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君の名は 第3部

1954年と言えば、「七人の侍」「二十四の瞳」「ゴジラ」など、錚々たる名作が出そろった年であるが、興行的にダントツの成績だったのは、この「君の名は 第三部」である。

2000年から興行収入発表になったので、配給収入発表だった当時と単純比較は出来ないが、「君の名は」3部作は、日本映画史上でも1、2を争うくらいの空前の大ヒットだったらしい。

今も昔も、興行成績と映画の質とは関連性がない良い見本だと思うが、では、この作品は、今や語るに足りない愚作かと言うとそう言う事でもない。

今観ても…と言うか、第一作、第二作と観て来たものにとっては、この完結編を観ないでは収まらない心理を巧く突いた通俗作である。

全国放送のNHK原作だけに、1作目では佐渡や伊豆、2作目では北海道、そして3作目の本作では九州と、全国の視聴者の関心を惹くような巧妙な設定になっている。

登場人物たちも、御節介焼きの綾とか、嫉妬で狂ってしまった夫の浜口とその母親など相変わらずの大活躍で、意志の弱いヒロインはますます運命に翻弄され、当時の女性たちをさぞやきもきさせた事だろう。

今なら、自ら望んだ結婚生活が夢のようなものではなかったと知ったヒロインが、過去の初恋の人の面影に逃避すると言うのはいかがなものかと、このヒロイン像に比定的な見方をする人も多いのではないかと思うが、当時は、女性の現実逃避の場が今のようになかった時代だと思うので、こうした弱いヒロインに自たを重ねて自分を哀れんだり、「人の不幸は密の味」みたいに心の奥底で満足感を得ていた観客もいたのではないか。

正直な所、この第三部は、全体的に面白みにやや欠ける印象がある。

完結編と言うこともあり、どう言う形にせよ、収束に向かう軌道を取っている展開だからであろう。

もはや、ここで大きな波乱は起きないと観客も予測するだろうし、事実その通りになっている。

では、この作品、盛り上がらないのか?と言うと、それなりにアイデアは盛り込まれている。

今でも通じる「病気もの」を持ち込んでいるためだ。

この為に、ラスト間近になって、急に通俗な緊迫感が増している。

ひょっとすると、この映画こそ、その後連綿と作られる事になる「純愛と病気もの」が流行る原点だったのではないだろうか?

真知子は、不幸と言うより「悲劇のヒロインごっこ」をしている雰囲気があるのに対し、本当に薄幸なのは梢の方で、今回さらに不幸が待ち構えている。

ヒロイン真知子ほど丁寧に描かれてない分、話の都合上、不幸を一手に背負わされているようにも見える。

その怪我と病気に関わって来る医者役として、三橋達也が登場しているのが意外な気がする。

東宝のイメージが強い人だと思っていたが、調べてみると、大映、松竹、日活と各社の仕事をやっておられ、そう言えば「ビルマの竪琴」(1956)や「洲崎パラダイス 赤信号」(1956)なんかは日活作品だったな…と思い出した。

後半、幸薄い梢のお相手役になりそうな描き方だが、いくら何でも、ご都合主義過ぎやしないか?

もう1人、新たな恋の邪魔者キャラとして登場しているのは大坂志郎。

邪魔者とは言っても、もう物語上、大きく展開しようがないので、最初から分別をわきまえた大人のキャラクターになっている。

さらに新たなキャラクターとして登場しているのは、浜口の次の結婚相手清宮美子である。

現代風のドライな感覚の娘として描かれており、わがまま放題で一見嫌な女に見えるのだが、彼女が、子離れできない浜口の母徳枝に引導を渡す重要な役目になっている。

離婚協議中にも関わらず、次の結婚相手と付き合っている浜口の行動そのものも不可解で、裁判では自分に不利になるのではないかと思うのだが、母親の徳枝も最初はむしろ歓迎しているように見える。

結局、終始御節介焼きで、この人がいなかったら、もっと話はシンプルになったのではないかとさえ思わせる綾がラストを締めているのも象徴的だ。

さすがに、3作目の本作は、これまで以上に「ご都合主義の連続」と言った感じで、バカバカしいと言ってしまえばそれまでだが、タイトルの知名度と興行成績で日本映画史にいまだに残っているこの作品を、何とか自分の目で全部観終えたと言う満足感はある。

本来のターゲットである女性の目で見ると、今でも全く違う感想が出て来るのではないだろうか?

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1954年、松竹、菊田一夫原作、柳井隆雄脚色、大庭秀雄監督作品。

爆音に富士山の松竹クレジット

第一部 第二部あらすじが紹介される。

空襲の夜、数寄屋橋の上で半年後の再会を約束して分かれた後宮春樹(佐田啓二)と浜口真知子(岸惠子)だったが、半年後も1年後にも会えず、ようやく1年半経った霧の深い夜、数寄屋橋の上で再会するが、そのとき既に、真知子が明日に結婚式を控えた夜だった。

しかし、真知子の結婚は幸福ではなかった。

ある激しい雨の日、真知子は結婚相手の勝則の家を飛び出し、おじとおばのいる佐渡に戻るが、何とその時、真知子は浜口の子供を宿していた。

尖閣湾の吊り橋にいた真知子を見つけ出した春樹は、子供の為に浜口の家に戻った方が良いと言い聞かせ、自分は北海道へ向かう。

しかし、東京へ戻った真知子を待っていたのは、冷たい家庭であった。

療養先の温泉で流産したのを義母から揶揄された真知子は、いたたまれなくなり自ら北海道の春樹の元へと向かう。

しかし、ユミの死

勝則の同居請求へ

2人は、雪の美幌駅で再び悲しい別れをしなければならなかった。(…と過去映像を背景にナレーション)

そして(と文字)

君の名は 第三部(とタイトル)

東京家庭裁判所に、夫浜口勝則(川喜多雄二)と共に出廷した真知子は、夫は私を訴えましたが、私は離婚の調停裁判を請求したいと思いますと申し述べる。

調停員たちは、同居請求と離婚請求は一緒に調停した方が良いと思うがと提案するが、浜口の方は、妻の離婚請求は取り上げる価値がないと思います。遠い北海道の果てまで行って、不倫がない等と言うはずがないと発言する。

申し立てにある後宮と言う人物は、来月東京へ出て来るはずだった。

浜口はさらに、誘拐罪で刑事事件にしても良い。被害者はあくまでも僕ですから…とまで言い出す。

一旦、退室を命じられた浜口が外に出ると、真知子に付き添って来たおばの角倉信枝(望月優子)が椅子に座っており、浜口の顔を見るなり、忌々しそうな表情で顔を背けてしまうのだった。

女性調停員が、不倫した事実がなくても、あなたが後宮さんと結婚したいのは事実でしょう?もう浜口家に戻る気はないのですか?と聞いて来ると、信じてもらおうとこれまでやって来たのですが、夫も義母もダメでしたと真知子は悲し気に証言する。

一般家庭に理想はありませんよと女性調定員は諭すが、我慢しろと言うんですか?と真知子も譲らない。

できれば…と答えた調停員は、離婚はなかなか難しいでしょうね。難航は覚悟していただかないと…と言葉を濁すのだった。

裁判所を出て、日比谷公園の音楽堂の所に真知子と共にやって来た信枝は、長引きそうじゃな…と同情する。

後宮さんを告訴するなんて…、私、どうして北海道なんかに行ってしまったんでしょう?と、真知子は自分の軽率さを責める。

そんな真知子に、あの木の枝だって春になれば芽も出し花も咲く。我慢しなさいよ…と信枝は言い聞かせるのだった。

小料理屋「佐渡」

それは、石川綾(淡島千景)が始めた自分の店だった。

その奥に、真知子と信枝は泊めてもらう事にする。

裁判に勝つまでここを使ってよと2人に話しかけていた綾だったが、使用人から女将さんと呼びかけられると、亭主もいないのに女将さんなんておかしいよねと自嘲して見せる。

裁判所に呼び出された後宮春樹は、被告人は不倫の関係を結び…と原告側の検察官が訴状を読み上げると、事実無根である!と否定する。

交際はどの程度の事だったんですか?と検察官が聞くと、妻に他人を介して手紙を出していたのです。広報課にいた時、歌舞伎座で会ったことがあります。二度と会わないと真知子は言っていたが、その後、被告人の下宿の二階の一室に、誘っておりますと、原告の浜口が訴える。

それを聞いていた春樹は、無理に会社を辞めさせられたので、お詫びに見えられたのですと反論するが、今は原告の陳述中だ、恥を知りたまえ!と裁判長が注意したので、興奮した春樹は、あなたたちこそ恥を知りなさい!と抗議する。

あなたは、人の細君を馴れ馴れしく連れ出す人非人です!と検事が春樹を責める。

そんな裁判の傍聴人席から飛び出して来た真知子は、止めてください!後宮さんをそんなに虐めないでください!と訴える。

真知子は、「佐渡」の奥でうなされていた。

横で寝ていた信枝は、どないしなさった?夢を見たさったんだな…と声をかける。

ある日、真知子は、役所の永橋局長、今や副知事(柳永二郎)から電話をもらい、とあるホテルで会う事になる。

あれから熊本の方に移ったんだが、大変な事になってるそうだね?と永橋副知事は真知子に聞いて来る。

昨日、役所で浜口君と会ったんだが、嫉妬心から復讐心を起こしているんじゃないかと思う。調停員なったつもりで、あなたの身を私に預からせてもらえないか?私の保護のもとに、後宮君とは会わないようにしてくれないか?そうすれば、浜口君も考えると言っている。今は意地になっているからね。法廷で争っても、すぐには解決しないでしょう。おばさんと一緒だそうだから、一つ考えてみてくださいと永橋局長は言ってくれる。

その後、北海道にいた春樹は、真知子は九州へ行ったよ。当分、あんたと会わないと言う条件で、浜口さんは告訴を取り下げさせたのです。早く東京へ帰って来てくださいと書かれた綾からの手紙を読んでいた。

美幌駅に東京へ帰る春樹を見送りに来た末永(磯野秋雄)は、お前の心の傷を直そうと思って呼んだんだが、かえってお前の心の傷を深くしたようなものだったな。又、真知子さんと北海道へ来てくれ。俺はその日の来るのを待ってるよと伝える。

そこに汽車が到着し、春樹は乗り込むと東京へと向かう。

列車の中、春樹は、駅で末永が言った「かえってお前の心の傷を深くしたようなものだったな」と言う言葉を思い返していた。

九州 雲仙

ホテルに車が到着する。

そのホテル内で事務の仕事をしていた真知子は、永橋副知事が来たと言う知らせを受け、ロビーに挨拶に向かう。

永橋副知事は、散歩でもしましょうか?支配人には私が断るからと言って真知子を外の雲仙地獄付近に誘う。

昨日、浜口君から手紙が来て、離婚しても良いと言って来た。ただ大変な条件がついて来た。君が後宮君以外の男と結婚した場合に限ると言うことだ。浜口と言う男も、あなたの事になると、心が汚れ過ぎている。以前はまじめ過ぎる青年だと思っていたのに…、一旦曲がるとどうしようもないと言うことだろうね。困った事だと永橋局長が伝えると、仕方ございませんと真知子は答えるしかなかった。

その後、永橋と分かれて散策中の真知子に、副知事とは何を話しておられたのですか?と声をかけて来たのは、201号室に泊まっている副島渡(大坂志郎)と言う客だった。

あなたには、暗くて不幸な影があるような気がして、密かに胸を痛めとったところですたいと九州弁で副島は言う。

一方、春樹に会う為に、東京の「女性評論社」編集部にやって来た綾は、帰りかけていた編集長(清水一郎)にコートを着せてやる。

編集長は、女房への土産を持って帰って行くが、その後、何気なく、机の上に置かれていた名刺を観た綾は、それが浜口勝則のものである事を知る。

その時、これでも譲歩したつもりだ。君もよく考えてくれたまえと別室から声がして、出て来たのはやはり浜口だったので、綾は驚く。

浜口の方も綾を観て驚いたようだったが、何も話しかけず外に出ると、女が乗っていた車に同乗する。

今の時代、離婚なんて簡単だと思っていたわ。前の奥さん、きれいなんですってね?私、怖いわと浜口に話しかけて来た女は、次官の娘仁川美子(紙京子)だった。

2人が乗った車は、人だかりがしている横を通り過ぎる。

何かあったの?と美子が窓から外にいた野次馬に聞くと、間の子が轢かれたんですってと知らされる。

春樹に再開した綾は、うちに来てゆっくり話しない?と誘うが、その時、あさから電話がかかって来て、梢の息子、俊樹(太田良士)が車に轢かれて入院したと知る。

すぐさま病院に向かった綾と春樹だったが、あさ(野添ひとみ)が言うには、轢いた車は知らん顔して行っちゃったらしい。

あさと共に先に来ていた加瀬田修造(笠智衆)が、今、手術が終わった所だと知らせに来る。

春樹は梢(小林トシ子)に、災難だったね。気をしっかり持つんだよと言葉をかける。

綾が手術室から出て来た医者に、大丈夫でしょうか?と聞くと、今夜を越せば…と思うんですが…と言葉を濁す。

どんなかたわになっても構いません。命だけは助けてやってください!と梢が頼むと、静かにしたまえ!と叱って来たのは、医者の野島八郎(三橋達也)だった。

どうしてみんなこう不幸せなんだろう?良い人間ばかりなのに…、後宮さん、数寄屋橋が見えるわよ。真知子、どうしているだろうね?と綾が話しかけると、ねえ、綾さん、突然なんだが、近いうちに欧州へ行くかも知れないんだ、特派員として…と春樹が言い出したので、驚いた綾は、真知子をこのままにしてかい?と問いかける。

風吹けば~♪(病院の窓から観える銀座のネオンと数寄屋橋を背景に歌が流れる)

雲仙では、副島が花ぼうろ(霧氷)の森を真知子に見せに来ていた。

まるで夢のようですわ。自然ってどうして美しいんでしょう…と真知子が呟くと、自然の美しさに感動するのは、人間が不幸だからでしょう。あなたも不幸じゃなかとですか?と副島は聞く。

そして副島は、あなたに結婚を申し込もうと思うとるとです。何もかも聞いとります。後宮なる人物以外の男なら離婚が認められるちゅうじゃないですかと言い出す。

あなたは僕が長い事求めとった女性だから、僕と結婚してくれっませんか?表向きだけで良いんです。その後の事はあなたの自由なんです。後宮と言う方と結婚なさろうと、私と結婚しようと…、面白くなかですか?と副島は訴える。

真知子は、話をはぐらせるしかなかった。

その頃、浜口の屋敷に来ていた春樹は、最後的回答を浜口に突きつけていた。

僕は始めは君と真知子に同情的に動いたんだ。でも君はいなかったよ。僕らの結婚は真知子の方で言い始めた事だ。浜木綿の海でね。僕は幸福だったよ。その後1年は幸福に安住していたと思う。その時、君が現れた。僕が新潟から転勤して来たときだった。僕は君と真知子に挟まれて、どんなにみじめだったか。君たちが結ばれたら、どんなに僕はみじめか。男に取って、如何に屈辱的な事か…と浜口は訥々と語る。

それに対し、巡り合わせだったのでしょう。真知子をこうしたのは、みんなあなたがなさった事じゃないですか。私と真知子は一片の過ちも犯してない。しかし、今となっては別です。僕は真知子さんと結婚するのは、それが義務だと思っているんですと春樹は訴える。

君がどう思おうと自由だ。しかし、真知子はまだ僕の妻だからね。僕が永久に離婚しなかったら、君はどうするつもりかね?と浜口が言うので、やむを得ません。あなたの心が溶けるまで永久に待ちますと春樹は答えるしかなかった。

そんな春樹に浜口は、これを読んでみたまえ、副島と言う男からだ。真知子と結婚したいと言って来ている。君はその手紙をどう思うね?君はその副島と言う男を知っているのかね?と聞きながら手紙を差し出す。

それに目を通した春樹は、知るはずもありませんと答えるが、僕は、君と真知子が組んでしたんじゃないかと思ったんだよ。しかし、そうではなかったとは…、君と話して良く分かったよ。後宮君、僕たちはお互いに真知子を愛し過ぎたようだと浜口は言うが、その時、浜口の母徳枝が、美子さんが見えましたよと知らせに来る。

春樹は、出発まで間がありませんので…と断り、浜口家を去る。

入れ違いにやって来た美子が本当に良いお家ですわと褒めると、徳枝は、お嬢さんお宅に比べれば物置みたいなものです。建て増しでもしませんと…と謙遜してみせる。

狭い方が合理的ですわとお世辞を言った美子は、私たちが結婚したら、お母様は静かなお家でも作るんですか?と聞くと、住み慣れた家ですから、ここで…と徳枝は答える。

すると美子は、そんなのおかしゅうございますわ。じゃあ、私たちが他に建てれば良いのねと美子が言うので、徳枝は愕然とし、お嬢様は結婚したら、夫婦2人きりの生活をお望みでしたの?と尋ねる。

別居していただくものとばかり思っていましたわ。そうでないと結婚生活をエンジョイできませんもの。私の場合、それが第一条件ですのと美子は悪びれる風でもなく答える。

私のようなものがそんなに邪魔になるでしょうか?私は今まで、勝則だけを命と思ってきました。それじゃあ、私があんまり…と徳枝は絶句する。

そんな事、今おっしゃっても…と美子は戸惑うし、場の雰囲気を考えた浜口は、銀座へでも行きましょうと美子を誘う。

着替えに奥に下がった浜口に付いて行った徳枝は、今の若い人は、みんなあんな風なのでしょうか?あれなら、まだ真知子の方がましですよなどと愚痴を言う。

すると、今まで黙っていた浜口が、お母さん、今頃になって何を言っているのです。今になっておっしゃるのなら、真知子がいる時に…、もう、何もかも遅過ぎます。ぼうはそうそうお母さんの犠牲になるつもりはありませんと言い聞かし、そのまま美子と出かけてしまう。

女中に先に休むように指示を出した徳枝は、応接室で、今、浜口から言われた「もう、何もかも遅過ぎます」と言う言葉を思い浮かべていた。

そして、真知子がこの家を始めて出て行った夜の事を思い出す。

真知子は、私はこれまで幸福になるよう、どんなに尽くして来た事か…、それを今日も私を付けて来たりして…、この真知子にどうしろとおっしゃるのですか?と泣いて訴えていたが、お母さんはこれまで僕の事だけ考えて生きて来られたんだ!君のように他の男のために生きているのとは違うんだ!と言いながら、浜口が茶を浴びせかけた時の事が鮮明に浮かぶ。

果物屋では、その後、何とか助かった俊樹を抱いた梢が、わざわざ来てくれた主治医の野島を前に、あの時、この子が死んだら、私も死のうと思っていましたと告白していた。

野島は、良くなったら、動物園に連れて行ってあげるよと俊樹に約束する。

そこに、お常さんが九州に行くんで送って来たんだよと言いながら綾がやって来る。

「明日朝着く 会いたし 後宮」そう書かれた電報を受け取った真知子は、ホテルの事務室で悩んでいた。

雨の降る外の様子を窓越しに眺めていた真知子だったが、その時、110号室の客が着いてすぐ病気になったとの知らせを受けたので、客室名簿を確認してみた真知子は驚く。

すぐに110号室に駆けつけた真知子が観たのは、ベッドで寝込んでいた義母徳枝だった。

看護婦が言うには、急性肺炎だと言う。

あなた、真知子さん、真知子さんですわね?とベッドでうなされていた徳枝が呼びかけて来たので、ドア付近でためらっていた真知子もお義母様!と側に寄る。

勝則はどうしました?勝則を呼んでください!電話をかけて!と頼む徳枝に、ここは九州ですの。雲仙でございますのよと説得する真知子。

そうでしたね…と納得した徳枝は、私はあなたに会いたくて来たのよと呟き目を閉じたので、真知子はそっと氷嚢を額に乗せてやる。

翌朝、再び部屋にやって来た看護婦は、徹夜で看病し続けていた真知子を観て、お休みにならなかったんでしょう?と声をかけて来る。

熱が下がったようですわと真知子が答えると、もうお休みになってくださいと看護婦は勧める。

さらに真知子に、後宮さんと言う方が表で…と仲間が知らせに来たので、徳枝の顔を見ると、ぐっすり眠っている風だったので、思い切って部屋を出て外に出てみる事にする。

玄関先には春樹が待っていた。(主題歌が重なる)

真知子さんしばらくでした。今日は、又すぐに帰らなければなりません。出られませんか?と春樹は言うが、浜口のお義母様が来ておりますの…と真知子は躊躇しながらも、後の事、頼んでまいりますわと言い、同行に同意する。

発つ前に、どうしてもあなたにお会いしたかったと春樹が丘の上で告げると、真知子も、私も会いたかったわと答える。

あなたがお立ちになると、綾さんが知らせてくれたのですの。私も一緒したい…、この苦しさから飛び立ってみたいと思うだけで…と真知子は口ごもる。

僕はね、この間、浜口さんとお会いしました。あの人の心が溶けるまで、あなたの事を待つ事にしたのです。あの人だって悪意だけではありません。あなたへの心から逃れる事が出来ないのです。苦しいのは僕たちだけじゃない…と春樹は言う。

僕たちが正しく結ばれるためなら、一生このままでいても構わないと思っているんだよと春樹が言うと、後宮さん、私の為に、そんなに悲しい事を言ってくださるなんて、私嬉しいわ。私の為に、あなたにいつまでも辛い想いをさせて…と真知子が言うので、僕たち、会わなかったら、幸せだったかもしれない…、でも、愛情は、幸、不幸だけじゃない。さ、僕を島原に送ってください。東京に帰って、明後日には出発しなければなりませんと春樹は話し終える。

あなたもご無事で…と真知子が話しかけると、あれが天草ですねと春樹は遠くに見える光景を眺める。

その後、舟に乗り込んだ春樹を、港で見送る真知子。(忘れ得ぬ人とは~♪と歌が重なる)

涙ぐんでいた真知子は、舟が遠ざかると、渡し場で泣き出してしまう。

春樹の方も、舟の上で物思いに沈んでいた。

夕方、ホテルの110号室に戻って来た真知子は、看護婦から、良くお休みになっていらっしゃいますと徳枝の事を知らされる。

看護婦と交代して、ベッド脇の椅子に腰掛け、物思いに耽っていた真知子の前で、徳枝が目を開ける。

真知子さん、いつお帰りになったの?お客様だったんですってねと言うので、ごめんなさい、ご病気のお義母様を残して…、東京から後宮さんが、ご出張になるそうで…、もう帰りましたと真知子は正直に打ち明ける。

お泊まりにならずに?と徳枝は意外そうに聞き返し、はいと答えた真知子に、夕べ、あなたは、寝ずに看病してくださったんですってね。どうしてそんなに親切にしてくださるの?私はあんな酷い事をしたのに…、どうして?と悔むように聞いて来る。

真知子は答えに窮していると、真知子さん、私はあなたに会って、お詫びを言う為に来たのよ。頭を下げて詫びなければいけないんですけど…、ごめんなさいね、今までの事…、勝則を取られてしまうと思って、あんな風に…、許してくださいよ。あなたはせっかく浜口の家を幸せにしようとしていたのに、家にいられなくしたのは私です。勝則とあなたを引き裂こうとするばかりに…と徳枝は泣きながら打ち明ける。

真知子さん、実は私、出来れば帰って欲しいと、お迎えに来たんですよ。もう1度私と一緒に浜口家に帰ってください。そして母子3人、一緒に暮らしましょう。勝手な女と思うでしょう。でないと、勝則は次官様のお嬢さんと結婚するかも知れません。私はその人が嫌いなんです!私は追い出されてしまうんです。私を助けるつもりで…、勝則だって、あなたが帰ってくれたら喜ぶでしょう。そんな女なんか好きじゃないんです。勝則のため、私のため、帰ってください!私を許して!と必死に徳枝は訴える。

それを聞いていた真知子は、お義母様にそんなことを言っていただけるなんて…とこちらも泣き出す。

しかし、許してください。私は買える訳には参りませんと真知子が言うので、どうしてです?あなたはやっぱり後宮と言う方と?と徳枝が聞くと、はい、真知子の心はもうどうにもなりません!と言い、泣き崩れる。

今までも、そうした心で勝則の元に来て下さったんじゃない?私の為にみんな不幸にしてしまいました。申し訳なかったと思ってます…と徳枝は粘るが、お義母様がお泣きになったら、真知子、どうしたら良いのか…と真知子吐くのうするが、やがて、私が諦めますと徳枝の方が折れる。

あなたも苦しかったでしょう。あなたが優しくしてくれただけで嬉しいんです。こうしてあなたとお話しできたんですもの。どうしてもっと早く、こんな話が出来なかったのか…、それが残念でならないのです。あなたもお疲れになったでしょう?早くお休みなさいと徳枝が優しく言葉をかけ、又2人とも涙するのだった。

真知子は、部屋の灯にハンカチをかぶせ光量を落とすと、窓辺に立つが、そこに看護婦が入って来たので、涙を吹いて部屋を後にするのだった。

事務室に戻って来た真知子だったが、その場で倒れ込んでしまう。

それに気づいた同僚が、支配人さん!と慌てて呼ぶ。

トランペットの演奏

東京のキャバレーに来ていた美子は、お義母様は九州へ行かれたんですってね?前の奥様の所へ行ったんでしょう。前の奥様、帰ってらっしゃれば宜しいのにね。あなたもそれをお望みなんでしょう?と浜口に話しかけていた。

私と結婚しようと言うのは、意地と絶望からでしょう?次官の娘なら、将来プラスになるでしょうしね。でも私、そんなあなたに魅力を感じるの。私、こんな生活が好きなの。踊りましょうよと立ち上がって誘って来るが、それまで黙って聞いていた浜口は、美子さん、失礼なんですけど、僕はあなたの事…(ドラム演奏が重なる)

その後、雨の中、浜口は1人で帰宅して来る。

お母さん、帰って来てたんだね?と声をかけると、はい、先ほど…と女中が答える。

そこに徳枝が姿を見せ、勝則さん、ごめんなさいね。無断で出かけたりしててん、私、真知子さんにお会いしました。出来れば戻って欲しいと思っていたんだけど、あの人は本当に優しい良い人でした。良く看病してくれましたわと報告する。

真知子は元気でしたか?と浜口が聞くと、ええ、でもやつれていましたわ。あの人は可哀想な人です…と徳枝は答える。

お母さん、僕当分、お母さんと一緒に暮らしますよ。美子さんとの結婚は断りましたよと浜口は告げる。

どうして?私の為なんですか?と徳枝は驚き、私の為なら良いんだよ。私は別居でも何でもして、良いお母さんになりますよと言葉をかけるが、僕自身の理由なんです。静かに暮らしたいんです。この家から自然に真知子の影がなくなるように…と浜口は答える。

真知子が、始めに家を出て行った日も、こんな晩でしたね…と言いながら、浜口は雨の降る庭先をガラス戸から眺める。

(回想)真知子が家を飛び出し、春樹の下宿先に向かうシーン

(回想明け)浜口は、そんな記憶を忘れようとするかのように、そっとカーテンを閉めるのだった。

雲仙ホテル

支配人が、真知子を訪ねて来た副島に、永橋さんのお世話で、今は阿蘇の方で療養していますと教えていた。

その後、阿蘇の草原で佇んでいた真知子に副島は会いに来る。

「阿蘇観光ホテル山上」に戻って来た副島は、東京で浜口君に会ってきましたと真知子に告げる。

浜口さんは簡単だった。東京へ行きましょう。あなたもいよいよ自由ですたいと副島は、表向きだけの結婚話を進めようとするが、私、浜口を騙してまで…と、真知子は躊躇する。

大人には駆け引きと言うものがあります。私も一生懸命のつもりです。浜口だって、後宮以外の男となら結婚を許すとか、人権に対する横暴じゃないですか?私は結婚して欲しいんです。騙した事にならんじゃないですかと副島は力説するが、私、これ以上、心に悔いが残る事を決してすまいと思っておりますの。私、このまま死んでしまうんじゃないかと思うと寂しくて…、一度は夫だった人を…、後宮さんもきっとそうおっしゃると思いますの。私、死ぬなら、美しく死にたい。生きるとしても、そっとしておいてください。愚かな女とお思いでしょうが…、これからもやっぱり…と真知子は訴える。

そうですか…と納得した副島は、あなたは美しい人です。余計なことをしました。潔う諦めましょうと言ってくれる。

後宮と言う人は、今頃、欧州の空で、あなたの事を思っておられるでしょうと言い残し、草千里浜天望所から車に乗り込んだ副島は、真知子を残し、去って行く。

そこに観光バスが到着し、ガイドが、大いなる哀しみを耐えて阿蘇の山…、熱き想いを胸に秘め…などと名調子で話す声が響いて来る。

そんな中、真知子はとぼとぼと、阿蘇の火口付近まで来て下を覗き込むが、突如咳き込み出す。

その頃、東京では、遊園地の観覧車に乗る野島医師と梢、俊樹の楽しそうな姿があった。

そこに、あさと綾がやって来る。

あさは、野島先生、梢の心の傷も直してやりたいって、加瀬田のおじさんが言ってたのよと言うので、綾もそうなったら良いわねと答える。

そこに、結婚した悠起枝(月丘夢路)が、仁科の娘の加代子を連れて合流して来て、真知子って方、その後、お身体、どうなんでしょうと聞いて来る。

佐渡に帰りたいんだよ。野島先生に、どっか良い所を紹介してもらおうと話している所なのと綾が言うと、私も世話をしてあげたい、春樹の為に…と悠起枝は呟く。

その後、真知子が入院した銀座近くの病院には、おばの信枝、あさ、そして綾も駆けつけて来る。

信枝は、心も身体も弱っとるようじゃ…、可哀想にな〜…と同情する。

病室で付き添っていた悠起枝は、早く良くなってください。一度ぜひお詫びがしたいと思ってましたの。あなたを今のように不幸にしたのは、元はと言えば、私の黒い影があなたに暗い影を落としたんです。あの頃の私は、信じるものに裏切られ、誰も信じられなくなっていたのです。早く元気になってください。春樹を待っていてください。私、早くあなたたちに幸せになっていただかないと…、春樹に走らせましたからねとベッドで寝ている真知子に語りかける。

そこに入って来た信枝が、勝則さんが今夜お見舞いに来たいと言ってるが、断ってやろうか?会いなさるか?と真知子に聞く。

真知子は会うと言う。

病室にやって来た浜口は、永橋さんから、君が悪いと聞いて来た。僕は見舞いに来る資格はない男かもしれない。これは離婚届だ、判を押しといたからねと言い、一枚の紙を真知子に見せると、長い間すまなかった。副島と言う人からの手紙で、君が僕を騙してまで分かれたくないと言ったと知ったんだ。今までの事は許してくれたまえと詫びる。

私の方こそ…と答えた真知子は、仕方なかったんです。誰が悪いんでもない。仕方なかったんですと続ける。

僕は今まで、心を抑える事が出来なかった。それが今こう平静に話せるなんて…、君と後宮君の純粋な心がそうさせたのかもしれない。後宮君を探していた時の気持ちになった。振り出しに戻ったんだ。曲がり通しだったけど、人間の愚かさだと思ってくれたまえと浜口は淡々と話す。

私、良かった。あなたに許していただける時が来るなんて…、もうこれで死んでも良い…と真知子が言うので、早く健康を取り戻して、後宮君の帰って来るのを待ちたまえ。この前、母を随分看病してくれたそうだね?と浜口が聞くと、お義母様もお優しくなって…、みんな良い人なのに、どうしてだったんでしょう?と真知子は泣き出す。

その時、信枝が入って来たので、浜口は離婚届けを信枝に渡すと、勝則さん!どうして私だけに見せて下さらなかったのかね?こんな身体になってしまったじゃないか!と信枝は、容態が悪化した真知子を指しながら怒り出す。

勝則さん、早く良いお嫁さんをもらって下さい…と真知子は帰って行く浜口に声をかける。

早く元気になってくれたまえ…と言い残し、浜口が病室からでて行くと、感極まった真知子は、おばさん!と泣き出し、信枝も、真知子さん!と駆け寄り、長い間の苦労じゃった。もうすぐじゃ、あんたが幸せになるのも…と言いながら慰める。

でもね、おば様…、そんな幸せな日、私に来るんでしょうか?そんな日はもう来ないような…と真知子が言い出したので、真知子さん!あんたは心が弱いんじゃ!だから不幸がつきまとうんじゃ!気を落としたら病気に負ける!と信枝は叱りつける。

後宮さんに、もう1度お目にかかりたい…。まだ三ヶ月しかならない。いつお帰りになるのかしら?おばさん、窓を開けて…、きれいな灯…、数寄屋橋見えるかしら?と真知子は聞いて来る。

窓を開けてやりながら、信枝は、ああ、見えるとも…と教える。

その窓からは、森永の丸い広告塔を始め、銀座のネオンサインが間近に見えていた。

「佐渡」では、急に綾から呼びだされた「女性評論社」の編集長が、綾から何とかなりませんか?と春樹の早期帰国が叶わないのか相談されていた。

しかし、春樹は雑誌の仕事だけではなく、新聞の特派員も兼ねていたので、編集長は困っていた。

費用もかかるよと言うと、この店を売ってでも費用は作ります。2人が可哀想で…と綾は言い出す。

どうして我が事のように…?君が会いたいんだろう?後宮に…と編集長が意地悪を言うと、私も後宮さんは好きだけど、あの2人は本当に美しい恋をしているんです。きっと、自分に出来ないことをやってもらっているような気がするんでしょう。さみしいけど…と答えた綾は、故郷から送って来たんですけど、奥様のお土産にどうぞと言うので、君って良い人だ…と感心した編集長は、後宮の事は何とかしようと約束してくれる。

その後、病院にやって来た綾は、真知子がいないんじゃ!と慌てている信枝に出会う。

病室を覗いてみると、窓が開け放ったままだった。

真知子は、数寄屋橋に来ていた。

川面を眺めながら、後宮さん…と呟き、欄干にもたれるように崩れ落ちる。

そこにやって来た綾が、真知子!何してるの?身体悪いって言うのに!と叱りながら抱き上げる。

綾さん…、ごめんなさい!私、生きているうちにここで…と真知子は言うなり気を失ってしまう。

病室に連れ戻された真知子の容態は深刻だった。

あさや梢も駆けつけて来た中、野島先生、やっぱりダメでしょうか?と綾は尋ねる。

生きる気持ちですね…、駆けつけて来た野島医師はそう答え、ここの院長に言っときますからと告げ、帰って行く。

何だって、外国なんかに言っちゃったんだろうね〜と綾が悔しがる。

ベッドの横に付き添っていた信枝は、呼吸器を口に当てがわれている真知子に向かい、真知子さん、しっかりしなさい!と声をかけていた。

既に意識がないはずの真知子は、涙を流し苦しんでいた。

後宮さん!私、明日、結婚するんです!かつて、ようやく再会を果たした数寄屋橋の上で、そう春樹に告白した時の事を思い出していたのだった。

(回想)あの日お分かれして、半年めも1年めもお目にかかれず…、真知子はお目にかからないつもりでした。でも、結婚する前に、せめて一目だけでも思い出のこの橋を観ようと思って来たんですと真知子は悲痛な想いを告げると、ありがとう。良く来て下さいましたね。僕は、君の幸せな結婚を祈っていますと春樹は答える。

後宮さん、あなたもお幸せにね…と真知子は告げ、その場を立ち去ったのだった。

(回想明け)翌朝、後宮さん!と呟きながら、真知子は苦しんでいた。

それを、綾と信枝が、横で見守っている。

そこへ看護婦がお電話ですと伝えに来る。

電話に出た綾は、えっ!本当ですか?昨日発ったんですね?ありがとうございました!と嬉しそうに泣き出す。

すぐに病室に戻って来た綾は、後宮さん、帰って来るんだって!と昏睡状態の真知子に呼びかける。

それを聞いた信枝も泣き出す。

その頃、日本に向かう旅客機のなかで、春樹は苦悩していた。

真知子!と手を握りしめる綾。

すると、真知子はうっすら目を開く。

やがて、羽田に到着した旅客機を降りた春樹は、車で病院に駆けつけて来る。

病院の中にやって来た春樹は、後宮さん!と廊下で呼びかけて来た綾に真知子は?と不安げに聞く。

大丈夫!会ってやって下さいねと病室に案内する綾。

真知子を褒めてやって。真知子は病気に負けなかったんだよ!と春樹に話した綾は、信枝に、2人きりにしてあげましょうと言い、外に連れ出す。

後宮さん!ベッドの上の真知子が呼びかけると、真知子さん!と春樹が近づく。

お帰りなさい!と真知子が言うと、君がこんなに苦しんでいるとも知らず許してくれ!と春樹は謝る。

せっかく帰って来て下さったのに、こんな身体で…と詫び返した真知子は、私は決して死にません。いつまでもあなたのお側で!と続ける。

真知子さん!僕だって、決して君を離したりしない!と春樹も約束する。

今までの苦しみは何だったんでしょう?と真知子が呟くと、僕の腕の中でお休み…、早く元気になって、2人だけの幸せを探そうと春樹は答える。

私、後宮さんとこうしているなんて…、まるで夢の中にいるみたい…と真知子がうっとりすると、ごらん、夜が明けて来た。安心して休みたまえと春樹は励ます。

後宮さん!真知子はすっかり穏やかな表情を取り戻していた。

その頃、数寄屋橋から日劇を眺めていたのは、病院を出て来た綾だった。

忘却とは忘れ去る事なり…か…、そう呟きながら苦笑する綾。

数寄屋橋の全景が写る。


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