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ハワイ珍道中

喜劇を得意とした斎藤寅次郎監督による、新東宝最初の色彩(イーストマン・カラー)映画。

教会の吊り鐘が鳴るお馴染みの会社クレジットも、色とりどりのバラの花に囲まれたカラーバージョンになっている。

1ドル=360円の時代であり、ハワイなど日本人にとって「夢の島」だった頃の映画である。

1954年と言えば、「君の名は」「七人の侍」「ゴジラ」「二十四の瞳」などが公開されていた映画黄金期であるが、それらは全部白黒で、まだカラー作品は珍しかった時代である。

主役は吉本のアチャコであるが、その娘に扮している江利チエミの方も、キャストロールでは(吉本)と出て来る。

2人も吉本所属のスターが出ていると言うことは、つまりこの映画、吉本興業との提携作品ではないかと想像する。

だから予算がそれなりに確保出来、ハワイロケが実現したのではないだろうか?

当時の新東宝が、そんなに儲かっていたとはとても思えないからだ。

後年のクレイジーキャッツ映画などもナベプロが出費して海外ロケをやっていたようなので、吉本が自社スターを売り出す為に予算を出していたとしても不思議ではない。

そこに、伴淳、益田喜頓、堺駿二等、関東喜劇人が加わり、ドタバタを見せてくれる。

冒頭の芸能会社での荷造りドタバタや、ハワイ行きの飛行機の中の一騒動、海で溺れたバタヤン(田端義夫)の足を、ジャッキのように現地人が上下すると、バタヤンの口から水が飛び出すなどと言う辺りは、昔のマンガ風表現である。

江利チエミは劇中で何曲か披露しているが、途中の宝探しなどに加わってないせいか、特にヒロインと言うほど目だっていない。

やはり、島の酋長と二役を演じているアチャコの主演映画と観るべきだろう。

伴淳と清川虹子も登場しているが、清川虹子のドタバタ演技に比べると、伴淳は今ひとつ精彩がない。

詐欺師的な役と言うことで、あえてお笑い要素を押さえていたのかもしれないし、何かスケジュール的な関係で、出演シーンが限定されていた為かもしれない。

その分、歌手のバタヤンがドタバタをやっているのが面白い。

そのバタヤンが憧れる社長令嬢を演じているのは、後に三橋達也夫人となる安西郷子。

東宝特撮映画「宇宙大戦争」(1959)等にも出演していたエキゾチックな美人である。

この当時は、まだあどけなさも残り愛らしい。

さて、キャストロールを読んでいると、「堺正明」の文字に気づいた。

実父の堺駿二も出ているのだから、これは「堺正章」の事だろうと察し、それらしき子供が出て来ないかと探していたが、案の定、子供が登場している。

潜水服を着て島に上陸して来た伴淳を発見する、島の現住民の子供である。

黒塗りメイクだし、ちょい役なのではっきり確認は出来なかったが、他にそれらしき子供は出て来ないので、おそらくそれがマチャアキのはずである。

調べてみたら、デビュー作はもっと前だったらしいが、子役時代のマチャアキを観られる貴重な作品である。

一見ぶっきらぼうな強面風だが、どこかとぼけた味わいがある斎藤達雄も楽しい。

斎藤寅次郎監督作品として、特に良くできているとも思わないのだが、カラーで美しいハワイロケだし、チエミやバタヤンの歌は聴けるし、当時の人気喜劇人たちのドタバタは観れるしで、それなりに気軽に楽しめる娯楽映画になっている。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1954年、新東宝、八住利雄脚本、斎藤寅次郎監督作品。

バラの花に囲まれた中央部の吊り鐘が鳴る会社クレジット

タイトル

富士山の上を飛ぶプロペラ機が羽田空港に降り立つ。

空港の前に止まっていたタクシーにやって来た花村大吉(花菱アチャコ)は、新聞社にやってくれと声をかけるが、どちらの新聞社?と運転手に確認されると、一番大きな新聞社や、人を探さなあかんのや!と言う。

「山田八千代様 約束の日時、約束の場所、約束の時刻に待つ 花村大吉」と書かれた尋ね人欄を自宅で読んだ山田八千代様(坪内美子)は困惑した表情をしていた。

そんな八千代の側にやって来た娘の御園チエミ(江利チエミ)は、ハワイ公演を前に、これから芸能事務所に打ち合わせに出かける所だった。

八千代は、自宅で、琴を教えている師匠だった。

その頃、花村大吉は、皇居の二重橋を拝んでいた。

チエミが出かけた後、八千代は兄で「辰巳屋」と言う果物屋をやっている兄千三(潮万太郎)とその妻お京(宮川玲子)夫婦を訪ねて、問題の新聞を見せる。

実は、チエミは花村大吉から預かった娘で、八千代の本当の娘ではなかったが、長年、父親は昔に死んでしまったと教えて育てて来ただけに、情も移っているし、私のチエミを、今さら実の父親に返す事は出来ないと八千代は言うのだった。

「富士芸能社」では、東(益田喜頓)と酒井(堺駿二)がハワイ公演の為の荷造りの最中だったが、どちらも間が抜けている為に、東を荷物と一緒に縄で縛り付けようとしたり、床に落ちていた小銭を拾おうとした東が綱を話したばかりに、綱を引っ張っていた酒井が後ろに飛ばされピアノにぶつかったり、布団類と一緒に酒井を木箱の中に押し込もうとしたりドタバタの連続だった。

そこにやって来たのが、ハワイ行きをお膳立てしたブローカーの半田(伴淳三郎)で、その直後に事務所にやって来たのが歌手の花園チエミだった。

半田は、ハワイではもう、君のポスターが全土に貼り出されているよと見本を見せながら説明する。

絵画館前に車でやって来た大吉は、ベンチに座っていた八千代に声をかける。

大山さん!と八千代が振り返ると、あんたも達者でベリーナイス!と再会を喜んだ大吉は、自分は今、パイナップル工場を経営しているミリオネア、百万長者になった。この15年間、苦労した時は、今日と言う約束の日を思い出し頑張って来た。娘のまち子に会いたい一心やった。まち子は立派になりましたやろな?まち子は?うちで待っていますのか?と興奮気味に聞く。

しかし、八千代は、あの子は、5年前にふとした風邪で死んでしまったんです…と言い難そうに答える。

それを聞いた大吉は仰天し、ミーはあの子に会うことだけを楽しみに生きて来たのに…、たった一度抱いて帰るつもりやったのに…、ベリーマッチ哀しゅうございますと嘆くと、あの子のいない日本に用はない。ハワイに帰りますと言うと、その場から車に乗って帰って行く。

側で、そっと妹の様子をうかがっていた千三も八千代に近づくと、去って行った大吉を見送りながら、気の毒に…と同情する。

ああ言うより仕方なかったんです。あの人には本当に申し訳ないと思うけど…と八千代も苦しい胸の内を打ち明ける。

その後、「富士芸能社」に立ち寄った八千代は、チエミのハワイ公演を取り止めてくれと申し込んだので、半田や東は困惑する。

向うで父に会いにでもしたら…と八千代がいきさつを説明すると、チエミちゃんがそのまち子なんて分かりっこない。我々を信用して下さい。大丈夫ですからと東は八千代に言い聞かせる。

その夜、花火が上がる中、大吉は大勢の芸者を侍らせ、ヤケ酒を飲んでいた。

泣いている大吉に気づいた芸者はん子(神楽坂はん子)が訳を聞くと、ベリーマッチ、哀しゅうございますと言うので、この世の中、哀しいことだらけよと慰める。

こうなったら、やけのやん八、踊ってこませ!と言い出した大吉は、はん子が歌う歌に合わせ、他の芸者衆と一緒に座敷で踊り始めるのだった。

夜空を飛ぶ旅客機の中では、チエミと「富士芸能社」の3人が浮き浮き気分でハワイに向かっていた。

半田は、ハワイでは最高級の「ロイヤルハワイアンホテル」に4部屋予約してあるし、空港では女たちがレイをかけてくれるぞなどと言い、東たちを喜ばせるが、そんな半田に、何度もフライトアテンダントが何度も食事を運んで来るので、東が不思議がると、惚れてるんだよと半田はすました顔。

半田が1人で食事を始めると、機体が360度横転するが、半田は全く気にしない様子で食べ続けているので、隣に座っていた東は驚く。

半田の隣で眠っていた酒井がWCに行くと座席から立ち上がるが、寝ぼけているのか、トイレのある方とは逆の方向へ歩いて行き、トイレのドアと勘違いして搭乗口の扉を開けて、そのまま外に落ちてしまう。

驚いた半田や東が搭乗口の前に駆けつけ下を覗き込むと、引っかかっているのを東が発見。

引き上げろ!と半田が命じると、東が引っ張り挙げたのは上着だけ。

何度か同じような失敗を繰り返した後、何とか引き上げた酒井はパンツ一丁の姿だった。

ハワイの空港に降り立った一行だったが、レイをかけてくれたのは全員大男たちで、しかも、レイの代金を要求して来たのでがっかりする。

車で「ロイヤルハワイアンホテル」に来てみると、フロントで交渉していた半田が車に戻って来て、手違いで150ドルの部屋の予約が全部パーになってしまったとマネージャーが泣いて詫びている。仕方がないので、もっと上等のホテルに行こうと言うではないか。

結局、一行が到着したのは「小松屋ホテル」と言う聞いたこともないホテルだった。

さらに、半田は、実は「花園チエミショー」の切符が売れないと言い出す。

そんな中、1人の船員姿の青年川畑(田端義夫)が東に近づいて来て、おい元気か!などと親し気に話しかけて来る。

東は、その青年に全く見覚えがなかったんもで戸惑うが、川畑の方はずっと以前からの知り合いのようななれなれしさで、切符の売れ行きが悪いんだって?興行を知らんのか?宣伝だよ、宣伝!後のことは俺に任せとけ!と言い出す。

結局、川畑の言いなりになり、全員、チンドン屋に扮してハワイの街の通りから浜辺まで練り歩くことになる。

そして、「花園チエミショー」をやる国際劇場前まで客を誘導して来た半田は、歌の続きが聞きたい方は、入場料を払ってくれと口上を述べる。

この作戦が当たって、何とか無事公演は開催され、川畑までもがギターを弾きながら歌を披露することになる。

そんな川畑は、二階特別席で観ていた美人を見つけ、舞台上で手を振る。

後ろで演奏しているのは、半田、東、酒井のトリオ以外は、絵に描いた書き割りで、その半田たち3人も、正面から観ると正装しているように見えたが、実は正装風エプトンを付けているだけで、背中側は裸の状態だった。

背後の書き割りはロープで支えられており、自分の出番が終わった川畑がそのロープを舞台袖で引っ張っていたが、そこにチエミ宛の花束が届けられる。

英語で書かれたメッセージは全く読めなかった川畑だが、「白河」と言う名前だけは判読出来たので、花束自体は投げ捨ててしまう。

舞台では、チエミが歌を歌っていた。

さらに、川畑には、サインをねだる現地の女性たちが集まって来るが、結婚してくれるならしてやるよなどと川畑が言うので、女性たちは怒ってしまい、川畑は持っていたロープを手放してしまう。

すると、ロープで支えられていた楽団の書き割りが宙に浮かび出し、ステージ上は大混乱になってしまう。

それでも、初日は大盛況で、「小松ホテル」の部屋に戻って来た一行は、半田の音頭で、成功を祝って乾杯をすることにする。

一緒に付いて来た川畑のことをまだ東は思い出せず首をひねっていたが、川畑は、今に分かるよと言うだけ。

ホテルのマダム清子(清川虹子)は、東が、死んだ主人にそっくりだと言い、用意していた衣装を無理矢理着せ、大きな花瓶を抱かせる。

すると、その部屋にかかっていたマダムの死んだ亭主の絵にそっくりなのことが分かり、全員大笑いをする。

そんな中、チエミに東京の八千代から電話がかかり、初日は大成功だと嬉しそうにチエミは報告、電話を代わった東も、チエミちゃんのことは大丈夫ですと伝える。

そんな電話の横のレジから、半田は金を盗もうとしていた。

電話を終えたチエミは、母さんがむやみに外に出るなって言ってたと不機嫌そうに呟く。

その後、車で白河の屋敷を訪れた川畑は、ちょうど日本から帰り着いた大吉を見かけたので、あんたが白河社長ですか?と声をかけるが、大吉は、自分は秘書兼雑用係…、言わば下男みたいなものですと自己紹介する。

川畑は、お嬢さんに招待されて来ましたと言うが、ほんまかいな?と怪しみながらも、大吉が屋敷の中に連れて行くと、そこにやって来たアンナ(安西郷子)が、ジョー帰ったの?娘さんには会えたの?と大吉に声をかけて来る。

それ聞かれると、又、泣きとうなる。遊ばせ、ごめん!と言うと大吉は屋敷に逃げ込む。

アンナは、昨日はどうも!と挨拶して来た川畑を観ると、あなた御1人で来たの?他の方は?と驚き呆れる。

アンナは、昨日、チエミに花束を贈ったつもりだったからだ。

一方、ゴルフ練習だった主人である白河社長(斎藤達雄)に会った大吉は、今まで何をしてたんだ!言いつけた用はせんで、持たせた金は全部使いおって!と大目玉を食らっていた。

娘はどうしたんだと聞かれた大吉は、5年前に死んでしまいましたんやと答えるが、何もお前の娘が死んだからって、わしの金全部使うことないじゃないか!と白河社長は呆れ、そ罰として、お前は今後、パイナップル工場の門衛、夜はボートの番をやるんだ!と命じる。

それを聞いた大吉は、それじゃあ、刑務所より酷うおまっせ…と意気消沈しながらも、ゴルフボールをセットしてやる。

それを白河社長が打つとガラスの割れる音が響いたので、白河社長はその場で大吉に金を握らせ、詫びに行かせる。

庭先では、川畑がウクレレ片手に歌を歌い、アンナがそれに合わせて、楽しそうにフラダンスを踊っていた。

楽日の日、東たちは早めにホテルを出発しようとしていた。

マダムの清子は名残惜しがり、特に、亡き主人にそっくりだった東との別れは辛そうだった。

その頃、半田は、部屋にやって来た川畑から金を無心され、冗談言うな、金なんか貸せないと断っていた。

川畑が言うには、すぐに百万長者になれるんだ、実は、キャプテンキッドの宝の隠し場所を記した地図を持っているのだと言い、その実物を半田に見せる。

この島に行く船がいるので、その費用を貸して欲しいと言うが、半田はバカにして笑うだけ。

その後、全員で海岸に来て、裸に腰ミノ姿になるとフラダンスに参加してみるが、その途中、こっそり抜け出した半田は、脱ぎ捨ててあった川畑の福から地図を取り出すと、それを写真に写してしまう。

チエミもフラダンスを踊っていたが、途中で飽きたのか、海辺を歩いてみることにする。

すると、一隻のヨットの前で1人の男と出会う。

ボートの番を命じられていた花村大吉だった。

大吉はチエミを観ると、あんたはどこの子や?と聞き、チエミは東京の子と答える。

毎日洋食ばっかりで、みそ汁飲みとうなったやろ、こっちお出でと言い、大吉は自分用に作っていたみそ汁を振る舞おうとする。

そして、年を聞かれたチエミが17よと答えると、生きておったらうちの娘と同じ年頃やな…と大吉が嘆いたので、娘さん、亡くなったの?とチエミが聞くと、5年前、日本で亡くなりましたと大吉は答える。

私も、パパが死んじゃったのよ、ずっと昔にと教えたチエミは、ママは東京で私の帰りを待ってるの、優しい母よと言うと、おじさん、元気でね!今日はじめて会ったのに、おじさんのことが好きになっちゃったと言う。

大吉の方もチエミを気に入ったので、明日も来たら良いと勧めると、明日は来れないのとチエミは言い、自分を呼ぶ声が聞こえたので、さようならと挨拶して去って行く。

挨拶してその場を立ち去って行く。

翌朝、ホテルにいた川畑は、アンナが車で迎えに来たので、それに乗ってドライブに出かける。

それを見送った東と酒井は悔しがるが、朝食を食べようとすると、その朝食は別人が食べ始めたので、唖然とする東だったが、ホテルのボーイが、宿泊料の請求書を渡して来たのでさらに驚く。

これは半田が払ったはずだが?と言うと、やって来たマダム清子が、半田さんはいなくなったと言うではないか。

半田は、公演の売上も契約金も何もかも持って逃げ出したことを知った東と酒井は、騙されたことを悟り悔しがる。

一方、ドライブで見晴し台にやって来た川畑は、そこに停めてあった他の車の中を観て、みんな、車の中でカップルがいちゃついているのでがっくりし、地面に大の字に伸びる。

それを観たアンナは驚き、クーラーボックスの中の水を顔にかけてやる。

その後、岩場に来て釣りを始めた川畑だったが、アンナがタモですくってやった獲物は、メダカのような小さな魚だった。

さらに、サーフィンなどをやっている海岸にやって来た2人だったが、船員のはずの川畑が全くのカナヅチで、あっさり溺れて他の男たちに救助されたのを観てアンナは呆れる。

口から水を吐きながらも、川畑が僕は記録を持ってるんだと自慢するので、何の記録?とアンナが聞くと、浮気と答える。

その頃、金を半田に持ち逃げされた東や酒井は無一文になり、日本にも帰るに帰れず、「小松ホテル」の物置小屋に厄介になることになる。

日本に帰る為に稼がないといけないななどと酒井と話し合っていた東は、つい、秘密にしていたけど、ち網ちゃんのお父さんは生きており、パイナップル工場の社長なんだそうだ。花村大吉と言うそうなんだけど、助けてもらおうなどとついしゃべってしまうが、ちょうど部屋に戻って来たチエミがそれを聞いてしまい、そんな話、誰が言ったの!と東に詰め寄る。

東は、しまったと思いながらも、内緒なんだけど、お母さんだよと教える。

酒井も、こんな可愛くなったチエミちゃんを、今さらお父さんに持って行かれるのが耐えられなかったんだろうと八千代の行動を弁護する。

その日から、バイトを始めた東が芝刈り作業をしていると、同じくバイトで、アイス売りをやっている酒井が車でたので、アイスをくれと頼む。

酒井がアイスを渡すと、そのまま仕事に戻ろうとするので、料金を請求すると、東は、友達じゃないかとごまかして金を払おうとしない。

それを根に持った酒井は、その後、ガソリンスタンドでバイトをやっていた東の所に来てガソリンを入れさせると、友達じゃないか、サンキュー!グッバイ!と笑って、料金も払わず立ち去ってしまう。

続いて、東は、靴磨きのバイトを始めるが、側で記念写真屋のバイトを始めた酒井が、勝手に靴を磨かせようとするので怒る。

すると、酒井も怒り、自分で勝手に靴墨を指で瓶からすくい取ると、ジャムでも塗るように自分の靴にたっぷり塗り始める。

互いに言い争いになるが、じゃあ、これまでのことは全部チャラだと言うことで仲直りすることになるが、酒井と握手した東の手は靴墨まみれになる。

その頃、パイナップル工場をやっていると言う父を捜しに来たチエミは、門衛をやっていた大吉に再会する。

大吉は、ジャックと言う男に水まきの仕事を任すと、チエミの話を聞いてやることにする。

ここの社長、花村大吉って人じゃないの?警察に聞いて来たけど、良く分からないって…、実はその七が私のお父さんなの。今日、急に分かったのよと言うチエミの話を聞いていた大吉は驚く。

あんたのお母さんの名は?と聞くと、山田八千代と言い、お琴の先生をやっていると言うではないか。

それを聞いた大吉は、ユーのママは悪い人や。噓つく人に良い人なんていてまへんと大吉が言い出したので、お母さんの悪口言わないで!とチエミは怒り出す。

詫びながらも大吉は、あなたは心のきれいな人なんやなと感心する。

お父さんに会いに来たのかい?と聞くと、お父さんのことは長い間にすっかり諦めちゃったけど、実はお金が借りたいの。一緒に来た人がお金を持ってどっかに行っちゃったので旅費がないのとチエミは説明する。

それを聞いた大吉は、ユーのパパが金持ちならええんやけど、1ドルもやれんなんて…と今の自分の境遇を嘆きながらも、パパもきっと会いたがっていますやろとごまかす。

そんな大吉が泣いていることに気づいたチエミは、おじさんの眼から水が出てるわよと言う。

毎晩、夢にまで観ていた人が、今ここに座ってますがな~、私、どうしましょう?と、大吉は、ベンチに腰掛けていたチエミの背後で、自分こそ実の父親と名乗れないジレンマに悩んでいた。

一方、川畑とのデートを楽しんだアンナは、店でレイを買うと、それを川畑にプレゼントし、このレイを海に放っていくと、又ハワイに戻って来ると言う伝説があるのと教える。

「小松屋ホテル」にチエミや東、酒井たちが戻って来る中、川畑も、アンナの車で戻って来るが、アンナの車が走り去ると、白河の屋敷であったことがある川畑を先ほどから隠れて待ち受けていた大吉が声をかけ、どうしてもまとまった金が入りますのやと頭を下げる。

それを聞いた川畑は、明日にでも僕は千万長者になれるんだが…と言うので、何かぼろい仕事おまへんやろか?と大吉が聞くと、金儲けの仲間に入るかい?しかし、船が必要なんだがな…と川畑は言い出す。

船なら、ちょうど、船の番人しとる所やと大吉が言うと、じゃあ、それをすぐに出航出来るようにしといてくれ。君には分け前として600万ドルは渡せるだろうと川畑が言うので、それやったらいっぺんに。ミリオネアや、おおきに!と大吉は喜ぶ。

ホテルに帰って来た川畑は、東と酒井から半田が消えたと聞かされると、出し抜かれたと悟り、宝を横取りされてたまるか!と意気込み、2人にも手伝うなら10万ドル払うと持ちかける。

翌日、大吉が用意したヨットに乗った川畑、東、酒井、大吉の4人は、キャプテンキッドの宝が眠ると言う島を探しに出航する。

やがて、それらしき島を大吉が見つける。

その島には、半田が、用意した特殊な潜水服を着て先に上陸していた。

そんな半田を見つけたのが、木に登っていた現地人の子供(堺正明=堺正章?)で、すぐに現住民の集落に知らせに向かう。

やがて、川畑の地図を写して引き延ばした写真の地図に書かれた白骨が乗った棒切れを発見する。

すぐに、用意したスコップでその場を掘り始めた半田だったが、子供から侵入者の知らせを受けた集落では、太鼓を叩き、角笛を吹き鳴らし、集まった原住民たちが、酋長(花菱アチャコ-二役)の指示のもと、丸焼きの準備と食卓用テーブルを並べ始める。

必死に穴を掘っていた半田は、突然頭上から落ちて来た網に引っかかり、現住民に捕まってしまう。

村に連れ去られた半田の代わりに、その場には脱ぎ捨てられた潜水服だけが残っていた。

そんな島に、大吉や川畑等が乗ったヨットも到着し、彼ら4人はジャングルを分け入り、地図に記された宝の場所に近づいて行く。

途中、バナナがなった気を見つけた堺は、立ち止まって食い始める。

東も見つけ、同じようにバナナを食べ始めるが、先を急ごうと言う川畑や大吉に引っ張られ、歩き始めた次の瞬間、仕掛けられていた大きなトラップに引っかかって3人は檻の中に入れられてしまう。

そこに罠を仕掛けた現住民が近づいて来たので、バナナを食べていた堺は慌てて逃げ出す。

川畑等3人が入った檻は、原住民たちに担がれ、村に持ってこられる。

先に酋長の前に連れて来られた半田は、そのまま檻になった小屋の中に入れられる。

続いて、持ってこられた檻から出た東は天ぷら!川畑は刺身!大吉はマカロニグラタン!と料理法を現住民の大臣(星十郎)に指示されると、やはり、檻になった小屋に入れられる。

そこで半田と再会した東たちは、金はあるのか!と迫ると、銀行に預けて3倍にして返す!と半田は悪びれもせずに答える。

一方、ジャングルの中に1人残された酒井は、近くをうろついているうちに、半田が残して行った掘りかけの穴、宝の地図、そして黄色い潜水御福を発見し、もしやと思って穴を掘り進めてみる。

すると、穴の中に宝箱が入っていたので、喜んだ酒井は、その中の財宝を、袋代わりに潜水服の中に詰め込み始める。

その頃、捕まっていた半田は、この際、金の話はさらっと忘れようなどと東たちに話していた。

そして、この場を脱するため、時計を出せと言い出す。

半田は集めた腕時計やライターを、門番をしていた現住民に見せ、これをやるから、今すぐ鎖を解けと身振り手振りで伝える。

それが通じたのか、現住民の2人の門番はすぐに檻の入り口を閉めていた鎖を外したので、外に出た半田が腕時計を渡す振りをしている時、背後から東と川畑が現住民の後頭部を殴って、ふらついた所を、檻の中に押し込んで閉じ込めてしまう。

その後も現住民を気絶させると、4人は奪い取った現住民の衣装を身につけ、現住民に成り済ますのだった。

そして、ジャンケンをした結果、負けた大吉には、酋長の家に入り、ぽかりとやっつけて来いと半田は命じる。

嫌々ながらも、仕方なく酋長の家の中に入ってみると、ちょうど、女が果物を取りに出て行った所だった。

大吉は、ベッドで寝ていた酋長の頭を大きなハンマーで殴ると、気絶した酋長の身体をベッドの下に隠し、自分が酋長のかぶり物をかぶって成り済まそうとする。

そこに女がバナナを持って戻って来るが、首をかしげているものの、人が入れ替わっているとか思っていないようだった。

それを良いことに、大吉はその女に、私と一緒に遊びませんか?等と口説き始める。

その頃、潜水服に財宝を全部詰め込んだ酒井は、それを背負って逃げ出そうとするが、何故か、潜水服が首を絞めて来るではないか。

生きてる!と驚いた酒井は、起き上がった潜水服と格闘を始めるが、潜水服が空手チョップをかまして来たので倒れ、そこにやって来た原住民たちは大喜びする。

酋長に化け、ベッドの上でのんきに女とバナナを食べていた大吉は、ベッドの下で気絶していた酋長が眼を覚ましかけると、ベッドの上からまた頭を殴りつけ眠らせる。

そこに、現住民の大臣たちがやって来て、何ごとか表を指して騒ぎ出したので、良い所を邪魔された大吉は面倒くさがり、あっちへ行け!と命じるが言葉が通じない。

あんまり大臣たちがうるさいので、何ごとかと家の前に出て来てみると、酒井と潜水服が連れて来られていた。

大臣は酒井にミソ田楽!と料理法を命じるが、大吉は、こいつは毒気があるので、アイスボックスに入れておけと命じ、黄色い潜水服を指すと、付け焼き!と料理法を指示する。

檻になった小屋に入れ垂れた酒井は、そこに現住民が何人も気絶して入れられていたので驚く。

原住民たちは、火を焚き、その周りで踊り始める。

そうした中、現住民に化けて半田や川畑も、女たちを両手に抱え、満足そうに参加していた。

その時、ベッドの下で気絶していた本物の酋長が目覚め、家の前に出て来たので、先に酋長を演じていた大吉と鉢合わせになる。

その頃、牢に入れられていた原住民たちも気がつき始めていた。

踊りの中央のたき火に丸焼きにされていたのは、あの黄色い潜水服だった。

大臣たちは、そっくりな2人が出現したので焦るが、そこに家の中から出て来た酋長の奥さんが、両者の体臭を嗅ぎ始める。

そして、本物の酋長の方を指して「ホンモノ!」と宣言したので、大吉は、バレた〜!と叫ぶと慌てて逃げ出す。

半田や川畑、東も一緒に逃げ出す中、やはり現住民に化け小屋を抜け出した酒井も合流するが、酒井は財宝を詰めた潜水服が焼かれているのを観て絶叫する。

しかし、原住民たちが追って来たので、もはやそれどころではなく、4人は必死にジャングルに分け入ると、浜に置いていたヨットに乗り込み、這々の体で島を脱出する。

その頃、チエミの方は、ハワイでレイを売りながら歌っていたが、そこにやって来たアンナは、歌い終わったチエミから困っている状況を聞くと、日本に御帰りになる費用くらいだったら出してあげられるわと言い出す。

でもそれを辞退したチエミは、自分の父親はパイナップル工場の社長をやっている花村大吉と言うのだと打ち明ける。

それを聞いたアンナは、内心驚きながらも、大吉は使用人だとは言い出せず、良く似た方を知っているから紹介するわと申し出る。

ヨットに乗って脱出した4人は、空腹に耐えかね、大吉が作る真似をするエア寿司を東と酒井が食べる振りをすると言う状況になっていた。

一方、川崎は半田に、売上の金は本当に持っているのか?と詰問していた。

半田は、ダイジョービ!と答える。

自宅に帰って来たアンナは、ゴルフ場に行くと言っていた父親の白河が、まだ庭先で練習をしていたので、カピオラには行かないの?パパの健康の為に良いと思うのと聞く。

しかし、白河の方は、きっとスクールが降るから、こっちにいる方がましだよなどと言うだけで、一向に出かける様子がない。

いら立ったアンナは、ゴルフバックを強引に持たせ、早く行ってらっしゃい!と無理矢理白河を追い払う。

そして、屋敷にこっそり招いていた半田と大吉を呼ぶ。

大吉はアンナの計画に乗り気ではなさそうだったが、せっかくお嬢さんがお膳立てをして下さったんだからと言う半田にも言われ、渋々メイドたちに無理矢理奥へと連れて行かれる。

「小松屋ホテル」では、いよいよ日本に帰ることになったチエミと東、酒井らと、別れを惜しむ清子が、一緒に記念写真を撮っていた。

清子はまた、東に亡き夫と同じ衣装を着せ、大きな花瓶を持たせてポーズを取らせる。

その時、電話がかかって来たので、チエミと酒井が場を離れたので、清子と東だけが写真に写ることになる。

そこにアンヌと半田がやって来て、大金持ちが招待してくれるんだってと告げる。

東も喜んで同行することにしたので、いつの間にか記念写真のポーズを取っていたのは清子とボーイだけになっていた。

屋敷にやって来た一行を出迎えたのは、すっかり金持ち風の服を着させられた大吉だった。

アンナは連れて来たチエミに、この方が花村大吉さんよ。あなたが探していたパパなのよと紹介する。

東と酒井は、おめでとう!と祝福してくれるが、唖然と立ち尽くしていたチエミは、でも、どうして工場の前で会ったと来、そう言ってくれなかったの?それに、どうして社長さんが門衛なんてやっているの?都議門をぶつける。

それを聞いた東は、人間、出世しても色々あるんだよと助け舟を出し、立派な方だよと半田も大吉のことを褒めそやす。

そんな屋敷に戻って来たのは、結局、ゴルフ場に行かなかった白河社長だった。

それに気づいたアンナは、慌てて、父親を台所の方へ連れて行く。

親はなくても小は育つとは良う言いましたな…と大吉は、まだ釈然としていない様子のチエミを前に1人感激していた。

そんな大吉たちが座っていたテーブルに飲み物を運んで来たのは、コックの服を来た白河社長だった。

娘に事情を聞かされ、無理矢理僕の役をやらされていたのだが、それに気づいた大吉は悪のりし、飲み物が2杯じゃ足りないじゃないか!とか、金庫の中にある金や小切手を全部持って来なさいと命じる。

小切手!と白河社長は驚くが、横に付いていたアンナがなだめるので、仕方なく奥へと下がる。

川畑はアンナに、自分もみんなが変える舟に乗って行きますと伝える。

そこに、白河社長が札束の大和小切手調を持って来たので、大吉は、金ならなんぼでも持って行きなはれ!と言うと、東は、船賃は何とか都合が付きましたからと断る。

それを聞いた半田は驚き、なんて言うことを言うんだ!もらえるものはもらっとけ!と横から口出しする。

しかし、チエミは寂しそうに、こんなにお金を持っているのに、15年も私を放っておいたの?私はどんなに貧乏でも、私のことを愛してくれるパパが良かった、さっきからお金の話ばかりしてるけど、私は貧乏な方が良いわと嘆く。

その言葉を聞いた大吉は愕然とし、こんなことなら、苦労して、百万長者に化けるんじゃなかったと悔むと、もうこんな金、あんたたちにあげますと言うと小切手を乱発し、札束も部屋中に放り投げる。

その後、客船に荷物を積み込む東や酒井の姿があった。

酒井は、ハワイまで来て荷物運びをやるとは思わなかったとぼやいていた。

チエミとを見送りに来ていた大吉に、一緒に付いて来ていたアンナが、ジョー、もう時間よと教える。

ミーは世界一の大バカでした。パパは百万長者じゃない。パイナップル工場の小使いや。一生懸命働いて、来年日本に帰ります。その時、お父っつぁんといっぺんだけ言うて下さいとチエミに頼む。

すると、チエミは、お父さんと呼び大吉に抱きつく。

こんな嬉しいことはない!育てのお母ちゃんに宜しく。あの人は本当のお母さんより立派な人やと大吉はチエミに言い聞かす。

一方、川畑はアンナに、今度は船長になって戻って来るよと言い、別れを惜しんでいた。

アンナとキスをしようと顔を近づけた川畑だったが、呼びに来た酒井とアンナが入れ替わり、酒井とキスしてしまう。

川畑の歌が流れる中、舟に乗ったチエミが手を振る。

それを見送る大吉やアンナも岸壁で手を降る。

川畑も手を振って、アンナからもらったレイを海に投げ込む。

客船は静かにハワイを離れて行く。