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手錠無用

勝新にしては珍しい現代を舞台にしたクライムもの。

初期の座頭市のようにツルツルの坊主頭になった勝新が、洒落たコートなど着て、若き吉田日出子ら、犯罪者仲間のリーダー格でもある型破りな金庫破りを演じている。

対する刑事は、これ又、コート姿が「さすらい刑事純情派」を彷彿とさせる藤田まことに、婦人警官姿が珍しい藤村志保。

敵役には、山本麟一に成田三樹夫…と、型通りの配役。

一応原作物ながら、通俗ミステリと言った感じで、犯罪者である勝新が気づくようなことを、警察側は全く気づかないと言う、やや古いミステリパターンで描いてあるが、そこそこ楽しめる内容にはなっている。

3億円強奪事件と言うのは、この映画が公開された前年1968年の暮に実際に起きた有名な事件にヒントを得たものだろう。

この映画が4月に公開されていると言うことは、原作自体が素早く出版されたと言うことだろうか?

それとも、原作は別の事件になっていたものを、話題性に便乗して、急遽、3億円事件に変更したのかもしれない。

劇中、ボクサー崩れのような鼻曲がりと表現されている権田原役の成田三樹夫は、特に、特殊メイク等で鼻を曲げている印象には見えない。

顔は普通のままのようだ。

登場場面は少ないものの、若い財津一郎等が出ているのも嬉しい。

藤田まこと主演の人気テレビバラエティ「てなもんや三度笠」の浪人、蛇口一角役で有名になっていた時期の作品である。

藤村志保と並び、ヒロイン風の重要な役所を演じている佐藤友美は、前年、松竹の「吸血鬼ゴケミドロ」と勝新主演の「兵隊やくざ 強奪」にヒロイン役として出ていた女優さんである。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1969年、大映、樫原一郎原作、池田一朗脚本、田中徳三監督作品。

3億3500万以上の現金を詰めた2つのトランクを乗せた現金輸送車が、警官同乗で会社を出発する。

助手席に乗っていた男山本は、訛の強い東北弁で、会社の無線室に、これから出発すると連絡を入れる。

輸送車が山のつづれ折れ道を登る頃、サングラスの女が運転する一台の赤いオープンカーが背後に付けて来ていた。

二叉路の所で、エンコしたらしきカローラが路肩に停まっており、2人の男が修理中だったので、その車の横を輸送車と赤いオープンカーが通り過ぎるが、修理していた男らは、その直後、用意しておいたらしき「迂回路」の看板とコーンを道に置き、今通った2台を封鎖する。

布引き山道の途中で、接近して来る現金輸送車のタイヤを狙う猟銃があり、発車後、パンクと思った輸送車は停車する。

後続していた赤いオープンカーも停まるが、その女運転手に謝りながら、パンクの修理を使用と後部トランクを輸送担当が開けたとたん、背後に近づいていた女は、男の後頭部を殴りつけ気絶させる。

さらに、オープンカーに同乗していた、別のサングラスの男は、警官も乗り込んでいた輸送車の中にガス弾を投げ込む。

助手席の山本は、催眠ガスで記憶が遠のく寸前、何とか無線のマイクを取ろうと手を伸ばそうとするが、そのマイクを横から奪った賊の男は、山本そっくりの東北なまりで、会社の無線室に、今から出かけますと報告を入れる。

「三億円強奪事件」捜査本部が立ち、事情を聞くため、無線係を取調室に読んだ三宮署の山本勘介部長刑事(藤田まこと)は、最後に知らせて来た山本の声は本人に間違いなかったかと確認していた。

馴染みの強い東北訛でしたからと無線係が答えると、自分も東北訛でしゃべってみせた山本は、訛が強い言葉は真似し易いんだと教え、再度、本人に間違いなかったかね?と問いかける。

神宮寺謙介刑事(木村元)が、長さんと山本に声をかけて来て、現場近くでダンプが迂回させられていたらしいと報告する。

早速、その迂回路の看板があったと言う場所へ向かって現場検証とすることにした山本だったが、ここにエンコした車があり、ここから5km先に放置してあるカローラを発見したと神宮寺から教えられる。

山本は、何も見つからなかったと言うそのカローラの運転席を調べていたが、ドアが開きにくいので、何かが挟まっていると感じ、針金を使って、ドアのガラスの隙間を探っていると「GARDA」と書かれたクラブのマッチを発見する。

早速本部に戻り、そのマッチに付いた指紋を調べてもらうが、指紋台帳にはないと言う。

どこかで見覚えがある指紋だと感じていた山本は、1人の男の写真を鑑識に見せると、この男のものに違いないと言う。

何者です?と聞く神宮寺に、これやと山本が見せたのは将棋の駒で、香車の弾五郎(勝新太郎)と言う奴やと教える。

弾五郎を探しに出かけた山本と神宮寺は、ゴミ捨て場に人だかりがしているのに気づき近づくと、子供が遊んでいて金庫に閉じ込められていると言う。

その捨てられていた金庫の前にしゃがみ込み、錠を開けようとしていた坊主頭の男こそ、弾五郎であった。

金庫破りの名人である弾五郎は、やがて金庫を開け、無事、中で泣いていた子供を救出する。

そこに近づいて、人命救助やなと声をかけた山本は、行こか?頼まれて欲しいことあると言って、一緒に連れ去ろうとする。

子供の母親が、弾五郎の名を聞こうと近寄って来るが、こいつ名前ないんやと山本が母親に言う。

警察の取調室に連れて来た山本は、身体検査をし、弾五郎の上着の襟の内側から小さなヤスリを見つける。

そして、弾五郎を座らせると、このクラブ、えらいおもろい所らしいな?と言いながら「GARDA」のマッチを取り出して見せる。

生田神社の横にある店や。お前、一昨日、3月8日の3時頃どこにおった?と山本が聞くと、弾五郎は俺、1分前のことも覚えてないんやと言い出す。

3億円強奪事件の現場に、お前の指紋がついたマッチがあったんや!と山本が指摘すると、呼んでくれ!俺に代わってしゃべる奴呼んでくれと弾五郎は言う。

弁護士のことか?名前言うてみと山本が聞くと、何か考えていた弾五郎は、「福原」…、そうや、一昨日は香港トルコ「福原」と言う店にいたんや!女はおユキ言うた!と思い出す。

留置場の中で毛布に包まり寝ていたワッパの松(財津一郎)は、同じ部屋に入れられていた山田なる男が、急に「長崎ブルース」を歌いだしたので、迷惑そうにうるさいと注意するが、山田は言うことを聞かず、そのまま歌い続ける。

頭に来た松は、立ち上がって殴り掛かるが、逆に殴られてしまう。

それで、同じ部屋の中にいた3人の手を借り、山田をこてんぱんに殴りつけようとするが、そこに連れて来られたのが弾五郎だった。

留置場に入れられた弾五郎は、また、松が山田を痛めつけ始めたので、止せよ、俺今日は機嫌が悪いんやと声をかけるが、松が、何や?この糞坊主!と殴り掛かって来たので、逆にきつい一発をお見舞いしてやる。

あまりのパンチ力にビビった松は、お見それしました!厳しー!とわめく。

「福原」にやって来た刑事は、ユキ(渚まゆみ)と言うトルコ嬢に3月8日の事を聞くが、確かにその日はここに来ていたと言うのでそのまま帰ることにする。

その直後、ヒモの男が入って来てどうだったと聞くので、行きはあんたに言われた通りに言っておいたとユキは答える。

ヒモは、相手は3億円の犯人や、泳がせといて、尻尾掴むんだ。分け前は半分…、否、1億で良いかなどと言うので、ユキは、しびれる!と喜ぶ。

留置場の中では、取り調べを終えた戻って来たワッパの松が、署内で兄貴の噂が広まってます。3億円とは…と、弾五郎を前にすっかり恐縮していたが、あ。長襦袢の女と寝たの一昨日やな…、1日ずれたるがな…、これは長く掛かるかもしれんなと呟いた弾五郎は、すぐに釈放されると言う山田に、ここを出たら靴磨きに声をかけ、伝書鳩に連絡するよう言ってくれと頼む。

山田は、そんな弾五郎に、自分が隠し持っていた針金を渡し、すんなり留置場を後にすると、弾五郎に言われた通り、靴磨きの少年に当たりを付け、喫茶店に集まっていた弾五郎の仲間たち、マリ子(吉田日出子)、アパッチ(大川修)、オカマの伝書鳩(榊原大介)、ジョニー(北野拓也)らに会って、弾五郎が捕まっている事を知らせる。

マリ子は、保釈金は10万もあれば足りるだろとのんきに言う。

弾五郎は、取調室に連れて行かれる途中、山田からもらっていた針金を使い、手錠を外すと、腹痛を装い、便所に行く振りをして逃げ出そうとするが、そこにやって来た山本が、釈放じゃと無念そうに教える。

伝書鳩が迎えに来ていたが、弾五郎は、先に帰れ。生田にあるクラブ「GARDA」で8時に会おうと言い残し、その場でタクシーを捕まえると、1人で立ち去ってしまう。

そんな2人の様子を、あのヒモが見張っていた。

ユキのアパート「スズラン荘」を訪ねると、「ニュー香港」で聞いて来たんでしょう?と待っていた様子のユキからベッドの上に誘い込まれる。

その「スズラン荘」も表でヒモが見張っていた。

誘いに乗って来た弾五郎とベッドインしたユキは、煙草を買って来ると言ってコートを羽織ると外に出る。

駐車場で待っていたヒモがユキを引き込み、吐いたか?と聞いて来るが、まだだと知ると、今まで何のために鍛えて来たんだ!と言いながら殴りつけて来る。

2発目を殴ろうとしたヒモの右手を掴んだのは、後を付けて来ていた弾五郎だった。

聞きたきゃ、自分で聞きゃ良いじゃねえか。偽アリバイなんて作ってくれたりして…と弾五郎が言うと、ヒモは、分かってるだろう?3億円…。回してくれたって良いだろう?などと言うので、殴りつけた弾五郎は、止めて!としがみついて来たユキに、そいつとは早く別れるんだな…と言い残して帰ることにする。

消しちゃいけない?弾五郎を追っていた金山行成(山本麟一)は、誰かから電話で指示を受けていた。

電話の相手は、サツに片付けさせると言っているようだった。

分かりました。泳がしておきましょうと金山が電話を切ると、兄貴の仇だ。俺は見つけ次第、やるぜと、椅子に座っていた左手に指輪を付けた男が反抗的に言う。

その夜8時、約束通り、弾五郎はマリ子たちと合流していた。

なぜ、ここのマッチに弾五郎の指紋が付いていたのか考えていた仲間たちだったが、大将はいつも人からマッチを借りるから、どっかで誰かにマッチを借りたんじゃない?と言う。

そこに、店のママ長谷川久美子(佐藤友美)がやって来る。

彼女が席に座るまでに、久美子の年が23歳などと、詳細な情報を伝書鳩が弾五郎に教える。

テーブルに合流した久美子は、あの指紋の方?と弾五郎を観ると、私の方も、マッチのことで迷惑しているの。何度も刑事に事情を聞かれて…と愚痴る。

この店の商売敵って誰だい?と久美子に聞いた弾五郎は、そいつを捕まえて、警察の鼻を明かしてやる!3億円なんて後回しだ。俺の怖さ、じっくり教えてやるよと意気込む。

そんな弾五郎の事を、奥のカウンターからじっと観ているホステス若林悦子(藤村志保)がいた。

隣のテーブルで飲んでいる和服姿の女を観ていた弾五郎は、この店を独立して、今はクラブ「キャセィ」のママになっている原田弓子(長谷川待子)だと教えられる。

さらに、奥で自分を観ていた悦子に気づいた弾五郎は、あの女、俺を知っているとつぶやき、新入りね、一昨日から来ているのだと教えられる。

「花村興行KK」と書かれた事務所では、社長の花村一平(清水彰)が、弾五郎の事をちくりに来たヒモの話を聞いていた。

3億円に目がくらんだ花村は、弾五郎を探せ!と子分たちに命じる。

翌朝、弾五郎は赤いカーテンに赤い布団のベッドの中で目覚める。

立ち上がると、自分はピンクのネグリジェを着ている。

どうやら、「GARDA」の隣にある久美子の住まいの中らしかった。

久美子の姿を観た弾五郎は、頭ががんがんすると言いながら、俺何かしたか?と心配そうに聞く。

久美子は、もちろん!と答えた後、噓、あなたライオンみたいな鼾をかいて寝てしまったわと笑う。

その時、外からクラクションが聞こえたので、仲間のアパッチだと気づいた弾五郎は、着替えると、そのまま外のオープンカーで待っていたアパッチ、伝書鳩と一緒に乗り込むと、最初はどこに行くと聞く。

3億円輸送車が襲われた現場に向かったアパッチは、乗り捨てられていたグリーンのカローラは盗難車だったらしいと教えるが、それを聞いた弾五郎は、盗難車の後ろに別の車が付けていたんだと気づく。

その後、輸送車の襲撃地点にやって来た弾五郎は、パンクしたって?と、ここで停まった事故を不審がり、あれや!22口径やろと、狙撃者が潜んでいたらしき向かい側の崖を見つける。

次に向かったのは、カローラが乗り捨ててあったと言う二叉路の場所だった。

まだ3000kmしか走ってない新車だったそうだと聞いた弾五郎は、どうして輸送車を見捨てていったんだろう?と考え、警察の目をごまかすためだと気づいた弾五郎は、カローラが捨ててあった左ではなく、右の道に行ってみることにする。

そちら側は、良くトラックやキャリアが通る荒れた山道だった。

しばらく崖沿いの道を進むと、何か施設のような場所が見下ろせる場所に来る。

そこは、「カーベキュー」つまり、自動車のスクラップ工場だった。

それを観た伝書鳩は不気味がるのだった。

その夜、今度はマリ子と伝書鳩を連れ、弾五郎は記憶を辿り、3月8日の日に自分がいた場所を探していた。

やがて、ホテル「夢園」と言うラブホテルの前に来た弾五郎は、あいつ婦人警官や!と思い出す。

(回想)「夢園」に入ろうとしていた高校生の男女を補導して注意していた婦人警官若林悦子は、ホテルの前にやって来た弾五郎が、男子学生から殴られても全く平気なのに驚く。

焦った男子高校生は、僕ら、高校生なんで…と急に卑屈になると、彼女を連れて逃げ去る。

どちらの署の方ですか?と悦子は、弾五郎を刑事だと間違えて聞いて来るが、弾五郎は笑ってごまかす。

(回想明け)あの時のおまわりさんだったんだ、あのホステス…と、クラブ「GARDA」で自分をじっと観ていたホステスのことを思い出す。

それから、どこ行ったの?とマリ子が聞いたので、さらに近所を歩き始めた弾五郎は、一軒の屋台を見つける。

そんな弾五郎たちの行動を見張っている花村興業の若い衆2人、そして、車の中には、指輪をした男が拳銃に消音機を付けながら乗り込んでいた。

屋台に入り、この人覚えたない?とマリ子が弾五郎を指して聞くと、おでんを30くらい食べてくれた人やと、主人(西川ヒノデ)も女将(西川サクラ)も思い出す。

この人に火を貸して人いなかった?とマリ子が聞くと、ボクサーみたいな鼻がこう曲がっている静かな人やったと主人と女将は思い出す。

そのとき、先ほどから付けて来ていた花村興業の若い衆2人も店の中に入ってきた弾五郎を睨んで来たので、ちょっと互いに口喧嘩の末、表に出よかと誘って、殴り合いを始めようとした時、暗闇に停まっていた車の中から銃が発射し、てめえに聞きたいことがあるんだよ!と言いながら弾五郎が捕まえていた若い衆の背中に当たって倒れる。

屋台の主人たちは、人殺しや!と騒ぎだし、弾五郎たちはその場を逃げ出す。

暴力団殺されると言うその事件はすぐに新聞に載る。

その事件を知った神宮司刑事は、香車が花村と繋がっていたとは…と驚きを隠せなかった。

しかし、山本部長刑事は、あいつはナイフさえ持たん奴やとかばう。

そこに、当の弾五郎から山本に電話が入り、俺じゃないんだ。1つだけ教えてくれないか。あんたの容疑者リストの中に、鼻の曲がったボクサー顔の男はいないか?と聞いて来て、くれぐれも鼻曲がりには気をつけな…と忠告される。

久美子の部屋に戻って来た弾五郎に、久美子はブランデーを飲ませる。

サツも花村組もかっか来てるだろうが、こちらも身動きできん。奴ら、あの金をどう使うつもりなんだろう?それまでに捕まえないと…と弾五郎は考えていた。

ここには誰も来ないから安心よと言う久美子とキスをしていると、チャイムが鳴ったので、弾五郎はカーテンの奥に隠れるが、入って来たのは、花束を持ったマリ子だった。

寂しいだろうと思って…と、マリ子はカーテンの奥の弾五郎に近づくと、その花束を渡す。

弾五郎がその花束の中から取り出したのは、マリ子が掏って来た山本刑事部長の警察手帳だった。

その中を調べた弾五郎は、容疑者の名前から、アリバイが堅い奴から順にアパッチに写させるようにマリ子に依頼する。

アリバイが堅い方が怪しいと睨んだからだった。

その頃、捜査本部にいた山本部長警部は、警察手帳が見当たらないので、さりげなく部屋中を探していたが、他の刑事たちから何を探しているのかと聞かれると、大したもんやないとごまかす。

その直後、受付のカウンターに置いてありましたと、署員が手帳を届けに来たので、何事もなかったかのように胸ポケットに入れる。

弾五郎は、花村興業に乗り込むと、銃を突きつけ取り囲んで来た子分たちに、これが何か知っているか?と言いながらコートのポケットから小さな瓶を取り出して見せる。

ニトログリセリンや。俺がこれを落としてみろ。こんな事務所なんか吹っ飛ぶぞ。ちょっとやってやろうか?と言い、1滴床に垂らすと爆発したので、驚いた花村本人が奥から姿を現す。

弾五郎はそんな花村に、お宅の若い衆をやったのは、3億円の犯人だ。そいつを捕まえるまで、俺の後を付けないでくれと頼むが、花村が素直に聞きそうにもないので、若い衆の仇、打ってやらないのか!と責める。

悦子は、クラブ「GARDA」で潜入捜査を続けていた。

弾五郎が久美子の部屋に窓から戻って来ると、誰かが入って来た気配がしたので、カーテンから覗くと悦子だった。

弾五郎が姿を見せると、驚いた様子の悦子は、お客さんが悪酔いして気分が悪くなったので、ここに何かお薬がないかと思って…とごまかそうとするが、逮捕するのか?と弾五郎が近づくと、覚えていたのね。あの殺人はあなたじゃないの?と悦子は笑いかける。

俺はピストルの撃ち方もしらないと弾五郎が言うと、私、ここへは来なかったことにしようかしら?と悦子が言うので、俺もいなかったことにしようと弾五郎も笑顔で答え、握手しようと手を差し出しながら顔を近づけキスしようとするが、おまわりさんを辞めたら知らせてくれと言うに止める。

アパッチは弾五郎に、野本保夫と言う奴が臭いと伝える。

弾五郎は、軍資金を頂こうかと笑う。

マリ子と共に野本のマンションにやって来た弾五郎は、作業員に化けてマンションに侵入すると通風口に戻り込む。

通風口の中を進み、野本の寝室の上に到達すると、野本は女と寝ている最中だった。

弾五郎は隣の書斎に降りると、本棚に置かれていた本の一部を引き出し、奥に隠されていた金庫を発見する。

読みもしない本を置いとくからバレちゃうんだよと弾五郎は呟く。

金庫の中には、金の他に手帳が入っていたので中を確認して排気口へ戻る。

野本の相手だったきょう子と言う女が帰り、書斎に入って来た野本は金庫が破られているのに気づくと、電話をする。

ママと呼びかけた野本は、あんなカワイ子ちゃんが悪者だったとは知らなかったよ。

手形を飛ばされたくなかったら、両方返してくれ。例の一件バラしたら困るだろ?昼まで待とうと野本は電話の相手に伝えるが、排気口の中にまだ潜んでいた弾五郎は、小型テープレコーダーにその声を録音していた。

翌朝、本部に出勤する神宮司刑事を陸橋の上で待ち構えていたマリ子は、さりげなくぶつかって立ち去る。

本部にやって来た神宮寺は、山本部長刑事が、また、弾五郎からの電話を受けている所に遭遇する。

神宮寺の?と怪訝そうに答えた山本が、今席に付いたばかりの神宮寺の鞄を開けさせると、その中にテープレコーダーが入っていたので、神宮寺は、僕は入れてません!と言い、唖然とする。

仲間たちと一緒にカフェにいた弾五郎は、野本保夫と言うのは、銀行を辞めさせられた奴で、秘密の隠し場所らしいと電話で教えると、きれいなおまわりさんへのプレゼントと笑って切る。

野本のマンションに踏み込んだ山本や神宮寺が発見したのは、額に風穴を開けられて倒れている野本の死体だった。

喫茶店では、野本のマンションで録って来たテープを再生して聞いていた伝書鳩が、きょう子と言うのは、クラブ「キャスティ」のこだと教えていた。

さらに伝書鳩は、「GARDA」のママさん、辞めたんやて。急に外国旅行やて…と言うので、弾五郎は気になり、いつ出発か聞くと、火曜日だと言う。

弾五郎はその後、ヒッピー風の衣装とサングラスで歌手に化け、クラブ「キャセィ」で歌っていた。

歌い終わると、弓子は気に入ったようで、酒を渡してくれ、しっかり稼いで頂戴と励ます。

廊下に出た弾五郎は、悦子とばったり出会う。

香車さんでしょう?と笑って話しかけて来た悦子は、「GARDA」が改装工事中、移って来たのと教えると、海を観に行かない?と誘って来る。

夜の港にやって来た悦子が、5人もホステスが移っていると教えると、容疑者リストの中に江波って言う電器屋いるだろ?あれ、元無線係だと弾五郎も情報を与える。

でも、事件当日、お得意さんにテレビを届けていたと言うアリバイがあるのと悦子が教えると、その相手は「キャセイ」のママだ。パーティ名目で人を集めていると弾五郎は言い、暗闇に紛れ、悦子にキスをする。

弾五郎は、ご免な。今の間違いだから、気にしないでくれ!と悦子に告げて、立ち去りかけるが、そこに山本部長刑事がいることに気づく。

山本は、野本の電話の相手は「キャセイ」のママの弓子に違いないと教え、昔から、頭のええ刑事は、悪人使って捜査させるんやと自慢する。

弾五郎も、デカにして奥には惜しいよと世辞を言う。

伝書鳩やマリ子が外で見張っている中、弾五郎はとあるカジノに潜入していた。

やがて、そこに、弓子と鼻の曲がった権田原哲夫(成田三樹夫)が連れ立ってやって来る。

伝書鳩は、あの男は旦那の所の運転手よとマリ子に教える。

弓子の亭主である金山と連れ立ってカジノにやって来た権田原は、生首政(守田学)相手に、カードゲームをしている弾五郎に気づく。

弾五郎は、あっさり政とのゲームに負けてしまうが、カウンター席に座っていたアパッチの隣にやって来ると、やっぱりイカサマだった。袖口にエースを2枚隠しているとこっそり話す。

二階に上がって行く女の様子を監視していたアパッチは、皆「キャセイ」の女ですよ。時間差をつけて男たちも上がって行き、降りて来るときも女とは別々。だが男たちはみんなすっきりした顔して降りて来る…と、二階で売春が行われていることを匂わせる。

弾五郎は、店の隅で酒を飲んでいる悦子に気づくと、近づいて行って、ここでは本物の酒も出してるのか?と言って、そのグラスを取り上げると、カクテルの中身をカウンターの中に捨てる。

その時、マリ子が花売り娘に化けて店内に入って来るが、店員が追い返そうとしているので、弾五郎が全部買ってやると言い、3000円で全部の花束を買って、アパッチの所へ戻って来る。

花束の中には、「キャセイのママきた 鼻曲がりは2人の運転手」と書かれたメモが入っていた。

気がつくと、悦子の姿が消えていた。

先ほどの酒に眠り薬が仕込んであったらしく、正体をなくした悦子を、政らがカジノ部屋から外に運び出していた。

権田原は政に、婦人警官に違いないので、香車の目につくように運び出すんだと、罠にするよう命じる。

弾五郎は2階に上がり、各部屋の鍵を工具を使って巧みに開けては中を覗き込んで、悦子を探していた。

全部の部屋で、男客と「キャセイ」のホステスがベッドインしていたが、悦子の姿はなかった。

外の駐車場で隠れていたマリ子や伝書鳩は、政たちが、気を失っている悦子を車に乗せ、どこかに向かって走りだしたのを目撃したので、ジョニーが1人で車で後を追うことにする。

残っていた伝書鳩とマリ子の元に、弾五郎とアパッチが戻って来るが、ジョニーが1人で追って行ったと聞くと、奴の手に負える相手じゃないと弾五郎は心配する。

近くに停まっていた車の中で、そんな弾五郎の様子を監視していたのは花村たちだった。

花村は、逃がすんじゃないぞと子分たちにハッパをかけていた。

弾五郎は、また、建物の中に戻ってみるが、政たちに捕まり、部屋の中に連れて来られる。

勝手に2階を嗅ぎ回りやがって!と言いながら殴り掛かって来たので、弾五郎は暴れ始める。

そこにアパッチも駆けつけて来て、一緒に殴り合いに加わる。

政を捕まえた弾五郎は、どこに連れて行った?と机の上に政の身体を押さえつけると、二度とポーカー、出来ねえようにしてやると言いながら、電話の受話器を取り上げると、それで政の手を潰そうとする。

政は観念し、ガタピシャ!何もかもなくなっちまうんだと答えたので、弾五郎は「カーベキューか!」とピンと来る。

3億円の輸送車もあれで潰したのか?乗っていた人間は?人間もあれで潰したのか?!あの鼻曲がり…と弾五郎は嫌悪感をむき出しにした顔になる。

その頃、捜査本部では、若林婦警が誘拐されたらしいことに気づいていた。

発信器を渡しておいたので、ずっと本部内のレーダーで、彼女の現在位置を追跡していたのだ。

山本部長刑事らはすぐさま救出に向かう。

一方、弾五郎も車で山間のスクラップ工場へ向かって走りだすが、その背後から、花村たちが乗った車が追跡する。

カジノの建物に残って、その様子を観ていた金山と弓子は、巧く行ったわね。これで香車も、罠にかかった狐のようなものだと笑いあっていた。

山本刑事らを乗せた刑事車両は、山道にさしかかった当たりで、通行止めに出会う。

何があった?と降りて、その場にいた白バイ警官に聞くと、この先でタンクローリーが横転してこれから先は行けないと言う。

三宮の山本だが…と告げると、歩いた方が早いかもしれませんと言うので、他の刑事たちも一斉に車を降りて外に出るが、その途端、白バイ警官と思っていた連中が襲って来る。

弾五郎は自分で運転していたが、この車スピードでないなとぼやいていた。

しかし、同乗していたアパッチが180km出ていますよと教え、後部座席の乗っていた伝書鳩とマリ子は青ざめていた。

やがて、彼らも、白バイ警官らの通行止めに引っかかる。

タンクローリーが横転して…と聞いた弾五郎は、それはいつのことだ?と聞くと、1時間ほど前からだと警官は答える。

次の瞬間、弾五郎は、こいつら偽物だと言いながら、白バイ警官らを叩きのめして行く。

1時間も前から遮断されているのなら、もっと車の列が続いていなければおかしいと、アパッチに説明する弾五郎。

山本部長刑事と、目覚めていた若林悦子婦警は、共に、夜の山間のスクラップ工場内の事務所の中で縛られていた。

鼻曲がりの権田原は、あの機械は1回動かすたびに金がかかるんだなどと2人に教え、トランシーバーで、偽白バイ警官の江波に首尾を聞こうと連絡するが、何も返事がない。

異変を察知した権田原は、室内の電燈を壊して消すと、事務所の窓から、そっと外の様子をうかがってみる。

並べられている廃車の中に、弾五郎らが乗った車が来ていることに気づいた権田原は、猟銃を発射して威嚇するが、弾五郎は、もう逃げられんぞ!機動隊がそこまで来ているんだ!と噓を叫ぶ。

しかし、権田原は信じず、はったりだ!お前1人だけだろうと叫び返す。

出て行ってやる!と言い出した弾五郎が車の影から姿を現すと、権田原は銃を撃って来る。

その時、花村一家が乗った車がやって来る。

事務所で縛られていた山本も、止めんか!機動隊が来とるんだと権田原に言い聞かそうとするが、香車の一味に違いないと断定する。

こんな蛇の生殺しのようなのは嫌いなんだとマリ子らに言い残した弾五郎は、闇に紛れて事務所へ近づく。

権田原は、花村たちの車目がけて銃を撃って来て、背後の廃車が爆発する。

それにビビった花村たちも応戦して来るが、全員、権田原の銃弾に倒されて行く。

その間、夢中で打ち続けている権田原の銃口の真下の位置まで近づいた弾五郎は、やった!やった!ざまあ観やがれ!と敵を全滅させたと思い込み、権田原が喜んだ隙を狙い、猟銃の引っ張って、権田原の身体を窓から外に引きずり出すと殴りつけ、権田原!金はどこや?もう使い道ないんやと聞く。

しかし、捕まった権田原はへらへら笑いながら、いくら騒いだって無駄だ。金なんか見つかりっこないと嘲る。

すると、弾五郎は、生きながらポンコツになる気持ち思い知らせてやると言うと、権田原を引っ張って、スクラップ機械の方へ行こうとする。

それは人殺しやないか!と、紐を解かれた山本は必死に止めようとするが、そこに権田原の銃を拾ったマリ子がそれを山本らに向けながら事務所に入って来ると、動くと撃つよ!私は賛成だね。こんな奴、ひき肉にしちゃいなよと弾五郎をけしかける。

さすがにビビった権田原は、命だけは助けてくれ!と懇願するが、弾五郎に引きずられて夜の闇の中に消えて行く。

やがて、スクラップ機械が始動した音が事務所に響いて来る。

助けてくれ〜!権田原の悲痛な声が届いたので、悦子は思わず両耳を押さえ、目をつぶる。

機械音が止み、山本は、とうとうやりよったな…。見損のうたな香車…と呟く。

その時、弾五郎が事務所に戻って来て、その背後から、蒼白になった権田原が付いて来る。

あんまり泣き叫ぶんで、止めた…と弾五郎は漏らす。

じゃあ、今の音は?と山本が聞くと、新車を1台潰して来たと言う。

お前まさか、3億円をねこばばしようとしてるんやないやろな?と山本が迫ると、俺は殺して取ったような金は欲しくねえよと弾五郎は答える。

それを聞いた山本は、さしうが香車や!と感心し、早よ言え!と3億円のありかを聞こうとする。

数日後、日本航空の旅客機が香港から戻って来る。

そこから降り立った長谷川久美子は、着物姿で空港内にやって来るが、そこに弾五郎が待っていたので感激する。

迎えに来てくれて嬉しいわと喜ぶ久美子に、早速渡してもらおうか。香港でドルに替えた3億円を…と弾五郎は伝える。

ドルに替えれば3億円だってかさばらない。その帯にでも縫い込んであるのか?と弾五郎は言うと、その背後から近づいて来た山本部長刑事が、長谷川久美子!3億円強盗犯人として逮捕する!と言い渡すと、同行の刑事が手錠をかけようとするが、それを押さえて止める弾五郎。

あんたって、やっぱり優しいのねと弾五郎に言い残した久美子は、刑事たちに連れられ歩き始めると、弾五郎の方を振り返る。

空港の外に出た弾五郎に、お前さえ堅気になってくれたら、三宮一の男になれるのにと山本は話しかけるが、弾五郎は無言のまま立ち去って行くので、あほんだら!とその後ろ姿に吐き捨てる山本部長刑事だった。