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夢がいっぱい暴れん坊

「東京の暴れん坊」(1960)「でかんしょ風来坊」(1961)に続く、「暴れん坊シリーズ」第3弾らしい。

「でかんしょ風来坊」は暴れん坊と言う言葉が使われていないので分かり難いが、調べてみると、確かに登場人物は同じメンバーと役名になっている。

「東京の暴れん坊」は、何となく「大学の若大将」(1961)を連想させるような明朗青春ドラマだったが、本作も銀座を舞台に、若い腕利きコック小林旭、銭湯の娘浅丘ルリ子、そこにヤクザの息子郷英治まで加わって、当時流行っていたツイストをも取り入れ、明るく楽しい青春歌謡活劇になっている。

今作では、スポーツの要素がなくなっただけ「若大将」のイメージとは違う感じになっているが、本当の銀座ロケと、いわゆる「日活銀座」の巨大オープンセットを巧妙に組み合わせているような作り方で、当時の銀座の雰囲気を良く表現している。

冒頭のタイトルバックの遊びも楽しい。

当時の日活得意のタイアップも健在で、本作では、熱海「玉の湯ホテル」「孔雀印ヂャー」「ヱスビーカレー」などが要所要所で登場している。

この種のプログラムピクチャーで注目すべきは、当時の物価だろう。

50万ドルで1億8000万円と言っていることから、1ドル=360円の時代であり、秀子の銭湯の料金は「大人 19円」と書かれている。

ほぼ同時代である1961年の日活作品「青い芽の素顔」では、銀座界隈の映画料金が250円と書かれていたことを考えると、当時、映画料金は銭湯料金の10倍以上していたことになる。

劇中に、ケネディの話が登場するのも興味深い。

忠次が次郎に対し、ケネディにフルシチョフ、大鵬に柏戸と言っている方は、大統領になったばかりのジョン・F・ケネディのことだろうが、奥さんを連れて来たんでしょう?と金作の女房が言っているのは、おそらく、1962年2月6日に来日したロバート・ケネディ米司法長官のことであろう。

後の石原プロ作品「西部警察」で嫌味な佐川捜査係長をやっていた高城淳一が似たような嫌な役で出て来るし、銀座若旦那会には中尾彬も出ていたらしいが、こちらは気づかなかった。

小林旭が相変わらずの超高音で陽気に歌う「アキラでツイスト」の強烈なパワーが、観ているものの色々な考えを一瞬にして粉砕してしまうようなインパクトがある作品である。


▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1962年、日活、松浦健郎原作+脚色、松尾昭典監督作品。

広いフロアでツイストを踊りまくる若者たちを背景にタイトル

踊る若者たちが乗っているセット台にスタッフ・キャストが書いてあり、そこにスポットライトを当てながら、カメラが移動し写して行く。

銀座上空を飛ぶセスナ機が、大量のビラを散布し始める。

そのビラが舞い降りて来たので拾い上げたフランり料理店「ジロー」の主人長五郎(中村是好)と、隣の寿司屋「寿司銀」の主人金作(桂小金治)は、そのビラに書かれた「フランス料理店 銀座貴族開店」の文字を見て苦々しい顔になる。

それもそのはず、同じフランス料理店を謳うその大きなビルは、「ジロー」の真向かいに建設中だったからだ。

銭湯帰りのトリスバー「アルマン」のママ、リラ子(小園蓉子)が近づいて来て、長五郎に同情の言葉をかけると、「松の湯」の娘松田秀子(浅丘ルリ子)もやって来て、次郎さんの意見が聞きたいと言うが、肝心の次郎は旅行で不在だと言うのでがっかりする。

その頃、長五郎の倅、清水次郎(小林旭)と金作の倅、鉄夫(杉山俊夫)は、銀座若旦那会の総会で、熱海の「玉の湯ホテル」に泊まっており、浴場で、次郎が得意の咽を披露していた。

風呂上がりの総会では、1品5000円もする高級料理を出すと言う銀座貴族の進出に関して、銀座の名前を穢す行為じゃないか!止めさせるよう抗議しようと鉄夫が提案していた。

その意見に全員同調していたが、ただ1人反対の手を挙げたのは次郎だった。

鉄夫は、そんな次郎に、それでも「銀座の次郎長」かい?と不満を現すが、単に銀座の名を使って高く売るんだったら長続きはしないだろうから、様子を見たらどうかと言う次郎の意見を聞くと、議長のえり万米三(山田吾一)を始め、出席者全員納得してしまう。

それで会合はお開きかと思われたが、米三は実はもう一つ議題が残っており、それは、この銀座若旦那会に新人会員として、銀座に古くから「突風クラブ」の二代目、江戸川忠次が入りたがっているがどうするかと全員に告げる。

今度、アメリカから帰って来ると聞いた鉄夫は、それはヤクザじゃないかと難色を示す。

他の会員たちも、ヤクザなんかを入れるわけにはいかないと気色ばむが、米三が言うには、既に本人が別室に来ており、ここの返事を待っているのだと言うではないか。

断りの返事まで自分が行かされるのは嫌だと米三がごねたので、会合は重い空気に包まれてしまう。

何しろ、忠次と言う男、テキサスの牧場で5人のカウボーイと1頭の牛を倒したとも噂される荒くれ者だと言うからだった。

その頃、当の江戸川忠次(郷英治)は、別室でウクレレを弾きながら1人で歌を歌っていた。

そこに、仲井さんがビフテキとバーボンウィスキーを運んで来たので、嬉しそうに食べ始める。

若旦那会では、誰が忠次に断りを良いに行くかでもめていた。

断って暴れられても困るんで、いっそのこと、入れてやったらどうかと言う意見も出たが、反対意見も根強く、米三は、反対していた鉄夫に行って来てくれと頼む。

驚いた鉄夫だったが、性格上断れず、やむなく行きかけるが、それを制止したのは次郎だった。

結局、入会を断りに出向いたのは次郎だった。

別室で2人きりになった次郎から返事を聞いた忠次が、バーボンの蓋を折り曲げたものを差し出しながら名前を聞いて来たので、清水次郎と名乗り、自分もフランスに行っていたと打ち明けながら、さらに折り曲げた蓋を返したので、お前が「銀座の次郎長」か、俺が忠次だから、さしずめケネディとフルシチョフ、大鵬に柏戸と言った所だなと、忠次は愉快そうに笑顔で握手を求めて来る。

しかし、次郎は、ヤクザと仲良くするつもりはないと言い捨てて、握手を拒み、部屋を後にする。

その後、次郎は、元総理大臣だった一本槍鬼左衛門を紹介してくれと言いながら付いて来た鉄夫と共に、大磯駅に降り立つが、目の前を秀子が歩いていたので声をかける。

秀子の方も一本槍に会いに来た所らしく、奇遇を喜ぶ。

その頃、その一本槍鬼左衛門(小川虎之助)は、自宅側の海岸で、いつものように伝来の槍を振り回して、1人鍛錬に励んでいた。

そんな一本槍は、数名のヤクザ風の男から逃げて来た2人の女性を見かける。

春子(久里千春)と静江(星ナオミ)が、大阪から追って来たヤクザ(榎木兵衛ら)に捕まり連れ去られそうになったので、そこに槍を持って駆けつけて来た一本槍が、おのれ愚連隊め!この流れ星の穂先、観ないでか!と見栄を切って止めようとするが、槍を回しているうちによろめいて、砂浜に尻餅をついてしまう。

ヤクザたちはそんな一本槍を嘲笑するが、そこに駆けつけたのが次郎で、ヤクザたちと戦い始める。

秀子と共に遅れて来た鉄夫も喧嘩に加わる。

かくしてヤクザを追い払い、一本槍の屋敷で春子と静江から事情を聞くことにする。

彼女等は、大阪のヤクザの下で働くのが嫌になり、東京で働きたいと思い向かっていたが、途中で、大阪からの追手に気づき、大磯駅で途中下車したのだと言う。

話を聞いていた次郎は、自分が手助けしようと言い出すが、それを止めた一本槍は、たまにはわしに任せておきなさいと太鼓判を押し、すぐに厚生大臣か労働大臣に電話をさせようとする。

その後、国会議事堂の前から逃げ出して来た春子と静江は、とんでもない所に世話されちゃった。私たちには向かないわね…とぼやいていたが、そんな2人の背後から声をかけて来たのは、警察手帳を持った刑事風の男小島(野呂圭介)だった。

相談に乗りましょう。就職の世話をしましょうと言う小嶋の言葉を信じて事務所に連れて来られた2人だったが、そこに現れたのは、「突風クラブ」のヤクザ銭村(近藤宏)、助川(土方弘)と、ずっと彼女等を追って来た大阪のヤクザたちだった。

実は小島も「突風クラブ」の一員で、大阪のヤクザから連絡を受けた「突風クラブ」も協力して彼女等を捜していたのだった。

騙されたと気づいた春子と静江が、大阪のヤクザたちに渡されようとしていた時、江戸川忠次がやって来て、ここはあんた等のメンツが立つようにしよう。うちでまともな所に就職を世話しようじゃないかと大阪のヤクザに告げ、追い返す。

会長室で、「あなたは実業家になれるか」と言う本を読んでいた忠次の父親で組長の江戸川万造(若宮忠三郎)の元にやって来た銭村と助川は、アメリカ帰りの忠次のやり方には納得いかず、黄桜組に女を渡せば、手数料が入って来るはずだと抗議する。

しかし、万造は、息子のやり方を聞くと、弱気を助け強気をくじく、昔ながらの任侠道を良く心得ており、さすがに俺の息子だと感心するので、銭村たちは呆れて出て行ってしまう。

そこに忠次がやって来たので、万造が若旦那会に入れたのか?と聞くと、ヤクザじゃダメだそうだ。だが、それを伝えに来た男はしゃくに触るほど粋な奴だったと忠次は忌々しそうに答える。

その頃、フランス料理店「ジロー」では、「銀座貴族」の支配人難波田憲亮(高城淳一)が、次郎を「銀座貴族」のコック長として出迎えたいと、父親である長五郎と客席で話し合っていた。

その話を厨房で調理しながら気にする次郎。

支度金を聞かされた長五郎は一瞬嬉しそうな表情になるが、すぐさま、次郎をそちらに引き抜かれたら家はどうなるんだ?ぺんぺん草が生えてしまうじゃないか!と断ると、家は大きく、駐車場も少ないので、空地は駐車場に利用させて頂きますなどと慇懃無礼なことを言い出したので、出て来た次郎が、難波田の名刺を破り捨てると、難波田は興奮し、長五郎を殴って来たので、次郎は難波田を入口から外へ押し出す。

難波田は表の道路に転がり、危うく自動車に轢かれそうになったので、思わず「バカヤロー!」と怒鳴るが、急ブレーキをかけて停まった車を運転していたのは、「銀座貴族」の社長飛田(内田良平)で、自分のことを言われたと思ったのか「バカヤローとは何だ!」と怒鳴り返す。

社長室にやって来た飛田は難波田に、客の財布を空にするんだ。フランス料理屋は手始めで、やがてここに洋品店、バー、キャバレー等どんどん作り、銀座を支配するんだ。俺は世界の金づるを握っているんだと発破をかける。

一方、次郎は、「松の湯」の番台に座っていた秀子の所に岡持を持って来ると、カレーを味見してくれといきなり言い出す。

こんな所で食べられないわよと秀子が驚くと、今度、フランス料理屋を辞めて、カレーの店を始めたいので、今すぐ返事を聞きたいのだと次郎はせかす。

バー「アルマン」で、東南アジアのアラフラ国の首相だったチャンドラが暗殺されたという記事の載った新聞を読んでいたバンコ(井上昭文)と言う外国人は、店に次郎と秀子が持って来たカレーに興味を示し、自分が試食してみると言い出す。

自分は色々なカレーを食べて来たと言うバンコは、次郎のカレーを一口食べると、旨いと褒める。

その後、大磯の一本槍の自宅まで孔雀印ヂャーを持ち込んで来た次郎と秀子は、たった今昼飯でカレーを食べたと言う一本槍に、どうしても食べて欲しいと自分のカレーを勧める。

事情を知った一本槍は、決死的な覚悟でカレーを食べると、こりゃ、旨い!断然旨い!と絶賛すると、お手伝いさんに、すぐにカレー好きだと言う総理大臣に電話をかけさせる。

一本槍家を辞し、大磯の海岸を帰っていた次郎は、今度のことは尻尾を巻いたと思ってくれるなよ。高級フランス料理なんか食べるのは、銀座でも一握りの客だけだ。それよりも庶民向けのカレーを1杯100円で売ろうと思うと秀子に決意を伝えると、腹が減ったなと言い、浜辺に腰掛け、2人で持って来たカレーを食べ始める。

その頃、一本槍は、食い過ぎで腹痛を起こし、自宅に往診に来た医者から、もうお年なのですから無茶をしてはいけませんと注意を受けていた。

高級フランス料理店「銀座貴族」の開店の日、迎えの次郎の店は、「ヱスビーカレーショップ ジロー」としてリニューアルオープンする。

秀子や鉄夫も開店の手伝いに来ている中、100円圴一カレーショップ「ジロー」は大繁盛、一方、「銀座貴族」の方には、試食をしに来たバンコ以外には誰も客の姿はなかった。

バンコは挨拶に来た飛田社長に、自分がこの店に投資している財産は大丈夫ですか?と聞いていた。

彼こそが、「銀座貴族」の影のスポンサーだったのだ。

バンコは、君を信用するしかないが、まだ食い足りないので、向かいの店のカレーを出前しなさいと命じる。

ある雨の日、「ジロー」の前で雨に濡れていた通行人に、次々と「ジロー」の名前が書かれた和傘をプレゼントする秀子と鉄夫。

その様子を「銀座貴族」の社長室から見下ろしていた飛田社長は、側にいた難波田に、あれを見た前、オープン戦は完全に負けだと呟く。

そこに、「突風クラブ」の会長江戸川万造と助川らがやって来る。

戦時中、南方の捕虜収容所で万造と顔なじみだった難波田が呼び寄せたのだった。

飛田社長は万造に、実業界に乗り出したいようだが、我が社でも近々、役員会で重役を増やそうと思っているのだ。君なんか一枚加えたい人物だね等と言い、万造の心をつかもうとする。

難波田は、窓から下に見える秀子、鉄夫、次郎たちを万造に確認させると、あいつらの店を叩き潰してくれと依頼する。

事務所に戻って来た万造に助川は、いよいよ実力の見せ所でしょう。このチャンスを私に任せて欲しいと願い出るが、万造は、飛田さんが求めているのは暴力だ…と呟いて考え込む。

それを聞いた助川は、これからは頭ですよ。女を使うんです。ちゃんといるじゃありませんかと奥の方に目をやって助言する。

奥の部屋では、春子と静江が事務の仕事をしていたが、組員たちが絶えず悪戯しかけて来るので全く仕事にならないでいた。

春子と静江は、ここの若旦那は良い人なんだけどねと相談し合っていた。

その頃、その若旦那こと江戸川忠次は、次郎の店に来て、女の子を2人、ここで使ってくれないか保証人は俺じゃダメか?と、次郎に頼んでいた。

一方、父親の江戸川万造の方は、春子と静江を会長室に呼ぶと、最後の仕事を聞いてくれたら、お汁粉屋を開く資金として100万くらいは出してやっても良い。君等の貞操は必ず守る。これを機会に更生してもらいたいと相談していた。

話を聞いた静江は、やる気になったら朝飯前やけど…と春子と顔を見合わせる。

江戸川万造は男だ!信用してくれ!と言うので、渋々承知することに気持ちが傾いた2人を、打ち合わせと称し、助川と銭村が別室に連れて行く。

その途端、それまで胸を張って威厳を保っていた万造は、力尽きたように椅子に腰を落とす。

そこにやって来た忠次が、春子と静江の姿が見えないようですけど?と聞くと、万造は逃げやがったと噓を付く。

それを真に受けた忠次は、せっかく堅気の仕事を見つけて来てやったのに…と落胆し、その場から次郎に電話をかけ、先ほどの話はなかったことにしてくれと詫びる。

しかし、次郎が、やはりヤクザの言葉を信用しちゃいけないと言うことだなと嫌味を言ったので、忠次は頭に来る。

100円カレーショップ「ジロー」は連日の盛況で、皿運び等を手伝っていた長五郎だったが、やはり年なのか、皿を落として割ったりミス続きで、かえって仕事を足を引っ張っていた。

見かねた次郎は、仕事は俺たちに任せて、母さんと2人で温泉にでも行って骨休めをしてくれと長五郎に勧める。

長五郎は「寿司銀」に来ると、寿司を握っていた金作に、次郎の親孝行を自慢げに語って聞かせる。

すると金作も負けん気を起こしたのか、うちの鉄夫も数ヶ月前から同じ事を言ってくれていたんだ。ちょうど良い機会だから、俺も一緒に行くよと言い出したので、横で聞いていた鉄夫は呆れた顔になる。

さらに、女房までもが金作を奥の部屋に呼び寄せると、私も付いて行く。もう5年近くも温泉に行ってない。ケネディだって奥さん連れて来たんだろう?などと言い出したので、金作は必死になだめる。

その頃、「銀座貴族」の社長室の飛田社長を訪ねてやって来た銭村は、会長の焼きの廻り方はただ事じゃない。もう家の会長は当てにならないなどと吹き込んでいたが、そこに小島がやって来て、次郎の親父と寿司銀の親父が、3時の汽車で熱海の玉の湯ホテルに向かったと銭村に報告する。

あの2軒は社長さんのものになりますよと銭村から聞かされた飛田は、君は独立する気はないかね?私がスポンサーになってやってやろうか?と話かけて来る。

玉の湯ホテルに到着し、近くを散策していた長五郎と金作は、自殺の名所らしき崖の上に立っていた春子と静江を目にする。

春子たちの方も、長五郎たちに気づいたのか、媚を売るような流し目を見せると、その場でヒールを脱ぎ出す。

2人の娘が自殺すると勘違いした長五郎と金作は、驚いて2人を止めようとするが、バランスを崩して、危うく自分たちの方が落ちかけてしまう。

取りあえず、ホテルの自分たちの部屋に連れて来た近作と長五郎は、春子と静江が事情をなかなか話しだそうとしないので、もう1つ部屋を取って1対1になった方が話し易いかもしれないな等と下心丸出しなことを言い出し、部屋の隅でこっそりジャンケンをして、どちらの娘を取るかを決め始める。

かくして、長五郎は春子と同室になり、金作の方は静江と同じ部屋になる。

静江が内風呂に入っている間、金作は、アンプルと錠剤の精力剤を飲んで、腕立て伏せをしたりしてウォーミングアップをしていた。

一方、長五郎の方も、先に蒲団に入った春子に迫ろうとしながらも、母ちゃん、怒るだろうな…、倅が知ったら、どう思うだろう?などと態度を決めかねていた。

そんな長五郎の迷いに気づいた春子がわざとらしく誘うと、心の中で激しく戦っているんだと言い訳していた長五郎もようやく意を決して、蒲団に入ろうとする。

その時突然、部屋の灯りが点いたので長五郎は驚いて見上げると、部屋の中にいつの間に入り込んだのか、助川が立っており、俺の女房に何をしてるんだ!と威嚇される。

金作の方も、同じように、部屋の中に入ってきた小島から脅されていた。

金作と長五郎は、美人局に引っかかったとも気づかないで、何とか金を払って見逃してもらおうとするが、慌てて荷物をひっくり返しても財布は見当たらなかった。

助川は、あんたの商売はとっくに調べは付いているんだ。カレー屋をやってるんだろう?500万以下では収まらない。24時間以内だぞと脅し、固い約束の証拠として、土地家屋一切店の権利を預からせてもらう。明日、調印式をやろう。場所は「銀座貴族」だと、拳銃をちらつかせながら一方的に告げ、春子を連れて帰る。

助川、春子、小島、静江たちがホテルから出て行くのとすれ違いに、ホテルにやって来たのは次郎と鉄夫だった。

親父たちが慌てて忘れて行った財布を持って来てやったのだが、次郎たちの姿を見た長五郎は、その足にすがりつき、何故もっと早く来てくれなかったんだ!と訴える。

事情を知らない次郎はあっけにとられ、どうせ金があるんだから、今晩は大いに楽しもうぜと言い出し、芸者を大勢呼ぶと歌を歌いながらドンチャン騒ぎを始めるが、訳を打ち明けられない長五郎と金作は、暗い顔のまま無理矢理踊りに付き合わされるはめになる。

後日、銀座の町並みを、春子と静江が突風クラブの追手から逃げていた。

路地に逃げ込んだ彼女等は、ちょうど出前に出ていた次郎とぶつかる。

互いに大磯の海岸で出会ったことを思い出し、次郎は、追って来た3人のチンピラをあっさり殴り飛ばすと、取りあえず彼女等2人を「ジロー」に連れて来る。

春子たちは、堅気になれると思って、会長の言いなりに最後の仕事をやったが、結局、突風クラブは金もくれなかったと言うので、あの時、俺の店に来てくれたらこんなことにならなかったんだ。とにかく銀座から突風クラブを叩き出さなけりゃいけないと次郎は決意する。

店には、秀子も、今そこでヤクザが3人もノックアウトされたんだってと言いながらやって来るが、そこに春子と静江がいるので驚く。

鉄夫もやって来たので、次郎は、うちでこの人たちを1人雇うから、お前の所でも1人預かってくれないかと頼む。

しかし、相談すべき、長五郎と金作がいないので鉄夫等は困惑する。

その頃、長五郎と金作は、突風クラブに店の権利書を渡して来た所で、何とか、鐘をひねり出さないと行けないと悩みながら「ジロー」に戻って来る。

そこに、あの春子と静江がいたので、その顔を見た長五郎と金作は、仰天して逃げ出す。

春子は、自分たちが悪さをしたおじさんと言うのは今の人たちですと打ち明けたので、驚いた次郎と鉄夫は、父親たちの後を追いかける。

何とか途中で追いつき、とにかく父親2人を落ち着かせて、一体、落としまえをいくら取られたんだ?と次郎と鉄夫は聞くことする。

同じ頃、「ジロー」にやって来たのは江戸川忠次で、それに気づいた春子と静江は、若旦那!と喜ぶと、偉いことをやってしまったんですよと、これまでのいきさつを説明し出す。

長五郎はすっかり気落ちしたものの、店の権利書を預けただけだと打ち明ける。

それを聞いた次郎は、これだから明治の人は困るんだ。ヤクザが預かったものをあっさり返す訳ないじゃないか、突風クラブの連中は、俺の店と寿司銀の店を取るつもりなんだと呆れ、これ以上、父さんたちは何もしないでくれた方がありがたいと言い聞かす。

その後、次郎と鉄夫は突風クラブの事務所に乗り込むが、室内ががらんとしており様子がおかしい。

会長室に入ると、万造が1人座っていたので訳を聞くと、突風クラブがなくなっちまったんだ。クーデターが起きたんだ、子分たちがみんな俺を裏切って出て行ったんだと言うではないか。

権利書は返してもらおうと次郎が迫ると、家捜しでも何でもしてくれと米造は開き直る。

その時、待ってくれ!と言って入って来たのは忠次だった。

話はみんな聞いた。今度のことばかりは一言もねえと詫び、次郎もあっさりそれを許してくれたので、やっぱりお前は良い奴だと忠次は礼を言う。

しかし、次郎は、それでもヤクザがはびこっているのは許せないと言うので、忠次も、こちらにもヤクザの意地があると突っ張ったので、2人はにらみ合う。

部屋のゴミ箱には、「あなたは実業家になれるか」と言う本が捨てられていた。

それに目を落とした忠次は、父さん、これでさっぱりしましたねと語りかけると、俺は一生で何を残したかと言われたら、お前だけだったかもしれないな…と万造は力なく笑う。

そんな気落ちした父親に、忠次は、権利書はどこにあるんです?と尋ねる。

次郎は、背後にどでけえ所がいるようだなと呟く。

「銀座貴族」で飛田社長にあっていたバンコは、自分は「銀座貴族」のたった1人の出資者であり、自分は祖国を再建しなければ行けないので、あなたの経営ではおぼつかないと文句を言っていた。

しかし、飛田は、後5000万ほど出してくれませんかと図々しく頼んで来たので、あなたは経営学の落第生です。君は退陣しなさい!それが損害を食い止める最前の道ですとバンコは迫る。

外では、「銀座貴族」に談笑しながら入って行く、難波田と銭村の姿を次郎が監視していた。

飛田社長はバンコに向かい、あなたは、元アラフラ国の総理大臣で亡命者のミスター・チャンドラですね。私が警察に密告すれば、あなたは祖国に送還され、どうなるか分かっているでしょう。本国から追手が来ても私の元にいる限り安心ですと逆に脅して来たので、バンコは呆れ、日本人の心は腐っていると失望する。

しかし飛田社長は、戦争に負けて日本人も賢くなったんですと苦笑する。

そんな「銀座貴族」に岡持を持って入って来た次郎は、社長からの注文なんですと言いながら、止めようとした店員を振り切ると、勝手に2階の社長室に入って行く。

社長室では、飛田社長が、開店1ヶ月でノイローゼになられても困ると言いながら、金庫から「ジロー」と「寿司銀」の権利書を出してバンコに披露していたが、そこに入って来た次郎は、その権利書を確認すると、返してくれと迫る。

しかし、飛田は拳銃を取り出し、いつの間にか、次郎の背後には、突風クラブの面々も銃を構えて次郎を狙っていた。

いずれゆっくり頂きに来ますよ。これはサービスで、お代はいらないですと次郎は言い、持って来たカレーをその場に置いて部屋を出ると、ばたばたするなよ。俺は今機嫌が悪いんだろ突風クラブの連中を牽制しながら店を後にする。

飛田社長はバンコに、今度、うちでツイスト大会やろうと思っているんですが、小切手切って行ってくれませんか?最初安くして客を入れさえすれば、後は徐々に値段を上げても客はついてきますよと慇懃無礼な態度で迫る。

バンコは渋々承知し、カレーを食べて帰る。

次郎はその後、むしゃくしゃして、バーで飲んでいた。

ママは、そんな次郎に、早く結婚してくださいなと笑って勧めていたが、そんなママに、この店で女の子2人雇ってくれないか?住み込みの方が良いなと次郎は頼む。

そこにやって来たのがバンコだった。

バンコは次郎に、あなたを男と見込んで頼みがあると話しかけて来る。

その頃、飛田社長の元にやって来たのは、アラフラ国からバンコ暗殺のためやって来た殺し屋のアリ(エディ・住吉)とゼガ(矢頭健男)だった。

2人からバンコの居場所を聞かれた飛田は、いくら出す?と金を要求する。

50万ドルと言うので、1億8000万円か…、後10万ドル出してもらいましょう。その辺が手の打ち所でしょうと飛田はうそぶく。

飛田から居場所を聞いた2人の殺し屋は、バーのママに閉店後無理矢理ドアを開けさせ、強引に店内に侵入すると奥の寝室に侵入するが、布団をめくってみると、そこで寝ていたのは春子と静江だった。

バンコは、次郎の部屋に泊めてもらっていたのだが、警察に行った方が良いんじゃないですか?と言う次郎に、警察は勘弁してください。私、密入国者ですと事情を話す。

次郎はそんなバンコから、近々「銀座貴族」でツイスト大会をやると言う話を聞いていた。

そこに「アルマン」のママがやって来て、今変な男が店に来たのよと報告したので、次郎はバンコには当分この部屋から出ないことと、ツイスト大会には出てくれるよう頼む。

その後、次郎は秀子と連れ立って、又、大磯の一本槍を訪ねるが、海岸でいつものように槍を振るっていた一本槍はいきなり海の中に突進すると、フグを槍に突き刺して、意気揚々と戻って来るではないか。

そんな一本槍の前に、持って来たポータブル蓄音機を置いた次郎は、ツイストのメロディーを流し、大事件がおきそうなんです。その前に覚えてもらいたいんですと頼み込む。

銀座に「踊ろうツイスト 銀座貴族」と書かれたアドバルーンがあがり、ツイスト大会の当日がやって来る。

演奏が始まり、ゲスト歌手(牧村旬子)が歌い始めると、大きな会場一杯に入った客たちが一斉にツイストを踊り出す。

会場には、次郎、秀子、鉄夫以下、銀座若旦那会のメンバーも全員出場しており、江戸川万造、忠次親子も、客として参加していた。

社長室では、殺し屋2人が、肝心のバンコを見失っては…と悔しがっていたが、その時、飛田社長にバンコから電話が入り、今からここへ様子を見に来るそうだと殺し屋に教える。

しかし、こんなに人がいたんでは手が出せないと殺し屋たちは戸惑うが、帰って人がいる方が、どさくさに紛れて何でも出来ますよと飛田は苦笑する。

そこに、当のバンコが会場に姿を現す。

殺し屋2人は、何とかバンコに接近しようとするが、会場を埋め尽くした人ごみで、容易に近づけない。

その隙を狙い、二階の社長室に忍び込んだ江戸川親子は、金庫をこじ開け、中に入っていた権利書を取り出すが、飛田と難波田が銃を持って入って来ると、ヤクザを辞めて泥棒になったのか?と皮肉る。

そこに駆けつけ、2人の銃を蹴落としたのが次郎だった。

忠次も喧嘩に加わり、無事権利書を次郎に返すと、これで五分と五分だ。俺はヤクザを廃業したんだから、堅気の若旦那として互角のはずだと伝える。

その時、ツイスト大会をやっている下から騒ぎが聞こえて来る。

若旦那会と殺し屋、突風クラブの面々が喧嘩を始めたのだった。

そこに、警官隊が突入して来て、突風クラブの面々だけではなく、一緒に戦っていた次郎や鉄夫、忠次まで捕まってしまう。

そこに入って来たのが一本槍鬼左衛門で、次郎と鉄夫が捕まっているのを観ると、バカ門!と警官隊を一喝し、2人の手錠を外させるが、次郎はこいつのもと忠次の手錠も外してもらう。

一本槍の姿を見たバンコは、ミスター一本槍!と驚いたように声をかけて来る。

一本槍の方も、ミスター・バンコ!と驚く。

2人はロンドンの大学以来、何年振りかの再会だった。

一本槍は、君のみの安全は保証してやろうと約束したので、バンコは感激し、日本人の心は腐ってなかった。これで、日本人と友達になりましたと喜ぶ。

一本槍は次郎を見つけると、せっかくツイストを練習して来たのに、もう終わりか?と不満を述べたので、これからが本物ですよ!と言いながら、上着を脱ぎ捨てた次郎は、バンドの前に躍り出ると、「アキラでツイスト」を甲高い声で唄い始めるのだった。

銀座の町並みを背景に「終」の文字