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かぐや姫の物語

あまりにも有名な民話のアニメ映画化

大まかな流れは誰しも知る内容だし、手描き風のタッチにしても、長編アニメでは珍しいものの、短編の実験アニメなどではそう珍しいものではなく、特別、この映画を観たことによる大きな衝撃感のようなものはない。

ただし、丁寧に再現されたそのエピソードの端々には、色々な要素が埋め込まれており、観る人の解釈次第でいくらでも楽しめるような作りになっている。

姫に感情移入するも良し、翁の方に感情移入するも良し、媼に感情移入するも良し、観る人の年代によっても、受け止め方は色々違って来るはずである。

捨丸とのエピソードが、オリジナルの話にあるのかどうかは定かではないが、その部分だけがやや通俗風に見える。

その分、若い世代には、分かり易い捨丸と姫との純愛話が魅力的に見えるかもしれない。

姫は何の為に地上に降ろされ、翁や媼は何を試されたのか?

一見単純な話の裏に隠された深い暗喩。

何度も見直して、色々と考えてみるための映画のような気がする。

もちろん、理屈優先である必要はない。

感覚的に楽しむのも良いだろう。

一見、血湧き肉踊るタイプの子供向けアニメではないようにも思えるが、幼い子供が楽しめない内容でもない。

退屈なのかと言うと、決してそんなことはなく、ぐいぐい物語世界に引込まれて行く。

世代を超え、色々な楽しみ方が出来る作品ではないだろうか。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2013年、スタジオジブリ+日本テレビ+電通+博報堂DYMP+ディズニー+三菱商事+東宝+KDDI 、坂口理子脚本、高畑勲原案+脚本+監督作品。

タイトル

今は昔…

竹取りの翁(声-地井武男)と言うものあり

ある日、いつものように竹林で竹を切っていた翁は、土から急に伸び出した筍を観て、まだ梅も咲かんのに筍とは…と首を傾げる。

不思議なことに、光るその筍の先端部分を開くと、中に小さなお姫様が入っているではないか。

驚いた翁は、あなたは一体どなたでしょうか?と語りかける。

すると、小さな姫は微笑んだかと思うと、あくびをしてうとうと眠り出す。

何と美しいお姫様だろう?…がわしに授けて下さったのじゃと独り合点した翁は、そっとその眠った姫を手のひらに乗せると、急いで家に帰る。

家にいた媼(声ー宮本信子)は、何か捕まえましたか?と手のひらを大事そうに抱えて来た翁に聞く。

手のひらを覗き込んだ媼は、まあ、可愛いお人形さん!と喜ぶが、違う!眠っているのだ!わしに授かったんだ!と翁は取られまいとする。

しかし、媼は、私が育てますと言って、その小さな姫を受け取ろうとする。

すると、今まで小さな人形のようだった姫は、媼の手の中で一回り大きな赤ん坊になり泣き出す。

一体これは!と翁は驚くが、媼の方は、やっぱりこの子、私に育てて欲しいのよと嬉しそうに赤ん坊をあやす。

もののけだったらどうする?と媼はちょっと怯えるが、あんな美しい姫になるよって、天が教えてくれたんだと翁は答える。

その後2人は、もらい乳をしに、最近赤ん坊が生まれた家目指して山を歩いていたが、小川に差し掛かったとき、媼が突然立ち止まり、何となく身震いしたかと思うと、いきなり自分の乳を出し、赤ん坊に含ませる。

何と、突然乳が出るようになったのだと言う。

その時、竹林に風が吹き、赤ん坊は笑い出す。

その途端、何だか急に重くなりましたと媼が言い出す。

どれどれ?と翁が赤ん坊を受け取ると、何だか早く育ちそうですねと媼は言う。

その時、もう梅の花が咲き出したことに2人は気づく。

うぐいすが梅の枝で鳴き始め、その声を聞いた赤ん坊は又笑い出す。

翁はその途端、重くなった!重くなった!と嬉しそうに叫ぶ。

こうして、赤ん坊は、翁と媼の手によって大切に育てられることになった。

はいはいをするようになった赤ん坊は、竹細工を作っていた翁の元に近づき、そこに置いてあったハサミに手を伸ばそうとするが、これはまだ早いと言って、気づいた翁がハサミを隠す。

翁と媼の家に赤ん坊が生まれたと言うことは近所の子供たちの間でも噂になっており、悪童たちが、家の近くから翁の家を覗き込み、赤ん坊を見ながらはやし立てる。

 

家の中に入り込んだ雨蛙を見つけた赤ん坊、すぐにカエルの動きの真似をしながら縁側の方に移動し、そのまま縁側から落ちてしまったので、翁と媼は仰天して駆けつけるが、地面に落ちた赤ん坊は、急に立ち上がったかと思うと、又、一回り大きくなったので、悪童たちが竹の子!と囃すと、翁は怒り、姫じゃと言い返す。

それでも、当の赤ん坊は、竹の子!竹の子!とはやし立てる悪童の声に導かれるように歩き出す。

驚いた翁は、姫!姫!と懸命に家の中から呼びかける。

すると、赤ん坊はくるりと向きを変え、翁の方に向かって歩き始めたので、翁はそんな姫を抱きしめて、泣かんばかりに喜んで抱きしめる。

ある日、少し歩けるようになった姫は、竹取りに出かけた翁と一緒に竹林に付いて来る。

翁が竹取りに夢中になっている間、姫は、近くから聞こえて来る悪童たちの声に気づき、そちらの方へ歩いて行く。

すると、そこに、猪の子供「ウリ坊」が6匹固まっているのを発見、姫は可愛いので夢中で追いかけ始める。

すると、近くにいた猪の母親がそれに気づき、突進して来る。

赤ん坊が危ないと気づいたのは、たまたま近くにいた山の民の捨丸(声-高良健吾)で、間一髪の姫を助ける。

バカ!ウリ坊に手出しする奴があるか!と捨丸は叱るが、姫は又一回り大きく成長して女の子になったので驚く。

そこに、捨丸兄ちゃん、そいつおかしいんだ。竹の子みたいに大きくなるんだと悪童たちが近づいて来る。

姫は、捨て丸に肩車され、歌を歌いながら山の中を歩き始めるが、気がつくと、背中の姫も自分たちが歌っているのと同じ歌を歌っていることに気づき、どうしてお前、この歌知ってるんだ?と捨て丸は聞く。

肩から降りた姫は、知ってると言うと、その歌の続きのような哀し気な歌を歌いながら、崖から森を見下ろし、やがて、涙を流し出す。

それに気づいた捨丸は、どうしたんだ?と姫に聞くが、姫も、自分が何故泣いているのか分からないらしかった。

捨丸は、崖から見下ろした森の中の、あれが俺たちの家、あれがお前の家だと、それぞれの場所を姫に教える。

その頃、姫がいなくなっていることに気づいた翁は、慌てて周囲を探しまわっていたが、その時、又、一本の竹が光っていることに気づき、竹の根本を切ってみると、中に黄金が大量に詰まっているのを発見する。

その後、姫は無事家に戻り、雨が降って来ると、大喜びしていた。

梅の実をもいでいる媼に翁は、このままあの子らと遊ばせていいのだろうか?と、その後も、捨丸や悪童らと無邪気に遊ぶようになった姫のことを翁は案じていた。

実は、竹林でな…と、翁は黄金を見つけたことを打ち明けようかと思ったが、その時はまだ黙っていることにする。

捨丸たちについて遊ぶようになった姫は、大人が、木の樹皮に切れ込みを入れ、そこから樹液を出している様を観て、つい好奇心から手を触れようとするが、捨丸が、それは漆だ!かぶれるぞ!と止める。

そして、自分たちの家に姫を連れて来ると、そこで、木のお椀を作っている捨丸の両親や兄の仕事ぶりを姫に見せる。

夏になると、姫は悪童たちと共に川で泳いだりするようにもなる。

そんな遊び帰りの山道、子供らは、咽が渇いたな~と言いながら、瓜のなっている畑の横を通りかかると、あれ、旨えんだよな~と呟く。

それを聞いた姫は、止せ!と制止する捨丸の声を無視して無邪気に畑に入って行くと、勝手に瓜をもごうとするが、2つ目の瓜を取ろうとした時、人影に気づいた捨丸が姫を抱きかかえて、道の横の草むらに身を隠す。

そこにやって来た農民は、道に1つ転がっていた瓜を見つけ、遠くに逃げていた悪童たちの姿を見つける。

何とか、その農民に見つからずにすんだ捨丸は、懐に1つだけ入れていた瓜を小刀で割って、姫にも食わせる。

その頃、翁は、又、光る竹を見つけており、それを切ると、中から、大量の美しい衣が吹き出て来る。

家に帰って来た翁は、天の思し召しが分かった。この衣にふさわしい暮らしを、姫にさせろと言うことだ。わしは、この黄金で都に屋敷を建てようと思う。都で貴公子に見初められるのは、姫にとって大きな幸せだと媼に相談する。

翌日、翁は黄金を懐に都に出かけて行った。

やがて、収穫の秋が訪れた。

姫は、悪童仲間の赤ん坊をおんぶして、いつものように捨丸たちと遊んでいたが、雉を見つけた捨丸は、姫や仲間の子たちと協力して追いつめると、逃げ回る雉を捕まえようとジャンプする。

次の瞬間、捨丸は、崖から落ちていた。

姫や子供たちは上から覗き込むと、崖下に捨丸が倒れている。

呼んでも返事がないので、子供らは不安がるが、捨丸はゆっくり動き、その身体の下に雉が下敷きになっていた。

取った!取ったぞ!

今行くからと姫は自ら崖を降りようとすると、急に崖が崩れたので、捨丸は慌てて崖下で姫を受け止めると、この辺の岩はもろいんだと叱る。

姫は、捨丸の右手の傷に気づくと、自分の衣を裂いて、その傷に巻いてやる。

捨丸は、そんな姫を観ながら、竹の子、お前、又、大きくなったじゃないかと驚く。

このままどんどん大きくなって、どっかに行きそうな気がすると捨丸が言い出したので、なぜそんな事言うの?私、ずっとずっと捨丸兄ちゃんと一緒だよと姫は答える。

崖の上から、子供たちが蔓を降ろしてくれたので、先に姫がそれを伝ってよじ上るが、途中で、大量のキノコが生えているのに気づく。

それを聞いた捨丸は、今夜は雉鍋だ!と喜ぶ。

その後、キノコを詰めた駕篭を持って家に戻った姫を待っていたのは、旅支度を終えた翁と媼だった。

どこか行くの?と姫が聞くと、都だ。その駕篭を置いて行きなさいと翁が言うので、姫は私も?と聞き、その言葉に従いながらも、明日、雉鍋出来るかな?と、置いて来た駕篭と捨丸との約束のことを気にする。

しかし、その明日は、姫にも捨丸にもやってきませんでした。

次に目覚めた姫は、赤い衣をかけられて、牛車に乗って都に着いていた。

見知らぬ女人たちに案内され、立派な屋敷の中に招き入れられた姫は、着飾った2人の人物に出会う。

何と、その2人は翁と媼であった。

姫様も早くお着替え遊ばせと言われ、隣の部屋を開けてみた姫は、そこにたくさんの観たこともないきれいな衣が飾ってあることを知る。

凄い!水みたい!姫は、この世のものとも思えない美しい衣を羽織ると、屋敷中を飛び跳ね始める。

それを見た翁は、都住まいに乗り気ではなかった媼に、それ観ろと言う。

邸内の大きな池を観た姫は、あそこで泳いで良いんでしょう?と無邪気に聞くが、とんでもございません!と怖い顔をして注意したのは、相模(声-高畑淳子)と言う、翁が宮中から呼んだ、姫を高貴な人物に育てるための教育係だった。

早速姫は、相模の指導の元、高貴な姫の立ち居振る舞いなど所作や絵巻物、琴などを教えられるが、一向にまじめに聞こうとせず、相模は呆れ果てていた。

しかし、都では造(みやつこ)と呼ばれるようになっていた翁が様子を見に来ると、姫は、ご機嫌麗しゅうございます。お父上などときちんと挨拶するだけではなく、見事に琴をかき鳴らしてみたりして、相模を驚かすのだった。

翁は、見事に高貴な姫に成長している姿を目の当たりにすると、やはり、あのような山の中に置いておいては行けなかったのだと、自分の判断が間違っていなかったことを確信する。

そんなある日、離れにやって来た翁は、媼が機織りや下働きをしており、その部屋に姫もいて元気がない姿を観て驚く。

媼は、姫の元気になさを案ずる翁に、何事か耳打ちする。

すると、ぱっと顔が輝いた翁は、それはめでたい!盛大に祝の宴を開かねばなるまいと言い出す。

それを聞いた姫は、お祝いなら、山のみんなも呼んで良いでしょう?と尋ねるが、山の連中とはもう住む世界が違うんだと翁は言い聞かす。

姫の名付け親は斎部秋田様にお願いしようと、翁は、哀しんでいる姫にも気づかず1人で嬉しそうに計画を立てる。

媼の部屋から庭に出た姫は、石の下に虫がいたり、雑草が生い茂っているその場所が気に入ったようで、歌を歌い始めると、この庭、私に下さらない?私の好きなものを植えても良いかしら?と媼に聞き、あなたの好きなようになさいと言う答えを聞くとmありがとうかか様と言いながら、媼の胸に飛び込むのであった。

その後、相模から、眉を抜き、お歯黒を塗ろうとされた姫は、嫌よ!眉を抜いたら、目に汗が入るわ!お歯黒を塗ったら、笑う時恥ずかしいわと言って拒否する。

しかし相模は、高貴なお姫様は、汗をかくように動き回ることも、口を開けて笑うことはありませんと言い聞かせようとする。

しかし、姫はその場から逃げ出してしまう。

翁が、姫の名付け親として屋敷に斎部秋田(声-立川志の輔)を連れて来ると、ちょうど、庭の猫を追いかけていた姫を目に留める。

翁は恐縮するが、秋田は一目で姫の美しさに目を留め、ありのままの姿を観た方が良い名を付けられると言う。

その後、座敷内で、斎部秋田様にご挨拶なさいと改めて翁から命じられた姫は、着飾って、ご機嫌麗しゅう存じますと丁寧に挨拶をする。

美しい!とその姿を観て感動した秋田は、「なよ竹のかぐや姫」と名付ける。

その後、髪上げの儀の式が、大勢の客を屋敷に招いて盛大に行われた。

かぐや姫お付きの女童(声-田畑智子)は、おびただしき殿御が集まっていますと姫に伝えに来るが、一人、御簾の中に幽閉されていた姫は、私の名付けの祝なのに、まるで私はいないのと同じ…と不満を口にする。

宴は三日三晩続いた。

客の男たちの方も、少しも姿を見せないかぐや姫に不満を募らせていた。

祝いに来た俺たちに挨拶もなしか?本物の高貴な姫でもあるまいし!見せろ、見せろ!そんな野卑な男たちの声が御簾の中のかぐや姫の耳にまで届く。

自分が一番知っていることだけに、その言葉に動揺した姫は、貝合わせ用の貝を叩き割ると、着物を脱いで満月の大路を1人逃走する。

懐かしい自分の森に戻って来た姫だったが、かつての自分の家の前に来ると、中から見知らぬ子供が出て来て、その母親らしき女が、汚れ果てた姫の姿を観て、物乞いと間違えたのか、茶碗飯を差し出して来る。

姫は悄然としながらも、森の中を歩き回っていたが、気がつくと、捨丸たちの一族が住んでいた村がなくなっていた。

炭焼きをしている老人(声ー仲代達矢)に出会ったので、丘にすんでいた人たちはどこに行ったのか?と尋ねると、良い木を探して旅に出たと言うではないか。

彼らは、全部木を切り倒すと山が死んでしまうので、ある程度伐採したら、別の森へ移動し、10年は戻らないと言う。

10年もすれば、この辺も又若木が育つから…と老人は言う。

山は死んでしまったんじゃないかしら?あんなに若木があったのに…と姫が案ずると、死んじゃいない。木々はもう春の仕度をしている。春が又帰って来る…と答えた老人が、所でお前さん…と言いながら振り返った時、もうそこに姫の姿はなかった。

雪原の中を歩いていた姫は、その雪の中に倒れ込むと、この景色…、知っている…と呟く。

姫の周囲を小さな天女が舞っていた。

気がつくと、姫は屋敷の御簾の中にいた。

さっき割った貝殻はそのまま落ちていた。

側では、女童がすやすやと眠っていた。

それからと言うもの、姫はおとなしく眉を抜かれ、お歯黒も自ら塗ってもらい、人が変わったように、手習いでもふざけることもなくなり、1人静かに過ごすようになった。

そうした姫の元に、たくさんの貢ぎ物を抱えた翁がやって来て、これで、高貴な方の仲間になった証しでございますなと我が事のようにはしゃいでみせる。

その中には、竹籠の中に入れた雀もいたので、翁は、自分も手慰みに竹籠でも作りましょうかのなどと言って部屋を後にする。

姫は、その竹籠を手に採ると、中の雀を解き放してやる。

かくして、かぐや姫の評判は上がるままだった。

屋敷の門前には、いつも大勢の男たちがたむろするようになる。

外の用事を終え、屋敷に戻って来た女童は、男たちから何通もの恋文を託される。

しかし、かぐや姫を喜ばせたのは、そんな恋文ではなく、外に全く出られない姫を想って、女童が手折って来た1本の桜の枝だった。

宮中でも、かぐや姫の噂が出るようになる。

名付け親になった斎部秋田は、たかが賤の女(しずのめ)とバカにする公達たちに、あれは造の実の子ではありません。竹から生まれたのです。今思い出しても、その美しさは言葉にできませぬと褒めた耐えたので、好奇心に耐え切れなくなった大納言たちは、競って、かぐや姫の屋敷に駆けつけて来る。

これを知った翁は大いに狼狽し、相模に、5人もの公達が手紙を持ってまいられました!と報告する。

その5通の手紙を受け取り、かぐや姫の前に差し出した相模は、お好きな方をお選び下さい。こんな高貴な貴公子から選ばれるとは、何と幸せでしょうと声をかけるが、姫は、私はどなたもお選びしません!と拒否する。

すると相模は、お父様がどんなにお嘆き遊ばすことか…、御自分のことのようにお喜びだったのに…と落胆して見せる。

かぐや姫は5人の公達に会うことにする。

御簾を隔て、姫の前に横並びに座った5人は、1人ずつ順に、姫に言葉を許される。

まずは、車持皇子が、姫を蓬莱山にあると言う銀の枝に咲くと言う珠のように美しいと褒めると、続く阿部右大臣(声-伊集院光)は、天竺に伝わる決して燃えない「火鼠の皮衣」のようだと例える。

続く石作皇子(声-上川隆也)は「仏の御石の鉢」に姫を例え、、大伴大納言(声-宇崎竜童)は、「竜の首にかかる五色の珠」に例え、石上中納言(声-古城環)は「燕の子安貝」に例える。

これを聞いたかぐや姫は、今私を例えて下さった宝物を本当に手に入れられたら、私もその方の宝になりましょうと答える。

それを聞いた5人は大いに狼狽し、翁も、まだ子供故…と詫びるが、仕方なくその日はおとなしく帰ることにする。

女童が、御子様がお帰りになると…と姫に告げると、人が潮が引くように帰ったのでしょうと姫は言い当て、自分でお歯黒を拭い取ると、さ、行きましょう!お花見に行きましょう!と誘う。

相模は今回の姫の対応に心底落胆し、これ以上のお話はもうございますまいと翁に告げると、暇を告げて屋敷から去って行く。

媼、女童と共に牛車で山にやって来たかぐや姫は、自ら牛車から飛び降りると、水を得た魚のように森を駆け上がり、大きな桜の大木の下に来ると、何と見事な!と大喜びする。

しかし、はしゃいでいた姫に、側にいた赤ん坊がぶつかり倒れると、その母親らしき女人と、赤ん坊の兄らしき男の子が、申し訳ありません!とその場にひれ伏して去って行ったので、愕然としてしまった姫は、重箱を持って近づいて来た媼と女童に帰りましょうと声をかける。

媼と女童は、姫の豹変に唖然とするが、黙って又牛車に載り、都に戻るしかなかった。

その途中、牛車が進まなくなり、御簾の隙間から外を覗いた女童は、辻で事故があったようですと姫に伝える。

その時かぐや姫は、急げ!捨丸!と言う声を聞いた気がして、御簾を開け外を観てみる。

すると、山で別れたあの捨丸が鳥を盗んで逃げているところにぶつかる。

思わず、捨丸兄ちゃん!と声をかけると、捨丸の方も、牛車の中で立って観ている姫が、竹の子だと気づき、しばし2人は見つめあう。

しかし、次の瞬間、捨丸は追って来た男2人に捕まり、ぼこぼこに殴られてしまう。

御簾を降ろした牛車の中で、かぐや姫は、捨丸兄ちゃん!と言いながら泣き出す。

やがて、雨が降って来る。

それから3年あまりの月日が流れた。

かぐや姫は、屋敷の離れにある媼の部屋の庭でバッタを捕まえて話してやっていた。

何をやっているのかと近づいて来た媼に、身体を傾けて、目線を地面近くにして庭を観たかぐや姫は、ここからこうやってみると、まるで違って見えるよと教える。

かぐや姫が庭に作っていたのは、かつて過ごした森の箱庭だった。

山があって、家があって…、一緒に横になって箱庭を観た媼も喜び、山の向うからお月さんが登って来るようだねと感心する。

そんな離れにやって来た翁が、車持皇子様が「蓬莱の玉の枝」をお持ちになった!姫様にはお迎えの仕度を!と言うので、姫は、あり得ない…と驚く。

媼も、寝間の仕度…と愕然とした表情で呟く。

車持皇子は、旅装束のまま屋敷にやって来たと言い、手にした「蓬莱の玉の枝」を姫の座した御簾の前に差し出すと、三年前、難波の港より出航し、阿多奈美に揉まれて艱難辛苦の末、険しいが美しい山がある志摩を発見、そこには瑠璃色の水が湧いており、この島は何と言うのかと天女に聞くと、蓬莱島、私のなは「うかんるり」と名乗ったのだと言う。

百聞は一見にしかず、どうか御自分の目で…と言いながら、「蓬莱の玉の枝」を持った車持皇子は姫の御簾に近づこうとするが、その時、庭先が騒がしくなる。

何事か露翁が縁側に出てみると、離せ!どうあってもこの書状を!と男が屋敷内に侵入しようとしていた。

訳を聞くと、玉の枝の代金をまだ頂いてないと言うではないか。

そのものは、綾部家麿と言う巧で、車持皇子様の御下命で「蓬莱の玉の枝」を作ったものの、今だ代金をもらっていない。こちらの姫様に代金を頂くしかないとまかりもうしたと言う。

その間、当の車持皇子は早々に逃げ帰っていた。

翁が姫の前に戻って来ると、御子様はもうお帰りになられました。どうか、その巧に、十分な褒美を差し上げて下さいとかぐや姫は頼む。

次に屋敷を訪ねて来たのは阿部右大臣でした。

天竺の「火鼠の皮衣」を持って来たと言うので、かぐや姫は、ここで燃やして下さいませ。本物の「火鼠の皮衣」なら、火にくべても、一艘輝きを増すでしょうと頼む。

しかし、阿部右大臣が、そのようなことをすれば、言われのない汚れをお互いの心に残すことになるのでは?と言ってためらうので、私の疑いと言う汚れを見事払って下さいと、重ねてかぐや姫は頼む。

もはや、言い逃れは出来ないと察した阿部右大臣は、庭先で持参した「火鼠の皮衣」を燃やしてみせるが、最初こそ燃えないかと想われたその布、すぐに火が回ってしまう。

慌てた阿部右大臣は、燃え盛る布を火鉢から取り出して踏み消そうとするが、残ったのは燃え残った灰だけだった。

阿部右大臣は、これにどれだけ途方もないお金を費やしたことか!と逆上して帰って行く。

その後、大伴大納言様は、筑紫の方に、お船をお出しになったそうです。来たの肩様を追い出し、屋敷までなくしてしまわれたそうですと女童から聞かされたかぐや姫は愕然とする。

嵐の中、舟で竜を求めるたびに出ていた大伴大納言は、刀に振りかざしていたので、危ない!と船乗りの男が刀を捨てさせる。

手から離れた刀は、落雷を受け曲がってしまう。

大伴大納言は、たれ込める雲や、渦巻く海が流の姿に変身するように見え怯える。

許してくれ!竜が!竜が!と半狂乱になった大伴大納言を、錬成な船乗りは、帆柱に自分の身体を結びつけ、大伴大納言の身体も一緒に縛り付け、嵐の去るのを待つ。

次いで、石作皇子が小さな黒い鉢のようなものを携えてかぐや姫を訪ねて来る。

「仏の御石の鉢」なのですか?と半信半疑で翁は受け取るが、石作皇子は、どうぞ姫君に…と言うだけ。

言われる通り、翁からその黒い鉢を受け取ったかぐや姫が蓋を開けてみると、中に入っていたのは一輪のレンゲの花だけだった。

石作皇子は、「仏の御石の鉢」を探し、国中の寺を探し求め、歩きつかれて腰を降ろしたとき、人知れず咲くこのレンゲの花に出会ったのです。その時、本然と悟りました。姫が求めているのは得難い宝などではない。我が真心ではないかと…、どうかこの可憐な花と、我が真心を受け取っていただけないでしょうか?私は、名もない野辺の花が好きなのです。姫!私と一緒に都を去り、ここではないどこかに行こうではありませんか!と言い出す。

それを御簾の奥で聞いていたかぐや姫の身体が震え出し、その身体をそっと媼が手で支える。

その時、翁の制止も聞かず、御簾を開け、姫に近づこうとした石作皇子は、そこに立っている顔を真っ赤に紅潮させた媼の憤怒の顔を観る事になる。

ここではないどこかですか?ぜひ一度、私も連れて行っていただきたいものです!そう媼は皮肉を言う。

一輪の花と、あなたの甘い言葉に乗り、何人の姫が髪を降ろし、仏門に入られたことか!

媼は、石作皇子の甘い偽りの愛の言葉には騙されなかったのである。

石作皇子が逃げ帰った後、女童は、石上中納言様が、「燕の子安貝」を手に入れようとしている最中、梯子から落ち、その時腰の骨を折られたことが元で亡くなったとかぐや姫に知らせる。

それを聞いたかぐや姫は、自分が言った言葉の罪深さに気づき、媼の離れの庭に向かうと、自分が丹念に作って来た箱庭風の山を自ら鎌で切り取り始める。

こんな庭、偽物よ!偽物!偽物!私も偽者!と絶叫しながら…

お止め!と、駆けつけて来た媼が叱りつける。

みんな不幸になった…、私のせいで…とかぐや姫が自分を責めるので、姫のせいではありませんと媼は言い聞かせる。

偽者の私のせいよ…、こんな目になるなんて思ってもなかったのに…と姫が嘆くので、そうよね…、でもあなたのせいじゃないと媼は慰める。

姫の噂はさらに高まり、ついに帝までもが興味をお持ちになりました。

その姫を、宮中に出仕させよう。父親とやらには、官位を授けようと帝は言い出される。

それを知った翁は、姫様!帝が姫を女御のお一人にお召しになると言われたそうですと驚喜して伝えに来る。

しかし媼は、あなたには、まだお分かりにならないのですか?姫の気持ちが…と叱りつける。

しかし、翁は、帝の姫になる。これがどれほどの幸せか…と興奮しているだけだった。

かぐや姫は、お断りして下さい。今さら、女御などになりませぬ。帝の言葉に背いているとお思いなら殺して下さい。お父上が官位をお望みなのでしたら、官位を頂くのを見届けてから、その上で死にますとまで言う。

何、断るとな!かぐや姫の返事を聞いた帝は面白がり、ますます会いたくなり、自ら、造の家に忍び入ると言い出される。

屋敷にやって来た帝は、かぐや姫の奏でる琴の音に聞き入り、御簾の隅から中を覗き込むと、何と美しい!と感激され、かぐや姫の背後から忍び寄ると、突然抱擁される。

私と一緒に宮中に来なさい。私がそなたを望めば、そなたは私のものになるのだ…、そう帝はかぐや姫の耳元に囁きかけられるが、次の瞬間、姫は逃げ出す。

帝は驚き、周囲を探すが姫の姿は見えない。

どこへ行った?事を急いたりして悪かった、どうか姿を見せておくれ。その姿を目に焼き付けて、私は帰るから…と帝が懇願すると、いつの間にか目の前に姫の姿が戻っていた。

何と美しい!帝は心底感心する。

お許し下さいませと姫が詫びると、ひとまず今日は帰ろう。私のものに成子とが、そなたの幸せになると思うよ…と言い残し、帝は帰って行かれる。

1人その場に残ったかぐや姫は身震いする。

帝が宮中にお戻りになってから、姫は月殿に出て、月を仰ぎ見るようになりました。

媼はそんなかぐや姫の様子が変わったことを案じていた。

どうしたの?近頃は私の所にも来ないで、衣は織りかけのままだし、庭も荒れ放題ではないですか…と声をかけると、何でもないのですと姫は答えるので、私にも打ち明けられないことなの?と心配する。

すると、かぐや姫は突然、私、月になんて帰りたくないんです!私は必死にお願いしたんです。でもダメだって…。今月の15日には迎えが来ますと言い出す。

側で聞いていた翁も大いに驚き、この翁にもちゃんと分かるように話して下さい!と頼む。

私は、月からこの地に降ろされた身です…。帝がいらした日、ようやくそれが私にも分かったのです。今月の15日、月に帰らなければいけませんと姫が説明すると、どうしてそんな惨い仕打ちを…と翁は嘆く。

お父様の顔を見ていたら、打ち明けるのが辛かったのです。帝に抱かれたとき、私の心が叫んでしまったのです。もうここにはいたくない!…と。私は帰りたくないのです。でももう遅いのです。もう何もかも…と姫は言う。

ただ、誰のモモにもなりたくない!小さな自分の庭で、自分の心を偽って…、私が何の為にこの地に降りたったのか。見知らぬこの地の歌を知っていたのか…。

鳥虫獣〜♪と媼が歌い出すと、私は生きるために生まれて来たのに、鳥や虫や獣のように…と姫は自分を責め、聞いていた翁も頭を抱える。

遅いことなどあるものか!姫はまだこの翁のもの!誰かおらぬか!姫を守る手だてを講じるんだ!と叫びながら、翁は屋敷の方へ向かって駈けて行く。

ごめんなさい、お父様…、そんなうろたえる翁の後ろ姿を観ながら姫は詫びる。

何だか騒がしいですね…、翁が始めた騒動を他所に、私たちも負けずに歌いましょうと言い出した媼は、糸束を姫に持たすと、それを巻き取りながら、廻れ、廻れ、廻れ〜♪廻ってお日様、呼んで来い♪と歌い出す。

いつしか、かぐや姫も、媼に合わせて歌を歌っていた。

そのメロディを聴いた媼は、そんな続きがあったの?…と、自分も知らなかった歌の後半の詩に聞き惚れる。

月の都で聞いたのです。月の羽衣を着ると記憶を失います。そんな記憶を失った人が良く歌っていました。歌うたびに、その不思議さが私にも分かります。禁断のこの地に降ろされたあの人も、この地に帰ってきたかったのです。ああ、帰りたい!今すぐに!と姫は訴える。

それを聞いた媼は、女童を呼ぶと、すぐに車の用意をさせる。

牛車に乗って、故郷の山に帰って来たかぐや姫は、懐かしい土地に降り立つ。

そんな山に帰って来たのが、捨丸一行だった。

すでに、捨て丸は女房がおり、幼い息子も連れていた。

聞こえないか、あの声?立ち止まった捨丸がみんなに聞く。

他の仲間たちは何も聞こえなかったと言う。

先に行ってるぞ!と仲間に声をかけた捨丸は、走って山に入ると、その中に1人立っていた姫に出会う。

捨丸兄ちゃんでしょう?姫の方も気づいて声をかけて来る。

竹の子…?捨丸は戸惑いながら答える。

今ここに帰って来たんだ。そしたら歌声を聴いて…と捨丸が言うと、会えて良かった!と姫も喜ぶ。

都に行って幸せになったんじゃないのか?と捨丸が聞くと、いつも思い出していた、みんなのこと…、捨丸兄ちゃんとなら私…、幸せ人なれたかもしれない。今それが分かった…と姫は寂し気に言う。

冗談だろ?お前に俺たちみたいな暮らしが出来るはずがない。こんなボロ着て、食い物がないと木の根っこかじって、金がない時は泥棒まがいのこともして…と捨丸が言うと、何でもないわ。生きている手応えがあれば…、もっと幸せになれた…、でももうダメなの。遅過ぎたの!と姫は嘆く。

帝の妃になるのか?と捨丸が聞くと、姫は、誰のものにもならないと答える。

逃げよう!俺が背負って全速力で走るよ!誰かに見つかっても俺がお前を守るよ!と捨丸は言ってくれるが、もう見つかってるの…と姫は哀しむ。

良いじゃないか!見つかっても。俺はお前と逃げたいんだ!と捨丸が声をかけると、捨丸兄ちゃん!私も走るわ!と言い出した姫は、衣を脱いで身軽になる。

竹の子だ!と喜ぶ捨丸に、捨丸兄ちゃん!と抱きつく姫。

天地よ、私を受け入れて!姫がそう叫ぶと、いつしか二人は空に向かって駆け上がり、空中でしっかり抱きしめあう。

そして、2人は手を繋いで空を飛んでいた。

眼下に広がる野山。

やがて、雨が降って来るが、すぐに空は晴れ渡る。

大きな満月の前に飛んで来た姫は驚き、お願い!もう少しこの地で生きさせて!離さないで!もっと強く抱いて!と捨丸に頼む。

竹の子!と捨丸が叫ぶ中、姫は空から落下して行き、海に落ちる。

捨丸は草原で目覚めていた。

竹の子!と探しまわるが周囲に誰もいない。

夢?夢か…と捨丸が呟くと、父ちゃん!と幼い息子が声をかけて来る。

仲間たちが追いついて来たのだった。

捨丸は息子を肩車すると、何事もなかったかのように仲間と合流する。

そしてとうとう、8月の15夜がやって来た。

月から、大きな雲が、不思議な調べと共に降りて来る。

その上には多くの天女や仏のような人物が乗っていた。

屋敷で待ち構えていた翁の用意した武士たちが、その雲目がけて矢を射かけるが、矢は途中で花に変わってしまう。

警護の武士どもは、いつしか全員眠りについていた。

姫〜!と叫んでいた翁も、いつしか眠ってしまう。

小さな天女が、屋敷の奥に隠れていた媼とかぐや姫の部屋にやって来る。

姫!と媼も叫ぶが、かぐや姫は、何者かに引かれるように、後ろへと下がって行く。

かぐや姫の身体は空中に浮き上がり、雲に到着すると、月の人から金色の冠を渡される。

姫は黙ってそれを頭にかぶる。

さらに、羽衣を着ようとしたかぐや姫は、地上で犬と戯れながら歌う子供たちの歌声に振り返る。

廻れ、廻れ、廻れ〜♪水車〜♪

土地虫獣〜♪、女童も子供たちに混じり歌っていた。

いつの間にか目覚めた翁と媼が、屋敷の湖面の上を歩き、何とか雲にたどり着こうとしていた。

姫〜!行かないで〜!姫〜!絶叫する翁と媼。

待って!待って下さい!この羽衣を纏ったら、私はこの地のことを全て忘れてしまうでしょう。今しばらく!とかぐや姫は仏様のような人物に頼む。

私も一緒に連れてっておくれ!媼が懇願して来る。

清らかな月の都に行けば、この地の汚れは消えるでしょう…と天女がかぐや姫に言い聞かす。

汚れなければ…、この地にあるものはみんな…、彩りありて…、人の情も…、そうかぐや姫は反論しようとするが、いつしか羽衣を着せられていた。

姫〜!最後まで呼びかけて来る媼と翁。

かぐや姫の乗った雲はゆっくり月に向かって登って行く。

私を許しておくれ〜!と詫びる翁。

女童、斎部秋田、相模らも、地上から、帰って行くかぐや姫の雲を見上げていた。

その頃、捨丸は、新しい家の屋根を満月の下で作っていた。

かぐや姫は、青い地球を振り返る。

月に消えて行く雲…

月の中に浮かぶ、幼いの頃の竹の子の姿…