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青い芽の素顔

吉永小百合と川地民夫主演の青春ドラマ

身分違いの恋を描いたたあいのない恋愛ドラマと言ってしまえばそれまでだが、小学生の弟等を巧く絡めた、庶民的で心温まる展開になっている。

オリンピックが東京で開催される事になり、立ち退きを迫られている家の娘と言う設定が時代を感じさせる。

フィクションながら、当時も、オリンピック開催を、みんながみんな快く思っていたわけでもない事が分かるような気がする。

この作品の見せ場は、ミゼットを小百合さんが1人で運転しているシーンだろう。

にこやかで可愛らしく、その姿をそのままブリキの玩具にしたら、マニア垂涎のアイテムになるのではないかと思えるほど。

父親がおらず、貧しい家庭の娘が、どうして工場の中でただ1人ミゼットの運転が出来るのか、ちょっと首を傾げたくなるような部分もあるが、まあそんなあら探しをするような映画でもない。

劇中、映画館が登場するシーンがあり、見終わった後、「そごう」が出て来るので、おそらく銀座近くの映画館のはずだが、大人250円と料金売り場に書いてある。

この当時、高卒の初任給は1万円程度の時代だったはずで、ヒロインは、その高校もまだ卒業していない工員設定なので、決して250円は安くはなかったと思うが、あっさり2人分払っている。

ヒロインは、特別席と言ってチケットを買っているが、何が特別なのか良く分からない。

ヒロインたちが座っているのは、場内、やや中央部分のエリアの端の方だからだ。

おそらく、当時の映画館の中央部にあり、一般料金よりやや値段が高かった「指定席」の事だろう。

背もたれに白いカバーなどがかけてあった席である。

1961年の作品なので、まだ目新しかった東京タワーも良く画面に出ているし、銀座に路面電車も走っている。

まさに「ALWAYS 続・三丁目の夕日」の時代であり、銀座界隈の風景が珍しい。

ヒロインが住む飲み屋兼住宅は、川沿いに並んだ細長いビルの間に挟まれた木造住宅である。

オリンピックで、その後、すっかり区画整理されてしまった場所なのだろう。

他にも、ロケシーンが多いので、当時の銀座界隈の風景が楽しめる。

ヒロインが勤めている玩具工場で作っているブリキ玩具も興味深い。

特に、機体中央部にヘリコプター型プロペラが付いた飛行機が珍しい。

ヒロインの弟マー坊は、小学生なのにジーパンをはいていたりする。

この時代の松尾嘉代は、一重まぶたが重い印象の顔つきである。

川地民夫も同じ一重まぶたながら、こちらは爽やかな金持ち青年を演じている。

この時代の小百合さんは、貧しいながらも向学心に燃え、まじめ一本やりで正義感が強い優等生タイプの役が多く、その隙のなさがやや個人的に苦手だったりする部分もあるのだが、この作品では、小学生の弟がいると言う設定があるので、弟に合わせてけん銃で撃たれて死ぬ役をやってあげたり、添い寝してやると言った弟思いの優しい姉の部分が描かれており、かなり好ましい。

その優しさが、後半、弟の姉思いに繋がっている構成も微笑ましいし、ラストの小百合さんの歌声で心洗われるような気分になれる作品である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、日活、若杉光夫原案、下代田澄夫脚本、堀池清監督作品。

工場がある町

ベルトコンベア作業で飛行機の玩具を作っている岩谷製作所の工場内で、若い男性行員たちがおしゃべりを始める。

300円も取られたと言い出したのはニキビ面の青年田中だった。

ローザンか?と近くの男性工員が聞き、給料三日分がパーになったとニキビ面の青年が嘆き、金取られたのか?そう言えば、お前の洋服をかけてやっていた奴いたな?などと大声で男性工員たちが話し始めたので、少し前で作業していた女子工員の幸子(堀恭子)が、確かに、あんたの洋服をかけてやったのは私だけど、私がお金を取ったって言うの?と睨みつける。

その話を聞いていた同じ女子工員の山中みどり(吉永小百合)が、昼休みのサイレンが鳴ったので、食事がすんだら広場に集まってください。他の部署の人にも集まってもらいますと工場内にいた仲間たちに声をかける。

昼休みの後半、工場内の広場に集まった工員を前に、みどりは、田中さんが幸子さんに気があるのか、色々誘惑したり、嫌がらせをしています!と訴える。

それを聞いていた田中は、こそこそ逃げ出して行く。

緑と一緒に進行役を手伝っていた工員山本(山田昭一)が田中を呼んでも返事がないので、逃げた事が判明し、女子工員の提案で、本人がいなくても欠席裁判で良いと言うことになったので、みどりは、後の事は山本さんにお願いすると言うことでどうでしょうか?と言う形でお開きになる。

工場が終わった後、帰るみどりに声をかけて来た幸子と君枝(松尾嘉代)は、今日はやったわね!と昼休みの成果を褒める。

3人一緒に帰っていると、田中たちが、後ろから追って来て、遊びに行かないか?と誘うので、又ストリップでしょう。ローザン・みゆき!と君枝が聞くと、良く知ってるなと驚いた様子の男性工員たちは、君枝をからかって先に帰る。

君枝はそんな男性工員を見送りながら、教養ないわよねと呆れる。

飲み屋「ほまれ」では、みどりの母親であり女将のしげ(奈良岡朋子)が、店の立ち退きの話を持って来た町内会長かなにからしき男の話を聞きながら悩んでいた。

オリンピックが東京に来ると言うので、この辺一体、立ち退くように言われているのだが、その立退料も安く、新しい移転先も決まらず、返事を決めかねていたのだった。

立退料、もう上がりそうもないよと言い残し、その男が店を出て行った後、調理場の中にいた長女のもも子(南寿美子)に、一体誰がオリンピックなんて呼んだんだろうね…としげはぼやく。

家に近づいていたみどりは、店から帰る途中の町内会長に会い、今、お母さんに会って来たよと声をかけられる。

しげともも子は、突然、手を上げろと言う声が聞こえたので、何事かと入口のガラス戸の方を観ると、隅から銀色に輝くけん銃が覘き、すぐに悪戯っぽい笑顔のみどりが入って来たので、何ですかそんなもの!としげは叱る。

すると、この仕上げは私がやったのよとみどりが言うので、工場で作っている玩具の玩具だと分かる。

みどりは、昔、玩具買ってもらえなかったから、一日中玩具の中で働くの楽しいのなどと言い、店を手伝わせようとする母親には、どうせ、お酒飲むのに若い娘いるだけでしょう?

立ち退きがあるのよと聞いても、止めちゃえ、止めちゃえ!と囃しながら、みどりは二階へ上がろうとするので、あんたマー坊に甘いわよともも子は注意する。

二階で勉強していた小学生の弟マー坊こと政雄(亀谷雅敬)に、みどりがおみやげのけん銃を渡すと、マー坊は大喜びし、すぐ撃つ真似をするので、みどりは撃たれた真似をして倒れてやる。

そして、マー坊にねだられるまま、算数の宿題の手伝いをし始める。

夜になり、下の酔客が増え始め、会社で写真コンクールがあるので、ももちゃんの写真を撮りたい等とねだり出す。

しげやもも子が笑って受け流していると、別の酔客が、みーちゃんを写させてもらうぞ等と言い出す。

そんな会話を無視して、みどりは二階で、マー坊の算数の宿題に頭を悩ませていたが、マー坊から来年大学受けるの?と聞かれると、受けるわ!大学生になったら素敵でしょうね~…とみどりは夢を語るのだった。

ある日曜日、みどりは1人銀座に出ると、「青空の恋人たち」と言う映画を観るためにチケット売り場に並んでいたが、前の大学生が受付前で困ったように、財布がないと言い出す。

みどりは同情し、特別席2枚を購入し、その1枚をその大学生に渡してやる。

館内に入った大学生は、先に隣に座っていたみどりに礼を言うと、高木誠(川地民夫)と名乗る。

映画の帰り、帰るみどりの後を付いてきた高木は、どうやら財布はすられたらしい。礼をしないと僕の気がすみませんので、名前と住所を教えて欲しいと頼むが、みどりは、お金は私が差し上げて、私の気がすんだのだからそれで良いでしょう。私はお金持ちだから良いの。それにそう言う事を教えたくないので結構ですと足早に急ごうとするが、急に気づいたのか、あなた、帰りの電車賃もなかったのね?と言いながら、電車賃を出してやろうとする。

すると高木は、車で来ているので大丈夫です。お礼に送らせてもらえませんか?と言って来たので、みどりは仕方なく車に乗り込む事にする。

車を有楽町からから東京タワー方面に走らせた高木は、行き先を聞くので、知られたくありませんから、適当な所で結構ですとみどりは警戒する。

それでも高木は、明日の晩会ってくれませんか?今日のお礼がしたいのでと懇願する。

その頃、喫茶店兼バーでは、大学生の竹井(山本勝)と林本(木下雅弘)が高木の来るのを待ちわびていた。

特に竹井はゲルピンで、高木にノートを貸す約束もしていたため帰れないでいた。

そこにようやく高木がやって来て、引っかかったんだよ、大成功!と嬉しそうに言いながら水割りを3杯頼むとカウンター席に移る。

竹井はノートを高木に渡し、約束の礼金を受け取ると、ノートの整理があるので言い残し早々に帰って行ったので、高木たちは呆れるが、ホステスのシーちゃんこと志津子(椎名伸枝)は、竹井さんの方がまともよと弁護したので、残って酒を飲んでいた高木たちは、シーちゃんが惚れてるってねとからかう。

「ほまれ」では、常連客の1人ターさんが、手頃な売り店があると情報を持って来て、ここ坪20万くらいで売れるんだろう?と女将のしげに聞くが、しげは浮かない顔でそんなに出ないと否定する。

そこへ帰宅して来たみどりは二階に上がると、横の部屋でマー坊が寝ているのを観て、高木誠!と嬉しそうに声を張り上げる。

すると、狸寝入りをしていたマー坊が、高木誠って誰?と聞いて来たので、慌てたみどりは、黙ってるのよ、お母さんにはと念を押す。

下から酔客が、みどりに降りて来るよう呼ぶ声が聞こえて来たので、マー坊は、行くの、止せよと止めるし、みどり自身も、こんな家、大嫌い!と本音を漏らしてしまう。

その後も、みーちゃん、何してるんだよ!と酔客の声が聞こえるので、嫌ね!とみどりは呟く。

その頃、自宅に戻っていた高木の方は、上機嫌でピアノを弾いていた。

二階から降りて来た母親は、久々にピアノ等弾いている息子の上機嫌を不思議がりながらも、吉井さんのお嬢さんと一度お会いにならない?と見合いを勧める。

高木は、自分で探しますよ、彼女くらい…と苦笑するが、それが心配なのよと言う母親は、パパも後3週間くらいで帰って来るし…と言うので、じゃあ、車を借りられるのもそれまでですねと高木は笑って答える。

翌朝、川沿いに建つ狭い二階家の二階で出かける準備をしていたみどりは、姉が恋人の江上さんからもらったネックレスを貸してともも子にねだると、学校に行くマー坊と一緒に出かけて行く。

仕事を終え、帰宅するみどりは、話を聞いた君枝と幸子から、良かったわね、自家用車を持った大学生なんて!と初デートの約束をうらやましがられる。

それでも、行くのをどこかためらっている様子のみどりに、13円の電車賃使えば良いだけじゃないと励ますが、みどりは、明日会ったら、きっと又次に会おうと言われるに違いないと顔を曇らせる。

だったら、明日、学校がありますって言えば良いじゃないと君枝等は知恵を授ける。

一方、大学構内にいた高木は、竹井と林山に、吉井産業の娘と見合いをさせられそうなんだと明かすが、その子だったら、仏文の子だろう?と林田たちは同じ大学にいる事を承知していたので、やってみれば良いじゃないかと無責任に答えていた。

そんな高木らがベンチに座っているのを見つけた女子大生の戸田芳子(葵真木子)と山本竹子(中川姿子)は、あそこにブルジョアが2人いると言って近づいて来ると、今夜誘ってくれない?と声をかけるが、高木は、今夜は先約があるんだと言って断る。

そこに、テニスの衣装を着た吉井百合子(滝口恵子)が側を通りかかる。

夜、日比谷公園にやって来た高木はみどりに、明日、相模湖にドライブ行きませんか?と想像通り誘って来る。

みどりは、学校があるので…と予定した通りに答えるが、毎日行くんですか?僕なんかさぼってばかりですよと笑った高木は、どちらの学校ですか?と聞いて来る。

これは予想していなかったので、慌てて、目白の方です…とみどりが答えると、ああ、日本女子大?と勝手に高木は大学を特定し、では、今度の日曜に行きましょうと誘って来る。

その後、クラブに移動し踊っていると、たまたま同じ店に来ていた戸田芳子と山本竹子が高木を見つけ声をかけて来る。

同じクラスの子なんですよとみどりに2人を紹介した高木は、彼女等と同じテーブルに座る。

芳子と竹子は、高山は高山財閥の御曹司だとみどりに教えたので、驚いたみどりはもう帰ると言い出す。

そんなみどりを車で送ってやる事にした高木は、あの子たちも別にズベ公じゃないんですけど、気分を害したでしょうと謝罪する。

その後、バーにみどりを誘った高木は、そこにいた林本を紹介し、今度の日曜に相模湖に一緒に行かないか?と林本にも声をかける。

しかし、林本にはガールフレンドがいないと言うので、みどりに誰か連れて来てくださいと頼む。

次の日曜日、約束の第一生命館前に、君枝と幸子を誘ってやって来たみどりは憂鬱そうだった。

自分たちが女子大生に化けている事を後ろめたく思っていたのだった。

しかし、君枝と幸子は、そんなみどりの生真面目さを笑い飛ばす。

やがて、高木が運転し、林本も乗せた車が到着し、全員乗り込むと、途中、林本が弾くギターに合わせ「雪山讃歌」をみんなで歌いながら相模湖に向かう。

到着後は、ボート等に乗って楽しむ。

小休止したとき、林本が、もうすぐ文化祭ですね。日本女子大の文化祭はいつですか?女子大生ばかりの文化祭を観てみたいので、呼んでくださいねと言い出したので、みどりたちは焦るが、君枝が適当なことを言ってごまかす。

何となくすっきりしない気分で帰宅したみどりは、二階で、マー坊を司会役として家族会議が開かれているのに気づく。

いよいよ立ち退きが決まったのだと言う。

その席に加わったみどりは、この際、飲み屋は止めた方が良いと提案するが、しげは、他に何やって食べて行けば良いの?と聞く。

父親がいない彼女の一家には他の収入源がなかったのである。

ターさんが言っていた新しい店でも観て来ようかな…としげは迷っている風だった。

みどりは思い切って、私、大学行きたい!と言い出すが、しげは反対し、新しいお店が決まったら、今の工場も辞めて、店を手伝ってもらうよと釘を刺す。

翌日の昼休み、工場で君枝たちにみどりは、嫌なのは、噓を重ねている事なのよ!もう止めたのよ私は、怖いのよ、本当の私の事が分かった時の事が!と、高木との付き合いに限界を感じている事を打ち明ける。

その時、工場長が、近藤が休んでいるので、誰か代わりにミゼットを運転できるものはいないか?と聞いて廻っていたので、みどりが挙手をする。

ミゼットを運転し、馴染みの店林本に玩具を送り届けたみどりを観た店員吉本(川村昌之)は、こんな女子工員に配達を頼んでいる岩谷さんもがっちりしてるなと呆れる。

ちょうど、店の番頭(紀原土耕)に、小遣いをせびっていた林本は、ミゼットに股がって帰って行くみどりの姿を見かけたので、驚いて吉本に聞いてみる。

すると、吉本が、岩本の女子工員ですよと言うので、日本女子大の学生のはずなんだがな?と林本は首をひねる。

その日の会社の帰り、バス停に来たみどりや君枝たちを、また田中たちがからかって来たので、みどりは、あんな男から声をかけられるのがちょうど良いのかも分からないわ、私たち…とぼやいてみせると、私、飲み屋やるのよと言い出す。

身分違いの交際に悩んでいるみどりの気持ちを察した君枝は、その日のデートの約束を知っていたので、会ってらっしゃい、彼に…と勧めるが、みどりは、踊りに行こう!と言い出し、幸子と君枝も一緒にバスで出かける。

一方、高木は、いつものように日比谷公園の噴水前でみどりが来るのを待っていた。

みどりは君枝たちをダンスを楽しんでいたが、見知らぬ男と踊っている最中、強引にキスされそうになったので、叩いて店を飛び出すと、1人タクシーを拾って帰ってしまう。

後を追いかけて店を出て来た幸子と君枝は、困ったわね…と顔を見合わせるしかなかった。

タクシーに乗ったみどりは泣いていたが、急いでねと運転手に頼む。

混んでますからね…、この時間の銀座は…と運転手(柴田新三)は困惑する。

噴水前にやって来たみどりだったが、もうそこには高木の姿はなかったので、ベンチに腰を落としうなだれる。

そこに近づいて来たのが、一旦帰りかけた後、戻って来た高木だった。

高木は、会えた途端、お腹空いちゃったと笑い、レストランに誘うと、僕ね、噓ついてたんだ。映画館で会ったとき、金持ってたんだ。友達の間でそう言う遊びが流行っていたんだよと詫びる。

その時、店に入って来た吉井百合子とその両親(高野誠二郎、新井麗子)が高木を見つけ、母親が代表して挨拶して来る。

お父様は今関西の方へご旅行だとか?と言われた高木は、20日ほどで戻って来ますと答える。

夜遅く店に帰って来たみどりを、酔客たちはからかうが、母親のしげは夜勤が続いていると思い込んでいた。

寝そびれていたマー坊が、姉ちゃん、どこに行ってたの?と聞いて来たので、添い寝して、雪山讃歌を歌い出すみどり。

マー坊が寝付いた後、みどりは高木に手紙を書き始める。

何度か書こうと思っていましたが、軽蔑させるのが怖くて…、これからお会いするのやめようと思います…、相模湖で撮った、高木とのツーショット写真を見ながら、みどりはそう書いていた。

東京タワーが間近に見える自宅の庭の池を掃除していた高木が、女中のおよしに煙草を持ってくるよう声をかけると、代わって煙草を持って出て来たのは母親だった。

百合子さんにお会いしたんでしょう?その時、女の子と一緒だったんでしょう?どなた?と聞いて来たので、高木は、友達ですよと答える。

翌朝、みどりは工場を休んでいた。

病気だと思っていた姉のもも子が容態を聞くが、布団に寝ていたみどりは、病気なんかじゃないのよ!と言い出し、お姉さん!ともも子の膝に抱きついて泣き出す。

もも子は、どうしたの?お姉ちゃんが何でもしてあげると優しく訳を尋ねるのだった。

夜、いつものように、高木は噴水前でみどりの来るのを待ちながら、犬と戯れていた。

一方、みどりはその時間になっても出かける様子がないので、ミルクを持って来てやったもも子は、行かないの?と問いかける。

良いの、もう会わない!恥ずかしいもん!とみどりがすねるので、もも子は、姉ちゃんが会いに行っても良いんだけど…と言ってやるが、良いの、もう会わない!とみどりは言い切る。

そんなみどりにもも子は、後で後悔しないようになさいよと言い聞かすのだった。

そんな「ほまれ」に、会社を休んだみどりを案じて君枝が訪ねて来る。

二階に上がってみどりに会った君枝は、どうしたのよ?と訳を聞く。

するとみどりは、夕べ会ったの。育ちが違い過ぎるのよ。みじめ過ぎるんですもの…とみどりは打ち明ける。

もも子は、ハンストですからね、この子…と呆れたように、君枝に教える。

ピストル小僧どうしたの?と君枝がマー坊がいないことを聞くと、映画を観に行っているとみどりは答える。

みどりがやって来ないので、いつものバーに高木は来るが、そんな高木の様子を見た志津子は、振られたんでしょう?動機が良くないものねと皮肉を言う。

そこに林本がやって来て、みどりに会えなかったらしい高木に、実は、うちに荷物を運んで来るのが、この間の女の子なんだと言い難そうに打ち明ける。

噓ついたんだよ。本当の事言ったら、恥ずかしいだろ?と林本は言う。

それを聞いた高木は、実は僕も、相模湖で君が文化祭の事を聞いた時から分かっていたんだと打ち明け、そんな事関係ないんだけどな…と悔しがるが、そうもいかんだろ、みどり君にしてみれば…と林本は女心を忖度して呟く。

翌日の昼休み、工員の山本が、今度の日曜、みんなでハイキングに行く事にしたから全員参加してくれと女子工員にも声をかけて来て、みどりには、又ミゼットで配達らしいよと伝える。

幸子は、山本さんって良いよねとうっとりするが、弁当を食べる君枝の方は冷静に、鯵くらいかな?等と言うので、あれで鯵なの?なかなか鯛っていないものねと幸子は驚く。

みどりは、その後、ミゼットを運転して配達に出かけるが、その様子を土手の上で監視していた高木は、自分の車で後をつけ始める。

ミゼットを運転するみどりはにこやかで楽しそうだった。

その後、林本の店にやって来た高木は、やっぱり君の言う通りだった。でも彼女きれいなんだよ。生き生きとして!と報告する。

しかし林本は、これ以上、彼女を苦しめない方が良いと警告する。

高木は、俺、本当に好きなんだよと真顔で言うので、林本は、じゃあ、彼女の住所調べてみるか?と聞くが、その時、店員の吉本が、あの子、又来てますよと知らせに来る。

高木は二階の窓から、ミゼットに股がり帰って行くみどりの姿を見送る。

その夜、高木は「ほまれ」に1人でやって来て、ビールを注文すると、みどりさんはまだお帰りではないでしょうか?としげに問いかける。

いぶかし気な表情で、あなたは?と問いかけるしげともも子に、高木は名乗ると、一度お会いして、ご了解を頂こうと思いまして…と丁寧に挨拶をする。

そんな高木の様子を、二階から降りて来たマー坊は、柱の影からジッと観察していた。

その日、みどりは日比谷公園の噴水前に来ていたが、もちろん高木がいるはずもなく、見知らぬ男が声をかけて来たので、慌てて逃げ出す。

男の方も、こりゃ、しゃくだった…としらける。

「ほまれ」では、まだ高木がカウンター席でみどりを待っているのに、事情を知らない酔客が、この前、ミーちゃんの道行きを観た等と面白おかしく話していた。

たまりかねた高木は席を立ち、よろしく言ってくださいとしげに頭を下げると店を出る。

その後を通りの角まで追いかけるもも子とマー坊。

マー坊はその後も高木の後を追って行くと、高山さん!と声をかけ、僕、みどりの弟ですと挨拶する。

そしてマー坊は、姉ちゃん、高山さんの事がとっても好きなんです。いつも大学行きたいって泣いているんです。僕、姉ちゃんが大学行きたい気持ち分かるんです!と訴えたので、それを笑顔で聞いていた高木は、僕、明日の10時に関西に合宿で行くので、その前にみどりさんに会いたいので、いつもの場所で待っているって言っといてと頼む。

店の前で待っていたもも子にマー坊がその事を伝えると、マー坊、あんた良い子ねともも子は褒めてやる。

翌朝、みどりは出かける用意をして店を出るが、後に付いて来たマー坊は、絶対行ってよ、いつもの所へと言いながらも、いつもの所ってどこ?と聞く。

そんな事どうでも良いのよとみどりは浮き浮きしていたが、朝の10時って言ってたよとマー坊がそのときはじめて良い出すと、それじゃあ間に合わないじゃない!会えなかったら、おみやげ買って来ないから!と焦り出したみどりは、タクシーを停めると日比谷公園へと急ぐ。

もう9時51分だった。

何とか公園にたどり着いたみどりは、懸命に公園内を探しまわるが、高木の姿はない。

がっかりして噴水前に来てみると、そこにはちゃんと高木が待っていた。

高木の方もみどりに気づくと、2人は満面の笑顔で駆け寄る。

噓ついてごめんなさい!みどりは素直に謝る。

良いんだよ、分かっていたんだよと笑顔で答えた高木は、さあ、行こう!とみどりの手を取ると、そよ風~そよ〜そよ~♪と歌が重なる中、2人は町へ駈けて行くのだった。