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おトラさん大繁盛

人気マンガ原作のテレビドラマの映画化のシリーズ6本目で最終作でもある。

はっきり覚えていないが、主役の柳家金語楼を始め、テレビと映画の主要メンバーは、大体同じだったような気がする。

正月映画らしい内容になっており、藤村有弘や、由利徹、南利明、渥美清などのコメディアンたちがゲスト出演しているのが楽しい。

画面も、白黒ながらワイドになっているし、上映時間も長く、全体的にアイデアも盛りだくさんで、たっぷり楽しめる内容になっている。

それにしても、何故、脱線トリオの一角に渥美清さんが出ているのかちょっと不思議。

そもそも、脱線トリオは正式なトリオではなかったらしいが、八波むと志がこの作品に出ていないのが良く分からない。

キネ旬データによると、3人組の探偵の役名は、「由田(由利徹)」「南田(南利明)」に対し「八田」となっている所から、本来、八波がやる予定の役柄だったことがうかがえる。

1958年と言えば、トリオ人気が絶頂だった頃だと思うのに…、何かスケジュール的な問題でもあったのだろうか?

その八波むと志の穴を埋めているのが渥美さんで、この作品でも、後の寅さんを彷彿とさせるような啖呵売風のセリフが所々に出て来たりしている。

当時から、得意ネタと言うか、口癖のように馴染みの口調だったのかもしれない。

奇しくも、後の「寅さん」と「おトラさん」と言う二大人気キャラが、本作で共演していることになる。

ただ、残念ながら、両者が絡むシーンはない。

物語前半は、おトラさんのいる日野江家の向かいに越して来た図々しい踊りの家元を巡ってのドタバタと、正月の騒動が描かれている。

踊りの師匠を演じている藤間紫は、いつもながらの人を食ったような演技を見せてくれる。

後半は、おトラさんの仲間たちによる探偵ごっこと、田舎から上京して来た結婚相手の父親を巡るドタバタになる。

ベテラン小川虎之助が、特別編成の脱線トリオ相手にとぼけた芝居をしてみせる。

ところで、タイトルバックと劇中の「金語楼劇場」に登場する、人形を使った「小人劇場」と言う見せ物は、実際当時あったものなのだろうか?

手が別人ということで「二人羽織」的な面白さを狙った出し物だったのかもしれない。

「ゴジラ」の河内桃子が出ていたり、原作マンガ家西川辰美さんや、当時の人気野球解説者小西得郎さん、そして、このシリーズには良く出て来る天津敏の登場が嬉しかったりするが、そんな中でただ1人、フラフープをしながら歌を歌っている女性歌手が誰なのか分からないのが残念だった。

ところで、ちょっと気になるのは、この翌年の1959年から日活で始まる、若水ヤエコ主演の「女中のおヤエさんシリーズ」は、この「おトラさんシリーズ」に出て来る、同じ若水ヤエコ演じる人気女中、お八重をヒントにしたものなのだろうか?

若干、設定やキャラクターは違っており、日活版の「おヤエさん」の方が、少しペーソスに重きを置いたような作りになっているが、東北なまりの純朴で明るい女中さんと言う役柄は同じである。

若水ヤエコはこの作品でも大活躍で、探偵ごっこと言う設定で、足の悪いイ○リのコ○キ…と言う、今では到底放映できないような役柄を演じているのも時代を感じさせる。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1958年、東京映画、西川辰美原案、有崎勉原作、新井一脚色、小田基義監督作品。

台所で、両手で座布団を回していたおトラ(柳家金語楼)さんが、主題歌に合わせ、目の前に置かれていた箒、ハタキ、桶、ザルなどを持ってどじょうすくいの真似をして見せる。

タイトル

黒地に、役者たちの顔が小さな人形の上に突き出して「2頭身キャラ」のようになって並んだユーモラスな絵柄の上に、キャスト、スタッフロール

監督名の部分は、キングコングのように東京タワーにしがみついた人形に、おトラさんの顔が乗っている絵柄。

クリーニング屋の平さん(平凡太郎)が、テレビのアンテナを持って屋根の上に登っていると、下から、その家の主人らしき女性が、アンテナはまっすぐ立てて頂戴よ!と注文を出している。

魚屋の魚金(大辻三郎)が漬け物樽を転がしながら家の中に運び込んでいると、八百屋さん!それは食べ物なんだから、ちゃんと持ってよ!と口うるさく女性が命じる。

山崎屋(谷村昌彦)にはトイレ掃除を、豆腐屋(田中章三)には草むしりをその女性が当然のように頼む。

その家に前を通りかかった女中のお豆(小桜京子)は、屋根から降りようとしたら、知らない間に梯子が外されていたため、軒からぶら下がっていた平さんの姿を目撃し、近くに集まっていた女中仲間たちに、角に何かわけの分かんないのが引っ越して来て…と、知らせに来る。

その家に近所の御用聞きが全員集中して売り込もうとしていたので、年の瀬のこの時期に、他の家には全く御用聞きが来なくなっていたのだった。

お八重(若水ヤエ子)もやって来て、これは又、戦争でも始まるのかも知れない等と無責任なことを言い出したので、恐がりのおタケは泣き出してしまう始末。

噂に出ていたその家の主人藤枝(藤間紫)は、門前に「藤枝流」と書かれた大きな看板を取り付けさせていた。

そんな藤枝家の前に、「ホットドッグ」のハワイ軒と書かれたリヤカーを曳きながら新顔の売り子が近づいて来たので、御用聞きのためのおやつに買いましょうか?と弟子が聞くと、もったいないわよと顔をしかめた藤枝は、集まっていた数軒の牛乳屋からサービス用の牛乳を受け取ると、それをおやつ代わりに飲ませなさいと弟子に渡す。

お八重やおマメと共に、おトラさんが藤枝だけの前にやって来ると、屋根にぶら下がった平さんが、クリーニングの御用は?と聞いて来る。

その後、おトラさんの家に、近所の女中仲間と手伝いを終えた御用聞き、そして、長さんの店を預かったと言う、トラブル好きの新顔のホットドッグ屋、通称、割込みの弘ちゃん(藤村有弘)たちが集まって来る。

弘ちゃんは、御用聞きたちが新しい家に集中したのも、商売熱心の現れなんだから、許してやってくれ…と女中たちをなだめる。

それでも、ぶつぶつ女中たちが文句を言うと、又、パソってかたに…などと呆れながら、弘ちゃんは、女中たちにサービスとしてホットドッグ用のパンを1個ずつ渡して行く。

すると、お八重も、二大政党の激突も良くないからね~…などと分かったように話に割り込んで来ると、私たちの家でも、あの家と同じようなサービスしてもらわないとね…と御用聞きたちに笑いかける。

弘ちゃんは、お手伝いしましょうと言い出し、おトラさんは、平さんに炭切りをやってもらうことにする。

渋々、庭先で炭を切り始めた平さんだったが、切り終えた炭を、側の炭俵に放り込むと、すぐに外へ飛び出して来る。

何度やっても、俵の中から炭が飛び出して来るので、不思議に思った平さんが俵の方に注目すると、中からかくれんぼうをしていた隣の女の子(上条美佐保)が立ち上がったので、びっくりし太平さんは、その場にひっくり返ってしまう。

夕方になり、外では、「もういくつ寝るとお正月~♪」と歌いながら、子供たちが家に帰っていた。

そんな中、おトラさんが住む日野江家では、長女のトリ江(川田孝子)が帰って来て、台所で夕ご飯の仕度をしていたおトラさんの作ったおかずをつまみ食いする。

おトラさんは呆れて、そんなことをしているとお嫁さんに行けませんよと注意するが、まだまだ結婚なんかしないわ。それに私、断然、恋愛結婚よなどと言い出したので、それを聞いたおトラさんは、なんて情けない…とがっかりするが、トリ江はそんなおトラさんを慰めるように、今は、仕事が恋人よ。クリスマス用の総合構成も褒められちゃったなどと報告する。

夕食の準備ができても、長男のタツオ(日吉としやす)が帰って来ないので、奥さんの馬子(水の也清美)が案じていたが、玄関が開く音が聞こえたので出てみると、それは会社から帰って来た主人の牛三(有島一郎)だった。

牛三は、まだタツオが帰っていないと聞くと、冬休みだと言うのに遊び歩いて…、もうみんな閉めてしまいなさいと命じる。

おトラさんと馬子は、厳し過ぎるんじゃないかと戸惑うが、牛三は玄関先に立ったまましかめっ面をしている。

そこに、人が近づいて来た気配がしたので、玄関が開いた途端、こら~!と牛三は怒鳴りつけるが、そこに立っていたのは、向かいに引っ越して来た藤枝の師匠だったので、凍り付いてしまう。

藤枝の師匠の方も、驚いたようだったが、挨拶代わりにと名刺を差し出して来る。

そこには、40-1714(しじゅう いないよ)と言うどこかで観たような電話番号が書かれていたので、牛三や馬子は首を傾げていたが、それ、家の電話番号じゃない!とトリ江が気づく。

藤枝の師匠は、笑顔で、お宅の電話を使わせてもらおうと思って…、電話がかかって来たら知らせに来てくださいと勝手なことを依頼して来る。

さらに、来週、新作発表会がございます。こちらはお手伝いさん以外で4人でしたわね…などと言いながらチケットを出したので、ただでもらえると思った馬子は喜ぶが、お1人500円の所を割り引いて300円、しめて1200円ですなどと、藤枝師匠はきっちり料金を請求して来る。

その時、裏の方から、助けてくれ~!と叫ぶタツオの声が聞こえて来たので、誘拐されているのでは?と言い出したおトラさんを先頭に、押っ取り刀で家族が家の外に出てみると、漬け物桶の中から声が聞こえるではないか。

蓋の上に置かれた漬物石を外して蓋を外してみると、中に隠れていたタツオがふらふらしながら出て来る。

どうやら、かくれんぼうをしている途中で、誰かが漬物石を置いてしまって出られなくなってしまったらしい。

いよいよ正月

日野江家には、お馴染みの小西さん(小西得郎)がやって来て、何と申しましょうか…、良いお正月ですねなどと言いながら、牛三に、持参して来た見合い写真を見せていた。

そこに、日本髪に結い上げたおトラさんがやって来たので、見合い写真うぃお小西さんが持って来てくれたよと牛三が言うと、急におトラさんが恥ずかしがったので、勘違いしていると気づいた牛三は、トリ江のだよと付け加える。

おトラさんは、でもお嬢様は恋愛結婚じゃなくちゃ嫌だっておっしゃってましたよと教える。

その時、凧が取れなくなっちゃったんだとタツオが呼びに来たので、おトラさんは外に出ることにする。

近くの空地では、仲間の女中たちが集まって、フラフープ大会をやって来た。

負けると、顔に墨を塗られると言うルールだった。

1人、「トラ、トラ、トラフープ♪」と歌いながらフラフープをやっている女の子が凄く巧かったので、おトラさんは自分が挑戦者になり、首にフラフープを引っ掛けて縦に回すと言う技で勝負する。

何はともあれ、良いお正月でしたねと言い残し、小西さんが帰って行った後、ごめん下さいと玄関で声がしたのでおトラさんが出てみると、和田(佐伯徹)と名乗る青年がトリ江さんはおられますかと聞いて来るが、和田は、お虎さんの顔に、墨でりっぱなヒゲが書いてあったので驚いてしまう。

応接間で、トリ江と会った和田は、僕びっくりしちゃった。いきなりひげが生えた女中さんが出て来たんで…と打ち明け、トリ江と笑いあう。

感じの良い人じゃない?と和田がおトラさんのことを褒めると、私が生まれる前から、お母さんがこの家にお嫁に来た時からいるのよとトリ江は教える。

一方、座敷の牛三は、小西さんと飲み過ぎてしまったらしく、テーブルに突っ伏して眠り込んでしまっていたので、馬子はおトラさんに、主人の代わりにご近所のお年始回りに行って来てろ頼む。

おトラさんは、羽織を着て早速ご近所廻りに出かけるが、行く先々で上がらせられ、お屠蘇を勧められるので、最初は遠慮していたが、今日はご主人の代理なんでしょう?と言われると断る訳にも行かず、一杯、二杯と受けてしまう。

最初の家では、料理自慢の主人(木田三千雄?)の手料理まで振る舞われ、熊本家では、絵の得意な主人(西川辰美)が、酔ってきたおトラさんの似顔絵を器用に描いてくれたりする。

日野江家ではタツオが、おトラはまだかい?と、なかなか帰って来ないおトラさんの事を噂していた。

その頃、おトラさんはすっかり酔いが廻っており、歌を歌う主人の前で愉快に踊ってみせていた。

その内、トリ江まで、遅いわね~…とぼやき始める。

そこに、すっかり泥酔したおトラさんが、まだ年始回りをしているつもりなのか、ごめん下さいませ~!と帰って来て、ほんのご挨拶だけにうかがいましたので、ここで結構ですなどと上り框の前でしゃべっていた。

その姿を観た牛三は、こりゃ、おトラさんじゃなくて、大トラさんだと嘆く。

そんな正月中、町内にホットドック屋の弘ちゃんが店を引いて来ると、警官の格好をしたり、泥棒風の格好をしたおかしな3人組が、獅子舞のまねごとをしながら、集まって来た近所の主婦や女中たちに対し、内外探偵社の宣伝をしていた。

それを目撃したおマメは、すぐさまおトラさんに知らせに行くが、おトラさんは、台所で座り込んで浮かない顔。

おマメが焼き芋を差し出して見るが、全く無反応だった。

今夜、何にしようね?と夕食の打ち合わせに来た馬子も、おトラさんの様子が変なので、牛三に相談に行くと、そっとしておいてやるんだねと言われる。

その後、トリ江が帰宅して来て、おトラさんの所に来ると、お嬢さん!と言うなり、いきなりおトラさんが泣き出してしまう。

あんまりでございます!男名前のこれは何でございますか?と言いながら、一通の手紙を差し出すと、トリ江は嬉しそうに、来てたのねと言いながら受け取って部屋に戻ってしまう。

そこに電話がかかって来たので、受話器を取ったおトラさんは、トリ江さんですか?そちらのお名前は?お名前をうかがわないとお取り次ぎできかねます!等と一方的に言って電話を切ってしまう。

その後、近くの神社で、小西さんの良い縁談も見向きもしません。どうか、お嬢様が誘惑させませんように!私はサツマイモだけでなく、里芋、ジャガイモ、とろろ芋、八頭、芋類は全部絶ちます!とお百度を踏んでいたおトラさんの姿を、おマメが目撃してしまう。

おマメはすぐに、仲間の女中や御用聞きたちにその事を知らせに行く。

みんなは、何とかおトラさんの力になれるよう自分たちも出来ないかと頭をひねり始めるが、その内、この前獅子舞をやっていた探偵を雇えば良いわ。結婚調査もやっているそうよと女中が言い出すが、お金どうするのよ?と弘ちゃんが反論する。

すると、おマメが、みんなであの探偵をやれば良いのよ!と言い出す。

シャーロック・ホームズねと、お八重も訛まじりに賛成し、弘ちゃんも、レッツラ・ゴーと参りましょう!とみんなに声をかける。

翌日、白いコートを着て変装した弘ちゃんは、外出していたトリ江の後を尾行していた。

トリ江は、和田と会うと、何か封筒を渡されるが、それを凝視していた弘ちゃんは、ペンキ塗り立ての郵便ポストに身を寄せたため、コートが汚れてしまったことに気づいて慌てる。

そして、気がついた時には、トリ江と和田の姿を見失っていた。

サンドイッチマンに扮した山崎屋と共に、旦那風の和服を着ていたクリーニング屋の平さんは、和田とトリ江の後を付けようとするが、気づかれそうになったので、やむなく、側の靴磨きの台に、下駄にも関わらず足を乗せて客の振りをする。

すると、靴磨きが白足袋の上に墨を塗り付け、こんなことじゃ探偵できないよと言って来たので、靴磨きも女中のおマメが化けたものだと分かる。

この2人も、気がついた時には、和田とトリ江を見失っていた。

魚金の三ちゃんは、蕎麦屋ので前に化けて、トリ江を尾行しようとするが、通行人にぶつかって、側をぶちまけてしまったので、振り返ったトリ江に、三ちゃんじゃない?と気づかれてしまう。

しかし、昔から蕎麦屋です!と必死にごまかそうとする三ちゃん。

探偵が巧く行かず、一旦、町内に戻って来た弘ちゃんは、200円も出して借りたコートがペンキで汚れたので、必死にベンジンで落としていた。

そんな中、お八重がこれからは科学調査の時代よ、和田と言う青年のモンタージュ写真を作りましょうと言い出し、他の女中に雑誌を取り出させる。

まず、顔の輪郭は?と聞かれた弘ちゃんは、宝田明で良いんじゃない?と言うので、その写真を紙に貼る。

続いて、眼の部分はゲーリー・クーパー、鼻は金田、口元は長嶋、顎は朝潮などと、人気者たちを集め、切り貼りしてみるが、出来上がったモンタージュ写真は、似ても似つかない珍妙な顔だった。

こんな顔だったかな~?と、今日、和田を尾行した連中は首を傾げるが、お八重は、あんたたちの眼の記憶力が弱いのよとバカにする。

そのモンタージュを持って、大阪から来た女学生に化け、翌日、街頭に立った女中3人だったが、和田本人が、落ちていたハンカチを拾い上げ、これはあなたのでは?誰か探しているんですか?と声をかけて来ても、この人を探しているんですと、似ても似つかない似顔絵を見せられたので、和田は首を傾げながら去って行くし、女中3人も、それを和田だと気づかないままだった。

そんな中、イ○リに化けていたお八重は、すぐ側で、トリ江に近づいて来た和田が、僕、結婚しようと思うんですと言うのを聞き、立ち上がって、イ○リ車を引きずりながら、2人の後を付け始める。

しかし、すぐに2人は喫茶店「ラベール」に入ったので、お八重も後から入ろうとするが、汚い格好に気づいた店のボーイに追い出されてしまう。

その店内にも、ウエイトレスに化けて潜入していたおタケがいたが、近眼なので、客の顔が良く見えず、大きな虫眼鏡を差し出して客の顔を覗き込んでいため、叱られ、又しても泣き出す。

そんな中、男客に化けて店内に座っていたおマメが、新聞を読む振りをしながら、しっかりトリ江と和田のテーブルの様子を監視していた。

その頃、日野江家にいたおトラさんは、タツオが、今、家の前にコ○キがうろうろしているよと言いつけに来たので、ボールに水を張って、庭に侵入して来たそのコ○キにぶっかけてやる。

しかし、イ○リ車の中にひっくり返ったのは、コ○キに化けていたお八重で、隣のお八重よ!トリ江お嬢さんが駆け落ちするのよ!とわめいたので、それを聞いたおトラさんは、大変!と慌てる。

その頃、「ラベール」のテーブルで新聞を読む振りをしていたおマメは、タバコの火が新聞紙に引火して萌え出したので慌てて消そうとする。

すると、その騒ぎに気づいたトリ江が、男装していたおマメを、簡単に見破ってしまう。

そこに駆けつけて来たおトラさんは、駆け落ちするのなら、おトラが何とかします!とトリ江に訴えたので、驚いたトリ江は、この人と結婚するのは、私じゃなくて、友達の妙子さんよと説明し、そこに、当の猪原妙子(河内桃子)がやって来たので、おトラさんたちは勘違いしていたことに気づき、まあ!すみませんでした!すっかりお嬢さんのことだと思って…と謝る。

しかし、家に帰って来たトリ江は、そんなにみんなが自分のことを気にかけてくれていると知って嬉しかったのか、私が結婚するときは、何でも話するわねとおトラさんに約束するのだった。

そのトリ江から、和田さんが、孤児だと言う理由で、先方の親から結婚を反対されていると聞いたおトラさんは、自分が相手の家に行って説得してみましょうか?だてに年は取っておりませんからと言い出す。

かくして、おトラさんは汽車で、多恵子の実家がある地方にやって来る。

ほとんど人家もないような場所だったので、おトラさんはたまたま通りかかった小学生を呼び止め、猪原さんの家はどこかと聞くと、一緒に連れて行ってやると言う。

学校の帰りか?と歩きながら聞くと、学校さ、逃げて来たんだ。勉強嫌いだからと言うので、驚いて名前を聞くと、板割の浅太郎だと言うではないか。

まだ先か?と聞くと、子供はまだ2里もあると言うが、気がつくと、先ほどと同じ場所に戻って来たので、良いようにからかわれたと気づいたおトラさんだったが、帰りがけ、その子供は、手を出して礼をねだるので、仕方なく、持っていた餅を渡してやる。

その子供から教わった家の縁側にやって来たおトラさんは、そこにいた婆さんに手みやげを渡し、話しかけるが、どうやら耳が遠いらしく、新田のおクマか?長兵衛どうした?はしか直ったか?栄造の所、3人目の赤ん坊が生まれたそうだが、名前なんと付けた?など、トンチンカンなことを聞いて来るだけで全く会話が成り立たない。

全然聞こえないのか…、これは形でやるしかないと判断したおトラさんは、その場でジャスチャーを始める。

お宅のお嬢さんをお嫁にもらいたいと必死に伝えようとしていたおトラさんだったが、あんた、一体どこの人じゃ?と老婆が聞くので、私は、お!と当てさせた後、四つん這いになってトラに扮してみせるが、老婆は、ネコか?ウサギか?等と見当外れの答えばかり。

あげくの果てにブタ!等と言い出したので、おトラさんは、がっかりして、庭先のむしろの上に倒れ込む。

そこに戻って来た山男(天津敏)が、おトラさんから事情を聞くと、この家には娘なんていない。どこの家を訪ねて来たんだ?と言うではないか。

猪原庄左衛門さんの家だと答えると、この家の主人は猪原忠三郎で、庄左衛門さんなら、この山を越えた所にいる地主さんじゃと山男は教える。

途中まで道案内してくれたその山男は、猪原村は広くて、今でも猪が出る。夕べも婆様が突き殺されただなどと言うので、おトラさんはだんだん心細くなって来る。

やがて、谷の手前まで来た所で、このトロッコに乗っていけば良いと、炭俵などを谷向こうに運ぶトロッコの上に乗せてくれるが、自分は行かないので、これを届けてくれとふろしき包みを持たせてスイッチを入れる。

ところが、先方で仕事をしていた連中が、その日の仕事を切り上げ、トロッコのスイッチを切ってしまったので、おトラさんが乗ったトロッコは、谷の途中で止まったまま動かなくなってしまう。

おトラさんは、恐ろしさのあまり、気を失ってしまう。

その後、何とか、 猪原庄左衛門(小川虎之助)に会えたおトラさんだったが、庄左衛門は結婚の話を聞くなり、お断りします!と言い出し、どこの馬の骨とも分からぬ男に娘はやれん。うちは徳川家光公を獅子ヶ腹の戦いの時、お助けした由緒ある家柄で、今でも、葵の御紋に切り口が似たキュウリは食わんなどと家系自慢をし始めたので、かちんと来たおトラさんは、実は自分も塚原卜伝の流れを汲む由緒ある家柄の生まれで、和田は私の息子です。しかし、私が有名なことを息子に知られると増長する恐れがあるので、孤児として育てたのですなどと大ボラを吹いてしまう。

しかし、それを聞いた庄左衛門は真に受け、有名と言うと?と乗って来たので、仕方なく、以前、向かいに引っ越して来た踊りの師匠からもらっていた藤枝勘志雄と書かれた名刺を手渡す。

それを観た庄左衛門は、お見それいたしました!これなら問題ありません。私は日本舞踊の大ファンなんですなどと、簡単に結婚を許してくれる。

翌朝、会社に出かけようとしていた牛三は、馬子から、今夜は早く帰って来てくださいねなどと言われたので、そんなことを言われたのは何年振りだろう?などと驚くが、モーニング作るんでしょう?私は式服を作らなきゃ…、夕べ、おトラが話をまとめて来た時、あなた、賛成なすったじゃない?と言うので、そうだったな、早引けしても早く帰って来るよと言い残し、牛三は出かけて行く。

父親を母親と共に送り出したトリ江が、昨日、妙子さんに教えたら、泣いて喜んでいたわよとおトラさんに感謝する。

その時、又玄関が開く音がしたので、何か忘れ物したのかしら?と牛子が夫が戻って来たのかと思っていると、藤枝の師匠が上がり込んで来て、これ、お宅のじゃありません?と電報を渡す。

宛名には、和田トラと書かれてあった。

おトラさんはきょとんとしていたが、事情を聞いて知っていたトリ江が、昨日和田さんのお母さんになったばかりじゃないと指摘すると、自分のことだと、おトラさんは気づく。

電報には、あの猪原庄左衛門が上京すると書いてあったので、それを知ったおトラさんは気絶してしまう。

西部電車の駅前のベンチに座っていた内外探偵社の3人組、 由田(由利徹)、八田(渥美清)、南田(南利明)の3人は、なかなか仕事にありつけず、全員腹を空かせていたので、南田が持っていた握り飯を奪い合うみっともなさを見せる。

そこに、大きな荷物を提げた猪原庄左衛門が駅から降りて近づいて来たので、カモだと読んだ3人は、一斉に近づいて、探偵のご用命は当社へと売り込みを始める。

しかし、庄左衛門はあっさり、用はねえだ、わしは娘の婿を観に行くだと答えたので、それに食いついた3人は、その婿さんの身元は調べましたか?等としつこくすがりついて来て、持っていた荷物を取り上げようとしたので、蓋が開いて、中に入れていた2羽の鶏が逃げ出す騒ぎになる。

その後、何とか探偵事務所に庄左衛門を連れ込んだ3人は、言葉巧みに、自分の探偵社には世界中に支部があり、支部には数千人もの探偵たちがいるなどとほらを並べ始める。

百田は、現在我が社は、アメリカからソ連の人工衛星、ソ連からは、アメリカの原爆の情報を頼まれていますなどと煙に巻き、世界テレビの10チャンネルを観てみましょうなどと言いながら、部屋にあった巨大なテレビのスイッチを入れる。

しかし、画面が出ないので、焦った百田は、真空管にゴミがたまっているなどと言いながらハタキをブラウン管の下の隙間に差し込む。

実は、テレビ画面の裏には、ハゲヅラにちょびひげで変装した南田が椅子に座っていたが、待ちくたびれて寝ていたのだった。

ハタキで起こされた南田は、急に起き上がると、トルコニアからのニュースと称し、でたらめな言葉で放送しているような振りをする。

それを見ながら、百田の方もでたらめな外国語で、テレビ会話をしている振りをして、今の情報によると、アメリカでは火星と電話を出来る機械を作ったそうですなどと庄左衛門に伝える。

ほとんど興味ない様子だった庄左衛門だが、せっかく色々見せてもらったので、鳥でも一羽やろうか?などと言い出す。

それを聞いた百田は、急に笑顔になり、すき焼きの用意!と頼むと、ハゲヅラを裏で外した南田が、茶の用意をして部屋に入って来る。

そして、足に付けた目覚まし時計の音を電話とごまかし、百田に受話器を渡すと、アイゼンハワーがわしと会いたいって?などと訳の分からないことを言う。

その頃、おトラさんを、和田のお母さんに仕立て上げなければならないことを知った弘ちゃんや御用聞きたちが又集まって、どうすれば良いかと相談しあっていた。

そこに、メガネのおタケがやって来て、今そこで、変な3人組がいろんなことを聞いて来たんで、怖くて泣いちゃったら、飴を買ってくれたと報告する。

それを聞いた弘ちゃんたちは、早速、調査にやって来たに違いないと察するが、その時、お八重の姿がない事に気づく。

おしゃべりな彼女が探偵に捕まったら、何をしゃべるか分からないと、全員戦々恐々となる。

そのお八重は、百田たち3人の探偵たちに捕まって、おトラさんのことを聞かれていた。

しかし、お八重は、間抜けなように見えてちゃっかりしており、何かしゃべる前に、必ず金を要求した。

八田たちは持ち合わせがないので、拾った2厘、百田は20円、南田は7円しか渡せなかったが、その結果、おトラさんはある財閥の落しだねで、その財閥と言うのは、三井三菱安田鴻池ではないなどとしゃべったお八重は、これ以上金をもらえないと分かったのか、トンビがくるりと輪を書いた〜♪などと歌いながら立ち去って行く。

そんなお八重を見送った百田は、カックンと来たよと落胆する。

しかし、探偵社で待っていた庄左衛門の元に帰って来た百田は、万事、OKでしたよなどと言いながらごまかす。

八田も、今夜、鶏潰して食べましょう?などと言いながら庄左衛門に迫る。

財閥が、1億、2億の金を隠すために、踊りの師匠をやっているんですと百田は適当なことを教える。

そこに、お茶を運んで来た南田が、ハゲヅラをかぶったまま部屋に入ってきたので、庄左衛門は、あんた、トルコにいた!と驚いたので、3人は必死になってごまかそうとする。

その夜、牛三は、結婚式の挨拶の練習をしていた。

馬子は、おトラを何とか、藤枝流の師匠にしないと…と悩み、向かいの藤枝師匠に頼んでいた。

藤枝師匠は、どうせ明日は、家元の発表会で家を開けますから…と、おトラさんに自分の家に入ることを承知してくれる。

翌日、二羽の鶏を肩から下げた庄左衛門が藤枝の家にやって来る。

家の中には、和田と妙子と仲間の女中たちがあらかじめ待機していたので、おマメとお八重がその家の女中の振りをして庄左衛門を出迎える。

家に上がり込んだ庄左衛門は、そこで弟子に踊りの稽古を付けている振りをしていたおトラさんを見かけて感心する。

しかし、壁に貼ってあった新作発表会の日付が、1月18日の今日だと気づくと、おの踊りは今日じゃないんですか?と聞いて来る。

慌てたおトラさんは、最初は弟子たちに踊らせているから大丈夫です。私は一番最後に道成寺を踊りますからなどと答えてごまかす。

ところが、それを聞いた庄左衛門は、わしは先代菊五郎の踊りを3回も観た。ぜひ観させてもらいたいと言い出したので、おトラさんは焦り、結婚の打ち合わせを…と頼むが、庄左衛門の方は、そんなことはどうでも良い。道成寺を見せてくれと言い出す始末。

奥の部屋にいたお八重たちは、酒の中に眠り薬を入れちゃいましょうと相談していた。

そして、その薬を入れたお銚子を持って庄左衛門に勧めに来るが、一旦盃を受け取って飲みかけた庄左衛門は、わしは酒乱の気があるので、代わりに飲んでくらっせと言い、盃をお八重に返して来る。

お八重は、断ることも出来ず、渋々その盃に口をつけてしまう。

奥の部屋で、そうした事態を見守っていたトリ江は、遊覧バスに乗せれば時間を潰せるわよ!と提案し、妙子、和田と一緒に、庄左衛門を東京駅前から出発する遊覧バスに乗り込ませることに成功する。

バスが発車したので、これでやっと安心ねと、妙子らと喜んだトリ江だったが、気がつくと、今、バスに乗り込んだはずの庄左衛門がこちらに向かって歩いて来るではないか。

やっぱり、踊りの方が良いので、そこで降ろしてもらったと言う。

呆れたトリ江たちは、まだ時間がありますからと言い、隅田川の観光船に庄左衛門を乗せる。

舟が出港したので、和田が、舟に乗せてしまえば、もう大丈夫ですねと妙子たちを喜んでいると、そこに庄左衛門が又戻って来て、舟が故障で帰って来たと言うではないか。

困りきったトリ江たちは、庄左衛門をKRテレビ局の公開番組「金語楼劇場」の観覧席に連れて行く。

その日の出し物は「小人劇場」と言い、暗幕の前に、3つの小さな棒付き人形が貼ってあり、その顔と手の部分に、柳家金語楼、小柳節子、川田正子と言う3人のタレントの顔と、別の女性たちの本物の手を差し込み、2頭身キャラのような動きをして見せると言うものだった。

川田正子が「お猿の駕篭屋」を歌い出すと、柳家金語楼がハーモニカを吹く真似をし、続いて、川田正子がカッポレを歌い出すと、3人の小人が踊り出したような動きになる。

最前列に座って観ていた庄左衛門は、実に愉快そうだったが、その内、タレントたちの背後から手を差し込んでいた3人の女性たちが、互いにもめ始め、人形の動きはメチャメチャになる。

そんな中、庄左衛門は腕時計を覗き込む。

和田が、藤枝家に戻って来ると、睡眠薬入りの酒を飲んだお八重がぐっすり眠りこけていた。

その頃、百田、八田、南田ら3人の探偵は、ぼやきながら藤枝家の前の坂道を通りかかっていた。

その時、屋敷から飛び出して来たおトラさんが乗り込んだタクシーがすれ違ったので、ありゃ、和田トラさんだよ!行こう!と言い出し、3人も後を追いかける。

松坂屋の劇場では、始業ベルが鳴り、舞台の緞帳が上がっていた。

舞台袖にいた藤枝師匠の所に駆けつけて来たおトラさんは、ああ、遅かった!と嘆くので、師匠は、どうしたの?と不思議そうに見つめる。

客席に来て舞台を観ていた庄左衛門は、舞台で踊る家元(藤間大助)の顔をまじまじと観ながら、あれが家元さんかい?と怪訝そうな表情になっていた。

隣に付き添っていたトリ江は、化粧の関係で…とごまかしていた。

舞台裏にやって来た百田たち3人は、楽屋から出て来た男に師匠は?と聞くと、今、舞台にと言うではないか。

一方、舞台袖にいたおトラさんは、家元に何とか、前にいるお客さんに手をあげていただく訳には生きませんかと頼んでいたが、藤枝師匠は、そんなこと、師匠に頼めませんわと困惑する。

そんな中、和田も劇場に到着し、庄左衛門の後ろの列にいた妙子の隣に座る。

庄左衛門は、オペラグラスを使い、舞台上の家元の顔をしっかり確認しようとしていた。

舞台裏の階段横で、一旦、舞台から降りて来た家元を待ち受けていたおタケたち女中仲間が、家元の後頭部を殴りつけ気絶させる。

その横には、おマメたちが連れて来ていたお八重がまだ眠りこけていたが、そこを通りかかった3人の探偵たは、そのお八重の背後で気絶していた家元には気づかないまま通り過ぎる。

その頃、おマメたち仲間たちは必死に、楽屋でおトラさんに家元用の衣装を着せていた。

やがて、舞台に登場した家元の顔を見ていた庄左衛門は、こりゃ、似とるぞ!と喜ぶ。

舞台袖にいた藤枝師匠は、おトラさんが入れ替わったとも知らず、きょとんとした表情で舞台を見守っていた。

一方、階段横で気絶したままの家元の監視に困った女中たちは、寝ているお八重に見張りを頼んでいた。

お八重はその依頼が聞こえているのか、寝言のように、OK、OKと、寝たまま答える。

上手の舞台袖にやって来た八田たち3人組は、徹底的に調べるぞと意気込むと、百田に黒子の衣装を無理矢理着せて舞台に押し出す。

舞台で踊っていたおトラさんに黒子として近づいた百田は、おばさんの所、財産どのくらいあるの?等と小声で聞くが、相手にされないので、脇で観ていた八田は、社長のウスバカ!と呆れる。

その頃、階段下で気絶していた本物の家元が目覚めるが、その身体が、虎の着ぐるみを着せられていることには気づいていなかった。

その頃、ヤバいと思った八田や南田は舞台袖から慌てて逃げ出していた。

舞台上のおトラさんは、衣装の早変わりなどをこなしていたが、だんだん調子に乗って来たのか、洋風のダンスの真似など始めてしまう。

階段横にやって来た百田、八田、南田の3人は、まだ眠りこけていたお八重を観て、死んでるんじゃねえか?等と覗き込むが、お八重が急に、OK、OKと寝たまま呟いたので驚く。

下手の舞台袖にいた藤枝師匠の横にやって来た家元は、着ぐるみを来ているのに気づかないまま師匠に何か語りかけようとして来たので、虎が襲って来たと思い込んだ藤枝師匠は肝をつぶす。

舞台の上では、おトラさんが、長い髪を振り回す「連獅子」のようなことをしていたが、その途中で長い髪が吹っ飛んでしまい、全席に座っていた庄左衛門の膝の上に落ちてしまう。

羽二重姿だけになってしまったことにも気づいてなかったおトラさんは、その後も、その格好のままで必死に踊り続けていた。

後日、「只今、結婚旅行中」と書かれたオープンカーに乗った和田と妙子の後ろから、紙テープや風船を手に手に持ったおトラさんや仲間たちが乗り込んだ別のオープンカーが走って付いて行っていた。