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魔女の宅急便('14)

宮崎アニメでも知られる児童文学の実写化。

企画を聞いたときから、何となく成功しそうな予感がしていたが、実際に観て見ると、その予想が当たっていたことを知った。

設定自体がそれほど大スケールでもないし、とある架空の町での少女の成長物語と言う部分に絞れば、ドラマにしてもそう不自然なものにならないだろうと思っていた通りだった。

唯一心配だったのは、その架空の町の外観であった。

いかにも日本のどこにでもある田舎町では興ざめだし、下手なVFXでの再現でもしらける。

この映画では、そうした不安を払拭するようなロケーションになっている。

日本のようで日本でない、不思議な町の様子がそれなりに再現出来ているのだ。

冒頭に当時する、キキが生まれた日の、雪が降る森の様子もなかなか巧い。

ミニチュアセットなのかCGなのか、にわかに区別がつかないほどの仕上がり具合である。

同様に、カバのマルコの描写も、作り物なのかCGなのか、ぱっと見区別が付け難い。

これだけの仕上がりになった一因は、VFX技術の向上にあることは間違いない。

決して予算をかけた大作には見えないものの、美術班の手腕もあってか、全体的にチャチさをほとんど感じさせなかった演出も見事と言うべきだろう。

もちろん、脚本の方もなかなかで、大人の目からすると、キキが嫌な目に遭って絶望する所など、ちょっと強引過ぎると言うか、わざとらしく感じる展開部分もないではないが、全体としては、子供を中心としたファミリー映画として手堅くまとめられていると感じる。

こうした、映画としてのしっかりした土台の上に、新人の小芝風花の初々しい愛らしさが魅力を添えている。

小芝風花は、まるで「時をかける少女」での原田知世を彷彿とさせるようなきらきらとした魅力を全編に振りまいている。

こうした少女から大人へと変貌するほんの一瞬の輝きのような時間を、この映画は良く映像にとどめている。

成績次第では、今後、続編やシリーズ化も可能に思える本作だが、ヒロインのこの輝きだけは、なかなか再現出来ないのではないか。

メッセージ性も分かり易く、それでいて凡庸なものではなく、子供、特に少女たちには貴重な内容になっているのではないだろうか。

従来のホラー映画のイメージを見事に払拭した清水崇監督には、心から拍手を送りたい。

秀作と言っても良い作品だと思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2014年、「魔女の宅急便」フィルムパートナーズ(ステューディオスリー+東映+北京泰楽国際文化発展+KADOKAWA +D.N.ドリームパートナーズ+オリコム+日本テレビ放送網+木下グループ+EDKO FILMS LID+ビーイング+こだま印刷+読売新聞社+MY Promotion+読売テレビ放送)、角野栄子原作、奥寺佐渡子+清水崇脚本、清水崇監督作品。

これは、魔法を信じている東洋のある町の物語です。

ある年の冬、1人の女の子が生まれました。

キキは生まれながら、不思議な力を持っていました。

お魚一杯いるよ!と猫のジジに話しかけていたのです。

キキのお父さんのオキノさん(筒井道隆)は学者でしたが普通の人間でした。

でも、お母さんのコキリさん(宮沢りえ)は魔法使いだったのです。

でも使える魔法は二つだけ。

1つは、薬草を育てて薬を作ること。病院から遠いこの町では頼りにされています。

そしてもう1つは、箒で空を飛べます。

キキもすぐに覚えました。

でも時々…

木の枝についた鈴が揺れる。

手伝いなんてまだ早いよ…、そう言いながらオギノさんは、空から落っこちたキキの怪我の手当をしてくれました。

そんなキキを観ながら、まだキキは、魔女と人間のちょうど境目の頃なのよ。どっちになるかは13歳になるまでに決めれば良いのとコキリさんは言います。

私、魔女になる!幼いキキは、元気良くそう答えました。

魔女は13歳になると独り立ちしなければなりません。1年間、魔女のいない町に行き修行をしなければいけないのです。

1年間暮らせたとき、1人前の魔女になれるのです。

それが、今でも魔女がいることを人間たちに知らせる為の大切なしきたりなのです。(…とナレーション)

満月の晩、黒い衣装を着た123歳のキキは、近所の人々に送られて魔女修行の旅に出発しようとしていた。

そんなキキに抱きついて来たオキノさんは、巧くいかなかったら、すぐに帰って来るんだぞと言ってくれるが、家の前で見送っていたコキリさんは、父さんは甘いから…と呆れたように呟く。

大丈夫!絶対そんなことにならないから!とキキは答え、箒に股がって、ジジを呼んで一緒に乗せると、あっさり飛び立って行く。

ジジ!キキをお願いね!とコキリさんが呼びかける。

父さん、母さん、元気でね〜!行ってきま〜す!キキは空の上から答える。

大きな満月に向かって跳び上がったキキの姿が、小さなシルエットになる。

タイトル

簡単なキャストロール

ジジ、寒くない?

大きなショールで頭を包んだキキの胸元に、寒い!と答えたジジが潜り込んで来る。

あっ、観て!あれ、海?

明るくなり始めた空の上から、前方に広がる海が見えて来る。

こんなに広いの?始めて海を見たキキは、ショールを頭から外すと、暖かい!とお日様の暖かさに感動する。

そして、海面すれすれに飛び始めたキキは、海に手を差し入れたりして、始めての海の感触を楽しみ、やがては両手放しなどまでして見せるが、乱暴な飛行にジジは迷惑そうだった。

め、観て!町が見える!キキがそう言うと、ジジにも、町がある小さな島が見えて来る。

キキは、島の市場らしき上に到着すると、市場にいた人々は、上空を飛ぶキキの姿を珍しそうに眺める。

何か、僕たち、珍しいみたい…とジジが言うので、長い間、魔女が住んでなかったのかな?とキキも答える。

人が飛んでる!キキの姿を観て地上で叫んだのは、幼い女の子とその兄弟らしい年の違う男の子3人だった。

島の山の上に降りたキキが、港と町並みを観ながら、この町に決めちゃう?と相談すると、何ごとも慎重にって言われているでしょう?とジジが注意する。

きれいな町!でも、キキの気持ちはもうこの町に決めていた。

(回想)似合ってる感じ。良くない?とオキノさんは、コキリさんが作ってくれたキキの旅立ち用の服を褒めていた。

しかし、試着していたキキは、もっとスカートを短くして!と注文していた。

それでも、コキリさんは、魔女はおとなしく見えた方が良いの。魔女の服は黒の中の黒って決まっているのと言うだけ。

そんなの古いよ!おばあちゃんはもっと色々な魔法が使えたんでしょう?とキキが聞くと、ものが腐らない魔法とか、雌牛の乳の出が良くなる魔法が使えたわ。

私が魔法をあまり使わなくなったのは、他の人間と巧くやろうって決めたからなのよとコキリさんが言うと、私は、自分がやりたいことは何でもやりたいの!とキキは元気一杯答える。

1年間の修行の中で巧く行かないことがあっても、なるべく笑顔でね…とコキリさんはキキに言い聞かせる。

(回想明け)動物園のカバの檻の中で寝ていたキキは、子供のカバが、コリコの町のニュースを流していたキキのトランジスタラジオの紐を引っ張っているのに気づき目覚める。

泊めてくれてありがとうと言いながら起き上がったキキとジジだったが、その時、檻の部屋に入ってきた飼育係のナヅル(新井浩文)がキキに気づき、ここで何してるんだ!と怒鳴って来たので、慌てて逃げ出そうとするが、檻を乗り越えようとした所であっさり捕まってしまう。

お前、家出だろう?警察に届けてやる!と言いながらキキを放そうとしないので、私、魔女です!修行中ですけど…。勝手に入ってごめんなさい!さよなら!と言いながら、箒に股がって飛び上がって逃げる。

それを呆然と見送るオヅルら飼育係。

その時、動物園の動物たちが一斉に騒ぎ出したので、二度と来るな!とオヅルはキキに罵声を投げかけて来る。

それをきいたキキは、私、そんな悪いことした?と憮然として聞くと、あいつ、魔女を怖がっているんだよと箒に乗ったジジが慰める。

風車のある家がやがて見えて来て、何か美味しそうな匂いがして来たので、キキはその家の前に降り立つ。

パン屋さんだったんだ!まずは朝ご飯、朝ご飯!と浮き浮きしながら店の中に入ったキキだったが、ちょっとあんた!うちは食べ物屋だよ。箒なんて持ってこないで!と店の女主人のような人が声をかけて来たので、ごめんなさい!と謝って、キキは慌てて表に飛び出す。

パン屋の前の階段にしゃがみ込んだキキは、お母さんから持たされた袋の中を開けてみるが、入っていたのは魔女の薬ばかりで、薬ではお腹は膨れないよ…とぼやくキキだったが、コキリさんのメッセージを書いた手紙も入っていたので、ちょっぴり感激する。

その時、ちょっとあんた!スカートの後ろ破れているよ!と声をかけて来たのは、今のパン屋の女主人だった。

朝、飼育係のナヅルさんから逃げようとした時、スカートが金具に引っ掛けて破れたのだった。

私は又、お掃除屋さんかと思ったよ…と、店の中でスカートを繕ってくれた女主人が笑う。

お腹が大きい所を見ると、もうすぐ赤ちゃんが生まれるようだった。

魔女ってことは魔法も使えるの?私にも飛び方教えてとキキの話を聞いた女主人は聞いて来るが、無理なんです。魔女の血が流れていないと…。1年間、他所の町でクラスって言うのが、魔女の掟なんですとキキは教える。

これからどうするの?そんなに若いのに、独り立ちなんて…と女主人が聞くと、お届け屋さんになろうかなって…、小さい頃からお手伝いが好きだったので…とキキは答える。

良いじゃない、お届け屋。魔女の宅急便!この辺は島が多く、何かを運ぶ為には舟を待つしかないのよ。じゃあ、決まりだ!おいでと女主人が急に手招きしたので、何ごとかとキキが付いて行くと、女主人はパン屋の風車小屋の二階に案内してくれる。

そこは、埃だらけだったけど人が住める空間があった。

風車の天辺だったんだ!とキキは窓から見える大きな風車の翼に感激するが、下を通っていた男に気づくと、旦那のフクオ(山本浩司)って言うんだ。あんまり首を出すと危ないよと注意してくれた女主人は、すぐ外に井戸もあるし…と言う。

キキが戸惑っていると、又後で良い部屋探せば良いじゃない?当分、ここで寝泊まりすれば?って言ってるのよと女主人が言ってくれたので、感激したキキは、実は困っていたんです、ありがとうございます、奥さん!と感謝する。

女主人は、おソノ(尾野真千子)って言うのと名前を教えてくれ、私、あんたのこと気に入った!と言ってくれる。

キキは早速、部屋の掃除を始める。

そんなキキの様子を、下からフクオがじっと見つめる。

「魔女の宅急便」の看板も手描きで作り、パン屋の店先にかけたキキは、私の店だ!やったね!と喜ぶ。

その夜、コリコか…、遠くまで来ちゃったね…とベッドに横になったキキは話しかけるが、もうジジはベッドの上で眠っていた。

トランジスタラジオからは、お休みの曲として「Voice」と言う歌が流れて来ていた。

ベッドから降りたキキは、月明かりの中に立つと窓を開けて外を観るが、風車の羽が止まったので、自分も寝ることにする。

翌朝、パン屋の一隅に置かせてもらった電話機の前に座ったキキだったが、かかって来るのはグーチョキパン屋の電話ばかりなので、だんだんキキは退屈になって、居眠りまでしてしまう。

いつ来るか?お客さんとジジが聞くので、いら立ったキキは、黙ってて!と怒る。

ふてくされて店の外で座り込んでいたキキに近づいて来たおソノさんは、うちのパン屋だって、お客がつくまで3年かかったのよと慰め、それじゃあ、修行、終わっちゃうよ。暇なら、外に出て宣伝でもしてくれば?と励ましてくれる。

そんな2人の前にやって来たのは、市場で空を飛んでいたキキを見上げて驚いていた兄弟の一番上のトンボ(広田亮平)だった。

トンボはキキに、夢の岬小学校まで届け物をして欲しいと一札の本を渡す。

島の地図で場所を確認しながら、誰にお届けすれば良いんです?と聞こうとするが、何故かもう、トンボの姿は消えていた。

届けてみれば?とジジが言うので、取りあえず品物を持って、夢の岬小学校まで飛んでみることにする。

飛んで来たキキを待っていたのは、8mmカメラで、キキの様子を撮影していたトンボの弟と妹の3人だった。

降り立ったキキの前に、チャリで駆けつけたトンボが、早いな!追いつけなかった。撮った?と弟たちに聞く。

直線距離で約2kmを2分48秒08で飛んだと時計を観ていた弟は教え、あり得ないだろ。どうやって飛ぶ?飛行学は少しは頭に入っているから…などと、今、キキが運んで来た本を見せながら自慢げにキキに話しかける。

キキは唖然としながら、ちょっと…、もしかして、箒で飛ぶの観たかっただけ?と問いかける。

ごくろうさま。代金払うからとトンボが小銭を出しかけると、いりません!とキキは怒る。

弟や妹たちも、キキが怒ったことに気づいたようだった。

キキは、うるさい!とぼやきながら、箒に股がって飛び上がる。

何なの、あの子たち?すっごい失礼!と、飛んで店に戻るキキはジジにぼやいてみせる。

そんなキキに、ちょっと君、付いて来て!と下の道を自転車で走っていた女性が声をかけて来る。

その女性は、「すみれクリーニング」の女主人すみれ(吉田羊)さんのようで、店の中にキキを連れ込むと、これよ、これ直して!と壊れた乾燥機の前にキキに伝える。

キキは唖然としながら、電器屋さんに頼んだ方が…と答えるが、月曜はお休みなの!あなた、魔女屋さんじゃないの?魔法で何でも直してくれるんじゃないの?とすみれさんは言う。

直せませんとキキが申し訳なさそうに答えると、ああ、そう…とがっかりしたようなすみれさんだったが、何を思いついたのか、外に連れ出したキキの箒にロープを結びつけると、キキに空に飛び立たせ、張ったそのロープに、乾いてない洗濯物を吊るし始める。

キキは、強風でバランスを崩しかけながら、必死に箒でホバリングを続けていたが、やがて、風が収まったので、今だ!と感じたキキは、急に空高く飛び立つ。

地上で結んでいたロープが外れ、洗濯物を吊るしたロープをぶら下げたキキの箒は空を飛んで行く。

その様子は、島民たちの目撃する所となり、子供たちやおソノさんも発見する。

洗濯物をぶら下げ、空を飛ぶキキは、楽しい?とジジに問いかけ、私も楽しい!と笑顔で答える。

このキキの飛行は、結果的に大宣伝になり、「すみれクリーニング」はたちまち大繁盛となる。

すみれさんちで働いてんの?と客が聞くので、この子はお届け屋さんなんですとすみれさんが、店を手伝っていたキキを紹介してくれる。

キキも張り切って、お任せ下さい!全部お届けします!と胸を張る。

かくして、魔女の宅急便の方も次々と仕事が舞い込むようになる。

おばあちゃんが孫に送ったマルコの無為ぐるみを届けると、受け取った女の子は大喜びしてくれる。

息子から、外出時、忘れたメガネを届けてもらった母親にも感謝された。

結婚式には、天使のコスプレ姿のキキが、「Happy Wedding」と書かれたメッセージボードを空から降ろしてみせたりもした。

仕事の途中、山の上で昼食を食べていたキキは、順調、順調と喜び、この調子だと1年なんてあっという間だと呟くが、ジジが褒め言葉をくれないので、さすがはキキだ〜!その調子〜!と、崖の上から自分で大声で叫んでみる。

ある朝、風車小屋で目覚めたキキは、下から、フクオの歌声が聞こえて来たので、屋根の上から見下ろし、それ、なんて言う歌?と聞く。

「月の吐息 タカミ・カラ」と言うレコードをおソノさんは出してキキに見せると、この人、昔から、タカミ・カラが好きだったのよ。私たちが出会ったのも、その人のコンサートでだったのと教えてくれる。

でも、もう2、3年、歌ってないような気がするとおソノさんが言うので、引退したの?とキキが聞くと、この辺に奇妙な屋敷があって、そこに籠りっきりだって…とおソノさんは言う。

差し入れでも届けてあげたら?とおソノさんが言い出すと、フクオは嬉しそうにパンを包み始める。

その時、店の前に置いてあったキキの箒をトンボの弟2人が持ち去ろうとしていたのに気づいたキキは、慌てて追いかける。

おソノさんは自転車を持って来てキキに渡すが、それに股がったキキは、すぐに転んで藁の山に突っ込んでしまう。

キキは自転車に乗れないのだった。

キキは走って、トンボの弟2人を追いかけるが、町に逃げ込んだ2人は、マネキンに化けたりしながら、箒を互いに渡しあい、キキの追跡を振り切ろうとする。

キキは追いかける途中、帽子屋の店頭の帽子を落としたり、狭い路地を抜ける時、人家の窓ガラスに身体が触れて音を立てたりしたので、住民たちから叱られてしまう。

やがて、一緒に追って来たジジが、兄弟に飛びかかり、何とか箒を取り戻したキキだったが、そこは、トンボの家の近くだったので、どうしたんだ?と言いながらトンボが近づいて来る。

人の箒盗むなんてどう言うこと?と立ち上がったキキが抗議すると、始めて、弟たちがやった事を知った様子のトンボは、弟2人に、何やってんだよ?と問いつめる。

ちょっと借りたかっただけなんだよ…と弟2人は答える。

怒ったキキが、はい、どうぞ!とわざと箒をトンボに渡すと、弟2人はその箒を眺め回し、何の仕掛けもない。ただの箒だと気づく。

分かった?掃除でもする?とキキが皮肉を言うと、本当に魔法で空が飛べるのか?と弟たちは半信半疑の様子で言い、そんなのインチキだ!とトンボも言う。

魔女じゃなければ、箒があっても飛べないのよ、残念でした!とキキは嫌味を言い、トンボの家の倉庫の中にあった作りかけの人力飛行機に気づくと、あぁ!空が飛びたいんだ!と嫌味っぽくトンボに聞く。

トンボは慌てて、近づくな!とキキを止める。

魔法で好きに飛んでみたい?とキキが悪戯っぽく聞くと、魔法!魔法!といら立ったようにトンボは喚く。

行かなくちゃ!私、遊んでられないの!と気づいたキキは、箒に股がると飛び立って行く。

それを見送る弟たちは、かっこ良い〜と感心するし、トンボも、魔女って良いな〜とうらやましがりながら人力飛行機の方へ来る。

すると、末っ子の妹が、ニイニイ、箒よりニイニイの飛行機の方がかっこ良いよと言ってくれる。

フクオの届け物を持って飛び立ったキキだったが、やがて、森の中にある一軒の奇妙な屋敷に気づく。

あれじゃない?カラさんちってとジジも言うので、降りたって、中の様子を覗いてみたキキだったが、本当にここかな?と不安がる。

中に人気がなかったからだ。

あの〜、どなたか、いらっしゃいませんか〜!と呼びかけても、誰も答えないので、何だか、お化け屋敷みたい…とキキは怯える。

その時、螺旋階段の隙間から、女の子がニャオ!とジジの鳴き声を真似たので、キキは、その少女を追って二階に上がってみる。

二階の部屋には、ウサギのぬいぐるみを持ったその少女がいるだけだった。

その時、1人の女性が突然部屋に入って来る。

勝手に入ってごめんなさい!と慌てたキキは謝り、タカミ・カラさんですか?と聞く。

カラ(YURI)は、あなた、魔女?と聞き、魔女がこんな所に何の用?と冷たい言い方で聞く。

大ファンって方からお届けものを持ってきました。どうぞ!と渡すと、カラは、そう…、ありがとうと言って受け取るが、中味には興味がなさそうにテーブルの上に置く。

良かったら、サインもらえませんか?とキキが聞くと、良いわよ、伝票はどこ?とカラが言うので、「月の吐息」のレコードを差し出したキキは、これに!と頼む。

するとカラは、ごめんなさい、わ私、もう歌手じゃないのと答える。

キキは、お茶を呼ばれることになる。

お姉ちゃん、魔女?と先ほどの少女が聞いて来たので、修行中だけど…とキキが答えると、私のママも魔女だったのと少女は言いながら、壁にかけた写真を見せる。

サリ!とカラは叱りつけるが、写真には、カラと一緒に写っている、赤ん坊を抱いた女性の姿が写っていた。

この子の母親は、誰よりも空を飛ぶのが巧かったの…、でも、空の隙間に巻き込まれ、海に落ちたの…、姉さんいなくなってからは声が出なくなって…とカラは告白する。

私、カラさんの歌好きです!とキキが言うと、あなたが聞いたのはレコードでしょう?こんな風には歌えない。心が空っぽだとダメなのね…、私の中の歌が消えたのは、必要とされてないからじゃないかしらとカラが言うので、そんなことありません!とキキは否定する。

あなたには、まだ分からないわよとカラは答える。

差し入れはパン屋のフクオさんです。奥さんとは、カラさんのコンサートで出会ったそうです。もうすぐ赤ちゃんが生まれます。私も、カラさんの歌、ラジオで始めて聞きました。1人で生きて行けるか自信をなくしかけていたときでしたとキキは訴えるが、あなたの魔法で、私の歌、戻してよ!とカラに言われると、返す言葉はなく、帰ります。それでもいつか、カラさんの歌、聞きたいです!とキキは伝える。

箒に乗り飛び上がったキキは、好きなのに歌えないって、どう言うこと?とジジに問いかけるが、ジジは、フクオさんのレコードは?と聞く。

しまった!キキは、レコードをカラの家に置き忘れて来たことに気づく。

これ、カラ?嬉しそう…、キキが忘れていたレコードのジャケットを観ていたサリが聞く。

カラは、怒ったように、そのレコードを奪い取るが、サリは、差し入れでもらったパンを頬張りながら、カラにも1個渡そうとする。

その時、あ、魔女のお姉ちゃん!と戻って来たキキを窓から見つけたサリが叫び、サリも大きくなったら空飛べるかな?と呟くのをカラは黙って聞いていた。

その後、キキは、風車小屋の中で、カバのマルコが、ライオンに尻尾をかじられたと言うコリコニュースをトランジスタラジオで聞いていた。

インタビュアーの女性が、動物園の園長カジカさん(志賀廣太郎)にマイクを向けて事情を聞くと、イシ先生は、又どっかに行ってしまったし、ライオンのカイトは、ちょうど歯が痒くなる時期なので…と説明を始めるが、そのマイクを横から奪い取ったナヅルは、あの魔女の呪いのせいだ!などと喚き出す。

それを聞いていたキキは、失礼な奴!と膨れるが、マルコ、大丈夫かな?行ってみようか?動物園…などとジジと相談しあっていたが、そんな部屋の中を、窓からフクオが覗き込んでいた。

お届けものを持って来た女の子の事を知らせに来たのだった。

アカシヤ通りにタカって言う女の子がいるからと言って、その少女は黒い封筒をキキに渡し、あなた、本物の魔女?と聞いて来る。

修行中ですけど…とキキが答えると、100年くらい前にも魔女がいたんですって。でもそれを良く思わない人もいたんですって、魔女って不思議でしょう?昔、おばあちゃんが、悪いことすると、魔女にネズミにされちゃうぞって言われたと少女が言うので、そんなことしませんと答えたキキは依頼人の名前を聞く。

少女はサキ()と答え、魔女に会えて嬉しい!と喜ぶ。

アカシヤ通りの公園のテーブルに座っていた少女3人は、サキって、自分のことを可愛いと思ってるよねなどと陰口を言っていた。

そこに降り立ったキキが近づき、タカさんですか?と聞くが、少女はなかなか名乗らず怯えたように身を引くだけだった。

サキさんからお届けものですと言いながら、黒い封筒をキキが渡そうとすると、急に悲鳴を上げながら逃げ出した3人の少女は、あの魔女、呪いを運んで来たのよ!逃げて!と叫び出す。

公園に来ていた人々は、その声を聞き、キキのことを怯えたような目で見始める。

ジジが、帰ろう…、仕方ないよと、封筒を渡せないまま立ち尽くしていたキキに声をかけて来るが、そんなキキに近づいて来たのは依頼人のサキだった。

運んでくれてありがとう。これ、お礼と言いながら小銭を渡そうとして来たので、いりません、受け取れませんとキキは拒否する。

お届け出来ませんでした。ごめんなさいと言いながら、キキが黒い封筒を返すと、その場で開封し、中には何も入っていなかったことを明かしたサキは、あの子たち、影で私のこと、悪く言ってるの、男の前田と態度違っているとか…、だから、魔女に呪いを運んでもらったのと愉快そうに話す。

仕返しなんかしたら、嫌われてしまうでしょう?とキキが諭すと、良いの、別に仲良くしているつもりないから…とキキは言う。

私、この町に友達いません。お届けものを頼みに来るお客さんがいるから寂しくはないけど、一緒にアイス食べたり、笑ったりする友達が入れば良いと思う…。魔女に会えて嬉しいって言ってくれて嬉しかった…とキキは告げ、その場から立ち去る。

すっかり落ち込んだキキに、呪いは運びませんって、看板に書いとけば?とジジは慰めようとする。

翌日から、「グーチョキパン屋」には、呪いを理由に、届け物を返しに来る客が続出する。

応対に出たおソノさんは、鈍いって何なの?と問いかけるが、おばあちゃんが送ってくれたマルコのぬいぐるみも、いやがる少女の手から母親が奪い取っておソノに返して行く。

朝目覚めたキキは、パン屋の前に積まれた布切れに気づき、それを履かすと、そこには、これまで自分が届けた品物が全部返却してあることに気づく。

これ、全部、渡しが届けた…とキキは呆然と立ち尽くすが、そこに出て来たおソノさんは、持ち主に返してやれば?空飛ぶ魔法しか使えませんって、みんなに言っておいでと勧める。

下着姿のまま、風車小屋の上の部屋にかけ戻ったキキは、壁に立てかけてあった箒を手に採ると、癇癪を起こしたかのようにそれをテーブルの上に投げつけ、部屋の中もめちゃめちゃにする。

お客さんの気持ちとか、全部運んでいるつもりだったのに…、キキはそう言ってベッドに倒れ込むと泣き出す。

グーチョキパン屋の前には、「しばらく休ませていただきます」とキキが書いた貼紙が出る。

二階に籠っていたキキを下から何度も呼びかけたおソノさんは、窓から顔を出したキキに、これ届けて!今はお腹が張っちゃって、横になっていないと苦しいのと言って、パンの袋を見せる。

こういうときこそ休んじゃダメなの!仕事、仕事!とせき立てるおソノさん。

仕方なく、箒に乗って出発したキキだったが、何故か今日は飛行が不安定で、何度も落ちそうになる。

一緒に乗っていたジジは、しっかりして!集中して!箒じゃなくて、キキが変なの!と声をかける。

しかし、次の瞬間、バランスを崩したキキは森の中に落下する。

キキは、ジジがいなくなったことに気づき、必死に探すが見当たらない。

お願い!返事をして!出て来て!ジジ!と呼びかけるが、ジジは見つからなかった。

さらにキキは、箒の柄がまっ二つに折れていることに気づき、真っ青になる。

何とか、折れた柄を手で支えて飛ぼうとしても、全く飛べなかった。

飛べない…、バカ箒!ただの掃除道具になりたいの!とキキは箒に当たり散らすが、どうやっても飛べない。

気がつくと、箒を握りしめていた手のひらは血豆で汚れていた。

泣き出したキキは、どうしたんだろ?どうしたんだろう、私…、魔法が…と嘆く。

何とか、荷物を拾い上げ、徒歩で届け先の家まで持って行ったキキだったが、出て来た白髪の老婆は、品物を受け取ると、無言で代金を投げ捨ててドアを閉めてしまう。

折れた箒を手にして帰る途中、キキは空を飛ぶ鳥を見上げていた。

そして、人力飛行機を飛ばそうとしているトンボ兄弟の姿も見かける。

だめ〜!今飛んじゃダメなんだってば!風を見て!とキキは叫ぶが、遠くにいたトンボたちに聞こえるはずもなかった。

何とか飛ぼうとするキキだったが、どうしても折れた箒では飛べない。

そんな中、向うの丘から飛び立ったトンボの乗った人力飛行機は、浮き上がったと思った途端、羽が折れて落下してしまう。

キキは海岸近くに走って来ると、波打ち際に墜落した飛行機の残骸の側で、トンボが気を失っていた。

服を脱がせてみると、右脇腹から出血していたので、キキは持っていた魔女の薬を塗ってやる。

その時、弟たちが近づいて来たので、キキは逃げるようにその場を離れる。

風車小屋に戻って来たキキだったが、ベッドに腰掛け、後頭部を壁にごんごんぶつけていた。

ジジ!手のひらを開けてみると、血豆が潰れて汚れている。

その時、薬の調合をしている母親コキリさんの姿が浮かび上がる。

母さん!と呼びかけてみるキキ。

私の魔法が消えちゃった…

不思議ね、魔女の薬は嫌々作ったのでは効かないの…とコキリさんが答える。

私は作るのが好き!人の役に立てるんですもの。きっと気持ちが大切なのね…とコキリさんは続ける。

私…、魔女になれないかも…とキキが呟くと、なるべく笑い顔でねとコキリさんは言ってくれる。

母親の幻影が消えた中、キキは立ち上がり、窓を閉め、ガラスに映っていた不機嫌そうな顔を無理に笑顔に変えてみる。

翌日、荷物をまとめていたキキは、窓を叩く音に気づいたので振り返ると、そこにジジが戻って来ていたことに気づく。

窓を開けてやると、バツが悪そうに、ジジは、只今…と言い、キキも、お帰りと答え、この前はごめん。私、魔女を辞めるねと答える。

ジジは、そうか…と答えただけだった。

辞めるってどう言うこと?修行を続けないと一人前の魔女になれないんでしょう?キキから話を聞いたおソノさんは問いつめる。

普通の人間として生きて行くの…とキキが答えると、普通の人間も悪くないよ。少なくとも、私は退屈したことないねとおソノさんは笑顔で言う。

父さん、母さん、がっかりするかな…とキキが心配すると、私なんか、元気なら良いよ。親なんてそんなものよと言いながら、大きいお腹を擦るおソノさん。

その時、誰か来たので、今日は休みなのとお園が声をかけようと表を見ると、そこに立っていたのはトンボだった。

忘れ物!と言いながら、トンボが持って来たのは、修理して柄を繋いだキキの箒だった。

直してくれたの?と言いながらキキが受け取ると、大事なんだろ?とトンボは言う。

大丈夫?とキキが聞くと、あ、これ?と言い、右の脇腹を出してみせたトンボは、あれ、何の薬?死ぬほど痛かったのに、すぐ痛くなくなったと言う。

母さんが作ってくれた魔法の薬…、呪いなんかじゃないから…とキキが教えると、いや…、何も俺は…とトンボは口ごもる。

怪我してるのに放っとけないじゃない!私、キキ、あんたトンボって言うんでしょう?と聞いたキキは、お昼、一緒に食べない?と言い出す。

小学校の校庭で、一緒に昼食を食べながら、壊れちゃったね、飛行機…とキキが言う。

又作るよ。去年一回だけ飛べたんだ。滞空時間8秒。もっと長かったような気がするけど…。空から見ると、何もかも違って見えた。きれいだったな〜…とトンボは答える。

最初はね、弟たちの玩具の飛行機を作ってたんだ。だんだんそれが大きくなって、図書館で本なんかを読むようになり、自分も飛べたらなって…、そうか…、キキは飛べるんだよな。何で巧く飛べないんだろう?とトンボは話す。

私も巧く飛べない…とキキが言うと、え?とトンボは驚く。

飛べなくなっちゃった…とキキ。

何で?技術的な問題?とトンボが聞くと、ううん。箒には私の気持ちが移るんだって…。飛べないなら魔女じゃないよね…とキキは答える。

修行、続けられなくなったら、この町を出なくちゃ…、みんなともお別れしなくちゃ…、飛ぶのは得意だったのにな〜…とキキが言うと、何だよ、それ…とトンボも呆然とする。

他に出来ること何にもないんだよね。歌もへただし、自転車にも乗れない。パンも焼けないし、飛行機も作れない…。私には、そう言うの全部魔法に見える!とキキは続ける。

すると、トンボは、キキの腕を取って、自分の自転車の所へ来ると、乗って!言いから座って!とキキに命じる。

だから、乗れないんだって!…とキキは抵抗するが、トンボは、自転車の後ろを押さえて、無理矢理キキに漕がせる。

力入り過ぎ!とトンボが指摘すると、自分だって、空飛ぶときは風を読んで!と自転車を必死に漕ぐキキは言い返す。

絶対、離さないでよ!何度もよろけながら、キキは背後で押さえているトンボに呼びかける。

ちゃんと押さえといてよ!絶対、離さないでよ!とキキは叫んでいたが、キキ、ブレーキ!と言われたキキが止まると、トンボは校庭の向うで立っていた。

嘘つき!とキキが怒ると、乗れたよ、ほらとトンボは笑う。

凄い!私、乗れてる!とキキは自転車を乗り回す。

自転車は一度乗れたら一生乗れるんだってさとトンボが解説し、だから…、魔女、辞めるなよと言い残すと、自転車に乗って帰って行く。

トランジスタラジオのコリコニュースでは、コリコの上空に「海坊主風」と呼ばれる突風が近づいていますと、島民に注意を促していた。

その時、おソノさんが、動物園の園長さんが届けて欲しいものがあるって、飛べなくても、歩いてでも出来るでしょう?と声をかけて来る。

私は飛べないよ…と尻込みするキキだったが、自分で決めた仕事でしょう?キキ!決めたことは最後までやりなさい!とおソノさんは叱って来る。

急いで!園長さん、慌てていたわよ!そう伝えたおソノさんは、フクオが妬いたパンを置いて下に降りて行く。

キキは、フクオさんが作った、ジジを象った猫パンをかじり、美味しい!と感激する。

壁に立てかけた箒に目をやったキキは、それを取り上げると、行ってくるわ!と言いながら、店の外へ飛び出すが、箒に股がってジャンプしているだけで、一向に飛ぶ気配は見えなかった。

飛ぶんだから!飛ぶんだから!何度もジャンプしながら駈けて行くキキは叫ぶ。

そんなキキを見かけたクリーニング屋のすみれさんが、何してる?と不思議そうに聞いて来る。

トンボの兄弟たちも、ジャンプしながら町を走るキキに気づくと、自転車に載れよと勧めて来るが、キキは、良いって!と走りながら断り続ける。

その頃、動物園では、早くイシ先生の所へ連れて行かないと…、でもイイナ島は遠いし…、マルコ、死んじゃって良いの!と園長や飼育係が焦っていた。

そこに、走ってキキがやって来たので、ナヅルは、何しに来た?帰れ!と怒鳴りつける。

マルコの様子をキキが聞くと、弱っている。ご飯も食べない。お前の呪いのせいだ!などとナヅルは言う。

そんなの噓だ!キキは空しか飛べない!他の魔法は使えないんだと一緒に付いて来たトンボが反論すると、何だ、お前は?魔女の召使いか?とナヅルは嘲る。

あいつ飛べないんだ!俺をイイナ島に行かせてくれ!などとナヅルは園長に頼むが、私が運びます!とキキが叫ぶ。

飛べないのに?大体、箒が飛べないんだろ?とナヅルはバカにする。

箒が運ぶんじゃありません!私が運ぶんです!とキキははっきり言い返す。

園長は、キキの言葉を信じ、飼育係のハチとモリオに、準備を始めさせる。

マルコ、おいで。私が運ぶから…とキキは池の中のマルコに話しかけるが、マルコは水に潜ったまま姿すら見せない。

キキは、マルコ!ずっとそこで、ママに甘えているつもり?ときつく言い聞かすと、ママカバがマルコの身体を押しやって外に出して来る。

マルコを乗せるゴムボートを、キキの箒にしっかり結びつける飼育係たち。

マルコ、必ず届けてあげると、ゴムボートに乗せられたマルコに伝えたキキは、じっと空を見つめ、風を読もうとする。

そんなキキに、早く飛べよ!とナヅルが急かす。

その時、箒がちょっと身震いしたかのように動き、キキは上昇し始める。

キキ!やった!とトンボが叫び、キキも、やった!と喜ぶ。

しかし、イイナ島の場所がキキには分からなかった。

イイナ島は、ずっと東の方に言った所だ!と園長が教え、トンボが、方位磁石をキキに向かって投げる。

嵐の中、海上を飛び始めたキキは、目を開けて!トンボ!島まで案内してくれるんでしょう!と吊り下げたゴムボートに向かって叫ぶ。

結局、マルコと一緒に、トンボもゴムボートに乗るはめになったのだった。

トンボは、揺れるゴムボートの中で、吐きそう…と呻いていた。

トランジスタラジオから、「海坊主風はミリ島付近を通過しています」と放送していた。

コリコ動物園からイイナ島のイシ先生に、魔女がマルコを運んでいますとラジオは続ける。

魔女!頼んだぞ〜!ナヅルが雨の中、空に向かって呼びかける。

キキは、荒れ狂う風の中、必死にバランスを取ろうとしながら箒を飛ばせていたが、目の前に岩肌が見えて来る。

キキは必死に箒を持ち上げ、上昇しようとするが、ゴムボートは重く、なかなか持ち上がらない。

その時、トンボがボートから岩に飛び移り、マルコを乗せたゴムボートを背中に担ぐ形で走り出す。

そして岩を過ぎると、又、ジャンプしてゴムボートに乗り移るトンボ。

良かった!マルコは無事にゴムボートの中にいた。

カバのマルコが、イシ先生の所に届きますように、コリコのみんなが応援しますとラジオが伝える。

その放送を、屋敷にいたカラも聞いていた。

サキも聞いており、呪いの封筒を自ら握りつぶす。

サリは窓から外を観ながら、お姉ちゃん、頑張れ〜!魔女のお姉ちゃん、頑張ってね!と応援していた。

雷が落ちる中、必死に飛んでいたキキは力尽きかけ、箒から落ちそうになっていた。

海上に不時着しそうになった時、どこからともなく、カラの歌声が聞こえて来る。

カラが雨の中、屋敷の外に出て歌い始めていた。

箒の中に魔女の気持ちが移るんだ!強い気持ちがあれば!とキキは叫び、持ち直す。

キキ!と叫ぶトンボ。

カラの歌が盛り上がりを見せる。

雨の中、空を見上げているナヅル。

いつの間にか、キキは笑顔を取り戻していた。

トンボ〜!観て〜!キキが叫ぶ。

目の前にイイナ島が見えて来ていた。

厚い雲の向こう側には、雲の切れ目から太陽も差し込んでいた。

イイナ島の中で昼寝をしていたイシ先生(浅野忠信)の側に何かが落下して来る。

何ごとかと、音の方にやって来たイシ先生は、木の上に引っかかっているゴムボートから、トンボとカバのマルコの姿が見えたので、驚いたな〜…、この島にはカバがいるのか…と呟く。

イシ先生?とトンボが呼びかけると、私を知ってる?とイシ先生は驚く。

さらに、ものが落ちて来たので目を転ずたイシ先生は、少し離れた木の枝に引っかかっているキキを発見する。

で、尻尾をどうしたって?マルコを下に降ろしたキキとトンボに、イシ先生が容態を聞く。

ライオンに噛まれたそうですとキキが説明すると、対して旨くもないだろうに…などと言いながら、イシ先生は、側にあったガラクタの中から、懐中時計を見つけると、それをチャックガラのリボンに付けて、マルコの尻尾に縛ってやる。

歩いてみなさいとイシ戦士が言うと、マルコは素直に歩き出す。

直った!とキキが喜ぶと、あれは入れ歯みたいなもので、代用品だとイシ先生は説明する。

何の病気だったんですか?と聞くと、中心点不明病と言う怪しい病気だ。自分が分からなくなるんだ。尻尾は時として生きる証しなんだ。マルコは君たちと旅をすることによって、自分をちゃんと取り戻したんだよ。もう、心配いらないよとイシ先生は言う。

「坊主風」が通り過ぎ、すっかり晴れ渡った空の中、マルコとトンボをゴムボートに乗せ、帰って来るキキは晴れやかな顔になっていた。

キキ!始めて飛んだ時の事、覚えてる?と下からトンボが声をかけて来ると、もちろん!私、あの時、魔女になろうって決めたんだとキキは答える。

コリコの島に戻って来てみると、港付近で大勢の人だかりが見えて来る。

近づいて良く見ると、キキだよ!キキ〜!と呼びかけて来たのは、トンボの兄弟たち、おソノさん、園長とナヅルたち、サキも待っていた。

それを確認したキキは、私、この町に来て本当に良かったと笑顔になる。

エンドロール

「グーチョキパン屋」の前のテーブルに座り談笑するキキとトンボ

そこに、「月の吐息」のレコードを持ったフクオが嬉しそうにやって来る。

タカたち3人組に近づいたサキが、封筒を無理矢理渡して立ち去ると、タカたちはその後を慌てて追って行く。

封筒の中に「ごめんなさい」と書かれたメッセージが入っていたからだった。

おソノさんは、生まれて来た赤ん坊を嬉しそうに抱いていた。

「おかえりマルコ」と看板がかかった動物園に、子供たちが大勢集まっている。

ナヅルたちが空を見上げると、空を飛んで行くキキの姿が見える。

キキとトンボとその兄弟たちが、新しく出来た人力飛行機を外に出し、飛び出そうとする。

山の上に腰掛け、町を見下ろすキキとジジ

キキはすっかり忘れていましたが、この町に来て、もうすぐ1年が経とうとしていました。(…とナレーション)