日露戦争や、第二次世界大戦を描いた映画は何本もあるが、日本がドイツと戦う第一次世界大戦の映画と言うのは珍しいような気がする。
しかも、飛行機がはじめて戦争に参加した戦いを描くと言う、飛行機好きで有名だった円谷英二が張り切ったに違いない内容である。
何十年かぶりに観た懐かしい作品だが、一枚テロップで「特技監督 円谷英二」と出て来る映画も久しぶりなような気がする。
内容はもうほとんど忘れてしまっており、全くの新作を観ているのと同じような気持ちで観ることが出来た。
古澤憲吾監督らしい、明るく楽しい冒険活劇になっている。
そもそも、第一次世界大戦の話なのに、劇中で、「海行かば」とか「軍艦マーチ」と言った、第二次世界大戦中の音楽が流れたり、若宮丸が、どう観ても戦後の貨物船にしか見えないこと、後半、夏木陽介が生きていた…等と言う辺りの展開など、リアルな視点で観てしまうと奇妙な部分もあるのだが、あくまでも痛快活劇と言うか、おとぎ話のような感覚で描いているのだろう。
加山雄三、佐藤允、夏木陽介ら、当時の若手トリオが中心となっているが、意外と3人のキャラクターがだぶってしまっているためか、今ひとつ1人1人の個性としては印象に残り難い。
「潜水艦イ-57降伏せず」(1959)等でもお馴染みの池部良は、さすがに存在感があり、本作でも自ら補給隊の隊長となり、汐が引き、底なし沼のようになった河口を泥だらけになって進む等と言う大変な撮影に挑んでおり、「宇宙大戦争」(1959)での、月面上での活躍を彷彿とさせたりもする。
女スパイを演じる浜美枝等も活躍し、戦闘シーンから祭りのシーンまで、様々なシチュエーションを楽しむ事が出来る娯楽性豊かな展開になっている。
その浜美枝の兄役を演じているのは、「ウルトラセブン」の「ひとりぼっちの地球人」の仁羽博士や、「第四惑星の悪夢」のロボット長官で知られる成瀬昌彦である。
数多くの映画、テレビに出演している方だが、東宝専属と言う訳でもなかったようで、この種の東宝プログラムピクチャーで観かけるのは珍しいような気がする。
霊山島の警備隊長を演じている柳谷寛も、「ウルトラQ」「2020年の挑戦」で演じた刑事役などが印象的な個性派の人だが、この映画でも、かなり重要な役所を演じている。
壊れかけた古い吊り橋を巡ってのサスペンス等は、後の「インディー・ジョーンズ 魔宮の伝説」などを思い出させるが、さすがに「インディー・ジョーンズ」ほどパワフルでサスペンスフルと言う訳ではない。
特撮は、円谷お馴染みのミニチュアを中心としたものだが、飛行機は、ミニチュアだけではなく実物大のものも作っているし、機関車等も、ミニチュアと本物の列車の切り換えが巧みで、特撮ファンとしては楽しめるものになっている。
東宝プールを使った戦艦シーンは、相変わらずと言うか、まずまずと言った所か。
今のVFXに慣れた目で観ると、さすがにチャチに写るかもしれないが、当時の東宝特撮としては水準作ではないだろうか。
劇中、凧を揚げている中国人の子供を演じているのは、青影こと金子吉延らしいが、正直、画面で観ていた時には気づかなかった。
金子君は、前年の「キングコング対ゴジラ」と、東京映画の「ぶらりぶらぶら物語」にも出ていたから、それに次ぐ東宝配給作品への出演だろう。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼ |
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1963年、東宝、須崎勝弥脚本、古澤憲吾監督作品。 海原を背景にタイトル 1914年、今から50年前、ヨーロッパでは、ドイツ、オーストリア・ハンガリー、イタリアの三国同盟に対し、イギリス、フランス、ロシアの三国協商が形成され、バルカン第一次戦線の火ぶたが切って落とされていた。 その余波は極東にまで及び、ドイツは、中国膠州湾口の青島に要塞を築いた。 日本はドイツに対し宣戦布告したが、要塞ビスマルクは日本軍の前進を阻んだ。 艦隊総司令加藤長官(藤田進)は、軍艦の上で、この戦況の行き詰まりに悩んでいた。 軍艦はどうにもならん!と悔しがる加藤長官に対し、艦隊参謀(清水元)は、他に何があるんです?となだめようとするが、加藤長官は、何事かを考えているように、あるさ…と答える。 追浜海軍研究所 サイドカーに乗ってやって来たのは、軍令部の村田参謀(田崎潤)だった。 浜辺に立っていた若い候補生に隊長はおるかと声をかけた村田参謀だったが、その庄司候補生(伊吹徹)は、今、全機、東京湾一周飛行に飛び立っており、留守中は自分が隊長代理でありますと言うので、お前では話にならん、全機と言っても2機しかないじゃないかと村田参謀は呆れる。 2人乗りのファルマン機1号機で国井中尉(加山雄三)と共に飛んでいた大杉少佐(池部良)が、2号機はどうしたと聞くと、前の操縦席に座っていた国井中尉は、立ち上げって背後に向かい軍隊ラッパを吹いてみる。 すると、後方から付いて来ていた2号機に真木中尉(佐藤允)を乗せ、操縦していた二宮中尉(夏木陽介)がよしきた!と言いながら立ち上がり、こちらも勇壮に軍隊ラッパを吹き鳴らす。 その音色を聞いた国井中尉は、ご機嫌らしいですと後ろの席に座っている大杉少佐に伝えると、眼下に見える地形に気づき、江ノ島に似てますねと呟く。 大杉少佐は、江ノ島だと答え、随分遅いな。向かい風が強いと指摘する。 観ると、眼下を走っている機関車よりも遅いではないか。 大杉大佐は、追い風で行こう。逆回りだ!と指示を出す。 夏木中尉たちの2号機も、順調に飛んでいたかと思い気や、ツバメの群れに追い越される始末。 先に研究所近くに着水していた1号機は、水兵たちによって、陸に引っ張り上げられていた。 降り立った大杉少佐に、庄司候補生が村田参謀が待っている事を伝える。 国井中尉は、東京湾一周成功は良い宣伝になりますななどと、村田参謀の訪問をチャンスと考えていたが、そこへ、現在、三浦半島におり、時速1kmと言う奇妙な内容の至急電が2号機より入る。 2号機は墜落不時着し、牛車に乗せて運ばれている所だった。 牛車に乗った農民(左卜全)は、飛行機と言うのはどのくらいの目方があるんじゃと聞き、250貫と聞くと、それじゃ落ちるのも当たり前だ…と納得していた。 故障したエンジンを調べていた二宮中尉は、墜落の原因が分かりましたと言い、燕の死骸を取り出して見せる。 真木中尉は、燕の体当たりか!と面白そうに笑う。 研究所に戻って来た真木中尉と二宮中尉は、帰還の報告をするが、生きているようだな…と答えた大杉少佐と国井中尉は、何故か落ち込んでいた。 戸惑う真木中尉と二宮中尉に、一仕事やってもらうと切り出して来た大杉中佐は、青島のビスマルク要塞を爆破するのだ。飛行機にビスマルク要塞を爆破してもらう。飛行機に出動命令が下ったのだと伝える。 それを聞いた真木中尉は作戦の困難さに気づくが、試練がこんなに早く来るとは思わなかったな…と、大杉中佐も顔を強張らせるのだった。 その話を聞いていた庄司候補生は、お前は残れと大杉少佐から言われたにも拘らず、私も行きます!と主張して引かなかった。 こうして飛行機2機は、日本最初の航空母艦となる「若宮丸」に搭載され、膠州湾に向かう事になる。 船長の吉川大尉(平田昭彦)が、明日日没に着きますと教えると、大杉中佐は、日露戦争の日本海海戦の時の電文を知っているかと問いかける。 「天気晴朗なれど、波高し」ですか?と吉川大尉が答えると、飛行機はそれが大嫌いでな…と大杉少佐は教える。 2人が搭載された飛行機に目をやると、大量の洗濯物を二枚羽を固定する針金に干してあった。 塔練島まで後40海里、5時間かかると言う地点で、クジラの子供を敵艦と見誤る一騒ぎもある。 そうこうするうちに、若宮丸は、加藤長官の乗る戦艦周防と合流する。 周防に乗船した大杉少佐以下、真木中尉、二宮中尉、国井中尉、そして庄司候補生は、加藤長官に出迎えられ、12インチ砲等を見せてもらう。 敵は手強い。みんな自信はあるか!との加藤長官の質問に、さすがに全員黙り込んでしまう。 宜しい。気休めの返事等聞きたくないと鷹揚に答えた加藤長官は、自分は海軍に飛行機を採用した1人だ。今度の作戦が失敗したら、反対論の1人になるが良いか?と聞き直すと、今度は全員、はい!と答える。 晩飯後、再び甲板に戻って来た5人は、海上に向け発砲して来るビスマルク砲台の攻撃力の凄まじさを目の当たりにすることになる。 翌朝、大杉少佐と国井中尉が、敵情を上空から視察飛行してみる事にする。 すると、真木中尉と庄治候補生は、缶焚き場に作られていたレンガの覆い部分を壊し始める。 驚く訓練生たちの視線を感じた真木中尉は、爆弾だよと答える。 そして、ピストルと出刃包丁だけは持っていると言う国井中尉の元に戻ると、弾丸の準備が整ってないので、これを持って行ってくれと、今壊した赤煉瓦と五寸釘の袋を2つ手渡す。 やがて、海上に浮かべられたファルマン機は、大勢の仲間に見送られ、水上を滑って出発する。 操縦を勤める国井中尉は、1000m上がるのに30分かかったと、背後に乗っている大杉少佐に伝える。 その内、期待が大きく揺らぎ、エアポケットに入った事に気づいた大杉少佐は、国井に高度を読ませながら、自分は屋根の上に乗り移り、二枚羽を固定している針金が一部緩んでしまっている部分を何とか修理しようとする。 900、800、700、650…、高度はどんどん下がって行き、下の要塞にいたドイツ兵たちが、近づいて来る飛行機に気づいてしまう。 しかし、彼らは、翼に誰かが乗っているのを観ると、何か策略を考えているに違いないと、一挙に警戒しながらも、敵は勇敢だ!と肝をつぶしてしまう。 降下を防ぐために、大杉少佐は国井中尉に、いらないものは全部捨てるよう命じたので、国井は、持って来た五寸釘や赤煉瓦の袋を投ずる。 すると、下のいたドイツ兵たちは、空から降って来た赤いレンガを新型爆弾、火の玉と錯覚し、右往左往した後、消火をしようと、地面に落ちた赤煉瓦に水をかけ始める。 やがて、ビスマルク砲台を上空から捕らえた国井は、持って来た写真機でそれを撮影する。 その時、ドイツ軍の飛行機が接近して来た事に気づく。 敵は機関銃を乱射して来たので、ファルマン機を支える支柱が削り取られたりする。 さらに、敵機は、空中回転等と言う曲乗りを披露したので、それを観た大杉少佐は出直そうと国井に言葉をかける。 それを観た敵機の操縦士たちは、敵はビックリして逃げ出したぞ!と大喜びだった。 戻って来た1号機の報告を聞いた真木中尉は、敵も飛行機を持っていたと知ると、なぜ今まで姿を現さなかったんだろう?と首を傾げる。 敵機の存在を知った今、こちらも1号機が機関銃を持って敵機と戦い、2号機が爆撃をやろうと話し合う。 そこに、現像を終えた写真を持った国井中尉が戻って来るが、写真には肝心のビスマルク要塞は全く写っていなかった。 国井曰く、こっちが動くんだよ!と、飛行機に乗りながらの撮影の難しさを理由に弁解する。 大杉少佐は、飛び立つたびにこの塔練島に戻って来るよりは、より敵地に近い霊山島に新しい基地を作る事にする。 ボートで島に上陸すると、島の警備隊長戸田大尉(柳谷寛)が大杉等を出迎えてくれた。 ビスマルク砲台もここまでは来ないが、砲撃のせいで鶏が卵を産まなくなった言い、島民が売る卵の値段が上がったくらいだと戸田警備隊長は、島の安全性を説明する。 島の様子を見て回っていた真木中尉は、島の中国人娘の服を奪ってからかっている水兵3人(二瓶正典ら)を見つけ、叱りつけて、腕立て伏せ100回を言いつけると、服を娘に返してやる。 娘は礼を言いながら去って行くが、その様子を近くで観ていたらしき二宮中尉が、巧い事やったな。あれがビスマルク要塞と同じくらい難攻不落と噂される揚白麗(浜美枝)と言う島でも有名な美人らしいと教えて来る。 その頃、若宮丸に残っていた国井中尉は持病の腹痛に悩んでいたが、それを側で観ていた庄司候補生が何だか嬉しそうだったので、俺の代わりに飛行機に乗ろうとしているな?と気づいた国井は、庄司の熱意に負け、近いうちに乗せてやると約束する。 一方、霊山島の監視塔などを見物して廻っていた真木や二宮等の様子を見た現地の兵隊たちは、あんな土方の親分みたいな格好で戦争できるのか?と噂し合っていた。 霊山島戦闘本部に戻って来た大杉少佐は、この島に飛行機を置いても大丈夫そうだな…と安心していた。 そこに、先ほどの白麗と村の住民がやって来て、ニャンニャン廟のお祭りをしたい。平和な時には大陸から大勢親戚たちがやって来ていたが、今は戦争で誰も来れなくなった。でも大切なお祭りですと許しを乞うて来たので、話を聞いていた真木中尉は、許可してくださいと戸田警備隊長に頼むが、二宮中尉の方は、いかん!ここは戦場だぞ!と反対をする。 大杉少佐は、外国人が勝手に戦争をして、一番迷惑をしているのはこの人たちだし、これからも協力してもらわなくてはいけないだろうと言葉を添えて来たので、戸田警備隊長は祭りを許可してやる事にする。 その頃、若宮丸の甲板で掃除を手伝っていた庄司候補生は、バケツの水を流した途端、栓のついたガラス瓶が転がし出したのに気づく。 それを渡された国井中尉は、中に手紙が入っている事に気づき、取り出して読んでみると、日本飛行機2機来ると書かれていたので、スパイだ!と気づく。 島で、その瓶を本部にいた大杉らに見せると、海流に乗って流れ着いた一瓶に違いなく、他に複数の瓶が流されたはずだと推理する。 それを知った戸田警備隊長は、これは偉い事ですと、顔を強張らせる。 今正に、島の中では祭りが始まっていたからだった。 その祭りに乗じて、こっそり海岸にやって来た白麗は、そこに隠れていた兄の趙英俊(成瀬昌彦)と出会っていた。 趙は、情報ありがとうと、瓶で送ってくれた手紙の礼を言う。 祭りに戻って来た白麗は、何食わぬ顔で、踊りの輪に加わるが、住民たちの様子を監視するため、大杉少佐以下、真木や二宮も、住民たちの動きを見つめていた。 夜の海岸では、趙が火薬を積んだジャンク船に油をかけていた。 そして、帆を上げると、火を投じたその船を、沖合で投錨していた若宮丸目がけて押し出す。 火薬を積んだジャンク船は、汐の流れに乗り、若宮丸に接近する。 それに気づいた日本軍は、島と船の両方から、ジャンク船目がけて発砲し、海上で破壊しようとするがうまくいかない。 間近に迫ったジャンク船を観ていた庄司候補生は、船上からの射撃を制止、自ら海に飛び込むと、泳いでジャンク船に近づき、その向きを変えようとする。 船の向きが変わった瞬間、ジャンク船は海上で大爆発を起こす。 その音を聞いた島民たちはパニック状態になり、白麗も逃げ出したので、真木中尉がその後を追う。 白麗が海辺で転んだので、飛びついた真木中尉は、どこに行く?と詰問するが、白麗は、闇に向かって、逃げて!と叫ぶ。 その声を聞いた趙英俊は逃げ出そうとするが、同じく追いついて来た二宮中尉が捕まえそうになる。 岩場を登って逃げていた趙は、岩場に落ちそうな岩がある事に気づくと、それを下から登って来ていた二宮目がけて蹴落とし、その隙に、趙は拳銃で自らのこめかみを撃って自決する。 悲鳴を上げる白麗。 若宮丸で、庄司候補生が爆死したと知った国井は、あんなに飛行機に乗りたがっていたのに…と悔やみ、大杉少佐も、一度、乗せてやりたかった…と嘆く。 その後、戸田警備隊長が、司令部から、女はそっちで処分しろ、つまり銃殺しろと言って来たと白麗の処置を託された事を大杉等に伝える。 戸田は、やりますとも…と、スパイを銃殺にすることくらい…と、こわばった顔つきで見栄を張っていたが、彼が無理をしている事に気づいた大杉は、スパイの目的は我々の飛行機だったのだから、その処分もこちらに任せてくれないか?もちろん、号令は隊長にやってもらうと、戸田のメンツを守ろうと申し出る。 いよいよ、白麗の処刑の時が迫り、真木、二宮、国井の3人が銃を持って、目隠しをされた白麗の前に立つと、戸田警備隊長が、撃ち方用意!撃て!と目をつぶって命じる。 すると、3人は発砲するが、破壊されたのは、白麗の背後に立っていた3つの石像の一部だった。 撃たれたと思い倒れた白麗だったが、やがて、自分はどこも撃たれていない事に気づく。 それを横で眺めていた大杉少佐は、海軍刑法123条によると…と言い出したので、それを聞いた戸田は、海軍刑法は105条までしかありませんと戸惑うが、大杉は気にしない様子で、弾が外れた場合、大陸に追放するしかないだろうと提案する。 それを聞いた戸田は、大杉の配慮に気づき、処刑を終了すると宣言する。 大杉少佐も、処刑終わり!と続ける。 その後、二宮が機関銃を持ち、真木と一緒に2号機で先に飛び立つが、前方から敵機襲来かと緊張した直後、それはトンビだった事に気づきほっとする。 一方、その後から飛んでいた1号機では、綱で操縦席に吊るし柿のように吊り下げた複数の爆弾が互いに衝突しそうなので、国井はヒヤヒヤしていた。 途中、爆弾1発を地上に落としてしまい、その爆弾は、河原で爆発する。 二宮は、今度こそ本当のドイツ機が接近して来た事に気づき、機関銃をぶっ放すが、敵機は背後に回り込んでしまう。 その間を狙い、1号機の国井は、爆弾を吊り下げた縄を出刃包丁で1本ずつ切断して投下を開始する。 しかし、日本製の小さな爆弾では、敵の要塞にはほとんど被害を与えられない事を知る。 その時、2号機が炎上して墜落して行くのを発見した国井と大杉少佐は、敬礼して見送るしかなかった。 しかし、落下した二宮と真木は死んではいなかった。 崖から突き出た蔦に2人ともしがみついていたが、その上の道を、ドイツ兵の一団が歌を歌いながら通り過ぎていたので、その通過をじっと待つしかなかった。 やがて、一団が通り過ぎると、何とか蔦を這い昇り、2人は逃走を企てる。 線路に突き当たったので、それを渡ろうと先に二宮が線路を横断しようとするが、すぐ近くからドイツ兵が近づいて来たので、線路の間に身を伏せる。 すると、前方から列車が近づいて来るではないか。 草むらの中でその様子を観ていた真木は気が気ではなかったが、ドイツ兵が近くにいる以上、立ち上がって逃げる訳にも行かず、結局、二宮は伏せて動けないまま列車が頭上を通過して行く。 真木中尉は、思わず目をつぶってしまうが、うっすら目を開けると、線路の間に身を伏せた二宮中尉はかすり傷1つ負わず無事だったようだった。 ドイツ兵も通り過ぎていたので、2人は線路を越え、逃げようとするが、すぐにドイツ兵に見つかり追跡されたので、崖下に身を隠してやり過ごす事にする。 何とか、3人のドイツ兵は、すぐ横を気づかずに通り過ぎ、崖を登って行くが、上に上がった所で、最後のフリッツと言う兵隊が、崖に向かって立ち小便をし出したので、下に身を潜めていた真木と二宮の頭上に小便が降り掛かってしまう。 その直後、真木中尉は二宮中尉に、さっきの貨車、何を積んでいたか分かるか?ビスマルク要塞の弾丸だ。どこに向かったと思う?と聞いてきたので、弾薬庫かな?と二宮も答える。 そこに、弾薬が何百発も詰まっていたとしたら、爆発したらすげえぞと真木中尉は言い、何としてでも生き抜いてみせると決意を見せたので、二宮も、飛行機はもう一機ある。この腕でやっつけてみせるぞ!とファイトを燃やすのだった。 しかし、今の日本軍の格好では動きようがなかった。 若宮丸に戻っていた大杉少佐が落ち込んでいたので、国井中尉は、あの2人は諦めましょうと慰める。 その頃、真木と二宮は、仁丹や福助の看板が立っている商店のような店を崖の上から見つけていた。 店から出て来た店主らしき男もこちらを見ているようだったので、見つかったようだった。 しかし、その時、店の近くをドイツの車両が走り抜けると、その店主らしき中国人は岩陰に隠れたので、ドイツ人に反感を持っているように見えた。 意を決し、商店に入ると、店主(佐野豊)は想像通り、にこやかに、2人分の中国服を用意してくれた。 その店主の息子らしき男の子が外に飛び出して行き、凧を揚げ始める。 それを監視塔から見つけたドイツ軍は、日本兵がいた!と叫ぶ。 かくして、あっけなく、真木と二宮は、駆けつけたドイツ兵に捕まってしまう。 実は、その近辺には、「日本兵を見つけたものには賞金5万元を与える」と書かれたポスターが貼られていたのだった。 2人は、ドイツ軍舞台に連行されるが、その時、敵兵が棺で運ばれる所だったので、2人はその棺に敬礼をして見送る。 隣り合った牢に入れられた真木中尉は、間の壁をノックして「見込みなし」とモールスで打つが、二宮の方は「見込みあり」と打ち返して来る。 何度もそれを繰り返していたので、部隊長が様子を見に来た時、看守役の兵士が、この2人は先ほどから「あり」「なし」と言い合っているとの報告を受けると、「あり」は「存在」「なし」は「非存在」の意味だから、2人は哲学を話し合っているんだろうと勘違いする。 やがて、二宮の牢の前に来たのは、あの揚白麗で、お前は私の兄を殺した!死刑だ!と叫び、真木の牢の前でも、お前たちは今、軍服を着ておらず、民間人に化けているのでスパイと同じだ!死刑だ!と憎々し気に叫ぶのだった。 二宮中尉は、あの女、ぶち殺しておけば良かったんだ。戦争で、安易に同情なんかいらなかった…と呟く。 牢の外からは、処刑を知らせる太鼓の音が聞こえて来る。 その頃、英軍司令官(ハロルド・コンウェイ)は、ドイツ艦隊が膠州湾に迫りつつあると、三国協商側の作戦本部で報告していた。 苦戦を強いられていた加藤長官は、総攻撃を決意する。 ビスマルク砲台は、未だ難攻不落のままだった。 艦隊参謀は、飛行機等に任せた時間が無駄でしたなと皮肉り、今日限り、飛行機等と言うものは忘れる事だと進言する。 二宮と真木は、翌朝、揚白麗の運転するジープに、護衛役のドイツ兵3人と共に乗せられ、処刑場へ出発する。 ところが、崖の近くに来た時、白麗は意図的にハンドルを切り損ね、ジープは崖から落ちそうになる。 白麗の策略に気づかないドイツ兵は、全員車から降りると、ジープにロープをかけ、それを真木と二宮に引っ張り上げさせようとする。 真木と二宮が、ロープを引き始めると、ドイツの隊長も、持っていた機関銃を白麗に渡し、手伝おうとする。 その時、真木と二宮は、ジープを引き上げると見せて、逆に蹴落としてしまう。 白麗は持っていた機関銃を二宮に渡すが、引き金を引こうとした二宮は安全装置の外し方が分からず弾が出ない。 その隙を突かれて、機関銃を又隊長に奪い返されてしまう。 その時、真木中尉は、密かにドイツ兵から奪い取っていた銃で、隊長を射殺する。 機関銃を再び奪い取った二宮中尉は、生き残ったドイツ兵を皆殺しにし、手榴弾2発も奪って、白麗と真木と共にその場を脱出する。 やがて3人は、古びた吊り橋に行き当たる。 まずは真木が、橋の状態を確かめるために渡り始める。 続いて、白麗が渡り始めた時、彼らを追跡して来たドイツ兵が撃って来たので、真木中尉も白麗も、吊り橋の中央付近で腹ばいに伏せたまま身動きが撮れなくなってしまう。 見かねた二宮中尉は、機関銃で援護射撃をしながら、自らも橋を渡り始める。 その隙を突いて、何とか真木と白麗は橋を渡り終えるが、今度は二宮の機関銃の弾が切れ、橋の中央部で身動きできなくなってしまう。 真木は、盗んで来た手榴弾の1つを、橋の近くに迫って来たドイツ兵たちに向かって投じ、爆発させる。 その拍子に吊り橋も破壊され、二宮中尉は谷底に落下してしまう。 戦艦周防の上では、加藤長官が、明朝午前8時を持って、艦隊はビスマルク砲台に向かい、総攻撃を開始すると命令を出していた。 その後、大杉少佐は加藤長官に、何故自分たちが編成から外されたのか?と質問するが、長官は答えず、代わりに艦隊参謀が、役に立たないからだと断じる。 加藤長官も、わしが悪かった。飛行機に任せるのは時期尚早だったと詫び、今後は内地に帰って最初からやってくれと言うので、大杉は、自分たちも総攻撃に参加させてくださいと願い出る。 すると、艦隊参謀は、では、石炭と水の運搬をしてもらおう。雑務と言っても重要な仕事だなどと言って来る。 若宮丸に戻って来た大杉少佐は意気消沈していたが、その時、海上を接近して来る怪し気なジャンク船に気づく。 そのジャンク船に乗っていたのは、真木中尉であった。 出航用意!と命じていた加藤長官の元に戻って来た大杉少佐は、部下が戻って来て、重要な情報を持ってきました。総攻撃を1日伸ばしてもらえませんか?敵の弾薬庫を狙うのですと進言するが、加藤長官は、総攻撃を伸ばす事は出来ないので、若宮丸には単独で行動してもらうと命じる。 再び若宮丸に戻って来た大杉少佐は、明日の午前8時に爆弾を積んでいては話にならん。8時以前に攻撃をしないと飛行機隊の意味がない。身軽にして飛んで、爆弾と燃料は別に運び込み、大陸付近で合流して燃料補給するしかない。飛行機は国井と真木の2人で飛ばし、我々は地を張って行く。補給地点は砲台の背後になっており、断崖絶壁だ!飛行機隊も補給隊も、どっちが失敗してもうまくいかない。そのつもりでやれ!と水兵たちに命令を下す。 午前3時、大杉少佐率いる補給隊が、まずは小舟で陸地を目指して出発する。 日の出まで後3時間あり、船に残った国井は仮眠を取るが、真木の方はずっと眠れず、部屋の中を歩き回っていた。 海岸に到着した大杉少佐は、近くから聞こえて来る金属を叩くような音を気にするが、それは岩場に流れ着いていた缶詰同士がぶつかる金属音だった。 崖の上に登った大杉少尉以下、補給隊は、手に持った木の枝に身を隠しながら前進していたが、それに気づいたドイツの監視兵は、木が歩いた!と怯え、逃げて行ったの。 しかし、鉄条網で作られた長いバリケードは突破できそうにもなかったので、そこから補給隊は、崖を降りる事にする。 ロープを垂らして数名が降りようとしていた時、また、別の監視兵が近づいて来たので、全員、音を立てないように、崖から足を外し、宙づりの状態になりやり過ごそうとする。 しかし、その監視兵は、バリケードの側でタバコを吸うためマッチをする。 その灯に、バリケードに結わえたロープの端が浮かび上がるが、幸い、監視兵はそれには気づかず、ようやく立ち去って行く。 必死に腕の力だけでロップにしがみついていた補給隊は、ようやく、崖に足をつける事が出来、すぐさま下に降り始めるが、その時、1人が背嚢に結んでいた爆弾を落下してしまう。 全員、冷や汗をかくが、幸い、崖下に落ちた爆弾は不発だった。 その頃、船で仮眠を取っていた国井と真木は、時ならぬ爆発音で目を覚ましていた。 どうやら、若宮丸の左舷に触発機雷が当たってしまったらしい。 船は進水を始めたので、飛行機を外すよう命じるが、結わえていた部分が故障してしまったらしく外せない事が分かる。 焦る真木たちだったが、吉川大尉に、船が沈没すれば、水上機である飛行機は飛べると説明、船長の吉川は、乗組員全員に降りるよう命じる。 大杉少佐等は、何とか補給地点付近の崖の上に登っていたが、そこにもドイツの監視兵がいたので身動きが取れないでいた。 日の出まで、後30分であった。 若宮丸は沈没し、乗組員たちは全員海に飛び込んでいた。 (「海行かば」が流れる中)大杉少佐等は、飛行機上で真木と二宮に敬礼をすると、帰って来ても、若宮丸はないぞと告げる。 国井は、その言葉に対し、背水の陣で行きますと答える。 頼むぞ!と声をかけた大杉以下水兵たちは、飛行機を降り海に入ると、全員泳ぎながら、飛び立って行く飛行機を見送る。 葦の群生地帯を進んで合流地帯付近まで来ていた補給隊は、海の汐が引いている事に気づく。 合流地点の河口付近は泥沼状態になっていたのである。 これじゃあ、補給できません!と部下が叫ぶが、大杉は、とにかくやるんだ!と命じるしかなかった。 副官がまず、川の中に入ってみるが、まるで底なし沼のような状況で、足を取られ、前進は難しかった。 一方、敵要塞上空に到着していた飛行機の上では、国井中尉が機関銃をぶっ放し始める。 その攻撃で、ドイツの飛行機は被弾、落下して行く。 総攻撃まで後20分しかなかった。 補給隊は、全員、泥沼の中を進んでいたが、ドイツ軍もそれに気づき、崖の上から発砲して来る。 後20分だ!早くしろ!と大杉が叫ぶ。 背中にガソリンを背負った兵隊は、そのガソリン缶を撃たれ、火ダルマ状態になって泥の中に倒れて行く。 やがて、飛来した飛行機から国井がドイツ軍に銃撃を浴びせて来る。 しかし、ドイツ軍も、怯まず発砲して来る。 その時、近くの芦原で起き上がったのは、川の下流まで流され、陸地に打ち上げられていた二宮中尉だった。 彼は奇跡的に無事だったのだ。 そんな中、飛行機は何とか河口付近に着水し、国井は崖の上のドイツ軍目がけ、機関銃を撃ちまくりながら、隊長!時間がありません!と叫ぶ。 そんな飛行機に近づこうと、泥に足を取られながら大杉以下補給隊は焦る。 何とか、飛行機にたどり着いた大杉たちは、持って来た爆弾5発とガソリン缶3缶を手渡す事に成功する。 二宮は、射撃音で近くにドイツ軍がいる事に気づくと、持っていたもう1つの手榴弾をドイツ軍目がけて投げ込む。 手榴弾は爆発し、ドイツ兵は一旦逃げ出すが、またすぐに集まって来て発砲を始める。 成功を祈るぞ!と大杉少佐は言葉をかけ、補給隊員全員で、飛行機の方向を逆向きに動かす。 飛行機が飛び上がった時、大杉大佐は腕時計を観る。 今正に、午前8時であった。 全艦、湾内に突入せよ!戦艦周防船上で、加藤長官が命じる。 (軍艦マーチが流れる中)総攻撃が開始されるが、敵要塞からの攻撃も激烈で、日本軍の被害は甚大だった。 先に突入した陸軍から、海軍も一刻も早く突入されたしと言う伝令が届くが、この状況では進みようがなかった。 陸軍は、砲台目がけて突撃していたが、砲台は難攻不落の状況で、その攻撃力に陰りは見えなかった。 そんな中、国井と真木が乗った飛行機が接近して来る。 国井たちは、砲台に向かう弾丸列車を見つけ、その上に接近すると、爆弾を投下し始めるが、一向に当たらない。 一方、機関車の操縦士たちは、日本の飛行機に気づくと、スピードを上げ、何とかトンネルの中に逃げ込もうとする。 焦る国井は、さらに数発爆弾を投下するが、1発も列車に乗った弾丸にかすりもしない。 やがて、機関車は鉄橋を渡り、トンネルの中に突入し始める。 残りの爆弾は2発しか残っていなかった。 もはや、連続投下しかないと悟った国井は、トンネルに入って行った列車の後部目がけて二発落とすが、どちらも直撃せず、列車はトンネルの中に吸い込まれてしまう。 国井は思わず、しまった!と叫んでしまうが、実は、外れたかに思えた1発が最後尾の弾薬に着火しており、荷物の弾丸が、後部列車から前方に向かって、次々に連鎖爆発起こし始める。 これに気づいたドイツの見張りや操縦士は、次々に列車から飛び降りて行き、操縦士を失った列車は、そのまま、火薬庫に激突して行く。 火薬庫に積まれていた大量の爆薬に引火し、次の瞬間、山の天辺が火山のように吹き飛んでしまう。 それを地上から目撃した補給隊は、やったぞ!隊長〜!と雄叫びを挙げる。 呼ばれた大杉少佐はゆっくり立ち上がり、燃え盛る山の噴煙を見つめる。 二宮も又、作戦の成功を見つめていた。 上空から爆発の様子を眺めていた真木中尉は、もう良い…、もっと上に上がろうと、操縦していた国井に声をかける。 それに呼応するように、高く、高くな…と応じた国井は操縦席に立ち上がると、ラッパを高らかに吹き鳴らす。 地上から大杉や二宮が見上げる中、飛行機は大空の中に溶け込んで行った。 |
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