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47RONIN

冒頭、白髪で人相の悪い老人(田中泯)が登場したので、これが吉良上野介か?と一瞬思ったが、何と、この老人が浅野内匠頭だと言う。

映画のラストに、「この映画は忠臣蔵を新解釈したものだ」と断りが入っていることからも分かる通り、この作品が「忠臣蔵」の忠実な再現ではなく、あくまでもヒントにした、全く別物の「剣と魔法のファンタジー」だということは理解できるのだが、こうもイメージが違っては混乱してしまいそうだ。

では、全く別物の「剣と魔法のファンタジー」として観て、この作品が面白いのかと言うと首を傾げざるを得ない。

最大の問題点は、大石たちが行う「復讐劇」の動機を観客に納得させる丁寧な描写がないことだと思う。

本来の「忠臣蔵」では、前半の一見冗漫に見える、ねちねちした吉良の嫌がらせ描写があるからこそ、吉良、討つべし!と言う気運が観客にも伝わるのだが、本作では、そこが弱いために、吉良上野介の悪役としての存在感も弱ければ、大石たち赤穂浪士のヒーローとしての活躍の爽快感も薄れてしまっている。

途中、天狗の口から語られる、無益な争いを縛めるような言葉や、復讐の連鎖を止めるための自決などと言う、一見もっともらしいメッセージ性も、肝心の復讐自体が安易に行われているように見えてしまうため、説得力を失ってしまっている。

この映画を観る限り、悪いのは魔女であるミヅキであり、吉良は、その色香にたぶらかされている小悪党のようにしか見えない。

そして、ミヅキも又、攻め入って来る赤穂浪士の動静も見透かせないような力の無い魔女である。

単純な勧善懲悪劇として観ても、敵役がこんなに非力で魅力がないと、戦うヒーロー側の方にも感情移入し難い。

赤穂浪士を応援したくなるきっかけすら掴めない。

名君浅野内匠頭が敵の策略に引っかかり、無実の罪で自決させられた…ということが復讐の直接的な動機なのだが、まず、浅野が名君であると言う描写がほとんど見当たらない。

冒頭、子供だったカイを助けてやると言う件がある以外、例えば、藩の民たちから慕われているような描写もなければ、これは良い人物だな…と観客に納得させるようなエピソードもない。

これでは、最初に書いた、一見、吉良上野介のように見えてしまう老いた悪人面の君主が死んだと言う風にしか見えず、観客としては浅野にさほど感情移入していないので、いきなり仇討ちと言われてもピンと来ないし、本来の忠臣蔵を知らない海外の観客には、大石たちが1年も待って復讐に立ち上がる意味すら理解されないのではないだろうか?

日本の忠臣蔵映画で、浅野役が人気のイケメン俳優になっていたりするのも、観客により簡単に同情させるための仕掛けの意味合いもあったのだな…と、今回の浅野役を見ていて初めて気づいた。

大石を演じている真田広之も、終始、無表情を貫いている堅物と言う印象だけで、リーダーとしてふさわしい人物であるようなエピソードはない。

かろうじて、天狗の洞窟内での冷静さがそれに当たるのかもしれないが、ここは1人の侍としての描き方であって、リーダーとしての描写ではないような気がする。

日本人は、家老と言う呼び名でその地位を想像できるが、海外の観客は、この大石内蔵助と言う人物の立場すら分からないのではないかと思う。

四十七士の面々の中にも、ミズノのような腹黒く見えてしまう人物を入れているため、赤穂浪士と言うだけではにわかに感情移入し難い。

ミズキの策略で、四十七士が待ち伏せさせる所なども乱暴な描写に見え、結果、四十七人も生き延びたことに、どうして魔女であるミヅキが気づかないのかが分からない。

遊郭に潜入したハザマと言う若侍の前に遊女に化けて先乗りしているなど狡猾な部分があるかと思えば、城内に変装して忍び込んだ赤穂浪士たちに全く気づかないなど、その妖力はちぐはぐで、結局、大雑把な討ち入りのストーリーに、何となく絡んでいるだけのご都合主義のキャラクターにしかなっていないのだ。

そのミヅキに操られる吉良上野介役の浅野忠信も、パターン的な悪役演技をしているだけにしか見えず、魅力に乏しい。

これは、浅野忠信がどうこう言うより、ミヅキ同様、キャラクター設定自体が薄っぺらだからとしか思えない。

ファンタジーに登場する「良くある悪者キャラ」以上の掘り下げた表現がないせいだ。

日本の「忠臣蔵」での吉良上野介も、あくまでも芝居上の悪役であり、決して人間としてしっかり描かれている訳でもないが、前半での浅野に対する陰湿な苛めの表現で、分かり易い憎まれ役にはなっている。

本作では、その「陰湿な苛め」に当たる「憎まれるに至る経緯」が、魔法使いにたぶらかされていると言う被害者風に描かれているため、「最後に御印を取られるほどの悪人」なのか?と言う疑問が最後まで残る。

見終わった後の、何となくすっきりしない感じはここに起因しているような気もする。

すっきりしない感じは、大石たちが、主君浅野が自害した直後、その犯人を大した根拠もなく吉良に押し付けてしまっているように見えてしまう所にもあると思う。

観客は、ミヅキと吉良の会話など、犯罪にいたる経緯を第三者的に観ているので、何となく悪役として観て行くのだが、大石たちが、犯人を吉良だと客観的に突き止めるシーンがないので、釈然としないのだろう。

普通のファンタジーなら、首を斬られるのは魔女の方であり、吉良上野介は、その後、正気に戻って、自分がやってしまったことの愚かさに気づき反省する…と言う展開になるものではないだろうか?

肝心の討ち入りシーンも、忍者物のイメージとの混同などはご愛嬌としても、全体的に大味で、アクション映画としての魅力も薄い。

あくまでも個人的な意見だが、カイは、討ち入りを外部から助ける俵星玄蕃のようなキャラクターを演じていた方が、もっと見せ場が出来たのではないかと思う。

「忠臣蔵」でお馴染みの、討ち入りを外部から応援する描写などがないのも、クライマックスが物足りないと感じる部分かもしれない。

所詮「時代劇ファンタジー」のジャンルは、過去、日本でもたくさん作られており、ちょっとやそっとの「奇想」では驚かない部分もあるし、今さら、ハリウッドのVFXに目を見張るということもないだろう。

例えば、「里見八犬伝」(1983)での夏木マリの妖艶な玉梓役などを知っている目から観ると、ミヅキなど新鮮味さもお色気も乏しいキャラにしか見えなかったりする。

つまり、この作品、日本の若い層には「忠臣蔵」等と言う、名前はどこかで聞いたことがあるけど、いかにも古くさそうな素材にしか思えず、年配層には、時代劇を良く知らない人が作った「中途半端な奇想映画」くらいにしか感じられないのではないか。

とは言え、確かにこの監督は、それなりに日本文化を研究しているようで、妖怪や長崎の出島、刺青等と言ったマニアックな日本趣味が随所に登場している。

東洋風の竜や麒麟風の獣が登場するのも楽しいと言えば楽しいのだが、どうせ竜を出すのなら、日本風の城郭も出ているのだから、城を破壊する「怪竜大決戦」のような、けれん味たっぷりの特撮スペクタクルが見たかったような気もする。

真田さんにしても、天守閣の屋根の上での大立ち回りくらいの派手な見せ場は見たかった。

やはり、外国人監督と時代劇を見慣れた日本人観客では、時代劇に期待する「見せ場」「けれん」の感覚の違いが根本的にあるのだろう。

ある意味、勘違い日本像を描いた珍品の一種と割り切って楽しむのが良い作品かも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2013年、アメリカ映画、クリス・モーガン原案+脚本、ウォルター・ハマダ原案+脚本、ホセイン・アミニ脚本、カール・リンシュ監督作品。

その昔、国を閉ざしていた日本では、数多くの国があり、夫々の各大名が支配していた。

やがて、徳川将軍が登場し、日本を統一し、民の平和を司った。

侍の中で、主君がおらず、忠義がないと思われたものは浪人と呼ばれた。

この赤穂の国に、1人の少年が人外の地から現れた。

災いをもたらす鬼子と噂された。

頭に傷があることから、天狗の爪痕が刻まれているとも…

森の小川に突っ伏して気絶していたその少年を見つけた大石内蔵助(真田広之)が、その場で斬り殺そうとすると、城主、浅野内匠頭(田中泯)が止め、まだ子供なので、城に連れて帰ると命じる。

その少年魁(カイ)(キアヌ・リーブス)は不思議な力を持っていた。

浅野内匠頭の1人娘ミカ(柴咲コウ)も、カイの力には気づいていたが、幼い頃から2人は兄弟のように一緒に成長して行く。

浅野はカイを藩内に住まわせた。

ある日、ミカと一緒に森に行ったカイは、折れた枝を見せ、これは鹿が通った跡だと教える。

カイは、ミカから、小さな金色の折り鶴をもらう。

カイは、浅野親子に命を賭けても守り抜く恩義を感じていた。

大人に成長したカイは、その日、浅野内匠頭の狩りに同行していた。

大石から意見を求められたカイは、森の奥の方を見据え、獣の動きに乱れがあると教える。

浅野内匠頭は、仕留めよと命じる。

カイは、左目が青い白ギツネがじっと自分たちの方を見ていることに気づくが、そのまま馬に乗って森の中に駆け込む。

森の奥から出現したのは、麒麟のような獣だった。

馬に乗った浅野の家臣たちは、その獣を捕らえんと馬で追う。

獣は暴れ回り、次々と近づく家臣たちを馬から振り落として行くが、そうした中、獣に体当たりを食らわせられたヤスノ(羽田昌義)は、落馬し、刀まで落としてしまう。

そのヤスノに襲いかかる獣。

近くにいたカイは、地面に落ちた刀と迫り来る獣の間合いを計り、自ら飛び込んで行くと、刀を拾い上げ、ヤスノに飛びかかろうとした獣の心臓部を腹の下から突き刺す。

勢い余った獣はそのまま走りながら倒れる。

カイは、手にした刀を恭しく、ヤスノに返そうとするが、ヤスノはそんなカイを見下すように、いっそ、こいつに殺された方が良かった。お前ごときに助けられるくらいなら…と悔しがる。

その直後、駆けつけた浅野内匠頭は、倒れた獣の側に立っていたヤスノが倒したと思い込み、赤穂藩はそなたに借りが出来たとヤスノを褒め讃えるが、ヤスノは黙ってその言葉を受け入れる。

しかし、倒した獣の角を切り、浅野に渡した大石は、近くでかしこまっているカイの手が汚れていることに気づく。

カイは、又、左目が青い白狐を目撃する。

吉良上野介は、荒れた土地にある城に住んでいた。

そこにやって来た白狐は、女ミヅキ(菊地凛子)に変身し、吉良に近づく。

森で浅野を獣に襲わせる計画が失敗したことを知った吉良上野介(浅野忠信)は、浅野は死んでいないようだな?とミヅキに聞くと、わしはお前を買いかぶっていた。我が先祖は、徳川将軍のために闘いながら、このような荒れた土地しか与えられなかった。

浅野内匠頭は、旗本として仕えていただけなのに、豊かな赤穂藩を得た。

近々、浅野は将軍を向かえるが、私は、客として呼ばれているだけだ…と日頃鬱積した不満を口にする。

そんな吉良に、ミヅキは、3日後、天下の目は赤穂に向けられます。

絶望の向こうには幸せが待っているもので、どんな人間にも弱点はあります。浅野の所にはミカ姫と言う娘がいますと悪がしそうに告げる。

城郭から、3日後に迫った将軍を迎えての御前試合の準備のため、指示を出していたミカ姫(柴咲コウ)は、大石内蔵助の息子大石主税(赤西仁)から、狩りに出ていた浅野内匠頭たちが、見事獲物を手に入れて帰って来たとの知らせを受ける。

出迎えに下に降りたミカに、浅野は、ヤスノが武勇を見せてくれたと教えると、将軍様をお迎えする栄誉を、藩の民たちと共に味わいたいと伝えると、ミカは、行列に桟敷を設けましたと、饗応の趣向を披露する。

浅野は、母親が生きておれば、喜んだであろうとミカに告げる。

一方、自宅に戻った大石は、出迎えた妻のリク(國元なつき)から、ご無事で良かったと声をかけられ、庭先で剣の稽古に励んでいた息子が稽古の虫になっておりますと教えられる。

その頃、藩内の外れのあばら屋に戻っていたカイは、1人火を焚き、獣との戦いで受けた怪我のうずきに耐えていた。

そこにやって来たのがミカ姫で、上半身裸になっていたカイの身体の傷に気づくと、自ら手当をしてやる。

ヤスノの顔には屈辱の表情が宿っていたと、誰が本当に獣を倒したかを薄々察しているミカが教えると、カイは、私にふさわしい扱いをしているだけですと、自らの不遇を諦めたようなことを言う。

しかし、ミカは、それは、みんなの方が間違っているのですとカイをかばうが、カイはそんなミカに、ここはあなたのような方が来る所ではないと言い聞かせる。

ミカはカイを観ながら。私の目を見て!嫌いと言える?と問いかけるが、カイは、死ぬまで御慕いしております。しかし、あまりにも身分が違い過ぎますと身をかがめる。

そんなカイの方を哀し気に振り返りながら、ミカ姫はあばら屋を後にして城に戻る。

2日後、武家の頭領徳川綱頼将軍一行が赤穂藩にやって来る。

徳川将軍は、出迎えた浅野内匠頭に、明日の試合、共に多いに楽しもうぞと話しかける。

そんな来客の様子を物陰から観ていたカイは、側室の中に、左目が青い怪異な女が紛れ込んでいるのを発見する。

吉良を操る妖術使いミヅキだった。

そのことをカイは即座に大石内蔵助に知らせに行き、森の中でも怪し気な狐を観たと報告するが、大石は、魔物を観ぬ久米を持つものは魔物だと言うが、お前は魔物か?と問いかけて来たので、違いますとカイが答えると、ならば、女の色香に惑わされただけであろうと大石は断定する。

その後、隣国の吉良上野介たちも赤穂に来る。

吉良は浅野内匠頭に、明日の御前試合が楽しみですと挨拶をした後、浅野に同行していたミカを観て、何とお美しい側室!と感嘆の声を挙げるが、浅野は無表情に娘ですと答える。

それを聞いた吉良は、非礼を詫びるが、その好色そうな目はしっかりミカのことを見ていた。

やがて、饗応の宴が始まる。

そんな中、翌日の御前試合に出る予定だったヤスノの元に、白狐が近づいていた。

翌日、いよいよ将軍が控える中、御前試合が始まり、吉良家側の代表として、巨大な甲冑武者が登場するが、対する浅野家側のヤスノの姿はなかった。

カイが主税らと共にヤスノのいる部屋に駆けつけると、ヤスノは原因不明の病にでも犯されたように倒れて苦しんでいた。

カイは主税に、妖術だ!お父様を!と告げるが、主税はもう時間がない!と焦る。

しかし、試合に出るには武士でなくては資格がなく、他に用意の侍はいなかった。

カイは、自ら、ヤスノが着る予定だった赤い甲冑を身につけ、そのまま試合会場へ赴く。

試合は真剣勝負で…と言うことになり、カイと巨大な相手は真剣を持って闘う。

途中、カイは、相手から弾き飛ばされ、その際、兜が脱げ、顔がさらけ出されてしまう。

将軍は、それまで!と試合を止めると、壇上から試合会場に降りて来て、カイの顔を覗き込み、そなた武士ではないな?と聞く。

その場でカイは、斬り捨てられかけるが、ミカ姫が駆けつけて来て止めようとする。

浅野内匠頭も、そやつは獣以下の身分なので、斬った所で刀の汚れになるだけです。どうかお許しを…と詫びる。

将軍は、奴の鎧を脱がせ、棒で打て!と命じたので、大石ら、浅野の家臣たちが進み出て、カイの鎧の上半身を脱がすと、背中を棒で叩き始める。

カイの幼なじみである芭蕉(米本学仁)は、カイの耳元で、許せよ!と小声で囁きかけて打つ。

その理不尽な仕打ちに、ミカは耐えかねてカイに駆け寄ろうとするが、内匠頭が今はならぬ!と言い聞かせ制止する。

そんな主君の様子を、大石内蔵助はじっと見ていた。

その夜、吉良の寝所にやって来たミズキは、今、内匠頭の心は乱れています。今こそ、積年の恨みを晴らすときです。勇気をお見せ下さいと色仕掛けで囁きかける。

そして、ミズキは自らの簪を吉良の右腕に突きつけると、吉良の邪念が腕からその簪に集結したようになり、簪の先に怨念の固まりの具現化として白い蜘蛛が出現する。

深夜、浅野内匠頭が寝ていた寝所内に、着物がフワフワと舞いながら侵入して来る。

着物は、ミズキの化身だった。

天井からミズキは、白い蜘蛛を、眼下で寝ている内匠頭の口元に降ろす。

内匠頭の唇に降り立った蜘蛛は、紫色になって消滅する。

父上!娘ミカ姫の呼び声を聞いた気がした内匠頭は床から起き上がるが、その目は白濁していた。

ミカ!娘の身の危険を察した内匠頭が隣の部屋に駆け込むと、何者かがミカ姫の身体に覆いかぶさっていた。

内匠頭は、娘を助けるために、そのくせ者に太刀を浴びせかけるが、それは、寝ていた吉良上野介であった。

吉良は、突然寝所に侵入して来た内匠頭がいきなり斬りつけて来たことに驚いて後ずさる。

騒ぎに気づいた大石が、主君を止めに来るが、もは妖術に取り憑かれた状態の内匠頭は、ミカ!と絶叫するだけだった。

そこへ、将軍がやって来る。

ことの始末は明白。丸越しの客人を負傷させた浅野内匠頭は、打ち首に値する罪を犯していたが、これまでの功績を鑑み、つくに切腹を命じると将軍は言い渡す。

その後、内匠頭と2人きりになった大石は、名誉の切腹を命じられただけでもありがたいと言う浅野の無念さを知り、殿は操られていたと告げるが、すでに死を覚悟していた内匠頭は、わしに代わり、ミカと民のことを守り抜くことを約束してくれと頼み、解釈も大石に託す。

切腹の場で、ミカは、お父様!とすがりつこうとするが、泣き顔を人に見せるな!と知ったした内匠頭は、白装束で進み出ると、作法通り、腹を斬り、大石内蔵助が介錯する。

その頃、自分のあばら屋で1人謹慎していたカイは、灯したろうそくの火が風で消えるのを見て、愛する主君の命が絶えた瞬間を悟る。

赤穂藩士たちは、大石の元に集まると、仇を討たなければ!と興奮していたが、今我らが立ち上がれば、民たちも皆殺しにされるであろう。民を道連れにしてはならぬ!と大石は言い聞かせる。

ミカ姫は、自害用の毒を侍女たちから渡されていたが、まだ赤穂を失っておりませぬと答える。

その後、大石内蔵助は、将軍と吉良上野介の出立に立ち会い、自らの刀を差し出すと、お心のままに…と将軍の判断に身をゆだねる。

将軍は、そちの身は吉良家預かりとする。内匠頭の仇を討とうなどとは考えぬことだと言い渡し、上野介には、吉良!赤穂は今よりそなたの領地だ!と告げ、共の物を従えて城を出立する。

その後、吉良上野介は、大石ら赤穂藩士たちに、所払いを命じる。立ち去らぬ者は、見つけ次第、斬り捨てる!と言い渡す。

その場にカイが引き立てられて来ると、二度とその顔は拝めないぞ。大石1人は地下室に閉じ込めて気力をそげ!と上野介は部下たちに命じる。

それから1年…

地下室に閉じ込められていた大石内蔵助が、雨の中、ようやく外に引きずり出される。

駆け寄ったのは、息子の主税だけだった。

家に戻って来た内蔵助は、主税と妻のリクに、この1年間のことを聞く。

みんな赤穂を去ったこと、ミカ姫は、吉良上野介との婚礼に備え、吉良の城に連れて行かれたとリクが教える。

カイは?と大石が聞くと、吉良の家来が長崎に連れて行き、オランダ人に売り飛ばしたとか…と主税が噂を伝える。

そんな主税に、馬が3頭欲しいと大石は言い出すと、リクには、我らは離縁した…、世間にはそう思わせるのだ。お前がこの世でただ1人。私の永遠の伴侶である事に代わりはないと告げる。

リクの方も覚悟していたようで、私も侍の妻…、夫の勤めはすなわち、私の勤め!と応える。

大石はさらに、湖に集まるよう、家臣たちに伝えろと敵の目が光っているぞ!と主税に命じる。

長崎の出島

全身刺青をした奇怪な男が、やって来た大石の姿に気づく。

出島に何のようだ?と声をかけると、男を捜していると大石が答えたので、幸運を祈っているぜと刺青の男は笑う。

出島の中では、カイが大男と闘う見せ物をやらされていた。

カイは、そう言う奴隷生活にマヒしているのか、その日も、相手の首をあっさり斬り捨て、勝利する。

その試合会場に乗り込んだ大石の姿を見たオランダの船員たちは、侍だ!と驚きの声をあげる。

こんないかがわしい裏の世界に足を踏み入れる侍などなかったのかもしれない。

大石は戦士として、カイと勝負をすることにする。

カイは既に、大石の顔を覚えていないようだったので、大石は剣を交えながらも、必死に大石だ!とカイに告げる。

カイは、そんな大石の言葉にも反応せず、ひたすら攻撃を仕掛けて来る。

大石は、姫は間もなく吉良に娶られる。止めなければならぬ!分かるか!と闘いながら呼びかける。

次の瞬間、剣を交えた大石とカイは、共に試合会場から逃げ出す。

途中、大石が、舟の間に落ちかけたりするが、自分を取り戻していたカイが助ける。

ランプを背後に投げつけ、舟に引火させて、追手を封じる。

難路か出島から逃げおうせた大石は、婚礼の儀まで7日しかない!と、付いてきたカイに教える。

なぜ今?とカイが聞くと、あの時逆らえば、皆殺しにされていた…、姫も殺されていた。ついて来るか?それとも元の奴隷に戻るか?と大石は迫る。

俺について来ても、敵の吉良には千を越す家臣たちに守られているし、妖術を使う雌ギツネもいるぞと言うと、あの時、私が忠告したのに…とカイは恨めしそうに答える。

私が間違っていた…、大石は、カイからミヅキのことを聞きながら、その危険性に気づかず、見逃してしまったことを詫びる。

お前が天狗か魔物かは知らぬ。だが、助けて欲しい!一緒に行こうと大石は頼む。

今度吉良に跪いたら、その首をはねる!とカイは大石を睨みつける。

あんな闘い方、誰に習った?と大石が聞くと、天狗に習ったとカイは答える。

その頃、自分の城の前で、家臣相手に剣の稽古をしていた吉良上野介は、カイが出島から脱出しました。浪人が手を貸したそうですと駆けつけた家臣から聞くと激怒し、大石を見つけろ!見つけて殺せ!と観月に命じていた。

そんな吉良の狼狽振りを、ミカ姫は、密かに観察していた。

湖に浸かり、身体を洗っていた芭蕉は、周囲に集まっていた赤穂浪士たちが、御家老様だ!大石様だ!と叫ぶのに気づき振り返ると、確かに、大石内蔵助とカイが、馬に乗って近づいて来ていた。

馬から下りた大石は、家臣たちを湖に密かに集めることに成功した主税をねぎらう。

浪人の身になって1年…、いよいよその時は来た!目的の先に待っているのは「死」だ!将軍の命に背くことになる。しかし、正義が貫かれるまで、殿の御心が休まることはない。吉良殿の首を討ち果たそうぞ!と集まっていた赤穂浪士たちに告げる。

そんな中、カイは、今でも持っていた、小さな折り鶴を手のひらに乗せ、それを見つめていた。

敵城の警備は堅く、入るには大手門か西門しかない…と、吉良家の城の見取り図を拡げ、大石は討ち入りの作戦を教え始める。

その後、一行は揃って先祖の墓に向かう。

大石は若い磯貝(出合正幸)に、町の遊郭で、口の軽い吉良家の小物を探せ。そやつから、吉良殿が外出する情報などを聞き出すのだと命じる。

戦う剣もないと言うハザマ(曽我部洋士)には、大石が自分の剣を授ける。

その後、一行は、武器を探しに羽越に向かう。

そこに、火の本一の鍛冶屋がいるからだった。

そんな中、ヤスノは、同行して来るカイのことが気に食わない様子で、侍ですらないものが1人混じっているとカイの事を当てこする。

すると大石は、侍などどこにいる?侍などここにはおらぬ…と答える。

羽越刀工の里

その村を警護していた吉良家の家臣たちは、やって来た大石たち一行を怪しんで、何者だ!と聞いて来る。

大石が低姿勢で進み出て、近くの村から来た者で、鋤と鍬を求めに参りましたと嘘をつく。

すると家臣は、ここは今や吉良家の領地だと告げ、背後で控えていた主税の手を観察し、百姓の手とは思えぬと喝破する。

見抜かれたと察したカイは、吉良の家臣たち相手に暴れ始める。

1人逃げようとした敵も、矢を射って倒す。

大石は、死んだ吉良家の家臣たちから刀を奪えと命じる。

その頃、吉良の城に幽閉されていたミカ姫の寝所に侵入して来たミヅキは、髪の毛をうねうねと動かしながら、あなたも父のように死ねば良いよと言いながら、懐剣をミカの顔の横に突き刺して行く。

一方、大石は、飛騨へ行くしかないな。他に武器を手に入れる手だてがない…と判断していた。

その時、樹海だ!あそこに行けば剣がある!と声をかけたのはカイだった。

天狗がいるんだと言うカイに、天狗などおとぎ話だと大石は否定する。

しかしカイが、俺は会ったよと言うので、どうして天狗の森に詳しい?その頭の傷は…、本当に天狗に付けられたのか?!と大石は驚く。

カイは、子供の頃天狗に捕まり、武術や妖術など教わったことを人間界では使わぬと誓わされたと言う。

そんな天狗が容易く剣をくれるのか?と大石が聞くと、意思を試されるだろうとカイは言う。

そんな頃、遊郭街に紛れ込んでいた磯貝は、吉良の行列がいつ城から出て来るのか、情報を探し求めていた。

そんな磯貝の前に現れた遊女はユキと名乗るが、ユキの左目は青かった。

しかし、磯貝は、そんなユキに接近する。

大石やカイたちは、竹林の中を進んでいた。

戻って来たか!カイに呼びかける声が聞こえて来る。

天狗に気づかれた!とカイは大石らに伝える。

彼らの周囲には、白い冷気のようなものが漂っており、それは、この森に捨てられて死んだ老人や、望まれなかった赤ん坊たちの幽霊だとカイは言う。

あなただけ…と大石を観たカイは、内蔵助だけを連れて奥へと進む。

大石は、主税たちに、ここで待っていろと告げ、カイの後について行く。

やがて、洞窟があり、カイと大石はその中に入り込むが、カイは、何を見ても決して刀を抜くなと大石に念を押す。

洞窟の奥は広くなっており、そこには仏像が安置されており、黄色い僧着を纏った者たちが、全員仏に向かい、頭を下げて跪いていた。

カイは、ここで待て!と大石に命じる。

外で待たされていたヤスノたちは、御家老が騙されていたとしたら…と、大石一人行かせたことに不安がっていた。

戻らなかったら、俺が探しに行く!とヤスノは決意する。

カイは、地面に刺さった剣の前にいる、僧侶姿の天狗の首領(井川東吾)と対峙していた。

かつて、怖がっていた子供か?男になって戻って来たか?では、その剣を抜いてみろとと天狗は言う。

我々は信仰の違い故に人から阻害されて来た。お前も差別されている。お前はあの男に刀を抜くなと命じたな?もし抜けば、仲間もろとも命はない。女との愛が大事か?一夜の愛が…。

お前は、イギリスの船乗りと百姓女の子として生まれたが、人間たちは赤子のお前を森に捨てた。わしはそんなお前を育て、多くのことを教えて来た。だが、お前は逃げた…と天狗はカイに語りかける。

その頃、仏像の前で待っていた大石は、ヤスノや主税たちがやって来たので驚き、ここで何をしている?待てと行ったではないか!と声をかけるが、次の瞬間、ヤスノは刀を抜いていた。

大石は、止せ!と制するが、それまで地面にひれ伏していた僧侶たちが一斉に立ち上がると、ヤスノたちに襲いかかって来る。

大石は、仲間たちが襲撃される姿を目の当たりにして、思わず剣に手をかけようとする。

刀を抜くのだ!仲間を救うのだ!と天狗の声が大石の頭に響いて来る。

もう十分です!どうか剣をお譲り下さい!とカイは天狗の首領に頼む。

持って行くが良いと天狗の首領は答える。

刀を抜くのだ、大石!助けよ!となおも、大石の頭には声が聞こえていた。

その眼前で、主税が倒れる姿を目の当たりにする。

カイは、地面に刺さっていた剣を握ると抜く。

授けた物は行きていた…、天狗の首領は、カイの成長振りを認めたようだった。

大石も、刀を抜かないままだった。

気がつくと、目の前で死んで行った仲間たちの姿も消え失せていた。

すべて、大石の心を試す天狗の幻影だったのだ。

仏像に向かってひれ伏していた僧侶たちの間に、何本もの刀が突き刺さっていた。

試練を乗り越えた!みんな無事だ。剣も手に入れた!と戻って来たカイが大石に告げる。

剣を持って洞窟から出て来たカイと大石に、父上!中で何があったのですか?と主税が聞いて来るが、大石は何も答えなかった。

芭蕉は、カイから受け取った刀の力を疑っていた。

カイは、人による。使い手次第だと言い、自ら小枝を斬ってみせる。

芭蕉も同じように小枝を斬ろうとするが、全く斬れなかったので、これは出来損ないだと不満を漏らす。

その後、馬に乗った大石たちは、とある村に到着する。

ハザマが、大石から譲り受けた剣を返そうとすると、大石はお前が使え、刀は十分揃ったと答える。

そこに遊郭から戻った磯貝が、耳寄りな知らせがあります!今夜、吉良上野介が、婚礼の報告をしに墓所を参るため城から出て来るそうですと大石に伝える。

大石たちは、好機到来と立ち上がるが、同行しようとした主税には、ならぬ!堀部(中島しゅう)とここに残れ!と大石は命じる。

その頃、吉良上野介は、ご先祖の墓所に向かうため、城を後にしていた。

ハザマに先導され、敵地に向かっていた大石は、気をつけろ!と注意する。

すると、ハザマは、申し訳…と言い出すと、急に泣き出し、吐瀉すると倒れる。

大石たちは、炎に突然囲まれる。

敵の罠に落ち、待ち伏せされていたのだった。

大石たちには、次々に矢を射られて来る。

ヤスノや芭蕉も矢を受けていた。

そんな中、必死にカイが仲間たちを助けようとする。

そこに、あの吉良の巨人武者が出て来て、赤穂浪士たちに斬りつけて来る。

戦いはあっという間の出来事だった。

焼跡に現れたミヅキは、落ちていた刀を拾い上げると、吉良の元に戻り、大石の愛刀に間違いありませんと報告する。

それを聞いた吉良は喜ぶ。

その後、ミカ姫の寝所にやって来たミヅキは、あんたの愛しい人は死んじゃったよと嬉しそうに報告する。

大勢の家臣も、大石も死んだ…。あんたを助けようとして死んだんだ…と嘲ると、だけど、あんたが自分で何をしようと知ったこっちゃない…。良い夢をね!と言いながら、自分の咽を書ききる仕草をして、ミカの顔の横に懐剣を突き立てると、ミヅキは部屋を出て行く。

ミカ姫は、残された懐剣を引き抜く。

翌朝、老いた堀部と村に残っていた主税は、命からがら逃げ延びて来た仲間たちの無惨な姿を見て、立ちすくんでいた。

カイは、瀕死の状態の芭蕉の傷の手当をしていた。

芭蕉はそんなカイに、昔、森の近くでお前を見つけると石を投げたものだ…。するとお前はすぐに木の陰に隠れた…と、遠い子供時代のことを嬉しそうに話す。

カイは、お前だとすぐに分かったよ。丸い腹が木の幹からはみ出していたからねと、こちらも愉快そうに答える。

お前は良い奴だ…とカイに告げた芭蕉は、そのまま息を引き取る。

ヤスノは泣いていた。

農家の外に立っていた大石は、殿が切腹する時、吉良を殺すべきだった…。例えしくじっても、名誉の死を遂げられた…と悔んでいた。

そこに近づいて来たカイは、あんたは武士だろう。力も覚悟もある。今度のことで、吉良は我らが死んでいると思っている。好機は今だ!仇討ちを諦めるのは早い!と諭す。

翌朝、みなが朝食を取っている時、近くの道を芸人一座が通りかかるのをカイは目撃する。

カイは主税に、父上を!と呼びに行かせる。

慌てて駆けつけたカイと大石が行列の前に立ちふさがると、芸人は怯え、私たちは吉良様の婚礼の祝いに招かれた芸人で、通行手形も持っておりますと申し出る。

近づいて来た大石は、分かっておる。力を貸して欲しいと伝える。

その後、ヤスノはカイに、獣から救われたとき、礼を言わなかったことを、今、詫びたいと言い出す。

他人の手柄を受け取るなど、武士にあるまじき姿だった…とヤスノは、自分の過ちを認めていた。

そして、武士なら二刀を腰に…と言い、カイに大小を渡す。

受け取ったカイは、大小の刀を腰に差し、ヤスノとお辞儀をしあう。

森に集結した浪士たちを前に、大石は、世の中は汚れている。不正が正さなければ、天は我らを見下げるだろう。復讐の後は、我らも死して、復讐の連鎖を断ち切らればならぬ!と最後の挨拶を始める。

そして、大石が差し出した巻物に、赤穂浪士たちは1人1人、自らの名前と、血判を押して行く。

今後、我々の名誉は、子孫が我々の名を語る時に感じる誇りのみになるだろう…と言い添えた大石は、脇に立っていたカイに、共に来るか?と声をかける。

カイは無言で血判状の前に近づくと、自ら筆で「魁」の名を記すと、刀の刃で親指の腹に傷を付け、血判を押すと、これで全員です!と告げる。

我ら、合わせて、四十七士!と大石が叫ぶ。

その頃、ミヅキは、囲炉裏の中の炭火を除き見ていた。

何が見える?と吉良が尋ねると、素晴らしい殿の栄光の未来が…、人々は殿にひれ伏すでしょう!とミヅキは答える。

そんな綺羅城に、芸人一座が到着する。

その芸人の中には、芸人に化けた赤穂浪士たちが紛れ込んでいた。

門番は、一応、芸人たちの身体改めをしていたが、無事、城内に通ることが出来る。

城内では、花嫁衣装である白無垢姿になっていたミカ姫が、吉良上野介に近づいていた。

やがて、城内の大太鼓が鳴り、芸人たちの余興が始まる。

仮面をかぶった座長らしき男が舞台中央に出て来ると、おめでとうございます!これから皆様方を楽しませて頂きましょう!と、外で見物していた吉良に挨拶する。

扮装して忍び込んでいたカイたちが、所定の位置に配備につく。

ミカ姫は、そんなカイに気づいていた。

やがて、赤穂浪士たちが、矢を放ちながら、城内に乱入して来る。

舞台上で踊っていた大石内蔵助は仮面を取ると、舞台下に隠していた剣を取ろうとする。

そんな大石の間近に矢が突き刺さる。

城内は、赤穂浪士の急襲に騒然となる。

吉良はミカ姫を連れ、城内に逃げながらも、蹴散らせ!と部下たちに命じていた。

カイも刀を抜き、敵に挑みかかる。

そこに、あの巨大甲冑武者が近づこうとするが、爆薬が収められた小屋を赤穂浪士たちが爆破したので、その横を歩いていた武者は、もろに爆風を受け、爆死してしまう。

場内の廊下をついて来ていたミカ姫は、袖口に隠していた懐剣を抜き出すと、吉良に斬り掛かろうとする。

吉良は避けるが、その場を逃げ出したミカ姫は、中庭でカイと再会する。

思わず抱き合ったミカは、カイ!信じていました!と言い、カイも、二度とあなたを離さない!と答える。

そこに、着物が空中を舞いながら現れると、ミヅキの姿になり、それはどうだろうね〜?死ねば終わり…とからかって来る。

お前など恐れぬぞ!とカイが剣を構えると、愚か者が!と叫んだミヅキは白竜の姿に変身する。

一方、城内に入り込んだ大石は、吉良を探しまわっていたが、やがて、戸を挟んだ向こう側にいた吉良の気配に気づくと、斬りあう。

中庭では、白竜とカイが対峙していた。

竜は口から炎を吐いて来るが、カイは天狗の剣の妖力でそれを防ぐ。

城内では、吉良上野介と大石内蔵助が、激しく刃を戦わせていた。

力と意思の力で勝った大石は、剣を落とした吉良を蹴りつける。

カイの方は、白竜に、剣を弾き飛ばされていた。

白竜は、ミカ姫に襲いかかろうとするが、刀を拾い上げたカイが、一瞬早く、竜の頭を貫く。

地面に落ちた白竜は、ミヅキの姿に戻った後、息絶える。

再び抱き合うカイとミカ姫。

吉良を捕まえた大石は、殿のご無念を今こそ晴らさん!と叫び、吉良の首を斬り落とす。

城壁の上に立った大石は、吉良の首討ち取ったぞ〜!と叫ぶ。

大石が右手に掲げた吉良の首を見た赤穂浪士も、吉良家の家臣たちも、みな一斉にひれ伏す。

中庭から出て来たカイとミカ姫も、大石を見上げていた。

吉良の御印を白布に包み、大石たちは吉良城を出る。

吉良の家臣たちは全員跪いて、赤穂浪士たちを見送る。

赤穂藩に戻って来た大石たちを、道の両脇で待ち構えていた村人たちが見守る。

その中には、リクの姿もあった。

主税!と、リクは息子に呼びかける。

大石たちは、形見の懐剣を亡き浅野内匠頭の墓前に捧げると、安らかにお眠りを…、仇は討ちましたと祈る。

その後、大石たち赤穂浪士は、将軍の裁きを受けることになる。

主君の仇討ちはならぬとの命に背いた罪は重く、本来打ち首となる所、いずれも忠義の印と認め、彼らにふさわしい名誉の死を与えられるとの公儀の命が下る。

大石はカイと最後の盃を酌み交わしながら、姫は亡き殿に似た聡明な方だ。かつての赤穂を取り戻されるであろう…と呟く。

その後、カイは、ミカ姫の部屋に招かれ、又抱き合っていた。

父は申しておりました。この世は来世への準備のためにあると…、愛の証し残せなくても、千年過ぎても、必ずあなたを捜し出しますとミカ姫が言うと、いずれの世でも、あなたを待っていますとカイは答える。

やがて、将軍の前に、四十七士全員の自決の場が用意される。

白装束姿になった全員が、辞世の句を脇に置いた時、待てい!と声をかけた将軍は、主税!大石の息子、前に出よ!と命じる。

大石主税は戸惑いながらも前に進み出ると、大石!この国に、その方の血筋が絶えることを惜しむ。生きて、赤穂に尽くせ。忠義の臣となせ!と将軍は命じる。

リクがミカ姫らと共に脇から見ている中、主税は白装束姿のまま、脇に退く。

カイは、他の四十七士と同じように、白装束の着物を開けると、腹を突く

ミカ姫は泣き出す。

後日、千回生まれ変わろうと、生死を越えた世で、必ずあなたを捜し出す…、そう書かれたカイの辞世の句の短冊と、小さな金の折り鶴を、橋の上に立ったミカ姫は見つめていた。

死を恐れぬ41人の侍…

日本人の魂を示す義士として、今も語り継がれ、彼らが眠る泉岳寺を詣でる人は多い…