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海っ子山っ子

NHK連続放送劇「でんでん虫の歌」の映画化。

原作のドラマに記憶はないが、話自体は、昔良くあったタイプの児童映画と言った感じである。

新任の男性教師が冒頭から出て来るので、彼が主役の教育物か?とも見えるが、徐々に、海っ子のゴリラ君と山っ子の京助の友情冒険物語に変化して行く。

後半になると、早見先生の影が急に薄くなるのだ。

後半になって始めて登場する青葉丸の女房と言うのも不思議で、ゴリラ君の母親のはずだから、もっと前半から登場していないとおかしいのだが、何故か前半は、祖母のりきだけしか登場していない。

りきを演じているのは飯田蝶子だが、「若大将シリーズ」でのおばあちゃん役の名もりきなのは偶然なのだろうか?

キャストロールの後半の方に「梅津栄」の名を見つけたが、どこに出ているのか見つける事は出来なかった。

あまりに若過ぎて、顔が判別できなかった可能性もある。

1本の映画として観ると、話の前半と後半で主役が代わってしまっている印象はあるものの、子供映画としてはまずまずの出来ではないかと思う。

テツが繋がれた綱をタイミング良く振りちぎったり、島に流れ着いた子供たちが、救命用の手紙を書く為の筆記道具だけではなく、海に濡れない為のプラスティックカプセルまで持っているとはどうしても思えないのだが、その辺のご都合主義は、あくまでも子供向けだから…と言うことなのだろう。

飯田蝶子の他にも、原泉とか、昔、良く見かけた記憶がある脇役の人も数名出ているのだが、大半は見覚えのない俳優さんばかり。

それでも、シンプルなお話なので、今観てもそれなりに楽しめる作品ではある。

NHK連続放送劇とこうした地方色と言うのは、昔から切っても切れない要素だったのかもしれない。


▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1959年、桜映画社、筒井敬介NHK「でんでん虫の歌」原作+脚色、木村荘十二監督作品。

ヴェニス国際映画祭 サンジェルス賞受賞作品のテロップ

タイトル

とある港町にやって来たバスの中、1人の青年が退屈そうにあくびをし、うとうととし始める。

それを振り向いて見ていた車掌の小熊なみ子(有田紀子)は微笑む。

やがて、「沖の浦町~」と車掌は声を挙げるが、降りると言うものはいない。

その時、居眠りから目覚めた青年が、沖浦町の学校はどこで降りればいいんですか?と聞いて来たので、なみ子は微笑みながら、新任の先生でしょう?次で降りて下さいと押しえる。

バス停でバスの到着を待ちわびていた神主の柏木(小笠原章二郎)は、バスが見えて来ると、すぐに停留所脇の「旅館 竜宮館」に駆け込み、縁側にいた小学校時代からの旧友で、今は旅館の主人である青葉丸(松本克平)とその母りき(飯田蝶子)に、バスが来た!と報告するが、りきが、そんな神主をねぎらおうと、茶を振る舞おうとすると、余計なことはせんで良い!今日は祝詞料をたっぷりはずむんだから…とりきを叱りつけ、バスが来るのは時刻表で分かっとる!問題は先生が乗っているかどうかだ!ちゃんと見張ってろ!と神主に命じる。

その時、おばあちゃ~ん!来られたわよ~と停留所に到着したバスからなみ子が呼びかけて来たので、そら来た!と青葉丸とりきは、停留所に向かい、ここは小学校の前ですか?と戸惑いながら降りて来た新任教師早見先生(吉沢久嘉)の荷物を勝手に受け取ると、そのまま「竜宮館」に連れて行く。

座敷では、柏木神主が、座布団や脇息を用意して待ち受けていた。

改めて、早水先生の前に正座した青葉丸は、磯場の青葉丸と名乗り、祖母もりきと名乗り、昔は竜宮城の乙姫と言われたこともあるなどと愉快そうに笑う。

早水先生は戸惑い、僕は早く小学校に行きたいんですが…と言うと、校長は伊東に言っていてる須田と青葉丸が教える。

ここが、僕が下宿する所なんですか?と早見は言い、狐につままれたような顔になる。

その頃、次の「大畑停留所」で新任教師を待ち受けていた2人の男は、到着したバスにそれらしき人物が乗っていないので、磯野で降りなさったか?磯っ子の回し者になって、先生を引きづり降ろしたんだろう!と車掌のなみ子に食って掛かる。

そんな…と、なみ子は当惑しながらも、そのままバスを出発させる。

今度こそ、先生を山っ子にしてやろうと思っとったのに…、磯っ子たちもこんな強引な事をやるとは…とぼやきながら、2人の男は帰って行く。

その頃「竜宮館」では、早水先生に、青葉丸の旧友柏木神主の紹介をしている所だった。

戦後は神主だけでは食って行けないのでパチンコ屋を始めたが、これが一向に出ないパチンコで…とりきがからかう。

ゼンちゃん、あっちの用意はできたか?と青葉丸が神主に聞き、この青葉丸の顔を立てて下さいと早見に言うと、どこかに出かけようとする。

神主は慌てて袴をはいて合流すると、これから「乙姫神社」でおはらいを受けていただきますなどと言い出す。

あっけにとられながらも、青葉丸と神主とに付いて「竜宮館」を出た早見だったが、そんな青葉丸の前にやって来た犬が吼えると、青葉丸は怯える。

神主が言うには、青葉丸の息子が飼っている犬なのだが、なぜかこの父親の方は嫌っているらしい。

3人はそのまま、岬の先にある乙姫神社に向かう。

そんな中、その乙姫神社の狛犬の頭に止まった鳩を捕まえようと、じわじわと近づいていたのは、山っ子の小学生、京助(高田恭朗)だった。

京助は、鳩を無事捕まえると、持参の駕篭に入れ、青葉丸たちが近づいて来た事に気づくと、慌てて社に逃げ込み、戸を閉めてしまう。

そして、戸の隙間からやって来る大人3人の様子をうかがっていたが、社に入って来る!と直感した京助は、慌てて、大きな飾り物の後ろに隠れる。

やがて、神主、青葉丸、早水先生の3人が入って来て、この神社は、大漁の時はこの下の海を舟が三回廻ってお礼をする習わしがありますなどと説明した神主が、おもむろに早見とドンちゃん(青葉丸)を前に祝詞を読み始めるが、その間、隠れていた京助が持っていた駕篭の中の鳩が鳴き始める。

祝詞の途中で、それに気づいた神主は首を傾げるが、続けているうちに、京助が転んで物音を立ててしまい、大人たちは京助に気づく。

京助は逃げ出そうとするが、あっさり捕まってまい、捕まえた青葉丸は、こいつ山っ子だな!この神社を荒すとは…!と睨みつける。

気がつくと、驚いて転んだ神主は、大太鼓に後頭部をぶつけ、床に座り込んでいた。

続けてくれと青葉丸から言われた神主だったが、さすがに興ざめしたのか、さっきので終わった事にしてくれ。新任の先生相手に一方的に出来まいなどと言ってごまかす。

青葉丸から京助を受け取った早水先生は、家まで送り届けてやる事にする。

これは伝書鳩だな?この辺の子はみんな飼っているのかい?と聞くと、京助は、俺だけだと自慢げに答え、この鳩、話すたびにこの神社の松に止まるんじゃと嘆く。

その頃、浜でたむろしていたのは、磯っ子と呼ばれる海辺の子供たちだった。

犬のテツ号(紀州犬 牙男爵)を連れているのが、青葉丸の息子のゴリラ(吉田春夫)で、山っ子に俺たちバカにされた。すみ子のへそがちょっと出っ張っていると言い振らしやがったと仲間たちに告げると、本当にすみ子のへそが出っ張ってるの?と聞く子がおり、それを聞いたすみ子は羞恥心から泣き出してしまう。

こんな所で遊んでいるんじゃない!と青葉丸が文句を言いに来るが、テツが吼え付いたので、怯えて帰ってしまう。

その時、ゴリラたちは、山っ子の京助と仲良く話しながらそんな海岸沿いの道を歩く早見を見かけるが、誰もその大人の事を知らない。

誰だろう?あの人…と言いながらも、京助が家に帰る所だと気づいたゴリラたちは、テツを引いて後を追い始める。

京助の家の庭先に作られた鳩小屋を観た早水先生は感心し、これも気味の小遣いで作ったのかい?と聞くと、磯っ子と違って何でも自分でやるんだ!と京助は自慢する。

その時、道の下にいるテツに気づいた京助は、ゴリラの犬だよ。6年生なんだと京助は早水先生に教え、磯っ子ども、隠れているなら出て来い!と声を挙げる。

ミカンの木陰に隠れていたゴリラたちが姿を現し、こっちへ来い!話があると京助を呼び寄せると、お前、すみ子のおへそが出っ張ってるって言いふらしただろうと詰問する。

出っ張ってるから出っ張ってるって言っただけだ!と京助はひるまなかったが、すぐさま乱闘になる。

見かねた早水先生が、止めろ!と声をかけながら仲裁に来たので、おじさんは磯っ子の味方?山っ子の味方か?とゴリラが聞くと、どちらの味方でもない!と早見は答える。

すると、嘘つき!さっき、京助と話してたじゃないか!とゴリラは責め、そのまま早水先生と取っ組み合ったまま、山の斜面を転がって行く。

僕は先生だ!と早見はゴリラを止めようとするが、噓だ!先生が山っ子の味方をするもんか!とゴリラは聞かない。

その時、ミカンの収穫をしていた京助の父田川(笹川恵三)が、こら〜!と怒鳴ったので、磯っ子どもは雲の子を散らすように逃げ帰る。

翌朝、沖浦町小学校の校庭に並んだ生徒たちは、校長先生(御橋公)から新任の先生の紹介をされる。

家庭の事情で静岡にお行きになった長谷川先生に代わり、今日から5年3組を担当していただく早見孝太郎先生です!と紹介され、壇上に上がった早見の頬には絆創膏が貼られていたので、ゴリラや京助は気まずそうな顔になる。

やっぱり本当の先生だと分かったからだ。

その後、職員室の窓から、校庭で遊ぶ生徒たちを眺めていた早見に、同僚教師が、観てごらんなさい。何となく、山と海とに分かれてしまうんですよ。

磯っ子は活動的だけど飽きっぽいと男先生が言うと、それにしても、「竜宮館」のおばあちゃんにしてやられるとは…、仕方ないですね、サバっ子先生としては…と女先生はからかう。

サバっ子先生と言うのは、早速早見につけられたあだ名らしい。

えこひいきはせんと分からせると良いんですがねと早見が言うと、それも気骨が折れますねと女先生は同情する。

校庭でゴリラたちは、新しい先生にあんまり油断するなと噂しあっていたが、そこに、京助の父田川がやって来て学校に入って行ったので、昨日の事を告げ口に来たんじゃないだろうかと心配する。

その夜、「竜宮館」では、校長以下、早見先生の歓迎会で盛り上がっていた。

なかなか行けそうですな?等と酒を勧めて来た教師は、早見の顔の絆創膏を指し、それ、送別会の名残でしょう?などと勘違いする。

校長は、ちょうどこの機会に話そうと思うが、ミカン山の田川さんから、ミカンを磯の子にも摘果やらせたいと申し出があったと報告する。

アルバイトにもなるし、良いですなと先生たちは乗り気になるが、よそ者の早川は「摘果」って何ですか?と聞く。

「摘果」の「摘」は「つまむこと」、「果」は「果物」の事で、青い芽のうちに間引きすることで、より良いミカンを作る事ですと校長が解説する。

話が一段落すると、酌をしていたりきが、大島御神火育ち~♪と、景気よく歌い出す。

しかし、その話を父親から聞いた京助は、俺、磯っ子なんかに「摘果」やらせないぞ!と言い出していた。

母親(桜井良子)が、自分がもらえるアルバイト料が減るからですよと笑いながら言うと、大勢で「摘果」やった方が能率も上がるし、それだけ良いミカンが出来ると田川は言い聞かせ、母親は、この子は鳩を増やしたい一心なんだよと亭主に教える。

校長先生と約束したんだから止められんと田川は言うが、俺が反対してるのは、アルバイト料の事だけじゃない!と京助も頑固に反論する。

翌日、小学校では、「摘果」をやる者は集合しなさいと呼びかけられる。

参加する事にしたゴリラたちは、もし、山っ子が俺たちにかかって来たらどうする?と聞いて来たので、先生たちは、そんな事はないと思うが、仮にそうなったとしても、手を出しちゃ行かんぞと注意する。

ゴリラたち磯っ子がミカン山に近づくと、先に「摘果」作業を手伝っていた山っ子どもが一斉にミカンを投げつけて来る。

最初は、先生に言われた通り我慢していたゴリラたちだったが、あまりにもしつこく投げて来て、その一個が頭に当たったので、怒ったゴリラは、自分たちも道の石を拾い上げ投げ始める。

降りて来い!正々堂々と戦え!と声を上げたゴリラだったが、駆けつけた田川が、お前が大将だな!帰ってもらおう。他の子が困るとゴリラに命じる。

その夜、下宿していた「竜宮館」の自室にいた早見は、ゴリラが泣き叫んでいる声を聞き驚く。

どうやら、父親の青葉丸から叱られたらしく、りきも、今日から甘やかさんぞ!と厳しい態度で言い聞かせていたので、ゴリラとしては誰も味方してくれる人がおらず、心細さもあって泣いているようだった。

ゴリラの側に来た早見は、気味は僕を殴ったガキ大将だな?と気づくと、ゴリラは、すみません〜と泣きながら謝る。

青葉丸さんの息子さんでしたか…、それにしては弱いな〜と早見は呆れる。

今、お茶を入れてきますと良い、りきが下がったので、泣いている訳を問いただすと、網元の子供がミカン山に言って働くとは何事か!と叱られたのだと言う。

でも、漁があった時にか小遣いもらえないし、父ちゃんは自分でぱっぱと使ってしまう。少しは自分の金を貯めたいんだよとゴリラは説明する。

その時、私服姿の娘が挨拶に来たので、誰かと早見が戸惑っていると、バスの車掌のなみ子だと気づく。

彼女もここの親戚なので、ここで下宿しているのだと言い、私、磯っ子でも、山っ子でもないんです。この前はおばあちゃんに頼まれただけだったのと詫びる。

でも、大畑の停留所で怒られたわ。ここでは中立は難しいのと言いながら、なみ子は階段の下を気にするので、誰か来ているんですか?と早見が聞くと、私のボーイフレンドよと肩をすくめたなみ子が、上がってらっしゃいよと声をかけると、階段を上がって来たのは京助だった。

何だ君か!と早見先生は笑い出すが、田川君が申し入れたいことがあるそうなんですけど、それが教育的に正しいかどうか判断をしていただきたいんですとなみ子は説明する。

そんな中、京助の姿に気づいたゴリラがそっぽを向いてしまったので、どうしてここの人間は、犬と猿みたいにいきり立っているんだ?と早見先生は呆れる。

京助の申し入れとは、鳩を買う金を貸してくれないかって言うんですとなみ子が言うと、確実に返せるプランがあるかどうかだろうねと早見は意見を言う。

その後、ゴリラは京助と一緒に外に出る。

どうしてそんなに鳩が好きなんだ?とゴリラが聞くと、ゴリラ君が犬を好きなのと同じさと京助は答える。

ミカンは良いよな。収入が安定しているから、月給取りのようなものだからなとゴリラが羨むと、月給取りだって首になる事もあるし、ミカンだっていつも豊作とは限らないと京助は答え、早見先生が、山の者と海の者が何故仲が悪くなったか考えてみろって言ってたなと言う。

昔からの事だからな…とゴリラも首をひねるが、ゴリラ君、仲良くしようと京助が言い出すと、何の理由で?とゴリラは戸惑う。

互いの親父が分からず屋同士だからさと京助が言うと、そうだな、そんな理由なら仲良く出来るなと互いに握手する。

海辺で女性たちが海藻を干す仕事をしている中、小学生もその仕事を手伝っていた。

早見先生と一緒に参加していた女先生は、このアルバイト料が、学校の顕微鏡や幻灯機を買う足しになっているんですよと教える。

そんな中、青葉丸と神主の柏木が、ゴリラを連れて乙姫神社の方へ向かうのを見つけた京助と早見先生は、何をしに行くんだろうと後をつけてみる事にする。

すると、社に付いた青葉丸が、ゼンちゃん、早くやってくれと神主に頼み、神主は、床に落ちていたとっくりを観て、誰だ!とっくりの底を抜いたのは?と怒る。

ブツブツ言いながらも、ゴリラと青葉丸を座らせた神主は、やおら祝詞を始め、悩める船酔いをことごとく直したまえ!と言うと、大きな玉網をゴリラの頭にかぶせる。

すると、ゴリラは泣き始めたので、後から付けて来て、社の中の様子をうかがっていた早見は驚き、待って下さい、青葉丸さん!と呼び掛けながら社に上がり込んで来る。

すると神主は、舟に酔わないまじないだよと言うので、本当に効くんですか?と早見が聞くと、わしも効かないとは思うのだが、たったの30分も舟に乗っていられないではな…、息子の事が恥みたいなんだよと神主は本音を漏らす。

早見先生はゴリラに、医学的に言うと、酔う、酔わないの7割は気分なんだよと慰め、青葉丸も、さすが先生だと感心するが、そう思うんだけど難しいんだよ…とゴリラは言い訳する。

そうだ、今度の日曜、先生と一緒に乗ろう。僕もボートしか乗った事ないけど、一日中乗っても酔わないぞとゴリラに約束させる。

ところが、次の日曜、青葉丸の舟に神主と一緒に乗り込んだ早見先生は、ゴリラと一緒に舟底に寝そべっていた。

2人ともすぐに酔ってしまったのだ。

これを観た青葉丸は呆れ、船首に立っていたテツの姿を観ながら、まだ犬の方がよっぽど元気だとため息を付き、すぐに港に戻る事にする。

港には京助が待っており、丘に上がってぐったりした早見に駆け寄ると、先生、約束!鳩を買いに行くんだよと言うので、すっかりその約束を忘れていた事に気づいた早見は、今日はちょっと…と断ろうとするが、公約は必ず実行する事!と言われてしまう。

金は出来たのか?と聞くと、60%は出来たと言うので、後の40%は?と聞くと、黙ってしまったので、なみ子さんから借りたんだな?と早見は見抜く。

町の鳥屋に付いて行くと、仙台から帰って来た鳩の孫だと言う鳩がつがいで580円だと言う。

80円足りない!と京助が悔しがるので、帰りのバス賃は先生が出そうと早見が助け舟を出すと、店主も同情して550円で良いよと言ってくれる。

後日、京助の自宅に早見が来ると、京助は、新しい鳩小屋を作っており、俺良い事考えたと言いながら、側の高い木の上から垂れ下がった紐を見せる。

あんな高い所に登ったのかい?と早見が驚くと、俺は山っ子だから、平気だいと自慢した京助は、その紐を引っ張ってみせる。

すると、紐の先に付いた呼子が鳴る仕掛けになっていた。

京助の母親が挨拶して来たので、田川さんは?と聞くと、今、苗木を観に行ってきますと母は答え、自分の子供もそのくらい立派に育てられたら偉いんだけどなと京助は茶化す。

その後も、小学校では、「摘果」に行く子、7時30分集合、5000円くれると黒板に書かれてあった。

ゴリラが「摘果」のつもりで、青いミカンをどんどん捨てていると、山っ子がそれに気づき、取り過ぎだと文句を言う。

ゴリラは、言われた通りにやっているだけだと反論し、またもや、山っ子と磯っ子たちの大乱闘になりかけたので、付き添いの早見たちが慌てて止めに入り、女先生は、田川に聞いてみるとことしようと必死に探しまわる。

田川は、息子京助の作った木の上の呼子を鳴らしてみると、外を飛んでいた鳩が鳥小屋に戻って来たので感心し、小屋の中に残っていた鳩を取り出すと、おめえもやってみろと言いながら解き放つ。

しかし、その鳩はそのまま飛んで行ってしまったので、田川は、やっぱりバカ鳩かな?と苦笑するが、その時、下の方から自分の名を呼ぶ女先生の声に気づく。

水の入ったやかんを持った田川がミカンの木の所に来て、ゴリラが「摘果」した幹を調べた結果、このやり方は満点だ。葉っぱ25枚に1粒の実を残すくらいが良いと太鼓判を押す。

それを聞いた京助とゴリラは、嬉しそうに顔を見合わす。

その後、自宅に帰って来た京助は空を飛んでいる鳩を観て、ダメだな、お父っつあんは…と、誰がやったかすぐに気づき、がっかりしながら鳥箱を覗いてみる。

すると、鳥箱の中の巣には卵があるではないか。

ゴリラがやって来て、どうしたと聞くと、お父っつあんの雄鳩がいないんだ。鳩って言うのは、オスとメスの両方で交代に卵を抱くものなので、雄鳩がいないと卵が孵らないんだと京助は言う。

それ本当か?専門家に聞いた方が良いなと諭す。

それで、鳩を勝った鳥屋の店主に聞きに行った京助だったが、やはり、雄鳩を探し出さん事にはダメだなと言われ、がっかりして帰る。

港では祭りが近づいたので、楽器の演奏の練習を始めていた。

山の奴の鼻を明かするんだ。もっと腹に力を入れて!などと青葉丸や神主は、偉そうに若い衆を叱りつけていたが、又しても、庭からテツが吼えて来たので、青葉丸は黙り込む。

その夜、京助は寝床を置き出すと、蚊帳の外に出て、外の巣箱を覗きに行くが、やはり雄鳩は戻って来ていない。

楽器の練習に付き合っていたゴリラは、急にテツが外に出て行ったので、何事かと自分も付いて行く。

すると、京助が夜中にも関わらず、岬の乙姫神社の方へ行くのを見つけたので、訳を聞くと、逃げた雄鳩は、これまで3回も神社の松にいただ。明日まで待てねえんだと言うので、だったら自分も一緒に行くとゴリラは言い出す。

1人だと怖いけど、2人なら怖くないとゴリラが言うと、京助も安心したようだった。

京助は、玉網を家から取って来ると、テツも連れて、京助と一緒に岬の神社にやって来る。

京助は、テツがうろつくと、鳩が怖がって寄り付かないと言うので、ゴリラはテツの首に綱を付け、近くの松の木に繋いでおく事にする。

京助は、神社の松の木を良く観察し、曲がった松の木の上に留っていた雄鳩を発見する。

すぐにその松の木をよじ上り始めた京助を、下からゴリラが、大丈夫かい?と心配そうに見上げる。

俺は山っ子だぞ。こんな松の木くらい何だ!と強がりを良い、何とか、鳩が留っている枝の所まで来ると、そっと手を伸ばして鳩を捕まえようと、身体を近づける。

何とか、鳩を捕まえたと思った瞬間、京助は枝から滑り落ち、崖下の海に落ちてしまう。

驚いたゴリラは、下の岩場まで降りて探すが、なかなか見つからない。

テツも異変を察知したのか、吼え始めるが、綱が付いているので動けない。

その頃、田川の家では、母親が起き出し、京助がいなくなっていることに気づく。

京助!と呼びながら家の中を探し始めたので、父親の田川も目覚める。

夜の海に流される京助、岩場で京助の名を呼ぶゴリラ。

やがて、小さな岩場にしがみついた京助が、お〜い!ここだ〜!と呼びかけたので、何とか命が無事だった事を知ったゴリラだったが、間もなくそこは潮が満ちて来て沈んでしまうんだよ〜!と呼びかける。

京助は感心な事に、掴んだ鳩はまだ握りしめたままだった。

神社の松に繋がれていたテツはなおも激しく鳴きながら、綱を振りほどこうとしていた。

「竜宮館」を訪ねて来た田川から、京助がいなくなったと聞いたりきは、柏木の神社で、みくじを引いてもらうかなどとのんきな事を言っていた。

あんまり、海っ子と山っ子の仲が悪いから、何かあの悪童どもに…と田川は案ずる。

ゴリラは、近くにあった小舟を見つけて来て、それに乗り込もうとしていたが、その時、テツの綱が切れたので、テツも小舟の所へやって来て一緒に乗り込む。

ゴリラは懸命に櫓を漕ぎ、何とか岩場に近づくと、京助を小舟に乗り移させるが、その時、櫓を流してしまった事に気づく。

風と逆だから、このままでは港に帰れん…。ぼやっとしてたら、沖に流されてしまうぞとゴリラは嘆く。

楽器の練習をしていた風祭は、田川がやって来て事情を話すと、うちの息子が誘ったとでも言うのか?山っ子の事なんか知るもんか!とけんか腰になる。

その場に付いて来たりきとなみ子、青葉丸の女房(原泉)も、お前さん、ぼやぼやせんと!と夫を叱りつける。

その頃、流されていた小舟は小さな小島に漂着し、京太とゴリラは浜に上がると、疲労のあまり、砂浜に倒れ込む。

ゴリラは、寄り添って来たテツに、お前も腹減っただろうな〜といたわってやる。

話を聞いて探していた早見先生も、やっぱり海でしょうね〜と結論づける。

しかし、青葉丸は、うちの息子は船に酔うので、船を漕ぎ出せるはずがないと言う。

りきは、舟の数、数えたら良いじゃないかと言い出し、漁民たちに応援を頼む。

すると田川は、じゃあ、あんたらは、山っ子の京助が船を漕いでるって言うんですか?と聞く。

ゴリラは、京助に、何か書く物を持ってるか?と聞き、京助がメモとペンを取り出すと、それに文を書いて、プラスチックカプセルに入れた物をテツの首に付け、何とか陸の大人に知らせてくれと頼む。

テツはすぐに海に入り港へ向かう。

その頃、青葉丸の女房は、お前さんも舟を出して探したらどうだね?と青葉丸を叱る。

テツの奴、元気良く泳いで行ったなと京助は期待するが、少し遠過ぎるからな…、あいつ…と、ゴリラはテツの事を心配する。

浜では、1人の子供がりきの所へ来て、ばあちゃん、俺ん所の舟が一艘足りないんだと報告したので、こりゃ、大変な事になったかもしれんなと力は焦る。

テツは、途中の小さな岩場に這い上がっていた。

少し休んだ後、又海に入り、泳ぎ始めるテツ。

良いな京助は、鳩が無事で…と、ゴリラはテツの事を心配していた。

ゴリラの気持ちを察した京助は、これを離したら、もう帰って来ない。卵を抱かせなきゃいけないんだと説明する。

もしかしたら、俺のテツは、沖に流されたかもしれないな…とゴリラは嘆く。

青葉丸は、まだ、納得いかねえ。俺の子が舟を出すとは思えんと言っていた。

田川も負けじと、いるとすれば海の者じゃと我を張っていた。

そこへ、青葉丸の女房が、舟の用意ができたぞ!と知らせに来る。

その時、浜にいた早見先生が、近づいて来るテツに気づく。

首に何か付いてるぞ!と誰かが気づき、カプセルの中の手紙を読む早見先生。

島ではゴリラが泣いていた。

見かねた京助は、もしかってこともあるから、この鳩を放すよ。俺は片手が使えねえから、手紙書いてくれよと言い出す。

ゴリラが、新たな手紙を書いていたとき、島に近づいて来た舟に京助が気づく。

すぐに2人は立ち上がって岩場に走ると手を振って知らせる。

舟には、青葉丸と早見先生が乗っていた。

浜では、りくに田川が、わしはこの責任を必ず取るぞ!あんたん所の子は、1つでも年長者だからなと文句を言っていた。

青葉丸の舟に救出された京助は、峰とに戻る舟の中で、ゴリラ君が助けてくれたんだと話したので、それを聞いた青葉丸は、本当か!と喜ぶ。

やがて、京助とゴリラを救出した青葉丸の舟が戻って来る。

磯っ子たちが総出でそれを迎える。

青葉丸の女房とりきも、良かっただと喜ぶ。

テツ良くやったな!浜に降り立ったゴリラは、陸で待ち受けていたテツを抱きしめて褒めてやる。

ミカン山の親父に礼を言うぞ!と、港に着いた青葉丸は言い出す。

あいつの子が海に落ちた為に、うちの子が必死になって船を漕ぎ出し助けたそうだ。

あいつだって、必死になれば何だって出来るんだ!と大満足の様子の青葉丸。

一方、田川に会った京助は、お父っつあん、ダメだよ!こいつはクセが悪いから、勝手に飛ばしちゃあと注意したので、田川は唖然としながらも頷くしかなかった。

やがて、港祭りが始まる。

休憩場にいた青葉丸は、見物していた早見先生に酒を勧める。

神主の柏木もミカン山の田川も来ており、一体いつから、海っ子と山っ子の仲が悪くなったんだろうなどと話していた。

神主は神代からだろうなんて言うが、こいつは孫子の代まで伝えるもんじゃねえなと田川は笑う。

港の大通りには、山っ子の担ぐ子供神輿と、海っ子が担ぐ子供神輿が、互いの元気良さを見せつけるように近づいて来ていた。

そこに、バスが近づいて来たので両者は道を開けるが、通り過ぎるバスの窓からは、車掌のなみ子が嬉しそうに手を振っていた。