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あゝ陸軍隼戦闘隊

佐藤允が加藤隼戦闘隊長を演じた半生もの。

大映作品だが、東宝の「加藤隼戦闘隊」(1944)で加藤隊長役を演じた藤田進もちゃんと登場して、佐藤允を叱責するシーンがあるのがファンサービス。

主役を演じているのも東宝のイメージが強い佐藤允なので、宇津井健、本郷功次郎、藤巻潤、平泉征など、当時の大映所属俳優が総出演している割にオールスター的な豪華さはない。

勝新や雷蔵クラスが出ていないからだろう。

市川雷蔵は、この年に夭折しているし、勝新は、1967年に自分のプロダクションを作っており、もはや大映専属ではない。

外部から俳優を呼んでいるのも、全体的に見せ場不足なのも、やはり、旧大映末期の作品であり、予算的にも余裕がなかったのだろう。

ストーリー面でも、加藤隊長の部下思いの情が深い人柄にスポットを当てているため、エピソードの羅列以上のものになっておらず、全体的に平板で、戦闘スペクタクル的にも物足りないものになっている。

ただし、昭和ガメラシリーズでお馴染みの湯浅憲明氏が特撮監督を務めている事もあり、戦時中に実機(?)も交えてプロパガンダとして作られた東宝版に比べると、さすがに迫力負けしている感じはあるものの、部分部分に、これは実写か?とビックリするくらい成功している特撮カットがある。

ただ、円谷特撮と同じで、ミニチュアやマットアートシーンが多過ぎて、バレバレの部分も目立つのと、空中戦以外のスペクタクル要素がないのが弱い。

クライマックスとなるべき、宇津井健が空挺隊の隊長役を演じているパレンバン奇襲作戦なども、落下傘が降下する描写止まりで、その後の油田攻撃等の見せ場がすっぱり省かれているのが物足りないし、加藤隊長のラストもあっけないのだ。

本郷功次郎演じる安藤と圭子のロマンス部分や、見せ場見せ場に有名な軍歌を挿入して盛り上げようとする所等も、ちょっと作為的過ぎるようにも思えるし、ラスト近くの手紙による泣かせ芝居も臭い。

特撮的に見所はあるものの、全体的には凡庸な作品になっていると感じる。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1969年、大映、須崎勝弥脚本、村山三男監督作品。

昭和4年 春

歩兵第二十連隊本部

軍旗に奉り、捧げ~筒!

連隊長(村上不二夫)の号令の元、兵隊たちが一斉に銃を捧げる。

軍旗を持っているのは、木原少佐(平泉征)だった。

その木原少佐は、連隊騎手を辞退し、航空科に転科希望したいと申し出たので、あんなものは開発途上だと歩兵聯隊長(見明凡太朗)はバカにする。

旗官兵士は歩兵であり、将来が保証されていると翻意するよう説得されるが、木原の決意は固かった。

所澤陸軍兵学校

校舎の上を飛んでいた複葉機が、屋根すれすれに飛行し、鬼瓦を壊してしまう。

操縦していたのは加藤建夫(佐藤允)であった。

校長室に呼びだされた加藤は、志村少佐(北原義郎)から大目玉を食らうが、徳原好道校長(島田正吾)は、自分も若い頃、寺の住職と賭けをして、鬼瓦を壊し、酒を1本もらった。その時の果敢な気持ちを忘れんようにと加藤を励ますと、同じ鬼瓦を注文しろと志村少佐に命じる。

加藤は、徳原校長の温情に感謝すると移動時に、部屋の隅に整列している兵隊たちを観て、この連中は何ですか?と聞く。

襟章を空色にしてくれと言っているんだと徳原校長が困った風に言うと、加藤は、その中の1人に連隊旗手の後輩に当たる木原少佐を見つけ、この連中に希望通り空色の襟章をつけてやってくださいと願い出る。

渋々承知した徳原校長だったが、その代わりに、加藤中佐に面接してもらいたいものがいるので、今夜わしの家に来てくれと命じる。

その夜、徳原校長の家に出向いた加藤は、狼狽しながら座敷から出て来て、これはどういう事です?と聞くので、徳原は、見合いじゃよ。鬼瓦の挑戦精神でやってみろ。相手が好きか嫌いか、エンジンの調子を調べたか?と笑う。

見合い相手は加寿子(藤村志保)と言う娘で、大演習の時、飛行機が落ちて、同士が亡くなったのを目の当たりにした事を例に挙げ、飛行機乗りとは常に死と隣り合わせになる危険な仕事である事を説明する加藤に、死を前に、ひるまない気持ちを尊敬しています。私はご無事を祈る事を知っておりますと答えるので、自分は片足を棺桶に入れているようなものなのですと重ねて加藤は断らせようとするが、加寿子は、毎日、真剣に生きておられるのですわとひるまない。

結局、加藤は加寿子の気持ちの強さに勝てそうもない事に気づく。

部屋に入ってきた徳原校長は、その気配に気づき、若者が死を口にすれば、死と言う言葉も魅力的になる。加寿子は生きの良さに惚れんたんでしょうと笑う。

ある日、加藤は木原が操縦する飛行機に同乗する事にするが、後部座席に乗った加藤は、完全に木原を信じ切っており、飛行中終始眠っているだけだった。

その木原も又、校舎の屋根の鬼瓦に車輪を狙って飛び、破壊してしまう。

また、校長室に呼ばれた木原と加藤は、日村少佐から、校長閣下が二度とやってはいかんと言った事を覚えてるか!とお目玉を食うが、又もや、徳原校長は、例え禁を破ろうが立派な陸軍少尉が生まれた方が良いと思っておる。公費が続く限り、鬼瓦を給付する。ただし、1人1枚だぞと笑う。

ある日、加藤は木村を料亭に呼ぶ。

そして、もう1人来ると言うので、木村はあれこれ思いつく人名をあげて行くが、加藤が言うには自分の一番弟子なのだと言う。

そこにやって来たのは、中国から留学していた趙英俊中尉(藤巻潤)だった。

軍服のままやって来た趙中尉に、こういう所には私服で来るものでは?と木原は注意するが、自分は中国陸軍の服に誇りを持っていますと趙中尉は答える。

そんな所に、花蝶と言う芸者を捜して1人の酔客が乱入し、チャ○コロの酌をするのか!と芸者を罵倒したので、加藤が無礼を注意すると、こんな奴の方を持ちやがって…、貴様が国賊だ!表に出ろ!と酔客は挑発して来る。

加藤は黙って席を立ち、表に出ると、日本刀等抜いて来た酔客仲間3人相手に、貴様等の思い上がりは日本人として許せん!と言い放ち、向かって来た相手と取っ組み合いを始める。

すぐに、憲兵隊が来て、酔客を連行して行くが、名乗った加藤も、同行を求められ、謹慎の身となってしまう。

ある雨の日、自宅謹慎していた加藤の家にやって来たのは、趙中尉だった。

校長閣下から手紙を預かって来たと言うので、中の手紙を読んだ加藤は、謹慎が解けた事、そのために趙中尉が何かと努力してくれた事を知り、礼を言うと、明日から一緒に空を飛ぼうと声をかける。

しかし、趙中尉は、本国からの命令で、国に帰ると言い出す。

後半年、腕を磨こうじゃありませんかと加藤は勧めるが、国の命令に背く事は出来ないと言うので、既に妻となっていた加寿子に、送別会の準備をさせ、趙中尉の好きなすき焼きを振る舞う事にする。

その席で加藤は、お互い個人としては、日本人と中国人は理解しあい、結ばれています。しかし、国はそうならない。今後お互いに、国を強くするよう努力しよう。そして互いの友情が続くよう願いたいと挨拶する。

趙中尉も、御薫陶一生忘れませんと頭を下げる。

自分が撮ったもので、あまり巧くはないが…と言いながら、記念写真を加藤が渡すと、良い記念になりますと趙中尉は言いながら受け取る。

歌でも歌おうか?と加藤が切り出すと、私が歌います、教官から教えてもらった日本の歌ですと断り、夕焼け小焼け~の♪と「赤とんぼ」を歌い出す。

昭和12年7月7日 盧溝橋事件を皮切りに日支事変が勃発した。

加藤たち飛行隊も、北支戦線に参加する事になる。

安藤少尉(本郷功次郎)は、木原中尉から天公と名付けられた軍犬と共に、飛行隊の帰還を基地で待っていた。

そこへ、加藤隊長機が戻って来たので、近づいてた安藤少尉は、撃墜マークを追加します!と加藤に申し出る。

まだ1機も撃墜した事がないと言う安藤だったが、今日、加藤が撃ち損じた敵機のとどめを刺したと聞くと、今日はじめて1機撃墜した事にしろと加藤は命じる。

加藤隊長は、100機の敵機を落とすよりも、1人の仲間の死の方が哀しいと呟くが、それを聞いていた木原中尉は、そんなことを言っていては部下の士気が下がるので、戦場では、情よりも鬼になって下さいと頼む。

俺は泣き虫でいかんよと加藤は照れるが、だから、空に昇ると強いのですと木原は断ずる。

その夜、安藤は宿舎の外で、得意の尺八を吹いていたが、いやに音色が冴えているじゃないかと言いながら近づいて来た木原は、明日、俺と組まないかと申し出る。

翌昭和13年4月29日、加藤は、その功績を讃えられ、司令部から感状をもらうために出かけていた。

感状を手渡すのは、今や司令官になった徳原校長だった。

授与式の後、徳原の部屋にやって来た加藤は、戦死した部下たちにも、論功行賞を与えてやって欲しいと願い出る。

徳原は、それを聞きながら、趙英俊を覚えているか?と問いかけ、敵の隊長になっているそうで、常に部隊の先頭に立っているらしい。その機体にはトラが描かれていると教える。

ある日、攻撃に飛び立った木原中尉が敵機に撃たれ墜落する。

一緒に飛び立った安藤が、帰還して、木原が戦死した事を報告する。

安藤自身も左足を負傷していた。

安藤が言うには、撃った相手の機体には、トラの絵が描いてあったと言う。

犬の天坊も、木原の死を察したのか、着陸した飛行機に近づいて行く。

自室に戻って来た加藤隊長は、かつて趙英俊と木原と自分とで一緒に写った写真を取り出し、複雑な気持ちで観る。

そこに安藤がやって来て、仇を討ってください。天坊が鳴いています。天坊が可哀想ですと申し出る。

憎いか?敵が…、ララ会の鬼になれ!木原中尉が最期に遺した言葉だと告げた加藤は、その後、自分が出撃した際、トラの描きたいに描かれた敵機を目撃し、追尾する。

加藤は迷わず、趙の機体を撃つ。

接近して観ると、操縦席に乗っていたのはまさしく趙英俊であった。

趙は、加藤と気づくと敬礼をして来る。

その直後、趙英俊の機体は爆発炎上し、墜落して行く。

加藤の耳には、いつの日か趙が歌っていた「赤とんぼ」の唄が聞こえる。

昭和13年 晩夏 加藤家

人が来た気配に、加寿子が玄関口に来ると、そこに立っていたのは、安藤であった。

昨日、北支から帰って来て、隊長も一緒だったと言うのだが、このままお待ちになっていても、隊長殿はお帰りになりませんとい出す。

その頃、加藤は、戦死した部下の家を1軒ずつ廻り、戦死した時刻と状況を家族に教えると共に、出撃命令を出したのは私ですと伝え詫びていた。

もちろん、木原一郎中尉の実家にも訪問した加藤は、犬の天坊と一緒に笑っている木原が写った写真を両親に見せながら、天坊も後を追うように死んでしまった、最後は何も食べなくなって…と伝える。

木原の父慎吾(藤田進)は、私も退役軍人です。親子共々、覚悟の上です。戦死したものは、もう勤めは終わりました。もう一郎の事は忘れてくださいと加藤に告げる。

その時、木原の母親寿美(平井岐代子)の膝元に幼い男の子(吉原直樹)が近づいて来たので、お孫さんですか?と聞いた加藤だったが、その背後から妻の加寿子が姿を見せたので、はじめて、その子が自分の子供である事を知る。

2年振りの再会に感激する加寿子に、お前の来る所ではない!と叱りつけた加藤だったが、その様子を見かねた木原慎吾は、女々しいぞ!陸軍12期生の先輩として言う。もっと生身の人間であれ。奥さんをここに読んだのは安藤中尉だと教える。

その安藤は、尺八を吹きながら加藤の家の留守番をしていた。

そこに、加寿子と息子を連れ、加藤が帰って来る。

安藤君、とんだ厄介をかけたな…と礼を言った加藤は、君は帰らんのか?と聞く。

自分は東北の田舎ですから、これから明野に帰ると言う安藤に、加藤は、君は好きな相手はおらんのか?と聞き、いないと聞くと、待ってろ、帰るんじゃないぞ!と言いつけると、加寿子にも絶対返すんじゃないぞと言いつけ、自分は着替えて出かけて行く。

加藤が向かったのは立花と言う家で、応対に出て来た奥方(浜世津子)に、娘の圭子さんはおられるかと聞く。

今ちょっと出かけているが、幼稚園の先生をしていると母親は言う。

そこに、当の圭子(南美川洋子)が帰って来たので、加藤は、これから30分後、琴を弾いていてくださいと一方的に頼むと自宅に戻る。

そして、帰らないで待っていた安藤に、尺八は自信があるか?と聞き、どんな楽器に合わせる事も出来ますと言う返事を聞くと、今から帰る途中、琴の音が聞こえて来たら、合奏を申し込んでみろと加藤は言う。

訳が分からないまま帰路についた安藤だったが、立花家の前に来ると、中から琴の音が聞こえて来たので、言われた通り、中に入って、一緒に演奏をお願いする。

危険な戦闘だから、結婚しちゃいかん。それじゃあ若い奴が可哀想だと加藤は加寿子に話していた。

立花家では、圭子の琴と、安藤の尺八の演奏が続いていた。

加藤は、自分が撃墜してしまった趙英俊の琴を思い出していた。

趙英俊の命が燃えた瞬間、炎が燃えた。戦争が続く限り、あの強烈なあの炎を観るだろうと加藤が呟くと、加寿子は黙って何事かを考えている様子で、私は、妻としてあるまじき事を…と、今心に浮かんだ事を反省するが、その心を見抜いたよう、加藤は、分かったよ、あの炎は、いつかこの俺を…、そうだろう?と言い当ててみせる。

お前の言う通りだ。敵を焼く炎はおのれをも焼く…か…と悟りを開いたような加藤に、私はなんて酷い事を…と言いながら加寿子は泣き出す。

みんな、俺を鍛えてくれる。お前もお恋慕所に飛び込んで来てくれた。それで良いんだよと加藤は優しく慰める。

昭和15年 秋

陸軍航空本部では、新鋭機隼に関して、開発を続行すべきか中止すべきかの会議が行われていた。

まだ開発途中の隼は、空中分解を起こす危険性があったのだ。

それならまだ、旧式の九七式戦闘機を改良して何とか使った方が良いのではないかと言う意見が多かったのだ。

しかし、加藤は、今の段階では確かに若干弱点はあるが、次期戦闘機になり得る。車輪が格納できない九七式戦闘機で、これからの近代戦が戦えるでしょうか?海軍では0式が生まれている。九七式戦闘機に固執する事で、優秀なパイロットを死なせるわけにはいかない。自分が隼のテストパイロットになると意見を述べる。

そんな加藤の意見を援護してくれたのは、空挺部隊の三宅少佐(宇津井健)だった。

隼の開発が中止になれば空挺部隊も中止ですな。空挺部隊が無事敵地に降下する時、射的場の人形と同じで無防備です。是非、隼を次期戦闘機に!と力説してくれたので、本部長として会議に参加していた徳原は、今しばらく、隼に時間を貸す事にすると結論づける。

会議が終わった後、加藤は三宅に礼を言う。

そうした甲斐があり、新たな34戦隊は隼で編成され、加藤がその隊長になる。

加藤は部下たちを前に、本日、飛行戦隊は、南支広東へ移動が命じられた。3日間の休日中に身辺の整理しておくように言い渡す。

安藤は、圭子と梓川で落ち合っていた。

先に川辺に到着していた圭子は、反対の岸に安藤がやって来たので、自分が待ち合わせ場所を間違えたかと思い謝るが、安藤の方がわざとこちら側に来たと明かす。

長い間、本当にありがとうございました。どうぞお元気でと言い残すとさっときびすを返し帰ろうとしたので、驚いた圭子は、待ってください!と叫びながら、後を追おうとして川に中で転びそうになる。

それに気づいた安藤が戻って来て、圭子を抱き上げ向こう岸に運んで降ろすと、私たちが戦争のない、平和な時代に会っていたら…と圭子は嘆くが、今の時代に生まれ、空で戦う事を無上の誇りと思っております。決別こそ、より強き愛の姿ですと安藤は答える。

日夜、あなたの面影を忍ぶ事をお許し下さい。どうぞ、ご健勝で!と言い、敬礼をした安藤は、そのまま帰って行く。

その頃、加藤は自宅のタンスを開け、マフラーになる布を探していた。

白い布を見つけ、これは確か結婚式の…と思い出しながら取り出そうとするが、その時、見慣れぬ懐刀が落ちた事に気づく。

それを見た加藤は、俺にもしもの事があった時…、バカな事を考えるんじゃない!と加寿子を叱りつける。

北支の事を話された時、あなたは死を決意なさいました。夫に死を促した妻として…と加寿子は口ごもる。

軍人としての勤めとは、その務めを完全に果たす事だ。軍人の妻としての勤めは夫への想い等捨てる事だ。そして子供を育てる事が任務なんだ。軽はずみな事を考えてはいかん。後を頼むぞと加藤は言い渡す。

そんな夫婦の会話が続いている時、息子は、のらくろ漫画本を横に、布団の中でぐっすり寝ていた。

昭和16年12月8日 日本は連合国に対し宣戦布告していた。

隼戦闘隊は、連日マレーの空に雄飛した。

その日、コタバル基地では、先に帰還した沢井軍曹(三夏伸)に、隊長機を観なかったか?と聞いた部下たちは、やがて、水野軍曹(根岸一正)が操縦する機体に伴って帰って来た隊長機を発見する。

水野機は安定しておらず、負傷している事が分かったので、地上では救援隊の準備をする。

水野機は何とか着陸するが、滑走終盤に方向感覚を失い、下で待機していた救援隊の中に突っ込み、ジャングルにぶつかって何とか静止する。

後から着陸して来た加藤は、どうした!と叫ぶ。

沢井軍曹が轢き殺されたのだった。

その直後、ジャングルの中に1人入り込んだ水野軍曹は、自らのこめかみに拳銃を当てて自決しようとしていた。

そこにやって来た加藤は、その手を押さえ、ここで死なせるのなら連れて来んぞ!と叱りつける。

水野軍曹は、沢井軍曹を殺してしまい申し訳ありませんでした!と詫びるが、戦死した沢井に次いで、お前が俺の2番来について来い。それまで身体直して来い。退院したら、俺と飛ぼう。待ってるぞ!と優しく加藤は言い聞かせ立ち去って行く。

ある日、コタバル基地に三宅少佐が訪ねて来るが、たまたまテント内で出迎えた中隊長の中江中尉(長谷川明男)は三宅を知らなかったので、何者だ?と怪しむが、そこに加藤がやって来て、落下傘部隊の三宅少佐だと紹介したので、中江中尉はかしこまって謝罪する。

加藤と三宅が建物に向かった後、今の人が隼戦闘隊の恩人だとその場にいた部下たちに説明する。

部屋に入った三宅に加藤は、いつだ、パレンバン降下作戦は?敵はマレーを放棄して、スマトラに移動したようだ。やるなら今だぞと単刀直入に聞く。

しかし、三宅の態度を観ると、作戦は停滞しているようだった。

今度はこっちが助ける番だと呟いた加藤が会いに向かったのは、マレーの虎と称された山下奉文将軍(石山健二郎)だった。

このままでは、空挺部隊を犬死にさせるだけですと加藤は進言するが、山下将軍の取り巻きに、余計なことを言うなと叱責される。

しかし、山下将軍は、この人は戦隊長だ。敵上空を隅から隅まで飛んでいる身だ。口を慎めと部下を注意する。

全滅も覚悟の上で戦うのが、戦場で戦う私の姿勢であります!と加藤が力説すると、山下将軍は、分かった…、善処しよう。しっかり頼むぞと言ってくれる。

基地に帰って来た加藤は、パレンバン地区は攻撃するには遠方過ぎるので、カーン飛行場を奪取する。強行着陸をやるかもしれないと作戦を立てる。

作戦決行日、隼が飛来する下のジャングルでは、隊長(早川雄三)、副官(藤山浩二)ら歩兵大隊が、何とか前進しようとしながらも苦戦していた。

友軍機が基地に強硬着陸を試みるが、トーチカからの攻撃を受け、機体は炎上する。

しかし、重傷の操縦士は、そのまま隼をトーチカに特攻する。

この戦いで、島田が戦死、人見伍長はジャングルに落ちて行ったと言う。

カーン飛行場を奪還した隼戦闘隊は、翌朝、パレンバンに向かって飛び立つ。(加藤隼戦闘隊の歌が流れる)

その後、ジャングルから、現地人の格好をした男がふらふらしながら基地に戻って来る。

死んだと思われていた人見伍長(峰岸徹)だった。

現地人に化け、100kmを徒歩で歩いたのだと、人見伍長を連れ、大江中隊長が加藤に報告する。

人見をねぎらい、先に退出させた加藤は、大喜びしている大江をその場に残すと、人見伍長は、途中で敵に捕まってないだろうな?と確認し、ダメじゃないか、喜んでばかりいては…と注意する。

洗脳されてスパイとして送り込まれた可能性もないではなかったからだ。

その後、大江は安藤中佐に会い、人見はまだ19歳です。隊長はそんな人ですか?可哀想です!と人見を疑う冷酷振りを非難する。

すると安藤は、丸で今のお前は、昔の隊長そっくりだと笑い、中隊長のときはそれで良い。だが、部隊長は指揮官として違って来る。立派な指揮官になるんだ。分かるか?俺が死んだら、お前が専任中隊長だ。しっかりしろ!と言い聞かす。

その言葉で気持ちが晴れた大江は、尺八を聞かせてくれませんかと頼む。

安藤が、尺八を吹き始めると、それを耳にした加藤隊長は、ろうそくでタバコに火を点けると、そのろうそくの火を吹き消し、部屋を暗くして尺八の音色に聞き入るのだった。

同じ頃、圭子は琴を弾いていたが、突然、柱が外れてしまったので、何か不吉な予感を感じる。

その予感通り、翌日出撃した安藤は、撃墜されてしまう。

大江を始め、仲間たちは全員嘆き、正木中尉(露口茂)は加藤隊長に、安藤中佐のお通夜をやりましょうと進言しに行く。

しかし加藤は、その必要はないと言うと、明朝午前2時奇襲すると命じる。

その頃、挺身隊の隊員たちの前に立った三宅は、全員に挺身隊奇襲を告げると、祖国日本の安泰を祈って黙祷をする。

午前2時、飛び立った輸送機の中で、緊張した不方を観た三宅は、観ろ!隼ががっちり守ってくれているぞ!と窓の外を観ながら勇気づける。

その時、敵機が接近して来る。

降下準備!と三宅は声を挙げる。

輸送機から次々と舞い降りる落下傘部隊(藍より青き大空に〜♪と「空の新兵」が流れる)

かくしてパレンバン奇襲作戦は成功した。

後日、加藤隊長は、戦死者の追悼会をやろうと大江中隊長と正木中尉に伝える。

この手紙が着いたときは、3人とも戦死していた。3人とも読んでやろうと加藤は言う。

部隊が整列した中、まずは大江中隊長が、島田の弟からの手紙を読み上げる。

泥鰌の佃煮が目に良いと聞き、たくさん獲って佃煮を送ります。部隊の皆さんにも分けてやってください…

それを読む大江中尉の目は涙に濡れていた。

続いて、手塚軍曹へ母親からの手紙を正木中尉が読み上げる。

昨日、あなたの赤ちゃんの時をお見いだしました。あなたは本当に良く笑う子でした。僕が泣くときは、お母さんが死んだ時だけと言っていましたね。あなたの事ですから、この手紙を読むときも大笑いするでしょうね。お母さんは、いつも守ってあげます…

机に飾られた写真の中で、メガネをかけた手塚軍曹は笑っていた。

正木中尉も泣いていた。

最後に、安藤へ、圭子から来た手紙を加藤隊長自らが読み始める。

決別こそ、より強き愛の姿だと言う言葉に崩れそうです。決別…、それが永遠の姿なら、愛の姿も永遠の姿である。圭子は、あなた様の妻と呼ばれたく…(幼稚園でオルガンを弾いている圭子の姿が浮かぶ)

激しい戦場にありましても、生きる事を…と、加藤がそこまで読んだ所で、その心情を思った大江が代読を申し出る。

生きる事と戦う事は、共にある事と思います。あえて生の道をお選び下さいますよう…とまで読んだ所で、大江の言葉が詰まる。

読まんか!と加藤が命じるが、読めません!と大江は泣きながら叫ぶ。

その時、指令本部より命令が届く。

64飛行隊をシンガポール方向へ向かわせ、敵残存部隊を叩けとの指令だった。

その後、ビルマのマキャブで、部隊は翼を休めていた。

加藤隊長の元にやって来た大江中隊長や正木中尉等は、これからは地上で指揮を執ってください。隊長も中佐にご昇進なされ、すでに40歳になられました。40歳を超えて、操縦桿を握っているものは誰もいないはずですと進言する。

それを聞いた加藤は、みんな歌ってくれ、隼隊の隊歌をと頼む。

すると、大江は、かとう隊長を囲み、全員で円陣を組むと、武運長久を祈って!と音頭を取り、人見伍長の吹くハーモニカに合わせ、エンジンの音、轟々と〜♪と全員で歌い始める。

エンジンの中にいた加藤隊長は、嬉しそうに、趣味の写真機を取り出し、全員の写真を取り出す。

その時、敵機襲来の報が入ったので、加藤は真っ先に飛び立って行く。

その直後、退院して来た水野軍曹が編隊に復帰しました!と申請するが、加藤隊長は空の上だった。

迎撃に向かった飛行隊は次々と被弾する。

人見伍長の機が撃たれたので、帰れ!と加藤隊長は叫ぶ。

正木の機も撃たれたので、帰れ!と叫ぶ。

加藤機は敵機を1機撃ち落とすが、気がつくと、隊長機自身も被弾していた。

それを見て驚愕する大江たち。

そんな仲間に向かい、操縦席の加藤は別れの手を振って、海に墜落して行く。

時に昭和17年5月22日

中佐 加藤建夫は40歳の生涯を閉じた。

ベンガル海は、南西の微風がそよぎ、波はうねっていた…