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キカイダー REBOOT

かつて、「仮面ライダー」をきっかけに巻き起こった第二次怪獣(変身)ブームと呼ばれた1972年頃に、そのバリエーション的変身ヒーローの一つとして登場したTV番組「人造人間キカイダー」のリブート映画化。

「仮面ライダー」もそうだったように、映像化の話が先だったはずで、原作とされるコミックスは、確か番組放映と同時期に連載していたような記憶がある。

TV企画のコミカライズなので、マンガの方は原作と言うほど面白い内容ではなかったと思う。

番組の方も、ちょうど人気絶頂だったドリフの番組の裏だったこともあり、視聴率的には低迷していたはず。

しかし、その奇抜なヒーローデザインや敵役のダークロボットのユニークさなどもあり、一部の世代ファンを生んだらしい。

その世代がプロデューサーなどを任される時代になったので、こうした特定世代限定みたいな企画が生まれるのだろうが、「子供番組を大人向けにリブートする」と言う企画自体の難しさを感じる出来になっている。

一応、小説版の出版元である角川が幹事会社になっているようだが、元々東映TV部の作品だったこともあり、東映のイメージも重なっている。

近年、角川は低予算映画中心の企画が多くなったようだし、東映の懐かし変身ヒーローもののリメイクも低予算のイメージしかなく、この作品も、観る前から、かなりの低予算企画なんだろうと言う印象はあった。

その想像通り、キカイダーとハカイダーの着ぐるみを作っただけで予算の大半を使い果たしたのではないか?と思いたくなるくらい予算をかけてない。

アクションの大半はスタジオセット内で撮っているだけと言った印象で、映画特有のスケール感などはほとんど感じられない。

ロケシーンも、余計なものが写り込まないように狭い範囲内だけを撮っている印象で、エキストラを使ったモブシーンや引きのシーンなど都会の風景やCG処理での描写以外にはほとんど見当たらなかった。

もちろん、低予算だからダメと言うことではなく、かなりシリアスなタッチにしているにしては、本編部分の絵作りにかなり物足りなさがあると言うことだ。

もっと、安っぽい面白さやバカバカしさを楽しむB級特撮ヒーローものと割り切っていれば…と考えないでもない。

では、俳優が演じているドラマ部分は面白いのかと言うとこれも微妙で、オリジナルの設定を巧みにアレンジしているなと言う印象がある反面、登場キャラクターの凡庸さもあり、何となくちまちまとまとめてしまった印象を受ける。

全体の雰囲気としては、映画とオリジナルDVDの中間くらい…と言えば良いだろうか。

話の展開もかなり平凡な印象ながら、テンポはそう悪くもなく、今後に繋がるプロローグの部分を描いている雰囲気で、今後、本格的にユニークなダークロボットが登場してくるのではないかと言う期待感は持たせてくれるし、アクションシーンもそれなりに迫力があり、全くつまらないと言う訳でもない。

小中学生くらいの観客だったら、この内容でもかなり楽しめるのではないだろうか。

ただし、大人も堪能出来るかと言うと、正直微妙だと思う。

全く退屈なダメ映画でもないけど、かと言って、予想外に面白かった!と褒めるほどでもないからだ。

個人的に一番気になったのは、ヒーローとヒロインを演じた男女若手俳優。

良く言えば個性派と言ったタイプの2人だと思うが、万人受けするタイプかどうか…?

特にヒロインの方は、その内向的な性格付けも相まって、好き嫌いがはっきり別れるキャラクターのように思えた。

劇中で、オリジナル版の主人公ジローを演じた伴大介氏が「君はいずれ、何かを守る為に何かを捨てる時が来るだろう」と言う意味深なセリフを言っているが、それに重ねて言えば、この作品、「REBOOT」と銘打ち、かつての子供番組とは違った新しいものを作ろうとする反面、オリジナル版が持っていた大いなる魅力の重要な部分を捨て去ってしまっているように見えなくもない。

新しい世界観で得た魅力が大きければ、この作品は今後も観客に支持されて続くだろうが、捨て去ったものの方が大きかったと観客が判断すれば続行が難しくなるのではないだろうか。

どちらにしても二作目を待ちたい気持ちだ。

角川の前の徳間大映「平成ガメラ」でも東映「北京原人 Who are you?」でも怪演していた本田博太郎が、この作品では、「ピノキオ」におけるゼペット爺さんみたいな役割になるのだろうか?楽しみな所である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2014年、「キカイダーREBOOT」フィルムパートナーズ、石ノ森章太郎原作、下山健人脚本、下山天監督作品。

日本の未来はロボットが作ります…

総理大臣の田部慎之介(石橋蓮司)が話している。

今、介護や災害地域や危険地域に送り込むロボットが求められています。

そのために我々は、国と企業が一体となってロボットを作る「アークプロジェクト」を立ち上げます。

ロボットではなくアンドロイドです…と「アークプロジェクト」の研究所で話しているのは、ロボット工学の権威光明寺信彦(長嶋一茂)博士だった。

光明寺博士が開発した青と赤に色分けされたジロー(入江甚儀)と言う名のアンドロイドと、アメリカ帰りで杖をついているギルバート神崎(鶴見辰吾)教授が作ったアンドロイドマリ(高橋メアリージュン)が戦う姿がモニターに映し出されていた。

神崎教授は、両者の動きを比較し、ジローの動きに鈍さが認められるのは良心回路の弊害だと思われる。戦闘能力ではマリの方が上ですよ、椿谷先生と、見学に来ていた国防大臣椿谷(中村育二)に解説する。

アンドロイド開発はあくまでも平和利用の為ですと言う光明寺博士に対し、時代錯誤ですよと神崎博士はせせら笑う。

やはり始めから軍事利用が目的だったのか!それなら私にも考えがある!と光明寺博士は言い出す。

光明寺チーフの説得は心配ないと椿谷が神崎に告げる。

格闘シミュレーションを終えたマリとジローが待機していた地下室に降りて来た神崎教授は、マリ、お前は先生にふさわしい。ジローは不完全な機械だと嘲笑する。

それを聞いたジローは、僕は機械だ…と呟く。

タイトル

雨の中の墓参り

墓には「光明寺家の墓」と刻まれていた。

傘をさし集まった親族たちは、姉の光明寺ミツコ(佐津川愛美)、弟のマサル(池田優斗)を見ながら、もう1年か…、海外留学が決まって、あの姉弟はどうなるのだろう…などと噂し合った後帰って行く。

大学の授業が終わったミツコは、食堂で1人コミックスを読んでいた。

そこに合コンに誘うクラスメイトたちがやって来るが、ミツコは興味がなさそう。

その時、部外者らしき男がミツコに声をかけて来たので、クラスメイトたちは、そう言う事か…と気を回したり、あんなのが趣味だったの?と冗談を言って来るが、あの人、父さんの事を取材している記者とミツコが説明すると、拍子抜けする。

服部半平(原田龍二)と言うその男は、馴れ馴れしくミツコの事をミッちゃんと呼び、お父さん、研究中の事故で死んだのに、ニュースにもならず計画は継続…、変だと思わない?などとしつこく聞いて来るが、父親をあの人呼ばわりするミツコは、馴れ馴れしい服部の取材にうんざりしており、弟の夕食を作らなければいけないのでと言い訳し、逃げるように自宅マンションに帰る。

電車の中、ミツコは、世の中には白馬の王子様を待っている女の子たちがいるが、自分は共感出来ない。現実の男の子たちはゲームやネットなどに夢中になるだけで、世の中の女の子が何を待っているのかなんて分かってない。王子様など迎えには来ないんだと冷めた事を考えていた。

高層マンションの自宅に戻ると、弟のマサルが黙々とゲームをやっていたので、春から寮生活が始まるのに大丈夫なの?と小言を言うと、ぷいと黙ったまま自分の部屋に逃げ込んでしまう。

その時、玄関チャイムが鳴ったので、ビデオで確かめると、あの服部がしつこく立っていたので、さすがにミツコは呆れるが、その時、自室でゲームを続けていたマサルの部屋の窓を割り、謎の男たちが2名、侵入して来る。

物音で異変を感じたミツコがマサルの部屋に入ると、ロープで身体を支えたレンジャー風の男がマサルを抱きかかえて外に連れ出そうとしていたので、それを助けようとして、自分ももう1人の男に抱きつかれ、窓の外に連れ出される。

ミツコのマンションの屋上にヘリコプターが接近して来る。

ミツコとマサルが連れて来られた屋上には、マシンガンを構えた兵士のような連中が待ち構えていた。

ミツコたちはマシンガンを突きつけられるが、その時、その兵士たちの背後から近づいて来た青年がいた。

ジローだった。

ジローは兵士たちと戦うが、力の差は歴然だった。

あっけに取られながらも、渡を抱きしめ、戦いを見ていた戦いを見ていたミツコは、兵士を倒し、近づいて来たジローに、あなら、誰?と怯えながら尋ねる。

しかし、ジローは、逃げよう、早くと答えるが、そんなジロー目がけて、兵士たちが発砲して来る。

ミツコとマサルをかばい、背中に銃弾を受けていたジローだったが、銃弾を浴びたジャンパーの一部が消えかけて来たので、仕方ない…、スイッチ、オン!と呟く。

すると、ジローは変身しキカイダーになる。

ミツコは驚き、機械?と問いかける。

キカイダーは兵士たちのマシンガンをあっさりねじ曲げ、連射して来る二人のマシンガンの銃口を両手で防いでみせる。

兵士たちは唖然とするが、キカイダーは、これ以上、人間とやり合いたくないと戦いをやめる。

そこへヘリコプターが飛来し、マンションの屋上に巨大なロボットを落下させる。

ミツコとマサルは驚き、屋上の縁の部分に逃げる。

キカイダーは、巨大ロボットに弾き飛ばされ、一瞬、屋上から落下したかに見えたが、何とか縁に手でしがみついていた。

ジャンプして屋上に舞い戻って来たキカイダーは、巨大ロボの目の部分を殴りつけ、巨大ロボットは壊れたかに見えた。

しかし、その左目が光り、まだ生きていた事が分かったので、キカイダーは巨大ロボを屋上から突き落とす。

巨大ロボは地上の池の中に落下する。

又ジローの姿に変身したキカイダーを見たミツコは怯え、来ないで!と拒否するが、マサルの方は、凄ぇ!と目を輝かす。

そこによじ上って来たのが服部だったが、その時既にジローの姿はなく、ミツコも何も答えなかったので、取りあえず、ここは離れた方が良いとミツコとマサルに言う、

2人が屋上から去ろうとする中、服部は、その場に飛散していた巨大ロボの破片の一部を拾い上げる。

一方、「アークプロジェクト研究所」に秘書役となったマリと共にやって来た椿谷大臣に、邪魔をしたのはやはりジローですと神崎教授は報告する。

椿谷大臣は、光明寺君の息子を確保しろ。必要なのは光明寺ファイルだけだと命じる。

それを聞いた神崎は、面白くなさそうに、マリは、光明寺のジローよりも優れていると力説するが、椿谷は、私は光明寺君が描いていたものが知りたいんだ。君が勝とうが負けようが知った事じゃないと神崎を突き放し部屋を出て行く。

廊下で2人きりになったので、何故、彼に任せないのですか?とマリが聞くと、椿谷は、彼は科学者としては優秀だ。ただ、彼には思想がないと神崎を分析する。

服部は、取りあえず、自分のマンションにミツコとマサルを連れて来ていたが、テレビニュースでは、品川にある45階建てのマンションの屋上から、講じよう銃器が落ちる事故があったと報じており、事実が帰られている。これは絶対何かの陰謀だ!と、服部はテレビを見ながら興奮していた。

ミツコは、こういうのは警察に話した方が良いのでは…と発言するが、服部は、本当の事を話したってまともに相手をしてくれんよと反論し、君たちはここに鍵をかけて隠れていた方が良いとミツコたちに言い残し、自分は仕事に行くと言って出かけて行く。

服部が訪れたのは、怪し気な本田宗五郎(本田博太郎)と言う人物の部屋だった。

本田は服部の顔を見るなり、よお、インチキ小説家!などと呼ぶので、ネットジャーナリストと呼んでくれ!と服部は訂正し、マンションの屋上で拾って来た機械の破片を見せる。

それを一目見た本田の顔は緊張し、これ、どっから手に入れた?と真顔で聞いて来る。

その頃、ミツコとマサルは服部のマンションを勝手に抜け出し、横断歩道橋の上で、唯一頼りになりそうな前野先生にメールを送信していた。

しかし、その直後、ミツコ等の前に、サングラス姿の怪し気な男が2人接近して来たので、身の危険を感じた2人は逃げようとするが、反対側からも、同じような男たちが迫って来る。

怪しい男たちに囲まれそうになったその時、ギターを背負ったジローが出現し、いきなりミツコの身体を歩道橋から放り投げると、自分はマサルを抱えてジャンプする。

ジローは、ちょうど歩道橋の下を通過していたトラックの荷台に着地すると、そこに計算通りに落ちて来たミツコの身体を受け取り、一緒に乗せる。

あっけにとられるミツコにジローは、スマートフォンを使ったから、場所を探知されたんだと告げ、僕はジローと名乗る。

あなた、機械でしょう!とミツコが問いかけると、僕は機械…とジローが答えたので、マサルは、やっぱり!マジかよと喜ぶ。

父の差し金でしょう?あの人の差し金なら、一緒にいたくない!とミツコは抵抗するが、ジローは、全部、光明寺博士にプログラミングされている。もし嫌になったら、シャットダウンボタンが背中にあるので、それを押せば止めると冷静に説明する。

その頃、服部が持ち込んだ機械の一部の解析を進めていた本田は、その内容を読みながら、相当、やべえ!と興奮していた。

国会議事堂にやって来た椿谷を呼んだ田部首相は、今度の場合はやり過ぎた。派閥争いの論功がいつまでも続くと思うなよ。君がロボット開発に熱を入れているのは何故だ?介護や災害地域や危険地域に送り込むのなら、何故、武装が必要なんだ?

最近では近隣諸国との領土問題で頭が痛い時期なんだ。国民はロボット開発など望んでいないと言い聞かすと、椿谷は、国民の心だけに傾いていれば国は滅びますと反論する。

しかし、ロボットはものであり、ものはものでしかない。我々が考えるべきは人間の利益だよと田部首相は言う。

不平不満しか言わないのが国民だ。「アークプロジェクト研究所」に戻って来た椿谷大臣は、開発を急ぐ!今日限り、君にアンドロイド開発を任せたいと神崎教授に伝える。

それを横で聞いていたマリは、おめでとうございます。プロフェッサー・ギル!と神崎の事を呼ぶ。

ミツコとマサルは、ジローと共に、閑散としたどこか地方のバスに乗って移動していた。

マサルは、ジローのジャンパーを触り、色が変化するのを不思議そうに楽しんでいた。

ナノ結晶ディスプレイだと説明したジローは、こてからどうしたら良いと思うと聞かれ、大きなターミナルなどを利用すると敵に察知され易いので、こうした地味な交通機関を使い移動した方が見つかり難い。今夜は野宿した方が良いと答える。

それを聞いたマサルは、良いじゃん!楽しそう!と喜ぶ。

「アークプロジェクト研究所」の地下室に1人降りて来たプロフェッサー・ギルこと神崎は、黒いアンドロイドの前に来ると、始めろ!起動しろ!と命じ、見てるが良い、光明寺!と昔の事を思い出す。

(回想)自分が作ったマリの方が優秀だと主張する神崎に、光明寺博士は、アンドロイドは正しく使ってこそ正義の存在になりうると思うんです。私は、正義の要素を青、悪の要素を赤で表現し、ジローを作りましたと穏やかに説明する。

(回想明け)新しい世界を作り、奴の世界に君臨してみせる!とプロフェッサーギルは、黒いアンドロイドハカイダーと共に叫ぶ。

その様子を、モニター越しにマリが見つめていた。

ジローとミツコ、マサルの3人は、海辺で野宿をしていた。

食事を始めたマサルは、ジローがアンドロイドだから食事をしない事に興味を持ったようだった。

好き嫌いとか、そう言うのはないと答えたジローは、2人はあるのか?と問いかける。

マサルはゲームが好きと答え、ミツコは特にない…と言うので、マサルが、マンガは?と聞くと、別に…、単に暇つぶしになるからと言い、留学は?と聞くと、行けば、何かやりたいものが探せると思っただけとミツコは答える。

ジローは、自分はゲームはやらないが、音楽は好きと言うので、マサルがどんな音楽?と聞くと、YMOと答えたのできょとんとする。

誰?と姉に聞いても、ミツコも、さあ?と首を傾げるだけ。

お笑いとかは?とマサルが聞くと、ドリフ!志村!後ろ〜!とジローは言い出す。

他には?とマサルが突っ込むと、しばし考えた後、ダッフンだ!とジローは言う。

それを聞いたマサルは、ツボに入ったようで、愉快そうに笑い出す。

その夜、ジローは朝までたき火の火が絶えぬように番をしていた。

翌朝、マサルは、ダッフンだ!を口癖のように連発して上機嫌だった。

ミツコが、木の枝に残っていた1枚の紅葉を見つけ見つめていると、それに気づいたジローが、その紅葉を折って、君にと言いながらミツコに渡してやる。

君も笑っている方が良いとジローが言うと、マサルも、いつも怒ってばかりだからねと横から茶々を入れる。

紅葉を受け取ったミツコは、嬉しいけど…、生きているものは傷つけない方が良いよ、機械じゃないんだから…とジローに言い聞かす。

その日は、廃工場の中で野宿をすることにした3人だったが、ジローが胸の中を自分でいじっている所に近づいて来たミツコは、この間の怪我、大丈夫?さっきはごめん、機械じゃないんだから…なんてと詫びる。

ジローは、寒くない?とねぎらうので、大丈夫と答えたミツコは、ありがとう、マサルの事…、あの子凄く扱い難い子で、すぐ心を閉ざしがちで…、私もどう接していけば良いのか分からなかった。あんなに明るく笑っているマサルなんて初めて観た…。明るくなったと打ち明ける。

何で?とジローが聞くと、多分、あなたは父が作ったアンドロイドだから、間接的にでも父に守られている感がするんじゃないかな?ドリフだって、父の好みでしょう?とミツコは答える。

データは全て光明寺博士がアップデートしたから…とジローは言う。

私たちにとってあの人って、単なる仕事人だったの。愛されていたと言う実感もなかった…と父光明寺の事を語ったミツコは、再度感謝の言葉をかける。

するとジローは、この身体壊れるまで君たちを守る!と言うので、ミツコは、本当に?と感激しながら、幼い頃、クリスマスプレゼントして父からもらった小さなロボット人形の事を思い出す。

(回想)凄いでしょう?と、ロボット人形を渡した光明寺博士は、幼いミツコに笑いかけていた。

(回想明け)僕は機械として完全でありたいのだ。君たちを守る事は僕に与えられた任務だとジローが言い出したので、任務?そうでしょうね。あなたはあの人が作った機械だったんだものね…とちょっと寂し気にミツコは呟く。

その後、ジローはエレキギターを弾きながら、光明寺博士から言われた「アンドロイドは人間を守るのが使命だ。頼んだぞ、ジロー!」と言う言葉を思い出していた。

その頃、「アークプロジェクト研究所」では、マリが、ジロー捕捉!マサルも帯同していると思われます!とモニターを監視しながら告げていた。

それを聞いた椿谷大臣は、お前に一任するとマリに伝える。

寝ていたミツコが目覚めると、側にいたはずのマサルが見えないので、慌てて起き上がり周囲を探し始める。

マサルは、マリが差し向けた兵士たちに連れ出されかけていた。

その兵士たちの前にジローが立ちはだかる。

圧倒的なジローの強さに兵士たちはたじろぐが、そんな兵士の頭を殴りつけようとしていたジローは、相手の怯える表情に気づき、手を止める。

そこに姿を現したマリは、久しぶりね、ジロー!と語りかけ。敵を前にして躊躇するなんて、アンドロイドに人間に近い良心回路を入れた弊害ねと嘲る。

ジローはスイッチオンと言う。

マリは右手がマシンガンに変型し、変身したキカイダーに発砲して来る。

私たちに必要なのは、マサル君に隠されたデータだけ。おとなしく保護されなさい。そうすれば命は保証すると言いながらキカイダーと戦うマリは圧倒的に強かった。

マリに苦戦するキカイダーの姿に、幼い頃、近所の男の子たちに見つかり、蹴られていた人形ロボットの事を重ねるミツコ。

絶えきれなくなり、もう止めて!どうせプログラムされている事でしょう?そんな事の為に…と叫ぶミツコ。

あなた、この程度の人間の情緒と共に壊れて行くのよ!と、床に倒れて動けなくなったキカイダーを蹴り付けるマリ。

しかし、壊れたと思われたキカイダーは、僕は戦える…と呟くと立ち上がる。

しかし、そんなキカイダーに、そこがあなたの不完全な所です!と言い放ったマリは、キカイダーの左腕をもぎ取ってしまう。

人間体に戻ったジローは、床に倒れたままだった。

死んで完全になりなさい!と言いながら、とどめを刺そうとしたマリに、止めて!と叫んだミツコは、私たちが行けば良いんでしょう?と声をかける。

踏みつけようとしていたマリは動きを止め、私も、機械にすらなりきれないこの機械に執着するつもりはありませんと答え、行きましょうとミツコたちに答える。

ミツコは、ジロー、ありがとう。これであなたの任務は終了だから…と言い残し、勝ると共にマリに同行する。

その姿を倒れたまま見つめるジロー。

その後、弾きちぎられた左腕を持って山の中を徘徊していたジローだったが、やがて力尽き倒れ込む。

そんなジローの視界に、近づいて来る男の足下が写る。

ジローを助け起こした老人前野究治郎(伴大介)は、君は光明寺博士が作ったアンドロイドだろう?ミツコ君から連絡をもらって待ってたんだけど来ないので、探していたんだよ。光明寺君を追っているジャーナリストに連絡しよう。何らかの力になってなってくれるだろうと話す。

君の良心回路は私のアイデアなんだ。私は心理学者だ。感情が行動の基本だと思っている。君は私と光明寺博士の結晶なんだよと前野が続けると、ジローは、違う!僕は不完全なアンドロイドなんだと答える。

前野は、完全とは何だろうか?不完全な事が完全かもしれないと言い聞かせようとするが、ジローには理解出来ないようだった。

いずれ君は、何かを守る為に何かを捨てなければならない時が来るだろうと前野が言うと、もっと分からない…とジローは呟く。

「アークプロジェクト研究所」に連れて来られたマサルは、手術で、体内に埋め込まれていたチップを摘出される。

マリは椿谷と神崎教授に、光明寺ファイルが検出されましたと報告する。

椿谷は神崎、プロフェッサー・ギルに、と言う訳だ。これを元にアークプロジェクトを完成させてくれ。「ダークプロジェクトの始まりだ!」と命じる。

しかし、プロフェッサー・ギルは1人になると、地下室に降り、私の研究を全て認めさせてやる…と呟きながら、黒いアンドロイドの前に立つ。

やっと目覚めたか!ジローは覚醒した視界の中で、起動したか!と嬉しそうに呼びかける本田の姿と汚い彼の部屋を観る。

少し寝てな…と、天井からチェーンでジローの身体を支えていた本田は語りかける。

その様子を横で見ていた服部は、本当に動くんだな!と初めて観るアンドロイドに興奮していた。

こいつの出どころが分かったんだよ。光明寺信彦が作ったんだ「アークプロジェクト」のアンドロイドだ。光明寺は、途中でプロジェクトの真の目的に気づき、息子の身体に研究ファイルを隠したらしい。プロジェクトを陰で操っているのは、国家の番人椿谷国防大臣だ!と服部は、今まで調べ上げた事を本田に教える。

服部は、ジローをしばらくここに置いてくれと頼む。

マサル君とミツコさんは?とジローが聞くと、無事だと服部は教える。

僕は任務終了…、そうだった…とジローは寂し気に呟く。

ミツコは大学生活に復帰し、アメリカ留学を間近に控えていたが、何か満たされないものを感じていた。

そんなミツコに会いに来た服部は、ジローと言うアンドロイド、無事だよ。会いたいかい?と聞く。

しかしミツコは、いえ…、会わない方が良いと思う。ジローはアンドロイドとしての任務を終わった訳だし、私たちも普通の生活に戻れたんだからと答えたので、服部は、そうか…、そうだなと答えるしかなかった。

食堂で、寂し気なミツコをからかうクラスメイトたち。

そんなミツコの姿を、ガラス越しにジローは密かに見つめていた。

プロフェッサー・ギルが、頭部の手術を終え手術台に横たわった横で、ハカイダーが起動して、ギルが愛用していた杖をへし折る。

黒いバイクに股がり夜のブリッジを走り抜けたハカイダーは、探し求めていたジローに出会う。

いたな!ジロー!と呼びかける相手に、お前は?とジローが聞くと、ハカイダー!アンドロイドの最終到達点だ!と答えると、ダークに生まれし者はダークに帰れ!と呼びかける。

しかし、ジローは、嫌だ!と拒否する。

では、ここで消去させるか、自分でシャットダウンさせるかだとハカイダーが迫ると、もう一つの選択肢を選ぶ。お前と戦う!とジローは答える。

ハカイダーは、キカイダーからの攻撃を受けてもびくともせず、効かぬな…。言っただろう。お前は不完全な機械だと言うので、その言葉を聞いたキカイダーは、プロフェッサー・ギルの事を思い出し、お前は!と驚く。

かかって来い、ジロー!とハカイダーは挑発するが、お前は機械ではなく人間ではないか!とキカイダーは驚く。

機械になって始めて分かった!この姿が如何に素晴らしいかを!とハカイダーが言うので、ミツコさんが言っていた。生きている者を傷つけてはいけない。僕は守らなきゃいけないとキカイダーは反論する。

キカイダーを完膚なきまで叩きのめしかけていたハカイダーだったが、マリが近づいて来た気配を察し、仕方なさそうにその場から去って行く。

その直後、兵士たちを従えたマリがキカイダーの元にやって来る。

先生、さぞご立腹かな?とハカイダーはうそぶく。

キカイダーは、本田の部屋で壊れた箇所を修理してもらっていた。

何で彼女は僕を守ったんだろう?とジローは呟く。

ミツコがマサルと共にマリに連行されて行った時の事を思い出していたのだった。

一瞬の感情って奴じゃないかな…、愛とか恋って奴だよ。好きな人には特にな…、人は愛している人のためなら戦えるものさと、その場にいた服部が答える。

俺だって、ジャーナリストだけじゃ食えないから恋愛小説なんて書いている。人間なんて思い通りにはいかない不完全な生き物なんだと呟く。

「アークプロジェクト研究所」変じて「ダークプロジェクト本部」の中では、ハカイダーに自分の脳を移植したプロフェッサー・ギルに、戦う相手を間違えないように。結局、君は光明寺に見えていたものが見えなかったんだな…と哀れんでいた。

その後、1人になったハカイダーは、ならば見せてやろう!破壊に満ちた混沌の世界を…と言い、モニターに映る地下室内で暴れ始める。

マンションに戻っていたミツコは、自分の留学を前に、日本に残すことになるマサルに、学校の寮で頑張ってねと伝えていたが、マサルは、ジローは殺されちゃったのかな…と案じているので、無事みたいだよ。服部さんが言ってたと教える。

するとマサルは、何で会わないんだよ。会って最後の挨拶くらいしていけよ。ジローだって哀しむよ…と文句を言う。

機械が哀しむ訳ないじゃないとミツコは答えるが、マサルは、納得いかねえとふてくされる。

その直後、テレビニュースで、栃木県の「アークプロジェクト施設」で事故があり火災が発生していると報じる。

何かが暴れている姿が望遠レンズで映し出され、駆けつけた自衛隊も対応出来ないでいると言う内容だった。

本田の部屋に匿われていたジローは、おじさん、僕の能力を上げる事は出来ない?と聞いていた。

制御を外すとお前の力を最大限にすることは出来るが、そこはお前の感情や指向を司っている部分だから、それを解除してしまうと、おめえって人間がなくなっちゃうんだ。止めとけ…と本田は諭す。

分かっている。でも僕は人間じゃない。機械だとジローは呟く。

服部のマンションにやって来たマサルは、ジローを匿っている事を知り合いの編集長に電話していた服部に、ジローは?と聞く。

行っちまったよ。メカの事はメカが決めるって…、男の顔だったよと服部は答える。

1人、施設を破壊していたハカイダーの元に、エレキを弾きながらジローがやって来る。

人間とは戦えなかったんじゃないのか?とハカイダーがバカにすると、お前は既に機械だ。機械の暴走は機械が止める!とジローは答える。

私を生み出した国や軍がひれ伏すまで戦う!とハカイダーが言うと、させるか!と叫んだジローは、キカイダーにチェンジする。

しかし、ハカイダーの強さは圧倒的で、マシンガンで撃たれたキカイダーをハカイダーは、やっぱり不完全な機械だなと嘲る。

成田に向かうバスに乗り込もうとしていたミツコの前に、マサルと共にやって来た服部は、ジローが殴り込みに行ったと告げる。

マサルも、姉ちゃんが悩んでいる意味が分からねえ!ジローはジローだ!と呼びかけるが、ごめん、マサル…と呟いたミツコはそのままバスに乗り込む。

仕方なく、服部のバイクに乗りかけたマサルだったが、バスの中の座席に着き、本の間に栞のように挟んでいた紅葉の葉を見たミツコは、急にバスを降りると、ダメ!やっぱり行く!ジローを止めに行く!と言いながら服部のバイクに駆け寄って来る。

マサルはかぶりかけていたヘルメットを姉に手渡し、それをかぶったミツコは服部のバイクに乗り走り去る。

1人残ったマサルは、頼むぜ、姉ちゃん!と呼びかける。

機械こそ人間の為にある。それは力だ!と戦いながら言うハカイダー。

違う!心があるから僕らは人間を守れるんだ!とキカイダーは反論する。

2人は徹底的に殴り合い戦う。

そこへ駆けつけて来たミツコが、もう良い!もう止めて!と声をかける。

身体は機械だけど、心は…、だから人間の犠牲になんかならないで!と叫ぶミツコは、何時の日か、何かの時、シャットダウンボタンを押してくれ。背中にある…と打ち明けたジローの言葉を思い出す。

僕はみんなの心を守りたいんだ!ミツコさんの心、マサル君の心だけじゃなく、人々の心も…。あなたのお陰で、僕は守ると言うことの本当の意味を知った。だから止めないで欲しい…そうミツコに話しかけていたキカイダーだったが、突如、怪し気な笛の音が聞こえ、キカイダーの様子がおかしくなる。

人間の心を守るだと?それこそ良心回路の弊害だな…。左手を差し出しながらハカイダーは言う。

強力な電磁パルスは、お前の良心回路を狂わす!

回路が狂ったキカイダーの左手の指先が鋭い爪に変型し、ミツコにつかみ掛かろうとする。

しかし、ジロー!と呼びかけるミツコの哀し気な声を聞いているうちに、突如正気が戻ったのか、キカイダーは自らの右手で左手の暴走を食い止めようと握りしめる。

僕は守るべき人を守る!これは任務じゃない!僕の意志だ!この身体壊れるまで君たちを守る!

何!良心回路を自ら止めたのか!と驚くハカイダー。

飛びかかって来たキカイダーともみ合いながら、床を次々に崩し、地下室へと落下する二体のアンドロイド。

キカイダーは、強力なハカイダーの力の前にぼろぼろの状態になりながらも叩き続け、力尽きた…と思われたその時、突然ハカイダーの身体をわしづかみにするとバックドロップでハカイダーの脳を床に叩き付ける。

分かっているか…、ジロー店、良心回路を遮断する事は光明寺を否定したんだ!とハカイダーは呟く。

違う!僕の心に従ったんだ!とキカイダーは答え、二人の身体は光に包まれ大爆発が起きる。

ジロー!呼びかけるミツコの前に戦いに勝利したキカイダーが姿を現す。

ごめん…、僕は、光明寺博士の心までは守れなかった…とキカイダーが詫びると、そんな事はない。あなたは私たちをたくさん救ってくれたよとミツコは答える。

その言葉を聞いたキカイダーはその場に倒れる。

その身体に、ジロー!と呼びかけながら抱きつくミツコ。

身体まで不完全になってしまった…と呟くキカイダーに、人間揉むんな不完全だから…と慰めるミツコ。

その戦いの様子をケイタイのカメラで撮影していた服部は、良い小説が書けそうだ…と満足げだった。

ジロー!ジロー!と呼びかけるミツコの目から流れ落ちた涙がキカイダーの顔に落ちる。

ジロー、私、ようやくやりたいことを見つけたよ。いつかお父さんみたいにジローを直してみせる。

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博士の脳は保管してあるだろうね?と車に乗った椿谷大臣が同乗していたマリに聞く。

やはり、光明寺が作った奴が生き残った訳か…。これからが真のダークプロジェクトの幕開けだ!

そう呟いた椿谷とマリを乗せた車が国会議事堂へ向かう。

TV版主題歌

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