い、理江の顔を確認すると、そのまま部屋を出る。

当岸和田藩の屋敷は空き家か!眠狂四郎、殿の寵愛する美女を奪い取ったぞ!出会え!と狂四郎が廊下で叫ぶと、ようやく、くせ者と知った屋敷内の侍たちが騒ぎ出す。

その騒ぎに乗じ、警備手薄となったひな壇の部屋に、天井から降りて来たのは安五郎だった。

安五郎は、狂四郎から依頼された通り、女びな、男びなの2体の人形を持ち出してしまう。

あっさり捕まった狂四郎は、翌日、理江と共に上屋敷の白州に引き出されるが、その狂四郎に近づいた内藤主水は、眠殿、拙者女を犯してくれとは依頼した、しかし、将軍家拝領の雛を盗めとは頼んでおらん、頼む、雛をどこに隠したか教えてくれ!と懇願するが、狂四郎は、貴殿の依頼を引き受けたとき、俺自身、試してみたいことがあるとそう断ったはずだと答えたので、それが雛とどんな関わりがあるのだ?と内藤が聞くと、すぐに分かると平然として答える。

そこに、眠狂四郎ともうしたな?この女を犯したと公言したと申すが、左様か?と岡部邦宗(亀石征一郎)がやって来る。

偽りは申さぬと狂四郎が答えると、理由を言え!何故逃げ去らず、高呼ばわりをした?何故、故意に捕われた?と岡部は迫る。

狂四郎は、2つの首を撥ねて頂きたいため…と答えたので、良し、撥ねてくれるろ言いながら岡部は刀を抜く。

ただし、その前に言っておくことがある…と続けた狂四郎は、当屋敷にある将軍家より拝領の雛一対、昨夜盗まれているはず…と教えたので、主水、真か?と岡部は確認する。

ははあ…と岡部が平伏したので、おのれ~…、盗んだのはその方だな?と言いながら、庭に降りていた岡部は刀を振りかざす。

俺を斬れば、雛の在所が分からなくなる。それを言う前に聞いてもらいたいことがある…と狂四郎は言い出す。

盗人め…、小賢しい交換条件を持ち出すつもりか?と岡部が悔しがると、2つに雛の首、撥ねて頂きたいと狂四郎は言う。

それを聞いた岡部、内藤、狂四郎の隣で畏まっていた理江も驚くが、撥ねろと言うのは我ら両名の首ではない。内裏雛の首のことだ。邦宗殿、将軍家より拝領の雛の首、見事、撥ねる勇気があるか?と狂四郎は迫る。

あるまい!と嘲った狂四郎、ご禁制を犯し、公儀御法度の裏をかきながら、将軍家拝領と言うだけで、たかが雛一つ壊せん…、大名の意気地のなさ、この目でしかと見せてもらったわ…と続ける。

無念そうに縁側に上がった岡部に、雛の首、撥ねられんのなら、この女、頂いて行くと言い放った狂四郎が立ち上がったので、追いかけようとした内藤が、雛は?と聞くと、そこにあると狂四郎が指差したのは、岡部が経っている縁の下だった。

確かに、雛一対はそこに置かれていた。

理江も狂四郎の後に続き、岡部が無念そうに立ち去ったその直後、狂四郎は、塀の影から薩摩隠密衆が矢を射かけてのに気づく。

矢は、縁側に今置かれた1対の雛の顔を斬り裂き、割ってしまう。

理江を連れて寺に戻って来た狂四郎は、似ている…、生き写しだ…と呟く。

私がどなたかにでございますか?と理江が尋ねると、母にと狂四郎は答える。

今どちらにおられます?と理江が聞くと、京の東山の丘の上に1人眠っている…と答えた狂四郎は、そなたに会って、この無頼者の心も母の菩提を弔う気になった…と言う。

それで、雛の修理を引き受けられたのでございますね?眠様、お辞め下さい!危険な仕事でございますと理江が問うと、乗りかかった舟には、例え命に関わることがあろうと乗ってみる…、それが俺の酔狂な所だ。他にもある。将軍家拝領の品が破損したとなれば、薩摩にとっては、岸和田を潰すに格好の品だ。俺の道中、雛を奪いに必ず立ちふさがる隼人隠密党の中に俺の気を惹く男が一人いると狂四郎が言うので、私もお連れ下さい!と理江は頼むが、断る!と狂四郎は一喝する。

では、お帰りをここで待たせて下さいましと理江は頼み、俺と言う男、明日の命を大切に思っている男ではない。今日ただいまが制止の境目と思っておる。俺が帰るのを期待せぬのなら、どこにいようとそなたの勝手だと答え、狂四郎は旅に出る。

海辺やすすきが原を歩く狂四郎(おそらく松方弘樹本人が歌う歌が重なる)

やがて狂四郎は、「眠狂四郎」と書かれた木札が地蔵に結びつけられているのに気づき足を止める。

木札の裏には、御主に必死の嘆願これある由…、美しき美女の涙を見て、会えて誘う者也と書かれた文言と、旧知の天心坊の名が書かれていた。

山奥の寺にやって来た狂四郎を見た天心坊(伊達三郎)は、見えたの~、1年振りじゃ、懐かしいぞと声をかけて来たので、俺が来るのがどうして分かった?と狂四郎が聞くと、薩摩を向こうに回して大芝居を売っているそうだの?と笑いかける。

素浪人1人がすること、たかが知れている…と狂四郎が答えると、御主はただの素浪人ではないわさ、久しぶりに御主の剣が見とうなって招いた。ただし、相手はわしではないぞと天心坊は笑う。

女人とは御坊の知り合いか?と狂四郎が聞くと、物頭の娘での。わしは亡父と親しかった。二言目には武士道の吟味を口にする頑固な藩士で、倅にも娘にも酷く厳しいしつけを強いておったと天心坊が言うので、女はどこにいる?と単刀直入に狂四郎が問うと、裏の草庵におると言う。

庵の中で1人待っていた女は、薩摩藩物頭小泉弥一郎の妻いと(笠原玲子)と名乗る。

お願いの儀と申しますのは、明日、遅くとも昼までに、藩中の道場より選ばれました若侍衆があなた様を討ちに参ります。その中に私の夫も加わっております。お手前様の御腕前のほどは天心坊様よりうかがっております。なにとぞ、私の夫に太刀をお加え下さることをご容赦下さいませ。お願いの儀とはこのことにございますといとは言う。

武士は家を残すことが第一…、その為には、我が身を犠牲にしても憚らぬと言うのか…?と狂四郎が問いかけると、はい…と言うので、立派な心がけだと狂四郎は褒め、素浪人の性根は卑しい。据え膳は遠慮なく頂くことにしていると続ける。

いとが奥で帯を解こうとすると、寝て頂こうと言いながら狂四郎は近寄る。

横になって抱き始めた狂四郎にいとが襲いかかろうとしたので、あっさり交わした狂四郎は、刺客になるには修行が足りんと諌め、素直に操を捨てることを考えよと言い聞かす。

もだえろ!もだえろ!もだえればもだえるほど抱きがいがある。

いとを抱き終えた狂四郎が草庵を出た時、薩摩藩の若侍たちが森の中でその行く手を阻む。

3人の若侍が名乗りをあげた中、3人目が小泉弥一郎だった。その後、さらに4人が名の利上げ、7人が狂四郎に刃を向けて来る。

御主らの腕が未熟だとは言わん。しかし正面から立ち会ったのでは、御主らに勝ち目はない。俺は石段を下りて行く。後ろからかかって来るが良い。振り向かぬと約束しよう…、そう告げた狂四郎は、その言葉通り、石段を下り始める。

若侍たちはその背後から襲って来るが、ことごとく狂四郎の刃の前に倒れて行く。

最後に残った3人の攻撃に対しては、大きく飛び上がり、互いに相打ちさせて倒した狂四郎、夫の死骸にすがりついて泣き出したいとに気づくと、夫の命を救おうとして操を捨てる。正に貞女の鑑だ。鑑は鑑だが、どこやら曇っている。据え膳は食らったが、斬らぬとは約束しなかった…と告げ、狂四郎はそのまま立ち去って行く。

先に江戸1番隊の10人が斬られ、今日も又、道場より抜きの7人が狂四郎の刃に死んだ…、あの男の剣の強さはただの強さではない。面目とか維持とか、そのようなものは少しも含んでおらん。言わば流水に似た強さだ…と薩摩隠密隊都田水心(内田朝雄)は夜の森の中で仲間と話していた。

しかし、狂四郎にも弱点はあるはずだと口を挟んだのは梅津一郎太だった。

その弱点を突けば必ず…と一朗太が言うと、そうだ!必ずある!京へ入るまでには何としてもやる!いかなる手段を講じても狂四郎を斬る!そして雛を奪わねばならん!と水膳は言う。

狂四郎は、沼津の赤い鳥居の中を歩いていたが、もし?旅のお方…と来た鳥追い姿の女お登奈(しめぎしがこ)に話しかけられる。

この沼津で宿をお取りでござんすね?お願いの筋がござんすが聞いていただけましょうか?と言うので、その身体を売ろうと言うのか?と狂四郎が聞くと、買って頂きたいのは、私の妹でございますと言うではないか。

そのお登奈に連れられ、とある屋敷の座敷に来た狂四郎は、猿ぐつわを噛まされた上に、竹に拡げた両手を縛られ、布団の上でもがいている異様な姿の女を観る。

どう言うのだ?これは?と狂四郎が聞くと、狐憑きになっているんですよ。暴れ回るんで仕方ありませんとお登奈が言うので、俺に狐を落とせと言うのか?と聞くと、妹は正真正銘の生娘でござんす。生娘から狐を落とすには、業の勝った殿御に抱いてもらう他に術はございませんとお登奈は説明する。

業の深い男に見えるか?と自嘲した狂四郎は、見えます。まさか嫌だとは?とお登奈が言うので、生娘の据え膳を食うのに嫌だと言う男はおるまいと答える。

旦那、お断りしておきますけど、狐を落として頂く為に涙を飲んで荒療治をして頂くのでございます。弄んでもらっては困りますとお登奈は釘を刺す。

酒は?と聞くと、後でと言うので、しらふで犯せと言うのか?と狂四郎は呆れるが、お登奈が出て行ってしまったので、取り憑いた狐めは、どこに潜んでおる?ここか?ここか?と言いながら、布団に寝かされた妹の着物を剥ごうとする。

本当に狐憑きか?しゃべってはならぬ為に、猿ぐつわを噛まされているのではないか?その口、開くよう、口づけしてやろうと言いながら、狂四郎が娘に顔を近づけると、いきなり娘は口から含み針を吹き付けて来る。

狂四郎は目を射抜かれたじろぐ。

娘は、狐憑きなどではなかったようで、庭に飛び出したので、おのれ、逃がすか!と狂四郎は後を追うが、娘千佐(松岡きっこ)は、眠狂四郎の命、貰い受ける!と言いながら襲いかかって来る。

そなたの腕では俺は斬れぬ!と軽くいなした狂四郎は、組み伏せた千佐に、女は女の幸せを考えるのだと言い残し、その場を立ち去る。

視力を奪われながらも、何とか川の側までたどり着いた狂四郎は、小舟の上で釣り糸を垂れていた老人に出会ったので、向こう岸まで送ってくれぬか?と声をかける。

すると、その老人は、それはお困りで…と、狂四郎の様子に同情し、手を取って小舟に乗せると、すぐさま漕ぎ始める。

向こう岸が近づいた時、老人はいきなり、小舟の中に積んであった酒瓶をわざとこぼすと、自分は竿を使い、棒高跳びの要領で向こう岸に飛び移ってしまう。

酒瓶からこぼれたのは油だった。

その時、向こう岸で身を隠していた隠密隊が姿を現し、火矢を狂四郎の舟目がけて打込んで来る。

狂四郎は、不自由な目の中、必死に火矢を払いのけていたが、小舟は燃え始める。

そんな狂四郎の小舟に近づいて来たのは、あのお登奈が漕ぐ小舟だった。

早くこちらへ!と呼ばれた狂四郎は、燃える小舟からお登奈の小舟に飛び移り、難を逃れる。

取りあえず、宿の同じ部屋に落ち着いた狂四郎は、礼を言わねばなるまい、妹はどうした?とお登奈に話しかける。

すると、あの女、妹なんかじゃござんせん。薩摩の忍者ですとお登奈は教える。

眠狂四郎を殺してくれと頼まれ、二つ返事で引き受けたのです。

一度は俺を殺そうとした。今度は何故助けた?と聞くと、私は眠狂四郎の華々しい最期が見たい。江戸であんたが15人を相手にして斬り合い、1人残らず殺すのを観たことがあると思っておくんなさい。その時から私は眠狂四郎に魅せられちまったのさ…とお登奈は答える。

何故会いに来なかった?と狂四郎が聞くと、私が魅せられたのは剣を抜いた姿、懐手のあんたなんかに会いたいとは思いませんよとお登奈は笑う。

俺の最期を期待したのか?と狂四郎が言うと、あんたは畳の上で安らかな往生をする人とは思わない。あんたにはやっぱり剣を抜いた姿で華々しい最期を遂げてもらいたい。それを私はしっかり見届ける。眠狂四郎がそうして死んだ時、私とあなたは一心同体になることが出来る…、そう言いながらお登奈は立ち上がり、帯を解き始める。

狂四郎の前で、裸身をさらけ出したお登奈の背中には、円月殺法を構えた眠狂四郎の刺青が彫ってあった。

私は、眠狂四郎と言う男はこの世に2人いる必要はない。この世の狂四郎が死ねば、この背中の狂四郎は完全に私自身のものになる!とお登奈が言うので、気の毒だが、そう容易く死ねんのだ。従って、お前の物にもならん。因業深き男と思ってもらおうと言った狂四郎は、拒むお登奈に抱きつく。

最初は抵抗していたお登奈も、やがておとなしくなって行く。

翌日、岩場までお登奈とやって来た狂四郎は、おのれの命を狙う女だと思うから抱いた。ありきたりな女心など見せるなと、急におとなしくなったお登奈に告げる。

その時、山頂から大量の落石があり、狂四郎は何とか身を山肌に密着させ助かるが、崖の上には隠密党の姿があった。

気がつくと、お登奈は岩の下敷きになって死んでいた。

狂四郎は、何も言わずその場を立ち去って行く。

やがて、狂四郎は、白装束に狐面と言う異様な姿の男たちが何事かを祈っている所にやって来る。

御浪人、あんたもお祈りなされ。人身御供を捧げれば、近隣五ヶ村が向う1年間救われるのですと、祈っていた老婆から言葉をかけられる。

観ると、裸の男たちに担がれた輿の上には若い娘が乗せられており、サンタマリア!と祈りの言葉を呟いていた。

その輿に乗せられた娘は、寺の鐘の中に入れられ、大男の1人が鐘を衝き始める。

鐘の中に入った娘は鐘の大音響で悲鳴を上げる。

その時、鐘を衝いていた大男の腕に小柄が刺さり、嗅げた狂四郎が駆け寄ると、人身御供の娘を救出し、この娘、俺が頂いて行く!と叫ぶと、狐面の男たちが、この罰当たりめ!と罵声を浴びせながら妨害しようとするが、刀を抜いた狂四郎をどうすることも出来なかった。

近くの川まで娘を連れて来た狂四郎は、気分が悪そうだった娘に、川で絞った手拭いを渡してやりながら、そなた、隠れキリシタンか?先ほど、そなたがデウスの名を口にしているのを聞いたと聞く。

娘は驚き、どいか、他言なさらないで下さいませ!と懇願して来る。

一度死を覚悟したそなたが、何を恐れる?若い女性に願いを受けた時、俺は代償として操を頂くことにしていると狂四郎は迫る。

すると、差し上げますと答えた娘は、自ら草影に入り込んで行く。

その時、しの(御影京子)さん!止めなさい!阿呆な真似は止めなされ!と叫んで駆けつけた男がいた。

竜馬(水上保廣)!としのは驚くが、狂四郎に向き合った竜馬は、おのれは公儀隠密だろう!と睨みつけ、生かしては帰さん!と刀で襲いかかろうとする。

それを観たしのは、いけません!殺生は禁じられている!いけません!と竜馬を必死に押しとどめる。

狂四郎は、俺は公儀隠密ではない、ただの素浪人だ。ただ、お前たちが崇めているデウスやその手先のバテレンに対して、いささか敵意を抱いているもの…と答えるが、ならば、やはり帰せん!と叫ぶと、岩から飛び降りて狂四郎に飛びかかるが、狂四郎は身体をかわし、手刀で竜馬の身体を川岸の岩場に叩き付ける。

岩に頭部を打ち付けた竜馬はその場で死ぬ。

その死体に駆け寄り嘆いたしのは、私が生け贄になるのを承知したのは、こうして村から1人を犠牲者を出すまいと思ってのことです。私はこの上流の栗栖(くるす)村の者でございます。ご推察の通り、村人たちは皆隠れキリシタンのため、よそ者とは付き合わず、縁組みもなさず、ひっそり暮らしておりました。ところが四日前の事でございました。白狐の面を付けた僧が父の元に参り、生け贄に差し出すことを命じて帰りました。もし断れば、他村との間にもめ事が起こり、村の秘密を勘づかれるかもしれぬ…、それで…、私が生け贄を買って出たのでございます…と告白する。

そなた、村長の娘か?と狂四郎が聞くと、しのははいと答える。

俺がそなたを助けたのはそなたを哀れんだのではない。健気面で、自分の命よりも信仰の方に重きを置く…了見が気に入らなかったからだと言うと、弄んで、女郎に売ってやろうか?女郎になっても、まだ信仰を捨てぬ自信があるか!と言いながら、狂四郎はしのに襲いかかる。

そして、しのの胸元を剥ぎ、取り上げた十字架を、お帰し下さいと哀願するしのの目の前で、川の中に投げ入れてしまう。

その後、茶店で一服していた狂四郎を、奥から睨んでいた旅姿の男があった。

そんな狂四郎は、近づいて来た娘を見て、理江殿!と驚く。

申し訳ございません。どうしても我慢できず、お後を慕って参りましたと理江は詫びる。

このような静かな宵がいつかあった…、旅籠の部屋に落ち着いた狂四郎は、目をつぶって呟く。

俺が好んでそうした訳ではないが、俺に身を据えて来た女は、みんな非業な最期を遂げている。俺は生涯妻を持たぬと決めている男だ。今夜その身を抱くことは、明日を約束したことにはならんと狂四郎が続けると、女は心に決めた事以外何も考えませんと理江が答える。

俺は酔狂でお前の正体を暴いた。しかも、そなたを犯すと言う、もっとも残酷な手段で…と狂四郎が呟くと、江戸を出て来る参ります時、この身体はあなたのものと決めたのでございます。どうしてそのような気持ちになったのか、自分でも分かりませせん。でも一旦決まったこの心は変えようがありませんと理江は訴えかける。

床を取ってもらおう。一つだけで良いと狂四郎が頼むと、理江は、狂四郎様!と言いながら抱きついて来る。

翌日、狂四郎が尋ね当てた山小屋に一人暮らしの人形師杜園(加藤嘉)は、差し出された雛の首を見て、この雛は私が一番脂が乗り切った時期に作ったもの…、これと同じものを作れともうされましても、今の私にはとても出来る者ではございませんと頭を下げる。

無理を承知でうかがったのだ。私は一介の無風流な浪人に過ぎん。復元した者を正しく賞玩する眼力もない。ただ、この雛にまつわる争いに身を投じて、江戸より京への道中、この身に降り掛かる火の粉から自分を守れるかどうかおのれの運を賭けてみた。復元の願い、あなたが断ると言うのならやむを得ん。潔く取り下げようと言うと、狂四郎は割れた雛の首を掴んで、山小屋を出ようとする。

すると、僭越ではございますが、あなた様は人の心を魅入らせる不思議な力を持っておられます。この年ではたして同じものが作れる同か分かりませんが、この世の最後の仕事としてやってみたくなりました。お引き受けいたしましょう!と杜園は呼び止める。

狂四郎は、かたじけない。お見かけした所、一人住まいの御様子、雛を作る間、食事の世話をする者を外に待たせておる。せめてもの心遣い、受け取って頂きたいと申し出た狂四郎は外に出て理江の名を呼ぶ。

しかし、何故か、理江の姿はなく、近くの木の幹に、「眠狂四郎見参。女の命を助けたくば、三社の滝で待つ」と書かれた紙が小柄で刺さっていた。

滝にやって来た狂四郎を待っていたのは、昨日、茶店で睨んでいた旅姿の男、奥村弁次郎(中谷一郎)であった。

観ると、理江は綱に縛られ、谷の上にその身体を吊られて失神していた。

3年前、日光山で貴様に討たれた巌流道場、奥村公典の実弟、奥村弁次郎!と名乗った相手は、兄の敵討ちと言う訳か…と狂四郎が聞くと、勝負だ!狂四郎!ただし尋常の勝負ではないぞ。貴様が俺を斬るのが早いか、それとも俺がこの綱を両断するのが早いか。貴様は己を慕う女の命も平然と絶つ事がことが出来る男だ。貴様の取り澄ましたその顔の裏には冷酷な心が隠されているのだ。谷底に突き落とすのが嫌なら抜け!出来ないなら、無双正宗をこの場でまっ二つに折ってもらおう!と声をかけて来る。

狂四郎は、明らかに不利な戦いと分かっていたが、やむを得ん、勝負しようと言い出したので、既に刀を抜いていた弁次郎は、俺が綱を斬るより早く、俺を斬れると自負があるのか?と、驚いたように問いかける。

自負はせん。だが、無双正宗を折る訳にはいかんと言い、狂四郎は静かに刀を抜く。

では来い!と叫んだ弁次郎は、その場で綱を叩き斬るが、次の瞬間、飛び込んだ狂四郎に斬られてしまう。

狂四郎が見上げると、理江の身体はまだ吊り下げられていた。

斬れた綱を下で握りしめていたのは、梅津一郎太だった。

礼を言わせてもらおうと狂四郎が声をかけると、いずれこの手で討つ!その為に助けたんだ…と一朗太は答える。

一週間後、一睡もしなかった杜園が仕上げた雛の首を見た狂四郎は、見事だと感心すると、このような名器、二つとある必要はあるまいと呟くと、自分が持って来た割れた人形の首を、その場でいろりの中の火に投げ込んでしまう。

完成したひな人形を手に、京の東山までやって来た理江は、お母様のお墓、まだ遠いのですか?と同行して来た狂四郎に尋ねる。

その頂きを越えればすぐそこだと狂四郎が教えると、私が死んだら、お母様の隣に埋めて頂けますか?と理江が聞く。

もしその時、私が生きていれば…と、約束しようと狂四郎は答える。

理江は嬉しそうに先を急ぎ、山陰を曲がるが、その直後、悲鳴が聞こえる。

驚いた狂四郎が角を曲がると、理江が斬られて倒れており、その背後には、梅津一郎太を先頭に隼人隠密党が縦一列に待ち受けていた。

一郎太、貴様!と狂四郎は睨みつけるが、薩摩を裏切った隠密は成敗されねばならぬと一郎太は無表情に答える。

そんな一郎太に、俺はこの目で貴様の末路を確かめようとした。俺と同じ髪の色をしたお前は、お前の信ずる道を歩んで幸せになれるかどうかを。だが、所詮、貴様は世に出られぬ隠密として空しく生涯を終わるだけだ!と狂四郎は吐き捨てる。

黙れ!とその言葉を封じた一郎太は、例えこのまま終わっても、俺には夢があった。その夢に生きた!その幸せは貴様にはないものだ。貴様の一生に夢はあったか?人間としての幾ばくかの幸せがあったか?と問いかける。

俺は貴様を斬る気になった!と狂四郎が言うと、狂四郎!隼人隠密党、手だれの10人を持って最後の決戦を挑む!我らが面目に賭けて、一対一の勝負だ!手強いぞ、心して来い!と、一番列の背後に立っていた都田水心が呼びかける。

降り掛かる火の粉は払わねばなるまい…、眠狂四郎、挑戦を受ける!と応えた狂四郎は、まずは先頭の江戸一番頭取、梅津一郎太!と名乗りかかって来た一郎太を斬り捨てる。

さらに、二番手、三番手…と、次々に名乗りを上げてかかって来る刺客を討つ狂四郎。

さすがに、狂四郎の腕からも血が流れ、体力的にも限界が近づいて来る。

最期に待ち受けていた水心は、薩摩、隼人隠密党党首、都田水心!と名乗ると、大小の刀を握り手の先同士で合わせ、一本のようにする型を見せる。

狂四郎が円月殺法を始めると、水心も、小刀の方を、時計の短針のように、狂四郎の回す刃と同期させるように回し始める。

狂四郎は、次の瞬間、身をかがめて相手に飛び込み、水心の右足を切断して倒す。

その時、最初に倒したはずの一郎太がフラフラと起き上がると、狂四郎!まだ勝負、付いておらんぞ!と呼びかけて来る。

どうしても決着付けるのか?と対峙した狂四郎が問いかけると、付ける!と一郎太が言うので、両者は刀を構え、互いに走って接近しあう。

両者がすれ違った後、一郎太が倒れ、勝った狂四郎の方も、左の袖を斬り裂かれ、腕からは流血していた。

その後、約束通り、母親の隣に、理江の墓を作ってやった狂四郎は、その墓の前に、出来たばかりのひな人形一対を供え、1人、山道を帰って行くのだった。(歌が重なる)