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白昼の襲撃

暴走する若者を描いた青春犯罪映画。

学生運動華やかりし頃、その学生にもなれないで社会の底辺でくすぶっている少年院帰りの若者の無軌道な生活振りと、その転落の様子が描かれている。

今改めて観ると、この時代に良くあった映画の典型のように感じる。

ギラギラした目つきでエネルギッシュな印象の黒沢年雄の個性は良く出ており、低予算で地味な印象ながら、通俗犯罪劇としてはまずまずの出来だと思う。

ものすごく出来が良いと感じるほどの作品ではないが、2本立ての添え物としてなら成り立つ作品ではないだろうか。

併映のメイン作は、加山雄三主演で古沢憲吾監督「蝦夷館の決闘」の方ではないかと思うが、こちらも個人的には記憶にない作品である。

1970年と言えば、東宝が製作から完全に手を引いた年で、この作品も外部の東京映画作品。

劇中、ヤクザなんて斜陽でしょう?とヒロインが言っているが、映画自体が斜陽のまっただ中で、ほとんど客が入らなかった時代だったと思う。

製作側も、何を作れば客に受けるのか分からず、自分たちが本当に作りたい映画のビジョンもなく、本作も何となく、当時アメリカで流行っていた「ニューシネマ」のような映画を作ろう…くらいの模倣感覚で作っていたように見える。

陽性なアイドル風の顔立ちの高橋紀子がズベ公っぽい役をやっているのがちょっと珍しいかもしれない。

少年院仲間と新しい恋人との奇妙な三角関係。

その不自然さが、最後の破滅の原因になる…と言うのも、良くあるパターンのように感じる。

横浜を舞台に、ジャズと外国人青年などと言う組み合わせもありふれていると言えばありふれている。

何となく、一時期の日活青春映画の雰囲気を意識しているようにも見えなくもない。

インテリヤクザのようなキャラクターを演じている岸田森と、その女房役の緑魔子の薄幸そうなイメージが印象的。

主人公の少年院仲間で、どこか内向的で弱々しく、人付き合いが苦手そうな佐知夫を演じている出情児と言う役者さんも、映画出演自体少ないようで、全く見覚えがない人ながら、この作品では役にはまっていると思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1970年、東京映画、白坂依志夫脚本 、 西村潔脚本+監督作品。

拳銃の画像にタイトル

目の下に涙型のマークが付いている出演者の顔のアップ写真にキャストロール

港で数人の若者相手にインタビューする女性キャスター。

フォーク集会とかに行くと、機動隊とか来ないかな〜って期待しちゃったりするなどと答える若者に、死にたいって思わない?と聞くと、思わない。戦争に行くとしても、何を守っているのか分からないと行けないなどと若者は答えている。

そうした中、トラックを運転していた修(黒沢年雄)は、街を歩いていたユリ子(高橋紀子)と言う少女に目を止めると、声をかけ、ブドウを渡して助手席に乗せる。

車で送ってもらったユリ子は、どうでも良いけど、お店に来るならお金いるわよと言い残して車を降りる。

ユリ子は、ゴーゴーバーで踊っていた。

そんなユリ子を呼んでくれとボーイの佐知夫(出情児)に金を握らせる中年男宮崎(桑山正一)

そんな店にやって来た修を観て驚いたのは佐知夫だった。

少年院時代からの旧友だったからだ。

兄貴!どうして、俺がここにいるのが分かったんだよ!と佐知夫は喜ぶが、修は、偶然なんだ、久しぶりだなと言い、ユリ子の姿を探す。

ユリ子は、宮崎のテーブルで相手をしていた。

4年振りだもん。色々話しもあるし…、サービスするぜと、佐知夫は嬉しそうに修を店内に招き入れる。

その後、トイレの洗面所の所で待ち構えていた修は、宮崎が入って来て、用をすませた後、洗面所で手を洗おうと近づくと、あのスケに何してた?身体なで回していたじゃないか!と因縁をつけ、いきなり殴りつける。

怯えた宮崎は、これで勘弁してくれと言いながら、一万円札を修に渡して逃げ出して行く。

その直後、外で見張っていたらしい佐知夫が、にやにやしながら入って来て、やったね兄貴!ステキなプレゼントがあるんだと言いながら取り出したのは拳銃だった。

しかも、モデルガンではなく本物で、ヤンキーの子が金にしてくれって持って来たもので、兄貴の方が似合ってるからなと言いながら手渡す。

そりゃそうだと言いながら銃を受け取った修は、その後、タクシーでユリ子と佐知夫を乗せ、マーケットに行くと、食料品や酒をしこたま買い込み、レジで25365円の合計額を言われると、剣銃を取り出してレジ係を脅し、そのまま店を飛び出す。

3人は、修が住んでいるボロアパートにしけこむと、今奪い取って来た食料や酒をぶちまけながら、海行こうか?などと修が言い出す。

俺たち、行き当たりばったりだもんなと修が言えば、美人局やれば良いのよ。これさえあれば、魔法の杖みたいに、誰でも言う事聞くわなどとユリ子も言う。

ユリ子もここに越して来ないか?と修は勧め、電燈を消したので、佐知夫は気を利かせて、散歩して来ると言うと部屋の外に出る。

2人きりになった修とユリ子はキスをする。

翌日、3人で海に行くが、佐知夫がはしゃいで海野中に入るのを浜辺で観ながら、佐知夫と3人で暮らすの?だって、嫌らしいじゃない。あの人のあだ名知ってる?カマ夫って言うのよとユリ子は修に話しかけていた。

しかし、修は、少年院以来のダチなんだ。のけもんにはできないときっぱり言う。

その後、近くのテラスに来た3人、佐知夫はユリ子がいない間に修に近づくと、ユリ子と3人で暮らすの?由利と僕とどっちが大事?と聞いて来たので、修は、決まってるじゃねえか、どっちも大事よと答える。

その時。200万はする車に乗って来た金持ちの大学生らしき男が女を連れて降りて来る。

その大学生は、注文を聞きに来たウエイターに、ナポレオンくらい置いておくのが常識だろう?などと生意気にことを大声で言い始めたので、かちんと来た修は、電話遊びしようぜと同じテーブルに座っていた佐知夫に告げ、文部大臣かね?こちら総理大臣だ。坂田君、最近の馬鹿な大学生が何をしているか知っとるかね?親の金をちょろまかしてゲバ棒振り回しているんだよとエア電話し始める。

佐知夫もエア電話で、警察と協力して少年院にぶち込めば良いと思いますと、隣のテーブルの大学生に聞こえるように答えたので、大学生は、連れている2人の女の手前、恥をかかされたように顔を歪める。

その後、修は、大学生が乗って来た車に近づくと、少年院帰りの怖さを教えてやるのさと言いながら、ボンネットを開け、エンジンをいじろうとする。

その時、近くにいた佐知夫の背後に近づいて来た大学生とその仲間がいきなりスパナで佐知夫の左足を殴りつけて来る。

修は、隠し持っていた銃を取り出して脅かそうとするが、額をかち割られてしまう。

足も殴られ立てなくなったので、無我夢中で引き金を引くと、襲って来た大学生の仲間が腹を撃たれて倒れる。

大学生の方も驚いて逃げ出すが、逃がすとまずいよと佐知夫が叫んだので、修は銃をぶっ放し、背中を撃たれた大学生は倒れる。

佐知夫は、傷だらけになった修を抱え上げ、何とかその場を逃げ出そうとする。

やっぱり、行き当たりばったりじゃなく、計画性を立ててやってれば良かったんだよと佐知夫はぼやく。

その頃、近くに遊びに来ていた学生たちが発砲騒ぎがあってけが人が出たと騒いでいる中、大学生が連れて来た2人の女とユリ子は狼狽し、いなくなった修たちを探しまわっていた。

佐知夫は、修を抱えて何とかその場から遠ざかろうとしていたが、早くも通報を受けたパトカーが近くにやって来たので、窮地に追い込まれる。

その時、どうした?怪我してるな?と声をかけて来たのは鳴海(岸田森)と言う見知らぬ男だった。

佐知夫は、ちょっと喧嘩して…と答えると、場合によっちゃ助けてやると鳴海が言うので、どっかは慣れた場所まで乗せて行ってくれますか?と佐知夫は頼む。

車に乗せて走り出した鳴海は、お前たち、どこのチンピラだ?事件があったらしいななどと話しかけて来る。

面倒になりそうだと感じた佐知夫は、この辺で降ろして下さいと後部座席から声をかけるが、こんな所で降ろしたら、すぐにパトカーに捕まっちまうぞ。良かったら俺の所へ来いよ。ほとぼりが冷めた頃、出ていけば良いと鳴海は言ってくれる。

自宅に帰り着いた鳴海は、修の足の怪我の様子を見て、放っとくと、足を一本切ることになるぜと忠告する。

佐知夫はそれでも、ちょっとした喧嘩で…と言い訳するが、その場で鳴海がトランジスタラジオをかけてみると、午後3時頃、大学生二人が車を盗まれそうになった所を取り押さえようとして撃たれ、1人は死亡、もう1人も重傷で病院に運ばれたとニュースが流れていた。

面を観られている訳だな?まずいな…、ピストル持っているか?出せ!と鳴海は命じる。

とにかく医者を呼んでやろうと言い出した鳴海は、令子!と呼びかける。

妻の令子(緑魔子)が姿を見せると、口の堅い医者がいる。望月を呼んで来いって、店の者に言って来いと鳴海は声を頼む。

令子が部屋を出て行くと、もう分かったろうが、俺も裏街道を歩いている男だと鳴海は打ち明け、こいつをしばらく預かってやろうと修のことを言う。

どうして、そう親切にしてくれるんですか?と佐知夫が聞くと、物好きな男なのさ…と鳴海は苦笑する。

大学生について海辺にいた女性2名は刑事に事情を聞かれていたが、事件当時は海辺の屋台のたこ焼きを食べていて何も知らないというだけだった。

その後、ニュースで、もう1人の大学生も出血多量で死亡したと聞いた佐知夫は、良かった!と安堵する。

そんな佐知夫に鳴海は、お前は帰れ。俺はこの辺では堅気で通っているんだ。うろうろされたくない。今暮らしている所は引っ越せ。新しい住まいが決まったら電話で知らせろと命じる。

それで、仕方なく、修のアパートへ帰って来た佐知夫だったが、そこにはユリ子が寝ており、修は無事であると知らせると、ユリがいけないんだよ、バカみたいに踊っているだけでと文句を言いながら隣に寝ようとすると、離れてよ!と文句を言われたので、兄貴のスケに興味はないと答えるが、暑苦しいのよ!と言われると、仕方がないので、ブツブツ言いながら、部屋の隅っこに布団を引っ張って行き、そこで寝る事にする。

翌日、公衆電話から鳴海の家を呼びだした佐知夫だったが、電話に出たのは令子で、鳴海は今いないと言う。

修は、今度他に移すので、これからは、「ライジング・サン」と言う店の方に電話してくれと令子は言う。

電話を切った令子は、大分良くなって横たわっていた修に、退屈でしょう?本でも読まないの?と聞くが、修は、漫画ないんですか?奥さんだって読まないでしょう?と言う。

前は読んだわ。鳴海も最近は読まなくなった。鳴海は大学生だった頃、学生運動をやっていて、演説がステキだった。ところが、警察のスパイと間違われ、仲間たちに捕まってリンチにあったの。一週間後に逃げ出したけど、そんなあの人を助けたのが佐伯って言う人。3年前からムショに入っているんだけど、そろそろ出てくるわ。リンチの事があってから、鳴海は学生を憎んでいるのよと話した令子は、あんた、運命信じる?と突然修に聞く。

鳴海の運勢占っているの。死ぬわ!あの人が…と突然令子が言うので、そんなのでたらめですよ。信じるんですか?と修は呆れたように問いかける。

その頃、鳴海は、どこかの射撃場で、猟銃の射撃訓練をやっていた。

的になっているのは国会議事堂の写真で、弾が当たると、議事堂の写真から血が流れ出す。

アパートでは、ユリ子が何か食わせてと佐知夫にねだっていた。

佐知夫は、僕の方が兄貴とは古いんだと、修との仲を強調して、ユリ子の手下にはならない事を強調するが、ユリ子の方も、修は私を愛しているの!時々乱暴するけど、それが良いのよ。悔しかったら手術でもすれば?今、流行っているそうじゃない。男が女になる手術!などとからかい、ねえ、お金作ろうか?と言い出す。

美人局?やるよ、平気だよと佐知夫も乗り気になる。

ゴーゴーバーに戻ったユリ子が踊ると、ボーイの佐知夫が客の社長(若宮大佑)に声をかけ、金を受け取る。

その後、佐知夫はゲームセンターに行き、ヘリコプターを飛ばすゲームを始める。

一方、ユリ子をホテルに連れ込んだ社長は、金は払っているんだ!おとなしくしなさい!と言いながら、ベッドに押し倒そうとするが、その間、一向に佐知夫が助けに来る気配もないのでm必死に抵抗してホテルを逃げ出したユリ子は、遅れてアパートに帰って来た佐知夫の頭上から、金魚鉢の水をぶちまけ、佐知夫の裏切り者!と叫ぶ。

ごめんなさい!と謝りながら逃げ出した佐知夫は、修が匿われていた「ライジング・サン」と言う飲み屋の二階にやって来る。

鳴海もおり、修に、ここで働いたらどうだ?バーテンだ。ここで売るのは酒じゃない、女だ。ビールの栓さえ開けられれば誰でもできる。ここが嫌になったら出て行けば良いさと言うので、佐知夫も、ここで働かせて下さいと鳴海に頼む。

修はその後、ユリ子のいるアパートに帰って来る。

もう帰って来ないのかと思ったと感激したユリ子は、赤い光の中で、修と抱き合う。

アパートの外の階段の所では、気を利かせて中に入らず待っていた佐知夫が、もう良いかい?と部屋の中に呼びかけていたが、いつまで経っても返事がないのでいら立っていた。

「ブルーライトヨコハマ」の曲がかかる中、「ライジング・サン」のバーテンに収まった修に、バーテン仲間が、店にやって来て、そのまま二階の支配人室に上がって行った客を、ボスがムショに入っている間にのし上がった林さん(青木君雄)とその用心棒だと教える。

さらに、佐知夫にピストルを売ったジョニー(レックス・ヒューストン)と言うアメリカ人青年も店に来る。

その時、二階から降りて来た令子が修を呼ぶ。

令子は修が近づくと、あの人があいつらに…と耳打ちしたので、急いで二階に上がると、鳴海が殴られて倒れていた。

修が近づこうとすると、お前は引っ込んでいろ!と鳴海本人が制止する。

これで、どっちが命令する方か分かったろう?と林は鳴海に告げ、用心棒の前田(マンモス鈴木)がさらに鳴海を殴りつける。

分かった、あんたの言う通りにしようと鳴海は承知する。

命令通りにしないとどうなるか、分かってるな?と言い残し、林と用心棒たちは帰って行く。

明後日、ムショからボスが出て来る。林はボスをやらせようとしている…と鳴海が打ち明けたので、やるんですか?ボスはあんたを助けたんだろ?と修は詰めよるが、やらなきゃ、俺がやられるんだと鳴海は言う。

下の店では、酔った外人客が外国人相手の娼婦マコに絡んでいたので、止めに入ったジョニーと外国人客が喧嘩になる。

ジョニーを助けようと佐知夫も止めに入り、誰か来てくれ〜!と呼ぶが、そこに二階から降りて来た修が近づいて来て、ビール瓶で酔った外国人客の頭を殴って昏倒させる。

そして、倒れた外国人客を佐知夫らに外へ運ばせる。

店が終わった後、ジョニーとマコ。佐知夫と修と呼び寄せたユリ子で、ウィスキーの回し飲みをする。

ジョーの父親はアメリカの海軍将校で、兄貴2人も海軍なんだけど、ジョニーはジャズをやりたいんだってさと佐知夫が修に教え、しばらく、家の店で働かせてくれないかな?と頼む。

アメリカにも分からず屋の親がいるんだね。この世の中は嫌な事ばかり。親父は飲んだくれで働きもせず、おふくろはイライラし通しだった。親父は働かないくせに女を作るのは巧かった。あるとき、おふくろが親父を包丁でぐさりとやった。そこに駆けつけて来た警官を俺がやった。15の時、少年院にぶち込まれ、俺はゴロを巻いたり、脱走の事ばかりを考えていた。今でも、学生とか観るとむかつく…と修が話すと、それでひねくれたって訳だ…と少女が指摘する。

修は、俺だってやるだけの事はやったんだ。でも何をやっても裏目裏目に出て…と言い訳する。

すると、今度はマコが、私の母さんも洋パンだった。そのせいで子供の頃から虐められて、結局、私も洋パンになっちゃったと告白する。

ユリ子は酒が切れたので、佐知夫に買って来てと頼むが、もう店なんか閉まってるよと佐知夫は断る。

それでもユリ子は、どっかのスナックでもらえばとしつこく言うので、そんな所で買ったら高いよとなおも佐知夫は行くのを嫌がる。

マコが、睡眠薬ならあるよなどと口を挟む。

結局、5人は、そのまま港に行き、朝まで酒を回し飲みするが、修とユリ子、ジョニーとマコがカップルになっている横で、佐知夫はぽつんと1人ぽっちだった。

酔ったジョニーが埠頭ぎりぎりに歩いて行くので、佐知夫は危ないんだよと止めようとするが、マコが私が介抱してあげる。あんたもラリッてるんだからさ…と佐知夫を押しのけてジョニーに近づく。

ジョニーは、トランペットを取り出すと、海に向かって吹き始める。

あんたもあっちへ行って!友達なら友達らしく、気を利かせるものよなどとマコは佐知夫を追い払う。

修とユリ子も抱き合っていたが、そこに近づいた佐知夫は、ジョニーの奴が親父のボートをかっぱらうんだってさ。ヤバくなったら逃げられるぜ。兄貴がどうしてもやるって言うなら、俺も一緒に行くぜと佐知夫は言う。

「ライジング・サン」に戻った修に鳴海は、これを使えと新しい銃を手渡し、俺がボスを巧く始末したら、林はすっかり組を自分のものにできるんだ。奴が変な事をして来たら、すぐにぶっ放せと命じる。

俺は、射撃の訓練は積んで来たが、人間を撃つのは始めて何だ。怖いな…と鳴海は漏らす。

刑務所の塀の物陰で猟銃を持って待ち構える鳴海の横には、林が、鳴海の見張り役として寄越した用心棒前田が銃を片手に付き添っていた。

ムショから、ボスの佐伯(殿山泰司)が出て来て、それを林とその用心棒の辰巳(伊藤久哉)が出迎えるため近づく。

前田は、近づいて来た佐伯の姿を確認すると、今だ!と鳴海に命じる。

鳴海は猟銃を構えるが明らかに動揺していた。

側の車で待機していた修も銃を片手に車を降りる。

鳴海の猟銃が発射され、倒れたのは、佐伯に近づいていた林の方だった。

驚いた前田も猟銃で殴り倒し、辰己に倒れた林を車に乗せろ!と命じる。

そして前田にも同じ車に乗るように命じる。

鳴海は呆然としている佐伯に、話は後でと伝えて、修の車に乗せ、店に案内しろと修に頼む。

「ライジング・サン」で事情を聞いた佐伯は、良くやってくれたな、鳴海。恩に着るよと感謝し、修を紹介されると、ジュークボックスを大きくかけさせ、その場に連れて来た辰己と前田を始末するんだと命じる。

いきなり人殺しを命じられた修は動揺するが、前田が逃げようとしたので思わず発砲し、辰己も同じように逃げ出そうとしたので射殺する。

それを見ていた佐伯は、良い腕だ。見所あるぜと佐伯は修を褒め、俺は裏切り者は絶対に許さない。裏切りはやった事もない。最近では、生まれた国まで裏切る奴がいる。そんな事は一等薄汚え奴がやる事だ。俺を信じる奴は俺は裏切らない。分かったな、修、お前もこういう仕事を覚えるんだと佐伯は言う。

こうして修は、正式に組に入った。佐伯商事の社員と言う表向きで、月給は月4万。

それを知ったユリ子は、ヤクザなんて斜陽じゃないといっぱしの事を言って来て、俺は1人で何かにぶつかるのが性に合っているんだ。俺はこの手で学生2人をバラしている。それを奴等は知ってるんだと修が答えると、やっぱりあんただったの…と呆れる。

俺は人殺しだ…。用心棒2人をバラしている。俺が嫌なら別れても良いぜと白いスーツに身を固めた修が言うと、ユリ子は抱きつく。

その頃、学生銃殺事件を捜査していた刑事たちは、自動車に付着していた指紋と、スーパーのレジ係を銃で脅し、食料品を奪って行った連中の指紋が合致する事を突き止めていた。

しかし、その後の足取りに関しては全く掴めていなかった。

その報告を聞いたベテラン刑事は、良くある話しだ。世の中に受け入れない若者が、目的を失った末に迷子になる…と呟く。

修は、組からもらった金を、こんなはした金持ってたって胸くそ悪い。全部使っちまおうぜと言い、ユリ子と佐知夫に大盤振る舞いをする。

その買い物帰り、3人が海辺の近くを通りかかると、警察が水死体を引き上げている現場に遭遇する。

引き上げられた水死体の顔を見た修は、鳴海の兄貴だ!と驚く。

「佐伯商事」の事務所で佐伯に会って話を聞くと、俺たちを裏切ってたんだ。ずっと前から…と冷えたミルクを飲みながら佐伯は説明する。

店の売上の一部をあるグループに流してたんだ。大学の後輩たちを集めて作っていたアナーキストの集団だ。港近くのボロビルの地下室で射撃の練習をしていたらしい。組を利用して暗殺集団を作っているなんて、国も裏切っていたんだと佐伯が言うので、あんたの命を助けたじゃないですか!と修が抗議すると、点数稼ぎさ。お前はあいつを好きのようだが、あいつはインテリだよ。役立たずだと佐伯は答え、お前、鳴海の後を継がないか?「ライジング・サン」と洋ピンの面倒を見て欲しいと修に告げる。

「ライジング・サン」にやって来た修は、ジョニーと一緒に外で待っていた佐知夫から、店に刑事が来ている。あの店、気をつけた方が良いと告げられる。

修は佐知夫に、俺、店を任されたんだと教えると、ジョニーのボートかっぱらって、サモア行こうよ。向こうにはジョニーが昔世話になった神父さんがいるんだってさ。タヒチが近くなんだってさ。こんな嫌な所、おさらばしちゃおうぜと佐知夫は勧める。

修が「ライジング・サン」を任されたと知ったユリ子は喜び、私、ゴーゴーガール辞める。修がマスターで私がママ!トップクラスのヤクザになってよ。私なんか、炭坑なんかに生まれたんで子供の頃から貧乏ばかり、人間だったら、請託したいと思うのが当たり前じゃない?などと夢を語る。

すっかり「ライジング・サン」のママに収まったユリ子は、ある日店にやって来た令子を観て、誰?と聞く。

佐知夫が、死んだ鳴海さんの女房だと教える。

ユリ子はバーテンに、カクテルの酒なんて2、3滴垂らしとけば良いのよ。酔っぱらいに味なんて分かる訳がないんだから…と注意する。

こうしたがめつい商売が当たり、毎日、売上が伸びて来たので、ぼろい商売ねと、事務所で売上の札束を前にユリ子は喜ぶ。

店では、酒を飲んでいたマコが、しきりに眠いとぼやいていたので、床掃除をしていた佐知夫が、睡眠薬を飲んでるんだから当たり前だろうと呆れる。

二階の事務所では、ユリ子が佐知夫と別れない?と修に相談を持ちかけていた。

佐知夫はダチだ。裏切れないと修が言うと、この辺で独立させた方が佐知夫の為だわなどとユリ子は焚き付ける。

その後、店を出た佐知夫は、マコを送って帰る事にし、ユリ子は修と2人で歩いて帰路につくが、途中、修がユリ子に振り向くな!付けられている!デカらしい…、走れ!と声をかける。

商店街の中をユリ子と修は走って逃げ、その後を1人の刑事が追って来るが、見失い、近くの公衆電話で本部に連絡をし始めたので、パトカーを呼びやがったと物陰で気づいた修は、ライターを投げて相手の注意を牽くと、いきなり飛び出して行って、銃のグリップで殴りつけ、刑事が倒れた隙にユリ子と二人で逃げ出す。

アパートに戻って来た修は、ヤバいことになりやがったと焦り、やっと運が向いて来たと言うのに…と、ユリ子も嘆く。

逃げよう、ジョニーの船で…と呟いた修は、翌日、店でジョニーと佐知夫も呼び集め、俺はまとまった金を手に入れるから、お前たちはボートを出発させる準備をしておけ。出発は来週の今日だと打ち合わせる。

「佐伯商事」の事務所に前日の売上を持って行った修は、佐伯がその現金を事務所の金庫に閉まっているのを目撃する。

部屋にいた子分たちは、銀行に預けた方が…と心配するが、先生の所に持って行くまとまった金がいるんだと佐伯は言うだけ。

その後、ジョニーと佐知夫を連れ、通用口から事務所に舞い戻った修は、留守番をしていた男に忘れ物をして来たと噓を言い中に入れてもらうと、金庫を開けようとするが、開かないので、やむなく銃で鍵を壊す。

その音で何ごとかと入って来た留守番の男も射殺すると、金庫の中を開けて見るが、先ほど佐伯が入れていたはずの札束は消えていた。

佐伯が家に持って帰ったと気づいた修は、何が何でも手に入れる!と興奮すると、夜中、佐伯の自宅に押し掛ける。

玄関から入り込んだ修は、次々に現れる護衛役のヤクザを射殺して行き、裸で寝ていた佐伯の寝室に来ると、起き上がった佐伯を銃で脅し、親分、鐘はどこにある?と聞く。

佐伯は、鐘なんてこんな所にはない!と否定するが、銃で殴りつけ、金庫室に案内させる。

パンツ一丁姿で金庫を開けた佐伯は、中に入れておいた銃を取り、修を撃とうと振り返るが、一瞬早く修の銃が火を吹き、佐伯が倒れると、金庫の中の現金を奪い取る。

アパートに戻って来た修は、ユリ子に付いて来るよう急がせるが、ユリ子は、佐知夫を連れて行くなら私は降りるわ。佐知夫と私のどっちを取る?と聞いて来る。

修はすぐに、佐知夫だ!と答え、俺はお前と別れるよ。お前は好きだけど、佐知夫を捨ててくわけにはいかないんだ。あいつを捨てたら、生きる値打ちがなくなるんだ。元気でな…と言い残し、外の車で待たせていた佐知夫とジョニーの所に戻る。

ユリ子は?と佐知夫が聞いて来るが、男だけの方が良い。俺たちは逃げるんじゃない。戦いに行くんだ。戦いに女はいらないと修は答える。

その直後、捜査本部にタレコミの電話がかかる。

公衆電話からタレ込んでいたのはユリ子だった。

修は学生の他にも大勢殺しているんです。私も殺された…。私を置いて、サモアに逃げようとしています。船はヨットハーバーにあります。私を置いて…と泣きながらユリ子は訴える。

電話を聞いた刑事は、直ちにパトカーでヨットハーバーに向かう。

修たちが乗った車は、駆けつけて来たパトカーに囲まれてしまう。

畜生!ユリの奴、たれ込みやがったな!と修は気づくと、ジョニーと佐知夫に、手を挙げて向こうに行けよ。お前たちは殺しはやってねえから大した罪にはならないはずだと諭す。

しかし、佐知夫は、今からやる!と言い出すと、持っていた銃で車の窓からパトカー目がけて発砲し始める。

警官や刑事たちも応戦して来て、ジョーは顔面を撃たれるが、よろよろと車から降りると、マイボート!とうわごとのように言いながら突堤の方へ歩こうとする。

その途端、ジョーは銃弾を浴び倒れる。

佐知夫も撃たれる。

修も右足を撃ち抜かれるが、刑事の1人を撃ち返す。

ジャズのメロディが流れる中、修は何発も銃弾を浴びるが、外に倒れていた佐知夫をかばって車に乗せると、車をバックさせ、一台のパトカーを海に突き落とす。

その頃、ユリ子は、港が見える埠頭で1人ぼんやり座っていた。

元町まで車でやって来た修は、既に死んでいる佐知夫の身体を車から引っ張りだし、引きずって行こうとするが、やがて力尽き、自分も商店街の歩道に倒れ込む。

その修の死体の周囲に野次馬が集まって来る。

横浜マリンタワーにカメラがパンする。