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かあちゃんしぐのいやだ

劇中でも説明している通り、小学生が書いた作文を元にした再現ドラマ風の作品

四季折々の兄弟と母親、そして病床に伏している父親との貧しい暮らしが描かれる中、ナレーターが随所で作者の作文を紹介していく構成になっている。

「つづり方兄妹」(1958)など、この時代には、こうした「子供の作文」の映画化が一つのブームだったのかもしれない。

貧乏と、とにかく母ちゃんが大好きな子供の姿…、昔風と言えば昔風、あざといと言えばそうとも言える文部省推薦のような内容である。

この種の映画は、一見子供向けに見えて、実は一緒に観に来る母親たちを泣かせる方が真の狙いだったのではないだろうか?

子供たちから観ると、可哀想…と言う感情と共に、親を大切にしなさい。兄弟仲良くしなさいなどと言う大人のメッセージを受け取る事になるはず。

病気の父ちゃんが、神経質になっており口うるさい所や、愚兄賢弟風の兄弟のキャラクター等は、実際ありそうで興味深い。

子供たちが主役なので、母ちゃん役の有馬稲子さんは、どちらかと言うと「受けの芝居」になっているが、実に自然な母ちゃん像になっている。

父ちゃん役の下元勉もなかなか巧い。

担任の土屋先生を浅茅しのぶが演じていたり、藤山寛美が家主役でちょっと姿を見せる所は観客サービスのようにも見える。

やはり、あまりキャスティングが地味過ぎると興行的に不利なので…と言うことかもしれない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、松竹、平林良孝原作、木下惠介脚色、川頭義郎監督作品。

土の上で、人間や他の動物や…

死んだり産まれたり…

土の下の生き物たちも土の上の真似をしているだろう…

この詩は、福井県武生市の少年が8歳の時に書いた詩である。

この映画も、その少年が7歳から8歳までの間に綴った貧しい生活の記録である。

タイトル

武生西小学校から、元気良く帰宅する1人の少年。

映画では、平林良孝くんの代わりに、平井良行(平山清)くんとしておきましょう。

家に駆け込んだ良行は、バンザイと叫ぶと、日本一になったんだ!東京から電報来たんだよ!健康日本一になったんだ!と、寝たきりの父親(下元勉)と母親(有馬稲子)に嬉しそうに報告する。

母親は良行に、会費を先月末までにもって行かなければいけなかったが、月末でお金なかったから、今日は1日だけど、持って行って先生にそう説明しなさいとお金を渡す。

その時、雨が降って来たと良行が気づいたので、ついでに、兄ちゃんに笠持って行ってあげなさいと頼まれる。

傘を持って再び学校へ戻る途中、僕らの学校のようなちっちゃな学校でも、健康優良になれるんだから、僕らもしっかり頑張るんやと良行は考える。

雨が降る中のその日の夕食時、時計が止まっている事に気づいた兄良久(山崎二郎)は、誰かが触ったんだろうと言い、時計を横にする。

家の置き時計は古くて、横にしなければ動かなくなっていたのだった。

父ちゃん、何で帰って来たの?と良行が母親に聞くと、良久が金かかるからやと教える。

僕らは耳が大きい。隣のおばちゃんは福耳や言うとった。大人になったら、お金持ちになるそうや…と良行は考える。

翌日、良久と良行は、2人並んで後ろ向きに通りを歩いていた。

2人は、磁石をつけた紐を引きずっており、その磁石にくっついた釘を集めて売りに行くが、たった2円しかもらえなかった。

財布拾った。1000円札一杯、100円札一杯、そこで目が覚めた…、ほんまやったらな(平林良孝の詩)

文化の日、兄弟は母に連れられ、菓子屋に来ると、好きな菓子を買ってもらう。

その後、2人はハーモニカを吹きながら、母親が帳簿を持って行く店に付いて行く。

兄弟は、今日は旗日なのに、店の前に旗が出ていないと女将に教える。

その後、兄弟は、母親から、日本の旗が出ている家の近くに連れて行かれ、あの家の二階に前は住んでいたが、父ちゃんが病気になったので、今のボロ屋住まいになったのだと教えられる。

家では、病気の父親が無理して帳簿を付けていたが、今まで何してたんや!と苛立たしそうに、母ちゃんに文句を言う。

そんな父ちゃんは、きちんとして厳しいので良行はあまり好きではなかった。

それでも、昔、まだ父ちゃんが病気じゃなかった頃は、パチンコの景品のお菓子等持って来てくれたりして優しかったと思う。

夜、兄弟が蒲団に入った後も、母ちゃんは縫い物を続けていたので、良行は甘えたくて、背中かいてとねだる。

母ちゃんは面倒くさそうにしながらもかいてくれたが、手のひらでかくので、どうして?と聞くと、母ちゃんは水仕事などで手が荒れていて、爪が割れたり、指先がざらざらしているからだと言う。

良行は、疲れている顔の母ちゃんに、肩叩いてやろうか?と言い出し、それまで寝床の中で本を読んでいた良久も、急に、母ちゃん、僕もかいてや!とねだり出したので、良行は、甘ったれ!と兄を叱る。

ある日、菊人形展が地元で行われたので、珍しく起きて来た父ちゃんと母ちゃんと一家揃って観に行く事になる。

機関車が通る線路脇の道を元気良く走って行く2人後ろから観ていた父ちゃんは、元気な奴やと嬉しそうに呟く。

岩見重太郎のヒヒ退治などを再現した菊人形展は盛況で、小学生の良行や良久は大人の中に埋もれてしまって何も見えない。

そこで、父ちゃんが良行を抱き上げてくれ、母ちゃんも、良久を抱き上げてみせてくれるが、その内、良行を降ろした父ちゃんが、苦しそうにかがんでしまう。

父ちゃんは自分だけ先に帰ると言い出したので、良久や良行はつまらながるが、雨が降って来た中、傘も持って来てなかったので、母ちゃんが弁当を包んで来た風呂敷を頭からかぶってとぼとぼ帰る父ちゃんの姿は可哀想に見えた。

母ちゃんは可哀想だと思う。

いつも父ちゃんの世話をしているのに、父ちゃん、怒ってばかり。

ある雨の日、母ちゃんは近所の川で洗濯していたので、良行が傘を持って横で立っていた。

母ちゃんに傘をさしかけると自分が濡れるし、自分が濡れないようにすると母ちゃんが濡れてしまう。

結局、しゃがむと、両方濡れない事に気づき、母ちゃんに褒められる。

雨なので、家の中で兄弟は将棋をし、良行の方が勝ったので、良久の機嫌が悪くなり、言いがかりをつけて来たので喧嘩になるが、それに気づいた母ちゃんは、喧嘩するんやったらこんなもの燃やしてしまうでと言い、将棋盤を取り上げてしまう。

良久は外に飛び出して行き、良行はもう喧嘩をしないと詫びると、仲良く助け合わな、あかんがねと母ちゃんは言い聞かし、郵便局の方の八百屋まで使いに行ってくれと頼む。

雨の中、何故近くの八百屋に行かんのか?と聞くと、近くの方は金を借りているので行き難いのだと母ちゃんは言う。

もう少しでクリスマスになると言うある日、良久は母ちゃんに何かプレゼントしたいので、何か喜ぶものを贈ろうと良久に相談する。

母ちゃんは夜1人で寝ているので暖まらない。痔が悪いのに我慢しているのだ。そうだ!湯たんぽが良い!と思いついた良行は、100円する湯たんぽを買うため、50円ずつ出し合おうと提案するが、兄の吉久は、貯めていた小遣いの中から50円も出すのには気乗りがしないらしく、10円のケーキで良いんじゃないかと言う。

兄ちゃんのケチンボ!と怒った良行は、クリスマスイブの日、自分が貯めた貯金箱を抱えて、途中転びながら雪道を走って行き、雑貨屋で念願の湯たんぽを買う。

これは僕が心を込めた贈り物です。これから毎日暖まってくださいと手紙も書き、一緒に風呂敷に包んでいると、良久が10円のケーキを買って来る。

その夜、蒲団に入った良行は、いつものように母ちゃんが夜なべして縫い物しているので、母ちゃん、いつ寝るの?とそわそわしながら聞くが、今晩中に縫わんといかんと返事をした母ちゃんは、今日は背中をかかんでも寝られるの?と聞いて来たので、良行は寝れると答える。

その夜は、雪がしんしんと降り続いていた。

夜中、母ちゃんが寝たのを確認した良行は、隠していたふろしき包みと良久のケーキの入った袋をそっと母ちゃんの枕元に置く。

鶏が鳴き、夜が明けた朝、先に起きてふろしき包みのプレゼントに気づいた母ちゃんは、良行が書いた手紙を読みながらすすり泣いていた。

それに気づいた良行は、思わず母ちゃん!と言って抱きつき、母ちゃんも抱きしめてくれる。

兄の良久もようやく目を覚まし、2人が抱き合っている足下で、自分が買ったケーキが踏みつぶされている事に気づくが、やっぱり飛び起きて母ちゃんに抱きつく。

その後、良久は、1人で雑貨屋に行き、120円する湯たんぽ包みを買う。

正月

兄弟は餅を食べていたが、隣の部屋で寝ていた父ちゃんは、近所は雪下ろししてるな…と言い出す。

それを聞いた母ちゃんは、人を頼む金がない。今朝、子供のお年玉借りたんですと答える。

その会話を聞いていた良行は、僕らで雪を降ろすと言い出したので、それを聞いた父ちゃんは、止めとけ、大人でも出来んと言い聞かせるが、良行たちがどうしてもやると言うので、母ちゃんは、軒の上だけ頼む事にする。

2人は、玄関の上の庇部分に昇ると雪下ろしを始めるが、すぐに身体が熱くなって来たので、2人は競い合うように、帽子や手袋、上着のジャンパーを脱いで行く。

手袋、去年買ったのがもう小さくなった。それで兄ちゃんのをもらった。兄ちゃんは母ちゃんのをもらった。母ちゃんは父ちゃんのをもらった。父ちゃんは病気で手袋いらない…(平林良孝の詩)

兄弟は、その雪下ろしで無理をしたのが祟ったのか、2人とも熱を出し寝込んでしまったので、母ちゃんは一挙に病人が3人になってしまい、父ちゃんの氷嚢に雪を詰めに外に出たり、兄弟の面倒をみたりしていたが、自分自身も咳き込んでいた。

そこに、婆ちゃん(毛利菊枝)が、お菓子や餅を持ってやって来る。

前から来にゃいかんと思うてはいたが、何せ年寄りだもんで…と言い訳しながらも、あんたも熱っぽいじゃないか?と婆ちゃんから聞かれた母ちゃんは、さっき計ったら39度あったが、病気は気の持ちようだからと言う。

それを隣で聞いていた父ちゃんは、布団の中で涙を流していた。

背戸の雪溶けて来る。

青い花が雪の中から出て来た。薔薇だ。

父ちゃんも頑張って、死ななかった。

雪合戦をしていた吉行が、お菓子と言いながら家に帰って来ると、良久が、父ちゃん、入院死なきゃいけないと教える。

母ちゃんも、我慢して頑張ろうと兄弟たちに言う。

ボク、来んか!と隣の部屋から兄弟を呼び寄せた父ちゃんは、前に買っていたと言う模型飛行機を作って見せる。

今度の入院は長いからと父ちゃんは言う。

次の日、学校から帰って来た良久は、家から父親が婆ちゃんに見送られて出て行く所だった。

家の中に入ると、先に帰って来ていた良行ががっかりしていた。

車に乗せ、病院へ向かった父ちゃんを見送った婆ちゃんは、とうとう言ってしもうた…と呟く。

良久は、父ちゃん貧乏やから、家はどんどん貧乏になったんやと言い、良行は、母ちゃん、一番可哀想や…と答える。

その後、2人は、父ちゃんに作ってもらった模型飛行機を外に飛ばしに行く。

母ちゃんは、貧乏でも花見に連れて行ってくれた。

豪勢な弁当も作ってくれたので、兄弟は喜んで食べ始めるが、良行が、家は貧乏なのになんでこんなもん食わせるの?と聞くと、子供は宝やからよと母ちゃんは笑って答える。

良行も、大きくなったら母ちゃん助けるけんのと母ちゃんに言う。

夜、良行は母ちゃんの白髪を抜いてやっていたが、白髪がたくさんあった。杉に母ちゃんも婆ちゃんになるのかな?

ある日、髪が伸びて、頭に団子みたいの乗せていた母ちゃんが、パーマ屋で電気のパーマ当てるのに良行は付いて行く。

途中、母ちゃんは熱がったが、何とかパーマがかかったので、前よりちょっと若返ったように見えた。

学校で、担任の土屋先生(浅茅しのぶ)が、皆さんは誰が好きですか?と聞いたので、みんな、母ちゃん!とか父ちゃん!と答えていたが、良行だけは、兄ちゃんと答えて驚かれる。

本当は母ちゃんが一番好きやけど、言われんかった。母ちゃんは別にしておこうと思った。

夕食時、母ちゃんは歯が痛そうだった。

母ちゃん、こんな所に嫁に来んかったら良かったのに…と良行が聞くと、嫁に来んかったら、あんたらが産まれんかったと母ちゃんは言う。

金持ちと結婚して、僕たち産めば良かったのに…と良行は答える。

母ちゃんは、これから大家さんに算盤を教える事になったから、笑っちゃダメよとあらかじめ注意する。

しかし、大家(藤山寛美)が家に来て、母ちゃんからそろばんを習うと、あまりに覚えが悪くてどんくさかったので、隣にいた兄弟はつい笑ってしまう。

6月1日と2日は、町内の祭りだった。

兄弟は母ちゃんから、50円ずつもらって縁日に向かうが、良久は5円のスルメだけ買って家に戻って来ると、残りは貯金箱に入れたので、お金貯めてどうするつもりと母ちゃんは聞く。

何に使うんや?と何度も聞かれたので、とうとう家の借金、全部払ってやろうと思ってるんやと良行は答える。

とうとう言わされてしもうた…

母ちゃんが泣き出したので、良行は照れ隠しで、今言うたの噓や!10円使うて来ると言って、家を飛び出して行く。

その後を追って行った母ちゃんは、良行と良久を喫茶店に連れて行き、何でも頼んで良いよと言ったので、良行は、別のテーブルの人が飲んでいたミルクセーキを頼む。

病院では、入院中の父ちゃんが作文を読んでいた。

そこにやって来た良行は、母ちゃんと兄ちゃんとミルクセーキ頼んだら、20円足りんかったと言いに来る。

その20円を父ちゃんは渡してくれるが、呼んでいた作文が自分のだと気づいた良行に、さっき先生が持って来たんだと教える。

その作文の続きを読み出した父ちゃん。

一番哀しいのは、母ちゃんが病気になった時。一番嬉しいのは、母ちゃんが嬉し顔になった時や…と書かれていた。

その夜、また作文を書いていた良行は、途中で行き詰まり、良久に10円で書いてくれと頼む。

すると、良久は、大きくなったら偉くなって、俺を雇ってくれ等と言い出したので、母ちゃんは、あんた兄ちゃんやろ?何情けないこと言うてるんやと怒る。

良行と良久は、2人とも素っ裸になり、盥で行水をしていた。

産まれてずっと、この盥で行水して来た。その盥も小さくなった。

小学校の校庭で、校長先生が集まった父母たちを前に、この後教室に入り、担任から夏休みの注意を聞いてくださいと挨拶をする。

その後、担任が、クラスの父母たちに、寝冷え等に注意してくださいと言い渡す。

花火大会の日、母ちゃんは病院に出かけていたので、留守番をすることになった兄弟は、危ないから登らないようにと言われていた屋根の上に上って花火を観ていたが、遠目なので、仕掛け花火等は見えなかった。

父ちゃん病気やとつまらん!と良久が不平を言う。

ボクの尻には痣がある。兄ちゃんの眉間にはほくろがある。兄弟、力合わせて頑張ろうと約束した。

その日、兄弟は、ご飯に醤油をかけて食べた。

そこに、母ちゃんが病院から帰って来て、ボクラ、開けてえやと玄関で呼んだので、2人は喜んで玄関を開ける。

母ちゃんは、キャンデー買って来てねと2人に小遣いを渡したので、2人は買いに行き、川で洗濯していた母ちゃんの所に持って来ると、3人でアイスキャンデーを食べる。

家に帰って来た良行は、ポケットの中に身に覚えのない100円札が入っていたので不思議がる。

もらっとけば良いんやと良久が言うと、庭で洗濯物を干していた母ちゃんが、何言うんや!と怒り出し、いくら貧乏でも、心まで貧乏になったらいけん!と言い聞かす。

ある日、病院の父ちゃんに、新聞と洗濯物を持って行った良行だったが、渡してすぐに帰りかけると、手を掴まれて、父ちゃんの背中なでれくれんかのと頼まれる。

良行は素直になでてやるが、父ちゃんの背中、骨がごつごつ出てて、哀しくなって来た。

夜、良行は母ちゃんの肩を叩いていた。

母ちゃんのほっぺた三角形…、良い匂い。ぺろっとなめてしまった。

その時、近所のおばちゃんがやって来て、母ちゃんに、家主の奥さんが亡くなったと知らせてくれる。

おばさんは、お隣は、家主さんと喧嘩してるけどどうしようか?と言うので、母ちゃんは、知らせた方が良いと言う。

タンスから喪服を出し始めた母ちゃんに、良久が、父ちゃんも長い事ないんか?と聞くと、父ちゃん、今度はもうあかんかもしれんと母ちゃんは言う。

人間、寿命には勝てんのや…と母ちゃんは寂し気に言い、良久も、ボクの友達の母ちゃんも死んだ。この間、あっさり…などと言い出したので、それを聞いていた良行はたまらなくなり、やだ!ボク、やだ!母ちゃん、しぐ(死ぬ)のいやや!と言いながら母ちゃんに抱きつく。

母ちゃんは、しぐもんか!母ちゃんとボクラ、3人立派に生きて行くんやと言い、良久と良行を強く抱きしめるのだった。

その時、担任の土屋先生が突然やって来る。

良行の作文が知事賞に決まったのだと言うではないか。

母ちゃんと良行は抱き合って喜び合う。

昭和34年9月10日、土屋先生と母ちゃん、良行と良久は汽車に乗って県庁で、授賞式に参加する。

県知事等が居並ぶ中、良行は壇上で、受賞した自分の作文を朗読する。

それを客席で嬉しそうに聞く母ちゃんと土屋先生

読み終わった良行は、県知事の北栄三(本人)氏から、母を讃える作文コンテスト優勝の表彰状と記念品を渡される。

帰りの汽車の中、良行と良久は、嬉しそうに弁当を食べていた。

その頃、病院では、婆ちゃんが父ちゃんの看病をしていたが、そこに賞状をもらった良行と母ちゃんたちが帰って来る。

すると、婆ちゃんはみんなを一旦廊下に出し、今、輸血したばかりだが、もう時間の問題やそうやと告げる。

母ちゃんは、今もらって来た賞状と記念品の置き時計を兄弟に渡すと、父ちゃんの枕元に置いて来なさいと伝える。

2人は黙って、病室に入ると、もう眠っていた父ちゃんの枕元にそれらを置いて帰る。

廊下に出て来た2人に、婆ちゃんが、良く顔を見といてあげたか?と聞くので、思わず良行は婆ちゃんに抱きついてしまう。

古い時計、横にせんと動かん…、時計も寝てる。父ちゃんも寝てる…(作文)

その日、兄弟は婆ちゃんと寝ていた。

早朝、母ちゃんが病院から歩いて帰って来て、玄関を少し叩きながら、お婆ちゃん、開けてやと声をかける。

声に気づいた婆ちゃんが玄関を開けてやると、中に入ってきた母ちゃんは、上がりがまちに座り込むと、死んでしもうた…と呟く。

寝床で、母ちゃんの声を聞いた良久は、寝間着姿のまま外に出て行く。

良行もその後を追う。

2人は、見晴らしの良い場所まで来ると、遠くを見ながらじっと立ち尽くしていた。

そこに婆ちゃんが呼びに来て、早よ、ご飯食べねば、父ちゃんとお別れに行かないかんぞ!と言う。

霊柩車で、父ちゃんを寺に運ぶ。

ボク、産まれて8年間来てた寺。

3年前まで、父ちゃんと一緒に来ていた。

今年はもう、父ちゃん、骨になって帰らんのや…

家に帰って来た母ちゃんは、座敷に上がるなり気絶してしまったので、良行と良久が慌てて介抱する。

明くる日、3人で晩ご飯を食べていた。

母ちゃん、もう病院に行かんで良いんや。でも母ちゃん、寂しそうにご飯食べてる。

これから3人だけど、しっかり頑張るんや!と母ちゃんは言い、駆け寄った兄弟を抱きしめる。

兄弟は母ちゃんの顔を見て笑顔になっていた。

人は良く、父ちゃん死んで寂しくないかと言うけれど、ボクは寂しくないと返事をする。

父ちゃん、家に帰って、仏壇にいる。

ボクの身体の中に生きているんだ。

今日も、良久、良行兄弟は、元気よく学校へ向かう。

太陽の土の下では、火がぐらぐら燃えている。

少年の命は、燃え上がる炎である…


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