TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

お笑い三人組

NHK人気公開生番組(?)の映画化だが、52分の中編と言う事もあり、残念ながら、悪賢い子供相手のドタバタと言う良くあるパターンを使っている割にアイデア不足で、期待はずれの結果になっている。

特に笑えるような場面がない割に、最後は平凡な人情話になっているのも物足りない。

メンバーは、主役3人だけがテレビ版と同じなだけで、後のレギュラー陣は別人が演じている。

3人の職業もTV版と違っているようで、確かテレビでは、六さんはクリーニング屋、金ちゃんはラーメン屋だったような記憶がある。(ネットで調べてみた所、どうやらこの番組、最初はラジオドラマだったようで、この映画版は、その時の設定をベースにしている模様)

楠トシエ、桜京美、武智豊子と言ったテレビ版での生きの良いコメディエンヌがいないのが致命的で、主役の3人は、講談師、落語家、物まね芸人の人たちであり、お笑いと言うほどアドリブで笑いが取れるタイプの人たちではない。

六ちゃんと楠トシエが恋人設定で、互いの名を呼び合い「う〜!」などと顔を見合わせて微笑みあうギャグなども、この映画ではないので、脚本で笑わせないとどうしようもないはずなのだが、映画版ならではの練り込んだアイデアのようなものがほとんどないのが辛い。

一応、笑いを意図したようなアイデアは詰め込まれているのだが、どれも凡庸で古くさい印象。

そんな彼ら3人をサポートする力量がある喜劇人もいないのでは、笑いが起きようはずがない。

結局、人気者3人組をそろえただけと言った映画になってしまっている。

TVでお馴染みのテーマソングを使ってないのも物足りない部分で、映画版オリジナルの歌のようなものを披露しているが、物語自体があまり面白くないので、音楽も耳慣れないだけ。(ひょっとしたら、ラジオ版の方の音楽なのかもしれないが)

せいぜい、ゲストでちらり登場している小沢昭一、西村晃、柳沢真一と言った面々や、南極の樺太犬などと言う「南極物語」の元ネタとなった時事ネタが珍しいくらいだろうか?

仮に、低予算の穴埋め企画のようなものだったとしても、もう少し工夫が欲しかった気がする

日活と言えば、ナンセンス喜劇の伝統がある会社だけに、余計にこの作品の不完全燃焼振りには不満が残った。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1958年、日活、名和青朗原案、鈴樹三千夫脚本、吉村廉監督作品。

タイトル

町の様子を描いたイラストを背景にキャスト、スタッフロール(音楽はTV版とは無関係)

アマカラ横町の人気者3人組保険外交員の今井良夫(一竜斎貞鳳)、パン屋「ニコニコ堂」の六さん(江戸家猫八)、松本酒店の松本金助(三遊亭小金馬)は、ある日、地元の警察署に呼ばれる。

「遺失物係」の前に来た3人は、物珍しそうに遺失物置き場を覗き込み、アヒルがいるわ!ありゃお骨だろ?ネギまであるなどとはしゃいでいたが、遺失物係係員(加原武門)から、あなた方に渡したいもの0がある。贈り物だよと言われ、大きな麻袋を渡される。

何だか動いてますねと3人は驚きながらも、生き物だよと聞くと、町子ちゃんと俺たち4人で分けようぜなどと浮き浮きしながら、机の上に袋を乗せ、結び口を開けると、中から出て来たのは男の子だった。

こんなものいりませんよ!と驚いた3人に、机の上に立ち上がった子供は、はい!と言いながら手紙を差し出す。

手紙には「謹啓 この子は伊部紋太(藤田安男)と言い、さる財閥の御曹司です。人情篤志家のあなた方にしばらく預かっていただきたい。いずれ十二分のお礼を差し上げるつもりでおります。伊部家執事」と書かれてあり、「いずれ十二分のお礼を差し上げるつもりでおります」の部分を読んだ3人は急に喜び出し、おぼっちゃま!などと呼び出し、嬉しそうに子供を連れて帰りかけるが、良夫は仕事カバンを忘れて行こうとし、係員から声をかけられ渡されるほどの舞い上がりぶりだった。

帰り道、3人は、お礼ってどのくらいもらえるんだろう?100円くらいくれるかな?万はくれるだろうなどとあれこれ金額を予想しあうが、当の紋太は、おじちゃんたち頭悪いね、その計算の答えは10万円じゃないかなどと、なかなか頭が良い所を見せる。

そんな紋太をおんぶしたり、ダッコしたりしながら横町に近づいた時、御曹司にしてはちょっとなりが汚くないか?と紋太の服のことに気づいた3人、金儲けの為には多少は金を出さないと行けないなと話し合うが、3人揃って持ち合わせがない。

じゃあ、これ使おうか?と言い出した六さんが叩いたのは、六さんが持ってあげていた良夫のカバンだったので、それは今日集金して来たばかりの保険の借り金じゃないか!と良夫は慌てる。

アマカラ横町には、チンドン屋がビラを撒いており、にぎわいを見せていた。

今川焼の店「ほがらか」に紋太を連れて来た3人は、その子、どうしたの?と青木町子(稲垣美穂子)に聞かれたので、3人が同時に説明し始めるが、訳が分からないので、僕が説明するよと言い出した紋太自身が、このおじちゃんたちが僕を預かることになったのと適切に教える。

3人、どんな順番でこの子を預かるの?と町子が聞くと、良夫は、背の順にしましょうと言い出し、六さんは年の順と言い、金ちゃんは顔の悪い順にしようなどとバラバラなことを言い出したので、紋太がジャンケンで決めれば良いじゃないかと、又しても適切な指示を出す。

町子は、本当のお父さんと思って、うんと甘えるのよと紋太に言い聞かす。

ジャンケンで最初のお父さん役になったのは良夫だったので、先にそれぞれの店に帰った金ちゃんと六さんは、酒屋の婆さん(田中筆子)と、パン屋の主人(小泉郁之助)と女将(谷川玲子)に、子供を預かることになったと報告、許しを得ようとする。

ニコニコ堂の主人夫婦は、すでに5人の子持ちだったので、1人増えたってどうってことないと快諾してくれたが、松本酒店の婆さんの方は、金になると言う話には乗りかけるが、子供を預かると聞くと、子供は絶対いけません!ともう反対する。

自分のアパートに紋太を連れ帰っていた良夫は、得意の講談で「猿カニ合戦」を聞かせていたが、おじちゃん、良くしゃべるねと紋太は感心しただけで、つまんないよと辛辣な反応を示す。

そこに六さんがやって来た「ニコトクパン」を持って来たと差し出す。

何のことだい?と良夫が聞くと、「ニコニコ堂のお徳用パン」を縮めた言葉だと六さんは説明し、お前なんか、朝飯抜いて、昼飯抜いて、夜は梅干しか、たまにメザシくらいしか食わねえじゃないかと良夫の貧しい食生活を暴く。

2人が口喧嘩を始めると、うるさいから外でやってよと紋太は言い出し、2人は素直に、部屋の前の廊下に出ると、仕方なく喧嘩のまねごとを始める。

そこにやって来たのが金ちゃんで、やはり店から持って来たサイダーや、ジュース、ミカンの缶詰などを紋太の前に披露する。

それに気づいた六さんと良夫が部屋に戻って来て、又、パンを勧めたりし始めたので、良夫はもう眠たいでしょう?さ、もう寝ましょうと紋太に言い聞かす。

結局、六さんと金ちゃんは、ぶつぶつ文句を言いあいながら帰って行く。

1人布団に寝かされていた紋太は、父ちゃんどこに寝るの?一緒に寝ようよ。無理すんなよなどと良夫に話しかけていた時、部屋の外で物音が聞こえたので、誰か来てるんじゃないの?と言うと、部屋の外で、まだ帰らないで中の様子をうかがっていた六さんが、金ちゃんの後ろで猫の真似をして見せる。

猫じゃなくて、犬でしょう?と良夫が言うと、急に六さんは犬の鳴きまねをする。

ブタかしら?と良夫が言うと、金ちゃんも加わって2人でブタの鳴き声の真似、馬かな?ゴリラかな?と、良夫がからかうようにリクエストすると、部屋の前の金ちゃんと六さんが正直に真似をするので、どこかの部屋から水をかけられてしまい、2人は慌てて退散する。

翌朝、再び良夫のアパート前に、互いの店の自転車でやって来た六さんはほっぺたに、金ちゃんはおでこにそれぞれ絆創膏を貼っていた。

良夫はと言えば、紋太がオネショをした布団をアパート前の物干竿に干していたので、金ちゃんと六さんからからかわれる。

私がする訳ないでしょうと良夫が呆れている前で、当の紋太は、一緒に寝たから、どっちがやったか分からないよなどととぼける。

そんな紋太の手を引き、今日まで私がお父さんだよと言いながらアパートの二階に上がって行く良夫の姿を観ていた金ちゃんと六さんは、何となく名残惜しそうに自転車に乗って帰ろうとするが、すぐに、互いの自転車を間違っていたことに気づき、笑いながら取りかえ、その後も、帰り道を間違えるなど、アパートの前から立ち去り難い様子だった。

その日、良夫は、保険の契約をするとある美容室に紋太を連れてやって来る。

6年間で2つしか契約をまとめた事がないと変な自慢をする正直な良夫と愛想が良い紋太に気を良くした店のマダムは、良夫が取り出した契約書に名前を書き込み始めるが、そんな中、お茶を出された紋太は、お菓子は出さないの?と良夫に聞いたり、退屈してソファを立ち上がると、美容体操をしているお姉さんの部屋を覗いて、まだ早いよ、子供のくせに!と叱られると、僕だって男だぜ!と憎まれ口を聞くし、ドライヤーを勝手にいじって風を噴き出させ、粉を散乱させたり、パーマの温度調整スイッチを勝手に上げ、急に頭が熱くなったお客さんに悲鳴を上げさせたりして、店内が大騒動になったので、マダムは、このお客さん、どうするのよ!などと激怒し、書きかけていた契約書をその場で破いてしまう。

紋太の為に仕事をパーにした良夫は、その足で紋太を連れ、一日早く六さんにバトンタッチしに行く。

六さんから紹介された紋太を観た店の主人夫婦は、自分たちの子供と一緒に遊びに行かせる。

その後、今川焼の店「ほがらか」にしょぼんとしてやって来た良夫は、そこにいた金ちゃんに、紋太を六さんに渡して来たと説明する。

六さんはその頃、「子供の教育」と言う本をパン屋で読んでいた。

紋太は、パンや夫婦の子供たちと一緒に公園に来ていたが、ブランコは他の子が占領していたので、紋太が前に出て、ブランコの子に声をかける。

その後、「ニコニコ堂」の勝手口に、泣いた子供を連れた母親がやって来て、六さんと言うのはどなたです?お宅の子供にうちの子が殴られてこんなになったんですよ。私は個々のお得意さんなんですよと文句を言って来たので、六さんは慌てて出来立てのパンを手渡して勘弁してもらうと、坊ちゃんは御曹司の割に強いですねなどと主人に苦笑して見せる。

すると、今度は「早川組」と書かれた法被を着た職人風の親父が、服をぼろぼろにされた子供を連れて来て、お前の所の子供にやられた。二度とこんなのことしやがったら、この家ぶち壊すぞ!と息巻いたので、又パンを渡して帰ってもらう。

六さんは又、紋太坊ちゃんは強いですね〜と主人に言う。

すると、又、先ほどの服をぼろぼろにされた子供を連れた母親がやって来て、うちの父ちゃんが何て言ったか知りませんが、私は許しませんよなどと又文句を言うので、パンを渡してお引き取りを願う。

すると、すぐに、ぼろぼろの服のこの兄貴のような青年が着て、うちの親父やお袋が何て言ったかしらないが、六ってのはおめえか!表に出ろ!と凄んだので、六は慌ててパンをたくさん渡して帰ってもらう。

そこまで我慢して来た主人だったが、さすがに、六さん、これじゃ、うちは破産だよ…と苦情を言う。

何とかなりませんか…とへこんだ六さんは、店にやって来た金ちゃんを又苦情の客と思い込み、パンを渡して返そうとする。

結局、これ以上紋太の世話は無理と判断した六さんから、次のお父さん役に頼まれた金ちゃんは、公演のブランコに乗っていた紋太の所に来て、今度は自分の番だと教える。

一方、「ほがらか」の店にやって来た六さんはしょんぼりしていた。

婆さんに見つからないように、酒屋の倉庫で紋太に落語を聞かせていた金ちゃんだったが、追いかけていた泥棒がいつの間にか後ろになっていたと話すと、それじゃあ泥棒捕まらないじゃないか!と紋太は矛盾を指摘して来る。

そこに、婆さんが来たので、慌てて紋太を隠した金ちゃんは、渡辺さんのお屋敷にビール1ケース届けておくれと頼まれ、やむを得ず、坊ちゃん、お父ちゃん、お使いに行きますからね。大人しくしといてね…と言い聞かせ、蔵の中に紋太を隠すと配達に向かう。

送り出す紋太は、お土産買って来てねと、無邪気におねだりをする。

配達途中、渡辺家のお手伝いさんカヨに会った金ちゃんは、持って来たビールのケースを預けると、カヨが持っていた駕篭の中に自分のおやつとして持っていた菓子をもらって帰る。

その頃、酒屋には、ミソを100匁買いに来た子供連れの奥さんの相手を婆さんがやっていたが、帰って来て蔵の中を除き込んだ金ちゃんは、そこに置いてある一升瓶の酒を勝手に開けて、紋太が飲んでいたことに気づき。坊ちゃん、大変なことをしてしまいましたねと困惑する。

しかし、紋太はすっかり良い気持ちになっており、良いことをしえてあげようか?僕本当は孤児なんだ。本当のお父ちゃん死んじゃったんだ。お姉ちゃんがいるんだけど、用事で遠くに行っちゃったから、僕は付いて行けなくて、それでおじさんが騙したんだよと言い出す。

紋太が持っていた姉の写真を見せられた金ちゃんは、すっかりあの遺失物係員に騙されたことを悟り、悔しさのあまり、一升瓶を納屋の前の井戸の前に持って行くと、洗い場に投げつけて割り始める。

それを、訳が分からない婆さんと紋太があっけに取られて観ていた。

事情を聞いた六さんと良夫と一緒に警察署に紋太を戻しに行った金ちゃんだったが、係員は、最初あんたは手紙を読んで喜んで子供を連れて行ったじゃないか?それを孤児だと分かると返したいと言うのは、お金が目的だったと思っていいんだな?と嫌味を言う。

そして、可哀想な子なんで、姐さんが帰って来るまで可愛がってくれ。何とか、うちの署長にも話をしておくからと係員が言うので、仕方なく3人は又、紋太を連れて警察署を後にする。

しかし、今度は孤児だと分かったので、もう3人とも、紋太に優しい言葉や態度を取ることはなかった。

抱いてよとねだる紋太を無視して帰っていた3人だったが、前から警官が来ると、慌てて愛想笑いを浮かべると、紋太を3人で抱いてやるのだった。

やがて横町に近づくにつれ、おい、どうしよう?このままじゃ婆さんに叱られるよ…と金ちゃんは愚痴る。

その時、良夫が、僕に任せろと言い出す。

良夫は紋太を競馬場に連れて行く。

レース中の競馬場の様子を観た紋太は、子供はうるさいって言うけど、大人もうるさいねなどと珍しそうに場内を眺める。

その後、表に出た良夫は1人だった。

その時、「アマカラ横町の良夫様、お子様がお待ちですので、至急受付までお越し下さい」と言うアナウンスが聞こえて来るが、それを無視して帰ろうとする。

しかし、二度目のアナウンスが聞こえた後、結局、良夫は紋太を連れて帰っていた。

次いで、紋太を託された六さんは、「京王遊園」に連れて来るが、紋太がメリーゴーランドや子供用の汽車、ボートや回転飛行機に乗りたがっても、それはダメだと言う。

結局、六さんが許可したのは観覧車だった。

観覧車に紋太を1人で乗せた六さんは、いつまでも乗って良いんだよ。ず〜っと乗ってろよ。向うを見ていいよなどと話しかけ、紋太が後ろを向くと、紋太、許せよ!と呟きながら一目散に逃げ帰ろうとする。

何とか、横町の「ニコニコ堂」前まで戻って来た六さんだったが、横に停まったタクシーの運転手が、820円頂きますなどと声をかけて来たので驚く。

意味が分からずタクシーの後部座席に目をやると、運転手が開けたドアの奥に紋太が座っていた。

しっかりした坊ちゃんですねと運転手に感心された六さんだった。

続いて紋太を託された金ちゃんは、お弁当箱を持って、店の自転車に乗せて、紋太を河原に連れて来る。

そこで降ろすと、おじちゃん、捨てるのにちょうど良い場所だねなどと紋太が言い出したので、知ってたのか…と焦った金ちゃんだったが、これで3度目だと紋太は平然と答える。

その頃、「まごころ」の店内では、六さんと良夫が、可哀想なことをしたなと頭を寄せて話し合っていた。

金ちゃんは臆病な男だよなとそんな2人から声をかけられた町子は、ああ見えて、何でも思い切ってすぱっとやる人よと答える。

その金ちゃんと紋太は、河原に座って、「蛍の光」を一緒に歌っていた。

紋太は、もう1度歌おうと言う金ちゃんに、もう36階も歌ったから飽きたよと答える。

そんな紋太に、10日分の食料だと言って、金ちゃんが2つの弁当箱を渡すと、何だか、何だか南極の樺太犬みたいだねと言い出した紋太は、犬が鳴いたら、僕のことを思い出してねなどと泣かせることを言って来たかと思うと、さすがにしんみりした金ちゃんに、おじさん、ドライに行こうよと励ます。

紋太、お前先に行けよと声をかけた金ちゃんは、じゃあ、僕行くよと言って紋太が立ち去ろうとすると、自分も立ち上がって反対方向へ向かおうとした時、足がもつれて転んでしまう。

それに気づいた紋太が、痛くなかった回?と言いながら助け起こしに戻って来ると、痛くなかったよ、さよなら!と言葉をかけ、土手の上の自転車の乗り、ペダルを夢中で漕ぎ出す。

しかし、紋太が、おじちゃん!スタンドが立ってるよ!と声をかけると、分かってるよ!早く行け!とじれたように答える。

その言葉を聞いた紋太が、さようなら〜と言いながら川の方へ姿を消すと、驚いた金ちゃんは、あっ!紋太〜!と叫びながら後を追い始める。

「まごころ」では、徳さんと良夫から事情を聞いた町子が、何も捨てることはないでしょう!人でなしよ!可哀想なのは坊やよ!と言って泣き出す。

さすがに気がとがめた六さんと良夫が、探しに行くと言って店を出ようとした時、紋太は1人で帰って来たので、出迎えた町子は、もう大丈夫よと店の中に入れる。

金ちゃんは?と不思議がった六さんと良夫の前に、3人のチンピラ風の男(小沢昭一、西村晃、柳沢真一)に抱えられた金ちゃんが店に入って来る。

六さんと良夫が送ってもらった礼を言うと、何か形にしてもらおうじゃないか?と3人は凄んで来たので、良夫たちが怯えていると、警察の遺失物係員が店に入って来る。

3人のチンピラは、俺たちは武蔵の国は多摩川の生まれで…などと威張っていたが、背後に大きな警官が立っていることに気づくと、慌てて逃げ帰る。

遺失物係員は、大変なお知らせがあります。この子にはアメリカに行っていたおじいさんがいたらしく、その人が飛行機事故で亡くなったので、100万ドルの遺産をこの子がもらったことになりますと言うではないか。

それを聞いた3人は、今度こそ本当の御曹司だ!と大喜びする。

その夜、良夫、六さん、金ちゃんの3人は、お祝いに、皿回しの芸などを紋太に披露していた。

「南米のコーヒー王が飛行機事故で死亡し、アマカラ横町の3人が世話をしていた子供に遺産が舞い込んだ」という記事が新聞に載ると、それ公園のブランコに乗ってを読んでいた2人の男が、巧いことを考えたと話し合う。

一方、良夫や六さん、金ちゃんの前には、自分が紋太の母親と名乗る女たちが続々と名乗りを上げて来る。

あるものは、今朝九州から出て来たと言い、あるものは北海道から飛行機で来たと言い、あげくの果てには、どう見てもおばあちゃんのような年齢の女まで母親だと言って名乗り出て来る始末。

そんな中、「まごころ」にやって来た太った男が、紋太をTVに出したいと町子に相談に来る。

町子は戸惑うが、太った男は言葉巧みに紋太を連れて行ってしまう。

公園で待ち受けていた太った男の兄貴は、紋太の姿を確認すると、今度は俺の番だと行って出かけて行く。

「まごころ」の店の前には「伊部紋太の母親審査会場」と書かれた看板が立てかけてあった。

そこに、それぞれの所に来た母親を名乗る女たちを連れて来た良夫、六さん、金ちゃん、そして町子の4人が審査員となり、1人1人から話を聞き、本当の母親を見つけようとしていたのである。

その頃、公園の木に縛られかけていた紋太は、怯えるでもなく、遺産もらえるいい方法教えてあげようか?と太った男に話しかける。

父親になるんだよと紋太が言うと、もう、お前の父ちゃん死んでるじゃないかと太った男が聞くと、生かすんだよ!と紋太は告げる。

母親審査中の「まごころ」に乗り込んで来た兄貴は、紋太を誘拐したので遺産を寄越せと、審査していた3人に迫るが、そう言えば、遺産はどこにあるんだろう?アメリカだろう?アメリカのどこにあるんだ?などと3人も首を傾げる。

その脅迫を横で聞いていた母親を名乗る女たちは、遺産を独り占めするなんて酷いわ!と言い出し、全員で、その兄貴を袋叩きにし始める。

そこに紋太を連れて来たのが太った男で、紋太は冷静に、こっちが兄貴で、こっちが子分と2人の悪党を教える。

2人の悪党は、その場にいた女たちに捕まっていたが、そんな「まごころ」を覗き込んだのは、紋太の姉伊部サチ子(天路圭子)だった。

店の中にいた母親を名乗る女たちの中、一番老婆が、もう私は疲れたから帰るよ。そのついでに、この2人を警察に連れて行くと言い、縛り上げた兄貴とその子分を連れて店を出て行く。

サチ子の姿を観た紋太は、喜んで抱きつき、本物かい?と疑いぶかい目でサチ子を眺めていた六さんと良夫には、俺写真観たもん、本当だよと金ちゃんが保証する。

そんなサチ子に、この中から、本当の母親を探してくださいと良夫たちが言うと、この方たちは何か勘違いをなさっています。本当のこの子の母親は、一ヶ月ほど前、九州で亡くなったのですとサチ子は言う。

それを聞いた女たちは、私も母が亡くなった時は驚きましたよなどと訳の分からない言い訳をしながら、みんな店から出て行く。

昭和33年5月27日

前科36犯の凶悪犯を捕まえたことに対し、良夫、六さん、金ちゃんの3人は警察署長から感謝状と金一封を授与されることになる。

表彰状を渡す署長は、この前の方は、養老院に寄付しましたよなどと言うので、3人も仕方なく、じゃあ私たちも寄付で…と答えざるを得なくなり、金一封を手にすることすら出来なかった。

それでも、帰る3人組は、いつでもどこでもアッハッハ!ニコニコブツブツ…、誰でもニコニコ歌い出す〜♪と笑顔で歌うのだった。