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メキシコ無宿

宍戸錠主演の無国籍アクション…と言うか、メキシコロケを敢行した和製西部劇映画である。

メキシコ人らしき俳優も出ているので、日本語、スペイン語入り交じったセリフになっている。

基本、日本人俳優は日本語で会話をしているが、冒頭に出て来る若山富三郎そっくりのペドロは、スペイン語と日本語を使い分けているし、セリフが多いマリアやフェルナンドは日本語吹替え、エミリオやその父親はスペイン語のセリフで日本語字幕が出る。

藤村有弘はジョーなどと話すときは普通の日本語だが、現地の俳優と話しているときは、スペイン語なのか、いつものインチキ外国語に、本人の吹き替えをかぶせているのだろうか?

話自体は、もっとハチャメチャなオバカ映画のような物を想像していたが、観てみると、案外まともに作られた娯楽映画だった。

日本では危険な仕事ばかりやる何でも屋ジョーが、メキシコに渡った途端、銃の早撃ちも乗馬も得意なスーパーガンマンにあっさり変貌している所などは、奇妙と言えば奇妙なのだが、その辺は、宍戸錠と言うキャラクターが好きな当時の観客にとっては、ご愛嬌のような物だったのだろう。

最初から、後半部分は「西部劇」そのものだと割り切って観れば、それなりに型通りの展開に見える。

ラストは、小林旭の渡り鳥シリーズ同様、明らかに人を撃って怪我をさせているのに、何のお咎めもなしに、ヒーローとして見送られながら、去って行くと言うナンセンス振り。

前半の道中記もご都合主義の連続なのだが、その辺が気になるようなら、この種の映画は楽しめないかもしれない。

あくまでも童心に戻って、「西部劇ごっこ」、ガンマンになりきった宍戸錠を楽しむ作品だろう。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1962年、日活、星川清司脚本、蔵原惟繕監督作品。

夕焼けの地平線を眺める男のシルエット

タイトル

港で、何事か大声で叫びながら誰かを追って走るメキシコ人ペドロ・ラビスタ(アントニオ・メディーナ)。

途中で転んで男を見失ったペドロは、その辺にいた船員に訴えかけるが、警察へ行けと教えられたのか、その通り、地元の警察署で被害届を出した痕、とぼとぼと港に戻って来る。

その後、ペドロは、港内の食堂の前で飯をかき込んでいたカッパ(光沢でんすけ)や海坊主(土方弘)に3日で170万ペソ、500万稼ぎたいと訴え、笑われる。

返せ!俺の金、返せ!と言いながら、その後、酔っぱらったペドロは、町の宝飾店のショーウィンドーの前まで来ると、落ちていた石を拾い上げる。

その手を押さえて、バカな真似をすると刑務所行きよと止めたのは、赤沢テル(中原早苗)だった。

ペドロは、3年貯めた命より大事な金を取られた。日本人、悪い!と愚痴をこぼすが、そこにやって来た海坊主たちが、テルちゃん、ジョー知らない?と、どうやら、子供の命を救った危険屋ジョーこと野中錠(宍戸錠)のことが載っている新聞を見せながら聞く。

酒場で飲んでいたジョーは、今回の仕事は子供が絡んでいるので70万って所かな?などと謝礼金のことを噂していたが、そこに使いから戻って来た男が、100万だったと教えると、急に怒り出し、返して来い!俺は銭金でやったんじゃねえ!子供の命が助かりゃ良いんだ!と言い張る。

そんな店にやって来たテルは、連れて来たペドロをジョーに紹介し、相棒に使ってやってよと頼む。

その時、店のピアノを弾き出した平田美也子(笹森礼子)があまりにも可愛らしかったので、店内で飲んでいた外国人船員たちが好奇の目を注ぎ始める。

ジョーも目をつけ、キューピーのような大きい目をしているね。ピーさんなどと言ってからかうと、気持ちいいでしょうね、英雄気取りで…と美也子も皮肉で返す。

するとジョーは、急に俺も歌うと言い出し、流れ者だよ、明日のことは風の野郎に聞いてくれ~♪と歌い出す。

その歌をきっかけに、店内ではあちこちで喧嘩騒ぎが始まる。

ジョーも巻き込まれ、殴り合いをやっているうちにパトカーのサイレン音が近づいて来る。

翌朝、留置場内で目覚めたジョーは、雑魚寝していた他人の裸足の足が鼻の前に来ていることに気づき、顔をしかめてはねのける。

その時、窓の鉄柵を握りしめ、朝日に向かって、サンタ•マリア!などと祈っている姿を目にする。

そんなペドロに、俺と組む度胸はあるか?とジョーは話しかける。

それからジョーはペドロと組み、地面に落とせば4km四方が吹っ飛ぶと言うニトログリセリンのドラム缶をトラックの荷台に運び上げる仕事や、ビルの建設現場に取り残されたけが人を下まで運ぶ、超危険な仕事をやり始める。

けが人を背負ったジョーの命綱を握っていたペドロは、途中、ジョーが足場から落ちかけるのを支え、血まみれになった手の痛みから逃れようと、ロープを持っていたナイフで切断しかけるが、途中でそれを捨て、必死になって、2人分の体重を持ち上げる。

無事、足場に戻ったジョーは、ペドロと抱き合って喜ぶ。

この2人の活躍は、港中の評判になる。

酒場では、傷ついた左手に包帯を巻いたペドロに近寄って来た海坊主が、俺はお前のアミーゴだぜなどと片言の日本語で話しかけ、握手を求めて来る。

そんなジョーとペドロに、美也子も、兄を訪ねるためメキシコに明後日出発するのであちらのことを教えてと頼むが、何故かペドロは、メキシコのこと、何も話したくないと拒絶する。

美也子は、アメリカに医学の勉強で渡った兄が、メキシコで行方不明になっているのだと打ち明けると、お礼に何か弾きましょうとピアノに向かいかける。

すると、突然、ペドロが、俺が歌う。国の歌を…と言い出し、自らギターを奏でながら歌い始める。

その歌声に、海坊主たちもうっとり聞き入るのだった。

その後、夕日の屋外でも歌っていたペドロだったが、突然、マリア~!と叫んだので、ジョーがどうしたんだ?と聞くと、もうすぐ出航だ、時間がない!俺はメキシコへ帰らなければ行けないんだ!後2日しかない!とペドロは焦る気持ちを吐露する。

ジョーは、俺に任せてくれと請け負う。

ジョーがもらって来た次の仕事は、海上で火災を起こし、船員たちが逃げ出した無人の密輸船の中の金庫からトランクを持ち出して来ると言うものだった。

ジョーは、依頼人の中国人に300万円と吹っかける。

中国人はその金額に驚くが、海上保安庁の監視艇が迫っていることを教えると、仕方がないと言う風に承知し、金庫も暗証番号をジョーに手渡す。

その直後、ジョーは、先に舟に乗り込もうと歩き出したペドロの頭を殴りつけ、気絶させると、仕事は俺1人でやる。お前は無傷で国に帰れと声をかけ、火の燃え盛る密輸船に単身乗り込んで行く。

そして、金庫を見つけたジョーは、渡された紙片に書かれた暗証番号を頼りに鍵を開け始める。

金庫の周囲には、爆薬の入った木箱が何個も積まれており、火が引火すれば大爆発する寸前の状態だった。

その頃、中国人の舟で気がついたペドロは、ジョーが一人で船に乗り込んだことを中国人から聞くと、俺は卑怯者じゃないと言い、止めようとする中国人の手を振り払って、自分も舟に乗り込む。

その直後、何とか金庫を開け、中に入っていたトランクを取り出したジョーが中国人の元に戻って来るが、そこにペドロがいないことに気づき、何が起こったかを悟る。

すでに密輸船は炎に包まれており、中国人は舟を走らせて離れていたが、ジョーは、ばかやろう!舟を戻すんだ!と中国人に迫る。

火の廻った密輸船の中では、ペドロが必死にジョーの姿を求めて探しまわっていた。

その直後、密輸船はジョーの目の前で大爆発を起こす。

信じられないと言う風に目を見開いて惨状を見守るジョー。

その後、何とか見つけたペドロの身体を病院に連れて来たジョーだったが、全身大火傷を負ったペドロに開腹の見込みはないようで、診察した医者も首を振りながら病室を出て行ってしまう。

病室に1人残ったジョーに、俺は卑怯者だったか?と聞くペドロ。

ジョーが首を振ると、俺は男になれた…、しかしメキシコにいた俺はそうじゃなかった。マリアは世界でたった1人の恋人、フェルナンドは世界でたった1人の弟…、ジョー、俺の代わりにメキシコに行って、俺は卑怯者じゃなかったと言ってくれ。そして、俺の貯めた金で失った農場を買い戻してくれとマリアに伝えてくれと頼むと、ジョーに金を渡し、俺はジョーに会えて幸せだった…と言い残し、息絶えてしまう。

ジョーは、そんなペドロの胸に、自分の帽子をそっと置いてやるのだった。

いよいよメキシコ行きの舟が出港する日が来る。

ジョーはと言えば、その舟の缶焚きをしていた。

一緒にボイラーに石炭を入れていた仲間(榎木兵衛)が、ジョーがズボンの腹の部分に挟んでいた札束をちらちら覗き込むので、ジョーは、貴様、今俺が何を考えているか分かるか!と言って脅す。

それを盗んだら、俺はこの1800°もあるボイラーに叩き込まれるんだろ?と仲間が恐れながら答え、でもそんなに金を持っているのなら、何でこんな仕事をやってるんだ?と聞いて来る。

俺は文無しで、この金は大事な人に渡す物だからだとジョーは教えるが、仲間は、分かんねえな?と首を傾げる。

その後ジョーは、とうとうメキシコのアカプルコ港に到着する。

地元民に慣れない言葉で話しかけ、バスの乗り場を何とか教わったジョーは、バスでメキシコシティを目指すが、そのバスは途中までだったので、ジョーは無理矢理降ろされてしまう。

ジョーは、その近くでヤシの実を割っていた男に、自分に割らせてくれとジェスチャーで伝え、中のジュースを飲み始める。

すると、そのヤシを買ったらしき婦人が魚を差し出しながら文句を言って来たので、その魚を買うことにし、50ペソを払うと、俺は日本人だ。アディオス!と周囲の住民たちに挨拶をして、道路に出ると、たまたま通りかかったトラックの荷台に飛び乗る。

やがて、運転手がトラックを停め、降りて、外でジュースを飲み始めると、助手席にジョーがこっそり乗り込む。

それに気づいた運転手は文句を言って来るが、ジョーは、メキシコシティに行きたいんだよ!と身振り手振りで説明、何とか乗せてもらうことに成功するが、途中、牛が道の真ん中にたむろして走路を妨害していたので、ジョーが気を利かして車を降り、牛を追い払おうとすると、運転席の運転手が、空に向かって拳銃をぶっ放す。

その音に驚いて牛が動き始めたので、ジョーは巧く行ったな!と運転手に声をかけ、トラックに戻ろうとするが、その途端、トラックは発車し、ジョーは道の真ん中に取り残される。

その後、落胆していたジョーの元に、靴磨きの少年が近寄って来る。

ジョーは、その子供にバスストップの場所を聞いたジョーは、何とか、バスに乗ってメキシコシティへ向かう。

出発間際に、靴磨きの少年もバスに飛び乗って来る。

その少年は、運転手に自由に札束を渡していたジョーの様子を覗き観ており、ジョーが革命記念日で賑わうメキシコシティに到着してバスを降りたジョーの背後からぶつかって来て、札束をそっくり持ち去られてしまう。

掏られたと悟ったジョーは、その靴磨き少年を追いかけるが、少年はパレードを観る人ごみの中に紛れなかなか捕まらない。

やがて、子供を追いかけ回しているジョーの方を怪しんで警官がジョーを捕まえてしまう。

ジョーは必死にあいつが犯人だ!と叫ぶが言葉が通じない。

その時、人ごみの中から出て来て、ジョーのことを説明してくれたのは、何と平田美也子だった。

警官は、その美也子の説明を聞いて、ようやくジョーを解放してくれ、子供の後を追って行くが、その後、いつまで経っても警官は戻って来なかった。

どうやらその警官もあの子供とグルだったに違いないと感じたジョーは、美也子が親切でしてくれたことに対し、余計なことをしてくれた!と文句を言い始める。

そんなジョーに腹を立てたのか、美也子は自分の金を少し渡そうとすると、後は泥棒でも何でもするが良いわ!と言い放ち、去って行こうとする。

ジョーは慌てて追いかけると、八つ当たりしたことを詫び、兄さんはどうした?見つからないのかいと話しかける。

パレードが見渡せる建物の上で、ようやく美也子と落ち着いたジョーは、スペイン語を教えてくれと頼むと、農場を買い戻したい。マリアはどこだ?ペドロは卑怯者じゃない。誰それは死んだ、帰らないと言う言葉の翻訳を頼むが、最期の言葉を聞いた美也子は、からかわれていると思ったのか、笑いながら去って行く。

その後、ジョーは、美也子から教わったいくつかのスペイン語を反復しながら、ペドロの故郷の村グアナルタへ小さな乗り合い馬車で向かう。

ペドロの名を出して練習をしていたジョーの言葉を聞いた御者が、村に到着すると、ジョーのことを村人たちに告げ口したらしく、途中で眠っていたジョーが馬車の荷台で目覚めると、周囲には村人たちが集まり、何故かジョーの方を睨みつけていた。

馬車を降りたジョーは、マリアはどこだ?俺はマリアに会いたいんだ!と身振り手振りで話かけてみるが、住民たちは何も答えようとはしなかった。

しかし、そんな中、農地で働いていたマリヤ・フェレーロ(パトリシア・コンデ)に、ペドロを知ってるハポネ(日本人)がやって来たと友達の女が知らせに来て、馬車の所まで連れて来る。

ジョーは、村人が自分に対して敵愾心を持っている意味が分からなかったが、村人は、卑怯者のペドロの友達だと、ジョーのことを教えあっていた。

そんなジョーに近づいたマリアは、ペドロに会わせて!と迫るが、村人たちは、そんな奴と話すな!誰がマリアを連れて来たんだ!と口々に文句を言う。

マリアはジョーを、サルバドールと言う人物を探しに、アンドレアの屋敷に連れて来る。

サルバドールは留守かと思われたが、井戸の背後に酔いつぶれていただけだった。

ジョーは、その酔ったサルバドールが日本人だと分かると、伝えてくれ!と通訳を頼むが、サルバドールは立つことすら出来ない状態だった。

マリアはジョーに、ペドロはどうして自分で出て来ないの?と聞く。

そこにやって来たアンドレア家主人ラモン・アンドレ(P・ペニュア)の息子エミリオ・アンドレア(S・バリオス)は、又貴様か!と村で会ったジョーを観ると、追い出そうとし、マリアに対しては、お前は汚らわしい百姓で終わる女ではないなどと言い寄ろうとする。

アンドレアと一緒にいたパンチョ・サンチェス(藤村有弘)は、ペドロをここのみんなは憎んでいるとジョーに教える。

その訳は、前いあの兄さんで前の村長だったセニョール•ドロリゲスをペドロが殺したからだと言う。

パンチョはジョーは、村長が殺されたと言う十字架が立てられた場所に連れて来ると、ロドリゲスはここで背中から撃たれたと教える。

さらに、昔、この村は、丘にはオリーブが実り、牛の馬も肥えていた良い村だったが、上流に金鉱が見つかり、その為に作ったダムが水の流れを変えてしまった。村長は私財を投げ打って、その採掘に反対していたし、金鉱を発見したのはペドロだったのだと言う。

その後、ジョーは町で拳銃を買っていた。

その頃、マリアの所に来た子供が、これで農場を買い戻してくださいと良い、20万ペソと言う大金を渡そうとしていた。

この金はどうしたの?フェルナンド!まさか?…とマリアは、ペドロの弟であるフェルナンド(バレンチン・トルヒヨ)を問いつめようとするが、フェルナンドは何も言わず立ち去ろうとする。

すると、村の子供たちに見つかり、卑怯者ペドロの弟ということで虐められる。

そこに駆けつけたマリアは、恥ずかしくないの?大勢で…、この子には何の罪もないわと村の子供たちを叱りつける。

そこに戻って来たジョーは、マリアが持っていた札束を観て、これは俺のだ!と驚く。

その後、床屋のパンチョの所にやって来たジョーは、マリアとの会話の通訳を頼む。

マリアは、ペドロの金なんて受け取りたくないと言っているとパンチョは通訳する。

そこに馬に乗ったエミリオがやって来て、マリアに、その男に何の用があると文句を言って来る。

パンチョはジョーに、あの馬もペドロの物だったのだと教える。

その日は村のお祭りだった。

ジョーは、ロディオが行われる会場に来ると、今年も俺が勝ちそうだと自慢していたエミリオに、この馬を賭けないか?とロディオの勝負を挑む。

ジョーが負けたら、この村を出て行くと聞くと、アンドレアは愉快そうに承知する。

ロディオが始まり、エミリオは落馬してしまうが、ジョーの方は最後まで馬を乗りこなすことに成功する。

ジョーはエミリオから奪い返した馬にフェルナンドを乗せ、先に村へ帰す。

気が収まらないエミリオは、パンチョに通訳させ、ピストルで再勝負しようと挑んで来る。

両者は、投げ上げられた瓶を撃ち落とす勝負をしていたが、なかなかけりがつかないので、1度に2つの的を撃つことにする。

先にエミリオが撃ち、2つの的に命中させる。

次いで、ジョーが同じように挑戦するが、その途中でどこからか狙撃されたので、ジョーは本能的に2発目をその狙撃犯目がけて撃つと、銃声のした方へ走って犯人を見つけようとする。

廃墟についたジョーは、そこに落ちていた血痕や柱についた血の手の痕を発見するが、肝心の狙撃犯を見つけることは出来なかった。

その時、廃墟内をうろついているサルバドールを発見したので、血の痕を見せると、どうして人間って、こう命を粗末にしたがるんだ…といつものように酔ったサルバドールは呟く。

そんなサルバドールが自宅に戻り、ドアの鍵を開けようとしていた時、兄さん!と背後から声をかけて来たのは平田美也子だった。

平田美也子こそ、美也子が日本から探しに来た兄の平田康雄(葉山良二)だったのだ。

部屋の中に入れてもらった美也子は、やっと会えたのに…、私たちの希望だったのに…と、すっかり人が変わってしまった兄のことを嘆く。

女手一つで育ててくれた母さんが何と思うかしら…と言う美也子の言葉を遮るように、帰って言ってくれ。康雄は死にましたって…と康雄が言うと、遅過ぎるわ。母さんは死にました。幸せに死んだわ。兄さんがアメリカから帰って来るのを夢見ていたんだから、もう少しの辛抱だと、私たちに言い残して…と美也子は冷たく教える。

その時、馬に乗ったフェルナンドが、サルバドールを呼びに来る。

美也子がドアを開けると、ジョーがマリアと通訳をしてくれと言っているとフェルナンドが言うので、ジョー?と美也子は驚く。

ジョーとマリアの元にやって来たのは美也子で、兄の代わりに来たと言う。

ジョーはこの金を渡してくれ。ペドロが命を賭けて稼いだ金だと美也子に通訳してもらうが、人殺しの金は受け取れないとマリアは拒否する。

本当にペドロが人殺しだと思っているのか?とジョーが聞くと、マリアも信じたくはなかったが、これが証拠で、これが兄の死体の側に落ちていたのだと、マリアは、自分がペドロから誕生日にもらったと言うペンダントを差し出しながら、哀し気に説明する。

マリアは、ジョーと美也子を残し、立ち去って行く。

翌朝、ジョーは、村はずれのあばら屋で目覚めると、フェルナンドを馬に乗せ、自分も乗って馬を歩かせながら、日本の子守り歌を歌い始める。

そのまま、床屋のパンチョの所に来ると、パンチョは、おや?あんたは村から出て行ったのでは?と不思議がられる。

ジョーは、アンドレアに用があると言い、屋敷に向かう。

屋敷に来たジョーから、農場を買い戻したいとの要望を聞いたラモン・アンドレは、ホセに書類入れを持ってこさせる。

その頃、美也子は、再び兄の康雄の部屋で、何が兄さんをこんなにしたの?と問いつめていた。

母さんやお前たちが俺をこうさせたんだ!その期待感に押しつぶされていたんだ!と康雄は叫ぶ。

俺は日本を離れたときから鎖を解き放たれたんだ!アメリカで初めて自由になれたんだ。夢中で遊び回った。気がついたら借金や間…、俺は危険な道に足を踏み込んだ。堕胎手術だ。そして、流れ流れてメキシコに来た。しかし俺は今の生活を後悔していない。借り物の優等生より今の生活の方が楽しいと康雄は言うと、表で待っていたトラックに乗り込み出かけて行ってしまう。

そこへジョーとフェルナンドがやって来る。

ジョーは、兄妹喧嘩か?3年振りって訳か…などと皮肉りながら、今、アンドレから渡された契約書を美也子に読んでもらい、サインしても大丈夫か確認したいと頼む。

その契約書を読んでいた美也子は突然泣き始めたので、どうしたって言うんだ?兄貴は?とジョーは聞く。

康雄は金山で怪我をした男の応急手当をしていた。

そこにやって来たジョーは、お粗末な金山の様子を見て、これじゃあ、事故が起こるのも不思議じゃないと嘆くと、何があったんだ、美也子さんと?と聞く。

康雄は、殴りたけりゃ殴れ。今の俺は日本人じゃない。サルバドール・ヒラタなんだと自嘲する。

そんな康雄に、性根を入れ替えてやる!とジョーは殴り掛かろうとするが、銃声が響き、近くで銃を持ったエミリオが、村から出て行ったんじゃなかったのか?と聞いて来る。

俺は勝負に負けちゃいないんだ。いずれ力を見せる時が来るさとジョーは言い、フェルナンドと共に馬に股がり帰って行く。

それを見送りながら、出て行かないって言ってるぜと康雄はエミリオにジョーの言葉を通訳する。

すると、エミリオは何事かを康雄に耳打ちして来る。

それを聞いた康雄は、驚いたような表情になり、嫌だ!と拒否する。

するとエミリオは、お前は、妹がどんな目に遭っても良いのか?と脅して来る。

ジョーはマリアに会うと。農場を買い戻す書類にサインをするように頼む。

その時、近くにいたフェルナンドが、又村の子供たちから虐められていたので、ジョーが助けに来る。

ジョーが憤ると、側で観ていた村人たちが、お前は卑怯者のアミーゴだからだ。子供を虐めることしか出来ないのか?と皮肉を言って来る。

その後、ジョーは村人と喧嘩になるが、マリアはじっとその様子を見守っていた。

殴り倒されたジョーを、ふん!意気地なし!と村人たちは嘲る。

そこにやって来たマリアは、立ち上がろうとして又倒れたジョーを観て、お前たちの方こそ、よっぽど卑怯者じゃないか!と村人を非難すると、ジョーを抱き起こして井戸の所に連れて来る。

ジョーは、頭を冷やして手当てしようとするマリアに、ペドロを信じてやってくれとなおも頼むが、あの人は兄を殺したのよ!とマリアも言い張り、あいつは勇気がある男だ!と主張するジョーと言いあいになる。

あんまりマリアが頑固なので、思わず、バカ!と言ってビンタしたジョーは、メキシコの女はそうなのか?どうして惚れた男を信じてやれないんだ?と責める。

すると、マリアは、泣きながらジョーの胸にすがりついて来る。

今でもペドロを愛しているわ。たった1人の兄を殺した男を愛しているわ!私は自分の心が憎い!そうマリアは訴える。

その後、マリアは、村人たちとたき火を囲んで踊っていた。

そんなマリアを誘い出したジョーは、これもお前に渡してくれって言われたんだ。ペドロは死んだ、もう帰って来ないんだと告げる。

それは、マリアが持っていたのと全く同じペンダントだった。

それを見たマリアは、そう言えば、エミリオにも同じペンダントを送ったわと思い出す。

それを聞いたジョーは、ペンダントが2つか…と考え込む。

これはエミリオのだな?と、マリアの兄の死体の側に落ちていたペンダントを観て言うと、じゃあ、エミリオが犯人だ!と気づく。

すぐに、アンドレアの屋敷に行き、扉を蹴破って中に入り込むが、ラモンが銃を撃って来たので、これはエミリオのだろう!と言いながらマリアから預かって来たペンダントを見せるが、ラモンは、知らん!出て行け!と言うだけだった。

その後ジョーは、町の酒場や村中を探しまわるが、エミリオの姿はなかった。

一旦、村はずれのあばら屋に戻って来たジョーは、エミリオが見つからないので苛ついていた。

そこに、パンチョがやって来て、フェルナンドが知人の家で盗みをやってしまい、逃げようとして屋根から落ちたと言う。

幸い、怪我は大した事がなく、病院のヒラタが手当てしてくれたが、私のアミーゴがあんたに会いたがっていると言うので、ジョーはパンチョの車で出かけることにする。

その知人宅と言う所に着いたので、入口から中に入ろうとしたジョーは、いきなり背後から発砲されので、階段を落ちサイロのような所に墜落する。

ジョーは、側にあった鋤を掴むと、入口から入って来た敵の胸に投げつける。

鋤は銃を撃った男の胸に刺さり、男は落下する。

その後も、敵が潜んでいたので銃を撃って応戦したジョーだったが、すぐに弾切れになる。

その時、入口付近に姿を現したパンチョは、ジョー!お前にはちょっとした借りがある。お前の弾が俺の左腕に残っているんだと声をかけて来る。

エミリオとのピストル勝負の時、狙撃して来たのはパンチョだったのだ。

フェルナンドはどこだ?とジョーが聞くと、金鉱だとパンチョは答える。

その時、パンチョの背後にいたエミリオが突然パンチョを射殺してしまう。

その隙を突いて、ジョーはサイロの外に逃げ出す。

ジョーは入り組んだ村の住宅の間を縫うように逃亡を図る。

背後からはエミリオ一派がおって来るが、応戦しようにも、もう銃に弾はなかった。

その時、村の教会の鐘の根が響いて来る。

その頃、マリアは、車で乗り付けて来たラモンから捕まり、無理矢理車に押し込まれていた。

ラモンは、息子のためだ、国境を越え、妻になるんだと命じる。

抵抗するマリアだったが、金鉱近くの水車小屋に連れて来られると中に押し込まれる。

そこには、先に捕まっていたフェルナンドがいたが、いつものように酒瓶を持ったサルバドールこと康雄がやって来たので、あなたは恥ずかしくないの!ジョーは死んだのよ!殺されたのよ!それと言うのも、あなたがフェルナンデスをこんな所に…とマリアは責める。

しかし、ジョーは死んでいなかった。

あばら屋に戻って来たジョーは、弾を込めたガンベルトを腰に付けると、エミリオから奪い返した馬に乗って、金鉱に向かう。

水車小屋では、エミリオがやって来ると、マリアとフェルナンドの姿がないので、康雄が勝手に逃がしたと気づき、突然その場で康雄の腕と足を撃ち、今に出血して死ぬ。死にたくなかったら自分で手当てしろ!と言い残し、出て行く。

その頃、ジョーのあばら屋にやって来た美也子は、馬に乗って遠ざかって行くジョーの後ろ姿を目撃していた。

マリアとフェルナンドは、金鉱内の窪地に身を潜めていたが、すぐにエミリオに見つかってしまう。

エミリオはフェルナンドを、こいつは仇の弟なんだ!と言いながら引きずり出そうとするが、その時、銃声が響く。

ジョーが駆けつけて来たのだ。

ジョーはマリアたちに、警察に行くんだ!と声をかけながら近づいて来る。

金鉱にいたエミリオの4人の子分たちが発砲して来たので、ジョーも側溝に身を隠しながら応戦する。

まずは、自分の帽子やトロッコなどを囮にして2人を仕留める。

マリアが、ジョーの背後から狙っている敵に気づき、声をかけたので、さらに2人を倒したジョーは、残ったエミリオに、1対1の男の勝負だ!貴様も男なら出て来い!と呼びかける。

それを聞いたエミリオの方も、ハポネス、出て来い!決闘はここでやろう!と呼び返しながら姿を現すが、ガンベルトの銃を掴もうとする右手は震えていた。

ジョーも姿を見せ、エミリオと対峙する。

その決闘の様子を、金鉱で働く鉱夫たちがじっと見守っていた。

その直後、エミリオが銃を抜こうとした瞬間、一瞬早く、ジョーの拳銃が火を噴き、エミリオは倒れる。

勝ったジョーに、マリアとフェルナンドが駆け寄って来るが、倒れたエミリオはまだ死んでおらず、側に落とした銃に左手を伸ばしていた。

ジョーさん!と美也子も近づいて来た時、ハポネス!と叫びながら、エミリオが銃を持って立ち上がると、皆殺しにしてやる!並べ!とジョーたちに命じる。

エミリオが引き金に手を当てた時、銃声が轟き、エミリオは倒れる。

背後には、銃を撃った康雄が、よろめいて倒れていた。

兄さん!美也子やジョーたちが康雄に駆け寄る。

美也子…、すまなかった!と康雄は美也子に詫びる。

一方、坑内から大きな袋を両手に持って出て来た父親のラモンは、息子のエミリオが死んでいることに気づくと、駆け寄り、そのまま金袋を持ったまま正気を失ったようになる。

教会の鐘がなる中、ジョーは馬に乗り、村を出ようとしていた。

それをフェルナンドや美也子と共に見送るマリアは、ジョー、ペドロもあなたも、私の中でいつまでも生きるでしょうと声をかける。

ジョーはフェルナンドに、下を向くんじゃない!いつも太陽を観るんだと声をかけ、美也子には、兄さんは?と聞く。

美也子は、命だけは…と答える。

じゃあ、東京で会おうな!と美也子に手を降って馬を走らせようとしたジョーに、今まで冷たかった村人が、送り賃だと言い、金を渡して来た。

アディオス!ジョーが走り去ると、残されたマリアとフェルナンドが、ジョー!と呼びかける。

ジョーが歌う歌をバックに、ジョーは、夕焼けの水平線に向かい、どこまでも馬を走らせるのだった。