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泣いて笑った花嫁

同じ番匠義彰監督「のれんと花嫁」(1961)に似た雰囲気の人情ドラマ。

1人の若者と2人の娘の三角関係に、父親役の佐野周二の大人のラブロマンスが絡み、桂小金治や大泉滉がコメディリリーフ的に登場する構成は同じである。

「のれんと花嫁」では長崎ロケが楽しめたが、今回のロケ先は京都である。

倍賞千恵子は今回も、恋の三角関係で、積極的なタイプのライバルを前に身を引いてしまう、古風と言うか消極的な娘を演じている。

「のれんと花嫁」と違っているのは、その倍賞千恵子がSKD(松竹歌劇団)の一員として、肌も露な衣装で歌ったり踊ったりするシーンがふんだんに登場する所だろう。

特に冒頭で披露されるラインダンスでの、胸と右足とパンツ部分だけが、銀色の鱗のようにスパンコールで覆われており、後はシースルー素材と言うエロティックスタイルの倍賞さんと言うのは見物だと思う。

実際にSKD出身で、この前年に松竹にスカウトされたらしい倍賞さんが、歌ったり踊ったりする映画は、初期の頃、何本かあるようだが、SKDの一員として登場するのは、この映画で初めて観たような気がする。

劇中に登場しているのは、SKD風の架空の劇団と言う設定なのかな?とも思ったが、大阪公演の移動バスのフロントガラスには、ちゃんと「松竹歌劇団」の貼紙がある。

松竹映画に松竹歌劇団が出ても、自社宣伝になるだけで、何の差し障りもないからかもしれない。

さて、ではその倍賞さんが主役なのかと言うと、この映画で最初に名前が出るのは、ライバル役の鰐淵晴子の方である。

ドラマの出演シーンは確かに鰐淵さんの方が多いが、レビューでの登場シーンを考えると、同じくらいの露出度ではないかと思う。

ドラマ自体も面白いのだが、劇中に挿入される当時のSKDの華やかなショーも楽しい。

実は、SKDそのものを良く知らなかったのだが、この映画で観る限り、男役もいるし、宝塚歌劇とほとんど同じ雰囲気だったことが分かる。

ただし、ドラマとして観ると、最後までちょっとひっかかる部分がないではなく、それは、佐野周二演ずる常造が、店のアルバイトに募集して来た女子大生鰐淵晴子演じる岡本京子をどう思っていたのかと言う点である。

番頭の文吉(桂小金治)は、単純に老いらくの恋と言うか、中年の常造が若い京子の美貌に惚れてしまったと解釈しているが、実は、かつての恋仲であった京子の母親のことに最初から気づいていた常造の親心にも似た溺愛…と言う風に捉えるのが普通なのだろう。

ただ、本当に、男としてのやましい気持ちは全くなかったのか?と言う疑問が残らないではない。

京子のアパートの部屋を訪ね、そこで政代の写真を見て、初めて、かつての恋人の娘だと確信した常造だったが、それまでは、多少浮ついた気持ちがなかったとも言えないようにも見えるからだ。

常造の京子に対する気持ちの説明は特に明確にはされてないので、その辺の解釈は最後までうやむやなままである。

この頃の鰐淵さんは、本当に愛らしくて清楚なイメージ。

外国の血が入ったハーフの女優さんだが、そんなにくどいと言うか、濃い感じはなく、この当時は、日本人役を演じても、特に不自然さはない美貌のような気がする。

ちょっと内気そうに見える倍賞さんとは対称的な、からっとして明るいキャラクターが似合っている。

その鰐淵さんの母親役で、佐野周二のかつての恋人役を演じているのがベテラン高峰三枝子。

この当時は、色っぽいお母さん役が似合う年頃である。

その高峰さんの母親を演じているのが、こちらもベテラン沢村貞子で、老け役ながら、元気で粋なおばあちゃん役をこなしている。

2人の娘に愛される俊男役を演じている吉田輝雄は、新東宝から松竹に移った方で、この当時は典型的な二枚目役ながら、主役と言うよりは、女優さんのお相手役のポジションだったのかもしれない。

東宝のイメージが強い環三千世さんや中村是好さんが出ているのが、ちょっと意外と言えば意外な気がしないでもない。

その他にも、桂小金治、大泉滉、八波むと志、南都雄二、林家珍平、世志凡太、藤山寛美と言ったお笑いも出来る達者な連中がきっちり脇を固めているので、特に爆笑喜劇と言うような内容ではないが、にこやかに観ていられる雰囲気にはなっている。

劇中でも、「もうすぐクリスマス」等と言うセリフがある通り、12月19日公開ということで、年末の正月映画に近い雰囲気の映画だったのではないかと思う。

ゲスト陣の中でも、ミヤコ蝶々の相方だった南都雄二がそれなりに重要な役どころを演じているのが珍しく、当時は結構1人で活躍していたんだな〜と思ったりした。

藤山寛美も、劇中で、「私もこっちの方では苦労させてもらってます」などと小指を立てて言うセリフがあり、当時は、楽屋落ち的なセリフとして、客席から笑いが起きたのだろうと想像する。

これら藤山寛美や南都雄二と言った、当時、女癖が悪そうなイメージがあった芸人さんと言うのは、この種の映画にはなくてはならない貴重なキャラだったのかもしれない。

芦屋雁之助が番頭役で出ているのは、やはり、当時の芦屋雁之助と言えば、人気テレビ番組「番頭はんと丁稚どん」のイメージからの配役かも。

「私は噓はもうしません」等と言う池田勇人首相の言葉を使っている所などが時代を感じさせる。

時代を感じさせると言えば、タイトルバックに登場する数々のブリキの玩具や、劇中に登場する「0系新幹線」のブリキ玩具などは、今のマニア垂涎のアイテムだったりするのではないだろうか。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1962年、松竹、菅野昭彦+山根優一郎脚本、番匠義彰監督作品。

人形やブリキの玩具を背景にタイトル

国際劇場では、松竹歌劇団(SKD)が、肌も露な衣装でラインダンスを披露していた。

その中で踊っていた中に、富永早苗(倍賞千恵子)がいた。

舞台脇で彼女らの踊りを見守っていた演出家見習いの杉山俊男(吉田輝雄)を、亀山さんが読んでいますと守衛の六助爺さん(中村是好)が呼びに来る。

事務所では、来々軒の出前持ち(世志凡太)に、ラーメンの届くのが遅いと演出家の亀山(八波むと志)が叱り付けている所だった。

帰りかけた出前持ちに、胡椒は?と呼び止めた亀山は、服の中から取り出して渡された胡椒を受け取ると、それを大量にラーメンにかけながら、やって来た俊男に、この公演ももうすぐ終わり、次の大阪公演の後、正月公演が待っているので、今度君に演出をやって欲しいと切り出す。

それを聞いた俊男は喜ぶが、弱っちゃったな…、まだ、この仕事のこと、うちの親父に内緒にしてるんです。今まで何とか店との掛け持ちでごまかして来たんですが…と亀山に説明する。

それを聞いた亀山は、大変だな~…と同情しながらも、芸術は厳しいんだよ…と言い聞かせようとするが、ラーメンにかけ過ぎた胡椒のせいで、くしゃみを連発する。

俊男の実家である「ふじや 杉山商店」に帰って来た番頭の石川文吉(桂小金治)は、店の前に出て来た店員の三公(林家珍平)から、旦那と若旦那がもめてますと聞かされ、とうとう俊男がこっそりやっていた芝居の演出のことがバレたんだと直感する。

社長室では、俊男の父親で社長の杉山常造(佐野周二)が、息子の俊男が芝居の演出をやっていると聞き、そんな遊び半分の仕事など!と激怒していた。

俊男は、しばらく好きなようにやらせてくれませんかと頼んでいたが、常造は、二度とこの敷居はまたがせんぞ!と怒り狂う。

そこに駆け込んで来た文吉は、何度か両者をなだめようと、今は話し合いの時代です。アメリカとソ連だって、キューバ問題で…などと訳の分からない理屈で仲裁しようとするが、常吉に突き飛ばされ、棚に置いてあった猫の玩具の口に指を挟まれてしまう。

これ以上説得は無理だと諦めたのか、俊男は辞めるつもりはありませんから!と言い残し、部屋を出て行ったので、その後を追った文吉は、後で巧く説得しときますから…と俊男をなだめようとする。

興奮した俊男は、鴨井に頭をぶつけながら劇場へと戻って行く。

後に残された文吉に、アルバイト志望者が来ましたと言いに来たので、お前が相手をしておけと面倒ぐさがるが、相手が美人だと聞くと、自分が出ると言い出す。

文吉が面会した相手は、確かに目の醒めるような美人の女の子だった。

日本美術大学の洋画科3年岡本京子(鰐淵晴子)と自己紹介したその子は、実家は京都で、父は亡くなったが、今は母と祖母が、清水焼で有名な清水で、元禄時代から続く呉服店をやっていると説明する。

文吉は、清水焼を煎餅かなにかと思ったようだが、仕事の内容は、商品の梱包、箱詰めで、日当は500円で、昼食は出しますなどと説明していると、奥で聞いていた常吉が、急に京子の前に出て来て、文吉をどけると、社長自ら面談すると言い出し、日当は1000円で…などと言い出すが、すっかり舞い上がっているのか、くわえた煙草が逆さまだと京子から指摘される。

立ち上がって三公の側に近寄った文吉は、良い年をした社長が若い美人に参ってしまったと呆れてしまう。

国際劇場では、アンコールワット風の舞台の前で、SKDの面々がエキゾチックな歌と踊りを披露していた。

舞台袖で観ていた亀山は、側に近づいて来た俊男から、家を出ることにしましたと報告されると、ジャーナリストをにぎわすような演出家になれよと励ます。

そこに、来々軒の出前持ちが又来たので、2人ともラーメンを注文する。

その夜のバー「ちぐさ」

早苗は、その店のママをやっている姉の富永町子(環三千世)に出かけるわねと声をかけ、バーテンの小泉新平(大泉滉)が用意していた夜食用のサンドウィッチを受け取ると、再び劇場へ戻って行く。

そこにやって来たのは、ママが目当ての常連、文吉だった。

早苗ちゃんは?と聞くと、たった今出かけたと言うので、大事件なんだ、若旦那がうちを飛び出したんだと説明すると、劇場へ行ったわよと町子は教える。

早苗と俊男の仲が良いことを知っていた文吉は、早苗を通じて俊男の居場所を探るためにやって来たのだった。

そんな文吉に新平が出したのはただの水だったので、酒かと期待して飲んだ文吉はがっかりするが、新平は、お勘定たまってます。分かってます?とだけ無表情に言う。

俊男は劇場の事務所に残っており、早苗が持って来てくれたサンドウィッチに喜び、お茶を持って来た六助爺さんにも勧めるが、そこにやって来た文吉が、うちの若旦那をいつまでもこんな所に置いておけない。どこか探しますからなどと言いながら、勝手にサンドウィッチを頬張る。

翌日、社長室で、「夢の超特急」と言う新幹線の玩具を試していた常吉の元にやって来た分吉は、どこに住んでいるのかはっきり掴めないんですが、若旦那を劇場の後で付けてみましょうか?と報告する。

常吉はまだ怒っているらしく、あんな奴どうなろうと、わしの知ったこっちゃない。陰であいつを助けているような奴は首だ!とまで言うので、じゃあ、若旦那が店の前で行き倒れになったり、餓え死にしそうになっても助けちゃ行けないんで?と突っ込むと、これは別だと言うので、それごらんなさい。やっぱり親子の縁は切れないと文吉はなだめる。

そこに、アルバイトの京子がやって来ると、常吉は、コーヒーとケーキ2人分!などととんでもないことを命じたので、文吉は呆れて常吉を凝視してしまう。

常吉は京子に、あなたのような立派な家のお嬢さんがアルバイトをなさるとは、何か学費にお困りなことでも?と聞くと、絵の勉強でパリに行ってみたいんですけど、おばあちゃんが絶対反対なんですと言う。

そこで常吉は、お金になるアルバイトをやりませんか?玩具のデザインをやりませんか?といきなり提案する。

唐突な話に京子は面食らうが、常吉は、思いつきで良いんですよなどと優しくフォローする。

どうして私のこと、そんなに親切にしていただけるんですか?と京子が聞くと、私は芸術に若干理解があるつもりなので、出来るだけあなたを後援したいなどと言うので、ケーキとコーヒーを運んで来た文吉はあっけにとられたような顔で常吉を見つめる。

店の車で、「光緑荘」と言うアパートに布団袋を運んで来た文吉は、早苗も来ていた俊男が借りた部屋にそれを持ち込むと、その紐をほどきながら、旦那が心配しています。今度、美人の女子大生をアルバイトに雇っったんですが、旦那、夢中になっていますと報告する。

早苗がお茶を入れるから一服しませんか?と声をかけると、文吉は茶菓子がないので、今川焼でも買ってきましょうと部屋を出ようとしていた。

そんな俊男の隣の部屋にやって来たのが、京子の祖父の岡本はつ(沢村貞子)で、京子の部屋をノックしても返事がないので、扉が開いていた俊男の部屋にやって来ると、出かけようとしていた文吉に、孫娘が隣に住んでいるんですが、いつ帰って来るんですか?と聞いて来る。

文吉は、この部屋は越して来たばかりなので、分かりませんと答え出て行くと、はつは、ちょっと休ませてもらえないかと言いながら、勝手に俊男の部屋に上がり込んで来る。

そして、早苗と俊男を観ると、新婚さん?それとも駆け落ち?私は、芝居でも心中ものが好きなのよなどと勝手なことを言い出し、私は京都から上京して来たが、うちは、元禄15年、「忠臣蔵」の大石内蔵助が東下りする時、旅の仕度を整えてやった店で、それから11代、360年も続いている、清水の呉服店なんですよなどと自慢話を始める。

そこに帰って来た京子が、隣に居座っていた祖母のはつに気づき、驚きながら、自分の部屋に連れて行く。

はつは京子に、明日、上野の展覧会に行きたいので連れて行って欲しいなどと言い出したので、京子は驚く。

京子の美大進学にも反対していたが、勉強しておきたいなどとはつが殊勝なことを言うので、京子はますます面食らうが、隣は恋人同士かしらね?等とはつが聞いて来たので、知らないわと素っ気なく答える。

あんたも相手はいるんか?等と聞くので、出来たら真っ先におばあちゃんに報告するわと京子は約束する。

翌日、上野のの美術館で行われた「大洋展」と言う展覧会に出かけた京子とはつだったが、はつは抽象画など見ても、特に興味を持ったようにも見えなかった。

そんなはつの前に、伊吹春彦(青山宏)と言う、京子の小学校の5年先輩が現れ、今日は、京子に無理矢理連れて来られたんですよなどとはつが言い出したので、京子ははつの企みに気づく。

想像通り、伊吹は京子に食事を誘って来て、はつも嬉しそうにそれに応じていたからだ。

国際劇場では、千秋楽の華やかなレビューが終わり、緞帳が降りる。

舞台を降りて楽屋に引き上げてきた踊り子たちに、亀山が千秋楽おめでとう!と声をかけ、脇に控えていた俊男が、今度の関西公演のスケジュールを発表する。

亀山は、そんな俊男を飲みに誘う。

その夜、「光緑荘」に帰って来た京子は、やることが卑怯よ!とはつの策略に不快感を示していた。

しかし、はつは悪びれた風もなく、店が今、2000万の借金で困っている所に、伊吹酒造が、2000万は結納金として出しても良いと言ってくれたので…などと説明する。

それが政略結婚やないのと京子が憤慨すると、今月中に2000万用意せんと、260年続いた店が…とはつは言う。

そんな「光緑荘」に、泥酔した亀山を抱え帰って来たのが俊男だった。

亀山は、隣の京子の部屋のドアを開けると、勝手に中に入り込み、そこに立っていたはつに、母ちゃん、ただいま!と言いながら抱きつこうする。

慌てた俊男が入って来て、はつと京子に謝りながら、自分の部屋に連れ帰るが、落ちていた亀山の上着と片方の靴を拾い上げた京子は、それを持って俊男の部屋に向かう。

俊男はそんな京子に礼を言い、自分の名前と国際劇場の演出をやっていると自己紹介する。

酔って部屋に寝転んでいた亀山は、又寝ぼけて飛び起きると、目の前にいた京子を、母ちゃん、今日はきれいだな。チューして!などと言い、抱きつこうとする。

翌日、「光緑荘」にやって来たのは、手みやげを下げた常造だった。

京子の部屋を訪れた常造は、ケーキを渡すと、京子が出来上がったと言うデザイン画を早速拝見しましょうなどと上機嫌だったが、タンスの上に置かれていた写真立てを観ると表情が強張る。

京子が、それ、母ですと教えると、常造は、ふ~ん…と答えるだけだった。

京子はさらに、2、3日以内に京都に帰ります。ちょっとショックな家庭の事情で…、店が潰れそうなんですと打ち明ける。

常造が「光緑荘」を出ようとした時、ふろしき包みを持って入口に入りかけていた文吉とばったり出会う。

互いにぎょっとしあうが、常造は、岡本さんのデザイン画を観に来たんだと言い、お前は何しに来たんだ?と聞くので、文吉の方はつい、この下着を…などと口走り、はっと口をつぐんでしまう。

誰に届けるんだ?と突っ込まれたので、いるんです…、私のこれが…と言いながら、文吉は自分の小指を立ててみせる。

文吉は、呆れた様子の常造に、将来は結婚を約束したまじめな相手なんですと言い訳するが、常造が、だったら、ちょっと挨拶して行こうなどと言い出したので、旦那にお見せするような代物じゃないんです!などと慌てて断る。

その後、俊男の部屋に下着を持って来た文吉は、今、下で旦那と会いました。アルバイトの女子大生に会いに来たんですと呆れたように報告する。

じゃあ、隣だと俊男も気づく。

そんな所に、ケーキのお裾分けを持って来たのが京子で、文吉の顔を観ると、あら、番頭さん!と驚く。

文吉が、若旦那に会いに来たんですと説明し、こちらが若旦那ですと俊男を紹介すると、今勘当中の身ですがね…と俊男は苦笑する。

それにしても偶然ですね、隣に住むなんて…と京子は驚いたようだった。

今、社長さんが来たんですと京子がお湯を沸かし始めた時、部屋にやって来たのが早苗で、彼女もケーキを下げて来たので、無神経な文吉は、食べ比べましょう。どっちが高いかな?もうすぐクリスマスですしね…などと喜ぶが、当の早苗は京子がいる事を知ると複雑な表情になる。

その後、「27回関西公演 秋の踊り」が始まり、早苗たちSKDは、チャールストンを舞台で披露していた。

舞台袖では、亀山が俊男に、夜の京都で羽を伸ばそうや…と誘っていた。

京都の岡本呉服店にニコニコしてやって来た高利貸しの安西良太(南都雄二)は、店先で女中とぶつかり、出ばなをくじかれる。

さらに、入った店先にいた番頭(芦屋雁之助)に女将はんは?と聞いても、知りまへんと素っ気ない返事しかもらえず、安西は歓迎されていない雰囲気を肌で受け止めながら、ぶすっとしたまま奥へと向かう。

女中は離れのはなに、また、高利貸しが来ましたと報告に来る。

座敷で女将の岡本政代(高峰三枝子)と対峙した安西は借金の証書を取り出すと、金を他に回さなければ行けまへんのやと返済を迫るが、政代が後一ヶ月待ってもらえませんか?と色っぽい目で頼むと、あっさり承知する。

安西の本当の目的は女将の方だったからだ。

前から言うてた有馬温泉、一緒にどうだす?などと安西が嫌らしい誘いを仕掛けて来ると、女中がすかさず茶を運んで来て、火鉢にわざとらしく炭を足したりして邪魔をする。

そんな女中を追い払った安西は、私の気持ちを察して欲しいなどとしつこく女将に迫るが、そこに、今度は番頭が、女将はんに電話ですと知らせに来る。

安西は、番頭の芝居ではないかと怪しむが、私は噓はもうしませんなどと睨んで来た番頭は、席を立った女将に替わって安西の前に座り相手をしようとする。

受話器を耳に当てた政代は、政代さんですね?と言う声に、えっ!?と驚く。

その後、政代は、近くの寺に向かい、そこで待ち受けていた杉山常造と再会する。

2人はかつて、呉服店のお嬢さんとその番頭で、互いに愛し合いながら結ばれなかった仲だったのだった。

突然のお電話で驚かれたでしょうが、偶然、お宅の京子さんをうちのアルバイトとして雇うことになったんですと常吉は説明し、不思議なご縁ですね~…と昔を思い出すような目になる。

ご主人がお亡くなりになったのは風の便りに聞きました。御隠居様はお元気ですか?あの頃はお恨みもしましたが…と常造が聞くと、元気ですと答えた政代は、奥様は?と逆に問いかける。

10年前に亡くなりました…と常造も答える。

その後、2人はレストランに来ていた。

常造は政代に、お嬢さん、2000万は、私に都合させてもらえませんか?と切り出す。

私たちのためにそんなこと…と政代は躊躇するが、もちろん担保は頂きますし、利息も高いかもしれませんよと常造は笑い、ただし、御隠居様には絶対内緒ですよと釘を刺す。

帰宅した政代は、母はつに、女学生時代の友達の旦那さんが間に入ってくれて金を貸してくれる人が見つかったと報告するが、はつは、その話にうさんくささを感じており、政代が渡した「東京ゴムのり 浦山五郎」と言う名刺を見ても、大丈夫かいな?と首を傾げていた。

そんな所に東京からひょっこり戻って来たのが京子で、パリに行くのを諦めたと言い、バイトで貯めた8万6000円を母親の政代に渡す。

ある日、SKDのメンバーたちは、バスで六甲の山並みを走っていたが、バスの中では、亀山が熟睡している中、早苗らが全員で「オ・ブレネリ」を歌っていた。

到着した神社で、早苗と共に絵馬を飾って、大阪公演の成功を祈った俊男は、早苗ちゃん、今度の舞台では君を抜擢して、ソロをやってもらおうと思っていると告げる。

早苗は、自信ないわ…、まだ…と戸惑うが、最初から巧く出来るはずないよ。稽古を重ねてだんだん出来るようになるものだからねと俊男は言い聞かす。

そんな早苗に、他の仲間たちがお汁粉を食べに行きましょうと声をかけて来る。

バスで、次の神社に到着した俊男は、6時までに旅館に戻って来るようにと、歌劇団メンバーらに言い渡すと、自由行動を許す。

俊男に頼まれ、早苗がナポリンら友人とバスの中に戻って起こした亀山は、早苗たちがバスからでて行くと、又、座席に1人残って居眠りを始める。

俊男は、石段を写真に収めようとカメラを除いていたが、そのレンズの中に、女性が入り込んだので注意しようと顔を上げると、振り向いたその女性は京子だった。

京子は愉快そうに、俊男さんがこちらに来ていると聞いていたので待ってたの。京都案内してあげる!と京子が笑いかけると、俊男も嬉しそうに礼を言う。

そんな仲睦まじい2人の姿を目撃してしまった早苗は表情が曇る。

その頃、東京の岡本玩具店の社長室に戻って来た文吉は、「夢の超特急」を注文しに行ったら、丸正から他の店に回すと言われましたと慌てて報告する。

すると、常造は、こちらから断ったんだとあっさり言い、これから山金さんに手形を500万割り引いてもらって来てくれと頼む。

その時、京子から電話がかかって来て、新しいデザイン画が出来たと言うので、常造はいそいそと出かけて行く。

文吉は、そんな常造の行動に呆れ果てていた。

京子の部屋にやって来た常造は、京子から、私のボーイフレンドに会っていただきたいんです。彼の方にも私のスポンサーに会わせたいんですと言い出したので、常造は会いましょうと承知する。

京子は、隣の部屋の俊男に、ケーキがあるので食べにいらっしゃいません?と誘う。

何も知らず、京子について、彼女の部屋にやって来た俊男は、そこで待っていた常造と対面し、互いに気まずい空気になる。

私、お2人が親子だと知ってましたの。お父様が芸術に理解ある方と言うのは羨ましいわ…と京子が皮肉を言ったので、常造は何も言えなくなってしまう。

その夜、バー「ちぐさ」にやって来た分吉は、旦那の悪口を町子や新平に聞かそうとするが、旦那がどうしたって?と隣の客から聞かれたので振り向くと、そこに座っていたのは常造その人だったので、固まってしまう。

常造は、水を飲んでいた文吉に何か作ってやってくれと頼むと、新平は、クセになりますよなどと言いながらも、ウィスキーを注いでやる。

アパートの方はどうしてる?いつまでもあんな所に置いとかないで、一緒になれよと冷やかしたので、文吉に町子以外の女がいると思い込んだ新平は、ママの町子に、文さん、ご結婚だそうですよと意外そうに教える。

そして、常造が先に帰ってしまったので、町子と新平は、水臭いわね~、文さんなどと言い、2人ともホワイトホースを注ぎ合って、祝杯代わりに飲み干すので、カウンター席の文吉は言い訳も出来ず、泣きそうになってしまう。

「光緑荘」で安木節のレコードをかけながら演出プランを考えていた俊男の部屋に差し入れを持って来た京子は、毎晩差し入れしてあげるわと言い出すが、たまたま、ドアの外にやって来た早苗は、仲睦まじい京子と俊男の会話を聞き、哀し気な表情になると、無言で立ち去ってしまう。

京都の岡本呉服店の電話が鳴り、女中が取り、女将の政代に渡す。

電話は、2000万を用意して京都の馴染みの京松旅館に泊まっていた常造からだったが、政代は、大変な事になってしまいましたの!御隠居が、直接先方に会わないと信用できないと言い出しまして…と、母親のはつが、融資先を疑っていることを打ち明ける。

電話を切って困ったことになったと悩んでいた常造の元に顔を出したのは、京松旅館の番頭(藤山寛美)だった。

番頭は、困ったことが出来たんだと言い、浮かない顔の常造を観て、この方のことでっか?私も苦労させてもらってますなどと小指を立ててみせたりする。

その夜、ホテルのレストランにやって来た政代とはつは、先に待っていた福田と言う相手のテーブルに座るが、その紳士風の福田と言う男が、実は京松旅館の番頭の変装とは気づかなかった。

番頭は、東京ゴムのりの浦山さんからご紹介を受けた福田ですと、打ち合わせ通りに挨拶する。

常造本人は、近くのバーのカウンターからそのテーブル席の様子を観ていた。

借用書を作ってきましたので、ハンコを…と福田こと番頭が差し出すと、それに目を通したはつが、お宅さんと東京ゴムのりさんのご関係は?といきなり聞いて来る。

番頭は突然の質問に戸惑うが、横から、政代が、ゴルフの知り合いとか?…と助け舟を出したので、窮地を脱することが出来る。

しかし、さらにはつは、利子が年に5分5厘では、銀行利子より安いのはどうしてですか?これから私たちは、預かったお金を銀行に預けて利益を得ることが出来ますが?と鋭い質問をして来る。

これにも番頭は戸惑い、うちは薄利多売で…、旅館に例えますと…などとしどろもどろ。

それでも、何とかその場で、風呂敷に包んで来た現金2000万を差し出す。

呉服店に戻って来た政代とはつから、現金で2000万を返された安西はあっけにとられる。

はつは、政代を有馬温泉に誘ってくださったそうですけど、私でも良ければご一緒しますで?と笑顔で嫌味を言う。

はつと政代は、これからお礼参りに出かけるので…と言い、そそくさと席を立って出て行き、後に残された安西の前には、女中がまずいお茶を3人分置いて行く。

知恩院に来ていたはつは、客を数名従えて、観光案内している京松旅館の番頭を観て驚く。

先ほど、2000万を渡された福田と名乗った男だったからだ。

どうもおかしいと思ったわと詰め寄ったはつは、番頭の法被を握りしめると、本当の相手に会わせろと迫る。

その頃、常造と政代は、神社近くの料亭で会っていた。

京子さんが息子のボーイフレンドとは知りませんでしたと常造が報告すると、その内、私たちの昔のことも分かるでしょうね…と、政代も恥ずかしそうに微笑む。

その料亭に番頭を案内させて来たはつは、料亭から出て来た政代と常造の姿に気づき、神社内に身を隠す。

そんなはつに気づかない常造が、お嬢さん、良かったら、これから一緒にお食事でも?フグのうまい店を知ってるんですよなどと政代を誘いながら歩いて行くのを、隠れていたはつはしっかり目撃していた。

その後、帰宅した政代が、古い昔のアルバムを眺めていたはつに、晩ご飯、何にしましょう?と聞くと、フグにでもしましょうか?とはつが言い出したので、政代はあっけにとられる。

はつは、そんな政代に、番頭の常どん、覚えてますか?どないしてはるやろ…、その後…などと聞き、しっかりした人やったな…、今でも常どんがいてくれたら…と感慨深気に呟くと、頼りない番頭ですみません…と店の番頭が頭を下げて座っていた。

聞いてたんかいな?とはつが驚くと、フグ、注文しときましょうか?とまで番頭が言うので、はつは笑って許す。

女中のけい子の所に来た番頭は、京のおかず、フグやでと報告するが、けい子は、ちくわと大根の煮物や…と醒めた顔で言うので、ほんまにフグやと番頭は教える。

後日、状況したはつは、「ふじや 杉山商店」を訪ね当てる。

店に入って来たはつは、そこにいた文吉と出会い、ああ、あの時の!と、互いに「光緑荘」の俊男の部屋で出会った時の事を思い出す。

京子のアパートで会いましたなとはつが言うと、文吉も、うちの若旦那があのアパートにいたんですよと教える。

それを聞いたはつは、じゃあ、京子のお隣の人が、ここのボンボンでっか?そうですか…と考え込んだようになると、忘れ物しましたさかい…と言い残し、急いで店を出ようとしたので、文吉ははつが信玄袋を置き忘れていることを教える。

「光緑荘」では、俊男が劇場に出かけようとしていたが、それを見かけた京子が、サンドウィッチを作ったの。食べて行かない?と呼び止め、俊男も喜んで京子の部屋に入って行く。

そこに突然、はつがやって来たので、俊男はすぐに部屋を出ようとするが、せっかく京子が作ったものですから、持って行ってやってくださいとサンドウィッチをたくさん俊男に持たせてやる。

京子は、突然の祖母の状況に驚きながらも、今のボーイフレンドかい?と聞いて来たはつに、私のボーイフレンドの中でも最高だわと嬉しそうに報告する。

引っ越しの時に来ていたお嬢さんはどうなんでしょう?とはつが聞くと、早苗さん?彼女も好きなんじゃないかしら?しょっちゅう来てるわよと、京子はさらっと言う。

その早苗は、国際劇場で、次の公演のソロとして、猛特訓の最中だった。

しかし、彼女は何か様子が変で、稽古に身が入ってないようだったので、俊男は叱りつける。

亀山が、小休止を提案するが、俊男は早苗だけ残して、近頃の君はおかしいぜと指摘し、稽古を続行させる。

そんな練習を観に来たのが京子だった。

六助爺さんは、初日2日前だから、普通は断るんだが、今日は特別な…と気を利かし、練習場に連れて来てやるが、必死に練習を続けている早苗と俊男の姿を目の当たりにした京子は、その気迫に圧倒される。

あの2人は今に偉くなるよ。わしはお似合いだと思うんだがな…と嬉しそうに話す六助爺さんの言葉を聞いた京子は、何を思ったか、そそくさと帰ってしまう。

その後、劇場の屋上に来て1人休憩を取っていた早苗の元に、六助爺さんがはつを連れて上がって来る。

はつは戸惑う早苗に、その節は…と挨拶して近づくと、お聞きしたいことがおまして…、言い難おすねんと前置きしながら、あんたはん、俊男さんと婚約のお約束でも…とはつは無遠慮に問いただす。

早苗は驚きながらも、ただの先生と生徒ですと答えたので、それを聞いて安心どす。うちの京子が、俊男さん好きらしおすねん…とはつは喜ぶ。

昔、親同士の仲を裂いたことがあるので、その埋め合わせのつもりで、あの2人、一緒にさせよう思ってますねんとはつは言う。

バー「ちぐさ」に帰って来た早苗の様子がおかしかったので、姉でママの町子は、どうしたの?と聞き、客として来ていた文吉も、うちの若旦那のこと?と声をかけるが、早苗は何も答えず奥に引っ込んでしまう。

文吉は、若旦那と早苗ちゃんのこと早くまとめないと、俺とマダムのことが…と町子を見つめて囁きかけるが、横で聞いていたバーテンの新平は、前のアパートの女の話は?と混ぜっ返したので、もう良いんだ!と文吉はすねる。

「光緑荘」の京子の部屋に突然やって来た政代は、おばあちゃんは?と聞くので、浅草よと京子が驚いたように教えると、じゃあ、祖母急病、すぐ上京されたしと言うこの電報は何?と政代の方も戸惑う。

そんな電報、私、出してないわよ…と京子も唖然としていたが、そこに戻って来たはつが、嬉しそうに、うちはぴんぴんしてまっせ。おみくじ引いたら大吉だっせ、縁談整うべし…やてと報告する。

京子の縁談のことよ。最高のボーイフレンドなら、他所の娘さんにも狙われますとはつは言い出すと、俊男さんのことなの。相手の家も玩具屋さんとか…、家柄もつり合うとりますと政代に一方的に聞かせる。

早苗さんと会ったの?どうしてそんなバカなことしたの?と京子ははつを叱るが、はつは、向うの親御はんに会いに行こう思うてますねんと平然と言ってのける。

話を聞いていた政代は、これ以上はつを騙せないと感じ、実はお母様には隠し事が…、俊男さんのお父はん言うのは…、昔…と言い難そうに話し始める。

どないしたん?とはつが後をせかすと、うちにいた…と政代は口ごもるが、そこにひょっこりやって来たのが、その常造本人だった。

京子目当てでにこやかに部屋に上がり込んで来た常造は、そこに御隠居のはつと政代もいることに気づき、思わず逃げ出そうとする。

そんな常造を引き止めたはつに、常造は諦めたように、しばらく振りでございましたと挨拶する。

その頃、劇場の稽古場では、俊男に早苗が行方不明になった。お店に行っても、お姉さんも分たないんですって…と友達が報告していた。

バー「ちぐさ」にやって来た京子は、姉の町子に、自分の祖母が勝手に、早苗さんに失礼なことを言ったらしいと詫びるが、早苗は、俊男さんが煮え切らないのは、あなたのせいだと思っているの。あなたはどうなの?と町子は京子の本心を尋ねる。

好きです!と答えた京子だったが、それでも、稽古をしている2人を観たら、早苗さんと俊男さんの間には入り込めないものがあると分かったので、このままではいけないと思って…と、この店に来た理由を告白する。

それを聞いた町子は、これから私と一緒に熱海に行ってくれない?叔父が熱海で住職をやっているの。明日の舞台に間に合わせてやりましょう。今日はもう店を閉めるわと京子に頼む。

夜の熱海

寺の庭先で1人思い悩んでいた早苗は、突然、姉の町子と京子がやって来たので驚く。

京子さんが、あなたにお話があるんですって…、聞いてくれない?と、町子は妹に言う。

その頃、「光緑荘」の京子の部屋では、はつと政代、常造が、出前の寿司を前に談笑していた。

はつは、かつて、政代の常造の仲を裂いたことを詫びるが、時代が悪かったのよ、おばあちゃんが悪いんじゃないわ…と政代が慰める。

3人は無事和解するが、今度は、京子の帰りが遅いことを心配し始める。

早苗を探しに、バー「ちぐさ」にやって来た文吉と俊男だったが、店が閉まっていることを知ると、ダメか…とがっかりする。

翌朝、劇場の事務所に泊まり込んで寝ていた俊男を、文吉が起こしに来て、早苗さんの居所が分かった。バーテンに聞いたら、熱海にいるんですってと教える。

今から行けば、開演に間に合いますと言うので、2人はタクシーで熱海に急ぐ。

寺で掃き掃除をしていた小僧に、東京から来た娘さんはいませんか?と聞くと、1人で錦ヶ浦に行きましたよと言うではないか!

錦ヶ浦と言えば、自殺の名所でもあったので、2人は慌てて探しに向かう。

早苗ちゃ~ん!と呼びかけていた2人は、青い服を着た女性が崖っぷちに佇んでいたので、恐る恐る近づくと、振り返ったのは京子だった。

きれいな景色だったのでスケッチに来たのよ。早苗さんなら今朝早く東京へ帰りました。俊男さんの舞台に穴を空けちゃいけないって、とても張り切ってたわと言うではないか。

それを聞いた文吉と俊男は喜ぶが、演出家が間に合ってないよ!と互いに顔を見合わせる。

劇場で、衣装に着替えた仲間たちの元に戻って来た早苗は、そこにいた亀山に謝るが、亀山は、出るんだったら早く仕度をしたまえ!と厳しい表情ながら優しい言葉をかける。

杉山先生は?と早苗が聞くと、病気で休んでいると言うので驚く。

「杉山商店」の応接室にいた常造、はつ、政代らは、俊男が盲腸で病院に行ったと聞き驚いていた。

そこに、文吉が戻って来て、無事解決しました!と笑顔で報告するが、何のことか分からない常吉たちの顔を見て、きちんと説明してないことに気づく。

国際劇場の舞台では、早苗を中心とした安木節の踊りが始まっていた。

それを脇から凝視していた亀山の元に、先生、すみませんでした!と言いながら、俊男がやって来たので、君!盲腸じゃなかったのか?と驚くが、検査したら、ただの腹痛でしたと俊男はごまかす。

そこに、いつも通り来々軒の出前持ちがやって来たので、2人とも、ラーメンの大盛りを注文する。

店に戻ろうと仕掛けた出前持ちは、持っていた胡椒の瓶を、先生、これ持っていてくださいと言いそのまま俊男に渡して行く。

すると、亀山が又くしゃみを始めたので、俊男は急いで胡椒の瓶をポケットの中に仕舞う。

そんな客席には、京子がやって来る。

一幕目が終わり、着替えに舞台袖に引き上げてきた京子は、そこに俊男がいたので、先生、盲腸じゃなかったんですか?と驚く。

俊男が、君を迎えに熱海まで行ってたんだよと打ち明けると、早苗は嬉しそうに楽屋に戻って行く。

客席には、文吉が、常吉、政代、はつの3人を連れて来て、外国人の前の列の京子の隣に座らせると、自分はコレが待ってますからと常吉に小指を示し、後ろで座っていた町子の隣に向かう。

はつは、隣に座っていた京子に、文吉どんからみんな聞いたわ。あんた、いい子じゃないと嬉しそうに褒めると、だって、おばあちゃんの孫だもんと京子は笑顔で答える。

パリに行ったらどうや?おばあちゃんがへそくり出したるさかいとはつは京子に囁きかける。

舞台では、早苗が元気良く歌い踊っていた。