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虹をわたって

「白雪姫」と、「時間ですよ」の「となりの真理ちゃん」のイメージをベースにしたようなストーリーになっている、天地真理主演のアイドル映画。

もちろん、有名なおとぎ話をそのまま再現したものではなく、小人たちを貧しい最下層の人々に例えた、この時期の松竹らしい貧乏庶民話風になっているが、公開された1972年と言う時代を考えると、もはや、「銭湯」を舞台にした「時間ですよ」以上に貧しい人々の生活を描いた内容に共鳴する観客は少なかったのではないかと想像する。

マリの元々の生活の方も、どこかリアリティのない「おとぎ話の中の金持ち生活」にしか見えず、この映画で対比的に描かれている富裕層と貧者の双方とも浮世離れした、どこか共感し難い内容になっているように思える。

所詮はアイドル映画だから、基本は「夢物語」、ファンタジー風で良いのだが、全体的に泥臭さの方が目立ち、ファンタジックな雰囲気にも乏しい。

全体的に貧乏臭いのは、貧しい人々が出て来るからではない。

貧しい人々が見る夢をきちんとビジュアル化していないからだ。

劇中劇として登場する「白雪姫」のお芝居も、ひたすら安っぽいし、ジュリーとマリちゃんが乗ったヨットが台風に遭遇すると言うクライマックスも、予算がないので省略してしまっている。

これでは、アイドル映画としては夢もロマンもなさ過ぎる。

そうしたビジュアル面での貧相さに加え、ヒロインを始め、劇中に登場するキャラクターたちに魅力がないことも酷く気になる。

特に、「蓮華荘」の宿泊者たちは、「貧しいが根は善人たち」と言うありふれたイメージで描かれているだけに過ぎず、どうやら汚穢船で働いているらしき船長と易者のハッケ以外は、まともに働いてもいないようなダメ人間ばかり。

その連中が、ヒロインマリと出会うことになって、何か生き方を変えるかと言うと、そういうこともなく、最後まで同じようなダメ人間のまま。

途中、船長の娘のために一芝居打ってやると言うのが、唯一、善人の証しのような表現。

まあ、ヒロインに出会ったからと言って、急に改心して働き始めると言う展開もありきたりで嘘くさいが、最初の方で、おきん婆さんから、競艇ですってしまった100万円を、働いて少しずつでも返しなさいと言われているのに、それを実行している描写もなく、最後まで自分たちの家を誰かが建ててくれないかなどと夢見ているだけのグータラでは感情移入しようがない。

結局、新しい母親になった恵子が、自分の苦労話を全部セリフで説明して、それを聞いたマリの気持ちを動かす…と言う地味な展開から、マリの父親が、貧しい人々を門前払いすると言う、何とも後味の悪い終わり方になっている。

天地真理や沢田研二の歌で何となく場を繋いでいるが、話だけを追っていると、何とも寒々しい展開ではないだろうか。

なべおさみや財津一郎が出ているにしては、喜劇として笑うようなシーンがないのも寂しい。

今となっては、若かりしきジュリーやショーケン、マリちゃんと再会できると言う所だけが見所の懐かし映画と言うべきかもしれない。


▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1972年、松竹、田波靖男+馬嶋満脚本、前田陽一監督作品。

富士山の会社ロゴから「虹を渡って」のメロディが始まり、散歩の途中、米軍住宅内のプールで遊ぶ外国人の子供たちを嬉しそうに観たり、外国人の女性たちと元町辺りで昼食を取る星野マリ(天地真理)を背景にタイトルとキャストスタッフロール

川に浮かぶ船に作られた一泊200円の簡易宿泊所「宿泊 蓮花荘」

そこに居着いている遊び人たち船長(谷村昌彦)、ハッケ(岸部四郎)、入道(大前均)、眼ン玉(立原博)は、その日も甲板に集まり、昼間っから酒を飲んでいたが、そんな中、1人、大福を食っていた豊爺さん(三井弘次)は、酒を勧められても、孫娘に会うまで酒を断っているんだと言って断る。

迎えに来てくれたあの子の顔が見えるようだ…と豊爺さんは、すぐ近くの橋の上から子犬に嬉しそうに手を振るマリの姿を観ながら呟く。

年は18、9になったばかりで、目のぱっちりした可愛い娘で、白い服が似合う、清純な娘なんじゃ…、今に見ていろ、わしの言うことが噓じゃないって分かるから…と続ける豊爺さんの言葉は、今、目の前で観ているマリの姿を参考にしているらしかった。

そんなある日、「蓮華荘」の管理人おきん(武智豊子)が、大変だよ~!と大声を上げる。

豊爺さんが死んでしまったと言うのだ。

宿泊者たち全員で簡単な葬式をしてやり、おきんは、豊爺さんの部屋を開けると、そこに置いてあったカバンの中味を、娘さんに渡せるように整理してやってくれと宿泊者たちに頼む。

さっそく宿泊者たちは、豊爺さんのカバンの中身を調べ始めるが、汚い衣類の底から、百万円の札束を見つけ驚く。

おきんが観ていなかったのを良いことに、ねこばばしようとするが、それまで寝そべっていたヤクザもののマフィア(なべおさみ)がムクリを起き上がり、観てたぜと脅かす。

怯えた宿泊者たちは、急に態度を改め、やっぱり警察へ届けるか…などと殊勝なことを言い出すが、易者のハッケが、警察に届けても、体制側に利用されるだけだ等と言い出し、マフィアは、この100万で俺たちの新しい家を買おうと言い出す。

100万で一体どうやって家が帰るんだ?とみんながバカにすると、100万を元手に、どんどん増やして行けば良いじゃないかとマフィアは言う。

競艇か?と誰かが言い出すと、京浜会から聞いた話だと、今日、堅いレースがあるらしい。何でも、アクアラングを来て水中に潜った奴が、本命のボートのスクリューを細工しているので間違いないらしい等と言い、それを聞いていた、戦時中、海軍の魚雷艇艇長だったと噂の船長が、スクリューに細工をすれば確かにスピードに影響がある。流体力学だ等ともっともらしい補強をしたのでので、すっかりみんなはその気になる。

そんな中、甲板にいたおきんは、急に、ここに泊めてもらいたいとやって来たマリに驚きながらも、ここはその日暮らしやプータロー、失業者などが階段ベッドで暮らしているような安宿だから、あんたなんかが泊まるような場所じゃない。他を探しなさいと断っていた。

しかし、マリは、家出して来たのでお金があまりないんですと言い張るだけだった。

翌朝、宿泊者たちは、この思いもかけない可愛い新入りに興味津々だった。

おきんはそんなマリに、家出娘じゃまずいから、豊爺さんの孫娘ということにしとくねと言い聞かせると、食堂船「すえひろ」の親父と由美(左時枝)に、この娘を働かせてもらえないだろうかと頼む。

一方、宿泊者たちは、ハッケただ1人が止めた方が良いと止めたにも拘らず、豊爺さんの100万を持って競艇場に向かい、全部すってしまう。

夜、船に帰って来た宿泊者たちから、豊爺さんの金を勝手に競艇に使い、全部なくしてしまったと聞いたおきんは激怒する。

豊爺さんが、5つ食べる大福を2つにして貯めた大事な金をなんてことしてくれたんだ!と叱りつけるが、孫娘がこんなに早く現れるなんて思ってなかったんだ…とマフィアたちは言い訳する。

しかたないので、おきんは、マリは豊爺さんの孫じゃなかったんだよと打ち明ける。

すると、マフィアは、じゃあ、返さなくても良いんだねなどと喜ぶので、おきんは、働いて、少しずつでも返してもらうよ!と釘を刺す。

翌日から、マリは、食堂船「すえひろ」で働くようになり、港に停泊中の船の船員たちに、由美と共に弁当を投げて渡す。(「ひとりじゃないの」をバックに)

初めて働いたマリは、仕事って遠足みたいで楽しいわなどと大喜び。

弁当の配達を終えたマリは、今度は、港近くの家に住む田中と言う家に食事を届けてやる。

そこの家では、老いた女が1人で病に臥せっていたので、毎日、お粥を運んでいたのだ。

老女は、マリが「蓮華荘」に住んでいると聞いていたらしく、感心して出身を聞いて来たので、関西などとでたらめを言ってしまったので、それにしては訛がないわね?と不思議がられ、結婚費用を貯めているの?と聞かれると、そうでんねんと慣れない大阪弁を使ってみたりする。

その頃、「すえひろ」の親父は、地元のヤクザ「京浜会」のチンピラたち(北龍二、園田健二)からショバ代を巻き上げられ、海にショバ代があるもんか!と憤っていた。

金を巻き上げ帰りかけていたチンピラたちは、「すえひろ」に配達から戻って来たマリを観て興味を持つ。

その夜、チンピラたちに呼びだされたマフィアは、そこで待っていた京浜会幹部大津(財津一郎)に会うと感激し、子分にしてもらえるのか?と早とちりする。

しかし、大津は、10万出すから、マリと言う娘を連れ出して来てくらないかと言い出す。

モーテルへでも連れ込むんですか?と聞くマフィアに、俺様がそんなケチな真似をするか!温泉場の芸者に出もうろうと思うのよと大津は答える。

船に帰って来たマフィアからそのことを聞いた眼ン玉は、それは、香港か台湾に売り飛ばされるんだ!と指摘するが、10万を受け取ってしまったマフィアは、又懲りずに、これを元手に競艇で、100万にしてマイホームにしよう等と言い張る。

宿泊者たちは、マフィアの誘いに今度は乗るまいとするが、マフィアは、今度は、予想屋や予想新聞などを駆使して当てるから心配ないと口説く。

前回、止めた方が良いと注意したハッケまでもが、今回は不思議なことに大吉と出ていると言うので、全員その気になるが、そんな話に割り込んで来たのが、アイスクリームを持って来てやったマリだった。

ボートレースの話だと聞いたマリは、俄然興味を持ったのか、私も連れて行って!とせがむ。

それを聞いたマフィアは、自分の運命も知らないで…と、密かに涙するのだった。

宿泊者たちと一緒に競艇場に付いて行ったマリは、彼らがバラバラに買っている券を観て、自分も買ってみたいと言い出す。

過生たちに金を提供していたマフィアは、この金がどういう金か知っているのか?と哀れがる仲間たちの言葉に心動かされたのか、せめてもの罪滅ぼしにとマリにも少し分け与える。

結果、全員、又すってしまうが、そんな中、黒の6、緑の2って当たっているんじゃないのと言い出したのはマリだった。

マフィアが確認してみると、確かにマリが買った券は当たっており、券1枚に8000円付いて、合計80万も儲かったことを知る。

その数字は何をヒントにしたのかと聞くと、マリは、電車で拾った予想新聞に書いてあったと言って差し出すが、それは何と「競馬新聞」だった。

とにかく、80万手に入れたマフィアと宿泊者たちは、騎馬戦の格好をして、マリを上に乗せ、楽し気に帰宅するのだった。

その夜、再度、大津に会ったマフィアは、事の経緯を説明し、もらった10万に利子を付け11万返すから、娘さんのことは忘れてくれと頼む。

それに大津が無反応なので、一緒に付いて来た船長が倍の20万出しましょうと妥協案を出すが、それまで紳士面をしていた大津の表情はにわかに豹変し、金返せばすむと思っているのか?わい等を高利貸しかなんかと一緒にする気か?お前等が儲けた金は俺が出した金がなかったら手に入らなかったはずだろ?全部返そうよと凄んで来る。

結局、競艇で儲けた金を全部大津に巻き上げられて船に戻って来たマフィアは、マリの前で、指を詰める真似をしてみるが、所詮、玩具を使ったまねごとだとマリに見透かされてしまう。

さらにマリは、どうせ私のお金じゃないんだから…と、マフィアがなくした金のことも許してやると、気落ちしたみんなを慰めるように、ギターを弾きながら歌を歌い始める。

宿泊者たちは、その歌声にうっとり聞き惚れるが、そんな中、聞いていたハッケは、まるで、おとぎ話の白雪姫と森の小人たちみたいや…と呟き、ということは、いつか王子様が現れても良いはずや!と思いつくと、筮竹を手に取る。

その後、甲板で一人何事かを思い悩んでいた船長の側にやって来たマリが事情を聞くと、自分には、田舎の兄に預けてある娘がおり、今度その娘が上京して来るのだと言う。

船長は、娘の母親が死んでから、ずっと兄貴に預けているが、会うのは2年振りで、自分はあちこちを転々と渡り歩き、ここに居着いちゃった後、ダルマ船に乗っていること等は知らせておらず、外国航路の船長をやっていると教えているので、それを知られ、娘の夢も希望もなくさせるのが辛いと悩んでいるらしかった。

それを聞いたマリは、中3と言えばもう子供じゃないんだから、きっと分かってくれるはずよと慰めるが、軽蔑するんじゃないかと船長は悩む。

そんなことないわよと慰めながらも、マリは、世の中には色んな親子があるのね…と呟き、自分と父親との楽しい思い出を思い浮かべる。

(回想)マリは、何不自由のない裕福な家で生まれ育ち、母を早くに亡くした後は、優しい父である星野英太郎(有島一郎)といつも楽しく過ごしていた。

マリの誕生日、外で一緒に食事をすることになった英太郎は、パパ、今度、結婚することにしたんだ。ママが亡くなって10年、マリが大人になるまで待っていたんだと切り出す。

マリは、その言葉を素直に受け止め、英太郎を祝福してやるのだった。

所が、後日、新しい母親として家で紹介されたのは、予想していたよりはるかに若く、どこか下品な感じがする恵子(日色ともゑ)と言う女だったので、マリの顔は曇る。

恵子は初対面のマリに、人前ではお姉さんって呼ぶ協定をしましょう等と言い出し、その後、自分もパパと呼ぶようになった英太郎と露骨にベタベタした生活を始めたので、1人娘であるマリは、大切なパパを取られてしまったような喪失感を感じるようになる。

(回想明け)「蓮華荘」のベッドの中で、その夜、マリは、そのことを思い出し、1人泣いていた。

翌日、マリは船長に、娘さんをがっかりさせない方法を思いついたから、絶対連れて来るのよと言い聞かす。

半信半疑で、船長が娘に会いに出かけた直後、「蓮華荘」の前で見送っていたマリの前に真っ赤なスポーツカーを停めたのは、マリを良く知っている次郎(萩原健一)と言う青年だった。

こんな所で何してるんだよ?と声をかけて来た次郎は、お父さんが心配しているぞと伝える。

今、どこにいるんだよと聞かれたマリは、とっても楽しい所よと答える。

そんなマリを助手席に乗せると車を走らせた次郎は、女の子が1人であんな所に住んで大丈夫なのか?と聞いて来る。

するとマリは、次郎さんなんかに私の気持ち分からないわ。マリの冒険よ。毎日珍しいことばかりと楽しそうに話す。

次郎は、お母さんも心配しているから、家に連れて帰るしかないと言い出したので、マリは嫌よ!と言ってハンドルを握ろうとする。

結局、次郎がやって来たのは、元の「蓮華荘」の前だった。

俺もマリの冒険に協力するよ。親父さんが心配しているから早く帰ってやれよと言い残し、次郎は車で帰って行く。

宮城学園高校の宿泊場所にやって来た船長は、バスから降りて来た娘の和子(林由里)と再会していた。

船長は担任の大久保先生に、1人だけ外泊なんて無理ですよねと聞いてみるが、大久保先生(大久保敏男)は、お父さんとだったら大丈夫ですと言うので、仕方なく、和子を連れて「蓮華荘」まで連れて帰るしかなかった。

すると、そこで待っていたマリが、2人を近くの家まで案内する。

先に、近くのモデルハウスに来ていた「蓮華荘」の仲間たちは、マリに案内されて来た船長と和子が来る前に、慌てて「永大ハウス」と書かれた看板に幕を張って隠していた。

船長は、見知らぬ家の表札が、自分の名前になっているのを観て驚きながらも、モデルハウスの中に入ると、そこで待っていた仲間たちを、マリが、歓迎のために集まってくれたご近所の皆さんよと和子に紹介する。

和子は、部屋の中に、「見学の方へのお願い」と書かれた看板を見つけ、不思議がるが、マフェィアが何とかごまかして取り払う。

そんな中、マリが、アトラクションを始めますと声をかけ、ハッケが「白雪姫」の物語の解説を始める。

白雪姫の新しいお母さんは、実は魔法使いだったのです…

魔法使い(おきん)は、鏡に向かって、この世で一番きれいな女は誰か?と聞くと、それは白雪姫ですと鏡が答えたので、魔法使いは怒り出す。

舞台変わって、魔法使いにもらったリンゴをかじった白雪姫(マリ)が死に、その周囲を囲んだ小人たち(蓮華荘の住民たち)が、白雪姫がシンデレラ等と言いながら嘆き悲しんでいると、1人の王子様(ハッケ)がやって来る。

すると、突然した雪姫が目覚め、起き上がると、私、一体どうしてたのかしら?と呟く。

私はあっちゃこっちゃ歩いて姫を探していたと言い出した王子が、私の姫になってくださいと、白雪姫に求婚する。

すると白雪姫は、お礼に、私の歌をプレゼントしますと良い、「小さな恋」を歌い出す。

そして、幻想的な森の中へ入って行った白雪姫は、王子様と二人で去って行く。

それを見送る小人(マフィア)は、又競艇に行こうね!と涙ながらに手を振るのだった。

翌朝、マリは、仕事に出かける船長に代わり、和子を連れ駅まで送って行くが、和子は、又来て良いかしら?今度はあんなことしてくれなくて良いんです。父ちゃんはあんな家なんかじゃない。でも、みんなの気持ちが嬉しくて…ろ、何もかも見抜いていたことを明かす。

一方、モデルハウスの中で目覚めたマフィアたちの事を心配した船長がこっそり戻って来て、礼を言う。

それでもマフィアたちは、俺たちには一生こんな家縁がないな…とつぶやき、入道も、又、ダルマ船に戻るのかと落胆する。

だんだん腹が立って来たマフィアたちはヤケになり、室内の調度品や家の中を無茶苦茶に破壊し始める。

その頃、食堂船「すえひろ」で由美と共に働いていたマリは、この辺では珍しいヨットに乗った青年が近づいて来たことに気づく。

由美は、そのヨットと青年の格好良さに目を奪われる。

青年は、飯を食わせてくれますか?と声をかけて来たので、簡単にできる冷や麦を出してやる。

昭夫(沢田研二)と名乗ったその青年は、ヨットで太平洋横断をしようと思っている。要するに冒険ですよ。でも、エンジンの調子が悪くなったので修理しようと思いここに立ち寄ったと言う。

その夜、昭夫はヨットの上でギターを弾き、「君をのせて」を歌いはじめるが、「蓮華荘」の中でうっとり聞き入っていたハッケは、あの男が王子様や!いつか占っただろう?あいつが幸せ持って来たんだ。

あいつがアメリカに渡ると、1000万ドルの遺産が待っている。日本円で30億や。そしてあの青年はある女性を伴侶に連れて行く…。そのお礼に、あの青年は我々に家を建ててくれるんや。その相手とは由美ちゃんじゃない…と言うハッケの話を聞いていたマフィアは、マリちゃんか!と勘づく。

そのマリは、ハッケの話等聞かず、由美と一緒にのんきにスイカを食べていた。

ハッケは、俺は今まで占いを外したことがあるか?と強気で言うので、マフィアが思い出してみると、確かに、ハッケの占いは良く当たっていたような気がした。

マリも昭夫の事を星の王子様のようで、いわくありげだな…とちょっぴり意識していた。

ここんとこ、飛行機が落っこちたりしているじゃない…とマフィアは言う。

あの青年は潔癖性で、遺産を受け取ろうとしないんだとハッケは断定する。

昭夫は「蓮華荘」の中の話し合い等知らず、まだ歌を歌っていた。

マフィアは、マリちゃん、おめでとう!と、早くもハッケの占いを信じて、昭夫とマリが結婚するものと決め込んで祝福をする。

マリも、何だか、それが実現するような気になって来て、甲板に出ると、昭夫の歌に聞き入る。

翌朝、その昭夫がマリにデートを誘って来る。

マリは、仕事があるからと断るが、話を聞いていたおきんや由美が、行って来なさいよと笑顔で勧めてくれたので、デートに行くことにする。

昭夫はデートの途中、君知ってるんでしょう?太平洋を横断するなんて真っ赤な噓なんだ。バイトでヨットを江ノ島まで運ぶ途中、一休みしていただけなんだと言い出す。

自分は大学生で、今、夏休み中のバイトをしているのだと言う昭夫の言葉を聞いたマリは、思わず笑ってしまい、船の人たち、あんたのことを凄い人だって噂していたのよと教える。

自分のことを星の王子様と思われていると聞いた昭夫の方も笑ってしまう。

そんな昭夫は、明日発つつもりなので、一緒に江ノ島まで行かないか?と誘って来るが、マリは、仕事があるから、次の機会にお願いするわと言って断る。

その後2人は、山下公園でアイスを食べるが、マリは、私の学校でのあだ名はアイスクリーム姫って言うのと教える。

翌朝、昭夫はヨットを出発させようとしていたので、それを見たマリは、さようなら〜!と手を振る。

その様子を観ていた眼ン玉は、ハッケの占いと違うのでがっかりする。

マリは由美から頼まれ、又、病気の田中さんの家にお粥を配達する。

すると、そこで病床の田中さんの看護をしていたのは、マリの義母になった恵子だったので、マリは入口で立ち尽くす。

恵子の方も、どうしてマリちゃんがこんな所に?と驚く。

お父さん、キチガイみたいになってあなたを捜しているわよ。分かってるわ。私にパパを奪われたって思ってるんでしょう?私はナイトクラブのホステスになって、あなたのパパがプロポーズすること待っていたわ。すぐに連れて帰りたいけど、ちょっとパパと喧嘩をしたの。明日、私と一緒に帰るのよと恵子は入口に出て来ると言い聞かすが、マリはそれ以上その場にいることができず、泣きながら逃げ帰ってしまう。

そして、出航しかけていた昭夫のヨットに、蓮華荘から持ち出したバッグを手に乗り込むと、お願い!ヨットを出して!どこへでも行くわと一方的に頼む。

昭夫は、そんなマリに驚きながらも、予定通りヨットを出航させる。

それを見送るおきん、眼ン玉たち。

由美は、どこ行くの〜?!が呼びかけて来たので、眼ン玉は、もちろんアメリカさ。太平洋二人ぼっち…ととぼけてみせる。

帰って来たら、俺たちの家を建ててくれ〜!マフィアや入道も、昭夫とマリが乗ったヨットを見送る。

通りから二人の出航を発見した船長やハッケも、自分の占いが当たったと思い込み喜んで見送る。

マフィアたちは、船の上からバンザイをして、2人の門出を祝っていた。

海上に出た時、昭夫はマリの様子がおかしいことに気づき、何があったの?と尋ねるが、マリは、聞かないで!走って!と頼む。

昭夫は、海に出たらメソメソするなよとマリを叱りつける。

そんな2人の前に、台風24号が接近していた。

その夜、台風の接近をニュースで知った「蓮華荘」の連中も、2人の安否を案じていた。

ハッケは、八丈島の沖でヨットが沈没すると言うショッキングな予言をする。

由美は、マリちゃんをこんなことにしたのはあんたたちのせいよ!働きもしないで、家を持とうなんて!と宿泊者たちをなじる。

方角が悪かったんや。西に行けば良かったんや等とハッケが言うので、アメリカに行くので西に行くバカがいるか!と由美は切れる。

そんな「蓮華荘」に、傘をさした恵子がやって来て、マリちゃんはどこにいるの?と聞いて来る。

昭夫とヨットで海に出たと聞いた恵子は、昨日、マリちゃんに会った時、連れ帰っておけば良かったと悔む。

マリちゃんに万一の事があったら、あの人にどう言って詫びれば良いのか…と恵子は、英太郎の事を考える。

おきんは、もう神頼みしかないと言い出し、宿泊者たちにも一緒に水神様に祈りを捧げるよう言い出す。

その頃、昭夫は、マリちゃん、もうダメだ…と弱音を吐き、船室に逃げ込んで来ていた。

そんな昭夫に、だらしのない王子様ね!大きな船にでもぶつかったらどうするのよ。早く甲板に戻って!とマリは叱りつける。

恵子も、年は25も違いますけど、私は夫を愛しています。マリちゃんをお守り下さい。私、英ちゃんと別れても構いません!と水神様に祈っていた。

昭夫は、まだ船室内におり、こんな狭い所に閉じ込められたまま、海のそこに沈むんだな…等と悲観的なことを言っていたが、元気を付けるために、歌でも歌おうと言い出すと、海は広いな、大きいな〜♪と歌い出し、マリを一緒に唱和する。

マリは病室で目覚める。

昭夫さんは?と聞くと、安心なさい。隣の部屋で寝ていると、見舞いにやって来ていたおきんが教えてくれる。

その時、隣の部屋から、海は広いな、大きいな〜♪と大きな声で歌う昭夫の声が聞こえて来る。

病室の外では、恵子が英太郎に、マリは海上保安庁の船に救助されたと電話で連絡をしていた。

新しいお母さんも凄く心配していたよとおきんが教えても、マリは、いや!私、家に帰らないわ!とだだをこねるが、その時、病室に入って来た恵子は、マリの頬を叩くと、もう退院していいと先生がおっしゃったと良い、無理矢理マリをベッドから引きずり降ろすと、病室を出ようとする。

今、車を呼ぶからと慌てておきんは声をかけるが、私がおぶって行くから良いわと恵子は断る。

その後、本当に、恵子はマリをおんぶして自宅に帰り始める。

あんたって人は、どうしようもない甘ったれねと恵子は背中のマリに言う。

お父さんと何不自由なく暮らしていた所に、私が来たんじゃね。でも、私だって生きているの!貧しかった私は、中学のときから万引き、カツアゲして暮らして来たわ。キャバレーにも勤めたわ。最後に勤めたクラブで会ったのがパパだったのよ。

最初はスケベジジイくらいにしか思ってなかったけど、私決めたのよ。死んでもパパを自分のものにしてみせるって…

星野夫人に収まろうと決心したの。あんたが家出するなんて思ってもいなかったわ。これからは3人で暮らすって決めたんだから。水神様には、身を引くなんて言ったけれど、水神様を騙したって、パパと別れるつもりはないわ。

マリはいつしか、そんな一途な恵子の気持ちを感謝するような気持ちで、恵子の背中にうなだれかかっていた。

坂を上りきった所に、英太郎が車の側に立って待っていた。

マリは恵子の背中から降りると、パパ!と叫んで英太郎の胸に飛び込むのだった。

それからしばらく過ぎ、「蓮華荘」では、マフィアが、良い風だ…、秋も近いな。みんな消えちゃった。マリちゃん、どうしているだろう?と思い出していた。

マリちゃんの家に行ってみようか?今まで俺たちがマリちゃんの面倒をみてやってたんだから、今度は俺たちが、面倒みてもらえるかもしれないなどと虫の良い話をし出す。

他の宿泊者たちも、そのマフィアの言葉に頷いていた。

その頃、星野家では、すっかりマリと恵子、そして英太郎の3人暮らしは順調になっており、その日も、英太郎が庭先でバーベキュー等焼いていた。

そんな英太郎にもとへやって来たお手伝いが、突然の訪問者を知らされ、戸惑いながらも玄関口に出てみる。

そこにいたのは、マフジアや船長ら「蓮花荘」の面々だった。

マリちゃんは?と聞かれた英太郎は、留守にしていますが…と噓を言い、いつぞやのことは感謝しております。日を改めて、お礼にうかがうつもりでおりますので…と言い、門残払いをしようとしたので、お礼をもらおうと思っちゃいないのに…と船長は憮然とする。

マリも、あの時のことは、悪い夢として忘れようとしていますから、今後は近づかないようにお願いしますと、英太郎はきっぱり言い渡す。

そんな会話が玄関で交わされているとも知らず、マリは恵子と庭で、「蓮華荘」での楽しい思い出を話していた。

恵子は、今度1度、あの人たちを招待しない?と提案する。

その頃、星野家からとぼとぼ帰る船長たちは、あの家は暮らし向きが良さそうだから、家の一軒くらいバーンと建ててくれるんじゃないかな…などと、又夢のような話をしていた。

それを聞いていたマフィアは、ばかやろう!人間、額に汗して働くのが一番なんだよ!と他の連中を叱りつけながらも、やっぱりそれには競艇かな?などと呟いていた。

庭先の椅子に腰掛けていたマリの元に、お手伝いが手紙が届いたと届けに来る。

封を開けてみると、中から一枚の写真が落ちて来る。

それは、昭夫の写真だった。

もう秋だね。この夏は最高に楽しかったね。ヨットでの嵐、この夏休みの思い出は忘れられないものになりそうだね。東京の喫茶店で、少し感傷的になっている昭夫より…

その手紙を読み終えたマリは笑顔になっていた。

虹の向うは晴れなのかしら〜♪

マリは又散歩に出かけ、「蓮花荘」での楽しかった共同生活を思い出しながら、港で「虹を渡って」を歌うのだった。