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探偵事務所23 銭と女に弱い男

大藪春彦原作「探偵事務所23」の映画化で、「探偵事務所23 くたばれ悪党ども」に次ぐ、シリーズ第2弾らしい。

確かに、この作品だけ観ると、田島の探偵事務所にいる千秋等の立場など、今ひとつ分からない部分がある。

とは言え、逆に、基本設定は前作で説明されているということから、冒頭から快調なテンポで話は展開して行く。

登場人物たちの個性や筋書きも良くできており、探偵ものとしてもなかなかの秀作に仕上がっている。

この映画での探偵を演じている宍戸錠はかっこ良く、女にモテモテと言う設定も不思議ではないし、後年の林海象監督作品「私立探偵 濱マイクシリーズ」に、先輩探偵として宍戸錠が出演しているのも分かるような気がする。

普段悪役が多い土方弘がとぼけた会計係を演じていたり、初井言栄が大阪弁で威勢の良い女史役を演じていたりするのが珍しい。

珍しいと言えば、宍戸錠が実弟の郷英治と共演しているのも珍しいかもしれない。

金子信雄は、後年刑事役等も演じているが、この時代から既に経験済みだったということも分かる。

中国人の拳銃使いを演じている小池朝雄、声だけの登場シーンが多いが、どうしても声だけ聞くと「刑事コロンボ」を連想してしまう。

葉山良二が演じている役もなかなか印象的。

この手の娯楽映画は、敵役が魅力的だと大体成功していると解釈して良いように感じる。

あまり観る機会がない作品だけに、こうした優れた娯楽作品に出会えて嬉しかった。


▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1967年、日活、才賀明脚本、鍛冶昇監督作品。

単色カラーのハイコントラスト映像で「東京ナイト」を歌うバンドの姿を背景にタイトルとキャスト、スタッフロール

京都

早朝、玄関をそっと開け外に出て来る舞妓小はな(和泉雅子)は、屋根の上に乗っていた猫が鳴いたので、しっ!と黙らせると、近くにある辰巳神社の前に来て手を合わせると、そのまま大きなバッグを提げて大通りまで急ぎ足で抜けると、タクシーを呼び止める。

京都駅まで!と告げて乗り込もうとした小はなだったが、道路の反対側に停まっている運送トラックに気づくと、結構です。あっちはただどすさかい…と運転手に詫びる。

運送トラックの荷台に無事乗り込んだ小はなは、トラックが岐阜、名古屋を通し過ぎる中、荷物として大量に積まれていた「UCCコーヒー」の箱の中で眠りこけていた。

やがて寝覚めた小はなが、幌をまくって外を観ると、そこには富士山が見えていたので喜ぶ。

その頃、東京の世界製薬の社長山村(嵯峨善兵)は、祇園の屋形(置屋)「菊の家」の女将キク(中村芳子)から、小はなが家出をしたとの連絡を受けていた。

東京に行ったと言う証拠はあるのか?と山村が確認すると、小はなは昔から東京に憧れており、友達が修学旅行で東京へ行ったこともうらやましがっていた。きっと雪枝に会いに行ったに違いない。芸妓が家の後を継ぐのをいやとなったら恥やさかい、表沙汰にする訳にもいかず、ここは山村社長はんにお頼みするしかないのだとキクは言う。

その頃、小はなはトラックの荷台の中で、舞妓の衣装から現代風の衣装に着替え、日本髪のカツラも今風のボブヘアのウィッグに替えていた。

そのトラックの運転席では、運転していた兄貴分(青空あきお)に助手(青空はるお)が、後8分しかないよと時間をせかしていた。

ようやくドライブインに到着したトラックから降り立った兄貴と助手は、食堂へ向かうと、テレビの前のテーブルに陣取る。

一方、荷台から降りて来た小はなは、売店でアンパンやジャムパンと牛乳を購入する。

テレビでは、三国一朗が司会を務め、UCC上島珈琲提供「大学対抗エレキ合戦」の番組が始まっていた。

最初に紹介された東南大学のバンド「ヤング&フレッシュ」のメンバーたちが写り、三国一朗が小杉健(山内賢)を紹介すると、観ていた助手は、待ってました!若旦那!とテレビに声をかける。

トラックに戻った助手は、来週はいよいよ決勝戦だな…と喜び、運転し始めた兄貴も優勝すればハワイ行きだと答える。

荷台では、小はなが牛乳にパンを食べていた。

その時、後ろの方からパトカーのサイレンが聞こえて来て、トラックの横を追い抜いて行ったので、事故かな?と兄貴と助手は話し合う。

その直後、運送屋の自宅にいた「ヤング&フレッシュ」の小杉健は、「追突された!」と電話口で大声を上げていた。

ドラムの田中浩(和田浩治)からの知らせで、ボーカルのミッチーこと沢田美知子(徳永芽里)が乗っていた車が信号待ちしている時、後ろから追突され、ミッチーは川崎の京浜病院に担ぎ込まれたと言うのだった。

妹の和子(小橋玲子)も心配する中、車に乗って病院へ向かおうとした健だったが、父親の亀太郎(三遊亭歌奴)が故障が直ってないと言う。

そこに、店の運送トラックが戻って来る。

運転手と助手が、テレビで観ましたよなどと言いながら降りて来ると、トラック、借りるよ!と言いながらその運転席に飛び込んだ健は、いきなり発進する。

荷台に乗っていた小はなは驚きながらも、そのまま京浜病院まで連れて行かれる。

病室には、むち打ちのギブスを首にはめたミッチーがいる病室に駆け込んだ健だったが、他のメンバーたちも集まっていた。

ミッチーの怪我は、全治一か月と聞くと、決勝戦どうする?!とメンバーたちは慌て出す。

その後、小杉運送店の車庫に戻って来たメンバーたちに、パジャマ姿の和子が近づいて来て、美知子さんどうだったの?ボーカルは私じゃダメ?などと無責任に話しかけて来る。

そんな和子を母屋に追い返した健たちは、取りあえず練習を始める。

荷台の中で積み荷の缶コーヒーを飲みながら、その曲を聞いていた小はなは、いつの間にかトラックから降りると、バラードを歌っていた健の側に近づきながら、自分もディエットし始める。

歌い終わると、ドラムを叩いていた浩や他のメンバーたちが、良いよ、良いよ!と喜びながら小はなの元に集まる。

小はなは恥ずかしそうに、うち、京都からずっとあのトラックの中に乗ってたの、堪忍やっしゃ。実は家を飛び出して来たんどす。お母やんが分からんちんで…と謝る。

家出と知ったメンバーたちは驚くが、きっと京都の山の手のお嬢さんで、親から気の進まない縁談でも勧められたんだろうと勝手に決めつけ、名前を聞く。

適当にメンバーたちに話を合わせていた小はなは、思わず、花子と答えてしまう。

そして、匿もうておくれやすとメンバーたちに頼むと、ご不浄をお借りしたいと言い出す。

小はながトイレに行くと、メンバーたちは匿ってやろうよ、封建的な親から逃げて来たんだからと相談し合う。

結局、小はなは、その夜、健の離れに泊めることにする。

健は、文学部の学生だと自己紹介すると、押し入れの中のベッドを見せ、自分は母屋の方に寝るから大丈夫と伝える。

なぜ、母屋で暮らさないのかと小はなが不思議がると、ここの方が楽だからと健は答えたので、じゃあ、健はんも家出どすなと小はなは笑う。

旅行バッグを空けた小はなは、その中に入っていた箱を取り出すと、これは「キュウティ」と言って歯を白くするものどすなどと説明しながら、健のはを確認すると、ヤニも取れます等とからかったので、健は恥ずかしがって部屋を出て行く。

しかし、健は母屋には戻らず、トラックの荷台の中で寝ることにするが、床に落ちていた見慣れぬ簪を拾い上げ、首を傾げる。

翌日、メンバーたちは、小はなを遊園地のジェットコースターや「メンズウエアop」で、メンバーたちの服を見立てたりして楽しむ。

その後、東京タワーの展望台に登った所で、浩が小はなに、自分たちの次の決勝戦に出てくれと頼むが、テレビに出たいけど、出たら、蒸発がおじゃんどすわ…、良う考えてみます…と小はなは悩む。

その後も、小はなを連れての東京見物は続き、モノレール、羽田空港、夜の銀座等を巡るが、銀座の町中に来た小はなは、急に「待ち合わせて〜♪歩く銀座〜♪」と「二人の銀座」を一節、健と共に歌う。

その後、クラブ「一力」と言う店の前を通りかかった小はなは、ちょっと用があるので、そこの喫茶店で待っていておくれやすとメンバーたちに頼むと、1人で「一力」に入って行く。

カウンターで客の相手をしていたママの駒子(高千穂ひづる)は、急に入って来た小はなから「琵琶湖カクテル」を注文されたので、驚いて顔を観ると、知っている小はなだったので、小はなちゃんやないの!と声をかけて来る。

客が「琵琶湖カクテル」って何だね?と聞くと、水のことだと説明した小はなは、昨日東京に来たんどすと駒子に挨拶する。

すると駒子は、知ってるけど…と言い、「菊の家」のお母さんがえらい探してはるって、世界製薬の山村さんが言ってはったでと教える。

黙って、家を出て来たって本当か?と聞かれた小はなが頷き、「菊の家」なんて屋形を継ぐの嫌なんや、お姉ちゃんが家を飛び出したの分かるなどと言うので、雪枝ちゃんに会うつもりか?と駒子は驚く。

いはる所、知ってはりまへんか?と聞かれた駒子だったが、ご主人の幸田はんが前の会社を辞めてから知らへんと答える。

今どこに泊まっているのか?と聞かれた小はなは、高円寺の小杉と言う家に泊めてもらっていると教える。

その頃、小杉家では、離れで旅行バッグを見つけて来た和子が、父親の亀太郎に見せていた。

亀太郎は、明らかに真っ赤で女物のそのバッグを怪しみ、開けてみようとするが何故か開かない。

そんな亀太郎に和子は、留さんが言ってた。若旦那、夕べはトラックに寝てたんですってと告げ口をする。

その時、健が帰って来たと妻の静子(須田喜久代)が教えたので、亀太郎はバッグを持って離れに向かう。

離れの中では、小はなが、バッグがないと騒いでいた。

その時、ノックの音が聞こえたので、慌てた健は、小はなを押し入れのベッドに隠し、何食わぬ顔をしてドアを開ける。

中に入って来た亀太郎は、部屋の中を怪しみながら見て回っていたが、やがて小はなが置き忘れていた白いハンドバッグを発見してしまう。

万事休すと直感した健だったが、亀太郎は押し入れの前に立ち、扉を開く。

すると、中で正座をしていた小はなが、ごめんやすと言いながら頭を下げて来たのであっけにとられてしまう。

白川花子と申しますと名乗った小はなは、もう一晩泊めてやってくれないかとかめたろうに頼む健を尻目に、うち、他にもいく所がおますし、ほなさいなら…と言い残し、バッグを持ってさっさと出て行ってしまう。

離れから出て行く小はなの姿を、母屋から和子が不思議そうに目撃していた。

その後、小はながやって来たのは「田中京染店」だった。

浩さんいますか?と中に入ると、主人の田中庄作(金原亭馬の助)は不思議がるが、奥から顔をのぞかせた浩は、小はなの姿を観て驚きながらも、ガールフレンドだと父親に紹介する。

今夜、ここに泊めてくれはらしまへんやろか?と小はなが頼むと、唖然とする父親を尻目に、浩は脂下がった顔で快諾する。

小はなは店頭に置かれていた反物を観ると、一腰(ひとこし)どすな?と言ったので、若いのに詳しいじゃないかと庄作は驚く。

小はなは、おじさんが西陣で織物をやってますからと言ってごまかす。

その頃、健の方は、好奇心一杯の和子から、さっきの小はなのことをあれこれ聞かれていたが、何故か不機嫌なまま追い返すと、トラックの中で拾った簪を見つめながら、1人寂し気にギターを弾いてみるのだった。

いつのまにか健は、ヤング&フレッシュのメンバーたちと共に、川のほとりで歌を歌っていた。

翌日の東南大学

授業中も健は沈み込んでいたが、遅れて教室に入って来た浩が、その訳を聞き、メンバーたちから彼女を追い出したんだってよと聞くと、はなちゃんなら家にいるよ。はなちゃんは、京都の舞妓産業で働いているって親爺に言ってたよと教える。

その後、4人のメンバーは、婦人客(横田楊子)相手に反物を店頭で勧めていた小はなのいる「田中染物店」にやって来る。

浩が、健ちゃん、心配してたよと教えると、小はなは憮然としている健に謝るのだった。

その後、ビレッジシンガーズが「バラ色の雲」を歌っているジャズ喫茶にやって来た5人だったが、小はなは言い曲ですなと感心する。

しかし、他のメンバーたちは、そんな小はなに、何か俺たちに隠していることあるだろう?電話で調べたけれど、京都には麻衣子産業なんてないって言ってたよ。頼むから本当のことを言ってくれよ。言ってくれないと、家出として警察に行かないといけないよと浩は詰め寄る。

それを聞いた小はなは覚悟を決めたように、今夜のおさらい(バンドの練習)が終わったら、銀座の「一力」と言う見せに来ておくれやす、そこでうちが何をしているか教えますと答える。

その夜、メンバーたちは正装して、クラブ「一力」にやって来るが、彼らは全員文無しであり、こんな豪華な店に来て大丈夫かと互いに心配し合う。

テーブルにやって来たウェイターに花子のことを聞いても知らないと言うので、ますます不安になる4人。

ステージでは、「東京アイト」と言うグループが歌を歌っていた。

歌い終わると司会者が登場し、今夜は京都から珍しいゲストがお見えになっています。本物の舞子さんですと紹介する。

すると、1人の着飾った舞妓が「月はおぼろに東山〜♪」と「祇園小唄」を歌い踊りながら登場する。

それを何気なく観ていたメンバーたちは、その舞妓が小はなだと気づきあっけに取れれる。

しかし、小はなが歌い終わる頃には、全員笑顔で拍手を送っていた。

小はなはステージを降り、健たちのテーブルに近づくと、今晩は、祇園の小はなと言います。小はなちゃんと呼んでおくれやすと挨拶をすると、一緒のテーブルに座る。

そして、みんなからきれいだと言われた小はなは、うちらは金魚と同じです。狭い水槽の中を泳いでいる金魚と同じで自由はあらしまへん。家は山の手のお嬢はんではなく、屋形つまり芸妓はんの置屋どす。お父はんは小さい頃死なはったので、今はお母ちゃんと二人暮らし。雪枝姉ちゃんが5年前に駆け落ちしたので、自分が高校を行くの諦め、舞妓になったんどす。お姉ちゃんに会ったら、恨みの一つでも言おう思いまして…、お姉ちゃんの居場所は、ここのママはんが知っていると思う。あのママはんは祇園の出世頭ですねん。今日は芸妓の制服姿観て欲しかったんどすとメンバーたちに打ち明ける。

その時、店にやって来たのが、世界製薬の山村社長と部下たちで、小はなを見つけ声をかけると、慌てて逃げ出した小花の後を部下たちに追わせる。

健たちメンバーも、慌てて店の外に逃げ出した小はなを追いかけ、夜の銀座の町中で山村の部下たちに捕まえられていた小はなを救い出す。

日比谷公園の噴水の所に来たメンバーたちは、君、これからどうする?と小はなに尋ねる。

小はなも困惑し、こんなことになって…、もう駒子姉さんの所へも帰れないし…と悩む。

すると、メンバーの田所一(杉山元)と吉本正(木下雅弘)が、健と浩の所に泊まって、俺たちの所に泊まらないなんて不公平だよと言い出す。

小はなは感激するが、2人が共同で住んでいるのは、安アパートの一室で、その後、4人は全員で固まり、中に小はなの姿を隠しながら、玄関先にいた管理人の目をごまかしながら二階の部屋に上がり込む。

中に入ると、そこは独身の男二人の相部屋だけに、男臭く、散らかり放題の惨状だった。

その時、ノックの音が聞こえたので、慌てた男たちは、小はなを毛布の中に隠す。

ドアを叩いていたのは、彼らの様子を怪しんだ管理人で、ちょっと気になることがあるので…と声をかけて来たので、健と浩は、どうやらここも安全じゃなさそうだなと顔を見合わせる。

翌日、健と浩は、まだ入院中だった沢田美知子に会いに行き、君のアパートの部屋を小はなに使わせてやってくれないかと頼む。

ミッチーは承知するが、ただし少々値は張るわよと言い出し、私だって、ただで借りてる訳じゃないんだものと説明する。

浩から事情を聞いたアパートの管理人も、美知子が承知しているのなら自由に使ってくれということで、小はなは美知子のアパートの部屋を退院するまで使わせてもらえることになる。

部屋にやって来た小はなは、うち、何やら女子大生になったような気分やわと喜ぶ。

その後、健と浩は、小はなの姉である白川雪枝と、その夫の幸田吾郎の居場所を自分たちなりに探し始める。

前に勤めていた工場で、品川から大森に引っ越したこと、2、3日前、バーのママが訪ねて来たこと等を調べ上げた2人は、それをアパートの小はなに教えに戻る。

そのバーのママと言うのは、「一力」のママ駒子ではないかと気づいた健は、その夜、1人で「一力」に行き、駒子に直接、小はなちゃんのお姉さんの居場所を知っていますね?3ヶ月前まで住んでいた大森に、あなたがお訪ねになったことも調べましたと追求するが、駒子はとぼけて答えないので、お姉さんの居場所は僕が必ず探し出しますからと言い残し、ビールを勧めて来た駒子を無視して帰る。

翌日、大学で健から話を聞いたメンバーたちはその熱心さに驚くが、こうなりゃ意地だよ!と健はムキになっていた。

その日、「大竹運送」と言う引っ越し業者が幸田の荷物を運んだと健は調べ上げたる。

その頃、小はなは、部屋を貸してもらった美知子に礼を言うため、病院を訪れていた。

屋上で小はなに会った美知子は、自分には2人姉がいるのだけど、2人とも進学しなかったので、自分だけが無理に大学に入れられちゃったのと打ち明ける。

それを聞いた小はなは、互いに姉のために、自分の意思とは違う道を背負い込んでしまった境遇が似ている事を知って愉快がる。

そこにやって来た健は、小はなのお姉さんの居場所が分かったと伝えながらも、どうやらまともな生活をしてなさそうなんだよと、言い難そうに打ち明ける。

その夜、飲屋街に小はなを連れて来た健は、「小料理 ゆきえ」と言う店の前に来る。

中のカウンターでは、酔客(二木草之助)相手に、雪枝(長内美那子)が酒の相手をしていた。

店の中に入り込んだ小はなは、お姉ちゃん、うちや!これが、水商売を嫌って出て来た姉ちゃんがやることか?といきなり抗議する。

妹の突然の訪問に気づいた雪枝は、あんた、東京へ?と驚く。

4、5日前ですと小はなが答えると、アホな子や…と呟いた雪枝は、奥に向かって、あんた!と呼ぶ。

二階から赤ん坊を背負って下りて来たのは、左手に包帯を巻き、無精髭を生やした幸田吾郎(木浦佑三)だった。

その変わり果てた姿を観た小はなは、子守りどすか?と皮肉る。

幸田は恥ずかしそうに、そこの工場に行ってたんだが、怪我をして…と弁解する。

しかし、小はなは、幸田はんなら姉ちゃんを幸せにしてくれると思うたんですと責める。

うちのことは言われていいけど、うちの人のことは言わんといて!と雪枝が叱ると、お姉ちゃん、飲み屋の女将はんやないの?お茶屋を飛び出しといて、どこがどう違うの?!と小はなは反論する。

後ろで聞いていた健も、さすがに言い過ぎじゃないかと小はなを止めようとするが、興奮した小はなは、うちは、このお姉ちゃんのお陰で、高校へも行かず、嫌なお座敷に出されたんどす!もう二度と来ません!と言い残し、店を飛び出して行く。

健はその後を追って、今すぐ戻って仲直りして来いよと小はなに勧めるが、小はなは、所詮大学生のボンボン、うちとは違います!と睨んで来たので、思わず健は小はなの頬を叩いてしまう。

翌日、自宅のガレージでいつものようにメンバーと練習をやっていた健だったが、考え事をしているせいかミスを連発する。

そんな運送店に「一力」のママ駒子がやって来る。

ちょうど学校帰りの和子に会ったので、お兄ちゃん、帰ってはる?と聞く。

和子から客だと知らされた健は、駒子を観て、良くここが分かりましたねと言いながら会う。

電話帳で調べさせてもらいましたと答えた駒子は、雪枝さんの所へ行かはったそうどすな?と聞いて来たので、もう連絡があったんですか!と健の方が驚く。

あんまり雪枝はんが可哀想なので、今日はほんまのことを言いに来たんどすと駒子は真剣な表情で言う。

話を聞き終えた健は、神妙な表情で小浜のアパートにやって来る。

君に大切な話があるんだと言ってやって来た健を迎えた小はなは、夕べのことを謝りに来たんどすか?…と無表情に聞き返す。

何故僕が謝るんだ?と健が戸惑うと、そやかてうちのことを叩いたりして…と小浜はすねている。

そんな小はなに、タバコを吸い出した健は、君の姉さんは君のためを思って家を出たんだよ。姉さんは今のお母さんの本当の子じゃないんだ。お母さんの姉さんの子なんだよ。だから、君に「菊の家」を継がせようと思って…。僕は君を殴って良かったと思ってる。旦那さんが怪我ばかりして今の仕事を始めるまで、姉さんは、水商売だけはしたくないと頑張っていたそうだよと伝える。

それを聞いた小はなは、自分の考えが間違っていたことに気づき、すぐに雪枝に会いに出かけることにする。

店に行くと、雪枝は二階で赤ん坊をあやしていた。

二階に上がって来た小はなは雪枝に、京都に帰って来ておくれやす。そして「菊の家」を次いでおくれやす。なにもかも聞いたわ…と伝える。

しかし雪枝は、うちにはこの子がいます。うちの人、今でも働き口探すため、大型免許取ると張り切って、今日も教習所に行ってるのや。うちは今のままで十分幸せ。うちに今までの5年間を無駄にさせる気か?と答える。

その雪枝がカズオと呼んだ赤ん坊を見た小はなは、うち、おばちゃんの小はなや。大きゅうなったら遊びに来てな。おおきに、お姉ちゃん!うち、京都帰って、家継ぎます。お母ちゃんに姉ちゃんはあんじょうやってると言うときます。孫がいると知ったら、どんなに嬉しがらはりますやろ。手紙の一本でも書いてやと雪枝に言うと、再び赤ん坊に向かい、あんたのお母ちゃんは、分かりの良いお母ちゃんやと話しかける。

そんな小はなに雪枝も、頑張ってねと声をかける。

小杉家では、その夜、亀太郎が三遊亭歌奴の出ているテレビを愉快そうに見ていた。

ガレージでは、決勝戦を前に、ヤング&フレッシュのメンバーたちが最後の練習をやっており、その演奏をバックに和子が踊っていた。

そこにやって来た小はなは、健さん、行ってきました、お姉ちゃんと仲直りしてきましたと報告する。

そして、うち、京都に帰って、店継ぎますと言い出したので、メンバーたちは、せっかく東京に出て来たのに、又、京都に戻るなんて…と驚き呆れる。

しかし小はなは、祇園の中かて、うちの求める自由はありますやろと言う。

それを聞いていた和子までもが、私たちだって、やりたくもない勉強をやらなくちゃ行けないし、サラリーマンだってやりたくない仕事をやるしかない。結局、みんな、何かしらに縛られているのよ等と生意気なことを言い出す。

小はなは、うち、1週間楽しくやれました。お願いがあります。テレビに出してくださいとメンバーたちに頼む。

すると、健が、はなちゃん…と言いながら、今まで持っていた簪を出してみせる。

トラックの中で拾ったんだと聞いた小はなは、良かった!なくなった思うてたので、駒子姉さんが新しいのくれはったんですと笑顔になる。

簪を渡しながら微笑む健と受け取った小はなは笑顔で見つめ合う。

そんな2人を観ていた浩が、一曲やろうか!と声をかける。

メンバーたちは演奏を始め、小はなもその曲にリズムを合わせる。

舞妓姿の小はなとヤング&フレッシュの面々は、テレビの決勝戦で「東京ナイト」を歌っていた。

京都の「菊の家」では、キクに、慌てた様子の芸妓がテレビをつけとくなはれ!と声をかけていた。

テレビをつけてみると、家出をしている小はなが歌っている姿が映し出されているではないか。

雪枝や駒子も沢田美知子も、それぞれの白黒テレビで、小はなとヤング&フレッシュの歌を聴いていた。

収録が終わった後、小はなは舞妓姿のまま新幹線に乗って京都に帰っていた。

健たちメンバーは、地下鉄銀座駅から地上に出て来ていた。

バカだよ、本当のバカだよ。水槽の金魚は、水槽の中でしか生きられないんだよ。全くバカだよ!と健や浩たちは、去って行った小はなのことを思い出しながらぼやき合っていた。

健も寂し気だった。

しかし、小はなの方は、迷いの吹っ切れたきりっとした表情で前を見つめ、暗い窓に目をやる。

そこには、健たちと過ごした楽しかった東京の思い出が浮かび上がっていた。

その夜も、銀座はまばゆいネオンで光り輝いていた。

ジャンルとしては「GS(グループサウンズ)映画」の一種だと思うが、この映画の主役は「ヤング&フレッシュ」ではなく、美しさの絶頂期だった和泉雅子の方であり、タイトルバックで子鹿のように軽やかに踊っている彼女のシルエットを見た瞬間から胸躍る音楽映画になっている。

ティーン向けの音楽映画だけに、シンプルな夢物語風の色調が強く、リアリティのようなものは弱い。

冒頭、置屋から家出するヒロインが、何故か舞妓姿のままと言うのも奇妙と言えば奇妙なのだが、それも、後半、東京で舞妓姿で歌ったり踊ったりする見せ場を作るため…としか言いようがない。

同様に、ヤング&フレッシュの面々と会った後、悠々と東京見物等をして廻るのも、映画としての観光案内的な意味合いに加え、駒子のいる「一力(いちりき)」と言う店と出会うための仕掛けだろう。

展開もどうということはない良くあるパターンだが、それはこの種の音楽映画のお約束と行った所だろう。

テレビの人気特撮ドラマ「怪奇大作戦」(1968)や、同じGS映画「ザ・タイガース 世界はボクらを待っている」(1968)等にも出演していた小橋玲子が山内賢の妹役で出ていたり、三遊亭歌奴(現:三遊亭圓歌)や金原亭馬の助と言った当時の人気落語家が登場しているのも見所だろう。

特に、三遊亭歌奴の方は、劇中のテレビの中で、当時の人気ネタだった「授業中」の一部を披露している。

テレビと言えば、冒頭のテレビの司会者として三国一朗までちらり姿を見せているのも懐かしい。

「亜麻色の髪の乙女」のヒットで知られ、松竹映画等に出ていたビリッジシンガースも登場している。

当時の日活らしく、タイアップ企業も盛りだくさんで、UCCコーヒーなどはこの時代からあったのかと驚かされる。

とにもかくにもこの作品、絶頂期の和泉雅子の美しさ、愛らしさを愛でる映画と言うしかないと思う。

リアルタイムに日活映画を観ていた世代ではないので、和泉雅子も、子供時代は歌謡番組等で「二人の銀座」を歌っているのをかすかに覚えていたくらいなのだが、最近、古い日活映画を良く観るようになってから、改めてその美貌に魅了された。

この作品はカラーでもあるし、和泉雅子の出演シーンも多く、彼女の可愛らしさを観るには最高の作品である。

屈託のない性格がそのまま表情の明るさに出ており、その笑顔や姿を観ているだけで心が癒されるような気がする、希有な女優さんである。

主題歌の「東京ナイト」も、ベンチャーズらしいアップテンポの曲であり、心躍る名曲だと感じる。