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金語楼の俺は殺し屋だ!

柳家金語楼主演のコメディ映画

脚本は、昭和ガメラシリーズでお馴染みの高橋二三氏だけに、この作品にも、茂夫と言う可愛らしい幼稚園児が登場している。

当時の日活作品には、可愛らしい男の子が重要な役柄で登場する娯楽作品が何本かあるが、本作の子役はその中でもひときわ可愛らしい気がする。

顔も愛らしいのだが、ブルマ型白パンツに腹掛けと言った、ほとんど裸に、大きなガンベルトとテンガロンハットをかぶると言うミスマッチ感が何とも言えない可愛らしさを強調している。

その母親を演じているのは宮城千賀子で、この当時はまだかなり妖艶で美しい。

脱線トリオの南利明が、イケメン役で登場しているのも珍しい。

確かに、当時の南利明は、普通にしゃべっていれば良い男である。

主役の金語楼は、殺し屋と冴えないおじさんの二役に挑んでおり、劇中、子役を喜ばせると言う設定で、色々な芸を披露してみせている。

落語家時代に培った芸なのか、リンゴを使ったジャグリング等、手慣れたものである。

ストーリー自体は、正直、ありふれた替え玉もので、そんなに面白い!と絶賛するほどのものではないが、二本立ての添え物として考えれば、気楽に楽しめる水準作くらいの出来にはなっていると思う。

南利明がイケメン役を演じているので、基本、笑わせる役は金語楼だけと言うキャスティングだけに、金語楼1人が孤軍奮闘している印象だが、アイデア不足のため、イマイチ笑いに結びついていないような気がするのが惜しい。

高橋二三氏の脚本にしては、やや凡庸な部類かもしれない。

ちなみに、劇中の最後に登場する松屋浅草店屋上の「スカイクルーザー」は、松竹作品「空かける花嫁」(1959)でも登場している。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1960年、日活、高橋二三脚本、小杉勇監督作品。

赤い灯、青い灯、きらめく香港にあるキャバレー「楽々」(フロアで踊るダンサーをバックにナレーション)

その用心棒をやっている苦虫の金蔵は、銃を持たせたら一番の腕利きと言われていた。

そんな金蔵を快く思っていない紳士ヤクザたちが「楽々」へ乗り込んで来る。

金蔵はどこだ!と銃をちらつかせて店内を見回すヤクザ(衣笠一夫、井東柳晴)たちだったが、一番フロアの奥のテーブルに突っ伏していた酔客のような男が、突如、脇の下から銃を覗かせ、発砲して来る。

その男こそが苦虫の金蔵(柳家金語楼)だった。

一瞬のうちに、店内に侵入していた賊を全員射殺する金蔵。

彼らも、金蔵の敵ではなかった…(とナレーション)

その金蔵の映像を16mmで映写していたのは、都鳥一家の女親分ミキ(宮城千賀子)だった。

子分たちが、けん銃の発射音等の効果音を担当しており、ミキの息子で幼稚園児の茂夫(松岡高史)も、腹掛け姿にガンマンの格好をして、一緒に観ていた。

上映が終わると、これは20年前のフィルムだが、この金蔵を呼ぼうと思うとミキが言い出すと、七郎(青木富夫)、千吉 (武藤章生)、竜太(杉幸彦)ら子分たちは、外国からタレントを呼ぶのは日本人の悪い癖ですよなどと反発する。

しかしミキは、落ち目の都鳥一家を盛り上げるには呼ぶしかない。早く香港に電報を打ちなさい!と命じる。

やがて、ノースウエスト機で羽田に降り立つ黒スーツに黒帽子、サングラス姿の金蔵

タイトル

空港に待ち構えていた七郎、千吉 、竜太は、用意しておいたクラシックカー金蔵を、都鳥一家の事務所があるクラブ「アトミック」に案内するが、それを密かに尾行していたのは、対立するイカヅチ組のハヤブサの留吉(上野山功一)だった。

イカヅチ組に帰って来た留吉は、親分の梶山源太(嵯峨善兵)が、都鳥一家から、苦虫の金蔵を雇ったので披露したいと言う招待状が届いた。金蔵ももうポンコツだろう。試して観るにはちょうど良い。都鳥一家とはアヤもあるし、招待されたのは都合が良い…と聞かされる。

都鳥一家の方では、ミキがパーティの準備をしていたが、そのお尻に吸盤付き槍が当たったので、入口から玩具の鉄砲を撃った茂夫を叱りながら追い払う。

招待されていた梶山たち親分衆は、テーブルに酒が出ていないのに文句を言っていた。

七郎、千吉 、竜太らはミキに、もう近くの酒屋にはツケが利かないと言うので、じゃあ、川向こうの酒屋に言って買ってくれば良いじゃないと叱りつける。

誰にも相手にしてもらいなく退屈していた茂夫は、控え室に待っていた金蔵に、一緒に遊ぼうと声をかけるが、金蔵は、俺はガキと酢の物は嫌いなんだと言うので、玩具のけん銃を撃って、金蔵の帽子を落とす。

すると、はげ頭が出て来たので、おじちゃん、随分禿げてるねと茂夫が言うと、怒った金蔵は、取り出したけん銃で床を撃ち、ハゲのことを言うな!俺はこう見えてもスタイルを気にする男なんだ!とわめいたので、騒ぎを聞きつけてやって来たミキが、金蔵に謝罪し、慌てて茂夫を抱きかかえて行く。

その頃、クラシックカーで酒を買いに行っていた子分たちは、大量のトリスを積み、すでに自分たちでも飲んでいたが、途中、橋の上に立っている男を発見、身投げだと直感し、慌てて、車から降りて近寄ると、バカな真似は止めろと男に声をかける。

その時、男がかぶっていた帽子が川に落ち、そん所あまりの高さに怯えたのか、男は渋々降りて来て、子分たちの車に乗せられると、死のうと思った理由を語り始める。

その男は、会社を30年間勤め上げ、定年を迎えたので、その日、女房から退職金を入れるカバンを渡され、くれぐれも今日は退職金を落とさないようにと注意され、娘にも機の弱い男のために「救心」を渡され、見送られて出社したが、帰りタクシー大を倹約して地下鉄に乗ったばかりに、カバンに入れていた退職金の150万をそっくりすられてしまったと言うのだった。

あの150万がないと生きて行けないと男が嘆くので、話を聞いた千吉は、明日俺たちが奥さんに事情を説明して謝りに行ってやるからと慰めるが、あんたらは、家の女房の怖さを知らないと男は嘆く。

一方、招待されていた梶山たちは、肝心の金蔵の姿も見えないので騒ぎ出していた。

ところが、ミキが金蔵を迎えに部屋に行って観ると、金蔵は完全に泥酔しており、もはや動けない状態だったので焦る。

そこに、七郎、千吉 、竜太らが帰って来て、酔いつぶれた金蔵を観ると、とんでもないまやかしものを連れてきやしたねと呆れる。

ミキも、金蔵が使い物にならない事になったら、都鳥一家は終わりよと嘆くが、そこにトリスの箱を背負って運んで来たのが、先ほど橋で助けられた定年おじさんだった。

それに気づいたミキが、あんた誰?と聞くと、水を飲ませてくれと言うので、子分に氷を口にくわえさせる。

その時ミキは、あんまりその男が金蔵そっくりなので、あんた、あの人と双子?と聞くが、首を振ったその男は、自分は山下敬吉(柳家金語楼-二役)だと答える。

ミキは子分たちに、やっちまいな!と目配せする。

その糸を悟った子分たちは、山下を別室に連れ込むと、その場でひげを剃り、黒いスーツに黒帽子、サングラス姿に変装させる。

自分が有名な殺し屋の身替わりになると聞かされた山下は、とても私には出来ませんと辞退するが、ミキは、だって、おじさん、死ぬつもりだったんでしょう?ほら、苦虫を潰して!と山下の口をへの字型に修正させる。

山下は、壁にかかった暦で、今日が13日の金曜日だと知りますます尻込みをするが、梶山たちヤクザの親分衆が集まった部屋に押し出される。

緊張のあまり、ロボットのようなぎくしゃくした動きでテーブルの前に立った山下だったが、梶山が子分の三太にウィスキーを金蔵さんに差し上げろと声をかけると、今日は俺がみんなにおごってやる。皆の衆にラムネを持って来いとボーイに言いつける。

そんなものありませんと言われた山下は、銀座なんて場末だな…とバカにする。

そんな山下を金蔵と思い込んでいる梶山が、拳銃の腕前を見せてくれと頼むと、2丁拳銃を取り出してみた山下は、今日は13日の金曜で、日が悪いから止めておくと言う。

そんな山下をバカにしたように、梶山は自分の銃を取り出すと、部屋の隅の棚に飾ってあった酒の瓶を次々に撃って割ってみせる。

窮地に追いやられた山下は、天井のシャンデリア目がけて連射し始めるが、ことごとく外れて一発も当たらないかに思えた。

その時、入口のドアから覗いたけん銃が火を噴き、シャンデリアが割れたので、その場にいた親分衆は山下が撃ったと思い込み感心する。

山下自身は、訳が分からず、緊張のあまり妙なくしゃみを連発する。

その頃、山下の妻春江(深町真木子)と娘の弓子(香月美奈子)は、退職金をもらいに行ったまま帰宅しない父親を探してもらうため、警察に来ていたが、入口前で出会った刑事らしき男に声をかけるが、それは捕まって連行途中の犯人で、その後ろについていたチンピラ風の男の方が刑事の佐々木(南利明)と名乗る。

弓子が、150万の退職金を持った父親が行方不明になったと話すと、48歳の抵抗ですね?と佐々木は、話題の小説にかけた冗談で返すが、それを理解できない春江は、うちの人は55で、浮気の出来るような人じゃありません!と真顔で反論して来る。

一方、クラブの一室に幽閉されていた山下は、出された食事をまずそうに口に運んでいた。

ふと気がつくと、入口に茂夫が立っており、じっと見つめているので、山下はおいでと手招きをするが、茂夫は山下を金蔵と思い込んでいるのか怖がって近づかない。

それを知らない山下は、紙ナプキンを紙縒りのように伸ばすと、鼻の上に乗せてみせたり、お盆を皿回しのように回してみせたりするが、一向に茂夫は笑わないばかりか、一言も口を聞かないので、最後はリンゴでジャグリングしてみせるが、茂夫が玩具の鉄砲を撃って来たので、驚いて手が滑り、落ちたリンゴの一つが茂夫の頭に落ちてしまい、泣きながら逃げて行く。

その頃、別室では、金蔵への仕事依頼の順番を決めていたが、権藤(長尾敏之助)が優先させる事になる。

しかし、本物の金蔵は12時頃から2時近くまで延々と酒を飲んでおり、またもや泥酔状態で、ミキがタンブラーの氷が溶けた水を頭からかけても目覚めず、とても仕事等出来る状態ではなかった。

ミキと子分たちは、閉じ込めておいた山下を又替え玉にしようとやって来るが、その山下が首をくくりかけていたので慌てて止める。

何の事はない、首吊り用の紐が長過ぎて、全く首吊りにはなっていなかったのである。

ミキは、バカだな、おじさん、10万あげるわ。150万の一部と言うことで家に送っといてあげるからと説得し、七郎に金を送金させる。

銀座の和光の時計が3時10分前を指したとき、権藤と金蔵に化けた山下が銀座にやって来る。

そのとき、警邏中の警官を見かけた山下は、その前に進み出ると、持っていた2丁拳銃を出してみせ、銀行ギャングするんですがね…と自白するが、警官は、映画のロケだと思い込み、笑いながら立ち去ってしまう。

それを背後で観ていた権藤は、見事に煙に巻いたなと山下の行動に感心する。

そんな権藤が狙った銀行を教えると、山下は愕然としたように、ここだけはいけませんと断ろうとする。

しかし、3時半になり、銀行が閉まった後、権藤が先に銀行に入って行くので、救心を取り出して飲んだ山下も、覆面をしてけん銃を取り出すと後に続くしかなかった。

銃を手にした覆面姿の2人を発見した女子工員が悲鳴を上げ、権藤は店長らしき男に近づくと金庫を開けるよう促す。

一方、山下の方は1人の女子工員の方に近づいていた。

それは、娘の弓子だったからだ。

しかし、弓子は目の前にいる銀行強盗が自分の父親等とは夢にも思わず怯えていたので、弓子の机の上にそっとマッチを置くと、机の横に付いていた非常ベルのボタンを自ら押す。

ベルが鳴り響いたので、慌てた権藤は、何も取らないまま、山下と一緒に逃げ去るしかなかった。

都鳥一家に戻って来た権藤は、誰かが非常ベルを押しやがって、首尾どころじゃなかったと悔しがる。

銀行にやって来た警察の中に、佐々木刑事の姿を見つけた弓子は、思わず手を握り喜び、さっき母親から電話があり、父親が10万円の電報為替を送って来たそうですと伝える。

佐々木は、その時、弓子の机の上に置いてあったマッチのラベルに書かれた「クラブ アトミック」と言う店に注目する。

弓子が言うには自分のものではないと言う。

その頃、梶山一家では、梶山がハヤブサの留吉にけん銃を渡しながら、苦虫をやってみるか?と勧めていた。

留吉は、あんな老いぼれ、イチコロさと自信ありげに引き受ける。

その頃、クラブ「アトミック」にやって来た佐々木は、「バーテン2名 急募」と書かれた貼紙を観て何かを思いつく。

長崎の浦上親分の紹介状を携えてバーテンに応募した佐々木は、対面したミキからあっさり採用される。

山下は、軟禁されていた部屋の天窓から脱出しようとしていたが、やって来た千吉からあっさり見つかってしまい、前金10万渡しているのを忘れてもらっちゃ困ると言われる。

一方、本物の金蔵は、クラブ「アトミック」内で、ホステスを侍らせ、陽気に飲んでいた。

ホステスたちは、有名な殺し屋金蔵のサインをねだるが、後で束になって来なさいと金蔵は上機嫌に答える。

そこにやって来たのがハヤブサの留吉で、見事なハゲ振りじゃねえかと挑発して来たので、金蔵が、お前さん、若いのに命知らずのようだな?と睨むと、今は怒れる若者の時代なんだと留吉は粋がる。

決闘の時間と場所を言いなと金蔵から利かれた留吉は、今夜12時、場所は、阿弥陀ヶ墓地と指定する。

金蔵は承知し、今夜はお前のお通夜だ、一杯飲め。おめえも俺も不幸な男だなどと言って酒を勧める。

それに気づいた千吉等は、とても決闘等で切る状態じゃないと気づき、急いで金蔵の身体を奥に運び込む。

そして、「救心」を枕元に置いて眠っていた山下を起こすと、10万も手付け金を受け取っているくせにと言って、金蔵に身替わりの用意をさせる。

その夜12時、梶山等が見守る中、阿弥陀ヶ墓地で留吉と退治した山下は、側にある墓地の提灯が不気味に燃え落ちたりするのを観て震え上がっていた。

立会人になった梶山が、お前はすぐにここで土葬になるんだと金蔵を脅すと、互いに13歩歩いて、1、2、3で撃つんだと2人に告げる。

すっかり怯えていた山下は、13歩歩いて、3つ数えた所で、目をつぶったまま適当に空に向けて発砲するが、何故か、留吉は撃たれて倒れてしまう。

喜んで山下に駆け寄って来た千吉たちは、空から落ちて来たフクロウの死骸を観て驚く。

悔し気にイカヅチ組に戻って来た梶山に、子分の三吉が、こうなったら金蔵の寝首をかくしかありませんぜと進言する。

クラブ「アトミック」に戻って来た山下は、ミキに、今日限りで暇を頂きたい。あんな恐ろしい思いをするくらいなら、まだ、女房にどやされていた方がましですと頼み込んでいた。

その頃、クラブ内の金蔵の寝室を探り当て、ドアを開いて中の様子を見た三吉は、ベッドの上の毛布が盛り上がっていたので、金蔵が寝ていると思い、数発銃弾を撃ち込んで逃げ帰る。

しかし、本物の金蔵は、そのベッドの横の床で寝入っていた。

その直後、バーテンに成り済ましていた佐々木刑事がミキの元にやって来て、金蔵さんがやられて行方不明ですと知らせる。

佐々木が部屋を出て行くと、山下は、早く家に帰してくださいと言いながら、腰が抜けたように這いずりながら、ミキの部屋を脱出しようとしていたが、それに気づいたミキから止められ、あんたに今行かれたら、何もかもぶち壊しだわ。今日からあんたが本物よ。退職金の倍払うわと言われる。

それでも、何とかクラブから逃げ出そうとしていた山下だったが、何と出ようとしていた入口から、娘の弓子が入って来たので、慌てて物陰に身を隠す。

佐々木刑事は、クラブの外の公衆電話から警察本部へ電話を入れ、ここはギャングの巣窟のようですから、もう少し様子を見てみますと連絡していた。

弓子はそのまま社長室に入って行ったので、山下はドアの外に立ち中の様子を聞くと、何と弓子は、このクラブのダンサーとして働かせてくれとミキに申し込んでいるではないか。

それを聞いた山下は、俺が退職金を持って帰らなかったばかりに、娘がこんな所に身を落とす事になった…と1人嘆くのだった。

しかし、弓子の目的はそんな事ではなく、好きになってしまった佐々木刑事の事が心配でじっとしていられなかったであった。

山下はその後、ミキに出会うと、2、3日、皿洗いでも良いからここで使ってくださいと申し出る。

さっきまであんなに帰りたがっていたじゃないとミキは驚くが、心境の変化ですとだけ山下は答える。

その夜、クラブ「アトミック」に梶山が、三吉等を従え嫌がらせにやって来る。

カウンター席に座り、金蔵ははしかにでもなったのか?などと嫌味を言っていた梶山の隣に、ホステスとして採用された弓子が座る。

その様子を奥から観ていたミキは、あんたが生きているとは思ってないようだわ。しっかり頼むわよと言い、金蔵に化けた山下を店内に押し出すが、梶山が肩を抱き寄せているのが娘の弓子だと気づくと、すみません、今夜は休ませてもらえませんか?とミキに頼み込む。

ミキは、おじさん!心境の変化って言ったわね?しっかりしなさいよと叱られたので、やむなくフロアに向かう。

すると、ボーイ姿の竜太が、苦虫の金蔵さんです!と紹介したので、梶山は驚く。

山下は2丁拳銃を取り出し、客たちに挨拶をすると、すぐに帰ろうとしたので、それを呼び止めた梶山は、私の盃を受けてくださいよと席に呼び寄せようとする。

嫌々カウンター席に座った山下は、酒を断り、水を注文する。

梶山はそんな山下に、メガネをお取りになって素顔をお見せ願おうかと頼む。

しかし、梶山の隣の弓子がこちらを見ているので、山下はメガネを取れない。

その内、弓子がバーテン役の佐々木の方を向いた瞬間、一瞬だけ黒めがねを外し、素早く梶山と三吉の顔を見せてまたメガネをかけ、すぐさま店の奥へと戻って行ったので、暗殺に失敗したと思い込んだ梶山は、不思議がる三吉を殴りつける。

翌日、梅花幼稚園から、先生に連れられ、みんなと一緒に帰りかけていた茂夫は、突然、見知らぬ三吉から呼び止められ、あの車に乗って、ママの所へ行こうと誘われる。

先生は、茂夫の身内のものと思い込み、そのまま他の子を連れて去って行ったので、車から降りて来た梶山の子分たちは、知らないおじさんに付いて行ったらままに怒られると言う茂夫を抱え上げ、そのまま車に乗せて立ち去ってしまう。

イカヅチ組から、茂夫を預かった。今後、都鳥一家の縄張りをイカヅチ組に渡し、金蔵を香港に帰せと言う脅迫状が届いたので、それを読んだ山下は、私が行きましょうと言い出したので、おじさんのようなへなちょこが乗り込んだって…とミキは呟くが、最後に1つくらい良い事をして死にたい。今日まで自殺が日延べになったんだと思えば諦めも付きますと山下が言うので、思わずミキは、おじさん!と感激する。

クラブのフロアでは、歌手が唄い、ダンサーが踊っていたが、その横をすり抜けて出かけようとしていた山下は、ダンサーから絡まれ戸惑う。

そんな山下を父親とは気づいていない弓子は、笑って、店を出て行く山下とすれ違う。

そんな弓子の事を思いながら、山下は、ああ。これが最後の見納めなのか…、弓子!お父さんは正義のために死にに行くんだよと心の中で叫んでいた。

イカヅチ商事の社長室に、茂夫は足を縛られてもがいていた。

そこに乗り込んだ山下は、動くと地獄行きだぜと2丁拳銃を突き出し、三吉に茂夫の縄を解かせると、おじちゃん!と呼びながら駆け寄って来た茂夫を抱き上げ、帰りに飴買ってやるからなとあやす。

そして、部屋の電気を撃ち落とそうと発砲するが当たらない。

その時、ドアの隙間から又謎のけん銃が現れ、電燈を撃ち砕くのだった。

クラブ「アトミック」で待っていたミキは、山下が無事茂夫を取り返して来たので、大感激する。

茂夫もすっかり山下の事が気に入ったのか、僕大きくなったら殺し屋になる等と言い出したので、山下は、ダメですよ。そんなことを言ったら、文部省から叱られますよとなだめる。

そんな社長室の中の様子を鍵穴から覗き込んでいた佐々木刑事は、近づいて来た弓子に、あの連中は悪党か善人か見当がつかないと首を傾げてみせる。

その夜、クラブ「アトミック」に怪し気な客がやって来て社長室に入ったので、佐々木刑事は弓子に、僕に万が一の事があったら、警察に知らせてくださいと頼んで、社長室の前に様子を見に行く。

社長室に入った客は羽島(弘松三郎)と言い、今夜、ミスターホワイティと麻薬の取引をするので、金蔵にこちらの用心棒になってもらいたいと言う依頼をしに来たのだった。

向うの余うっ人望はイカヅチ組の梶山だと言う。

1億円の取引額の1割が報酬だと言うので、喜んだミキは、その場に金蔵として同席していた山下に、行って頂けるでしょうねと声をかける。

山下は、今度の仕事が終わったら、家に帰してくださいと頼む。

その時、子分たちに見つかった佐々木刑事が部屋の中に連れて来られる。

警察手帳を見つけられ、刑事だと言うこともバレていたが、その手帳から弓子の写真がこぼれ落ちたので、驚いた山下は、この娘とはどういう関係だ?と問いつめる。

佐々木刑事が答えずにいると、縛ったまま寝室に連れて行き、ベッドに押し倒すと、佐々木が口がきけなくなるよう、口の中にハンケチを詰め込む山下。

その頃、佐々木刑事の帰りが遅い事を案じた弓子は、表の公衆電話から警察に急報していた。

その後、港で、Mr.ホワイティと羽島の麻薬取引が行われる。

クラブ「アトミック」の寝室に閉じ込められていた佐々木刑事を、弓子が助けに来る。

口のハンカチを取った佐々木は、警察への連絡はしてくれたかと確認する。

取引現場の暗がりで、山下は怯えきっており、そっと逃げ出そうとしていたが、そこに警察隊が近づいて来た事に気づき、思わず悲鳴を上げてしまう。

梶山は素早く、倉庫の照明を撃って壊すと、その場を逃げ出すが、ホワイティや羽島は駆けつけて来た警官たちに全員捕まってしまう。

そんな騒動の中、腰を抜かして暗闇の中を逃げ回ろうとしていた山下は、いつしか帽子も黒めがねを取れてしまっていた。

そこに、タクシーで佐々木刑事と弓子が駆けつけて来る。

ホワイティと羽島を連行していた署長に駆け寄った佐々木刑事だったが、署長は、君はいつも一足違いで間に合わん!と文句を言って立ち去る。

山下は、倉庫の床にドラム缶からこぼれた油や、壊れた水道管から噴き出す水でドロドロになって逃げ廻っていた。

そんな山下の元へ、千吉らが、おじさん、どうしたんだ?と言いながら近づいて来る。

警察が見落としていた金の詰まったバッグを持ったミキもやって来て、こう巧く行くとは思ってなかった。本当に長い間、ごくろうさまでしたと山下をねぎらう。

その時、手を上げろ!苦虫の金蔵!とうとう年貢の収め時がやって来たな!と、倉庫内に積まれた袋の上から声をかけて来たのは佐々木刑事だった。

側についていた弓子に、この男さえ捕まえれば、総監賞ものなんです!と佐々木は説明する。

弓子は、油に汚れて顔を背けている男に近づくと、それが自分の父親である事にはじめて気づき、お父さん、どうしてこんな姿になったの?と言いながら泣き出す。

佐々木は、その弓子の言葉に驚き、銃を突きつけながら、おじさん、教えてくれ。あんたは金蔵なのか?違うのか?と聞く。

山下は、俺は殺し屋仲間に隠れもしねえ、苦虫の金蔵だ!あんたは手柄を立てた刑事さんと幸せになれば良いんだと弓子に言い聞かす。

その時、最後に笑うのが本当の勝利者って事よ…と言いながら、闇に中から姿を現したのは、銃を持った梶山だった。

そんな梶山が金蔵を撃とうとしたとき、さらに背後に現れたのは、黒いスーツに黒帽子、サングラスに黒服面をした本物の金蔵だった。

金蔵は、振り返って撃って来た梶山と相打ちになり、自らもその場に倒れる。

駆け寄って来たミキは、倒れた金蔵の頭を抱き起こすと、まあ!金蔵さんと驚く。

近づいた山下も、あんたがいつも助けてくださったんですねと、これまでの事を思い出して聞く。

虫の息の金蔵は、俺は退職金をなくしたお前を可哀想に思ったんだと言い、撃たれたはずなのに…とミキたちが不思議がると、俺はいつも寝る時は、毛布の下にボロを詰めて、俺自身はベッドの下で寝ているんだと教える。

そして金蔵は山下に、第一、お前が俺と瓜二つなのがいけねえんだ。俺の片割れのようになっちまいやがって…、退職金パーで気の毒したな…と言った所で息絶えてしまう。

後日、浅草や隅田川を見下ろすデパートの屋上の「スカイクルーザー」前で、退職後、新しい仕事としてこの遊園地を始めた山下と茂夫を連れた弓子は、客たちを笑顔で迎えていた。

そこに、弓子と結婚した佐々木刑事が、執行猶予になった千吉、七郎、竜太の3人を連れて来て、マダムももうすぐ出られるよと弓子と山下に教える。

山下は、千吉たちに、こんな店で良かったら働いてくださいと声をかけ、射的で遊ぶように勧める。

千吉たちはなかなか当たらなかったが、試しに山下が、撃ってみると、見事鬼の腹に命中し、鬼がウォーッ!と手足を動かし吼えると、くるりとその書き割り人形が裏返り、笑顔の金語楼人形が登場する。

金語楼人形の腹からは、たくさんの鳩と風船が飛び出したので、弓子に抱かれた茂夫は大喜びで見上げる。

風船は、東京の空に舞い上がって行くのだった。