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チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像

ミステリ原作の映画化で、TVシリーズの劇場版でもあるが、竹内結子と阿部寛が田口と白鳥を演じた「チーム・バチスタの栄光」(2008)「ジェネラル・ルージュの凱旋」(2009)とは別系統の作品である。

劇中に出て来るタイトルは、単に「ケルベロスの肖像」。

医療ミステリとしては面白く出来ており、映画としても十分に楽しめる内容になっている。

ただし、キャストがTV版を基本にしていると言う点が、興行的に成功だったかどうかと言う疑問は残る。

TVではそれなりの視聴率が取れるメンバーだとは思うが、映画として、大量の客を呼べそうな人は誰もいないように思えるからだ。

元々、医療ミステリなので、そんなに派手な見せ場はないし、アクションのようなものもない。

サスペンス重視と言うことで、色々、怪し気なキャラクターも用意し、レッドヘリング(ミステリで用いられる「ひっかけ」要素)は十分。

アクの強いホームズ役の白鳥と、影の薄いワトソン役の田口とのコンビネーションで見せて行くのだが、その辺のバランスも安定感がある。

犯人のインパクトがちょっと弱い印象はあるものの、全体の完成度は低くないと思う。

ただ、手堅く作ってあることが逆に、TVファンとミステリ映画ファン以外の層を呼び込めなかったのかもしれないとも感じた。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2014年、「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」製作委員会、海堂尊原作、後藤法子脚本、星野和成監督作品。

炎のアップ

雪の中、煙突から煙が上る。(キャストロール)

火葬場の焼却炉から焼き上がったばかりの遺骨が引き出される。

その遺骨の腹の部分に、骨ではない何か異物が焼け残っていた。

外国から帰宅したピアニスト船橋律子(有森也実)は、夫がいるはずの別荘に車でやって来ると、家の中を見て回るが、寝室にも夫の姿はない。

一旦、外に出て庭先から見える生みを眺めた律子は、念のため、地下室に降りるエレベーターのスイッチを押してみるが反応がない。

不審に思って、配電盤を観に行った所、ブレーカーが落ちていたので、それを入れ直し、再びエレベーターボタンを押し、地下室に向かう。

エレベーターから降りた途端、律子は異臭に気づく。

何か異変を察知した律子は、怖々室内の電気を点けて見るが、そこで目の当たりにした光景に悲鳴をあげる。

夫婦の記念写真などが飾られていた地下室内には、10人もの男たちが倒れていたからだった。

どうやら全員、死亡しているようだった。

タイトル

東城大学医学部付属病院に近く新設される国立AIセンターに、パトカーの先導で戦車がやって来るのを観ようと集まった大勢の野次馬やマスコミ。

自衛隊の協力で、30トンも重さの最新鋭のMRI「リヴァイアサン」を輸送して来たのだった。

そんな中、戦車の搭乗口が開き、中から出て来たのは、自衛官の制服を着た東城大学医学部付属病院不定愁訴外来責任者田口公平(伊藤淳史)だった。

田口は、マスコミ向けなのか、いきなり敬礼をして見せる。

戦車から降りた田口は記者たちに取り囲まれるが、その時、群衆の中に見知った顔を発見し、すみれ先生…と呟くが、こういう無茶振りをさせるのが好きな人がいまして…と他の記者の質問に答えていた田口に近づいて来た女性記者別宮葉子(桐谷美玲)は、それは厚労省の白鳥さんのことですか?と言いながら名刺を手渡すと、誰か探してましたね?と鋭いことを聞いて来る。

田口はそれには答えなかったが、一同が東城大学医学部付属病院に入って行く中、桜宮すみれ(栗山千明)はじっと見守っていた。

建物の中で待っていた市長の室田芳郎(国広富之)に、名刺を渡して挨拶した厚生労働省大臣官房秘書課付技官兼医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長白鳥圭輔(仲村トオル)は、10日後に、AIシンポジウムを開きますと説明しながら、室田市長を順ぼ中の会議室に案内して来る。

市長は、解剖の方が優れているのでは?と聞くと、そんなことを吹き込んでいるのは法医学の先生でしょう?相変わらずだね、日本って…と壇上から声をかけて来た男がいた。

テンガロンハットをかぶった場違いな雰囲気のその男こそ、マサチューセッツ医科大学上席教授でMRI診断領域の第一人者東堂文昭(生瀬勝久)だった。

こんな市長が当選するなんて、選んだ桜宮市のレベルも知れたもんだなどと無礼な発言をするので、市長はむっとし、案内して来た白鳥も慌てる。

AIは、死因究明の特効薬です。白鳥圭輔!君のような役人に任せていたら、真のAIは根付かないよ!などと言いたい放題の東堂だったが、そんな会議室にやって来た田口には、ちゃんと敬礼した?と聞く。

田口に無茶振りをしたのは、東堂だったのだ。

白鳥は、あの人は、次のノーベル賞に一番近い人ですと室田市長に藤堂のことを教える。

室田市長は、この計画には桜宮市も協力していることをあの人は知ってるのかね?と不快感を現すが、そんな市長に、白鳥は田口も引き合わせる。

田口の診察室にやって来た白鳥は、慣れないAIセンター開設の世話係として、かなり苛ついていながらも、戦車に乗れて嬉しかったかい?と田口に聞く。

その質問を聞いていた看護士の藤原真琴(名取裕子)は、一番好きなのはドイツ製なんですってと茶々を入れて来る。

そんな真琴は、今回、アメリカから東堂を呼んだのは白鳥だとばかり思っていたが、実は、自分と仲が良い船橋審議官が呼んだのだと説明しかけていた白鳥のスマホが鳴り出す。

その船橋審議官からだと気づいて電話に出た白鳥だったが、電話の相手は審議官の妻律子で、主人が別荘の地下室で亡くなっていたと知らせる内容だったので、絶句してしまう。

白鳥の様子から、ただならぬことが起こったと気づいた田口が何ごとかと聞くと、僕の味方がこの世からいなくなっちゃったようだと白鳥は答える。

事件現場で検死を行っていた鑑識が、1人だけまだ息があると言い出したので、刑事たちは驚く。

その生き残りは、直ちに東城大学医学部付属病院ICUに運び込まれる。

担当した速水晃一(西島秀俊)は、患者が9人死体が発見された中で唯一の生き残りだと聞くと、絶対に死なせるなよ!とメンバーたちに指示を出す。

一方、事件現場にやって来た白鳥は、刑事の玉村誠(中村靖日)から、発見時、部屋のブレーカーが落ちていたと聞かされていた。

しかも、この部屋は携帯が通じない。

海外に行っていた奥さんが発見したが、船橋審議官とここに集まった連中は、みんな、1週間前から、勉強会と称し、休暇を取って集まっていたようだと言う。

死んだ船橋審議官以外の8人は全員製薬会社の関係者で、唯一生き残った榊陽一(二階堂智)だけが、一般の内科医だった。

室内で争った気配はなく、事故だったのではないかと言うので、白鳥は、勉強会と言うには、室内にパソコンや書類の類いが一切ないのは変だし、不運にも全員が部屋に入った途端にブレーカーが落ち、不運にも非常用ボタンも壊れていたのはおかしいとは思わないかい?玉ちゃんと疑問を口にする。

同時期、キャンデーを口にした速水たちは、必死に、唯一の生き証人である榊の救命作業に取りかかっていた。

そんな中、診察室にいた田口は、部屋の外に立っていた若い医師に気づくと、部屋を出て声をかける。

研修医のときは救命科以外を選ぼうと思ってたんですが…と照れて答えたのは、田口と昔から顔見知りで新人救命医師になったばかりの滝沢秀樹(松坂桃李)だった。

その頃、白鳥は、解剖室の前に来ていた。

神奈川県桜宮市で起こった9人の死亡事故のことはTVでも流れていた。

そのニュースを熱心に見守る別宮葉子。

翌日、田口が自転車で病院にやって来て、「リヴァイアサン」の設置された部屋に来てみると、東堂が1人で調整をしていたので、お早うございますと声をかけると、もう朝なの?と東堂は聞いて来る。

どうやた徹夜で準備作業を行っていたようだった。

厚労省の船橋さんが亡くなりました。仲良かったんですよね?と田口が聞くと、ピアニストの奥さんの海外公演に言ったりしていたくらいだと答えた東堂だったが、お悔やみとか…と田口が言うと、「リヴァイアサン」の調整の方がずっと大事!とだけ答える。

そんな東堂の元に大きな荷物を運んで来た業者に、ホールに飾るよう指示を出すと、本当は金の方が良かったんだけどねなどと冗談とも本気とも付かないことを言う。

事件現場に戻って来た白鳥は、部屋に飾られていた何枚もの写真立てを観ていた。

そこには、船橋夫妻と一緒に写っている藤堂の姿もあった。

AIセンターオープンまで7日

田口はその日、不定愁訴の外来の渡辺金之助(バカリズム)と言う患者から、めまいの薬を飲んだらかゆみが出ると言う苦情を受け、後発医薬品を勧めようとしていた。

しかし、パソコン画面でその薬を見た渡辺は、ジェネリック薬品って、名前が違うだけで同じ成分じゃないですかと文句を言う。

それで、田口は、ジェネリックと言っても、副成分が違うものがあり、かゆみの原因は副成分の可能性もあるので、試してみる可能性もあるのでは?と優しく言い聞かし納得させる。

次にやって来たのは、あろう事か事務長の三船大介(利重剛)で、最近不安で眠れないんだなどと訴えるので田口は呆れてしまう。

その事務長が、反AIはの声が増えているが大丈夫かって言うんだよと白鳥に教えると、確かに、船越審議官が亡くなった途端、アンチAIが息を吹き返して来た。あの事故の解剖が始まって3日も経っているのに、まだ死因が分からないからな。案外、集団ん殺人だったりして…と白鳥は悪い冗談を言う。

そんな話をしながら歩いていた田口は、外で、人と話している別宮葉子の姿を発見、笑顔で手を振って来られたので、こちらも答えると、白鳥は、へぇ〜…と感心したように田口の顔を観ると、急いでいるからと気を利かせ、先に去ってしまう。

その時、そんなの無理に決まっているだろ!と容子に怒鳴り、立ち去った話し相手が滝沢だったことに田口は気づき、葉子に近づく。

9人不審死事件で生き残った人のことを取材しようとしたら怒られたと説明する葉子に、滝沢先生とは付き合ってる?と田口が聞くと、古い知り合いだと葉子は答え、この間、すみれ先生って呼んでましたよね。見つけましたと言い、古い新聞を田口に見せる。

そこには、碧翠院桜宮病院が火事を出し、父、桜宮巌雄(柳葉敏郎)と姉、桜宮小百合(水野美紀)を亡くした妹のすみれが行方不明になっていると載っていた。

その病院は、安楽死をやっていると言う噂のあった所だったが、証拠となる物と言えば、筋弛緩剤と古いAI画像だけだった。

小百合先生は、自ら安楽死を選んだんですと田口は弁護するが、妹のすみれについては何も知らないんだ?と葉子は突っ込んで来る。

そして、すみれさんのことは自分がツテが色々あるから調べてみますと言う葉子は、田口の連絡先を聞く。

でも、どうして?と田口が聞くと、会ってみたいから。肉親を3人も失った人に聞いてみたい。私だったら、白鳥さん憎むけど、あなただったら、どう?って聞いてみたいと葉子が言うので、進展があったら教えて下さいねと田口は頼む。

入院中だった榊医師の様子を観に来た白鳥に、速水とICUの外にいた玉村刑事と安藤豊刑事(阪田マサノブ)は、榊先生は他の死んだ連中とは違って中畑製薬とは無関係だし、患者の顔も覚えないと言われたりして、患者との間にトラブルがあったようだと教えていた。

そこに、「リヴァイアサン」の磁場調整がすんだと明るい表情で、田口と共にやって来た東堂が、遺体を運んでくれ。「リヴァイアサン」で調べるんだと言い出す。

白鳥と田口、両刑事と共に、「リヴァイアサン」の隣のコントロールルームに戻って来た東堂は、早速、遺体の一つを検査し始めるが、頭部を調べ始めた所で、モニター画像が鮮明ではないことに気づき、ノイズが多いね…とぼやく。

それを見ていた白鳥は、チューニングが終わってないの?どだい4日で調整なんて無理でしょうと嫌味を言う。

私には4日あれば十分なんだよ、ミスター・スワンと言い返した東堂は、モニター上を観ながら、画像上不審な点は何もない…と呟く。

AIも無理ですね…と田口が落胆すると、際立った波形が出ない…、コイルが違うのか?と独り言を言い出した東堂は、次々に、計器のコイル部分を取り替えて見るが、結果はどれも思わしくなかった。

どれも信号が出ないのだ。

毒を思わせるような異常はない…、大きなピークが出ない!東堂の顔に焦りの色が浮かぶ。

再び、コイルを「D」に変えた時、ようやく、モニター上のグラフに変化が現れる。

これだったのか!最初から合ってたんだよ!と東堂が声を上げ、それを見ていた白鳥も、水だよ!水!凶器は水だったんだ!とぽかんとしている田口や刑事に聞こえるように言う。

MRIは水のプロトンに調整してあるが、肉体の何かが邪魔をしている!と考える東堂。

毒物検査に引っかからない?と田口も考え始めた時、重水だよ!ビンゴ!少しくらい飲んだだけでは支障はないが、大量に接種すると、マウス実験によると30%以上身体に入ると死にいたる…と東堂は言い出す。

わざと閉じ込めたって事か…と田口も、地下室の事件が故意だったことに気づく。

9人は殺されたんだよ!重水が身体に与える影響を知っていると言うことは、医学的知識があった人間だよ!と白鳥が指摘する。

来月1日オープンする予定のAIセンターで、9名の不審死に関して緊急の会見が行われることになる。

別宮葉子も、その記者会見の会場に来ていた。

そうした中、東堂は、世界に3台しかない「リヴァイアサン」は。100ミクロン単位で身体を調べることが出来る、死因解明の救世主なんだよ!全国の画像がその内、ネットで繋がることになる!と自慢げに「リヴァイアサン」の宣伝をしていた。

その実況中継を観ていた桜宮すみれは、TVのスイッチを消す。

そこに入って来た男は、彼らには、法医学者に対する敬意など微塵もありませんねとすみれに話しかける。

すると、あいつは許せない!とすみれが言い出したので、では使いますか?と言いながら、男は小さなケースを出して来るとすみれの机の上に置く。

AIセンターオープンのちょうど1週間前に、事件の死因が分かるなんて…と、田口は白鳥に話しながら病院内を歩いていた。

これでアンチAIセンターグループはぐうの音も出ないなと愉快そうに言いながら近づいて来た東堂は、君のやり方は生温い!私がこの国の死因究明を立て直す!と白鳥に言い放つ。

そのためには何をやって良いと思ってるんじゃないだろうな?あなたにとっては良いタイミングで死因が究明出来た。自作自演ってか?と白鳥が憎まれ口を叩くと、あの時、私は日本にいなかったと東堂は言い返す。

代理人を使えば良い。今回のことは凄いお手柄だよね?誰もAIセンターに文句を言えなくなる。あんたと「リヴァイアサン」の宣伝だったんじゃないの?と白鳥が言うと、親指を突き出した東堂は、ありだね!そう言う解釈も。まあ、その調子で頑張って犯人見つけてよと言い残し、立ち去って行く。

動機もある、医学的知識も十分過ぎるほどある…と、真剣な表情で白鳥は続けていたが、その時、表に別宮葉子が立っていることに気づく。

外に出ると、先生のお陰で会見に参加出来ました。お礼に食事でも?と葉子が田口に話しかけて来たので、ご一緒にと誘われた白鳥は、グッチーの300年に1度のチャンスを邪魔したくないのでと言い残し、先に帰ってしまう。

料理屋で田口は、救命の先生もこれで一安心だって…と話し、滝沢先生とは幼なじみか何かとか?と聞く。

まあ、そんな感じかな?とはぐらかせた葉子は、何で、この仕事を?と聞かれると、昔から病院に縁があったから、母が病弱で…、薬害などだと大きな組織にもみ消されてしまうこともあるし…などと打ち明ける。

それで、医務系の記者に?分かります、僕も同じですからと田口が言うと、ふ〜ん…、同じか〜…と葉子は答える。

その頃、無人になった夜の病院のロビーで1人残っていた東堂は、壁に飾られた「ケルベロス」の絵をじっと眺めていた。

翌朝、三船事務長は、良かった〜!今度こそはダメかと思いましたと田口の診察室に来て明るい顔を見せる。

そんな中、田口は、自分宛てに着た手紙を開封し、中に入っていた手紙を開いてみてあっけにとられる。

知らせを聞いた白鳥が田口の元に走って来ると、脅迫状が届いたんだって?と聞く。

封書の消印を観ると、送り先は極北市だった。

手紙には「3の月 東城病院とケルベロスの塔を破壊する」と書かれていた。

今まで喜んでいた三船事務長は、どう言うことですか?これは!と動揺していた。

3の月は来月のこととして、「ケルベロスの塔」と言うのは?と田口が聞くと、東堂教授は、良くAIをケルベロスに例えていた。遺体の最終検査であり、犯罪を暴く最初の検査、そして遺族にとっては希望の光だからだって…と白鳥は教える。

AIセンターのオープンは3月1日ですよね?と藤原看護婦が指摘すると、後4日じゃないか!と三船事務長は狼狽する。

一昨日の派手な会見に加え、今度も大きな話題になるんじゃ?…と呟いた白鳥は、東堂の仕業じゃなかったら、この手紙は本気の脅しと言うことになると真剣な顔になる。

相手はグッチーを良く知っている人間で、AIに裏身を持っている者だと白鳥は推理する。

その時、院内電話がかかって来たので藤原が取り、患者さんの意識が戻ったそうですと田口らに伝える。

直ちに田口と共にICUに向かった白鳥は、意識を取り戻した榊医師が、人が死んで…、次々と…とうわごとのように言っていたので、どうしてあの勉強会に行ったの?と聞くが、榊は、女だ!あの女が…と言うだけで苦しみ出したので、付き添っていた滝沢医師が白鳥の尋問を制止する。

白鳥と共に廊下に出た田口は、そこにやって来た別宮葉子から、妹には、父の親友だった南雲忠義と言う弁護団がついていると教えられる。

どこに住んでいる?と聞くと、北海道の極北市だと言うではないか。

脅迫状の送り先と同じだった。

その後、たくさんの資料を持って田口の診察室に戻って来た白鳥は、事件があった地下室で行われていたのは何の為の勉強会だったのか?どうして1人だけ、製薬会社とは無関係な内科医がいたのか?

そんな部屋に突然やって来た患者の渡辺金之助は、かゆみが泊まったんですよと嬉しそうに田口に報告すると、手みやげのチーズケーキを置いて帰って行く。

何?あの人…と白鳥が聞くので、ゾロ薬(ジェネリック医薬品)飲んだら、かゆみが止まったんですよと田口は教える。

すると、それを聞いた白鳥は、死んだ船橋審議官の地下室に置いてあった写真の中に、中本製薬の名が入ったトロフィーを持ったゴルフの後の記念写真があったことを思い出す。

そう言えば、昔、薬害事件を起こした中本製薬は、その後合併して中畑製薬になったはずだ!と思い出す。

中本製薬は15年前、リウマチやガンの痛みを緩和する「ケルトミン」と言う薬を作り認可されたが、ごく一部の患者は薬が中枢神経に入り込み、致命的な副作用が起こることが分かった。

しかし、それは、認可された後になってからの事だった。

船橋審議官も、当時、中央薬事審議会にいた。

診察室のパソコンで検索した白鳥は、地下室で死んだ9人は、全員「ケルトミン」に関わっていたことに気づく。

ICUにやって来た速水医師は、目覚めていた榊医師に、視力が落ちたり霞んだりすることは?と問いかけるが、はっきり見えていますと榊は答える。

そこに、ちょっと外してくれる?と速水と滝沢に頼みながら入って来た白鳥は、勉強会に集まっていた人たちは全員、「ケルトミン」に関わっているんですよね?榊先生も関わっていたの?とずけずけと聞く。

しかし、榊は、何故私まで脅迫の対象になっていたか?船橋さんたちは全員脅迫されていたと打ち明ける。

脅迫の相手は女と言うことですか?と刑事が聞くと、脅迫者は男か女かも分からないが、あの日、別荘のエレベーターに案内したのは女だった。他の人はみんな先に地下室に降りていた。

私が降りた途端、ブレーカーが落ちた…と榊医師は答える。

その女が、地下室に閉じ込めた…と白鳥は呟く。

その頃、田口は、国内便で極北空港に降り立っていた。

そして、タクシーで極北青藍院病院にやって来た田口は、案内係(西丸優子)に、こちらに桜宮すみれ先生はいらっしゃいますかと尋ねてみるが、いないと言うので、では院長の南雲先生にお会いしたいと申し出る。

しかし、取り次いでいた受付係は、院長は外出中で今日は戻らないと言うので、待とうと考えていた田口も、やむなく帰るしかなかった。

病院から帰る田口の様子を院長室から見下ろしていた南雲は、良いんですか?わざわざ訪ねて来たのに?と一緒にいた桜宮すみれに問いかける。

室内には、南雲院長とすみれの父桜宮巌雄が一緒に写った写真が飾られていた。

車がつかまりそうな道まで歩いていた田口の横に止まった車から降り立った南雲院長は、巌雄先生とは医学生時代からの盟友だったといきなり話し始める。

田口は呆然として、南雲先生?と問いかけるが、その巌雄先生を船橋が死に追いやった。どんな理由があろうとも、すみれ先生から家族を奪った罪は消えない。憎しみは人を狂わせ迷わせる。彼女は爆弾を手にしてしまった。復讐の為ならどんな手段もいとわない。あんまり調子に乗らない方が良い…、そう白鳥さんに伝えて下さい。3日後のシンポジウム、楽しみですなと一方的に話し終えた南雲院長は、さっさと車に乗り込む。

そんな南雲院長に、田口はウィンドーの外から、事件の生き残りが女を観たと言っている。すみれ先生は関係ないですよね?違うと言って下さい!と問いかけるが、南雲院長は何も答えず車を発車して去ってしまう。

その頃、ICUに又、女の顔のことを聞きに来ていた玉村刑事と安藤刑事は、思い出せないんですと言う榊医師の返事に戸惑っていた。

誰かをかばっているんじゃないでしょうね?と確認すると、かばう訳ないだろ!と榊医師は激高する。

そんな声を聞いてICUに近づいて来た速水医師は、合図をするまで声を出すなと長谷川崇医師(戸次重幸)に命じると、一緒に病室に入り、誰だか分かりますか?と榊医師に問いかける。

しかし、榊医師は、速水と一緒に入って来た医師の顔が思い出せないようだった。

僕ですよと長谷川医師が声をかけると、ようやく、長谷川先生でしたかと榊が気づいたので、頭部に怪我をしたことは?と速水医師は聞く。

5年前に事故で…と榊医師が答えるのを聞いた白鳥は、覚えられないんだ!と気づく。

「相貌失認」…、脳障害の一種で顔を認識出来ない。いつか言ってたろう?榊先生は患者の顔を覚えてないって…、声を聞くまで相手が誰だか分からないので、患者の顔も認識出来なかったんだ…と白鳥が玉村刑事らに説明すると、ドクター失格ですねと、事実を知らされた榊も落胆する。

女の年は?と白鳥が聞くと、若かった…、20代だと思いますと榊医師は答える。

AIセンターオープンまで後2日

朝、診察室に田口がやって来ると、ソファーに白鳥が寝ていたので、泊まり込んだのだと気づく。

殺された連中は、全員脅迫されていたんだって。地下室に案内したのは女だったそうだ。グッチーは、女と聞いて誰を疑ってんの?昨日は休暇を取ってまで、誰を捜しに行ってたのさ?と目覚めた白鳥は聞いて来る。

そんな国際AIセンターに、パトカーが続々とやって来る。

それに気づいた東堂が、何これ?と驚くと、爆発物が仕掛けられている可能性があると白鳥が教える。

ナンセンス!脅しには屈しない!1日には派手なオープニングを行う!と東堂は虚勢を張る。

犯人は女だって言うじゃないかと言う東堂の言葉を聞いた白鳥は、女と言えば、写真観たよ、君と船橋審議官の奥さんとの…と嫌味を言う。

だから、ゴキブリ厚労省と言われるんだ!無能な上に不愉快な男だ!と東堂は吐き捨てて去って行く。

ICUの榊医師の元へ行くと、「ケルトミン」は良い薬でした。多くの人の痛みを救った。だけど、1000人に1人に取っては毒だった。ずっと気になっていた。僕の患者に、その1000人に1人がいたんじゃないかって…。犯人が僕の元患者なら、あって謝りたいと榊医師は話す。

廊下で待っていた別宮葉子は、田口に15年前の榊先生の患者データを渡す。

それを一緒に読んだ白鳥は、調べるのに時間がかかっていると感心する。

薬害の被害者の資料も葉子は田口に渡したので、随分古い資料を持っているんだねと呟き、今でも連絡が取れる被害者いるのかね?と聞く。

葉子が田口と白鳥を連れて行ったのは、根本(品川徹)と言う「ケルトミン」の副作用で10年寝たきりの状態だと言う1人住まいの老人のアパートだった。

厚労省の立場として白鳥は、新薬の認可には難しい問題があり、治験段階で何人もの人に薬を投与してみるがその数は限られている。仮に1万人に1人にその薬が副作用が起こす事を突き止めるには90年の治験期間が必要であり、その間に苦しむ患者さんも大勢いると説明する。

すると、葉子に呼吸器を外してもらった根本は、苦しそうな呼吸の中、じゃあ、誰が悪い?誰を恨めば良い?と訴える。

アパートから出て来た白鳥は、葉子の介護が手際が良いと指摘する。

ずっと世話をしていた母が去年亡くなりましたから…と葉子が答えると、肩入れし過ぎじゃないのかな?お母さんと患者さんとが重なっちゃって、自分を正義の味方と勘違いするようになる人多いんだよねと白鳥は皮肉を言う。

私は公正な立場で書いています!何も知らないくせに!と葉子は不快感を示すが、自分だけ知っていると思ってる…、良くあるんですよねと白鳥はさらに反論するので、一緒に付いて来た田口はハラハラしていた。

「ケルトミン」だって、治験途中で副作用の危険性が高いことに気づいた製薬会社の若い役員がいたんですけど、内部告発したら、慣れない営業の仕事に回されて、屋上から飛び降りましたと葉子は訴える。

それを聞いた白鳥は、やっぱり君は公正じゃないみたいだね?と指摘したので、葉子は、白鳥さん、あなたも自分を正義の味方と思わないで下さい!と言い残して先に帰ってしまう。

田口は慌てて葉子を追いかける。

一人立ち止まった白鳥は、玉村刑事に電話を入れ、ちょっと調べてもらいたいことがあると連絡する。

その頃、桜宮すみれは、南雲院長から渡された小型のケースの蓋を開いていた。

白鳥の無礼な言葉を謝った田口と別れ、自宅マンションに戻って来た葉子だったが、入口に停まった車から降り立った玉村刑事と安藤刑事が自分の部屋に向かったことに気づく。

AIセンターオープン2日前

田口の診察室のソファで寝ていた白鳥の携帯が鳴り出す。

電話の相手は玉村刑事で、別宮葉子の本名は西園葉子、桜宮市の中央病院で母親が亡くなっていると言う。

白鳥は、やって来た田口に、葉子が行きそうな場所を知らないか?彼女が夕べから姿を消したんだと教える。

その後、田口と共に滝沢医師に会いに行った白鳥は、別宮と言うのはペンネームだった。そして、母親は10年以上寝たきりで昨年亡くなったが「ケルトミン」の薬害被害者だった。その担当医だったのが榊先生だった。葉子には医療の知識がある。あの9人を殺したのは葉子だったんだ!だからグッチーに近づいたんだよと教え、君も彼女を疑ってた?と聞く。

しかし、滝沢医師は何も答えず、その場を離れて行く。

葉子は提灯記事を書いて船橋審議官に近づいた。そして、あの地下室のことを知った。重水を大量に購入したことも調べがついているんだと、白鳥は田口に教える。

それを聞いた田口は呆然とし、放っといて下さい。1人にしてもらえませんか?と白鳥に言う。

国際AIセンターオープン当日

東堂は、「リヴァイアサン」の調整室で1人想いにふけっていたが、やがて、テンガロンハットをかぶり会場へと向かう。

滝沢医師は、いつも通り、榊医師の診察を終え、部屋を出ようとしていたが、その時、昔、どこかで会いました?と榊から声をかけられ、いいえと答える。

AIセンターには、シンポジウムに出席する招待客や一般客が続々と入口に入って来ていた。

その中には、南雲院長と桜宮すみれも混ざっていたが、入口で目を光らせていた白鳥に見つかるまいと、すみれは帽子のつばを降ろしていた。

東堂も、客たちが入って来たロビーの様子を二階から見下ろしていた。

入場者を見張っていた白鳥は、すみれの姿を見たかに思えたが、その時携帯が鳴り始め、玉村刑事から、大変なことが分かったとの報告が入ったので、急いでその場を離れてしまう。

その時、ベッド上の榊医師が突如喀血をする。

田口の携帯も鳴り出す。

それは白鳥からで、滝沢先生が別宮の共犯かもしれない。榊先生が危ない!と言う連絡だった。

田口が佐藤伸一(木下隆行)に滝沢医師の居所を聞くと、榊医師の緊急オペの助手についていると言う。

その時、患者の様子を観ていた看護婦が、野村さんが!と叫び出す。

ICUの室内が騒然とし出す。

榊医師のオペ室前に来た速水は、自分には新しい患者が来るので、オペはお前がやれと滝沢医師に命じる。

その場に駆けつけて来た田口は、待って下さい!あなたも薬害檜垣の家族がいるんだね!と滝沢医師に呼びかける。

全身マヒになった僕の父は、そんなに長くは苦しまなかった…と告白した滝沢医師は、僕はオペから外れた方が良いですか?と速水医師に聞く。

速水医師は、行け!滝沢!と命じるが、そう言うわけにはいかないんだよ。共犯の可能性がある。何故、この急変は何故起こったんだ?と声をかけて来たのは白鳥だった。

しかし、滝沢医師は、僕は何年、速水先生の元で働いていると思います?榊先生は僕の患者です。良い薬だったら、多少のリスクはあっても使う。助けたいから…と言い、田口も、僕は滝沢先生を信じますと言い出す。

本気でそう言うの?と白鳥は呆れるが、俺のチームに、人を殺すような奴なんて1人もいない!急げ!滝沢!と速水医師が声をかける。

もし、このオペで何か起こったら、滝沢は警察に行ってもらうよと白鳥が忠告すると、その時は俺も出頭するよと速水は答え、それより白鳥、こんな所で何してる!やることあるだろ?さっさと行け!と命じる。

田口は白鳥を誘い、シンポジウムの会場へと向かう。

満員の会場を舞台袖で観た東堂は興奮しており、今日から日本の死因究明は大きく変わる!と張り切っていた。

ICUでは、患者の様子に異変が起きていた。

「デラパミル」が投与されているのでは?と気づいた速水医師がその患者用の電子カルテをモニターで確認すると、やはり、その患者の本来の処方箋とは違う「デラパミル」が投与されていた。

シンポジウムが始まり、東堂が、ツタンカーメンの死因究明もAIで判明したと、スクリーンに映し出される画像を解説していた。

AIこそが、死因究明の土台になるのです!と力説した東堂に、では、過去の犯罪も暴かれるってことですか?と突然立ち上がって発言した客がいた。

南雲院長だった。

ICUでは、速水医師が、電子カルテが書き換えられている!これからはマニュアルに切り替える!事務長にシステムの修復を頼むんだ!と佐藤や他の看護婦や医師たちに指示を出していた。

AIは真実を照らす光です!と力説する東堂に、素晴らしい!と感動した風の南雲院長は、実はここに解明して頂きたいデータを持っています。これには過去の犯罪の証拠が残っていますとメモリーを取り出して見せる。

壇上の東堂は、見せてくれと言い出す。

65歳、男性の体内を写したデータをスクリーンに拡大してみた東堂は、腸がバリウムでハレーションを起こすくらい光っていると気づき、サプリイメージコンバートで再構築してみようと言い出し、腸内閉塞の可能性が高いと結論を出そうとするが、その時、そのバリウムの中に、もっと白い者があると気づく。

その部分にフォーカスしてみると、その白い物体の姿が画面上にもくっきり現れる。

医療用鉗子、ペアン!と東堂は気づく。

男性は、先日、私の病院で亡くなり、遺骨の中からこれが見つかりましたと、客席で立っていた南雲院長は発言する。

患者は30年前に大腸切除した事があり、その時に忘れたらしいが、その手術をしたのは、この東城大学病院だったのです!と南雲が言うと、場内はざわめき出す。

舞台袖で観ていた三船事務長も狼狽するが、南雲の席の近くの席に座っていた桜宮すみれが立ち上がり、事務長は当然ご存じないでしょうが、知っていた人間がいたんですよと発言する。

20年前の緊急オペの時、研修医として観ていながら、その後、厚労省の役人になった人間がいる。それが白鳥さん!あなただ!と、すみれは、壇上の進行係として立っていた白鳥を指差す。

どうして黙ってるのよ!言い訳の一つも聞かせてよ!火葬されたばかりの父の遺骨の中からペアンを発見したご遺族の気持ちが分かる?とすみれは訴える。

客席には、その遺族(住田隆、唐木ちえみ、小貫加恵)も座っていた。

AIで情報公開?笑わせないでよ!自分はこんな大事な情報も知らせなかったくせに!とすみれが興奮していた時、ビー、クワイエット!と発言を遮ったのは東堂だった。

話はまだ終わってませんよ。これを観て下さいと言う東堂は、ペアンの写った画像を画像処理でより鮮明にしたものをスクリーンで見せる。

ペアンの回りに、腸内血管がびっしり巻き付いている。もし当時、これを強引に取ろうとしたら、腸内のほとんどを切除しなくてはならず、とても生きてはいられなかっただろう。当時、この患者が痛みを訴えていなかったとしたら、彼らは間違ったことはしていない!と白鳥をかばう。

それでも…、言うべきだった…と言い出したのは白鳥本人だった。

ご本人にもご家族にも真実を知る権利がありました…、そう言いながら、遺族席に歩み寄った白鳥は、申し訳ありませんでしたと頭を下げる。

その白鳥の姿をじっと見つめるすみれ。

AIはこのように、推進して来た者の過去も暴く!これほど公平なものがありますか!違いますか?皆さん!と壇上の東堂は主張する。

その時、スクリーンに映っていたAI画像が急に乱れ始める。

検査室でも、システムがダウンしていた。

医療器械も使い物にならなくなった中、滝沢医師は榊医師のオペを始める。

すみれに近寄った田口は、すみれさん、まさか、これも?と聞くが、私が憎いのは、父を破滅させた白鳥とAIだけ!とすみれは答える。

そんなすみれに田口は、僕と来て下さい!先生も医者でしょう?と詰め寄る。

壇上に戻った白鳥も、グッチー、行こう!と呼びかける中、南雲院長はじっとすみれを見守っていたが、すみれは、行きましょう!と再度勧める田口に頷くと、白鳥と合流し、外来のホールへと向かう。

すみれは産科医師として、ロビーで苦しんでいた妊婦の診察に取りかかる。

三船事務長は、コンピューターウィルスでやられたらしいと白鳥と田口に伝える。

それを聞いた白鳥は、別宮葉子だ!オペが始まるタイミングを狙い、救命のカルテを狂わしたんだ。地下室のときは、観ていなかったため、1人助かってしまったので、今度は殺し損ねないように、葉子はこの近くにいるよと白鳥は田口に伝える。

滝沢がオペを進行する中、田口と白鳥は、葉子を探して病院内を走り回る。

やがて、田口は、病院の屋上に立っている葉子を発見、屋上に上がって行く。

少し遅れて、白鳥も駆けつけて来る。

榊先生が死んだら、ここから飛び降りるつもり?と田口が側に近づき問いかける。

船橋と中畑製薬は、又同じようなことをしている。死ななきゃ分からないのよ?と葉子は答える。

今、榊先生を執刀している滝沢先生は、患者の味方だって言ってたよと田口が教えると、10人死んだら大きな記事になるでしょう?10人殺した女の記事ならみんなが読む…と葉子は無表情に言う。

原稿はもう出来上がっている。榊が死ねば、それで完成…。完全犯罪だと思ったけど、死因を特定されちゃったからな〜…、ある日、母を公園に連れて行った時、そこに榊がいた…。母は丁寧に頭を下げた。母は言っていた。先生は悪くない。良い先生だって…、だのに…と葉子は話す。

(回想)公園で車椅子の母と目が合った榊は、パパ〜!と息子から呼びかけられると、そのまま会釈もせず息子の元へ走って行く。

(回想明け)あの男、母のこと覚えていなかった!自分の出した薬のせいで歩けなくなった母の顔を覚えてなかった!と葉子は悔し気に言う。

そんな葉子に田口は、榊先生は脳の損傷が元で、「相貌失認」って言う病気なんだ。「相貌失認」がなかったら、気づいていたんだよ。ずっと気にしていたって…、酷い副作用で苦しんでいる人がいたら謝りたいって言ってたと教える。

謝る?遅いよ、今頃そんなこと言われても…、もう取り返しがつかない!と言い放った葉子は、屋上の端に向かう。

それを止めた田口は、命を捨てるな!生きたくても生きられない人が大勢いるんだ!と涙ぐみながら諭す。

和泉遥(加藤あい)は、事故の被害者がいるとの電話を受け、その応対に苦慮していた。

それを聞いた速水医師は、システムはぶっ壊れても俺たちは生きている。断る理由がどこにある!受けろ!と指示を出す。

葉子を白鳥が連れて行く中、田口は自分の仕事に戻るため走り出す。

すみれも、看護婦に、分娩室へ!私がやる!と指示を出していた。

葉子は、ロビーで待っている患者たちの姿を横目に入口で待っていた刑事に預けられる。

滝沢医師のオペはまだ続いていた。

刑事が葉子を外へ連れ出す。

東堂は「リヴァイアサン」のコントロールルームでがっかりしていた。

田口の携帯が鳴り出す。

速水医師も運び込まれて来た急患のオペを始めていた。

すみれは、分娩室で赤ん坊を受け止めていた。

田口は病院を飛び出すと、パトカーに乗せられていた葉子に、窓ガラスを叩いて、今終わったそうです!榊先生は無事です!と声をかける。

それを後部座席で聞いた葉子は、ほっとしたようだった。

葉子を乗せたパトカーが走り出す。

手術を無事終えた滝沢医師は、窓から雪が舞い降り出した外を眺めていた。

パトカーの中の葉子は泣いていた。

遠ざかって行くパトカーを見送る田口と白鳥。

その後、夕暮れの屋上にいた白鳥の元にやって来た田口は、葉子が書いた記事が大きく取り上げられてますね。改善案の検討も始まったようですと伝え、ペアンの件、当時の教授に相当楯突いたそうですね?と笑いかける。

現場が必死になっても限界がある…。だから役所と現場の橋渡ししようと思って厚労省に入ったんだが…、詭弁かもしれないな…、ただ、現場から逃げ出したかっただけなのかもしれない…と白鳥は呟く。

良いじゃないですか!お陰で、嫌われ者のゴキブリ厚労省が誕生したんですから!と田口はからかい、急に手を差し出す。

不審気な白鳥に、持ってるんでしょう?辞表!こう見えても僕も準備室室長補佐ですから!と田口は笑いかけ、白鳥の上着の内ポケットから辞表を抜き取ると、その場で破り捨てる。

まだまだこれからでしょう。何枚書いても一緒ですからねと田口は念を押す。

2人は夕日を観る。

その後、白鳥は、アメリカに帰る東堂を1人見送りに来ていた。

「リヴァイアサン」の廃棄処分が決まった…、ネットで入り込んだウィルスの為に、メインコイルまで破壊されるとは…と東堂は落胆していた。

CTがあればAIはできます。CTの保有台数は世界一だし、優秀な医師も増えているからね。AIと言う種は綿毛になって日本中に飛んで行ったんだよと白鳥は慰める。

じゃあな、白鳥君!と手を振って、テンガロンハットの東堂は搭乗口に向かう。

診察室にやって来た田口は、机に水玉模様の包装紙に包まれた箱が置いてあることに気づき開封してみる。

空港を出た白鳥は、街を歩いていた。

箱に入っていた戦車の模型を、田口は嬉しそうに飾る。

そして、いつものように院内を歩き始めるのだった。