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006は浮気の番号

昭和の有名大歌手でありながら、同時にナンセンス映画の監督もやっていた近江俊郎先生によるコメディ映画。

タイトルが「007は殺しの番号(ドクターノー)」のパロディなので、内容もスパイパロディか?と想像してしまうが、産業スパイ的な要素や、ショーン・コネリーとかジェームズ・ボンドと言った言葉は出て来るものの、全体的にはスパイ物とは全く似ても似つかないナンセンス物で、どちらかと言うと「インディ・ジョーンズ」風な要素が混じっているように見える。

もちろん、この公開当時に「インディ・ジョーンズ」シリーズ等ないので、もっと古い探検物からヒントを得た物だろうが。

主役は、近江俊郎先生作品の常連とも言うべき由利徹で、脱線トリオ仲間の南利明や、古い仲間である佐山俊二などが出ているのだが、何故かキャストロールの最初に出て来るのは、歌手の三沢あけみである。

確かに彼女の出演場面も多いのだが、山田社長、その祖先山田長政、山田社長の息子正長の3役を全部1人でこなしている由利徹の方がやはり主役だろう。

木原良雄役の若者は、歌を歌うシーンがあるだけに、当時の新人歌手らしいのだが、名前が分からない。

「東京ノクターン(東京ノックダウンかも?)」と劇中で歌っている曲で検索しても、全く該当曲や歌手名も出て来ない所を観ると、ほとんど売れなかった人なのではないか。

三味線を弾いて歌う芸者さん、劇中では「黒菱姐さん?」と呼ばれていたようにも聞こえるが、この方も見覚えはないが歌手のように見える。

やはり監督自身が歌手なので、気に入った歌手仲間の人を映画に出演させているように見えるが、なかなか見覚えのある有名な人は少ない。

俳優にしても同様で、見覚えのある俳優はほとんどおらず、せいぜい見覚えがあるのは、千葉信男、杉狂児、人見明と言った、当時人気があったコメディ陣と、後は松村達雄くらいである。

黒澤映画や山田洋次監督の常連でもあった松村達雄さんが、こんな…と言っては失礼だが、バカバカしいナンセンスものにまで出ている事自体が驚き。

その松村さんは、1964年のカメラのCMで有名になった「いいと思うよ」と言うセリフを、色っぽい状況で使っているし、他にも「タンパク質が足りないよ」とか、当時の人気CMコピーが登場している。

由利徹と佐山俊二は、当時コントネタのとき使っていた「そうしましょ、そうしましょ」を今作で使用している。

馬がしゃべるシーンは、馬が口を動かす映像に人間のセリフをかぶせているだけなのだが、アメリカの人気ドラマ「ミスター・エド」からのイタダキだと思う。

水着バー等のアイデアは、「007」からの連想なのか、単なるお色気サービスなのか不明。

近江俊郎先生のコメディ映画は、全体的に「バカバカしい感じ」や「まじめな映画は作らないぞと言った意気込み」は大いに共感できるのだが、残念ながら、今観てものすごく笑えると言うほどのアイデアはない。

何となく、趣味が高じたマニアが内々だけで楽しんでいる感じで、観客も引きずり込むほどのパワーはないように思える。

予算も、超低予算かと思うと、ジャングルのセットはそれなりにちゃんとこしらえてあるし、「アンコール006」の薬の容器等、ちゃんと女性型に全部作ってあったりで、部分部分は芸が細かかったりする。

ちなみに、冒頭に登場する日活の会社ロゴであるが、通常の「木彫りの浮き出し文字」のような日活マークではなく、何故か、白黒だけの2Dグラフィック風日活ロゴ(形は同じ)になっているのも興味深い。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1965年、日活、松井稔脚本、近江俊郎監督作品。

東京の町並み

「山長製薬株式会社」ビル

重役会議で浜田専務(若宮隆二)が、当社の看板製品であるアンプル剤「カゼナオール」で、ショック死が起きると言う重大事案が起きたと報告していた。

次いで発言した社長山田長兵衛(由利徹)は、漢方で細々とやって来た会社を、80億の大資本の大会社に成長させたのは、ひとえに、漢方の煎じ薬をアンプルに入れると言うアイデアを考えた自分の功績であると自慢話をする。

その山田社長から意見を求められた、大きな口ひげが目立つ研究部のアザラシ博士(人見明)は、ショック死の原因は他にあるのではないか。何しろ、「カゼナオール」は、ユキノシタとミミズの汁を足しただけの毒にも薬にもならない薬に過ぎないので、考えられないと述べる。

そこに、社員が入って来て、厚生省から「カゼナオール」を即時販売中止にするようにとの達しがあったと知らせに来る。

それを聞いた山田社長は、ショックのあまり、その場に倒れてしまう。

その頃、山田社長の1人娘早苗(三沢あけみ)は、女友達と2人で競馬を観に来ていた。

しかし、買った馬券が外れたので、帰りに、予想屋の親父(佐山俊二)に、1つも当たらないじゃない!文句を言うが、本当に当たりゃ、こんな商売やってないよと親父はすまして答える。

その時、場内に、山田早苗様、お父様が急病ですとのアナウンスが流れる。

自宅で山田社長を診察した医者は、軽い脳出血なので、言語障害等の症状はないが、しばらく絶対安静が必要ですと診断し、付いていた看護婦も、ぽっくり逝くかもしれませんので絶対安静で!と念を押す。

その医者と看護婦が帰りかけたとき、慌てて戻って来た早苗とぶつかり大声を上げたので、寝ていた山田が起き上がり、静かにせんか!絶対安静なんだぞ!と激怒する。

その頃、山長製薬のライバル会社八田利製薬の社長室では、社長の八田利平(南利明)が、自社の水虫薬「サッパリ」の効能書きを読んでいた。

そこに、部下の平松(千葉信男)が入って来たので、この薬を付けてみろと命じる。

平松が八田利が机の上に投げ出していた足に塗ろうとすると、お前の足に塗ってみろと言うので、そりゃダメです。この薬は全く効かず、山長から出ている「スッキリ」の方が効きますと教える。

あちらの浜田専務からの連絡はどうだ?と平松が聞くと、「カゼナオール」は製造中止になったそうです。やはり私のアイデアが成功しましたと平松が報告したので、しかし、あの大山さん、良くうんと言ったな。やっぱり効果があったのはガール&マネーか…と八田利は笑う。

その夜、政治家の大山(松村達雄)を料亭に招いた八田利と平松は今回の件の礼を言う。

芸者の踊りを満足そうに観終えた大山は、厚生省を動かすのは大変だったよ。しかし、あんたらも相当のワルだな、ショック死事件をでっち上げるなんて…と平松考案の悪だくみに感心したようだった。

すると、平松が、悪だくみにかけてはまだまだ先生の足下にも及びませんなどと、妙な謙遜をしてみせたので、横で聞いていた八田利が叱る。

今の内閣の総理も幹事長も、わしの思いのままだよなどと自慢した大山だったが、思うようにならんのはあっちの方だけだと弱気を見せたので、横についていた芸者が、先生、私にお任せになってと色目を使う。

そうかね?とその気になった大山は、その芸者と共に布団が敷かれた別室に向かうと、芸者から特別サービスを受け、先生、どう?と聞かれると、「いいと思うよ…」と答えるが、その後「参った、参った」と言いながら。精力を使い果たしたようなへろへろの状態になって出て来る。

一方、自宅で寝ていた山田社長の見舞いに、新任厚い部下の犬丸(白川晶雄)が来る。

しかし、山田社長は、君なんかが見舞いに来るより、栄養のあるこってりしたものを持って来い!奈緒美を連れて来て看病させたらどうだろう?もう自分は会社に出るつもりはない等と勝手なことを言い始める。

あげくの果てに、子飼の番頭で、一緒に苦労して来たお前が社長になってくれ等と言い出したので、苦労して来ても、美味しい所は全部社長が独り占めじゃないですか。それに浜田専務が黙っていないでしょうし…と犬丸が答えると、お前が女嫌いでなかったら、早苗の婿にすれば良いんだが…などと山田は嘆く。

すると犬丸も表情が代わり、早苗さんだったら話は別ですよ等と言うので、山田社長はちょっと耳を貸せと言い、何事かを打ち明ける。

すると犬丸も、それは名案ですね!と喜ぶ。

その名案とは、早苗が社長代理として事務仕事を引き受けると言うアイデアだった。

早速社長代理になった早苗に、山本専務がゴマスリの挨拶をしに来る。

その後、アンプルの返品をどうしますか?と聞きに来たので、もったいないから社員全員に配ったら?と早苗が提案すると、廃棄前提ですと言うので、だったら、穴を掘って埋めたら?と適当に答え、人がいなくなると、社長なんてつまんないなとぼやく。

そんなだらけていた早苗の部屋にいきなり入って来たのが、研究所の社員木原良雄で、薬の分析結果の報告を渡すと、君は誰だか知らないが、社長がいないからってまじめにやりたまえ!と文句を言って帰って行く。

その頃、八田利製薬の八田に会いに来ていた浜田専務は、山長製薬が潰れた時には、こちらで迎えてくれるんでしょうね?と確認する。

自宅に帰った木原は、ギターを弾きながら「東京ノクタ〜ン♪」と得意の歌を歌い出す。

化粧台の前でそれを聞いていた妹紀代子(近江佳代)は、歌い終わった兄に拍手をすると、ご飯だよと誘う。

親父遅いな…と木原が案じていると、会社大丈夫?最近評判悪いわよと紀代子が言い出す。

木原は、「カゼナオール」は今でも1億以上売れてるから大丈夫と言うが、会社潰れちゃったら大変よ。社内貯金降ろしたら?と紀代子は心配する。

そこに、父親が帰って来る。

たくさんの馬券を持っているので、当たったのかい?と聞くと、これは落ちていた外れ馬券を拾って来ただけで、時々この中に当たりが入っているからバカにならん等と言いながら、父親は卓袱台の上で調べ始めるが、みんな外れだった。

飯の前に銭湯行くからと、紀代子から石鹸と手ぬぐいを受け取った父親だったが、親父、ベークドドリンクだな?と木原が言い、何の事だ?と父が聞き返すと、やけ酒よと紀代子が解説する。

その夜、山田社長の家では、早苗の誕生パーティが開かれていた。

集まっ女友達たちは、早苗の得意な歌を聴かせてと頼む。

早苗の部屋から聞こえて来る声を聞いた山田は、バカににぎやかだなと起き上がり、早苗の誕生会をやっていて、お嬢様のお友達が集まっておられますと婆やのお花(花岡菊子)から聞くと、ちょっとわしも顔を出して来よう等と言い出したので、良いんですよ、旦那様はご病気なので、顔は出さないと言っときましたからと婆やが言うと、お前はいつもは気が利かないのに、こんな時だけ余計な気を利かすなと山田は忌々しそうに嫌味を言う。

そんな婆やが、夕食として、お粥と梅干しを持って来たので、そんなものばかりじゃ起きる気にならんよ。ホルモン料理でも持って来い!わしはもう起きれるんだが、医者から、会社の面倒な事をやると身体に悪いと言われたから娘にやらせているだけなんだと叱りつける。

早苗は、東京十三夜〜♪と歌を披露していた。

夕食の片付けに戻って来た婆やは、布団が枕元まで盛り上がっていたので、もう寝ちゃったよと呆れ、アンコールを求められた早苗の部屋に来ると、旦那様はもうお休みになられましたから、もう少しお静かにお願いしますと声をかける。

しかし、その頃、こっそり屋敷を抜け出していた山田は、近所の焼き鳥屋で、大量の焼き鳥を食っていた。

その隣で飲んでいたのが木原の親父で、昔の事ばかり言いながら、もう1杯貸してくれと女将に頼んでいた。

そんな木原の親父は、隣の席の山田の焼き鳥に目を付けると、こっそり盗んで食べ始めるが、すぐに見つかってしまう。

しかし、木原の親父と目が合った山田は、怒るどころか、あなた、木原伍長じゃありませんか!と叫ぶ。

驚いた木原の方も、山田二等兵じゃないか!とかつての戦友を思い出す。

南方で川村と3人で友軍からはぐれ、ジャングルの中をさまよったな。川村の奴、現地の娘と結婚したが、今頃どうしているかな〜…と木原は思い出す。

(カウンター席に座っている2人のセットの背後がジャングルになり回想シーンになる)

友軍からはぐれた山田、木原、川村(川上正夫)の3人の日本兵は、空腹を抱え、何個のぎっしりつまった饅頭食べたいな等と言いながらジャングルをさまよっていたが、やがて、アンコールワットの遺跡に出会う。

すると、山田が、饅頭を持った皿を見つけ、喜んでそれを持ち上げると、木原たちに見せるが、それは饅頭でも何でもなく髑髏だったので、それに気づいた山田は、その場に気絶してしまう。

長兵衛!長兵衛!と呼ぶ声で目覚めた山田の目の前には、椅子に腰掛けたちょんまげ姿の男(由利徹)を見つける。

良く来た長兵衛、待っていたぞ。わしはお前の祖先山田長政だ。ゆるりとくつろいで行くが良かろうと言うと、息子のオインを呼び寄せ、長兵衛を紹介すると、十分に接待してつかわせと命じる。

オインは、長兵衛の事を本当の子孫でございますか?と疑うが、長政は間違いないと保証し、これこれ、みなのもの!と呼び寄せる。

すると、部屋の奥から何人もの女性が山田や木原、川村の廻りに集まって来て、接待を始める。

3人は大喜びでローストチキン等を頬張り出すが、長政は、どうじゃ、ここにいるのはみんな余の愛人で、今日の割当じゃ。みんなで何人おるか知らんのだなどと言うので、木原等は、あたしなんか、母ちゃん1人でも持て余しているのに…、女同士で喧嘩になりませんか?と驚く。

長政は、余は全ての女に十分満足を与えておるから喧嘩はないのだ。余には、世にも珍しい不老長寿の薬があるからなどと言うので、山田が、私にも飲ませてくださいとお願いすると、みだりには飲ませられぬものなので心して飲めよと言うと、1から6の坪を持って来いと女に命じる。

すると、女たちが6つの壺に入った液体を持って来たので、山田たち3人は、それをグラスに一口ずつ、計6杯飲ませてもらう。

すると急に精力が蘇った山田たちは、思わず、側に使えていた女の頭を抱きかかえてなで回すのだった。

やがて、目覚めた山田は、夢の中で観た壺と同じものを抱えてなでていたので、今までのは夢だったのかとがっかりする。

(回想明け)そうだ!あの薬を売り出せば、きっと売れるに違いないと思いついた山田は、あん時の壺はどうしました?廃墟の中で見つけた壺ですよと聞くと、木原は、持って帰って来たので、家を探せば、どっかにあるだろうと言う。

その後、2人はバー「奈緒美」に移動して飲み直す事にする。

木原がホステスと踊っている間、奈緒美(内田高子)は山田に抱きつき、パパ、会いたかったわと甘える。

そんな奈緒美に、山田は、話があると言って耳打ちすると、奈緒美も面白そうに笑う。

そんな事を知らない木原は、踊っていたホステスに、あれは俺の元部下なんだと自慢していた。

翌日、山長製薬の社長室では、早苗が犬丸相手に、浜田専務がこっそり八田利の上役と会っているそうね?社内預金も降ろしてらしいし…、持ち株が下がっているらしいので頼みますよ、あなた1人が頼りなんだからと話していた。

一方、自宅療養中の山田は、医者から勧められたと言う看護婦を招いていた。

婆やは、社長、また、変な気を起こしちゃいけませんよと注意するが、そこにやって来た看護婦と言うのは、白衣を着て看護婦に化けた奈緒美であった。

奈緒子さんって言うんだよ、医者の先生がそう言っていたと山田は婆やをごまかし、部屋から遠ざけると、奈緒美を抱き寄せようとするが、怪しんだ婆やがすぐに戻って来たので、2人は慌てて離れると、山田が奈緒美の脈を診始めたので、婆やは反対ですよと嫌味を言って去って行く。

山田は奈緒美の白衣と服を脱がせると、水着姿にして抱き始める。

その頃、八田利製薬の方では、アンプルの風邪薬が全面的に販売中止になったので、どうするんだね!うちのアンプルもストップになったじゃないか!と八田利社長が平松に文句を言っていた。

しかし平松は、ここであれこれ考えるより「奈緒美」に行きましょうよと無責任な事を言い出す。

バー「奈緒美」に出かけた2人は、出迎えたホステスたちが全員水着姿になっており、客も水着になると言うので驚くが、すぐに気に入り、八田利は、自分がかつてアメリカを廻った時も、こんなアルサロはなかったと自慢話を始め、あちらの女はあちらが強いからね…などと言うと、何か強壮剤でも売り出せば良いのよ。あなたの会社で売り出せば売れるわよとホステスが言い出す。

それを聞いた八田利はいけるかもしれん!と直感する。

すると、平松も、私もあちらに連れて行かせてくださいとアメリカ行きを志願したので、八田利は自前で行って来いと冷たく突き放す。

その時、外国人客が何を言っているのか分からないので通訳してくれとホステスが八田利に頼みに来る。

八田利は調子に乗り、その外国人客の前に出て、たどたどしい英語で話かけてみる。

すると、その外国人も英語がわかる日本人だと思い込んだのか、この店が気に入ったので、買いたいのだがいくらだ?と聞くが、八田利が、この店を気に入った。良いスケを5、6人回してくれと言っていると訳すと、あんた、大嘘つきね!私そんな事言っていない!と、外国人客は突然日本語で怒り出す。

ある日、木原紀代子は、女友達を羽田に送っての帰り、モノレールで東京に戻って来ていたが、その途中、競馬場が見えたので暗い表情になる。

一緒にいた女友達が訳を聞くと、最近、パパの予想、ちっとも当たらないの…と悩みを打ち明ける。

すると、女友達は、圭子のお父さんの所に行ってみたら?と勧めてくれる。

後日、娘から聞いた木原の父親が、中西動物言語研究所と言う所へ行くと、中西悟声(杉狂児)なる動物言語学者が出て来て、自分は動物の言葉は何でも分かると言う。

そこに、弟子らしき大男が菓子とペプシコーラを持ってやって来るが、中西とその弟子は聞いた事もない言葉で会話を始める。

中西は、こんな客なんかにペプシコーラや菓子なんて出す必要はないと叱ったので、弟子は、菓子は随分昔にもらったもので、もう猿も食わないものなので…と会話していたのだった。

中西は、出された菓子を食いながら、今何を話していたのです?と聞く木原に、今のはイルカの言葉ですと言ってごまかす。

木原はさっそく、馬の言葉は分かりますか?と聞くと、中西はもっとも得意とする所ですと言うではないか。

早速、明日レースに出る馬の厩舎にやって来た中西は、まずはハムレットと言うベテラン馬と会話を始める。

ハムレットは、木原の事を随分馬面の奴だなどと悪口を言うが、明日のレースの事を中西が聞くと、寄る年並で身体がだるい等と言う。

それを通訳された木原は、タンパク質が足りないねなどとテレビコマーシャルみたいなことを言う。

ハムレットが言うには、今一番強い馬は、ジェームズ・ボンドと言う馬だと言う。

それを中西から聞かされた木原は、まだ一度も買った事ない馬なんですがね…と首をひねる。

今のところ、本命はシーザーと言う馬で、穴馬はクレオパトラと木原は中西に教える。

さっそく、厩舎内に繋がれていたジェームズ・ボンドなる馬の前に行った中西は、自分はショーン・コネリーの友達の中西だと自己紹介する。

すると、ジェームズ・ボンドは、ショーン・コネリーか…、あいつはキザだねと悪口を言う。

明日は、シーザーに勝てる自信はあるかね?と中西が聞くと、あると言う。

次に、クレオパトラと言う馬に聞きに行くと、今、ジェームズ・ボンドに敵う馬はいない。私だって今のシーザーに勝てる。明日は大丈夫。だってあいつ、私に振られたんですものなど秘密を打ち明けてくれる。

その頃、山田は、奈緒美から指輪を買ってくれと自宅でねだられていた。

山田が渋っていると、すねた奈緒美が帰ろうとしたので、お金を上げるからと約束する。

すると、喜んだ奈緒美は、山田の顔にキスしてくれる。

その時、婆やが、来客を知らせに来て、木原と言う人だと言うではないか。

上官だと知った山田は会う事にするが、奈緒美には、顔を見られないようにしときなさいと言いつける。

部屋にやって来た木原は、今日は資本を出して欲しいと思って、東京祭典レースで大穴が出るらしいんですと言う。

そこに通りかかった早苗は、木原の顔を観ると、あら?予想屋の親父さん!と驚く。

早苗が去った後も、必ず倍にして返しますからと木原が頼むと、渋々山田は財布を取り出し、いくら欲しいの?と聞くが、財布ごと受け取った木原は、全部!と笑う。

翌日の競馬場では、予想屋の木原は店を休んでおり、娘の紀代子と共に見物客に混じってレースを観戦していた。

すると、予想が適中し、ジェームズ・ボンドが優勝し、2位はクレオパトラ、3位はハムレットと言う大穴が出る。

喜んだ木原は、中西を紹介してくれた紀代子に小遣いを渡すが、これっぽっち?と不満そうだったので、まだ賞金を受け取っていないと答えると、父ちゃん、これから、色々お礼しないといけない人がいるので…と言って別れる。

大金を手にした木原が向かったのは、バー「奈緒美」だった。

奈緒美を横に侍らせ、ホステスたちを集め豪遊をする木原は上機嫌だった。

そこに、やって来たのが山田で、奈緒美を抱いている木原を観ると頭に来て横に割り込む。

あんた、大穴当てたら返すと言っていたじゃないか!と文句を言いながら奈緒美を取り返した山田だったが、木原がその場で二倍の金を返すと驚き、あんたは、競馬の勘は狂ったはずだと不思議がる。

木原は愉快そうに、奈緒美の頭を挟んで、当てた秘密を山田に耳打ちする。

何と、試合中、クレオパトラが、老いぼれ馬のハムレットに、私について来なさいと囁きかけたら3位になったのだと言う。

老いぼれ馬を復活させる若い牝馬の秘密があるに違いないと気づいた山田は、早速会社のアザラシ博士に研究を命じる。

研究所では、研究の末、若い牝馬の発する魔力を科学的に合成させ、男を奮い立たせる薬が何とか完成する。

動物実験等している暇はないと判断したアザラシは、自分を実験台にしてくれと志願した木原の息子たちに、この薬がはっきり効能が現れるのは老人だと言い、自ら試みてみる事にする。

鼻から薬を吸い込んだアザラシは、研究の成果を見に来た早苗等目もくれず、木原の息子等若い男たちを追いかけ始める。

その頃、山田の家にやって来た奈緒美は、八田利の社長さんが店に来たのよと山田に報告し、八田利さんは、昔の殿様みたいになる薬を作っているらしいと聞いた山田は、相手も同じような精力剤を作り始めたと気づく。

アザラシは、女性化が進行してしまったので、別の薬の実験を始めるしかないと、山長製薬の社長室で、犬丸が早苗に報告していたが、そこにやって来た山田は、部屋に飾ってあった壺を手にすると、この中に精力剤の秘密があるに違いないと言って持ち帰ろうとする。

そこに、突然入って来た木原の息子がぶつかってしまい、山田は持っていた壺を床に落とし壊してしまう。

山田は愕然とするが、木原の息子は大変な事をしでかしたと慌て、自分の父が同じものを持っていますので、それをお持ちしますと詫びたので、もしやと思って山田が名を聞くと、自分は木原と言い、父は善衛門と言いますと言うので、はじめて、目の前にいる社員はあの木幡伍長の息子だと知る。

山田は、早苗を自分の娘だと紹介すると、早苗はおかしそうに、この前叱られたわねと笑う。

木原は恐縮し、先日は失礼しましたと詫びる。

山田は、床で壊れた壺を観ているうちに、壺の底に何か紙片が入っているのに気づく。

取り出して観ると、観たこともない言葉が書かれていた。

それを観た木原が、妹のガールフレンドの親父に読んでもらったらどうでしょう?と提案したので、早速中西に会いに向かう。

紙片の文字を読んだ中西は、これは東南アジアに住むゴリラの使う文字で、蛇の肝臓、6つの壺の薬を合わせろと書いてあると山田、早苗、木原らに教える。

すぐに、木原の家に行き、そこにあったもう1つの壺の中からも、同じような紙片を発見した山田は、もう1つは川村が持っている。現地に行ってみようと言い出し、木原善衛門と共にアンコールワットに向かう。

ジャングルの中を探しまわっていた2人は、現地人らしき娘がいたので話かけてみると、何とその娘は日本語を話し、川村と言う日本人を知らないかと聞くと、私のパパですと言うではないか。

川村はどうしている?と聞くと、パパは死にましたと言うではないか。驚いた山田が、ママは?と聞くと、元気ですと言う。

昔は3人で張り合ったけど、あなたのママはパパに取られたんですと、山田は昔を思い出しながら打ち明ける。

同じ頃、日本の八田利製薬では、山長の社長が東南アジアに不老不死の薬を探しに飛んだと八田専務から密告を受けていた。

八田利社長は焦るが、平松は、こちらには何の手掛かりもないと嘆く。

アンコールワットでは、川村の持っていた壺が残されていた家で、川村の妻のメナム(三鈴恵以子)が再会した山田さんに、あなたは山田長政の子孫なんですか?と聞いていた。

山田はそんなメナムに、あなたは、私と心から愛し合っていたでしょう?などと図々しくも聞いていた。

メナムはそれには答えず、この近くには山田長政の子孫がたくさんいるので、あなたたちを歓迎してくれるでしょうと喜ぶ。

山田は、残り3つの壺があるに違いない遺跡に今すぐにでも行きたいと申し出るが、あそこは、夜行くとお化けが出ます。明日の朝、サクラに案内させますとメナムが言うので、そう言えば、我々も昔、あそこでお化けに会ったな…と山田と木原は頷き合い、そうしましょう、そうしましょうと言う。

その後、娘のサクラ(園浦ナミ)が家の外で夜空を見上げていたので、何を考えているのです?と山田が近寄ると、突きがとってもきれいなので…とサクラは答える。

あなたの方がきれいですと山田は言い、僕もパパもあなたのママが好きだった…と教えると、サクラは、パパはいつか私を日本に連れて行くと言っていましたと寂し気に言う。

それを聞いた山田は、私たちが日本に帰るとき、一緒に行きませんか?と勧め、サクラに近づこうと木の階段を昇りかけるが、その階段が外れたのでコケ落ちる。

翌朝、サクラに案内され遺跡を目指していた山田と木原は、突然現れた男に驚いてあなたは?と聞くと、その男はベトコンと言って去って行ったので、ごくろうさまと見送った山田は、何でこんな所にいるの?と不思議がるが、木原は、今流行りだからでしょう?と答える。

やがて目指す遺跡に到着したので、3人は中に入って行くが、山田は木原を邪魔者扱いして、あっちを探しなさいよと、自分とサクラとは別の通路に押しやる。

先に進んでいたサクラは、木原の姿が見えなくなったので心配するが、あいつは年寄りなので足が遅いんだよ。別な所を探しているんだろうと山田はごまかし、サクラと2人でさらに奥の方へと進む。

木原は途中で、何で俺だけこんな事しなきゃいけないんだ?と気づき、山田たちを探し始める。

そんな中、サクラの後を歩いていた山田は、いきなり床の割れ目に落ちてしまう。

サクラと、そこにたどり着いた木原が中を覗き込むと、山田は地下室みたいな場所に落ちていた。

山田は、何か梯子代わりになる物はないかと、周囲を探し、ちょうど良い踏み台になりそうな物を見つけたので、それを踏もうとして、はじめてそれが、探し求めていた壺だと気づく。

残り3つの壺も全部遺跡内で発見した山田は、ただちに日本に帰ると、試作品作りに取りかからせる。

アザラシ博士は、いくつかの試作品の内から、6号試作品で行こうと決める。

社長に復帰した山田は、久々の重役会議の席で、臨床結果で素晴らしい結果が出た。この薬は、これまでのように一時的に効能があるようなものではなく根本的な強精剤であり、続けて飲めば、何人もの女とハッスルできると、横に座っている早苗に耳を押さえさせた上で説明していた。

新製品の名は、アンコールワットで発見したので「アンコール」ではどうかと山田が提案すると、6つの薬が元になっているので「アンコール006」ではどうかしらとさらにアイデアを出す。

さっそく大掛かりな宣伝活動が開始され、アドバルーンは上がるし、男性社員によるCMソングも録音され、女性のボディの形をした容器に入れられた新商品「アンコール006」は大々的に発売される。

八田利社長も、売店で早速飲んでみて、そのてきめんの効果に驚いていた。

世の中年男たちも、次々に「アンコール006」を飲み、大いにハッスルし始める。

あの政治家の大山も、「アンコール006」を飲んで、前にお世話になった芸者相手に再試合を申し込み、今度は、芸者の方がふらふらの状態で部屋から出て来る。

山長製薬の重役会議では、あまりの売れ行きの良さで、製造が追いつかないと新たな悩みを相談していた。

アザラシ博士が、原料が間に合わないので、とにかく現地に飛ばなくてはなりませんと言うのを聞いた早苗は、いつまでも自然原料に頼るわけにはいかないので、至急、化学的合成をしてくださいと命じる。

肝心の時に父親がいないことに気づいた早苗が、木原の息子に、良雄さん、パパは?と聞くと、サクラさんを連れて東京見物ですと言うではないか。

その頃、山田は、日本に連れて来たサクラと東京見物を楽しんでいたのだった。

それから30年たちました。(とテロップ)

縁側で碁をやっていたのは、年老いた山田と木原だった。

早苗と木原良雄は、あれから5年後に結婚し、今はパリに旅行中だった。

もう銀婚式だからな…と呟いた木原は、あんたとサクラさんの息子も、もう大学行ってるんだから…、まさか、あんたに子供が作れるとは思わなかったよ。正長君は006のお陰かなと木原は笑う。

その時、部屋の奥にいた今や山田の妻のサクラは。かかって来た電話を取ると、それが息子の正長と知ると、今、会場に到着したそうよと山田に伝える。

山長製薬の大広間では、老いた犬丸が全社員を前に、社長の銀婚式記念式の挨拶をしていた。

そして、今春、大学を出たばかりの、山田の長男、正長を紹介する。

正長(由利徹)が挨拶をしようとマイクの前に立ったとき、大変なことが起きました!と言いながら社員が駆け込んで来る。

「アンコール006」のために、男性の浮気が増えたので、厚生省が販売を中止しろと言って来たと言うのであった。

それを聞いた正長は、かつての父親と同じように、その場に卒倒してしまうのだった。