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テルマエ・ロマエII

思わぬヒットとなった前作を受け、作られた第二作。

内容的にはほとんど前作の繰り返しと言った感じで、前作を観ている人には、又、何も考えずに笑えるようになっている。

逆に言えば、前作を知らないと、前作と同じキャラクターによる繰り返しのギャグや、ほとんどふざけ倒しているタイムスリップ描写などを含め、その約束事が良く分からないのではないかとも思う。

さらに、前作公開時、予想外に詰め掛けたと言うシニア層を意識したような古いネタばかりが使われているのもちょっと気にならないではない。

北島三郎の「与作」、松島トモ子の噛み付かれ事件、指圧の浪越徳次郎を連想させるキャラや白木みのるの登場など、若い人には何の事かさっぱり分からないようなネタの連続なので、逆に知っている世代にとっては、その唐突なバカバカしさがたまらなくおかしいと同時に、こんなに「老人向けで良いのか?」と不安にならないでもない。

特に、「桂小金治のアフタヌーンショー」と言う人気昼帯番組で、当時大人気だった浪越徳次郎の指圧コーナーや、「てなもんや三度笠」での珍念を知っている世代には、とてつもなく懐かしいに違いない。

そう言う意味では、この映画、団塊世代前後の人たちを多分に意識した「初期テレビッ子世代映画」でもある。

演じている役者さんたちにも、意味が分かってないんじゃないかと思われるようなネタばかりで押し通しているのがある意味凄い。

技術的には、コロセウムのCG表現など、外注のようであるとは言え、その完成度には目を見張るような部分があり、内容のバカバカしさとのギャップが相乗効果を上げている。

実際、このアイデアを安っぽく作れば普通のコントであろう。

それを、やけに予算をかけてナンセンススペクタクルに仕立てている所が感心させられる。

「しばらくして…」の決まりテロップの後映し出される、日本から持ち帰ったアイデアのローマ版の披露の場面なども、ちゃんと小道具類を作って、奴隷役のエキストラがしっかり演じているから面白いのだ。

欲を言えば、群衆シーンの現地エキストラの演技などにかなり素人臭さを感じてしまうのが難だが、セットなどを含め、近年の日本映画にしては良く作り込んでいると思う。

頭を空っぽにし、理屈抜きでバカバカしい世界に身をゆだね、リラックスをするための映画と言うべきかも知れない。

うがった見方かもしれないが、この映画が思いがけず当たった陰には、ネットなどに蔓延している「日本の自国褒め」傾向があったりするのだろうか?

そう言った辺りの分析は、もう少し時間が経ってから検証されるのかもしれない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2014年、「テルマエ・ロマエII」製作委員会(フジテレビジョン、東宝、電通、KADOKAWA)、ヤマザキマリ原作、橋本裕志脚本、武内英樹監督作品。

狼の遠吠えが聞こえるローマの郊外を、捉えた兵士を檻に入れた馬車が走る。

テルマエ(公衆浴場)を作らせたローマ皇帝ハドリアヌスは、武力によって帝国の拡大を図る従来の戦略を見直し、周囲の国と共存する新たな国家を作ろうと考え始めていた。

これに対し元老院は、戦争に夜世界征服を企んでいた。

紀元前136年

今この大帝国ローマが変わろうとしていた。(コロセウムを背景に)

タイトル

こうした平和が続く中、ローマの民衆の欲望はコロセウム(円形闘技場)の中で行われるグラディエーターの戦いに求められ、その戦い振りは日増しに残虐さを増していた。

そんなグラディエーターの1人、大きな斧を持って戦うアケボニウス(曙太郎)は、今日も複数の敵と戦っていた。

元老院の2人にコロセウムに呼びだされ、友人のマルクス(勝矢)と共に客席にやって来たルシウス(阿部寛)は、そのあまりの惨たらしさに眉をひそめていた。

観客たちは、敵を倒したアケボニウスに殺せ!と叫んでいるし、元老院の2人も、これがローマの力だ!ローマが世界を征服するのだ!と興奮していた。

平和な世の中では、少将残酷な方が民衆に受けるとうそぶく元老院の男等は、ケイオニウス様が赴任先のパンノニアから戦況報告するため戻られていると教える。

ルシウスは、自分の事など忘れているかもしれないと思い、テルマエ技師のルシウスだと名乗るが、いつののごとく女を連れて近づいて来たケイオニウス(北村一輝)は、わしと戯れたいか?などと言いながら、ルシウスの尻を触って来たので、女ばかりか、男までも好まれるのか!次期皇帝にになろうと言う方が何たる堕落!とルシウスは肝をつぶす。

ケイオニウスはそんなルシウスに、グラディエーターたちの疲弊が激しいので、コロセウムのテルマエが改良出来まいか?と声をかける。

ルシウスは、ローマ皇帝の為なら…と承知するが、その後、グラディエーターたちと戦う猛獣なども飼われているコロセウム内の浴場を視察に出向いた所、ただ湯を沸かしただけの風呂に、幾人ものグラディエイターが入っているだけと分かり、これでは治癒力などないが、全くアイデアが浮かばないと悩みながら、自らも湯の中に入ってみる。

すると突然、ルシウスの身体は湯の中に引き込まれてしまう。

海岸縁でオペラを歌う男性歌手。

水の中で溺れかけていたルシウスは、上方に見えた明かりに向かって夢中で浮上する。

ルシウスが出て来たのは相撲取りが入っている風呂だった。

ルシウスは、又、以前来たことがある平たい顔族の世界だと気づくが、そこにいるのは全員太っており、頭には黒いズッキーニのようなものを乗せた異様な一団だった。

相撲取りたちは、外人さん、相撲観戦なら外でやってくれ!と言いながら、ルシウスの身体を神輿のように担いで、外に連れ出して行く。

相撲取りたちは地方巡業に来ていたのだが、その観客席には、売れないマンガ家山越真実(上戸彩)の姿もあった。

実家の風呂屋が巧く行かず、娘のマンガもダメで、新天地でやり直す決意をした父親の修造(笹野高史)も観ており、この街の巡業も今年が最後になるな…とぼやいていた。

本業のマンガが売れない真実は、今はお風呂の雑誌をアルバイトで手伝っていた。

その土俵際で相撲を観ることになったルシウスは、この場所はひょっとすると平たい顔族のコロセウムで、その上で戦っている太った連中は、平たい顔族のグラディエーターではないか?と気づく。

コロセウムにしては小さいとバカにしたルシウスは、土俵上の2人の力士が張り手の応酬を始めると、殴り合いだが、手を開いていてはダメージが少な過ぎるではないか!と呆れる。

しかも、片方の力士が土俵を割るとあっけなく勝負がついてしまう所を観ると、血を一滴も流さず勝負がつくこの戦いが、十分に観客を興奮させ、しかも、その観客が投げる座布団は柔らかく、頭にぶつかっても痛くなく実に安全なものだと気づき感心する。

ルシウスは、先ほどの湯は、グラディエーターの為のテルマエだったのではないかとひらめき、行司が驚いて止めるのも構わず、土俵の上を突っ切り、相撲取り専用の浴場に向かう。

そんなルシウスに気づいた真実は後を追おうとするが、階段の所で転んでしまい、下に置いてあったケーキに顔をぶつけてしまう。

浴場の部屋では、相撲取りが「足ふみくん」と言う足の裏のツボを刺激する板の上で気持ち良さそうにしていたので、相撲取りが降りた後、ルシウスも乗ってみるが、あまりの痛さに、すぐに飛び降りると、痛みに耐える訓練装置か!と想像する。

その横で、マッサージチェアに座っていた相撲取りが、外人さんもやってみるか?と勧めたので、ルシウスは良く分からないまま座ってみるが、相撲取りがリモコンのスイッチを入れた途端、猛烈な振動が起きたので、仰天して立ち上がる。

しかし、誇りあるローマ人として、これしきの事、全然平気だ!と見栄を張り、もう1度椅子に座ってみせる。

すると、相撲取りが、スイッチの「強」を押していた事に気づき、「中」にして再度スイッチを入れると、あまりの振動の心地よさに、ルシウスは、さぞ良く訓練された奴隷たちが椅子の中で動かしているのだろうと感心する。

その時、湯船の方に目をやったルシウスは、相撲取りがバスクリンを入れているのに気づく。

オレンジ色の粉のようなものは湯に入ると緑色の色が変わっているので仰天してしまう。

試しにその湯に入ってみたルシウスは、湯が柔らかく優しくなっている事に気づき、今入れた粉には何か薬草の成分が含まれており、血行が良くなり癒される事に気づき、教えてくれ、成分を!私は、ローマ皇帝の命を受けているんだ!と相撲取りに頼むが、何せ言葉が通じない。

聞かれた相撲取りは、兄さんは日本語も怪しいっすなどと後輩からからかわれ、その場にいた相撲取りたちが笑い出したので、ルシウスは自分の事を笑われていると勘違いし、屈辱感を味わう。

そんなルシウスがローマに戻り、しばらくすると、ローマの街に相撲の登りのようなものが翻り、奴隷が中に入った人間椅子型のマッサージチェア、相撲部屋から持って来たバスクリンに似た薬草などが出来ていた。

コロセウムでも、頭にズッキーニのようなものを乗せたコトオウシュヌス(琴欧洲)が戦っていたが、客から投げられたクッションが頭に当たっても痛くないと喜んでいた。

そんなある日、アントニヌス(宍戸開)と街を歩いていたルシウスは、ローマも平和になり子供が増えた。

大人に安らぎの時間を増やす為に、子供の為のテルマエを作ったらどうだろう?と相談を受ける。

ルシウスは、デリカシーがない子供が嫌いだったが、アントニヌスの頼みとあっては聞かないわけにはいかなかった。

子供の為のテルマエか…、又、全くアイデアが浮かばないルシウスは悩み始める。

海で子供と一緒の水着を着て戯れていたオペラ歌手が、慌てて海辺に戻ると、上着だけを着て歌い始める。

どこかの水面から浮かび上がったルシウスに、海パンを履いた子供がぶつかり、何だこいつ?とルシウスをバカにしながらプールから上がって行く。

ここは滝壺か?と周囲の様子に目を奪われていたルシウスに、水着姿の女がぶつかって来たので驚いて見上げると、次々と水着姿の子供や女が、溝を悲鳴を上げながら滑り落ちて来るではないか!

罪人が処罰されているのか!しかし、それにしては、滑り落ちて来る女や子供はみんな楽しそうだった。

何かの訓練でもしているのか?そう考えながら立ち上がったルシウスは、素っ裸だったので、プールに降りて来た女性たちが本当の悲鳴をあげる。

そんなルシウスに、脱げちゃいました?と声をかけて来たプールの監視員がバスタオルを投げてくれる。

海パンが脱げた客と思ったようだった。

バスタオルを腰に巻いたルシウスは、どれだけ精神力が高められるか試してみようと自分も滑り台の上に登ってみるが、意外に高いので二の足を踏む。

しかし、それを周囲の子供たちに気づかれまいと、私のような大人がやるものではないななどと心の中で弁解していたが、後ろに立っていた子供にどつかれて滑り落ちてしまう。

突然の事に、パニクりながら滑ったルシウスだったが、ピールに落ちてみると、これは大変愉快な行為であり、ローマの子供にも受けると直感する。

そんなプールに、雑誌の取材として真実も来ており、同行した編集者から水着を着て取材をするように迫られていた。

その直後、真実はルシウスと再会し喜ぶ。

シャボン玉が舞うこの「湯~トピア」施設がすっかり気に入ったルシウスは、ようやく言葉が通じる平たい顔族の女に会えたので、喜びながらも、このテルマエの事を聞きたいと頼む。

真実は、「湯~トピア」と言う言葉の語源はラテン語で、「どこにもない理想郷」と言う意味だと教える。

その意味を知り感動したルシウスだったが、悪戯小僧たちが撃って来た水鉄砲で元の世界に戻る。

しばらくして…

岩場に溝を掘り滑り台にした施設で奴隷たちが大量の水を上の方に運ぶ中、子供たちや元老院の老人までが愉快そうに滑って楽しんでいた。

泡立て器で必死にシャボン玉を作る奴隷もいた。

そこへやって来たアントニヌスが、ハドリアヌス帝がそなたに内密の話があるそうだとルシウスに伝え、一緒に馬に乗って出かける。

丘の上で待っていたハドリアヌス帝(市村正親)は、険しい顔で、到着して畏まったルシウスに、コロセウムの戦いが日に日に残虐になっていると聞く。侵略戦争を解消しようとしたのが裏目に出ている。私は平和な国が作りたい。理想のテルマエが作りたい。このバイアエの地には恵みの湯が湧くと聞く。ここに、ローマ帝国の為と思って理想の温泉郷を作ってはくれまいか?と頼む。

ルシウスは、命に賭けてもテルマエのユートピアにしてみせます…と承諾する。

その返事を聞いたハドリアヌス帝は、期待しておるぞと言葉をかける。

その様子を近くでうかがっていた元老院の2人は、このままではローマは堕落してしまう。ルシウスには消えてもらおうと密かに相談し合う。

ある日、バイアエで温泉郷建設の工事を始めていたアントニヌスが、北方のパンノニアにいるケイオニウス様から手紙が届いたと言う。

それを聞いたルシウスは、自分の事を忘れていた訳ではなかったのだ!男色の趣味などもあるはずがないと感激するが、最近コロセウムで会ったと聞いたアントニヌスは、あの方がローマに今頃戻るはずがないといぶかしがる。

ローマの為に戦っているケイオニウスの事を思い出そうとしたルシウスだったが、脳裏に思い浮かぶのは女好きのケイオニウスの思い出だけだった。

ケイオニウス様はパンノニアで疫病にかかってお亡くなりになり、アントニヌス様が肯定になるのですと、ルシウスがかつて真実から聞いた話をすると、そんな予言など…と一笑に付したアントニウスは、パンドニアにテルマエを作ってくれと頼む。

しかし、今、ハドリアヌス帝に頼まれた温泉郷を建設中のルシウスには、北方へ行く時間もなければ、タイルをパンドニアまで運ぼうにも途中で割れてしまうに違いなく、良いアイデアなど全く思い浮かばなかった。

その時、丸太を担いだ男が呼ばれて振り向いたので、回転した丸太に後頭部をぶつけられたルシウスは、横にあった井戸の中に墜落してしまう。

真実は、とある竹林の中で暮らしている三郎(いか八朗)と言う老人から取材の仕事を終え、バス停まで見送ってもらっていた。

ルシウスが出現したのは、その三郎が使っている桶風呂だった。

ルシウスは、こんな木で作った桶でも風呂になると知ると感激する。

バス停から戻って一風呂浴びようと楽しみにしていた三郎爺さんは、その桶風呂が観知らぬ外国人にバラバラにされているのを観て驚く。

ルシウスが、桶風呂の構造を調べるため、たがを外していたのだった。

三郎に怒られたルシウスはそれを元に戻し、三郎はその桶風呂に入ると、「与作」を気持ち良さそうに唄い始める。

横で風呂を焚きながらそれを聞いていたルシウスは、そのメロディにも何らかの癒し効果があるのか?と驚きながらも、いつしか「ヘイヘイホ~♪」と自分でも口ずさんでいた。

風呂の中でサビの部分を歌っていた三郎は、急に風呂のたがが外れ桶がバラバラになって湯がこぼれた中、後ろに倒れ込んでもまだ歌っていた。

いつしかルシウスは消えていたので、三郎は、俺を1人にさせないでくれ~、カンバ~ック!と叫ぶ。

しばらくして…

ローマの北方パンノニアでは、ルシウスから送られて来た桶風呂にケイオニウスが浸かり、満足していた。

次期皇帝として礼を言うと言うケイオニウスからの手紙を読んで感激していたいたルシウスは、後、ローマ美人を10人ほど送ってくれたらもっと元気になるだろうと書かれていたので、ふざけるな!と呟いてしまう。

その時、ルシウスは、身なりの汚い山賊たちから取り囲まれてしまった事に気づく。

長い間、風呂にも入ってないようで、その連中はひどい悪臭を放っていた。

首領格の男はナイフを取り出すと、死んでもらうぜ。戦争で土地も家族もなくしたんだ!とヤケになった様子で迫って来る。

驚いて転んだルシウスだったが、その時、手を付いた地面から湯気が少し出ている事に気づく。

それを見たルシウスは、ここに宝が埋っている。一緒にここを掘ってみろ。味も心も洗い落とされるぞ!と山賊たちに告げる。

それを聞いた山賊たちは、半信半疑ながら、お宝が出たらぶっ殺してやるからな!と言いながらも、目先の良くに目がくらんで、その場所を掘り始める。

そんな彼らを観ながら、仕事さえあれば、お前たちだってこんな事はしなかったはずだ。このテルマエこそが宝だ!と、ルシウスは湧いて出て来たお湯につかりながら説明する。

すると、良くも俺たちを騙しやがったな!覚悟しろ!と猛り狂った山賊たちは一斉にナイフをルシウス目がけて突き刺して来る。

海岸にいたオペラ歌手の頬を突然ビンタする太った女。

草津温泉の湯もみショーが行われていた湯船から、突然、熱い!と叫びながらルシウスが飛び出て来たので、湯もみをしていた女性たちが悲鳴を上げて逃げ出す。

ルシウスは、ショーの横断幕を身体に巻き付ける。

そこにたまたま取材に来ていたのが真実で、ルシウスに声をかける。

外で温泉が流れる湯畑を観たルシウスは、煮えたぎるような源泉をこうして冷していると言うのか!あの板でかき混ぜるのも温度を下げているのか!ここは、平たい顔族が作り上げたユートピアなのか!と感心する。

そんなルシウスは、女の写真が貼られたストリップ小屋の前に来て興味を示すので、付いて来た真実は恥ずかしがり、あんなの面白くないよとその場を離れようとするが、店の中から出て来た男客たちがみんな嬉しそうな顔をしているのに気づいたルシウスは、この女、何か隠しているぞ…と真実の事を疑う。

そんなルシウスの気持ちも知らず、真実は遊戯施設の中にルシウスを案内して来る。

ルシウスは、そこで行われていたピンポンやモグラ叩きのゲームに興味を抱く。

みんな動力は奴隷がやっているのだと思っていたルシウスは感心する。

マジックショーに連れて来られたルシウスは、人体切断マジックを客席から観て、公開処刑だと思い込み、途中で、あまりの惨さに気絶してしまう。

横に座っていた真実は驚き、水を取りに行くが、気絶していたルシウスに、どうした外人さんと声をかけて来たのは、かつて会ったことがある「百人隊長」こと 館野(竹内力)だった。

山越一家の温泉宿が再出発したので遊びに来たんだと言う館野に、ラーメン屋に連れて来られたルシウスは、いきなりビールを勧められる。

怪し気な泡の立つ飲み物だったが、勇気を持って飲んでみると、これが「キュー」と来て!程よい酩酊感があり、心地よいので驚くルシウス。

そんなルシウスの前に置かれたのはラーメンだったが、ルシウスは隣で食べ始めた館野を見よう見まねで箸を使い、スープの中の麺を食べてみる。

平たい顔族を尊敬したくなるほど旨い食べ物だった。

館野は、ルシウスの反応を心配していたが、夢中で麺をすすりだすと安堵する。

さらに、店主(白木みのる)が出して来たのは餃子だった。

ルシウスは、そのこげたパンのようなものを怪しみながら口に入れてみるが、「旨!」と叫んでしまう。

食い終えた館野は、これで払っといてくれと言い、ポケットから適当に金を置いて先に出て行ったので、ルシウスは、その金を使えば良いのか分からず戸惑ってしまう。

そんな中、五円玉を観たルシウスは、穴を開けてある技術の凄さと、金色に輝く色合いから相当価値がある貨幣と推理し、これを与えると言いながら差し出すが、店主は呆れる。

そこにようやく探し当てた真実が入って来て、店主が切っているタマネギを観ると、慌てて、ここにいては危険よと言いながら、ルシウスを無理矢理外に連れ出す。

(ここからは、日本語でごらん下さいのテロップ)

夜の草津を散歩するうちに、出版社から人まねばかりと言われたの…と真実が、マンガ家として壁にぶつかっている事を打ち明けると、ルシウスも、私も真似ばかり…、いつかは私ならではのテルマエを作ってみたいと夢を語る。

そんなルシウスに、一緒にお風呂に入らない?と真実が誘うと、驚いたルシウスは、ローマでは混浴は禁止されている!と断る。

それでも真実は、大丈夫!ここはローマじゃないからと笑い、温泉に連れて来ると、夜景のあまりの美しさにルシウスは感激する。

想像していたような淫らなものではなかったからだ。

大らかで牧歌的なその温泉場は、男女の垣根さえ超えたようだった。

とは言え、さすがに、真実だけではなく、他の女性も一緒に入っている湯船に浸かったルシウスは目のやり場に困り、取りあえず、もう1人入っていた男の方を見ておけば大丈夫だろうと考える。

ところが、見つめられていたおっさんはいつしか頬が赤く染まり、やがて顔中が真っ赤に紅潮して来る。

側に浸かっていた真実も、何であの男ばかり観ているのだろう?と不思議がり、そう言えば、ローマでは男色が流行っていた事を思い出すのだった。

ルシウスは、見つめたいた男の背後に、クマが一頭は入り込んだ事に気づき驚くが、そのクマはまっすぐ1人の女性客の方に近づくと、じゃれるようにその首筋に噛み付く。

首を噛まれた女性客(松島トモ子)は、嬉しそうにクマを叱る。

そんな光景を見たルシウスは、ここには風紀の乱れもなく、もはや芸術だ!私は今モーレツに感動している!と心に思うのだった。

いつしかルシウスは、山賊たちが浸かっていた露天風呂の中に舞い戻り、見つけたぞ!お前たちの仕事を!と、嬉しそうに叫ぶ。

ルシウスは、ローマで、ラーメンのようなヌードルや奴隷を使ったモグラ叩きを作り評判になっていたが、所詮は平たい顔族のまねごと…と心の中では恥じていた。

そんなルシウスに、ローマ中から女を集めて来たと報告に来た山賊の首領は、テルマエユートピアの建設の手伝いと言う仕事を与えられ感謝していた。

しかし、ただ一つ、人間を箱に入れ、その真ん中部分だけをずらそうとする趣向は理解出来なかった。

説明を求められたルシウスは、それは富士見の人間を育成する機械だと説明するが、人間切断のマジックショーを見よう見まねで真似ただけのものだったので、中に入れられた奴隷は、本当に腹の部分をずらされはこの中で苦しんでいた。

毎日、バイアエでのユートピア建設のため、寝る間も惜しんで働いていたルシウスに、友人のマルクスは、少し休めと声をかけるが、一日も早くこの地で恵みの湯を掘り当てねば、ユートピアは完成しないんだ!と言って、kルシウスは作業を休もうとはしなかった。

そこに、アントニヌスと共に見学に訪れたハドリアヌス帝は、さすがである。楽しみにしておるぞとルシウスに声をかける。

しかし、ルシウスから混浴のアイデアを聞かされると、かつて風紀の乱れから禁止したこともあり、混浴はダメだと言い渡す。

そこに伝令がやって来て、パンノニアで疫病が流行り、その疫病にかかったケイオニウスがこちらに向かっているとハドリアヌス帝に伝える。

それを聞いたアントニヌスは、あの女の言う通りになったではないか!と驚く。

その夜、ルシウスは、夜空を見上げながら、北極星よ、私はどうしたら良いのだろうか?と悩みながら、仕事を続けていたが、大きな石を持ち上げた時、突然、ぎっくり腰に襲われる。

オペラ歌手も腰を痛めていた。

宝泉館

真実は、タマネギの袋やフランダースの犬の絵本など、涙が出そうなものを持って、隠し場所を探していた。

そこにやって来た父の修造が、板前がタマネギがないと探しているんだが知らないかと聞いて来る。

ぎくっとした真実だったが、知らないと答え、父親は仕方なさそうに戻って行くが、真実はタマネギ袋の中にお涙頂戴物の絵本なども入れ、下水の中に隠す。

そこに、教授の最上(岩手太郎)がやって来て、古代ローマには男色もあったそうだと、真実から以前聞かれた質問の答を教える。

その時、旅館の二階から、ちょっと来てくれ!外人さんが湯船でぶっ倒れているだ!と修造が呼びかける。

すぐに、その外人とはルシウスだと気づいた真実だったが、倒れているにはケイオニウスと同じ疫病にルシウスもかかったのではないかと案じ、教授から渡されたローマに関する本を読んだ結果、あの時代の疫病と言えば結核であり、今の医学なら直せなくない事に気づく。

棟梁の岸本(外波山文明)やグルメの大西(岩手太郎)と言った宿の常連客も手伝って、取りあえず、ルシウスの身体を浴室の外に運び出す事にする。

目覚めたルシウスは、身も心も心地よくなっている事に気づくが、横に置かれていた鏡に映った自分の背中一面に鍼が刺さり、お灸が据えられている事に気づき驚く。

さらに、昔、浪越徳三郎先生に教わった事があると言う修造が、ルシウスの首筋を指圧で押して来たので、一瞬、首を絞め殺されるのか!と緊張したルシウスだったが、全身の血行が見る見る良くある感じがしたので、これは心地よい!と感激する。

部屋の隅に置かれていた浪越徳三郎先生の銅像を観たルシウスは、これは平たい顔族の間で神格化された神ではないかと感じ、立ち上がると、その前に跪いて敬意を表する。

修造たちはその姿を観て、身体が良くなったと喜ぶが、ルシウスは心地よさから、急に便意を催して来る。

その様子に気づいた修造がトイレの場所を教えるが、慌てていたルシウスは、間違って、女子トイレの方に入ってしまう。

そこには、前に経験したことがある便器があったので、もう驚かないぞと余裕を見せ、ルシウスは、奴隷どもよ、便器の蓋を開け!と命じる。

すると、電動センサーで自動的に便器の蓋が開く。

用を足したルシウスは、トイレットペーパーにまで良い香が染み込ませたある事を知り感激するが、その時、つい放屁してしまう。

しまった!よりによってこんな狭い空間で!とルシウスは自らの失態に慌てるが、気がつくと、その匂いはすぐに吸収されて行くし、あまつさえ、花畑の匂いがして来たではないか!

全て奴隷が陰でやっているいるのだと信じたルシウスは、彼らの苦労に感謝するしかなかった。

壁の装置を観たルシウスは、前に経験している事から、余裕を持ってスイッチを押すが、それは「ワイドビデ」のスイッチだったので、お湯が当たる場所が微妙に違う事にいら立ってしまう。

そこじゃない!そこじゃないんだ!とトイレの中で喚いているルシウスの声を廊下で聞いた修造は、何ごとかと首を傾げる。

真実がお医者さん呼んだからねと言いながら戻って来ると、もうルシウスは、修造等と共にベランダでくつろいであり、疲れとぎっくり腰だっただけだと言いながら、のんきに寿司桶を囲んでいるではないか。

「百人隊長」の館野が、俺のおごりだ、食え!と勧めるので、何も知らないルシウスはトロの握りを口に入れる。

それを観た真実が案じた通り、ルシウスは「ツーン」と来て衝撃を受けたので、又しても「百人隊長」から毒を盛られたか!一度ならず二度までも!と悔しそうに館野を睨みつけながらその場を逃げ出そうとする。

慌ててその後を追い、止めようとした真実もろとも、温泉の中に落ちてしまう。

海岸で、フット田女房らしき女と子供が帰って行くのを見送りながら、哀し気に歌うオペラ歌手

ちょいな ちょいな~♪と言う聞き慣れた女たちの歌声が聞こえて来る中、目覚めたルシウスは、バイアエだ!と帰還を喜び、一緒に来た真実も、ここはローマの温泉街なの?と驚くが、ルシウスは、どれもそなたの国の真似ばかりだ…と恥ずかしそうに打ち明けながらも、もっと大量の湯が出ないと…と悔しがる。

そんなルシウスに近づいて来たマルクスは、みんな逃げ始めたぞと教え、あの山賊の首領も、恵みの湯なんか出ないじゃないか!と不満を口にする。

本当に出るのかよ?とマルクスが不安視する中、ルシウスは、自分1人でも掘り当ててみせると決意を述べる。

その時、どこからともなく、ヘイヘイホ~♪と言う聞き慣れたメロディが聞こえて来たので、真実は思わず、与作?と呟いて、その声の出所を探す。

観ると、パンノニアから戻って来たらしいケイオニウスが嬉しそうに入浴しているではないか!

真実は思わず、ダメよ!結核なのにむやみに入浴すると、症状を悪化させるし、伝染するので、あの人を隔離しないと!と叫ぶ。

それを聞いたアントニヌスは、次期皇帝になるお方になんと言うことを言う!お前はあの悪い予言者か!

そこに駆けつけたルシウスが、テルマエに関しては平たい顔族に従う方が賢明かと…となだめに入るが、この女を連れて立ち去ってくれ!とアントニヌスは不愉快そうに言う。

山賊の首領は、黙々と働き続けるルシウスに少しは休め!と声をかけるが、本当にこのままでいいのだろうか?あれ以来会ってもらえない…と、ルシウスはケイオニウスたちの事を案ずる。

その不安が適中し、ケイオニウスの症状は悪化し、疫病も電線、蔓延し始めたので、アントニヌスは、そなたたちの言葉を信じなかったせいだとルシウスに詫びる。

もはやケイオニウスに時期皇帝としてローマを治める事は難しいだろうと嘆くアントニヌスは、女癖は悪かったが、ケイオニウスくらいローマのために力を注いだ男はいなかったと惜しむ。

その言葉を聞いたルシウスは、今まで抱いていたケイオニウスの悪いイメージが払拭されるような思いにかられる。

そんなルシウスを寝室のケイオニウスが呼んでいると言うので行ってみると、パンノニアに送ってくれた桶風呂は役に立ったと礼を言われる。

ルシウスは、これまでケイオニウスの事を誤解していた事を詫びるが、ケイオニウスの方も、そなたこそテルマエでローマに力を注いだではないかとねぎらう。

もったいないお言葉…と恐縮するルシウスに、ケイオニウスは最後の言葉を聞いて欲しいと言い出し、メルケリウス通りの笑みリアと言う娘に届けて欲しいと一通の文を託す。

ブロンドの髪で、胸の大きな娘だと言う。

恭しく文を頂き、承知したルシウスだったが、ケイオニウスはさたに、これはユリオ、これはマリア…と言いながら、ベッドの下から次々と女宛の文を出して来る。

結局、ルシウスは、持ちきれないほど大量の女宛の文を託されることになったので、さすがに呆れ果てる。

さらに、ケイオニウスは、死ぬ前に一目、兄上に会いたい…と言い出す。

その兄は、男色にしか興味を持たず、ぐれて家を飛び出して行ったが、最近、コロセウム付近で姿を見かけたと言う噂を聞いた。自分の女好きは、兄のようになりたくないと言う強迫観念が会ったからかもしれないと言う。

ルシウスは、以前、コロセウムで元老院の男等に紹介されたあの男こそ、その兄に違いないと直感するが、その時、ベッドの上のケイオニウスの様子がおかしくなった事に気づく。

すぐに部屋の外に出て、すぐに手当を!と叫んだルシウスだったが、そこに付いて来て、話を聞いていた真実が、行こう!ケイオニウスのお兄さんを探しに!と声をかけて来る。

ただちにルシウスと真実は同じ馬に乗って出かけようとするが、そこにやって来たアントニヌスが、ハドリアヌス帝が倒れられ、立ち上がれないほどの衰弱振りだ!と伝える。

コロセウムの中では、ケイオニウスそっくりの兄が、強いローマを蘇らせるのだ!と観客たちに檄を飛ばし、アケボニウスが巨大な炎の輪の中で、苦し気にデスマッチを繰り広げていた。

この残虐な戦いは!と観に来たアントニヌスは呆れるが、ケイオニウス様がお越しになりました!と元老院の2人が告げる。

ケイオニウスと名乗る兄は、これからもローマは強くあらねばならぬ!グラディエイターのように強く、これからも領土を拡大し続けるのだ!このローマが世界を征服するのだ!と檄を飛ばすが、アントニヌスは、騙されるな!この男はケイオニウスではない!と呼びかける。

皇帝の平和路線に背き、グラディエイターに過酷な戦いを強いるこの男は偽者だ!とアントニヌスは観客に訴えるが、貴様こそ、民衆をふぬけにしようとする張本人だ!とケイオニウスの兄は叫ぶ。

その時、ルシウスに付き添っていた真実が持っていた、現代の世界から持って来た本「ローマ帝国の繁栄と滅亡」と言うタイトルに気づいたケイオニウスの兄は、この女は、ローマを滅ぼそうとしている魔女だ!この魔女を殺せ!引き捕らえい!と命じる。

処刑は明日正午に執り行う!と元老院の2人が宣言する。

ハドリアヌス帝はベッドで寝込んでいた。

そんなハドリアヌス帝を救う事は出来ぬものか?と悩みながら、雨の街を歩いていたルシウスだったが、突如、雷に撃たれてしまう。

再び、宝泉館のベランダに出現したルシウスは、修造に呼ばれ、湯の花部屋の相撲取りに指圧をしていた老人を見て、以前、石像になっていたあの伝説の神、浪越徳三郎(菅登未男)その人だと気づく。

正に神の治療だと信じたルシウスは、あの方なら、肯定を助けられるかも!と直感し、いきなり浪越先生を抱き上げると、もう、あなたに頼るしかないのです!と叫びながら、温泉の中に入って行く。

驚いた関取たちも、浪越先生を救おうと、その後に付いて次々に温泉に入る。

水洗便所の中に相撲取り人形が吸い込まれて行く。

浪越徳三郎先生は、ハドリアヌス帝の腰を揉んでいた。

側にいたルシウスは、この方こそ、平たい顔族の間で神と崇め立てられている人なのですと皇帝に説明する。

コロセウムの中の牢に捕らえられていた真実は、三ヶ月後、ルシウスがパンノニアのテルマエ工事の最中、落石に遭い、死んだと言う史実を本で読み、衝撃を受けていた。

そこに、当のルシウスがやって来て、こんな目に遭わせてすまないと詫びて来たので、真実は哀し気な目でルシウスを見やるが、ルシウスはそれをとがめる目つきだと勘違いする。

詫びるルシウスに、そんな事より自分の命の事を考えて!私は、涙さえ出せばあっちに帰れますからと真実は声をかけるが、それを聞いたルシウスが、何があれば泣ける?等と聞いて来たので、なんにも分かってないのね!と真実は叫ぶ。

私はルシウスとずっと一緒にいたいのよ!だから今まで、泣くのを我慢してたんだよ。最後までルシウスのテルマエユートピアが完成するのを見届けたいのよ!と真実は訴える。

その時、闇の中から笑い声が近づいて来て、牢の前に姿を現したのはアケボニウスだった。

戦争のない平和な国か…、夢物語だなと言いながらも、アケボニウスは、牢の鍵を壊してくれたので、良いのか?元老院に恨まれるぞ!とルシウスは驚くが、私は戦いに疲れた…とアケボニウスは答える。

ルシウスと真実は逃げ出そうとするが、それに気づいた声が響いたので、アケボニウスがその場に残り、追手の前に立ちふさがる。

コロセウムの中には、すでに処刑の準備が出来上がっていた。

そこに馬で駆けつけて来たケイオニウスの兄は、親愛なるローマの民よ!魔女がテルマエの技師ルシウスと共に逃げてバイアエに向かった!

テルマエにうつつを抜かす腰抜けどもから、強いローマを取り戻すんだ!続け!と叫び、外に飛び出して行ったので、群衆たちのそれに続いて、コロセウムから街に繰り出して行く。

寝込んでいたケイオニウスを見舞っていたアントニヌスは、その騒動を聞きつけ、何ごとだ!と外の様子を見やる。

町中には暴徒が一斉に、バイアエに向かって突進していた。

そのバイアエでは、ルシウスと真実が、必死に温泉郷を作ろうと働いていた。

真実は、バッグに入れて持って来た「ローマ帝国の繁栄と滅亡」の本が絶えず気になっていた。

そこに、マルクスが、民衆がこちらに向かって来ている!と知らせに来る。

ルシウスは、来たかと言いながら立ち上がると、我々に出来るのは、テルマエを守る事だけだと周囲に呼びかける。

そこに馬で駆けつけて来たケイオニウスの兄は、ローマを滅亡に導くこのものたちを捕らえろ!と命じるが、狙いは私でしょう?だったら私を捕まえれば言いでしょう!と前に進み出たのは真実だった。

望み通りにしてやる!とケイオニウスの兄は薄笑いを浮かべ、ルシウスは、何とか真実を元の世界へ戻そうと、タマネギの皮を剥いて投げつけようとするが、周囲の仲間たちに押さえられてしまう。

その時、それまでだ!と声がし、口元を隠した男が馬で近づいて来る。

その顔を隠した布を取ると、それはケイオニウス本人であった。

ルシウスは、狼狽する周囲の民衆の、特に女たちに向かい、こちらのケイオニウスに口説かれたものがあるか?と兄の方を指し問いかける。

しかし、それに答えた女はいなかった。

女付きで知られるケイオニウスでは考えられぬ事だった。

この男は、ケイオニウス様の兄のジェイオニウスだ!、とルシウスは民衆に訴える。

しかし、そう言われたジェイオニウスも、この男こそ、ローマを混乱に陥れた男だ!とルシウスを罵倒し返すが、もうお止め下さい!兄上!と呼びかけたので、ジェイオニウスはその言葉を封じようと、自らの剣を抜き、ケイオニウスの首筋に突きつける。

しかし、ケイオニウスは動じず、今この時に、ローマの行く末がかかっておりますと兄に伝えたので、負けたと感じたジェイオニウスは、剣をその場に捨て去る。

そんなジェイオニウスを観て、貴様、裏切るのか!と近づいて来た元老院2人を観た山賊の首領は、俺たちに鐘をやるからルシウスを殺せと言ったのもこいつ等だ!と暴く。

それを聞いたケイオニウスは、そいつ等を捕らえろ!と命じるが、止めろ!テルマエの地を血で汚してはいけない!と呼びかける。

その時、周囲の地面が大きく揺れ始めたので、ローマの神の怒りに触れたか!とルシウスはおののくが、真実がある一点を指して、あれ!と知らせる。

観ると、オベリスクが建つ丘の頂から大量の温泉が湧き出していた。

そこに、病の癒えたハドリアヌス帝がアントニヌスと共に現れて、親愛なるローマの民よ!殺戮はもうたくさんだ。私は戦争のない平和なローマを築きたい。諍いの気持ちはこの場で直し、静かに考えようではないか!このテルマエに浸かりながら!と声をかけて来る。

ルシウス!見事なテルマエユートピアだ。さぞ、苦労を重ねた事だろうとねぎらいの言葉をかけられたルシウスは恐縮し、ローマに平和を根付かせる為に。ローマは一日にしてならず…ですからと答える。

ゆっくりその汗を洗い流すが良い!とハドリアヌス帝は呼びかける。

良かったね、ルシウス!と声をかけた真実は、でもどうしてあの湯が…と聞くと、ルシウスは苦笑しながら、あのものたちが…と答える。

丘の上には、協力して穴を掘り続けていた、日本の相撲取りとアケボニウスが、泥まみれの姿で満足そうに笑っていた。

やがて、役目を終えた相撲取りの姿が、湧き出る温泉の前から消えて行く。

すごいね!ルシウスのテルマエが出来たんだ!と真実は、ルシウスと海辺を歩きながら感激するが、次はパンノニアだ!病で荒んだ北方の地を救うんだ!とルシウスが答えたので、真実は行かないで!と止める。

三ヶ月後、あなたは落石事故で死んでしまうの。パンノニアにさえ行かなければ、もっと生きられる。私には過去の歴史が分かるのよと真実は必死に説得する。

平たい顔族の世界は未来の世界だったのか…と納得した様子のルシウスだったが、もしそなたの話が本当だとしても、命を惜しむより、なすべき事を命を賭けてやり遂げる。それが誇りあるローマ人の生き方だとルシウスが言うので、だったら私も連れてって!と真実はせがむ。

いや…、そなたは元の世界に戻らねばならぬ。良い絵が描けると良いな。今度その絵を私に見せてくれとルシウスが言うので、無理だよ…、私の絵画完成するにはまだまだ時間がかかるけど、もうその頃、ルシウスはいないんだもの…。私はルシウスと別れたくないもの!と真実は訴える。

私もだ…。私もそなたと別れたくない。しかし、命あるもの、必ず別れは訪れる。そなたとの出会いは私の宝だ。パンノニアで命尽きるまで、そなたの事は片時も忘れない!とルシウスが言うので、もう言わないで!と言いながら抱きつく真実。

私に勇気をくれたそなたは私の女神だ!とルシウスが抱きしめながら言うので、そんな事言われたら!バカ!泣いちゃったじゃない!と怒りながら消えて行く真実。

すまぬ…、私も涙が止まらないと、夕日の沈む海岸でルシウスは詫びるが、もうその手の中の真実の姿は消えていた。

1人残ったルシウスは、静かに夕日を見つめる。

桜の季節

真実は、宝泉館で、母親の由美(キムラ緑子)と一緒に浴槽に浸かっていた。

そこに、決まったぞ〜!と叫びながら飛び込んで来た修造が、真実のマンガの連載が決まったんだ!と言うと、本当かや?やった〜!と叫んだ真実は、いつの間にか素っ裸で父親の前に立ち上がっていた。

一方、ローマのテルマエでは、マルクスや山賊たちが、女性たちのいる浴槽に嬉しそうに入っていた。

どうやら内戦は終結だな。しかし、ハドリアヌス様、混浴は禁止ではなかったのですか?と湯に入っていたハドリアヌス帝に聞く。

仕方あるまい。垣根を越える為だ…とハドリアヌス帝は答える。

現在の世界で、サイン会を開いていた真実は、ファンの女の子たちからコミックスを差し出され、この主人公、モデルいるんですか?と聞かれたので、ちょっと考えた後、いるよと答える。

「テルマエ・ロマエ」の第一話のコミックス

コロセウムのある巨大なオープンセットで、エキストラカットを撮り終えた映画クルー

その場所に案内された来たのが、原作者である真実だった。

真実はスタッフから、こちらが、ルシウスを演じている役者さんですと紹介された男がいた。

その男は背中を向けていたが、真実に気づくと、振り返り、ボンジョルノ!と挨拶をして来るが、それはあのルシウスではなかった。

その時、側の井戸から這い上がって来た本物のルシウスが、その男は偽者だ!と真実に呼びかける。

エンドロール

海岸で、1人寂し気にしゃがみ込んでいたオペラ歌手の肩を叩いたのは、さっき、母親と一緒に立ち去ったはずの息子だった。

喜ぶオペラ歌手の元に、あの太った妻も戻って来る。

草津温泉の湯もみの様子

三郎の姿に、日本猿が温泉に浸かり、気持ち良さそうに目を閉じている姿が重なり、北島三郎が歌う「与作」の曲が重なる。

夕日を観るルシウス

真実と一緒に、満足そうに温泉に浸かっているルシウス…