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警察日記 ブタ箱は満員

伊藤永之介原作の映画化…と言うことは、同じ日活で、森繁久彌主演で作られた「警察日記」(1955)、その続編「続・警察日記」(1955)に次ぐ、3度目の映画化らしい。

本作も、東北の地方都市を舞台に、のんびりした人情ドラマになっている。

事件も、貧しさから来る哀しい出来事が多い。

特に、最初の「警察日記」で仁木てるみが印象的だったのと同じく、本作でも、幼い子供を絡めた貧乏話が胸を突く。

その幼い子供たちの長女役を若き日の吉永小百合さんが演じているのが見物である。

借金を背負い込んでしまったために、母親は家を離れて住み込みの仕事をし、一方で父親は飲んだくれの自堕落な生活に溺れ…と言う家庭の長女として、集団就職に行く薄幸な少女の役を演じている。

彼女の下の妹キクと言うのも、「おしん」みたいで健気。

一方で、石坂洋次郎原作物にも似た、そうした貧しさ、辛さをユーモアで包んでいる描写も多く、決して、観ていて辛くなるようなシリアスタッチの映画ではない。

基本的には、楽しく心温まる映画なのだ。

人情肌の老巡査を演じている宮阪将嘉、飄々とした農夫を演じている常田富士男や、時限爆弾騒ぎに巻き込まれる草薙幸二郎の腰抜け演技等も楽しいし、小百合さん演じるヨシエに気がある若き巡査を演じている沢本忠雄や、色白でほっそりした米倉斉加年なども初々しい。

宇野重吉すら、まだこの当時は若々しいし、地位を悪用している署長役の嵯峨善兵や、町長役の信欣三なども微笑ましい。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、日活、伊藤永之介原作、川崎俊祐+青山民雄脚本、若杉光夫監督作品。

口ひげの老警官竹田(宮阪将嘉)が、くしゃみをする。

連行していた農夫の運三(常田富士男)が、土手で長々と立ち小便をするのを待たされていたからだ。

本来なら罰金を取る所だぞと立ち小便を許可してやっていると言わんばかりの竹田だったが、運三は全く気にしない様子。

そこに、自転車を押した助役がやって来る。

署長は?と聞かれた竹田は、出張だと答えると、命の洗濯ですか?と助役が笑ったので、署長会議だよと竹田は憮然として言い返す。

その頃、尾花山駅にやって来た尾花山町警察署栗橋署長(嵯峨善兵)は、職業安定所の柳原(田口精一)から挨拶される。

集団就職に行く村の若い娘連中を連れて、これから東京の口上まで同行して行くと言う。

その就職する娘の中の小高ヨシエ(吉永小百合)は、心配して見送りに来た幼なじみの花川巡査(沢本忠雄)に、食わせてもらって3000円ももらえるんだからと自慢するが、その場に来ていた幼いヨシエの弟のタキチ(長井久幸)とトメオ(池田竜二)はどうするんだ?と花川が聞くと、キクに頼んで来たと言う。

キクと言うのは、まだ小学4先生の妹の事だった。

ヨシエの父親は酒浸りで見送りにも来てないし、母親も、借金を返すために、村にある竹屋旅館と言う所で働いており、こちらも忙しくて見送りにこれないらしい。

幼い弟2人だけに見送られて、ヨシエは汽車に乗り込み出発する。

その時、改札口にキクがやって来て、姉~ちゃん!母ちゃんが、身体に気をつけて働けよ~って!と大声で呼びかける。

近くの鉄橋にその列車が近づくのに気づいた竹田巡査は、署長はあれに乗っているんだ!と教えるが、助役は、鉄橋の上に誰か立ってるじゃないか!と気づく。

鉄橋の上に立っていたのは、与助(武藤章生)と言う男だったが、人影に気づいた機関車がスピードを落としたので、何事かと、ヨシエの隣に座っていた署長は身を乗り出し窓の外を観ようとする。

その隙に、ボックス席の前に座っていた老人が、素早く署長の席に置いてあったバッグを盗む。

しかし、列車は鉄橋を通り過ぎてしまい、岸から観ていた助役たちは轢かれたと思い目をつぶる。

気がつくと、間一髪、与助は川に飛び込んでおり、今目の前で溺れかけていた。

これはいかんと服を脱ぎ始めた竹田巡査だったが、途中で、わしゃ金槌だ、山育ちなので、助役、頼む!といきなりバトンタッチする。

一緒に付いて来ていた運三はへらへら笑い出すし、急に言われた助役は、風邪をこじらせたりすると母ちゃんに怒られるんだ等と言いながらも、仕方なく、服を脱いで準備体操を始める。

その頃、竹屋旅館にヨシエの3人の兄弟を連れて来た花川巡査に気づいた番頭の三吉(草薙幸二郎)は、子供等の母親であるアサコを呼ぶ。

そんな三吉に花川巡査は、飯場からダイナマイト盗んだ奴がいるから気をつけてくれと言いながら手配書を渡す。

そこにアサコ(赤木蘭子)が出て来て、子供たちを連れて来てくれた花川巡査に礼を言う。

川で溺れていた与助を何とか助け上げた助役は、くしゃみをしながら、観ろ、風邪をこじらせたと文句を言っていた。

与作は、やっと今になって生きる気が起きて来た、死ぬつもりで鉄橋に寝たのだが、やたらおっかなかった。女房には逃げられるし…と事情を話し始めたので、住所を竹田巡査が聞くと、今の所決まってないと言うし、職業もないと言う。

そんな与助に、死ぬ覚悟があるなら何でも出来ると言い聞かせるのだった。

走る機関車の中では、車掌から大事にはいたらなかった事を聞いた署長は、こんな時には盗難事件が起き易いから、十分気をつけたまえよと言い聞かす。

間抜けな事に、当の本人がバッグを盗まれている事にはまだ気づいていなかった。

その隣に座っていたヨシエは不安げな顔で窓の外を見つめていた。

尾花山警察署では、花川巡査がかかって来た電話に出ると、役場で事件が起こったと言うので急いで出かけて行く。

それとすれ違う形で、戻って来たのが、運三を連れた竹田巡査で、林捜査主任(宮崎準)が運三の取り調べを行う事にする。

ゆっくり泊まっていくか?と林主任が脅すと、お願えいたしやすと運三は怯えるどころかむしろ喜んでいる様子。

お前か!火をつけたのは?と放火容疑の事を聞くと、へえ、煙草に火をつけました等と答える。

そんな話じゃないと叱ると、木っ端を集めて火をつけたと言うので、今度こそ自供したかと思いきや、寒かったので公園で…等と言うので、ただのたき火の事だと分かる。

主任が煙草を吸い始めると、1本分けてくれまへんかと運三は無遠慮に言い、自分のマッチを取り出して吸い始めたので、何で煙草持っとらんものがマッチだけ持っとるんだと聞くと、マッチまで借りたら悪いやないですかなどと言う。

その時、電話がかかって来て、受けた山形巡査(米倉斉加年)が、役場に行った花川巡査からで、金庫が破られ、厳禁は入ってなかったものの、金時計が5個取られたと言う報告を主任に伝える。

主任は運三に帰って良いと言うが、もう少しここにいさせてくれ。家に帰っても食い物もなければ仕事もない。外さ、出れば寒くてしようがないと言う運三は窓を観て、又降って来たと嘆く。

雪が降って来たのだった。

助役は、川で溺れていた人を助けた事で、米倉町長(信欣三)から人命救助の表彰状と金一封として1000円もらう事になる。

そして、町長は、これから料亭「立花屋」に行くと言う。

金時計のこともあるし、あいつやもめだからと言う町長は、君も接待夫なんだから、余計なことは言うなよ助役に釘を刺して出かけて行く。

その直後、あの与助がやって来て、今ひとつ助けて欲しいと言って来る。

助役は、いつか前に300円、一昨日にも200円やったじゃないか。命助けた奴に銭を取られるなんて聞いたことがないと呆れると、後500円あるはずだと言い出した与助は、オラのお陰で表彰されたのであって、オラが命がけの芝居をしなければ金はもらえなかったはずだと、金一封をもらう権利があると言う風に聞こえる言い方をするので、つい助役もそんなものかな?と口車に乗ってしまう。

竹屋旅館の番頭三吉は、自宅にちょっと戻ろうとするアサコが借金を返すためにここで働いていると言う事は知っていたので、借金はなんぼ借りたのかね?と聞くと、土地とベコを買った時、15、6万…と聞き、それで、ベコに死なれたら大変だな…。オラ、百姓見切りつけて良い事したよと呟く。

自宅に帰ったアサコは、飲んだくれの亭主勘次郎(宇野重吉)に、タキチとトメオの為に作って来た服を渡す。

外でキクと会っていると、家の中から、勘次郎の焼酎の買い置きないのか!とキクに呼ぶ声が聞こえたので、父ちゃんの焼酎代をキクにそっと渡し、落とすんじゃないぞと言いつける。

キクは、母親アサコが旅館に戻った後、飯を研いで、夕食の鍋も火にかけ、うるさく言う父親に、待ってろ、今買って来るからと返事をする。

竹屋旅館では、出かけようとしていた主人権太郎(佐野浅夫)が、玄関脇に置いてある汚い風呂敷包みと石油缶を縄でしばったものを目に留め、番頭の三吉にこれは何だと聞いていた。

昨日の終列車のお客から預かってくれと言われたものですと三吉が答えると、どこの誰だと言うので、何も言わなかったと三吉はしどろもどろになる。

早くどっかに片付けとけと主人は叱りつけて出て行ったので、三吉は仕方なく、風呂敷包みを畳の上に放り投げ、石油缶を持ち上げようとするが、重くてびくともしない。

何とか持ち上げようとすると、中から時計の刻む音が聞こえて来たので、三吉の顔は急に青ざめて行く。

仲居の女が三番のお会計を言いながら近づいて来たので、三吉は、大変だ!みんな避難しろ!と言い、自分は警察署に連絡に出かける。

ところが警察署では、誰も本気にしていないのか、応対した主任が、草川巡査に電話をしておいたから、番頭さん、一緒にここに持って来てくれと言うだけ。

唖然とした三吉だったが、旅館に戻ってみると、草川巡査(大森義夫)がやって来て、石油缶から何の音もしてないじゃないかと言う。

持ち上げたら鳴るんですと三吉は訴えるが、持ち上げようとした草川巡査は、あまりに重いので驚く。

しかも、本当にコチコチと音が鳴り始めたので、番頭さんが背負って来てくれ、自分は風呂敷包みの方を持って行くからと勝手な事を言い出す。

愕然とした三吉だったが、相手が警官では文句も言えず、背負子に石油缶を乗せて、何とか持ち上げると、恐怖と重さでよろめきながら警察署まで歩き始める。

途中、車や自転車にぶつかりそうになったりするが、草川巡査は、気をつけてくれ、ここで爆発したら、この辺りが全滅だなどと無責任なことを言う。

何とか、警察署に到着し、主任に命じられ、山形巡査がおっかなびくり石油缶の紐を外し、蓋を開けて中を開けてみると、出て来たのは目覚まし時計に、ガラクタの山だった。

拍子抜けした全員だったが、主任が、草川巡査が持って来た風呂敷包みを開けさせると、そこからこぼれ出て来たのは大量のダイナマイトだったので、草川巡査は腰を抜かす。

その夜、竹田巡査と花川巡査が夜回りをしていると、料亭「立花屋」の二階でドンチャン騒ぎしている人影に気づく。

米倉町長が栗橋署長を接待していたのだった。

警察署では、先ほどの石油缶の中から金時計が出て来たと林主任と神成次長(大町文夫)が話し合っていた。

どうやら、町長の東京土産のようで、それを受け取らない正義派の町会議員が5人いたらしいと神成次長は推理を聞かせる。

ダイナマイトのホシは?と主任は聞いていた。

立花屋の前にいた花川巡査は、今中にいるのは、町長と助役と時計屋、うちの署長…、と言うことは汚職では?と推理していた。

ミイラ取りがミイラ取りになると言う言葉もありますからと言う花川の言葉を聞いていた竹田巡査は、署長を信じていただけにがっかりしていた。

警察署では、県庁の農業指導員と称して、ここ数日、泊まり込んでいた男(大滝秀治)が、間抜けな事に、三吉の所に荷物を取りに来た所を捕まえられていた。

翌日、尾花山駅の前では、女性たちが、泥棒と叫びながら老人を追い回していた。

その老人こそ、先日、署長からバッグをくすねた置き引きの常習犯源爺(鶴丸睦彦)だった。

そんな騒ぎの中、どうした事か、集団就職したヨシエたち娘数名がこそこそ駅から走り去る。

捕まえられて警察署に連れて来られた源爺は、これで、前科13犯になったなどと喜んでいる。

草川巡査が、その源爺が持っていたバッグを主任に見せると、それはここの署長さんのもんだよと留置場に連れて行かれていた源爺が愉快そうに教える。

もう、留置場は超満員の状態だった。

飲み屋で喧嘩をしたと言うとある男を調べていると、5人兄弟の3番目で、今は、砂防ダムの工事現場で働いているが、事務所の費用で酒を飲んでいる奴に、少し飲ませてくれと言ったら断られたので、出刃包丁を持ち出したのだと言う。

結果、店側がうるさいからと、酒1升持たせてくれたと男は悪びれる風もなく言うが、でば持ち出しといて、噓を言うな!と竹田巡査が叱りつける。

そこに、花川巡査が学生服を着た学生を連れて来て、女風呂の覗きをやっていたと言う。

塀を乗り越えようとしたら、女たちが騒いだので、びっくりして女湯に落っこちたのだと言う。

そこに電話がかかって来て、宇宙人だとの知らせが入る。

警官2人が自転車で現場に駆けつけると、ひげ面の袴姿の大男(衣笠力矢)が、道ばたに寝転がっている。

側にいた主婦たちの話では、新興宗教に凝っており、衆議で飲まされたらしいと言う。

警官2人に助け起こされたその大男は、俺は宇宙人だとわめく。

留置場はもう超満員の状態だったが、そこにその宇宙人なる大男も詰め込まれる。

花川巡査は東京から帰って来たヨシエと橋の上で会っていた。

給料は実は1000円で、3度3度の食事は2杯までしか食べさせてもらえず、朝8時から夜8時まで働かされたので、みっちゃん、病気になったのも当然。6畳の部屋に8人も泊められたとヨシエが訴えるので、花川巡査は同情し、職安の柳原に相談したのか?と聞くと、中小企業だから仕方ないって言われたとヨシエは言い、もう次の勤め口決めたと言うので、今度はどこさ行くだ?と花川巡査は聞くが、ヨシエは答えないで、さよならと言って立ち去って行く。

自宅に戻ったヨシエは父勘次郎に、竹屋の旦那が、田んぼを売ったらどうか?そしたら、借金払っても2、30万残るからって。いつまでもこんなことしてたって、誰が面倒見てくれる?母ちゃん1人でいくら働いたって利息分にもならない。利息払えなければ、田圃を取り上げるって…と伝えると、あの野郎!と怒った勘次郎は、俺が話を付けて来てやると言いながら立ち上がると、鉈を持って家を出ようとするので、必死にそれを止めたヨシエは、利息分はオラが払う事にしたので、今年だけは待っていてくれるってと説明する。

そんな金どこにあるんだ?と勘次郎が聞くと、工場の退職金なんかを集めれば…とヨシエが言ったので、1月そこらで退職金等払うはずない!ヨシエ!いつから父ちゃんに嘘をつくようになった!と激怒する。

新しい仕事の前渡金をもらったの!又東京に行くの!とヨシエは答え、家の中に飛び込んで泣き始める。

警察署では、早野町の社宅に、最近覗きの被害が相次いでいると言う相談が来ていた。

その社宅は、新婚カップルが15軒もあり、干したものが盗まれたりしているのだと言う。

相談に来たサラリーマン(斎藤雄一)もその新婚夫婦の1人で、今日で結婚38日目で、夜の9頃には寝るので、被害もその時刻頃が多いのだと言う。

それを側で、店屋物の丼で腹ごしらえしながら聞いていた竹田巡査は、なるほど…と嬉しそうに聞いていた。

旅館「立花屋」では、準備中の芸者の部屋を栗橋署長が覗き込んでいたので、通りかかった女将(斎藤美和)に注意される。

栗橋署長は、そんな女将の機嫌を直そうと、女将に指輪を買って来たんだが、カバン後と盗まれてしまったんだと説明する。

そこに、警察署の主任から電話があり、覗きの相談があったと言う報告が入ったので、栗橋署長は、断固取り締まってくれたまえ!と命じるが、側で聞いていた女将は署長のお尻をつねって来たので、驚いて電話を切ってしまう。

女将は、断固、取り締まったんですよと栗橋署長を睨む。

主任の方は、電話が一方的に切れたので、署長のカバンが戻って来た報告をしそびれてしまう。

そんな主任に、私が行きましょうか?若い頃から、夜目には慣れていますと竹田巡査が申し出る。

「立花屋」では、米倉町長が、芸者の中でいい子を見つけ、なかなかええ子いるではないかと女将に話しかけ、あの子はダメ!と叱られていた。

そんな「立花屋」で働いていた仲居の1人に、外から「シゲコ!」と呼びかけて来た男がいた。

あの鉄橋で自殺しかけて川で救出された与助だった。

与助に外に呼びだされたシゲコ(黒田郷子)は、オラが悪かった。金輪際、競輪競馬は止め、日雇いでも良いから働くつもりだと与助から詫びられるが、そんな事は聞き飽きた。どこでここが分かったわね?と驚く。

栄川の鉄橋で死のうと思ったんだが、その時助けてもらった助役さんに小遣いもらおうと思って来てみたら、お前に会ったのだと与助は説明する。

しかし、シゲコの態度を観ていた与助は、やっぱり二度とお前の前に顔を出せた義理ではなかった。許してけれ…と言い、持っていた競馬新聞をその場に破り捨てると、とぼとぼと夜道を去って行く。

その後ろ姿を観ていたシゲコは、あんた〜!待って〜!と叫び追いかけて行く。

その頃、社宅前で、覗きの警戒を始めていた竹田巡査は、3組の新婚夫婦が仲睦まじく帰って来る所に来合わせ、にんまりする。

一方、ヨシエは、手紙を置いて出て行く。

それを3人の妹弟たちは、お土産待っているどなどと無邪気に言いながら後を付いて行く。

尾花山駅前で嬉しそうにシゲコを待っていたのは与助だった。

そこに、ヨシエがやって来て、駅の中のベンチに座っていた周旋屋の女(佐々木すみ江)に声をかけるが、女は叱るような目つきで、そこで待っていなと答える。

そこに、シゲコと与助も入って来て、ヨシエと共に21時28分発上野行きの列車に乗り込む。

3人の妹弟たちはそれを見送った後、キクは母ちゃんのいる竹屋旅館に向かい、タキチとトメオは2人で帰路につく。

覗きの警戒をしていた竹田巡査は、バットと竹竿を持っていきなり現れた2人の青年(星野和正ら)に、覗きと間違われ殴り掛かられる。

一方、こっそり竹屋旅館にやって来たキクは、母親のアサコに、ヨシエ姉ちゃん、今の汽車で東京へ行ったよと教えていた。

散々殴られた頭をさすりながら、帰りかけていた竹田巡査は、小学校の横を通りかかった時、教室内から炎が上がっているのを発見し、驚いて、宿直室にいた原田先生(新田昌玄)に火事だと知らせる。

水を入れたバケツを持った原田先生と共に教室にやって来た竹田巡査は、教室内のストーブの周辺で紙が燃えているのを発見、急いで水をかけて鎮火する。

その後、教室の背後の暗闇に何かの気配を感じたので誰何して懐中電灯を当ててみると、そこにいたのは、ヨシエの弟タキチとトメオだった。

君たちは何年生だ?何でここでストーブに火をつけた?と聞くと、弟のトメオの方は怯えているのか泣いており、タキチが言うには、家に帰っても父ちゃんいないし、それで、母ちゃんの所行こうと思ったが寒かったので…。父ちゃん病気なんだ、お酒を飲まないと死んでしまうんだ等と言う。

何やら訳ありだと知った原田先生は、この子たちの事は学校に任せてもらえませんかと申し出るが、そう言う訳にも行かないので一応署に連れて行くが、心配せんでも子供相手だから、悪いようにはせんよと竹田巡査は答える。

警察署では、アサコとキクから9時過ぎの列車に乗って行ったと言うヨシエが書いたと言う手紙を読んだ主任は、自分の意思で行きますと書かれた内容を読んで、これは無理矢理書かされたものだ。花川君、○○駅まで車を飛ばせば、急行に乗れるんだと命じる。

すると、すぐに花川が署を飛び出して行こうとしたので、娘の名前を聞かずに行くのか!と主任が叱ると、知っているんです。中学のときの2年下で、秋の運動会の時…などと花川巡査が説明を始めたので、主任はもう良いと言って行かせる。

もう少しで、赤線だか白線にでも売り飛ばされる所ですよ…と主任は安堵する。

そこに、トメオを背負い、タキチを連れた竹田巡査が戻って来る。

2人の兄弟は、そこにキクと母親がいる事に気づくと、母ちゃん!と言いながら、トメオがアサコの胸に飛び込んで行く。

どうしたんだ?お前たち…とアサコはビックリするが、兄弟たちは泣いているだけ。

その頃、彼らの父親の勘次郎は、自分の田圃に来て、土を握りながら考え込んでいた。

列車に乗っていたヨシエは、隣に座った斡旋屋の女からピーナッツを勧められるが、堅い表情のまま断る。

そんなヨシエに女は、あんたは大勢の中から選ばれたんだよと諭す。

同じ車両に乗っていたシゲコはトイレに立ち、隣に座っていた与助は安心したように眠りこけていた。

警察署では、兄弟たちとアサコ、山形巡査等が、夜食として取ったラーメンをすすっていた。

タキチは、こんな旨いもん食った事ねえと感激するので、山形巡査は、自分の分も分けてやる。

そこに、警官に連れられて勘次郎がやって来る。

アサコ!と驚く勘次郎に、あんた!ヨシエが!とアサコが叫んだので、ヨシエがどうした?と勘次郎はあっけにとられる。

その頃、東北運送のトラックに便乗させてもらった花川巡査が、急行が停まる駅に到着していた。

駅に飛び込んだ花川は、列車は来ましたか?と聞くと、あくびをしながら駅員はもうすぐですと答える。

警察署では、主任が今決めた事を復唱していた。

今夜限り、父ちゃんは酒を飲まない。

母ちゃんは家にいる。

キクちゃんたちは全員学校に行く。

これで良いね?ヨシエちゃんは、署長に話して、この町で働かせると主任は告げる。

そこに、覗き犯人を捕まえましたと、先ほど竹田巡査を殴った2人組が連れて来たのは、農夫の運三だった。

運三は嬉しそうに、今度は泊めてもらえっぺな?と確認して来る。

花川巡査は無事ヨシエを保護し、トラックの荷台に乗って町に戻って来ていた。

寒いだべ?と花川は、制服の上着を脱いでヨシエに着せたやるが、今度は自分が寒いので縮こまってしまう。

それを見たヨシエは、こうして2人出来れば良いべと言いながら、制服を2人の肩にかけ、身を寄せて来る。

勘次郎は、別室の椅子に寝かされていた子供たちの様子を観に行き、自分が借りていた毛布をかけてやる。

すると、部屋の隅でまだ寝ていなかったアサコが、あんた…と、嬉しそうに声をかけて来る。

翌朝、満員の留置場に、山形巡査等が朝食を持って来てやると、中に入っていた運三は嬉しそうに飯をかき込み、食欲がなく食べない奴の分まで引き受ける。

勘次郎、アサコと、子供たちも警察署を後にして帰宅する事になる。

子供たちは無邪気に、さよなら!又来るね!と警官たちに挨拶して来る。

署内では電話が鳴り、それを取った花川が、主任、夫婦喧嘩です。町長の家なんですよと告げる。

間もなく帰って来ると言ってやれと言いながらそこにやって来た神成次長は、逮捕状が出た、やっと腰の重い検事さんが腰をあげてくれたと言いながらやって来る。

主任は、所長室に入ると、署長、良かったですねと話しかけ、カバンが出て来ました。指輪ごとそっくり…と言いながら、指輪を手渡す。

それを受け取った署長は、ご苦労さんでした!とねぎらった後、ふーっとため息をつき、指輪を引き出しの中にしまい込む。

その後、栗橋署長は警察署前に整列した8人の巡査たちの前に立ち、これより全力を挙げ捜査する!と演説をぶち始めるのだった。