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二連銃の鉄

タイトルからすると、小林旭が二連銃で撃ちまくるガンアクションものか?と思うが、実際は、昔捨てた恋人に未練を残す男の姿を描いた、ちょっと古風なタイプのメロドラマと言った方が近い内容になっている。

劇中では、主人公に惚れ抜いた男が登場し、しきりに良い男だと連発するが、話の中核となる女に関しては、度量の小さな男にしか見えず、過去を引きずっているのも演歌風で頂けず、その辺のアンバランスさが昔風のメロドラマに見える原因ではないかと感じる。

要するに、恋愛観が古臭いのだ。

「月光仮面」や「七色仮面」と言ったヒーローものの原作者としての川内康範より、愛を歌いあげる歌謡曲の作詞者としての川内康範の方が色濃く出ていると観るべきかもしれない。

主人公がしきりにタバコを吸っているのも、この時代特有の表現だろう。

冒頭、いきなり素っ頓狂な高音の旭が「ダイナマイトが150トン」を歌い、射的場で50連発命中の離れ業を披露した辺りの快調な出足を観る限り、荒唐無稽な活劇が始まると期待させるが、物語が進むにつれ、陰気な過去の懺悔物語に変化して行く。

拳銃の名手と言う設定なのに、最後の戦いが素手での殴り合いと言うのも、何となく肩すかしを食った気分。

当時の日活アクションはこんなもの…と言ってしまえばそれまでだし、主人公がムショ帰りと言う設定では、大暴れしようもないのかもしれないが…

これが、後年の高倉健の任侠ものなどになると、クライマックスで大暴れして、観客に爽快感を与え、主人公は警察に出頭する…と言う流れになるのだろうが、まだこの時代の日活では、そこまで派手な展開はない。

ヒロインを演じているのは南田洋子だが、小林旭とのコンビは珍しいような気がする。

調べてみたら、「幕末太陽傳」(1957)や「南国土佐を後にして」(1959)「大草原の渡り鳥」(1960)など、2人が共に出ている映画は何本かあるものの、小林旭主演で、南田洋子ヒロインの作品となると、他には「女を忘れろ」(1959)くらいしかないように思える。

子役時代の江木俊夫が出ているが、「今日に生きる」(1959)と「大草原の渡り鳥」の間の時期の作品らしい。

北海丸に乗っている「ヤマさん」と呼ばれるひげ面の男を演じている役者が分からなかった。

キネ旬データで、「ヤマさん」らしきキャストと言えば「山田」と言う役名で宍戸錠の名が書いてあるが、この映画に宍戸錠は出て来ない。

同じく、「政」と言う役の小沢昭一も出ておらず、内田良平が演じている「沖正吉」と言う役名の記載はキネ旬データの方にはない。

鉄五郎に惚れる犬塚船長を演じている二本柳寛がなかなか渋くて良い。

鉄五郎より大人として描かれているだけ魅力的でなのだろう。

善玉だけでなく、悪役を演じても貫禄があるし、当時は重宝されていた人だと思う。

劇中に登場する「ラッコの密猟」と言うのは、ラッコ・オットセイ猟業のことらしく、画面の出て来るのは、オットセイの記録フィルムだけである。

全体としては、平均的なプログラムピクチャーと言った所ではないだろうか。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1959年、日活、川内康範原作+脚本、中西隆三脚本、阿部豊監督作品。

船が遠くに浮かぶ海をバックにタイトル

昭和29年 早春 函館

鉄砲小路

「どさんこ」と言う飲み屋のカウンターにもたれ、流しの演奏で、カラスの野郎 どいていな~♪と甲高い声を響かせ、歌っていた青年がいた。

「ダイナマイトが150トン」を歌い終わったその青年鉄太郎(小林旭)は、今はこれしかないんだと金を流しに渡すと、店の女将に、この近くに射的場はないか?景気が良い店の方が良いと聞く。

あるにはあるけど…と女将が戸惑うと、実は今、金を持ってないんだ、すぐに払うから一緒に付いて来てくれないかと言うので、それじゃあ、無銭飲食じゃない!と呆れた女将は、店の女の子も一緒に連れて、近くの射的場に案内する。

30発当たると1000円、40発当たると5000円、50発当たると10000万円相当の景品を贈呈と書いてある貼紙を呼んだ鉄太郎は、1発でも外したら、俺が5000円払うから、50発全部当たったら、2倍払ってくれないか?と店主(冬木京三)に持ちかける。

明らかに、店に取って条件が良いと判断した店主は承知するが、隣で撃っていたひげ面の船員は、俺も全部当たったら片手出すと言い出す。

5万か?と鉄太郎が聞くと、5000円だよと言うので、じゃあ、俺が外したら2500円でどうだと承知した鉄太郎は、1つに15発入った弾倉3つを店主から受け取ると、吸っていた煙草を横に立っていた「どさんこ」の女将に持たせると、やにわに的目がけて撃ち始める。

次々と的は倒れて行き、店主が黒板に当たった数を記録していくが、15発撃ち終わった鉄太郎は、女将から煙草を受け取り一服しながら弾倉を取り替えると、又煙草を女将に持たせ、再び連射し始める。30発撃ち、またタバコを一服しながら弾倉を取り替え、次の弾倉に取り替えた鉄太郎は、残り20発も難なく撃ち終わり、1発のミスもなく的を全部倒し終える。

いつの間にか店の外には人だかりが出来ており、その背後に通りかかった船員(二本柳寛)はヤマさん!と、5000円無駄にしたよとぼやきながら店を出て来たひげ面の船員に呼びかけ、あいつは二連銃の鉄って言うんだと教える。

店主も渋々ながら約束通り2万円鉄太郎に払い、その金を全部、鉄太郎は女将に渡す。

女将は大喜びし、飲み直しましょうと鉄太郎を又自分の店に引っ張って行こうとする。

苦りきった射的家の主人に話しかけて来たのは、地回りの仙吉(弘松三郎)だった。

俺に任せとけと店主に耳打ちした仙吉は、バー「花村」から出て来た船員五郎(沢本忠雄)とぶつかった後、「どさんこ」にいた鉄太郎に顔を貸してくれと外に呼びだす。

その五郎に挨拶され、すれ違ったヤマさんと船員は、地回り数人に外に連れ出された鉄太郎の様子を見ようと近づく。

「花村」のマダム美也子(南田洋子)も、野次馬の中に混じっていたが、鉄太郎の顔を観た美也子は驚いたような表情をしていた。

お前のような若造に町荒らされてたまるか!今手にした金を返せ!と凄んで来た仙吉に、金はもう使っちまったんだと答えた鉄太郎は、飛びかかって来たチンピラ相手に喧嘩を始める。

船員は、鉄砲だけじゃなく、喧嘩も強えやと感心するが、やがて仙吉からナイフで突かれたらしく、鉄太郎は踞り、地回りたちは逃げ去って行く。

ヤマさんと船員は、鉄太郎を抱え上げ、美也子が案内した「花村」に運び入れる。

その後、「花村」から出て来た医者(大森義夫)は美也子に、あの男の人差し指にはタコができとる。5日もすりゃ、良くなりますと言い残し帰って行く。

鉄太郎の面倒を見ているのは、身体が悪いために休みがちなホステス文江(堀恭子)だった。

一緒に付き添っていた船員は、美也子の部屋に来ると、茶をくれと頼むが、美也子は気を利かして酒を注いでやる。

女の部屋って良いもんだと呟いた船員は、知ってるのかあいつ?と聞く。

美也子が、カモメでしょう?と答えると、奴は二連銃の鉄太郎と言う大した奴だ。地回りの奴には俺が話を付けてやると船員は言うが、よっぽどあの男にご執心なのね。あなた、犬塚さんでしょう?カモメ仲間の間じゃ有名よ、船に引っ張り込まれたら逃げ出せなくなるので、あんたの船、地獄船って呼ばれているんでしょう?ラッコを撃つのに、あの男が必要なのねと美也子は聞く。

その「花村」に、先ほど港に向かった五郎(沢本忠雄)が戻って来る。

船に乗り遅れたので戻って来たと言う五郎に、犬塚は、腕の良い奴なら金を貸してやるぜと言葉をかける。

五郎は、明日から船に乗るよと答える。

美也子は、文ちゃん、あの通りだから、何の因果か、あんたたちが大好きなのよと言う。

3、4日安静にしていれば良いそうだと、鉄太郎の部屋に来て教える犬塚の顔を、布団の中からじっと観ていた鉄太郎は、あんた、どっかで観た顔だな?と聞く。

相変わらず地獄船に乗って密輸もやるがラッコの方が金になる…と悪びれる風もなく答えた犬塚は、アラスカ丸の件、あんたがしゃべったために、青柳はじめ、乗組員全員網走行きだ。ラッコ撃ちの名手だったお前が、女のために…と犬塚は話しかける。

そんな会話を部屋の外で、美也子が立聞きしていたが、犬塚に誰だ?と誰何されたので立ち去る。

犬塚は鉄太郎に、俺の船に乗らないか?出て来たばかりで、金ねえだろう?と札束を差し出すが、持って行ってくれと鉄太郎は受け取ろうとしない。

そんな鉄太郎のまっすぐな気性を観た犬塚は、おめえは良い男だぜと笑って部屋を出て行く。

代わって、美也子が部屋に入って来ると、その顔を観た鉄太郎は驚いたようで、ヨシ子!俺だぜ、鉄太郎だぜ!お前、俺を忘れたか?と言いながら起き上がる。

しかし、美也子は、自分はここの雇われマダムよと名前を名乗って人違いだと言うが、どうしても信じられない様子の鉄太郎は、美也子の着物の右袖をめくって、何かを確認する。

自分の歯形があるはずだと言うが、何もない事に気づくと、人違いと分かったのか、堪忍してくれと謝る。

男の人って、そんなに1人の女を忘れられないものかしら?と感心したように美也子は言う。

5年前、稚内の春だった…と鉄太郎は語り出す。

(回想)夜中、ハクモクレンが咲く道を歩く鉄太郎とヨシ子(南田洋子-二役)

立ち止まったヨシ子は、鉄太郎に手を出してと頼み、鉄太郎が差し出した左手に、自分のお母さんの形見なの。私だと思ってして行ってと渡すと、鉄太郎の方も、何か形見になるものを残して行くよと言い、ヨシ子の右の二の腕に噛み付く。

もっと強く!痛くないわと言うヨシ子。

(回想明け)これが、ヨシ子がくれた指輪ですよと、取り出してみせた鉄太郎は、その後、船が遅れたので、又ヨシ子の部屋に戻ったんだ…と話を続ける。

(回想)鈴蘭荘のヨシ子の部屋に入った鉄太郎は、そこで友人の健次(岡田眞澄)に組敷かれているヨシ子の姿を発見してしまう。

健次は鉄太郎に気づくと、よっちゃん諦めてくれ、俺のものになったんだ!俺の女だ!と言うので、鉄太郎は殴り掛かる。

健次は外に逃げ出すが、追って行った鉄太郎はなおも、ヨシ子は俺のものになったんだ!とわめく健次を執拗に殴りつける。

部屋に戻ると、ヨシ子が泣いているので、鉄太郎は殴りつける。

もっと殴って!あなたの気の済むまで…とヨシ子は言うが、鉄太郎がきびすを返して部屋から出ようとすると、待って!訳を聞いて!とヨシ子はすがって来る。

本を読んでいたら、突然、健次が入って来て…と泣きながら説明するヨシ子だったが、鉄太郎は冷めた口調で、本当に俺が好きだったら、命を賭けて操を守ったはずだ。それが女の誠じゃないのか?健次と一緒になれば、別の幸せが待っているはずだと告げる。

鉄太郎さん、私が最後まで愛していたって信じてね…と頼むが、信じてもしようがないじゃないか。お前はもう、健次の女じゃないかと言い捨てて、鉄太郎は霧に煙る外に消えて行く。

(回想明け)俺は何もかも嫌になって、密漁船の鉄と自首したんだ。その結果、乗組員はみんなムショ入りよ…と語り終えた鉄太郎は、今は、ヨシ子は健次の女房になっているはずだと言う。

そのヨシ子さんって人、今でも待っているはずよ。あんただってヨシ子さんのこと、忘れられないんでしょう?今度会ったら、許してあげたら?許せない?やっぱり…と美也子は語りかける。

外はいつの間にか雨になっていた。

その頃、浜辺で五郎と会っていた文江は、私、こんな身体でいつも店休んでいるでしょう?居づらいのよと悩みを打ち明けていた。

辛抱してくれ、俺、どんな事をしてでも金を作ってみせるから…と五郎は励ます。

文江は店に戻ると、気を使ってくれる他のホステス等に、明日レントゲン撮るんだって…ときわめて明るく、病院での事を報告する。

一方、五郎は浜辺にいたひげ面のヤマさんに、今、失業して困っているんですと相談する。

ヤマさんは、友達で遊んでいる奴がいたら、そいつも世話して良いぞと言ってくれる。

「花村」では、いよいよと買い物から帰って来て鉄太郎のいる二階へ向かう美也子を観ていたホステスたちは、男嫌いのマダムが、ここの所ちょっと変わったんじゃない?と囁き合う。

鉄太郎の部屋に入った美也子は、既に鉄太郎の姿がなく、一通の置き手紙だけが残されているのを発見し、愕然としながら読み始める。

僕の心が狭かった事が分かりました。会えるものなら、もう1度ヨシ子さんに会ってみたい。2人の幸せ祈ってやりたい。あなたに会った事は、忘れられないことになった。宿代のカタに指輪を置いて行きますと書かれており、封筒の中には、ちゃんと指輪が入っていた。

美也子はその指輪を指にはめてみる。

そこに犬塚がやって来たので、あんたが追い回すから、逃げちゃったわよと美也子は教える。

鉄太郎は、列車で稚内駅に到着する。

「銀の鈴」と言う店に、鉄ちゃんが帰って来た!とホステスたちが喜ぶ声が響く。

マダムの京子(奈良岡朋子)も鉄太郎の顔を観ると大喜びする。

全員でビールの乾杯をした後、久しぶりだよ、聞かせてくれとみんなから頼まれるまま、アコーディオンの伴奏で、「海が日暮れる〜♪」と鉄太郎は歌い出す。

歌い終わった鉄太郎は、マダムを呼んで、マダムの部屋に向かうと、そこに置いてあったヨシ子とマダムの写真を観ながら、よっちゃんはどこにいるんです?と聞く。

マダムは、5年前、奥尻の実家に帰ったと言う。

健次と一緒になったんじゃないのか?と聞くと、健次はかっちゃんと言う子と一緒になって、子供もいると教えたマダムは、あなたには、よっちゃんの気持ちが分かってなかったのよと言う。

その後、射的屋をやっていた健次に会いに行った鉄太郎は、赤ん坊をおんぶしている健次に出会う。

健次、お前、結婚したんだってな?と話しかけた鉄太郎は、背中の子供の顔を観ると、可愛い赤ん坊じゃないかと褒め、射的場を切り回している女性を観て、あの人か?と聞く。

俺は、ヨシ子と一緒になっているとばかり思ってたよと鉄太郎が笑いかけると、引きつった表情の健次は、今の俺には、この通り、女房や子供もいるんだと言い訳するが、防波堤で待ってるぜと言い残し、鉄太郎は一旦去る。

赤ん坊を妻に預けた健次は、防波堤で待っていた鉄太郎の所に近づく。

健次、お前。ヨシ子の事好きだったんだろ?どうして結婚してやんなかった?その根性が憎いんだよと鉄太郎が切り出すと、ヨシ子は何としても言う事を聞いてくれなかった。お前がムショに入った後、あいつはいなくなった。

何で、5年間、大事にしなかったと鉄太郎が責めると、悪かった!この通りだ!と健次はその場で土下座して来て、身体を自分のものにさえすれば、女は自分のものになると思ってたが、ヨシ子には心があった。ヨシ子の心はお前のものだったんだ。許してくれ!と頭を下げる健次。

鉄太郎はそれ以上何も言わず、立ち去って行く。

函館 鉄砲小路

ヤマさんは五郎に、金を女に渡して来い。俺等は「どさんこ」で待っている。逃げたりするなよと言って、送り出してやる。

五郎が入って行った店「花村」を観た沖正吉(内田良平)は、五郎に逃げられないように、監視役として店に入って行く。

文江に3万渡した五郎は、俺は航海に行くと説明する。

それを聞いていた美也子は、やっぱり犬塚の船に決めたのね。あの船が何をするか知ってるの?と聞いて来る。

根室航路の漁船だろ?と五郎が言うと、あの船に乗ったら二度と逃げ出せないよと教えた美也子は、その場で飲んでいた に、この子は北海丸には乗らない事にしたからと説明する。

すると沖は、じゃあ、金を返してもらおうかと言って来るが、五郎が困った顔になり、少し使ったんだよと美也子に説明する。

沖は、2つと違約金5つの計7つだと言うので、一緒にいたヤマさんは違約金はなだめようとするが、美也子は「花村」の主人花村(松本染升)の所へ金を借りに行く。

ところが、花村は、肩が凝ると言い出し、美也子が肩を揉んでやると、その手を握って抱こうとするので、ビンタをして逃れる。

すると花村は、今まで散々恩を受けたくせに、出て行け!と怒鳴りつけて来る。

店に戻って来た美也子は、私が力ないばかりに、あんたや五郎ちゃんを助けられなかった。私は稚内へ行くことにしたわと文江に詫びる。

結局、花村は、店はお鈴にやってもらう事にしたと美也子に引導を渡し、マダムを首になった美也子は文江を連れ「花村」を出て行く。

稚内に寄港した「第十二北海丸」にやって来たのは鉄太郎だった。

船に乗せてもらいたいんですと言う鉄太郎に、喜んだ犬塚だったが、働くんじゃないんです。奥尻まで送ってもらいたいんですと鉄太郎は頼む。

女だな?と気づいた犬塚は承知する。

交換条件を言いかけるが、けちくさいので止めたと犬塚は言う。

奥尻に近づいたとき、犬塚は鉄太郎に、お前、あの島に住み着く気じゃないだろうな?夕方まで待ってやる。戻って来る気があったら来なよと声をかける。

島に降り立った鉄太郎は、たまたま出会った子供(江木俊夫)に北村さんの家を知っているかい?と聞くと、北村ならうちだよと言うではないか。

その子供の祖父らしい老人がいたので、佐川鉄太郎と名乗ると、ヨシ子さんはいますかと聞くと、ヨシ子お姉ちゃんのお墓なら、裏の山にあるよとその子が言うではないか。

驚きながらも、その子について行くと、僕が生まれた時に死んだんだよと言うので、そのこの年を聞くと5歳だと言う。

確かに「北村ヨシ子の墓」はあった。

ヨシ子!ヨシ子!と鉄太郎は呼びかけるが、その時、背後から近づいて来たのは、美也子だと気づく。

あんた、「花村」のマダム!と鉄太郎が驚くと、ヨシ子は私の妹なの…と美也子は答える。

通りで似ていると思ったと鉄太郎が納得すると、函館で会ったとき、憎かったので、言えなかった。妹を殺した男ですもの…と美也子は説明する。

お兄ちゃん、どうして殺したの?と聞いて来る子供は、一番上の姉の子で、よし坊って言うのと鉄太郎に教えた美也子は、ヨシ子は崖から身を投げ、死に切れなくて、2日ほど苦しんだ末に死んだわ。あんたの名を呼びながら…。女の操は命がけで守るものって、あんた、言ったのね。ヨシ子はあんたが殺したのよと責める。

その時、港の方から、北海丸が鳴らす汽笛が聞こえて来る。

北海丸が待っているのね。函館に帰るの?と美也子が聞くと、もうどうして良いか、分からなくなった…と鉄太郎は呆然とする。

私は友達を頼って東京に行く事にしたの。あなたに返してもらった指輪、あんたにもう1度受け取ってもらいたいの。ヨシ子がこれを渡した時の気持ちと同じと思ってくれて良いわ。私ってバカね…と美也子が言うと、バカな奴はここにも1人いるよ…と答えた鉄太郎は、もう1度ヨシ子の墓の前に来ると、ヨシ子!許してくれ!と詫びる。

その時、また、北海丸の汽笛が聞こえて来る。

北海丸では、ヤマさんが犬塚に、船長、諦めた方が良いよと言っていた。

犬塚も諦めかけるが、そこに鉄太郎が戻って来て、頼みがある。一航海だけ付き合わせてくれと言って来たので、犬塚は喜ぶ。

そして、船に乗せた鉄太郎を他の船員たちに紹介する。

沖が、何する人だい?と聞いて来たので、犬塚が鉄砲撃ちだよと教える。

その後、船内で沖を中心に花札賭博をやっていたのを横で観ていた鉄太郎は、沖のイカサマを見抜き、博打に参加していた五郎には、バカな船に乗ったな。下手なくせに博打に手を出しやがってと声をかける。

五郎は反省し、函館のマダムもそう言ってました。良い人でしたねと思い出す。

函館では、君の彼女に世話になったからねと鉄太郎も笑う。

そこにやって来た沖は、この船に乗ったらイヌの真似をするんじゃねえ。青柳の事だって、おめえがしゃべったからムショに送られたんだと釘を刺す。

その直後、船内にドラが鳴り響き、全員銃を取ると甲板に上がって行き、めいめいにラッコを撃ち始める。

漁が終了すると、大漁だ!うまい酒が飲めるぞ!と犬塚は大喜びする。

港に戻って来た犬塚は、ブローカーから、今回の品物は傷が少ないので、全部引き取ると言われ、大金を手に入れる。

その金から、鉄砲撃ちたちに給金を渡す事にした犬塚だが、鉄太郎の後に受け取った沖が、どうして俺のはこんなに少ないんだと文句を付けて来る。

お前、鉄の3分の1も働いてないじゃないかと犬塚が説明する。

ふてくされた沖は、五郎から、町に行かないですかと声をかけられると、おめえ、今日、当番じゃねえか!外になんか出たら承知しねえぞと怒鳴りつける。

その頃、健次の射的場にやって来たのは、ムショから出て来たばかりの青柳船長(安部徹)だった。

仰天して固まった健次に向かい、まさかこんなに早く出て来るとは思わなかったろうと不気味に笑う青柳は、おめえ、おさまりかえってるじゃねえか。あん時の礼を返したくてな。鉄はどこにいる?おめえと鉄の仲なら、知らねえはずがねえと迫って来る。

それでも、健次が頑強に知らないと否定すると、鉄に会ったら言っといてくれ。あん時の礼がしたいんで青柳が会いたがっているとな…と言い残し、仲間を引き連れ去って行く。

「銀の鈴」に鉄太郎は犬塚と共に戻って来るが、そこに美也子がいるのに気づく。

聞くと、函館であんたの世話をしていた文江が、ここに来てずっと具合が良くないのだと言う。

奥の部屋で寝ていた文江に会うと、もし五郎ちゃんに会ったら宜しくって言ってくださいと文江は頼む。

美也子は、この子も可哀想なのよ…と同情し、鉄太郎を外に誘うと、その直後、青柳たちが「銀の鈴」にやって来る。

ヨシ子のいた店に急に来たくなったの。あんたがヨシ子とはじめて会った店でしょう?と港に来た美也子は鉄太郎に聞く。

あなたに会いたいって気持ちも会ったのと言う美也子に、俺は、死んだ妹に似ているからって、すぐ姉さんに惚れるほど、都合に良い男じゃないんだよと鉄太郎は答える。

その言葉を聞きたかったの。でも、好きなのよと美也子は打ち明ける。

「銀の鈴」では、青柳が、マダムの京子に鉄太郎の居場所をしつこく聞いていた。

その様子を、飲んでいた犬塚はじっと観ている。

青柳の方でも気づき、犬塚の席に近づくと、久しぶりに会ったんだ。挨拶でもしろ。

犬塚は、鉄を追うのはもう止めろと忠告するが、俺には恨みがある。今にほえ面かかしてみせると言い残し、店を出た青柳に、鉄を探しているんでしょう?情報を持ってるんだが、いくらで買う?と外に潜んでいた沖が声をかけて来る。

俺にも、犬塚と奴には恨みがあるんだと言う沖を気に入ったのか、青柳は、俺はこれから仕事を始めようと思うが、人が集まらないんだと相談する。

港では美也子が、又密猟に行くの?あんたを軽蔑するわと語りかけていた。

鉄太郎は、俺は奥尻で墓を観た時、海で鉄砲でもぶっ放せば、気分がすっきりするんじゃないかと持って北海丸に乗ったんだが、もう北海丸には乗らないさと答える。

そこにやって来た健次が、青柳があんたを捜しているぞ。あんな奴にかかわり合うんじゃないと忠告し、美也子に気づくと、よっちゃんのお姉さんですね。よっちゃんにはすまなかったと詫びる。

さらに「銀の鈴」のホステスも駆けつけて来て、文ちゃんが急に悪くなって、会いたいってと言うではないか。

それを聞いた鉄太郎は、俺が五郎を連れて来てやると美也子に告げ、北海丸に戻って行く。

北海丸の仲では、沖が他の船員たちに、青柳につけば、給料が5割方上がるんだなどと説得していた。

そして、埠頭で待っていた青柳に会いに行った沖は、野郎どもは5時までに連れて来る。取引はキャッシュでお願いしますよと頼む。

その様子を、鉄太郎は物陰から目撃する。

沖は再び北海丸に戻ると、船長室で犬塚が熟睡している事を確認すると、こっそり中に侵入し、そこに置いてあった金を全部持ち出す。

しかし、船室を出た所で待ち構えていた鉄太郎が背後から襲いかかり、沖を気絶させると、ベッドで寝ていた五郎に声をかけ一緒に北海丸を脱出する。

気絶していた沖が起き上がり、野郎!と言いながら、銃を持ち出すと、鉄太郎の後を追う。

背後から沖が銃を撃って来たので、建物の陰に隠れた鉄太郎は、五郎を先に行かせると、自分はその場に待ち伏せて、近づいて来た沖から猟銃を奪い取ると、懐の金を出せ!と迫る。

沖から札束を受け取った鉄太郎は、この金はお手が船長に渡してやる。行け!と命じる。

一旦は大人しく立ち去りかけた沖だったが、急に振り向くと、懐に隠していた拳銃を撃って来る。

鉄太郎は落ち着いて猟銃をぶっ放し、沖を倒す。

そこに駆けつけたのが犬塚とヤマさんで、事情を知らない犬塚は、俺が仇を取ってやる!と、怪我をして倒れ込んでいた沖に語りかける。

そこに、銃声を聞きつけた青柳たちも駆けつけて来て、俺が先に用があると犬塚に声をかける。

鉄太郎は逃げ出し、犬塚らと青柳一派は別々に後を追い始める。

しかし、2組とも、倉庫の付近で鉄太郎を見失ってしまう。

5番倉庫の前で犬塚とヤマさんが立ち尽くしていると、青柳一派が通り過ぎて行く。

ヤマさんは、どっちに付きゃ良いのか、分かりゃしねえとぼやくが、5番倉庫の中が怪しいと睨んだ犬塚は、ヤマさんに扉を開けさせると、拳銃片手に中に入ってみる。

鉄!出ろ!と犬塚が呼びかけると、奥から、猟銃を持った鉄太郎が姿を現す。

どうして撃たねえ?と犬塚が聞くと、あんたが撃ってからでも遅くないからだと鉄太郎が言うので、うちん所の正をカタワにしてくれたからな…と言いながら、犬塚は拳銃を向けて来る。

あいつは青柳一味から金をもらい寝返りうとうとしたんだ。これを受け取ってくれと言いながら、鉄太郎が盗まれた札束を取り出すと、そうか…と犬塚は合点する。

ヤマさん、これは正の鉄砲だ。まだ一発残っていると言って、持っていた猟銃もヤマさんに投げ渡すと、五郎はちょっと借りたが、朝までには帰ると言い残し、鉄太郎は倉庫を出て行こうとするが、入口の外から銃を突きつけて来たのは青柳だった。

その時、犬塚が、青柳!と呼びかけたので、青柳は一瞬気を取られるが、それに気づいた鉄太郎が、青柳に飛びかかる。

犬塚は、青柳の手下たちに、お前ら手を出すな!と怒鳴って銃を突きつける。

恨みがあるなら素手で来い!と鉄太郎は挑戦し、青柳も応ずる事にする。

2人はコートを脱ぎ、互いに、来い!と挑発し合いながら、倉庫内で殴り合いを始める。

結局、鉄太郎の方が強く、徹底的に青柳を殴りつける。

ぐったりした青柳を、犬塚は手下たちに運び出させる。

鉄太郎も、顔の右側と右手を負傷していた。

お前を惚れて惚れて、惚れ抜いていたんだが、どうやら諦めるしかないようだな…、翌日、北海丸に挨拶に来た鉄太郎に犬塚はそう語りかける。

これからは、二連銃の鉄ではなく、佐川鉄太郎として行きて行くつもりだと鉄太郎が言うと、一生あんたの事は忘れないよ。二連銃と一緒にな…と犬塚も答える。

俺のことなんか忘れた方が良いぜと鉄太郎が苦笑すると、あのマダムもよろしくと言ってたぜと犬塚は教える。

もし気が変わって、又船に乗りたくなったら、いつでも待ってるぜと犬塚やヤマさん、船員たちが見送る中、北海丸を降りて埠頭に立った鉄太郎は煙草をくわえる。

カモメが1羽飛んでいる。

歩き始めた鉄太郎に、海が呼んでもおさらばだ〜♪と歌が重なる。

その後ろ姿を見送りながら、惜しい男だな…と犬塚が呟く。

くわえ煙草で、振り返りもせず去って行く鉄太郎…