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愛ってなんだろ

ナベプロ(渡辺プロ)が松竹と提携して作った、天地真理主演のアイドル映画。

内容は、タイアップであるペプシコーラやミリンダなどが登場していることからも分かる通り、典型的な低予算アイドル映画と言った感じで、話自体はアンハッピーエンドと言うか、何となく物悲しく幸薄いものになっている。

脚本の田波靖男さんは、東宝、加山雄三主演の「若大将シリーズ」でもお馴染みの人で、この作品にも青大将でお馴染みの田中邦衛が登場しているものの、東宝青春もののような、からっとした作風にはなりきれなかった印象がある。

松竹は松竹らしいカラーでも良いのだが、玩具会社、イラストレーター、テレビ局、保育園と言った、一見、夢がありそうな素材を並べている割に、今ひとつ楽しい雰囲気が出ていない恨みがある。

やはり、客に見放されていた映画斜陽期のどん底の時期の典型的作品なのかもしれない。

予算が少ないことに加え、女性アイドル主演なので、恋愛話に持って行きたいものの、最終的には、特定の男性と結ばれるような形にはしたくなかったと言うような事情があったのかもしれない。

1973年ということで、第二次怪獣ブームが去った時期が背景になっており、劇中に、顔こそでないが、大きな「帰って来たウルトラマン」人形等が、イラストを書く真理ちゃんの背後にさりげなく置かれている。

円谷プロが協力しているはずだが、内容は、既存の玩具メーカーや怪獣人形への批判を含んでいるようにも受け取れるので、良く承知したなとも感じる。

天地真理は、相変わらず、終始にこやかに画面に登場しているだけと言った印象。

ものすごい天地真理ファンなら、真理ちゃんの笑顔を観ているだけで満足なのかもしれないが、普通に当時のプログラムピクチャーとして観ると、平均的な出来…、もしくは、ちょっと物足りなさを感じないではないのは、個人的に、そこまで熱心な天地真理ファンではなかったからかもしれない。

当時、ナベプロタレントだったのか、谷啓、尾藤イサオ、井上順、安田伸、小松政夫など、お馴染みの顔ぶれが次々に登場しているが、話自体が単調なためか、あまり夫々の登場シーンも面白いとは言えない。

あえて言えば、井上順のおふざけシーンがちょっと面白いくらい。

井上順が楽屋に1人でいる登場シーンで気がついたが、この映画、1つのシーンに登場する人物が限られており、大勢が一緒に登場するシーンが少ない。

おそらくこれは、主役の天地真理のスケジュールが多忙過ぎ、他の俳優やタレントと時間を共有するのが難しい条件で撮っていたからではないだろうか。

玩具会社の屋上で話していたはずなのに、気がつくと、いつの間にか外の公園に場面が変わっている…等と言う不思議さも、そういうことが関係しているのかもしれない。

今観ると、レッツゴー三匹は懐かしかったが、保母さん役の小鹿ミキは、記憶にあるイメージと顔が違って見えたせいか、後でキャストを確認するまで気づかなかった。

歌謡映画としても、まだ天地真理の持ち歌が少なかった時期だったせいか、劇中で、同じ歌を何度も聞かされるのも物足りなさを感じる一因かもしれない。

監督にとっては、この作品が第一回作品だったようだが、今観ると、不幸な時期に監督になった方のような気がする。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1973年、渡辺プロ+松竹、田波靖男脚本、広瀬襄監督作品。

赤と白の模様の風船が回転し、飛んで行く中、とあるビルの屋上では、玩具メーカー「トイズランド」社員たちがバレーボールを楽しんでいた。

その時、ボールがそれて転がったので、男性社員が、その近くにいた麻里ちゃんこと浅見麻里子(天地真理)に取ってくれと頼む。

麻里ちゃんは笑顔でボールを拾うと、えい!と投げ返すが、コースがそれて、金網フェンスの外に落ちてしまう。

驚いた麻里ちゃんら社員が下を覗くと、たまたま車に乗り込もうとしていた社長(太宰久雄)のはげ頭に命中し、社長は倒れ、頭を下げていた秘書(小島三児)は、跳ね返ったボールが車の後部座席に入り込むと、社長が乗り込んだものだと勘違いして、行ってらっしゃいませと声をかける。

(「ザ・スピッツ」の3人がギターを弾き、町を歩き回る麻里子が歌う「二人の日曜日」をバックに)タイトル

社内のフォークグループ「ザ・スピッツ」のマネージャー悦子(岩崎和子)が、ある日突然、男の子をメンバーに入れないと言い出す。

それを聞いた麻里子は、うちの会社にいるかしら?ギターが弾けて迫力がある男性なんて…と首を傾げる。

その時、企画部長()や社長の息子の青木(小松政夫)が、1人の爽やかな新人を連れてやって来る。

その青年は、新製品開発のディレクター河内俊二(森田健作)と紹介されるが、それを観た悦子たちは、素敵じゃないと噂し合う。

その時、麻里子は青木からそっと呼ばれ、今日、良いだろう?デートと誘って来る。

麻里子は、社長からうるさく言われているんです、金縁のメガネかけた男には気をつけろって…と答えると、青木は、親父が?と言いながら、不愉快そうに金縁のメガネを触りながら黙り込む。

その後、企画会議が始まり、数年前の怪獣人形以来企画が出ないことに関し、部長が俊二に意見を求めると、俊二は夢がないと思う。例えば、あの雲などを見て、子供の頃、あれこれ空想に耽ったものです。怪獣人形は怪獣でしかありません。雲のように、無限の夢を与えるものを作るのが私たちの夢だと思うのですと述べる。

一方、麻里子は、会社が終わり、下宿をしている親戚のベーカリー「浅見」に帰って来る。

職人の平吉(佐藤蛾次郎)が、出来立てのアップルパイを麻里子に披露すると、雲みたいなケーキ、作ってみない?と麻里子は、企画会議の席で聞いた俊二の意見をそのまま伝える。

やがて「ザ・スピッツ」の3人が遊びに来て、二階の麻里子の部屋に落ち着くと、私の目に狂いはないわと悦子が、俊二のことを言い出す。

しかし、麻里子は、誰かあの人の歌を聴いた?テストした?と確認する。

悦子は、明日あの人の歓迎パーティをやって、彼に歌ってもらうのよ。さりげなくマイクを近づけるのねと麻里子もそのアイデアに賛成する。

おしゃべりの合間に食べていたパンがすぐになくなったので、下でケーキを並べていた伯母のりく(賀原夏子)にケーキを分けてもらう。

りくは麻里子に、最近、才太郎の様子がおかしくないかい?しょっちゅう、組合の寄り合いと言って出かけているんだよと聞いて来る。

噂をすれば何とかで、当の才太郎(田中邦衛)が、その日も出かけようとするので、どこに行くんだい?とりくが聞くと、組合の寄り合いがあって…と言うではないか。

翌日「」は、河内俊二歓迎パーティのため、貸し切りになっていた。

麻里子は、式の準備に忙殺されていたが、悦子らは、俊二の横に座って、べったりの状態だった。

同席した青木は完全に無視されて不満顔だったが、麻里子の顔を観ると、又、この後、どう?横浜辺りまでパーティ行かない?と誘って来る。

しかし、麻里子は、今日はこのパーティの主催者なのでときっぱり拒否する。

やがて悦子が立ち上がり、本日は、私たち「ザ・スピッツ」に加わっていただく新しいメンバー1人を選ぶハプニングがありますと宣言し、麻里子が、「ある日とつぜん」を歌い始める。

すると、俊二は、急に深刻そうな表情になる。

(回想)女性を助手席に乗せドライブしていた俊二は、前から接近して来たトラックに気づき、急ブレーキを踏む。

(回想明け)そんな俊二にマイクを向けた麻里子は、河内さん、後を続けてくださいと声をかけるが、俊二は、止めてくれ!止めてくれ!と急に興奮状態になり、悪いけど失敬すると言って帰ってしまう。

後に残された女性たちはあっけにとられ、どうしたのかしら?分かんない。キ○ガイみたいねなどと噂し合う。

翌日の会社の屋上でも、まだ「ザ・スピッツ」の面々は、あの人変人なのよと、俊二のことを噂し合っていた。

青木は悦子に近づくと、約束、どうしてくれるんだよ?と迫る。

悦子は青木に麻里子との間を取り持つと言う約束をしていたのだ。

仕方ないので、悦子はその後、麻里子を誘い出す。

一方、青木の方は、チンピラ3人(レッツゴー三匹)に、わざと麻里子に因縁を吹きかけ、自分が助け出すと言う芝居のお膳立てを頼んでいた。

悦子は麻里子を「スナック RAN RAN」に連れて来ると、自分は電話をして来ると言って席を離れる。

そこにやって来たのがチンピラ3人で、無理矢理麻里子と相席をさせてくれと迫る。

麻里子は、他にも席は空いていると断ろうとしているとき、青木が打ち合わせ通り店に入って来るが、麻里子を救いに来たのは、たまたまその店にパンを配達しに来ていた平吉だった。

チンピラを投げ飛ばし始めた平吉は、助けに来た青木までも投げ飛ばしてしまう。

帰りは、平吉が配達用のスクーターの後ろに麻里子を乗せ、虹の向うは〜♪等と楽しそうに歌いながら帰る。

その途中、信号待ちで停まったとき、麻里子は、路地の奥にある小料理屋の前で、そこの女将らしき美人とデレデレ話し込んでいる才太郎の姿を目撃する。

その頃、「スナック RAN RAN」では、チンピラたちが、こんな目に遭わされるんだった、こんな金では割に合わん!と青木からもらった金を床に叩き付け、もめていた。

翌日、会社で俊二から呼ばれた麻里子は、新製品のイラストを頼みたいと言い出す。

君が一番、僕の気持ちを分かってくれそうな気がしたからと俊二は麻里子起用の理由を説明すると、夢は子供だけのものではなく、僕のためでも良いと思っているんだ。この世にたった一つの顔、笑いかけたくなるような顔が欲しいな。それをこれから探すんだ!と人形のイメージを語ると、この間はごめんねと、歓迎パーティでのことを詫びる。

公園で俊二と別れた麻里子は浮き浮きした気分になり、「ある日私も」を歌いながら、近くで遊んでいた女の子のブランコを押してやったりする。

そして、女の子に代わってブランコに乗せてもらった麻里子は、女の子からもらったカップアイスを食べながら喜ぶのだった。

下宿先のベーカリー「浅見」に帰って来た麻里子は、世界の名画などを参考にしながら、たった一つ顔と言う俊二の希望を叶えるイメージを考え始める。

その時、又、才太郎が出かけようとしていたので、おじさん、モナリザの所に行くんでしょう?と言いながら、モナリザの画集を見せる。

才太郎は、麻里子が何のことを言っているのか分からない様子だった。

下では、平吉が、徹夜で仕事をしている麻里子のために特製ケーキを作っていた。

その時、店の女の子が先に帰るので、戸締まりしといてねと頼んで帰ったので、平吉は裏口の鍵をかけに向かう。

そこに2階から降りて来た才太郎が通りかかり、出来上がったケーキを見つけると、たまにはケーキでも持って行ってやるかなとつぶやき、その平吉のケーキを持って出かけてしまう。

戻って来た平吉は、自分が作ったケーキが消えているので驚くが、りくが顔を出し、今、才太郎が出かけたから、後をつけておくれと頼まれる。

女将さん、ケーキ知りませんか?と平吉は聞くが、りくは、知らないよと言うだけ。

仕方なく、平吉は、親方である才太郎の後を付け、小料理屋に入っているのを目撃する。

ガラス戸から中を覗くと、先ほど自分が作ったばかりのケーキを、才太郎が店の女将に渡しているではないか。

翌日、麻里子が提出したスケッチを見た俊二は、もう1度考えてくれないか?とダメ出しをする。

机に戻り、又悩みながらも、何枚も描きな押してみる麻里子。

「ザ・スピッツ」の面々は先に帰ってしまう。

1人残ってスケッチを描いていた麻里子の絵を再度観た俊二は、ダメだな…みんな、これだけの顔を集めても、このこけしに敵わないだろう?と言いながら、かつて東北を旅した時にもらったと言うこけしを、俊二は取り出して見せる。

麻里子は、それは、昔の人が丹念に作ったものだからですと反論するが、俊二は、問題は、作る側の気持ちなんだ!と力説する。

行き詰まった麻里子は、だったら自分で描けば良いのに…とつい言ってしまう。

ダメだ、ダメだと言うだけじゃなく、どう言う顔が良いのか口で言ってくださいと言うと、自分で描けるんなら、イラストレーターなんていらないよと俊二は言い聞かすが、納得いかない麻里子は、私は想像力が貧困なんです。私、もう、止めさせてもらいます!と言いだす。

俊二は、君には出来るよ!と説得するが、麻里子も、出来ませんと我を張る。

その後、屋上へ上って来た麻里子は、自分が描いたスケッチ帳で紙飛行機を折り、それを飛ばし始める。

下に落ちて行った紙飛行機は、又しても、下で車に乗ろうとしていた社長と秘書の頭にぶつかってしまう。

屋上で落ち込んでいた麻里子の所にやって来た青木が訳を聞くと、今、飛び降りたい気持ちなの等と言うので、青木はここぞとばかり、慰めながら麻里子を車に乗せると、ドライブに向かう。

途中、田圃の近くで、急に、麻里子が停めて!と言ったので、オシッコと思い込んだ青木は、車を停め、麻里子を降ろすが、スケベ心を起こして後を付けて行く。

すると、麻里子がしゃがみ込んでいたので、大胆!等と言いながら近づいた青木だったが、麻里子は側のお地蔵さんのスケッチをしているだけだった。

麻里子は青木に気づくと、すぐに会社に戻りたいの。送ってくれない?と頼む。

青木は良い所に連れて行くと薄笑いを浮かべたので、麻里子が見上げると、側にモーテルがあったので、身の危険を感じた麻里子は、先に行っててくれない?と青木を先に車に戻すと、少し遅れて車の所に戻って来て、「飲酒運転中 キケン」と描いたスケッチを、車の後ろに貼付けて乗り込む。

青木はすぐに車を発進させるが、すぐに、白バイ警官(安田伸)から停止させられ、青木は風船を膨らませてみなさいと言われる。

その隙に、こっそり車を降りた麻里子は、通りかかったタクシーを停め、会社に戻るのだった。

それに気づいた青木は、どう〜して!おせ〜て!とわめく。

「企画部」に戻って来た麻里子は、俊二が一人残って残業していることに気づく。

どうしたんだ?と俊二も驚いたようだが、君に説明できるよう資料を探していたんだと言い、ヒントになりそうだと言う仏像の写真を見せる。

さっきはごめんねと謝った麻里子は、自分が描いて来た地蔵の絵を見せると、これだよ!にっこり笑った君の顔だよ。鏡を見てごらんと俊二は褒める。

鏡に映った自分の笑顔をヒントに再度スケッチを描き直した麻里子だったが、それを観ながらスケッチした俊二は、これだ!こういう顔が欲しかったんだ!と叫ぶ。

良く頑張ってくれたとねぎらう俊二に、急におなかが空いて来ちゃったと麻里子が言い出すと、何でもおごるよと俊二は言う。

麻里子は、小料理屋「あじさい」に俊二を連れて来る。

俊二は、君はこんな所に来るのかい?と不思議がるが、注文を取りに来た女将の志津(川口敦子)が、別の常連客の植村(谷啓)に呼ばれてカウンターに戻ると、麻里子が、どう思う、あの人?良い人かしら、悪い人かしら?と聞くので、さらに戸惑いながらも、なかなか感じの良い人そうじゃないかと感想を述べる。

私のおじさんの恋人らしいのと麻里子が打ち明けていると、そこに当の才太郎がやって来る。

そして女将にデレデレし始めたので、やはり、ママがお目当ての先客の植村が苛つき出し、女将を自分の方に呼ぶ。

1人になった才太郎のコップに、麻里子が酒をお酌してやりながら、みんな聞いちゃったわとからかうと、初めて、麻里子がいたことに気づいた才太郎は、びっくりすると共に、おばあちゃんには絶対内緒だぞと口止めする。

麻里子がうんとごちそうしてねと甘えると、才太郎は、お前、こんな所に1人で出入りしているのか?と文句を言い出す。

麻里子は笑って、1人じゃないのと言って、会社の河内俊二さんに連れて来てもらったのと紹介する。

植村がテレビをつけると、人気歌手の水野明(尾藤イサオ)が歌っている所だったが、それに気づいた俊二は又様子がおかしくなる。

(回想)ヨシエ!事故現場から担架で運び込まれて行く女性に声をかけていた俊二に近づいて来た水野明は、担架の女性にヨシエちゃんと呼びかけると、いきなり俊二を殴りつける。

(回想明け)俊二は、ちょっと失礼しますと才太郎に頭を下げ。店を出て行く。

才太郎は、気分が悪くなったんだろう。そっとしておきなさいとマリ子に言い聞かす。

その後、麻里子とザ・スピッツの面々は、伊豆の方にサイクリングに来ていた。

彼女らに誘われた平吉だったが、その役目は、自転車でリヤカーを引き、それで食料を運ぶと言う便利屋扱いだった。

それでも平吉は嬉しそうだった。

丘で、麻里子が、「二人の日曜日」を歌い出し、みんなは草スキーなどして楽しむ。

その間に、平吉は、バーベキューの仕度をしていた。

麻里子たちがバーベキューを食べ始めると、平吉が、ペプシコーラを持って近づいて来る。

その後、悦子たちは、眼下の競技場のような場所に置き去りにされている数台の自転車を発見する。

早速、それを使って競輪競争を始めようということになり、勝利者は、平吉のリヤカーに乗せてもらうと言う条件でレースを始める。

平吉には旨味はなかったが、補助輪付きの自転車でおつきあいをする。

近くにいた子供が、ジャンを鳴らし、全員ラストスパートをかける。

その時、先頭を走っていた京子(中川加奈)が、道路上を這っていた蛇に気づき、驚いてハンドルを切り損ね、倒れて足に怪我をしてしまう。

驚いたメンバーたちは、京子を支えて、近くにあった保育園に入り込む。

玄関口で声をかけ、けが人がいるので、ちょっと休ませてくださいと出て来た保母さんに頼む。

すると、奥から出て来たのは河内俊二だったので、互いにびっくりする。

どうしてこんな所に?と麻里子は不思議がるが、俊二は、ちょっとね…と言うだけで詳しい事情は話さない。

しかし、部屋の中に、「トイズランド」の玩具が積まれていたので、あら?みんなうちの玩具じゃない!と麻里子は驚く。

うん、この前、安く売ってもらったんだと打ち明けた俊二だったが、でも子供たちに一番人気があるのは、さっきの保母さんが縫ったこの人形なんだと言いながら、手作りの人形を見せる。

それを観た麻里子は、分かった!こんな人形が欲しかったのね!と気づく。

麻里子は悦子たちに、お礼に、私たちの歌を聴かせない?と提案する。

麻里子が校庭に出て「幸せなら手をたたこう」を歌い出すと、何と、俊二も、園内のピアノを引き出したではないか!

園児たちが、麻里子の周りを回りながら、お遊戯をする。

翌日、出社した俊二は、企画部長から、俊二が企画した人形が中止になったと知らされ驚く。

営業の方から反対があったんだと苦し気に部長は説明するが、反対したのは係長の僕だよ。変身人形のパテントが手に入ったんでねと口を挟んで来たのは青木だった。

パテントが切れたら、それまでじゃないですか?と俊二は抗議するが、それで良いんだよ。飽きられたら又新しいのを作れば良いんだと青木は豪語する。

だから、エコノミックアニマルなんて言われるんですよ!と俊二は情けなさそうに言うが、それを聞いた青木は、何だって!と気色ばみ、君なんか、人殺しじゃないか!そんなきれいごとを言うのなら言ってやるが、こいつは自動車事故で、女1人を殺しているんだ。俺が情で働かせているんだ、それをこいつは感謝の気持ちなんかないんだ!と麻里子たちがいる前でぶちまけてしまう。

屋上にやって来た俊二は、麻里子に、すまなかったね、あんなに苦労させたのに…と詫びる。

麻里子は、青木さんも酷過ぎるわと同情するが、でもあれは本当のことなんだ。僕はそのために音楽を捨てたんだ…と、俊二は告白する。

(回想)実は僕は昔、ジャズピアニストとして将来を嘱望されていたこともあったんだよ…と俊二は続ける。

バンド仲間には、水野明、泉ヨシエと言う専属歌手もいたんだ。

2年前、ヨシエは、田舎の保育園をやっている妹を助けるため、自分の歌のレコーディングすると言う夢を叶えるのを僕はたたき壊してしまったんだ…

音楽に未練はなかったけど、いつまでも忘れられないのは…(事故直後、車の中で、俊二の手を握りしめたままのヨシエのイメージ)

(回想明け)君のために作った歌なんだ。保育園で歌っている君を観た時、又、音楽の楽しさに浸れた曲なんだと言い、楽譜を麻里子に渡した俊二は、じゃあ!と言って去って行く。

ベーカリー「浅見」に帰って来た麻里子だったが、その姿を観たりくは、元気ないじゃないかと声をかけて来る。

その時、又、才太郎が出かけようとしていたので、今日こそ、どこへ行くかはっきり言ってごらん!とりくは叱りつける。

いつものように、組合に…と才太郎は答えるが、「あじさい」に行ってるんだろ?分かってるんだよとりくは指摘する。

それを聞いた才太郎は、麻里子!君が話したのか!と詰め寄るが、麻里子は知らないと否定する。

りくは、証人は他にもいるのよ。平吉!と呼ぶ。

平吉は、親方がケーキをあげている所を…とばらす。

そんな雌狐、私は許しませんよ!とりくが叱ると、そんな不真面目な気持ちで付き合っているんじゃないんだ。vさんとは、その内、結婚しようと思ってるんだと才太郎は答える。

するとりくは、その雌狐はこの家を取ろうと思ってるんだよ。この店は、私と死んだおじいちゃんが作ったんだよと言うので、酷いことを言うなあ…と唖然とした才太郎は、分かった!俺がこの内を出て行けば良いんだろう!と言い捨てて、店を飛び出して行く。

その際、麻里子には、父親代わりになってやれなかったけど…、この内には変な婆さんがいるから!と詫びて行く。

りくは平吉に、鍵をかけて、塩を撒いておおき!と命じる。

「あじさい」にやって来た才太郎は、志津に話があると切り出すと、俺と結婚して欲しいんだよと告白する。

僕の方から家を飛び出して来たんだ。2人で新しい人生を出発しよう!と迫る。

突然の話に困惑した志津は、ちょっと席を外すと、常連客の植村を呼び、指輪を渡しながら何事かを耳打ちし、裏口から一旦出てもらう。

ママ、さっきの返事だけど…と才太郎が呼ぶので、近づいた志津だったが、ごめんなさいね。私、婚約した人がいえうのよ。悪いけど、少し遅かったわと伝える。

相手は誰?と驚いた才太郎だったが、植村さんなのと聞くと、何だって、あんなヘンテコな奴なんだ!と才太郎は混乱する。

そこに、打ち合わせ通り、入口から入って来た植村は、約束のものを買って来たよと言いながら、さっき志津から受け取った指輪を出してみせる。

それを受け取った志津は、ダイヤじゃないの!とわざとらしく喜ぶ。

植村は調子に乗り、今夜は私がこの店を買い切るから、もう閉めないか?等と言い出す。

志津が、でもまだお客さんが…と言いながら才太郎の方を観ると、植村は、一緒に飲みませんか?と誘う。

才太郎は植村の前に来ると、男のくせに着物なんか着ちゃって!と和服姿の相手をバカにすると、とにかく俺は気に食わねえよ!帰るよ!俺は二度とここには帰って来ない!と叫び、出て行く。

さすがに植村もすまなそうな顔になり、良いのか?あんなことして…と志津の顔色をうかがう。

仕方ないわ…、私、良い奥さんになる自信ないもの…と志津が言うので、俺なら?と植村は聞く。

すえうと志津は笑いながら、あなたには良い奥さんも、お子さんが6人もいるじゃないのと突っ込む。

麻里子は部屋で1人、ギターを弾きながら、「若葉のささやき」を歌っていたが、海辺で俊二と出会うイメージを思い浮かべていた。

俊二と麻里子は砂浜で笑いながら駆け寄るが、気がつくと、俊二の姿は消えていた。

俊二さん…と麻里子は呟く。

その時、窓に何かが当たった音がしたので、開けて下を覗くと、そこに才太郎がおり、麻里子、すまんが、そっから入れてくれないかと頼んで来る。

麻里子はおかしそうに、窓から招き入れると、結婚するんじゃなかったの?さっきはかっこ良かったのに…とからかう。

婆さんは?と才太郎が聞くので、もう寝たわ。帰って来たら、ここから上げてやってくれって言ってたわと麻里子が答えると、すまない!酒を持ってきてくれと才太郎は頼む。

酒を持ってきてやった麻里子は、私も相手するわと言い出したので、分かってくれるか?おじさんのこの気持ち…と愚痴りながら酒を飲み始めた才太郎に、麻里子は、女にふられたくらいでくよくよしない!しっかりしろ!と励ましながら、自分も飲み始める。

そんな麻里子にふと気づいた才太郎は、何で若い麻里子が酒を飲んでいるんだ?おかしいよ!麻里子があぐらをかいているのもいけねえよ…と説教し出す。

そして、そうか!麻里子も誰かに振られたんだな?良し!俺が何とかしてやる!と胸を張った才太郎だったが、女なんて、肝心な時には、好きな人が他にありますなんて言い出すんだよ!と管を巻き出す。

翌日、出社した麻里子は、企画部長が、今日も、河内、来てないねと悦子に聞いているのを見かける。

俊二はもう1週間も休んでいるのだった。

社長が、彼が作った人形を気に入っちゃって…と部長は言い、困っている様子だった。

昼休み、屋上にいた麻里子の所にやって来た悦子は、何とか俊二さんを探せないかしら?と相談する。

麻里子は、そうだ!歌よ!俊二さんが私に作ってくれた歌を水野明に歌ってもらえば、彼は気づいてくれるに違いないわ。

昔、同じバンドの仲間だった友達のために歌ってもらうわ!と麻里子は張り切る。

そして、悦子と一緒にテレビ局にやって来た麻里子だったが、入口はファンでごった返しており、ガードマンに制止され、とても中に潜り込めそうにもなかった。

その時、「来来軒」の出前が局内から出て来たのを見かけた麻里子は、その出前を呼び止め、衣装と岡持を拝借すると、そのまま野次馬とガードマンの中をかい潜り、局内に無事潜入することに成功する。

麻里子は、廊下に放置してあったラーメンの残り汁をかき集め、1杯の丼を作り上げると、それを岡持にいれ、メイク室に勝手に入って行く。

そこにいたのは、水野明ではなく、別の歌手(井上順)だった。

ヨーデルを歌っていたその歌手は、今日もヨーデルが良う出る!などとだじゃれを言って、1人喜んでいた。

歌手は、入って来た麻里子に気づくと、自分が注文したラーメンが届いたのだと勘違いして、これは水野さんのものですと言う麻里子を無視して、彼なら、今歌い終わって、風呂に入っている所だから、僕が代わって食べといてあげるよなどと言いながら、勝手に岡持に入れてあった丼のラーメンを取り出すと、旨そうに食べ始める。

さすがに罪悪感に苛まれた麻里子は、ごめんなさい!私、出前持ちじゃないんです。その蕎麦も、残りものを集めて作ったんですと謝ると、歌手は口に入れていたラーメンを吐き出す。

良く見ると、丼の中には、煙草の吸い殻までは入っているではないか!

その時、ドアが開き、マネージャーと水野明が入って来る。

麻里子は、河内俊二さん、ご存知でしょう?彼が作曲した歌を持っているんです。それをぜひ、あなたに歌ってもらいたいんですと頼むが、マネージャーは呆れたように、これからテレビの本番撮りがあるんだよと迷惑そうに断る。

すると、先ほどの歌手も、歌ってやれよここまで忍び込んで来た彼女の誠意を買ってやれよ。こっちも煙草ラーメン、食べさせられたけどなと水野に頼んでくれる。

それを聞いた水野は、分かった、車で聞こうと言ってくれ、悦子と一緒に、別のテレビ局に向かう水野の車に同乗させてもらうことになる。

途中、麻里子が歌って吹き込んだ曲をテープで聴いていた水野は、良い曲だね。でも、僕の歌じゃないな。昼のショーで君が歌ってごらんと言い出し、同乗していたマネージャーまで、僕も保証すると言ってくれる。

テレビ局に着き、水野明司会の「お昼のジャンボショー」が始まる。

メイク室では、悦子が、急に歌うことになった麻里子のメイクを手伝っていた。

麻里子は、すっかり上がってしまって、もうダメ…と弱音を吐く。

その頃、水野の挨拶で、麻里子が、いなくなった友達を捜すために急にテレビ出演することを知ったりくや才太郎、平吉、そして、「ザ・スピッツ」の仲間たちが、「浅見」の居間のテレビの前に集まって、画面を注目していた。

スタジオに連れて来られた麻里子は、照明やテレビカメラを観て、ますます舞い上がってしまう。

しかし、イントロが始まると、覚悟を決めたのか、麻里子はステージに出て行き、にこやかに歌い出す。

その放送中、ブースにいたディレクターは、かかって来た電話で、俊二の居所を教えられる。

その結果をテレビで聞いた才太郎とりくは、嬉しそうに手を取り合うのだった。

悦子から、俊二はいつか行った伊豆の保育園にいると、保母さんから電話があったと聞かされた麻里子は喜ぶ。

悦子は麻里子に、あなた、行くんでしょう?連れ戻して来るんでしょう?又、すぐ、彼、どっかに行っちゃうかもしれないわよと聞くと、うん!と麻里子は頷く。

タクシーに乗って伊豆に向かった麻里子は、以前寄った「こばと保育園」にやって来る。

ごめん下さい!と呼びかけながら、園内に上がり込んだ麻里子は、誕生会の飾り付け中だった俊二を発見する。

突然の麻里子の来訪に驚いた俊二だったが、さっきの歌聞いたよ。子供たちが教えてくれたんだ。素晴らしかったよと褒める。

麻里子はそんな俊二に、もう1度、会社に戻ってください。悦子だって、京子だって、みんな待ってるんですと頼む。

その時、外から園児を連れた保母孝子(小鹿ミキ)が帰って来て、俊二のことを河内先生と呼んだので、麻里子は驚く。

それに気づいた俊二は、たった1人の男の先生。これでも、子供に人気あるんだぜと照れくさそうに教える。

そして、僕はもう、会社には戻らない。子供や保母さんのためにも…。土台無理なんだ。こんな所で、女手1人でこんなことをやるのは…。彼女は、いつか話した女の妹なんだと打ち明ける。

(回想)事故現場に駆けつけた妹孝子は、担架に横たわったヨシエにお姉ちゃん!としがみつくと、どうしてくれるのよ!お姉ちゃんを返して!と俊二に迫る。

(回想明け)過ぎてしまったことは忘れようと思い、麻里ちゃんの会社に入ったんだ。でも、死んでも手を離さなかったヨシエのこと、保育園に託した妹のことをどうしても忘れられなくて…、忘れられないなら、いっそのこと、あの仕舞いに自分を縛り付けようと…、妹のことも引き受けようと…、彼女にはまだ、僕の気持ちは伝えてないんだけど…、あの歌聞いて決心したんだよ。こんな風に男と女が結ばれることもあるんだよ…と俊二は告白する。

それを聞いていた麻里子は泣き出す。

そんな麻里子と俊二の所にやって来た園児が、先生、早くお誕生会やってよ!お姉ちゃん、歌ってよとせがんで来る。

それを聞いた俊二は、麻里ちゃん、僕からも頼むよ、誕生会の幕開けに歌ってくれよと頼む。

園児たちも一斉に、歌って!と声を上げたので、決心した麻里子は、孝子に向かい、お幸せに…と声をかける。

何も知らない孝子は、えっ?と聞き返すが、もう1度、河内先生とお幸せに!と麻里子が繰り返すと、意味が分かったようで、嬉しそうに頷く。

俊二がピアノで伴奏を始め、麻里子は誕生会の席で「ひとりじゃないの」を歌い始める。

そして、園児らと共に外に出て行く麻里子の姿を、窓から、俊二と孝子が嬉しそうに見つめるのだった。