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竜巻小僧

「素っ飛び小僧」「疾風小僧」につづく和田浩治主演、小僧シリーズの第三弾らしい。

そもそも和田浩治主演映画自体馴染みがないので、このシリーズも初めて観た。

以前観た「峠を渡る若い風」(1961)同様、不良性をほとんど感じない坊や坊やした印象の和田浩治のキャラを生かした娯楽活劇と言った感じで、あまりクセがない作風は、今観ても、親しみ易い気がする。

劇中に登場する拳銃が、玩具設定だったり本物設定だったり紛らわしいのがご愛嬌で、ちょうど西部劇等のブームだったので、ガンアクションをやりたいが、どう見てもティーンにしか見えない和田浩治が本物の拳銃を常に持ち歩いていると言うのはどう考えても不自然なので、苦肉の策で…と言った所なのだろう。

ストーリー自体は、昔のマンガでも読むような荒唐無稽なものではあるが、アクション映画として観るとちょっとパンチ不足な感じもするので、小林旭の無国籍アクションのようなものを求める客層には物足りなかったのかもしれない。

正直、悪役の安倍徹を除くと、キャスティングも全体的に地味。

実際、和田浩治は、石原裕次郎、小林旭、赤木圭一郎と「ダイヤモンドライン」4人組の1人だったはずだが、印象は一番弱いのも、作品が小粒な印象だったからかも。

逆に、その甘いマスクは若い女性層に受けそうで、内容も地方色を生かした観光映画風の味わいもあるので、独自のファン層はいたのではないかと言う気もする。

この作品では、チェ・ゲバラ風の格好で、革命を目指していると言う変な青年役のジェリー藤尾も愉快だが、ゲスト的に登場している坂本九やクレージーキャッツの姿が観られるのも貴重。

特に、クレージーのコミカル演奏が、かなりしっかり描かれているのが嬉しい。

登場シーンは少ないが、夢路いとし師匠も若々しく、懐かしい。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1960年、日活、松浦健郎原作+脚本、中西隆三脚本、西河克己監督作品。

地方の舗装道路で上着を振り、ヒッチハイクしようとしていた「竜巻小僧のトミイ」(和田浩治)だったが、通り過ぎる車は一台も停まってくれないのでやけになり、道路に寝っころがり、取り出したけん銃を空に向かってぶっ放すと、すぐに停まってくれたジープは警察車両で、降りて来た2人の警官(長弘、紀原耕)にトミイはその場で捕まってしまう。

タイトル

地元の警察署の前で降ろされたトミイは、警官から、いくら玩具でもむやみにぶっ放しちゃいかんよと注意され、その場で追い払われそうになるが、こっちにも用事があるんだ。親父を捜しているんだとトミイは打ち明け、取りあえず、署内に入って事情を話す。

トミイは、13年前にいなくなったと言う父親が写った写真を刑事に見せ、村上と言う船乗りだったと説明するが、聞いた刑事は、確かにこの町にも村上と言うサルベージ船の船長がいたが、2年前に出航したきり戻らず、息子の五郎と言うもの家出をしてしまい、残された妻と娘は実家に帰ってしまったと説明したので、兄弟がいたなら別人かな?と首を傾げながらも、トミイは一応、その母親と娘の実家の場所を聞く。

それは有馬温泉だった。

ちょうど温泉祭りの最中だったが、迷子を預かる警察のテントにやって来て、この町に村上と言う人が引っ越して来たはずなんだがと聞いたのは、あごひげに帽子、迷彩服に機関銃の玩具をぶら下げたゲバラのような若者七条(ジェリー藤尾)だった。

応対した老警官が、村上なら何軒もあるよと答え、そこに迷子として立っていた女の子も、私も村上とし子よ等と言うので、七条は呆れてテントを後にするが、その直後にやって来て、同じように、この町に村上って人が引っ越してきませんでしたか?と聞いたのがトミイだった。

祭りの一環で、「紅白対抗ジャズ合戦」と言う催し物が開かれており、九ちゃん(坂本九)と言う若者が白組代表で「七三野郎」と言う歌を歌っていた。

そこに、トミイもふらりと入って見物し出す。

続いて、紅組から、村上英子(清水まゆみ)と言う娘が登場し、マイクの前に立つが、その時客席から、せっかくこんな別嬪が歌うんだから、そんなバンドじゃダメだ!換えちゃえよと数名の野次が飛ぶ。

司会者の青年(相原巨典)は慌てて、ちょっと待ってくださいと制止し、楽屋裏に行くと、そこには、3人の流し(由利徹、南利明、佐山俊二)が、自分たちに演奏させろと青年団のバンドリーダー(柳瀬志郎)に因縁を付けている所だった。

この催し物は青年団主催なので…とバンドリーダーは何とか断ろうとしていたが、3人の流しはしつこく絡んで来る。

部屋に入ってきた司会者は、いくら払えば良いんですか?と切り出し、金を取り出すが、その時、こんなどさ回りなんかに頼んだら、音楽の神様が泣いちゃうよと声をかけて来たのはトミイだった。

客席の連中とグルなんだろう?とトミイが指摘すると、3人の流しはすごすごと楽屋から客席へ戻ろうとする。

それを待ち構えていた、先ほど野次を飛ばした愚連隊(近江大介、神戸瓢介)が巧く行ったか?と聞くと、最初の2人は巧く行ったとごまかそうとするが、後から出て来た流し(佐山俊二)が、こてんこてんにやられちゃったよ…と情けなさそうな声を出したので、愚連隊は失敗したと知り、自ら楽屋口に向かうが、あっという間に投げ飛ばされて来る。

這々の体で客席から逃げ出そうとした愚連隊に足を引っかけ転ばしたのは、客席で観ていた七条だった。

愚連隊や流しが逃げて行ったので、改めて、司会者が村上英子を紹介する。

曲は「月影のネネコ」

優勝商品をもらった村上英子は、いつしかトミイと連れ立って帰っていた。

トミイが村上と言う父親を捜しており、自分が5つの時に両親が別れ、7つの時に母親も死んだと聞いた英子は、自分の母親がお帳場で働いている旅館「中の坊」にトミイを案内して来る。

そんな2人をこっそりつけていたのは七条だった。

トミイは、取りあえず、その旅館に泊まる事にする。

旅館に入った英子は、出迎えに出て来た母の和枝(高野由美)に、部屋開いてるでしょう?と声をかけ、トミイを部屋に泊めさせる。

和枝は、あの人誰だい?とトミイのことを知りたがる。

部屋に落ち着いたトミイだったが、仲居がお連れ様をご案内しましたと言いに来たので意味が分からず驚くが、入って来たのは見知らぬ七条だった。

君は誰かと聞かれた七条は、刑務所を出たばかりの七条と名乗り、玩具の機関銃をトミイに突きつけると、世の中おかしいと思わないか?海の向うでは月ロケットの競争に明け暮れ、国内ではデモとテロ。あげくの果てに大洋が優勝するし…、こんな世の中には革命あるのみ!お前、2億円のゲンナマを観たことがあるか?と切り出す。

しかし、観たことないよ。お前本当の仕事は何なんだ?と怪しむトミイに、七条は機関銃の弾倉を引っこ抜き、そこに詰められていた紙をテーブルに拡げる。

それは手描きの地図で、瀬戸内海の淡路島近くに無人島があり、その近くに2億円の金塊を積んだ沈没船が沈んでいる。同じ刑務所内で死んだ仲間から聞いた話なのだと言う。

しかし、その辺は密輸船が頻繁に通るルートになっいるため、度胸のある奴を探していた所なのだと七条は仲間になるよう勧めるが、トミイは、密輸の金なんかに興味がないとあっさり断り、こっちにも大事な用があるんだと言い、廊下に出てみる。

そこから向かいの部屋で話し合っていた英子と母親の和枝(高野由美)の姿が見えた。

英子もトミイに気づいたらしく、部屋に招くと、さっき話、一緒に聞いてと母親に会わせる。

父親が写った写真を母親に見せたトミイだったが、和枝は、残念ですが、英子の父とは別人ですと言う。

英子の父は、第二潮風丸と言うサルベージ船に乗っていたが、2年前出航したきり戻らず、沈没したらしいと海難審判でも決まった。その後、英子の兄はぐれて家出してしまったと和枝は教える。

部屋を出たトミイは、どうやら人違いだったらしいな…と落胆するが、一緒に付いて来た英子は、1人ぽっちになっちゃうわねと同情する。

そんな中、部屋に残り、まだ写真を観ていた和枝は、あなた!と小さく呟いていた。

その後、風呂に入っていたトミイは、いきなり潜水服を着た七条が入って来たので驚く。

何でも、古着屋で買ったので、穴が開いてないかどうか調べると言って湯船に入ろうとするが、トミイは呆れて、まるでしなびたダッコちゃんだと声を挙げる。

その後、やぐらを囲んで盆踊りをしている広場に行ったトミイは、やぐらの上で芸者さんが歌う後ろで太鼓を叩いていたが、やがて自分自身が太鼓を叩きながら歌い出す。

すると、下で踊っていた七条も梯子を上ってやぐらの上に上がると、一緒に歌い出す。

そんな七条の顔に、下から誰かがトマトを投げつけて来て、顔に命中する。

下を見ると、昼間、ジャズ合戦でとっちめた愚連隊の連中だった。

トミイは、先刻の決着が付いてねえと言うので、仕方なく、愚連隊のオート三輪の荷台に乗り込んで、人気のない造成地に連れて行かれる。

殴り合いが始まるが、形勢不利と感じた愚連隊たちは、ナイフを取り出してトミイに迫る。

その時、山の上から銃を投げて来たのは七条だった。

それを下で受け止めたトミイが数発撃つと、さすがの愚連隊も怯え逃げて行く。

降りて来た七条が危なかったなと笑顔でトミイに近づくが、助けてもらっても仲間にはならねえぜとトミイは釘を刺す。

翌日、トミイはバスに乗り、町を出ようとしていたが、そこに七条も乗り込んで来るし、村上英子まで乗り込んで来て、隣に座る。

どこへ行くのかとトミイが聞くと、今朝、兄さんから手紙が来たと言い、中身を読むと、「お父さんの船は難破ではない、殺されたんだ。俺はそのヒントを掴んだ。これから1人で探ってみる。 神戸 五郎」と書かれていた。

一緒に手紙を読んだ七条は、お前が英子さんの兄に化けて身を守ってやったら?と言い出したので、お前もたまには良いこと言うなとトミイが喜ぶと、同志じゃねえかと七条も同行する気満々だった。

3人は一緒に、神戸にやって来るが、闇雲に歩き回っても兄の五郎が見つかるはずもなく、英子は警察に行こうと提案するが、ムショ帰りの七条はそれだけは止めてくれと断る。

その時、トミイは、キャバレー「黒い城」と言う店に貼られた「クレージーキャッツ出演」と言う文字に目を留め、笑顔になる。

店の中では、演奏の練習中だったメンバーたちが、ドラムのハナ肇が遅れているので、マタ、「コロンボ」の美代ちゃんと一緒にいるんだろうと谷啓がぼやくと、二日酔い気味のハナが、夕べ美代ちゃんともめちゃってな…などと謝りながらやって来て、ドラムを叩き始める。

しかし、夕べの酒がまだ残っているらしく、調子が悪いと言い始める。

そこに入って来たのがトミイで、ぼつぼつドラムが恋しくなったんだと挨拶すると、その顔を見たハナは、ちょうど良かった、代わってくれと頼む。

久しぶりにやってみるかと張り切ったトミイは、ドラムを叩き始め、それに合わせてメンバーたちの練習も始まる。

それをテーブル席で見学する英子と七条。

その演奏を、古川専務(田中明夫)柴田常務(松本染升)と共に社長室で聴いた森下社長(安部徹)は、最近用心棒として雇った流れ者のジョージ(小高雄二)を呼び寄せると、派手な楽隊は後でやるように言って来いと命じる。

あいつは?と古川に聞かれると、流れ者の方が使い易いと森下社長は笑う。

ステージの方にやって来たジョージは、テーブル席の方を観て驚いたような表情になる。

その夜、ハナ肇はトミイ、英子、七条等をバー「コロンボ」に連れて来るが、真っ先カウンターにで酔いつぶれている。

お目当ての美代ちゃんがいないのが原因らしかったが、マダムは、そんなハナにトランプ占いをせがむ。

七条も悪酔い気味で、店に飾ってあった舵輪をいじって落としてしまう。

英子がそんな七条を注意しに来るが、落ちた舵輪を観て、これは第二潮風丸のものよと言い出す。

中学生の時、自分がナイフで傷を付けたので、お父さんに怒られたことを覚えており、ここにその時刻んだ「EM」と言うイニシャルが残っていると言う。

トミイがマダムに、この舵輪はいつ手に入れたのかと聞くと、2年ほど前、スクラップ屋から買ったのだと言う。

そのスクラップ屋の場所を聞いたトミイらは、翌日、その場所へ行ってみる。

そのスクラップ屋の社長(夢路いとし)は、確かにその舵輪は、ここで船を解体して売ったものだと認め、30年も経った古い船で、伝染病が出たと言って売りに来たのは森下海運と言う小さな会社だったが、今では、その社長はん、キャバレー「黒い城」をやっている。よっほど影であくどいことやって儲けたんやろなと教えてくれる。

その頃、キャバレー「黒い城」の社長室では、森下社長、古川専務、柴田常務宛てに届いた黒いハガキに文字部分を貼付けた脅迫状を前に3人が顔を合わせていた。

3年前に行方不明になった村上船長のことが書かれているので、あの当時のことを知っているのはこの3人だけのはずであり、誰かが誰かを追い出そうとしているんじゃないか?と古川が言い出す。

それは誰のことを言っているのだ?と森下社長が聞くと、お前のことだ。船をいじっていた頃は、俺たち3人は対等だったはずだと古川は答える。

ハガキを出した奴は今頃せせら笑っているぜ。仲間割れが始まったとな…、俺がやるなら、こんな面倒くさいことはせず、警察に話せばすむことだと森下社長が苦笑すると、ハガキの最後に「M」と書いてあったから、お前だと思ったんだと古川は言う。

「M」は俺だけじゃねえぜ。村山も「M」だぜ。奴には五郎と言う倅がいたはずなんだ。俺は手を打ってある。ちゃんと調べさせてるんだと言い、テーブル下のブザーを押す。

部屋に入ってきたジョージは、五郎と言う奴は家出して行方が分からないと報告する。

森下社長は、このハガキを出した奴はその内姿を現すはずだ。それを待とうじゃねえかと薄笑いを浮かべる。

店のステージでは、パパの彼女を観ちゃったわ♪と女性デュオが歌っていた。

客席の様子を見回る柴田常務は、客の入りは上々のようだなと呟くが、一緒にいた古川専務は、いくら儲けたって吸い上げているのは社長だけだぜとぼやく。

その頃、社長室では、店のマダムを呼び寄せた森下社長が、女房もらうのは度胸がいるんだ等と言いながら、抱こうとするが、その時ジョージがお呼びですか?といきなり入って来たので、怒って追い出す。

このままじゃやりきれない、森下を追い出すんだ。若いもんにはもう手を打ってあると古川専務が柴田常務に話しかける。

そんな古川たちは、大きな箱を抱えて店に入ろうとしてカウンターで止められていた七条に気づく。

何事かと近づいて来た古川に、あんたが社長かい?と七条が聞いて来たので、違うと言うと、これは社長に渡すんだと七条は言いながら店に入って来ようとする。

そこに森下社長がやって来たので、七条は箱を押し付けて帰って行く。

何の真似だい、これは?と言いながら、森下や古川が箱を開けてみると、黒い十字架をあしらったリボンの下には舵輪が入っていた。

それを見て驚いた森下等に、どうやら反応があったらしいな?と言いながら店にやって来たのは、英子を連れたトミイだった。

村上五郎とトミイが名乗ると、妙な言いがかりをつけるとサツを呼ぶぜと森下は凄み、若い衆がトミイを取り囲む。

トミイは銃を取り出すと、背後に迫っていた子分(野呂圭介)に向けて発射する。

子分は、右胸が赤く染まったので驚くが、痛みがないので首を傾げる。

トミイが持っていたのは、単なる赤い水を出す水鉄砲だった。

その頃、店横の木戸をよじ上ろうとしていた七条に気づいた警官が近づいて来る。

もちろん、七条はわざと警官に目立つようなことをやったのだが、店の中の様子を警官が観に来たので、古川はトミイを、こいつはキ○ガイだよと訴える。

その場から連行されたトミイだったが、あの小僧が五郎か…と呟いた森下社長は、先ほどの舵輪を地下室で燃やしてしまう。

ジョージを呼び、サツを出た所をやれと古川は命じるが、サツが泳がしているかもしれねえから危ない。二度と神戸の町をうろつかないように脅して来いと森下は命じる。

警察署では、その後、トミイの証言を確認するため、店を手入れしたが、証拠となる舵輪なども見つからなかったし、村上の未亡人は君みたいな息子はいないと言っていたので、店に暴れ込んだ君の方が不利だ。2億円の話もTV映画の観過ぎだろ、今度暴れたら見逃さないぞ。鑑別所行きだよと刑事課長の木島がトミイに説教し、取りあえず釈放する。

トミイは、大人の世界って、時々あべこべになるな…と嘆きながら部屋を出て行くが、その直後、この事件は違う角度から調べる必要があるかも知れん。近頃、香港で偽ドルや偽造金貨が出回っている。金貨のメッキが厚い所から観て、多量の金があるはずなんやと上司が木島に話しかけて来る。

警察署を出たトミイの後を追って来た車があり、運転していたジョージが乗りな!と誘う。

助手席に乗り込んだトミイは、どこに連れて行くつもりなんだ?とジョージを怪しみ、相手の懐から銃をスリとって、誰に頼まれたんだ?と聞くが、ジョージは慌てる風もなく、誰に頼まれたんでもねえよと笑い、車を人気のない高台の空地に停める。

外に出たジョージは、俺は消すのが商売だが、今日は止められているんで、脅かすだけだが、どうやりゃ良いのか分からねえと苦笑しながら、おめえと一緒にいたのは妹か?大人しく田舎に帰るんだな。二度と神戸に来るんじゃねえ!と言うと、いきなり隠し持っていた銃を取り出し、トミイが持っていた銃を撃ち落としてしまう。

そして、トミイが落とした拳銃を拾い上げたジョージは、車に乗って立ち去ってしまう。

その後、波止場にやって来たトミイに、ボートに乗った七条が近づいて来て声をかける。

アクアラングを背負っていたので、どうしたんだ?とトミイが聞くと、前に買った潜水服を売って買ったんだが、これで例の場所に潜ってみたら、図面通りに船は沈んでいたが、2億円はなかったと言う。

その話を聞いたトミイは、見当はついたぜ…と呟く。

「黒い城」のステージでは、クレージーキャッツがコミカルショーを演じていた。

安田伸がトローンボーンを中央で吹くと、その両脇に立った谷啓と植木等が、安田の足を踏みながら演奏し、トランペットの谷が中央になると、植木が、そのラッパ部分にハンカチを詰め、チューニングスライドを折り曲げて演奏を妨害する。

植木がギターを弾き始めると、谷がそのギターを奪い取り、植木の頭に叩き付けて壊す。

植木が気絶すると、安田が谷の頭を洗面器で叩き、その洗面器を奪い取った谷が殴り返し、両者とも気絶する。

それを犬塚弘が笑いながらウッドベースを弾いていると、ドラムのハナ肇が怒って、ベースの弦をゴムのように引っ張り、犬塚の頭を挟む。

ピアノの桜井センリがそれを見て笑うと、怒った犬塚が、ピアノの鍵盤を引っこ抜き、桜井の肩にポンチョのようにかける。

すると、桜井は愉快そうに肩掛けになった鍵盤を弾き始める。

さらに怒りが収まらない犬塚は、ドラムを叩いていたハナの頭をシンバルで殴りつけ、ハナの身体をバスドラムに突き飛ばし、皮を破ってしまうのだった。

そんな中、社長室にやって来た七条は、2億の金塊のことで交渉したいと申し出るが、すぐに子分たちに取り囲まれてしまう。

しかし、七条は慌てず、古川専務と柴田常務に、持って来た近海の場所を記した地図を拡げてみせる。

おめえ、こんなものをどこで手に入れた!と柴田常務は驚くが、銃を取り出した古川専務は、2億の金塊の代わりに鉛を撃ち込んでやると脅して来る。

そこに、銃を持ったトミイが入って来て形勢逆転するが、トミイと七条は取りあえず逃げ出すことにする。

古川や若い衆が後を追おうとするが、トミイが銃をぶっ放したので、積み上げられていた一斗缶が崩れ、子分たちは道を塞がれてしまう。

その後、社長室にジョージがやって来て、マダムにごちそうになっていたと言い訳をするので、おめえはいつも肝心の時にいやがらねえ!と怒った古川だったが、礼の小僧をすぐに消すんだと命じる。

波止場を歩いていたトミイに近づいたジョージは、妙な探りを入れるから消されるんだと言い、発砲する。

トミイは海に落ち、驚いた七条が駆けつけて来るが、妹に渡してくれと言い、五郎って奴の形見だと言ってと手帳を投げ捨てて、ジョージは去って行く。

とある部屋で、坊主が葬式の読経をしていたが、その隣の安ホテルの風呂に入っていたのは、七条と海から助けられたトミイだった。

部屋でジョージが渡した船員手帳を読んでいた英子は、これは間違いなく自分の兄のものだと、風呂から上がって来た2人に証言する。

しかし、何故か、身分証明用の写真の部分は剥がされていた。

英子はやはり警察に行くと言い出すが、トミイは、もっと食い下がって証拠を掴まないとな…と答える。

翌朝、朝から森下社長を張っていたトミイと七条は、マダムを連れた森下社長が車で出かけたので、タクシーで後を追うことにする。

森下社長とマダムがやって来たのは、鉢伏山の須磨浦ロープウェイだった。

一台次のリフトに乗ったトミイと七条は、頂上の展望台に到着するが、森下たちが見当たらないので、1人用リフトで少し場所を移動し、必死に周囲を探しまわる。

やがて、休憩所に近づいていた森下とマダムを発見し近づく。

休憩所に腰を降ろしたマダムは、私、まだ決心がつかないのです。怖いんです。社長はご存じないでしょうけど、社長は狙われていますと打ち明ける。

それを聞いた森下社長は、知ってるよ、古川と柴田だろう?奴等が行動を起こすのを待っているのさと鷹揚に答える。

草むらで話を聞いていたトミイは、もっと近づこうとしたので、七条が2丁の銃を取り出し、好きな方を持って行きなと勧める。

トミイは片方の銃を受け取ると、休憩所に近づく。

休憩所の中では、専務と常務だけが悪いことをして、社長だけが悪いことをしてないはずがないと思ってるんだろう?俺は奴等を助けてやったんだよ…と森下は2年前の嵐の夜、3人で第二潮風丸に乗ってサルベージに出かけた時の事を話しだす。

(回想)森下と古川も乗り込んだ第二潮風丸から、潜水服を着た柴田が海に潜り、2億円の金塊を引き上げた。

しかし、引き上げたのが金塊を知った村上船長(二本柳寛)は、金塊の事は聞いてない。沈没船を引き上げると言われていただけだと、船室で金塊を前にした古川たちに抗議し、港に戻ったら警察に届けると言い出す。

それを聞いて逆上した古川が村上船長を殴り倒すが、その時、銃を持った森下が入って来て、古川と柴田を壁際に立たせると、倒れた村上船長の首筋に手を当てる。

そして、おめえたちは人殺しだ!と脅す。

振り返った古川と柴田は、お前さえ黙っていてくれたらと下手に出て来たので、森下は、おめえたちの出方次第よと迫る。

その後、船長は病気ということにしベッドに寝かすと、他の水夫たちには酒を飲ますことにする。

死体の側にいた森下は、銃声を聞き駆けつけると、水夫に酒を飲ませていたはずの古川と柴田が、皆殺しにしていた。

こいつ等嗅ぎ付けやがったと言うので、その手で俺も消そうとしたんだな?と森下が銃を突きつけると、お前の言う通りにすると古川が言い出し、おめえが俺たちのボスだと柴田も言う。

(回想明け)秘密は全部話した。君の返事を聞きたいと森下が聞くと、マダムは答えに窮し、休憩所を出る。

その様子を草むらから監視していたトミイは、突如ジョージから銃を突きつけられ、森下の前に引っ張り出すと、大変なことを聞かせたな。この前は海に放り込んだだけだったが、今度はそれだけじゃすまねえぜと迫る。

そこに、古川と子分たちがやって来て、一緒に来てもらおうと森下とマダムに命じる。

彼らが立ち去った後、ジョージの背中に銃を突きつけ、トミイを助けたのは七条だった。

ジョージも立ち去った後、七条は、てっきり七条から玩具のピストルを受け取ったと思い込んでいたトミイに、それは玩具じゃねえ。玩具はこっちだと、自分が持っていた方の銃を空に向かってぶっ放してみせるが、鳩が落ちて来たので、七条は愕然とする。

キャバレー「黒い城」では、半裸の女が踊っていた。

社長室に、森下とマダムを連れて来た古川は、たった今から俺が社長だ。自分に都合の良い作り話をして…、お前には消えてもらうよと言いながら、子分たちと銃を森下に向ける。

そこにやって来たのがジョージで、いつも肝心な時に間に合わなかったが、今日は間に合いましたねと笑うと、2丁拳銃を取り出し、古川と柴田に銃を突きつけ、動くな!と制す。

それを観ていた森下は、やっぱり社長は俺らしいなと笑い、自分に銃を向けていた子分の須藤たちをどやしつける。

須藤たちは、すぐに、自分たちは命令されていただけなんですと森下に謝る。

おめえに社長はまだ無理だぜと古川に行った森下は、先に消さなくてはいけねえ奴がいると言い、余計なことしゃべりやがって!とマダムを殴りつけると、俺は自分のバカさの償いをしなくちゃいけねえらしい、ジョージ撃て!と命じる。

しかし、さすがにジョージがためらって、社長、そいつは酷過ぎるよと言うと、じゃあ、俺がやる!と森下は自分の銃を取り出しマダムに突きつける。

貴様、いつの間にいつと出来てたんだ!と憎々し気にジョージを睨む森下。秘密を吐かしてどうするつもりだったんだ?一番始めに消す奴はてめえだ!と怒鳴りつける。

そこに、2丁拳銃を持って入って来たのがトミイと七条で、ジョージに、殺し屋を助けたのは、この前の借りを返しただけだ。村上船長の仇がこうも揃っていると都合が良いぜと笑う。

俺は違う!と森下は否定するが、一番悪いのはおめえだよ!とトミイは言い、子分たちとトミイの撃ち合いが始まる。

七条は、撃ちながら、壁の後ろにあった隠し部屋を見つけると、その中に転がり込む。

その時、機関銃の肩ひもが機械のスイッチに絡まってしまい、印刷機が廻り始める。

七条がその印刷物を観ると、偽札ではないか!さらに周囲には、偽金貨も多数散らばっていた。

側には金の延べ棒も置いてあり、森下たちは、偽札や偽装金貨を作っていたことが分かる。

七条は、金だ!やっぱり金はあったんだ!と喜ぶ。

その時、店内に警官隊が突入して来る。

森下たちは捕まり、全員、パトカーで連行されて行く。

そんな中、店の横から逃げようとしていたジョージに銃を突きつけたトミイは、駆けつけて来た英子に気づいたので、こいつが兄さんを殺しやがったんだぜとトミイは教える。

しかし、ジョージの顔を間近で観た英子は、兄さん!と驚く。

何と、ジョージは、家出をしていた英子の兄の五郎だったのだ。

後日、母和枝のいる有馬温泉の旅館「中の坊」では、村上兄妹と和枝が、シャンパンやケーキを用意して、事件を解決してくれたトミイの来るのを待ちかねていた。

しかし、そこにやって来たのは七条だけで、どこを探しても奴はいないと報告する。

それを聞いた和枝は、私が言わなかったばかりに…と落ち込み、実はあの方は、あんたたちの兄弟だったのよ。私が悪かったのよ。あの方に謝らなくちゃ…と五郎と英子に打ち明ける。

その頃、トミイは、又、道路で手を振ってヒッチハイクを試みていたが、一台も車は停まらない。

やけになって道路に寝そべった所に停まったのは、七条が運転するジープだった。

やっと追いついたなと言う七条は、大事なものを忘れちゃいけねえな…と言いながら、トミイに父親が写った写真を手渡すと、英子さんも五郎さんも君の兄弟だったんだよと教える。

トミイ、あの家に帰れよ。革命同志は欲しいけどよと、七条は残念そうに勧めるが、ジープに乗り込んで来たトミイはどこへ行くつもりだと聞く。

俺は残念ながら東京だよと七条が答えると、俺ももういっぺん東京へ戻ってドラムを叩きたくなったな…と言い出したトミイは、兄になるなんて、あれ以上やったら持ちそうもないと笑う。

七条は、この車、あのポンコツ屋から巻き上げて来たんだと教え、エンジンをかけようとするがなかなかかからない。

トミイが銃をぶっ放すと、エンジンが動き出すが、雨が降って来たので、七条は玩具の機関銃の重工傘を引っ張り出し運転席の上にさして出発する。

雨はすぐにやみ、2人を乗せたオンボロカーは、山間の道路をどこまでも走って行くのだった。