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北海の叛乱

新東宝のカラー作品で、出演者の顔ぶれを観ていると、ほとんど東宝でもお馴染みの役者たちなのだが、この映画の時点で、キャストロールに(東宝)と付いているのは久慈あさみだけである。

鯨漁の話と言うのも珍しいが、組合運動の話と言うのも珍しい。

具体的な国名は出て来ないが、どうやらソ連抑留時代に共産主義に感化され、敵のスパイになってしまった男を敵役としているのも時代を感じさせる。

人間を資本家と労働者に二分し、資本家を敵と断じ、人間関係を分断し、組合を陰で操る男を二本柳寛が演じている。

外遊して進歩的な考えを身につけた資本家代表として上原謙が出ているが、この当時はまだ社長の息子役を演じられるほど若々しい。

そんな両者を結ぶ形で、無骨な砲手役の藤田進が登場しているが、女性に対してはどこか弱気で、勝ち気な恋人役の久慈あさみからなじられているのが珍しい。

自分の意に反して反乱側に組み込まれてしまう男を舟橋元が演じているが、安西郷子の恋人にしてはちょっと違和感がないでもない。

好人物風には見えるのだが、やや肥満体である為か老けて見えるのだ。

安西郷子の恋人役としては高島忠夫の方が向いているようにも思えるのだが、高島忠夫は特に目だつ所もない端役止まり。

当時の新東宝での立場は舟橋元の方が上だったと言うことかもしれない。

劇中で、上原謙が言う、「貧しい日本の財産だ!」とか「日本は独立国ですから、自国を自分の血と汗で守るのは当然だと思う」と言うセリフは興味深い。

当時から、自衛隊には賛否両方の意見があっただろうが、上原謙演じる主役は自衛隊必要論のようである。

ただし、当時の必要性は日本がまだ貧しかったからであり、今、経済力が付いた上での必要論とは少し事情が違っているように感じる。

カラー映像は、全体的に時代が経っている為か、発色が弱く、薄いと言うかしらっちゃけた画面になっている。

船上で船員たち働いたり、黒田が鯨を撃つシーンなどには、勇壮な海の男の歌や軍艦マーチなどが重なって、観るものの気持ちを高ぶらせる効果を狙っているようだ。

素材的には面白いが、娯楽映画としてはまずまずと言った所だろう。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1956年、新東宝、木村千依男脚本、渡辺邦男+毛利正樹監督作品。

総天然色イーストマンカラーの文字

タイトル

捕鯨船海南丸の阿部船長(江川宇礼雄)は、日本が間近に迫って嬉しそうに話しかけて来た森一等運転士(高島忠夫)に、日本には彼女が待っているんだろうなどと軽口を叩いていた。

他の乗組員たちは、組合側から要求していた給与の1割5分のベースアップが会社から拒否されたと言う電信が入ったと聞きざわめいていた。

上陸したら直談判しよう!などといきり立つ船員たちに、砲手の黒田篤男(藤田進)は、会社と良く話し合った方が良いとなだめる。

組合の代表として社長に掛け合ってくれと頼まれた川名理介(二本柳寛)は、話し合ってもどうせ無駄だよと冷めた意見を言うと、俺なんかより、社長と縁がある黒田君に頼んだら良いだろうと言い、全員、黒田に一任することにする。

日本に戻って来た黒田は、恋人の伊東満智子(久慈あさみ)と会社の屋上で久々に再会すると、今度は職場代表として本社通いですと伝える。

そうした中、羽田空港に降り立った飛行機から降り立ったのは、外遊から帰って来た社長の息子で常務の山本徹(上原謙)だった。

出迎えなど無駄を嫌う彼は、そうした儀式を断っていたが、1人で迎えに来ていた重役に会社の方は巧く行ってますか?と聞くと、緊急会議が行われていますと言うので驚く。

北斗漁業の社長(小堀誠)は、ベースアップ問題で黒田が来たと聞くと逆上していた。

黒田は彼が一等航海士にしてやった経緯があるので、その恩を忘れたのか!出せんもんは出せん!新造船の出費も嵩んでいるし!と息巻く。

ベースアップのためにはクジラ一頭200万に過ぎません。クジラを捕っているのは私たちなのですと黒田は頼むが、いつからそんな口を聞けるようになった?油賃や船は誰が出しているんだ?と怒鳴りつける。

黒田は1人出来たことが間違いだったと悟り、これは組合員全体の問題なのですと訴えるが、社長は一切聞く耳を持たなかった。

組合に戻った黒田は、社長の承諾を得られなかったと報告する。

それを聞いた船員たちは、新造のキャッチャーボート建造に賛成したのも、会社の生産向上の為だったのに、これじゃ、まるで闇討ちだ!と不満が続出する。

そんな中、ものは取りようだ、会社が営業不振と言われれば納得するしかないのでは?と森が意見を言う。

意見を求められた川名は、いくら組合が頑張ってみた所で、どうせ空手形をもらうのが落ちだといつものように冷めた返事。

しかし、収まらない船員たちは、組合で社長に直談判しよう!と言うことになる。

社長や重役と組合員たちとの話し合いがもたれるが、ワンマンの社長の頑さは変わることがなかった。

そんな会議が行われている本社に帰って来た徹は、廊下で満智子にぶつかり、コートを落とす。

その後、会議が行われていた社長室に入って来た徹は、父親の社長の横に座る。

社長は、息子の帰国を喜びながらも、香港からいきなり電報を打つなんて…と急な帰国をとがめるように言う。

徹は、車の中で大体の話は聞きました。今後は労使一体で行きたい。刺々しいことはしたくありません。この問題はとくと社長と話してみたいので、私に任せてもらえませんかと願い出る。

組合員たちは物わかりの良さそうな徹に一任することにし、その場は引き下がることにする。

重役だけが残った社長室で、徹は、経理部長の鳥居に、株主配当と重役給与の現状を聞く。

社長室の外には、帰国した徹にインタビューしようと新聞記者が来ていたが、会議は長引いていた。

その後組合にやって来た徹は、重役たちと話し合った結果、1割5分のベースアップは不可能と分かりました。

株式配当や重役賞与などを削った末、6分5厘のベースアップでどうでしょう?と妥協案を出すが、火野(江見俊太郎)たち組合員は不満を漏らす。

徹が、自分が欧州から買い付けて来た機材などに出費が嵩んでいるが、これは将来の会社の為であり、今の労苦がいつの日か必ず報われることになるはずですと力説すると、徹の昔からの友人である黒田は、彼を信じようじゃないですかと仲間たちに言い聞かす。

その間、部屋の隅に座っていた川名は終始無言だった。

その後、徹が会社の医務室に行き、女医の満智子と再会する。

扁桃腺炎と言う診断をした満智子は、カルテを書くため、名前と所属を尋ねる。

徹は、山本徹とだけ名乗るが、所属を言おうとせず含み笑いをするので、いら立った満智子は再度部署を聞くが、その時、満智子の父で会社の専属医である伊藤(高田稔)がやって来て徹に挨拶したので、両者は始めて、常務と専属医の娘と知る。

さては、この子にやられましたな?と伊藤が笑うと、我が社にもっともふさわしい女医さんですよと徹も笑う。

旧友である通ると久々に再会した黒田は、お母さんはずっと国かい?そろそろお嫁さんでももらって安心させてやれよと徹に言われると、君こそ結婚しろよ、君の帰朝第一声なんか大評判だったぞと褒め、うちの組合なんか穏健さ。中にはそうじゃない奴もいるがねと言うので、それは誰だい?と徹が聞いても、黒田は答えなかった。

その夜、川名の家には、川名の考え方に共鳴する大山(舟橋元)、火野、小谷(山室耕)等が集まり、川名の妹京子(安西郷子)が作るすき焼きを囲んで夕食を食べていた。

川名は、今日の徹の考え方に共鳴したような仲間たちに、ちょっと頭の良い資本家なら常務のように振る舞うさ。すっかりそれに乗せられている奴もいるじゃないか。黒田さ…と諌めるように言い聞かす。

そこにやって来た辻川は、食事中だと気づくと遠慮するが、上がって一緒にやれよと勧めた川名は、いるんだろう?と金を渡してやる。

辻川は感謝し、そこにいた大山、火野、小谷を川名から、この連中はみんな気のあった仲間だと紹介される。

肉が足りないことに気づいた大山が買いに行くと、醤油も足りないと言い出した京子も後を追って出かける。

肉屋の帰りに京子と出会った大山は、言ってくれれば僕が一緒に買って来たのにと話しかけて来るが、京子は、わざと出て来たのよと言い、2人は並んで夜道を歩き始める。

実は二人は恋仲だったのだ。

京子は、兄さんは、恋愛などすると、労働意識を失うなんて言うけど、そんなの冷たく聞こえるわ。渡すはもっと暖かいものが欲しいの。女なのね、やっぱり…と言うと、大山さん、その分あなたに求めているのと伝える。

寂しいのね、本当は…と言う京子に、分かるよ…と大山はいたわると、京子さん、僕はね、労働運動だって恋愛だって、純粋にやっていきたいんだと伝える。

そんなある日、本社医務室に、工場で銛を修理中、指を潰された工員が運ばれて来る。

伊東医師は、応急手当をしながら、来ん兄事故が起こるのは、今日の経営者として怠慢だと声を荒げる。

10万円足らずの安全装置を惜しむあまり、もう3人もけが人を出しているからだった。

満智子も、会社はどう考えているのかしら?と文句を言うが、そこにやって来た徹は、話は聞きました。原因は私たち会社の怠慢ですと満智子や伊東医師に詫びる。

徹は重役会に、修理工場の安全確保以下、8項目の改善案を提出するが、それを実行するには138万必要であり、予備費は100程度しかないので、約30万の不足だと経理部長(原文雄)から指摘される。

帳簿を確認した徹は、社長交際費100万円、重役交際費100万円と言うのは何です?どう言う経費なんですか?と聞くと、社長は、お前は若いから分からんのだろうが、社長の体面を築くため色々必要があるんだ!と文句を言って来る。

何故、明確におっしゃれないんですか?じゃあ、変わって僕が言いましょうか?と透が発言しようとすると、俺に楯突く奴は、例え息子だろうと重役を辞めてもらう!と怒鳴りつけると立ち上がり部屋を出て行く。

他の重役たちも、その後を追うように退出してしまう。

その後、社長は、財閥の駿河野邦之助(横山運平)邸を訪れていた。

北斗漁業の会長として、徹君を首にするのは反対します。若いうちは色々争ってみたいものです。彼も資本家育ちだから、その内、収まる所に収まりますよと、山本社長の話を聞いた駿河野は庭先で言い聞かす。

そして、うちの洋子との縁組み勧めてくれんかと駿河野は言う。

その洋子が、庭に茶を用意して待っていたので、踊りの方は?と山本社長が聞くと、近いうちに名取りになりますと駿河野が教える。

お披露目は?と聞くと16日だと洋子が答えたので、その時、徹を行かせますと山本社長は伝える。

しかし、名取りのお披露目の日、徹は、踊る洋子には全く興味がなさそうで、ひたすら手帳に仕事のことを書き込んでいた。

ある日、新造キャッチャーボートの建築現場にやって来た黒田が、工事担当者に、早くしてくれよと笑顔で完成を急かしていると、肩を叩くものがいた。

振り返ると川名で、ちょっと話があるんだと言うので付いて行くと、実は、マルハで腕の良い砲手を捜している、こんな二流会社で働くより良いんじゃないか?と勧めて来るが、俺はうちの常務とは別れられない間だから、見捨てて行けないんだと断る。

すると川名は、あの常務も口では進歩的なことを言っているが、その裏では、駿河野財閥との縁組みが決まりかかっているらしいじゃないか。所詮、資本家は資本家さとバカにしたように言う。

どうして君は、人を色分けするのか?同じ人間じゃないか、君はあちらの収容所でも同じ事をしてたな?とにかく俺は友を信じるよと言い、別れた後、財閥との結婚のことを会社の屋上で徹に確認する。

しかし、徹は、誰が言ったか知らないが、結婚するなら働く女性が良いかな。偉い所から嫁さんをもらうのも気が引けるじゃないかと答える。

川名の家に集まっていた大山は、最近、車内もひどく明るくなって来たなと、徹が戻って来たからの会社内の雰囲気を褒めるが、君たち少し甘くないか?目先の幸福感は麻薬みたいなものなんだよ。君は何を考えてるんだ?恋愛の寄生虫の代表になるなよと嫌味を言う。

その頃、黒田は満智子と、夜の遊園地でデートを楽しんでいたが、その時、先を歩いていた満智子が3人の酔っぱらいに絡まれる。

1人に抱きつかれた満智子は、止してよと相手の頬を叩いて逃れるが、後ろを歩いていた黒田が何もしなかったので、怖いの?船乗りって案外頼りないのねと文句を言う。

黒田は、大人げないからさと答えるが、気丈な満智子は、それで何ともないの?と言い返したので、満智子さん、怒るなよと黒田はなだめるが、そんな黒田の態度に満智子の気持ちは収まらなかった。

いよいよ、極東漁業の新造船が完成し、その進水式が行われる。

ゲストとして招かれた洋子がハンマーで叩くと、「富士丸」と命名されたキャッチボートが海に滑り込む。

その後、「富士丸」の設計者でもある徹が、船員たちを集め、海南丸の乗務員の大半に富士丸に乗ってもらいます。

その後、富士丸は北海道の基地に進行、新造船の性能を十分に発揮したいと思いますと挨拶する。

そんな徹を、喫茶店に呼びだした洋子は、自分も船に乗せてくれ。クジラを捕る所を観たいのと頼むが、無理言っちゃいけませんよと徹は戸惑い、洋子も、絶対、いけないの?と不満そうに確認する。

すると、徹は、ノルウェーの缶詰工場にいた時に染み付いたと言う両手の油の痕を見せ、2人の世界が違うことを分からせると、それぞれ、自分らしく悔いのない道を生きることですと言い聞かす。

それでも洋子は、私は父に言われて徹さんと付き合っているのではなく、自分の意志ですのとはっきり伝える。

ある日、川名の家に遊びに来た大山は、川名の姿が見えないので京子に聞くと、兄さんたち変なの。預金通帳や印鑑を私に預けて行ったのと言うので、じゃあ、僕も髪の毛を渡しておくかなと冗談を言うが、京子はそんな不吉なことを言う大吉を叱る。

それを見た大山は、これなら安心して恋人に出来る、正月前にはきっと帰って来るから、年が開けたら結婚しようと申し込む。

北海道の基地に向かう富士丸には伊東医師と満智子も乗り込んでいたが、伊東医師は船に酔ってしまったようだった。

慌てて医務室に逃げて行く伊東医師を笑いながら、徹は満智子に、将来も付き合って下さいますか?まじめな話なんですと切り出すが、満智子は何も答えずその場を立ち去ってしまう。

満智子がやって来たのは、話を聞いていたながらその場を離れて行った黒田の元だった。

常務さんの話、聞いてらしたでしょう?と問いつめる満智子に、邪魔をしたくなかったからさと黒田が答えたので、卑怯者!この前の遊園地の時もそう、御自分の安全だけが大事なんだわと満智子はなじる。

すると黒田は、僕みたいな気まぐれ男は、一旦海に出ると、女なんて忘れてしまう。あの大砲が恋人みたいになってねと笑うので、がっかりした満智子は医務室に戻って行く。

北海道の北斗漁業基地では、乗組員臨時募集を受け付けていた。

徹たちが審査する中、辻野がやって来て、5年前に通信しの資格を取ったと言うので、採用することになる。

一方、満智子は船員たちの予防注射をしており、そこに黒田がやって来るが、2人とも無表情のままだった。

外で待っていた川名に会った辻野は、どうやら入りそうですと伝える。

海の荒くれ男たちに対し、はい、次!はい、次!とテキパキ予防注射をして行く満智子の様子を観ていた徹は、なるほど、マグロを放り出すようですねと笑う。

やがて、いよいよ富士丸出航の日がやって来る。

クジラの姿を発見した黒田は、砲手として捕鯨砲の所に来ると、クジラが3頭いることを指で後ろに知らせる。

黒田が捕鯨砲を発射し、3頭とも命中させる。

そんな捕鯨砲に新しい銛を運んで来た大家が、足をふらつかせて銛を落としかけたので、黒田が助けようとして、その銛を右足に落としてしまう。

3時7分

直ちに医務室に運び込まれた黒田だったが、熱を測ると40度もあることが分かり、破傷風かも?と大山は言い出す。

一緒に運んで来た森一等運転士も、前例があると言い出す。

しかし、船内に血清の用意はなかった。

徹は直ちに、北海道基地へ電信を打たせる。

それを基地で受けた伊東医師は、5時間以内に戻れと返信させる。

徹は阿部船長に5時間以内に戻れるか?と聞くが、鯨を引いているので今のスピードが限界だと言う。

それを聞いた徹は、人命には代えられん、鯨を捨てようと決断する。

森一等運転士は迷いながらも、徹の命令で、やむなく鯨を繋いでいた綱を切る。

医務室につきっきりだった大山に、寝ていた黒田はもう休んでくれと声をかけるが、僕の為にこんな怪我をさせてしまいすみませんでした!と大山は詫びる。

僕の為に鯨を捨てたのか…と黒田は呟くが、大山は、僕の為にすみませんでしたと悔むばかりだった。

鯨を捨てた甲斐あって、何とか、時間内に北海道基地に戻れた黒田は血清注射が間に合い、命をとりとめる。

港にはマルハの船も入港していた。

基地の医務室に寝ていた黒田に、伊東医師が、満智子は無事東京に着いたが、君のことを案じて、強くなって下さいと言って来たぞと伝えると、黒田が信じなかったので、手紙を出してみせる。

しかし、本社では、山本社長が、たかが砲手1人の為に3頭もの鯨を破棄したことで数百万の損害だ!あいつは首にする!と激怒していた。

社長室に注射をしに来ていた満智子はそれを聞くと、黒田さんのことに関してはあくまで反対ですと意見を述べる。

一方、北海道基地の港内にいた徹は、そこで働いている女性の中に洋子がいるのを発見して驚愕する。

洋子は、最初は鯨の血を見て何度も貧血を起こしましたが、ままごとやお遊びじゃないことを分かって頂きたく、徹さんの世界を理解する為の苦行だと思ってやっていますと言う洋子だったが、でもまだ私ダメね。徹さんは遠くを歩いているみたい。好きな方がいらっしゃるんでしょう?と聞くので、僕はあにのような気持ちであなたの幸福を見守るつもりですと徹は答える。

翌朝、基地にいた阿部船長と通るの元にやって来た辻野は、鯨の大群を発見したと言う連絡が入ったと伝える。

地図でその場所を確認した阿部船長は、境界線の近くですよと警告するが、徹は、多少の冒険はしないと…と言い、出航の用意をさせる。

外で待っていた川名は、戻って来た辻野が出航と決まりました言うと、黙って頷く。

出航した富士丸に大きなニュースが飛び込んで来る。

自衛隊からの大量注文を北斗漁業が受けたと言うものだった。

これで、北斗漁業の収入源は安定することになったが、富士号の甲板の片隅に集まった川名の仲間たちは、自衛隊に油や食料を提供したら自衛隊は強力になり、その内戦争になった時、戦場に駆り出されるのも俺たちじゃないかと不満を募らせていた。

彼らは徹に談判に行くが、徹は、日本は独立国ですから、自国を自分の血と汗で守るのは当然だと思う。自衛隊に協力したくないと言うのは組合員全体の考えなんですか?と川名に問う。

その場で話を聞いていた森一等運転士は、組合の考えじゃなく君1人の意見だろう?と川名に言う。

しかし、川名は無言を貫き、その代わりに、小谷らが、船室を出ようとした徹に、会社の犬!生意気言うな!などと詰めよったので、黒田が思わず小谷を殴りつけ、統制が乱れる!負けるな!と徹に言い残すと去って行く。

すぐに火野が川名に、小谷が黒田に殴られたと知らせに行く。

痕は我々が実行するだけだと呟いた川名は、大山に、船室に置いてある油紙の包みを左舷のポンプに入れとけと命じる。

目的地点に来ても一向に鯨を発見できないでいた阿部船長は低気圧が発達して接近していると案じるが、徹は、僕が設計したこの船が南太平洋の暴風雨に耐えきれないとでも思っているのですか?と自信を見せ、航海続行を主張する。

その徹の指示を受けた黒田は、通信士の辻野に、本船は、明朝を期して航海を続行すると大和丸に無電を遅らせる。

大和丸の八隅船長(広瀬垣美)は、了解の旨返信させる。

その夜、雨が降る中、富士丸の中では、川名が隠していた拳銃を小谷や火野、辻野等に渡していた。

彼らは次々と見張りを倒して行く。

そんな中、反乱に加えられた大山は、京子さん、俺はどうしたら良いんだ!と迷っていたが、無電室に入って誰も入れるなと命じられる。

無電室に入った大山は、辻野が林通信土(小笠原弘)を殴り倒していたので驚く。

辻野は、そんな大山に見張りを頼んで出て行く。

その頃、ベッドで寝ていた黒田や森一等運転士は、エンジン音の以上に気づき起き上がると、ソファで仮眠していた徹を起こしに行く。

エンジン室に様子を観に来た徹、黒田、森一等運転士は、銃を持って待ち構えていた川名の姿を発見する。

川名は、この新造船に活躍されては困るんだ。船は我々がもらうよと笑う。

それを聞いた徹は、この船は一会社のものではなく、貧しい日本の財産だ!と主張するが、貴様のような外国かぶれは異国の地で死ねば良いんだと川名が嘲ったので、貴様、噓の電報を知らせたな?と策略に気づく。

しかし、川名は辻野に暗号を打てと命じる。

黒田は通信室に来て、反乱を外部に知らせようとするが、先に通信室に来ていた辻野が通信装置をその場で破壊してしまう。

黒田は止めろ!と絶叫するが、川名等に捕まってしまう。

それを振り切って逃げようとした黒田は足を撃たれてしまう。

船員室まで追って来た川名は、待て!逃げると撃つぞ!と脅し、1人残らず部屋に入れ!と命じる。

甲板では、脱出用のボートを降ろし始めていた。

川名たちはそれに乗り込もうとするが、大山だけは、嫌だ!と抵抗し、逃げようとしたので撃たれ、それを助けようとした黒田も撃たれる。

その頃、同じ北斗漁業の大和丸では、富士丸からの連絡が途絶えたことに八隅船長が首を傾げていた。

SOSもなしで連絡が途絶えるなど異常な事態だったからだ。

ボートに乗り込んだ川名たちグループを見た大山は、あいつらは外国船に乗り移る気です!と叫ぶ。

それを聞いた黒田は、傷ついた身体に鞭打って捕鯨砲に向かう。

そんな黒田に気づいたのか、ボートから川名が発砲し、黒田は倒れる。

徹が駆け寄って来て抱き起こそうとすると、最後の力を振り絞って立ち上がろうとする黒田は、撃たせてくれと頼む。

狙いをボートに定めた黒田は、捕鯨砲を発射し、ボートは一瞬にして砕け散る。

翌朝、無電室では壊れた無線機を修理しようと必死になっていたが、到底直る見込みはなさそうだった。

それを見ていた阿部船長は、本船はこのまま漂流するのか…と無念がる。

満身創痍で医務室に寝かされていた黒田は、大和丸は来たか?と聞き、外の様子を観ていた船員たちは、接近して来る大和丸の船影を発見する。

船員たちは喜び、接近して来た大和丸に、本船は航行不能、曳航を頼む!と伝える。

大和丸の八隅船長は、直ちに曳航の準備を指示するが、その時、遠くから急接近して来る国籍不明の怪しい外国船を発見する。

黒田や大山は残念だ!と悔し泣きする。

その時、保安庁の巡視船がやって来たことを船員たちは発見する。

それに気づいたのか、外国船が方向を変えたと徹は叫ぶ。

森一等運転士や徹が見守る中、医務室で寝ていた黒田は、大山、日本に帰れるぞと声をかけ、同じく負傷して寝ていた大山は、はい!と答える。

北斗漁業の東京本社では、山本社長が、今回の不祥事は、これまでの自分の封建的な経営方針が元凶であり、この機会に自分は退く。今後は、労使一体となり、移転の曇りもない民主的な経営をすることを希望すると発表していた。

そこにやって来た満智子に気づいた山本社長は、黒田はあんたの言った通りの男でした。黒田は身を犠牲にして船と人命を守ってくれたと伝える。

黒田は徹に、立派な会社にしてくれ。君なら必ず出来ると声をかけ息絶える。

黒田!と阿部船長、徹、大山、森一等運転士らが泣く。

黒田の身体にすがりついた徹は、黒田のシャツのポケットに入っていたロケットペンダントを発見する。

そのロケットの中には、満智子の写真が入っていた。

それを観た徹は、黒田!君は何故一言話してくれなかったんだ?僕たちの友情はそんな冷たいものじゃなかったはずだ!と呼びかけると、ロケットを黒田の手に握らせる。

阿部船長は船員たちに、黒田砲手は亡くなったと伝え、森一等運転士も、戦場の有しのような立派な最後でしたと告げる。

徹も、諸君等の健闘を祈ると言って、静かに息を引き取りましたと徹も発言する。

そんな富士丸に接近して来るボートには、伊東医師と満智子が乗っていた。

黒田の死を悼むように、船員たちが、全員、医務室の前の廊下に整列していた。

黒田の遺体は、日の丸の国旗で包まれていた。

その部屋に入ってきた満智子に、これ、来る抱くんが最後まで身につけていましたと言い、ロケットペンダントを徹が渡す。

遺体に寄り添い、崩れ落ちる満智子。

夕日の中、突堤の姿