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大江戸性盗伝 女斬り

上映時間71分の中編に近い長さで、一応「にっかつロマンポルノ」の作品らしいのだが、作られた時代もあり、女性の胸が露出しているくらいで、特に想像するような過激な描写はなく、むしろ、ちょっと昔のお色気まじりの2時間TVドラマのような雰囲気になっている。

出演者はほとんど無名の俳優だし、群衆シーン等もほとんどないが、どこかの時代劇セットを利用して撮っているらしく、それほどチープな感じはない。

TV時代劇でも観ているような感じである。

宮下順子が若々しいのが印象的。

その宮下順子扮する腰元のぬいが、何故、生きていたのかが最大の謎である。

これが、冒頭で殺されていると解釈すれば、ラストは怪談になる。

物語中盤、皆川頼母の妻、綾が、般若の賊に犯されそうになるのも、最後まで観ると、疑問が残るシーンである。

綾は、嫁いでいる身でありながら生娘と言う特殊な設定になっており、ここで犯されていると、話は又違った展開になっていただろう。

その危機を救った形になる飯田新次郎は、綾と恋仲になり、やがて悪事にも手を染め、2人ともやがては運命の仕返しに合う…と言う良くある因縁話になっている。

その辺をきちんと解釈できれば、この作品はそこそこ楽しめる作品になるはずである。

間違っても、エロの方に過剰な期待を持ってはいけない。

今の感覚で観る限り、この作品にほとんどエロ要素はないに等しいからだ。

早耳京太と言う瓦版売りが結構何度も登場するが、それを演じていたのが丹古母鬼馬二とは、最後まで分からなかった。

この頃はおそらく、歯は抜けていなかったに違いない。

ごく普通の地味なおじさんである。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1973年、にっかつ、桂千穂脚本、藤井克彦監督作品。

川面に浮かぶ屋形船の中で、枕絵のイメージに重なるように、腰元ぬい(宮下順子)の身体をなで回していたのは若衆姿の月之丞(梢ひとみ)

タイトル(江戸の町中を、白装束の集団が太鼓を打ち鳴らして歩いて行く光景をバックし)

そんな集団の前に姿を現したぬいは、太鼓の音に追われるように、稲荷神社の赤い鳥居の中に逃げ込む。

突如、鳥居の影から男の手が伸び、ぬいの口を塞ぐと、その場に押し倒し、着物の胸元を剥ぐ。

襲った賊は、般若の面をかぶり、きらびやかな衣装を身につけた武家のようだった。

そこに、ぬい!と名を呼び、月之丞が追いかけて来たので、般若面の賊は、気絶したぬいをその場に寝かせ、刀を抜いて月之丞の前に姿を見せる。

月之丞も抜刀して対峙するが、その胸元を斬った般若面の賊は、月之丞の胸からこぼれ出た乳房を観て、女だったのか…と呟くと、その場に押し倒す。

側で気がついたぬいは、月之丞が般若面の賊に犯されている所を目撃する。

般若の賊は、刀を月之丞の胸に突き立てる。

ぬいは夢中で逃げようとするが、すぐに追いつかれ、抱かれる。

やがて、ぬいは感じて来たのか、般若の賊の背に自ら手を回し抱きしめる。

しかし、そんなぬいの胸にも、事が終わった般若の賊は刃を突き立てようとする。

明神様の下で、やくざの辰(高橋明)から、借金30両の催促をされていたのは、浪人の飯田新次郎(五條博)だった。

辰が連れていた弟分の為(読文太)が、侍である新次郎を小馬鹿にしたので、新次郎は立腹するが、それを観た辰は、相手は仮にもお侍だぞ!と怒鳴りながら為を殴りつけると、新次郎に気づかれないようにウィンクして見せる。

そして、新次郎が袂に入れていた紙を抜き取り、それが、新次郎が内職として描いた枕絵だと知ると、30両返して頂くまでお預かりしましょうと笑う。

返してくれ、それはこれから版元に渡す絵だ!と新次郎は頼むが、30両返してもらえれば…と辰は言うだけ。

その時、明神様の境内から、階段を降りて来た奥方らしき女を観た新次郎は、あまりの美貌に目を奪われる。

それに気づいた辰は、あの方は、350石の旗本皆川頼母様の奥様、金なんてある所にはあるもんですね。皆川様は月の半分は出かけておられ、奥様1人でお留守番のようですぜ…と意味ありげに教えたので、拙者に押し込みをさせる気か!と新次郎は気色ばむ。

翌朝、皆川頼母(江角英明)は、庭の花畑に水をやっている妻綾(小川節子)に、拙者が丹精した花はきれいだろうと縁側から話しかけていた。

お前、近頃、何か願掛けに行っているようそうだな?何を願っているのだ?と問いかけるが、綾が何も答えないので、そのままいつものように出かけて行く。

うだるような夏の盛り、長屋で汗をかきながら枕絵を描いていた新次郎は、庭で行水を使っていたお勝(林美樹)から、背中を流してくれと甘えかけられていた。

新次郎は、暑さとお勝に飽きて来ていた事もあり、昨日出会った美しい奥方を思い出しながら、絵筆を置いて寝そべる。

夜、新次郎はお勝を抱いた後、お勝の巾着袋を奪い、中に入っていたわずかばかりの小銭をせしめると、酒代にしようとする。

その時、隣から赤ん坊の鳴き声が聞こえて来たので、うるさい!と新次郎はいら立つ。

しかし、コケにされたと分かったお勝は、そんなに金が欲しければ、てめえの才覚で一山当てやがれ!と怒鳴り返す。

頭に来た新次郎は、売女!と叫びながら、そんなお勝の首を絞めて来るが、軽業師であるお勝は、あっさり身を交わし、髪から簪を抜き投げ与えると、それは安いもんじゃないから、飲み代に足しにしなと言い残し、見世物小屋に戻って行く。

舞台に腰掛けたお勝は、背後に気配を感じ振り向くと、そこには般若の面をかぶった侍がいたので、慌てて壁をよじ登って逃げようとするが、般若男から、その股を斬り裂かれてしまう。

数日後、早耳の京太(丹古母鬼馬二)が、般若の面をかぶった辻斬りが、見世物小屋で女を斬り殺した!と触れ回っていた。

「かつえ之霊」と書かれた小さな位牌を前に、新次郎は1人で長屋で酒を飲んでいた。

そこに、為がやって来て、辰の兄貴からの香典だと言い、ボロ傘を投げ込んで帰る。

そのボロ傘の中には、期限は約束通り、このボロ傘のようになりたくなかったら、金を作る事ですぜ…と書かれた書状が1枚入っていた。

その夜、新次郎は、皆川頼母の屋敷に忍び込んでいた。

すると、庭の井戸端で、下男の平助(桂小かん)と下女の鶴(小森道子)がまぐわっているではないか。

旦那が留守の間は、いつもそうやっているらしかった。

その頃、寝所では、1人先に寝ていた綾が、自らの身体を慰めていた。

そこに突然、入り込んで来たのは、般若の面を付けた賊だった。

賊は、畳に刀を突き刺すと、綾にのしかかろうとする。

誰か!助けて!平助!と大声を出しながら、庭先に逃げ出した綾だったが、賊はそこまで追いかけて来て、駆けつけた平助も、相手が侍と分かると腰を抜かすだけ。

そこに姿を現したのが新次郎で、般若の賊と剣を向き合わせるが、犬が激しく鳴き出したので、賊は逃げ出す。

塀を飛び越えて逃げようとした賊に、新次郎は一太刀を浴びせるが手傷を負わせる事は出来なかった。

お怪我はありませんでしたか?と言いながら戻って来た新次郎に、平助がありがとうございましたと頭を下げる。

翌日、今度は、草原を歩いていた鳥追い姿の娘が、般若面の賊に襲撃され、また、胸を引き裂かれて殺害される事件が起きる。

その夜、帰宅した皆川頼母は、風呂場で、綾の裸身を心行くまで慈しんでいた。

昨夜は危ない所であったな…と頼母が言うと、あの方がおられなかったら、私、本当に怖うございましたわ…と綾は怯える。

そんな綾の身体を、頼母は嘗め回し始める。

町では、又起こった女斬り事件を、早耳京太がはやし立てる瓦版が売れていた。

蔵の中にいた頼母は、ここに来るのを禁じている綾がやって来たので、注意するが、綾は、新次郎様がわざわざお見舞いに来てくださいましたと報告したので、座敷に向かい入れる事にする。

酒を振る舞いながら、宿直が交代して戻って来て事件を知りました。一太刀浴びせたそうですなと頼母が昨日の仔細を聞くと、新次郎は、外を歩いていた時、奥方の悲鳴を聞きつけ、不躾を承知で思わず飛び込みましたなどと噓を言う。

頼母は、脇に置いた箱の蓋を開け、その中から、2両を包んで新次郎に渡すと、自分はやりかけの仕事があるので…と断り、その箱を持って蔵に戻って行く。

その箱の中には、ぎっしり小判が詰まっていたのを新次郎は見逃さなかった。

綾も、皆川は、ああして、大事なものは何でも蔵にしまい込んでしまうんですよと新次郎に教える。

翌日、新次郎は、辰にもらった2両を渡すが、辰はふざけるなと言って、その場に捨ててしまう。

この金はいるのかいらないのか?と新次郎が拾いながら問いかけると、渋々受け取った辰は、残りは10日、待ちましょうと言う。

新次郎が去った後、10日もくれてやるんですか?と為が聞くと、あの野郎、急に態度が変わりやがった。何か良い金づるでも掴んだに違いねえ…と辰は答える。

町には、また、白装束の集団が、太鼓を打ち鳴らしながら通り過ぎて行く。

長屋に戻って来た新次郎は、目の前に置いていた酒とっくりを見つめ、何かを思いついたように、又、皆川頼母の屋敷を訪れる。

頼母が、庭の花いじりをしている時、酒とっくりを下げて入って来た新次郎は、昨夜は、過分なもてなしを受けたので、今日は、国元の酒を…ととっくりを持ち上げて挨拶をする。

新次郎が持って来た酒は頼母の口に合ったようで、頼母は嬉しそうに盃を空け、綾にも勧める。

皆川様はお幸せですね。このような美しい奥方がおられて…と新次郎が世辞を言うと、頼母も、これはわしが一番丹精した花ですと自慢するのだった。

新次郎が辞去した直後、頼母は鼾をかいて寝入る。

その後、新次郎は、こっそり蔵に忍び込んでいたが、そこに綾がやって来たので、驚いて口を封じようとするが、綾は自分からその場に気絶してしまう。

それを観た新次郎は、薬が効いて来たか…と笑う。

先ほど持ち込んだ酒に睡眠薬を仕込んでいたのだった。

新次郎は、倒れて意識を失った綾を犯し始めるが、その時、綾があろう事か、生娘だった事を知り驚く。

綾の方は、うっすら気がついたのか、自ら新次郎の背中に手を回して来る。

初めての経験に感じてしまったようだった。

翌日、町中では、般若の面をかぶった男の子が、女斬りだぞ!と言いながら、怖がる少女たちを追いかけてふざけていた。

一方、人気のない竹林の中では、若い男女が昼間から逢い引きを楽しんでいた。

そこに、あの般若面の辻斬りが出現する。

皆川家の蔵の中では、その後も、新次郎が綾を抱きに来ていた。

すっかり悦楽の味を覚えた綾は、新次郎に夢中になったらしく、もうあなたと離れられない!と言いながらしがみついて来る。

亭主とは、本当にこのような事をした事はないのか?と新次郎が聞くと、皆川は、いつも私を裸にして、なでたり触ったりするばかり…、こんな幸せがあるなんて…と、綾は呟く。

そんな綾に新次郎は、俺の願いを聞いてくれ。30両ないと困るのだと言い出すが、そんな大金、とても私の一存では…と綾は困惑する。

金がいるのだ。後5日の内に…、金はどこにあるのだ?と新次郎は問いつめるが、蔵の中ですと綾は言うばかり。

その頃、竹林の中では、逢い引きしていた女が、裸のまま、腹を虫のように突き刺されて果てており、その側には、首をはねられた男の死体が座り込んだようにあった。

ある雨の日、綾が、新次郎のいる長屋に1人でやって来る。

ご亭主に観られたらどうする!と新次郎は呆れるが、お目にかかりたい一心で…、新次郎様、抱いてくださいと綾はすがりついて来る始末。

男も女も獣になるのだ。明神様ではじめて会った時は、直参旗本皆川頼母の奥方等とは、所詮縁等ないと思うていたが…と新次郎は夢中で綾を抱き、綾はそんな新次郎の身体を求めて抱きついて来る。

金を返す期限は後2日に迫っていた。

事が終わった後、部屋の中に落ちていた般若面の辻斬りの似顔絵が入った瓦版を目にした綾は、あなたが犯人になるのですと唐突に言い出す。

俺が般若に?と新次郎は驚く。

とある墓地の横の階段を降りていた若い尼僧(宝京子)は、突如、口に百合をくわえた般若面の辻斬りに襲われ、胸を突き刺されていた。

般若の男は、その場で面を取り去り、上着をはだけると、死んだ尼僧を犯し始める。

般若面を取ったその男は皆川頼母であった。

帰宅して来た頼母は、蔵の中の隠し戸の中に、般若の面と着物をしまい込む。

その後の夕食時、綾は頼母に、お願いがございます。毎晩、寂しい思いをいたしております。旦那様は非番の日はございません。今夜は川開きでございますとねだる。

外からは花火の音が聞こえて来ていた。

そんな子供のように…、しかし、いつもの埋め合わせをしようかと言い出した頼母は、鶴に提灯を持たせ、綾と一緒に花火見物に出かける事にする。

その帰り、稲荷の鳥居の所に来た時、仲睦まじい主人夫婦を観た鶴が、これで、奥様がご懐妊でもなされば万々歳ですねなどと世辞を言う。

そんなに巧く行くかな?と答えた頼母も、満更ではなさそうだった。

その時、頼母は、近くを通りかかった女に見覚えがあったような気がした。

次の瞬間、飛び出して来た般若面の賊が、下女の鶴を斬り捨てる。

そして、刀を抜いた頼母に対峙する。

綾が、新次郎様!と呼びかけたので、驚いた頼母だったが、その隙を突かれ、般若面の辻斬りに斬られてしまう。

倒れる直前、頼母の方も一太刀浴びせ、割れた般若面の下から現れたのは飯田新次郎だった。

倒れた頼母は、以前斬ったぬいの顔を見ながら死んで行く。

屋敷に戻って来た綾は、もう私はあなたのものです。抱いて!鶴と皆川の死体が見つかっても、般若の仕業に見せかければ良いのです。旦那様、私のお腹にはややができましたと言いながら、新次郎と抱き合うのだった。

翌日、賭場にいた辰を尋ねた新次郎は、少しくらいあくどい事をしないと、この世は渡れないと言ったのはお前だと言いながら、30両に利子として1両を加えて金を返す。

驚きながらも喜んだ辰は、久しぶりにやって行きませんか?と博打に誘って来る。

それに乗った新次郎だったが、不思議なくらいツキまくり、あっという間に金を稼いでしまう。

その金を持って、綾の所に戻って来た新次郎は、これからどうする?と聞く。

平助にも暇を出しました。もう2人の仲を邪魔するものはいませんと綾も嬉しそうに報告する。

そして、抱いて!お腹のややも一緒に抱いて!とせがんで来る。

そんな綾を抱いてやっていた新次郎は、障子に女の影が映り、部屋の前に跪くと、皆川様にお目通り願いとうございますと声が聞こえる。

商事が開くと、そこにいたのは、腰元姿のぬいだった。

着物の胸元をはだけたぬいは、これは、あの夜、あなた様に付けて頂いた傷でございますと言う。

その胸には、左肩から、乳房の間を縫い、一文字の刀傷が残っていた。

驚いた新次郎は、拙者は頼母ではない!と否定するが、ぬいは、川開きの日、お稲荷さんの所で、私は全て観たのです。お隠しになっても無駄ですと言い、あなたに斬られれば本望でございますと言いながら、新次郎に抱きついて来ようとする。

綾は困惑し、斬って!斬り捨てて!と新次郎に頼む。

新次郎は、言われるがまま、刀を抜くと、ぬいの右肩から乳房の間を抜き、一文字に斬り捨てる。

畳に突っ伏したぬいは、私の身にもしもの事があったら、一切を記した文がお奉行に届くように…と言い残し、息絶えてしまう。

それを聞いた綾は、噓です!脅かしです!キ○ガイですから、筋道の通った事等言う訳がありません!と叫ぶ。

私たちは幸せになります!幸せが私と共に付いております!と綾は、正気を失ったような目つきで1人呟くのだった。