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終戦のエンペラー

外国人の目で観た全く新しい戦争秘話か?などと期待すると、見事に肩すかしを食ってしまう。

過去の日本の戦争映画等をある程度観て来た目で観ると、ここに描かれていることで特に目新しいものは何もない。

ものすごく乱暴に要約してしまうと、日本人プロデューサーがハリウッドスタイルで作り、第二次世界大戦における昭和天皇の立場を説明…と言うか、諸外国に対し言い訳している映画…と言う風に見える。

もちろん、実際のことは我々には知る由もないのだが、証拠を挙げ、きちんと万人に真実を暴いてみせたと言う風に見えない以上、何となくモヤモヤしたものが残ってしまうと言うことだ。

昭和天皇が、戦後も人間宣言をなさった後、天寿を全うされたことは誰でも知っている事実である。

と言うことは、この映画は、最初から結末が分かっている歴史のある部分を暴こうとしている訳なのだが、常識的に考えて、日本人でさえ、まず会う機会などない天皇のことを掘り下げて描けるはずもないし、悪く描くこと等、興行面から言っても最初からあり得ないだろう。

つまり、この作品は、結末の方向性も最初から予想できる範囲のものであり、そこに意外性やサスペンス性等を期待すべくもない。

これは、日本人にとってもそうだろうし、海外で公開されても観客の反応は同じだろう。

諸外国、ましてや、第二次世界大戦時、日本と戦った国の人たちがこれを観て、心底納得するとはとても思えないのだ。

日本文化の独自性とか、天皇の独特の立場等、本当の所は日本人でも良く分からないのだから。

劇中でも、真相は最後まで掴めなかったと言う風にぼかしたままであり、その他の部分は、主人公と日本人女性との悲恋と言う、ありふれていて甘ったるい「お涙ロマンス要素」で埋められている。

玉音放送用の録音盤を巡る攻防等もちらり登場するが、「日本のいちばん長い日」(1967)などを観ているものからすると、圧倒的にもの足らない。

そもそもこの作品、廃墟となり降伏した日本の戦争責任を、統治国であるアメリカ側の視点から追求する体裁になっているが、裁判等は一切描かれていないので、基本的にアクションもなければ緊迫感もなく、映画的な見せ場らしいものがほとんどない。

テレビのスペシャルドラマ程度の内容しかないように思えるのだ。

日本びいきの主人公が、日本人に好意的な解釈をし、何となく「日本人に都合の良い結末」に曖昧に持って行くと言う、いかにも日本人プロデューサーの日本人向けサービス映画にしか見えない所がこの作品の底を浅くしてしまっているように思える。

日本人観客としては、どんなに当時の中枢部にいた人物が登場しようと、大半は実在の人物として登場させている以上、「天皇を貶めるような発言が出て来るはずがない」と言う予感めいた思いがあるので、登場人物の発言に(内容の真偽はともかく)意外性や驚きが生まれない。

巷間、ものすごい名君と言われた人物の意外な裏の素顔とか、ものすごい悪人と言われている人物の意外な人間味等と言う、表面上のイメージとのギャップを描かないと、ドラマとしては魅力はないだろう。

そうした大胆な仮説を作れないのだったら、最初から、こうしたテーマに近づかないのが賢明だったのではないかと思う。

予算も、ハリウッド映画としてはかなり少なかったのか、VFX処理等も日本製か?と思ってしまうような薄っぺらさが見受けられる。

地味ながらも、見応えがある映画とも感じなかった。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2013年、アメリカ映画、岡本嗣郎原作、デイヴィッド・クラス+ヴェラ・ブラジ脚本、ピーター・ウェーバー監督。

※いつもながら曖昧な記憶に基づいて書いていますので、細部の記述には間違いがある可能性があります。実在の人物なども登場しますが、敬称は略しています。

1945年8月6日 テニアン島を飛び立ったB-29「エノラ・ゲイ」は、広島に原子爆弾を投下する。

日本は降伏した。

連合国は、現人神と崇拝されていた天皇を戦犯のリストに入れるかどうか健闘することにした。

タイトル

1945年8月30日

ダグラス・マッカーサー(トミー・リー・ジョーンズ)は、日本の厚木飛行場に向かう専用機に乗っていた。

日本通としてその機に同乗していたボナー・フェラーズ准将(マシュー・フォックス)は、日本人の恋人だったアヤ(初音映莉子)のことを思い出していた。

竹林の中で真っ赤なワンピースを着たアヤが微笑んでいる。

フェラーズ准将は、マッカーサーから呼ばれ、2000人の日本兵が待っているらしいと相談されるが、フェラーズは、日本独特の方法ですと安心させる。

マッカーサーは、ワシントンに心配無用と伝えるよう通信係に指示を出すと、今こそ、米国人のお琴っぷりを見せつけようと言うと、到着した機体から、サングラスをかけ、コーンパイプをくわえた姿で降り立つ。

そこには、待ち構えていた記者たちが一斉に写真のフラッシュを焚く。

史上最悪の戦争は終わった。我々は支配者だ。だが、日本人には、支配ではなく、解放されたように見えなければならないとマッカーサーは言い車に乗り込む。

マッカーサーが乗り込んだ車が走り出すと、道の両脇に数mごとに立っていた日本兵が、車が通り過ぎる直前に、次々と回れ右して背中を見せていく。

フェラーズ准将は、天皇を観ないのと同じ最高の敬意の表現ですと教える。

廃墟と化した東京の町を車は通り過ぎて行く。

マッカーサーたちは、皇居の方向に向いた東京都千代田区有楽町の第一生命館に「連合国最高司令官総司令部(GHQ)」を置く。

フェラーズ准将は、A級戦犯の逮捕の任務が与えられた。

日本人は、捉えられる前に自決をする可能性があるため、急を要する任務だった。

ただちに、逮捕する人物たちを絞り、部下に手分けして逮捕に向かわせたフェラーズ准将は、お抱え運転手兼通訳として挨拶に来た高橋(羽田昌義)に、個人的にアヤの居所を探すように依頼する。

東條英機の自宅の門を入ったフェラーズたちは、邸内からの銃声を聞き、慌てて中に侵入するが、前首相東條英機(火野正平)は書斎で拳銃自決していた。

間に合わなかったかと思われたが、腕を取ってみるとまだ脈があったので、軍医を呼ぶ。

東條は、うわごとのように、死に遅れてすまないと言っていると伝え聞いたフェラーズ准将は、名誉の考え方が自分たちとは違うことを知る。

東條は、何とか命をとりとめたようだった。

39人の戦犯のうち、何人かが自決していた。

翌朝、その報告を聞いたマッカーサーは、10日以内に結論を出せとフェラーズ准将に命じる。

以前の来日は?とマッカーサーから聞かれたフェラーズ准将は。5年前ですと答え、それを聞いたマッカーサーは、辛いだろうが任務だ。ワシントンのアホなどどうでも良い。日本の再興だ。天応を裁判にかけると言うことは、火薬庫に火を放つも同じだとマッカーサーは言い聞かせる。

天皇制が崩れると、共産主義が入り込みますと進言したのは、同じく戦犯逮捕から戻って来たリクター少将(コリン・モイ)だったが、そのリクターに座を外させた後、マッカーサーはフェラーズ准将に、君は親日派だ。天皇を放免させるか逮捕するかを、文書にして報告しろと命じる。

第一生命館から出て来たフェラーズ准将は、車で待っていた高橋に歩くと言って、1人で夜の街に出かけようとしたので、高橋は危険ですと警告するが、フェラーズは気にせず、1人で焼跡の方へと向かう。

フェラーズは、今、天皇を処刑すれば、国民は一触即発の状態にあると感じていた。

やがて、焼跡の後に作られた飲み屋入り、酒を飲み始める。そこで出来る食べ物と言えばうどんだけだった。

(回想)1932年 ダグラス大学

そこではじめて会ったアヤが落とした紙を拾ってやったことが縁で、フェラーズは彼女に一目惚れし、ある晩、ダンスに誘った若き日のフェラーズだったが、ダンスホールに行くと、騒がしいダンスをやっており、アヤが入るのを躊躇していたので、別の所へ行こうと言い、そのまま屋外でアヤとダンスを踊る。

君は勇敢だ。たった1人でアメリカに来るなんてとフェラーズが褒めると、アヤは、私は積極的過ぎるの…、日本人にしては…は恥ずかしそうに答える。

(回想明け)翌日

フェラーズの元にやって来た高橋は、アヤが住んでいたアパートは爆撃を受けて今はないと教える。

それを聞いたフェラーズは、アヤは静岡で代用教員をやっていたはずだと高橋に教え、更なる調査を依頼する。

本部では、天皇を調べるために、軍人、宮中の職員など、いくつかのグループ分けで該当者を選び、1人でも多くの尋問をするつもりだとフェラーズは部下たちに伝える。

しかし、該当者の居場所を見つけるのは容易ではなかった。

通りが爆撃で消滅した町は、何も期待できなかった。

側近を入れて32人に絞られたが、日本人は内通者であっても信用できなかった。

フェラーズは、味方がダメなら、敵に会おうと言い出す。

巣鴨プリズン

東條英機は命をとりとめ、処刑前に手当も十分にされていた。

東條に対面したフェラーズ准将は、あなたは絞首刑になる。このままでは天皇も同じ目にあうが、それを避けたいのであれば、3名の署名が必要ですと伝える。

東條は素直に、証言をしてくれそうな3名の氏名を書く。

その中に、近衛文麿(中村雅俊)の名あったので、さっそく面会の手配をフェラーズは部下に命じる。

近衛の家に行ったフェラーズは、靴のまま上がってくれと勧められ、その言葉に従う。

近衛は、自分は開戦直前に首相を辞任した人間だし。陛下は平和主義者ですと言い出したので、しかし真珠湾を攻撃したとフェラーズは反論する。

陛下は巻き込まれたのですと近衛が言うので、天皇は止めえたとフェラーズがまたも反論すると、真珠湾攻撃の3ヶ月前、自分はアメリカ大統領と接触して、戦争を止めようとしたが、軍部が聞き届けなかったと言う。

さらに近衛は、日本は欧米がやっていることと同じことをしただけなのです。日本がやったことは、アジアを植民地化していた欧米とどこが違うのでしょう?あなた方を手本にしたに過ぎないとフェラーズに問いかけて来る。

近衛は木戸幸一に会うようフェラーズに勧める。

後日、木戸は、司令室から離れた料亭を面会場所に指定して来た。

しかし、約束の時間になっても、木戸は現れなかった。

(回想)フェラーズはある日、アヤの下宿先に彼女を迎えに行くが、家の主婦から、下の時は今朝帰国したと知らされる。

(回想明け)フェラーズは、通訳として同席していた高橋に、彼は来ないんだな?と問いかけると、高橋も、はい、彼は逮捕を恐れたのですと答える。

フェラーズは、こう伝えろ、天皇が処刑されたら、木戸のせいだと腹立ち紛れに言うと、本部のマッカーサーには、木戸を捜査中ですと伝える。

マッカーサーは、玉を掴んでも連れて来い!と下品な表現で命じる。

フェラーズは直ちに、重要人物を洗い直せ!と部下たちに命じる。

あの日、天皇は海軍の服を着てサインをしたはずだ。日本人は矛盾に満ちている。天皇を処刑したら、アメリカ政府は喜ぶ。近衛の言う通り、日本では白黒がはっきりしない…、何事も謎だ。

フェラーズは、また1人、東京を歩き、遊郭のような場所に来てしまう。

(回想)1940年 東京

フェラーズは、フィリピン勤務の途中に来日して、アヤに会いに来る。

代用教員をしていたアヤは、そんなフェラーズを歓迎せず、もう来ないで!と言うだけで、教室に入ってしまう。

彼女は英語の授業をしていた。

その間も、窓の外を観ると、まだフェラーズが立ち去らずにいたので、別の女教師が、島田先生、警察呼びますよ!と相談に来る。

その必要はありませんと女教師を制止したアヤは、フェラーズの元へ行き、少し話し相手をしてやることにする。

アヤは、父は私に約束させた。アメリカ人と結婚しないと…。その父親が他界したので、私は帰国したのですとフェラーズに伝える。

(回想明け)マッカーサーはある日、部下たちを集めパーティを開いていた。

日本を軍国主義から解放したい!とマッカーサーは、みんなの前で挨拶する。

フェラーズが建物を出て、庭先で立っていると、お前さんはマッカーサーに利用されているぞと、同じように外に出て来たリクター少将が囁きかけて来る。

マッカーサーは名誉を尊ぶ男で、近々、大統領選に出る気だ。

アメリカ国民の望みは天皇の処刑だ。正義のためだとリクターは助言する。

フェラーズは、報復と正義は違いますと言い返す。

マッカーサーは、天皇を助けて、それを君のせいにするんだ。君は日本びいきだからね…とリクターが訳知り顔で言うので、フェラーズは気分を害し、その場を離れようとするが、その背中にリクターは、騙されるなよと言葉を投げかけて来る。

建物の中では、マッカーサーが、リクターの言葉を裏付けるかのように、新聞記者たちの前でポーズを取り、何枚の写真を撮らせていた。

高橋に会ったフェラーズは、あの写真を他のものに見せたか?と確認するが、高橋は否定し、静岡の方も9ヶ月前、空襲を受けて、大部分が焼け落ちましたと報告する。

遠いのか?とフェラーズが聞くと、車で3時間と高橋が言うので、その場から静岡まで出かけてみることにする。

夜、高橋が運転する車は出発する。

(回想)その後も、フェラーズはアヤに会いに来るが、アメリカ人と知った男子学生が石を顔に投げて来たりする。

アヤは、下宿先でその傷の手当をしながら、軍の教えはアメリカ人を憎めです。軍は人の心まで変えたいの。英語の勉強も禁止されたので、生徒が減ったわと嘆き、とても心配だわ、子供たちみんなのことが…と案ずる。

そんなアヤの手に、フェラーズはキスをし、やがて2人は抱擁してキスをする。

(回想明け)夜中、静岡のアヤの親戚の家に到着したフェラーズは、空襲で残骸と化した屋敷の中に分け入って行く。

アヤの親戚のリストが欲しいと申し出ると、高橋は死者のリストならありますと答える。

翌日も、マッカーサーは、記者らに得意げにポーズを取り写真を撮らせていた。

(回想)アヤは、日本の研究を始めようとしていたフェラーズに、自分の叔父が大将なので、力になるわと教えていた。

フェラーズは早速、アヤと列車に乗り、その叔父の住む家を尋ねる。

車中、アヤはフェラーズに、窓から見える山を眺めながら、子供の頃、叔父はあの山に巨人がいると教えてくれたわと懐かしそうに話す。

車で、叔父の家に到着すると、叔父の妻(桃井かおり)が2人を出迎えてくれた。

叔父の鹿島は、英語で、2年ほど前、ワシントンに駐在赴任していたと言いながら顔を見せると、息子2人に挨拶をさせ、下がらせると、アメリカは石油輸出を禁止して、日本の弱体化を狙っている…などと鹿島は話すが、そんな話は明日にして、今日は酒を飲もうと言って来る。

翌日、日本兵は根底から考え方が違う。もしアメリカと戦争することになれば勝つ。天皇に従うからだと鹿島はフェラーズに話す。

(回想明け)フェラーズは、天皇に一番近い立場にいると思われる宮内次官の関屋貞三郎に会おうとするが、皇宮警察に守られている皇居に入るのは至難の業だと知る。

フェラーズは、マッカーサーに相談し、関谷に会えるよう指令書を書いてもらう。

それを携えて、通訳係の高橋も連れ、皇居に出かけたフェラーズは、皇宮警察の隊長に、その指示書を手渡す。

それを読んだ隊長は、内部に電話確認をした後、フェラーズだけに入ることを許し、武器は外せと命じる。

フェラーズは、腰の拳銃を高橋に預けると、1人で皇居内に入る。

関屋貞三郎(夏八木勲)は、開戦前後の陛下のことを聞きたいと申し出たフェラーズに、陛下は通常、政治的発言はなさいません。御前会議の時、陛下はおじいさまの詠まれました歌を、ふいに詠まれました。

それは、短歌のことか?とフェラーズが確認すると、関屋はイエスと肯定し、「四方の海 みなはらからと 思ふ世に など波風の 立ちさわぐらん」と自ら詠ってみせる。

これは、世界中はみな仲間だと思うのに、何故、波風が立つのだろうと言う意味であり、争いを好んでおられなかった陛下のお気持ちを、直接的な表現を使わずに表現なさったのですと関屋は説明する。

フェラーズは、釈然としない気持ちのまま辞去するしかなかった。

その後、また、例の飲み屋でビールを飲むことにしたフェラーズだったが、奥のテーブルにいた日本人客たちが、アメリカ人と気づいて、つまみの豆をぶつけて来たりして嫌がらせをする。

フェラーズは、自らの焦燥感のはけ口を探していたこともあり、相手に近づくと、そのテーブルをひっくり返し、日本人たちと喧嘩を始める。

店主のおばさんは、止めろ!何やってんの!と止めるが、フェラーズは日本人から顔を殴られてしまう。

顔に痣を作ったフェラーズは、雨の中、とぼとぼと帰路につくが、その横に、高橋が運転する車が近づいて来て、乗ってくださいと声をかけて来るが、フェラーズはそんな高橋の言葉に従わず、お前に家族はいないのか?と罵声を浴びせる。

本部の自室に帰って来て、顔を拭いたフェラーズは、また、アヤの叔父、鹿島の言葉を思い出していた。

(回想)神道を理解すれば日本人が分かると鹿島は言う。

日本には「本音」と「建前」があり、西洋とは違うと力説していた。

(回想明け)フェラーズは、自宅で深夜、ウィスキーを飲みながら、タイプで報告書を打っていた。

そんなフェラーズの部屋を訪れた高橋は、木戸が会いたいと言っている。木戸を見つけたんです!と教えに来る。

酔っていたこともあり、最初は、その言葉をきちんと理解できないフェラーズだったが、すぐにその重大性に気づくと、木戸に合うことにする。

木戸幸一(伊武雅刀)がやって来たので、フェラーズは、お会いできて光栄ですと丁寧に出迎える。

高橋は、木戸に随行して来た護衛らしき2人に、部屋の前でお待ち下さいと頼む。

その頃、マッカーサーは、フェラーズ准将が、日本爆撃計画の中から静岡を避けさせたいと密かに手を回していた事が分かったとリクター少将から報告を受けていた。

木戸は、8月9日の真夜中の御前会議で、降伏するかの話し合いが行われたが、意見は3対3でまっ二つに割れ、阿南陸軍大将などは最後まで、降伏だけは…と抵抗していたとフェラーズに話していた。

結局、陛下は、国民にご自身で語りかけると申し出られ、その玉音放送の事を知った一派が、放送を阻止しようと動いたが、録音盤は発見できず、木戸らは地下室に逃げ延びていて助かったと言う。

それを聞き終えたフェラーズは、証拠が必要だ…と呟くが、書類は全部燃やされてしまったと木戸は答える。

木戸は最後に、陛下は神として崇め奉られておられたが、現実は、何一つ自由がない生活を強いられておられた。その陛下が軍国主義者たちに立ち向かわれたのです。

帰って行く木戸を窓から観ながら、天皇への盲従とも言い切れない…と木戸証言を鵜呑みにすることをためらっていた。

フェラーズはその場にいた高橋に、先ほどの無礼な発言を詫びる。

高橋は、家内は東京空襲で亡くなりました。自分も死のうと思ったこともあります…と打ち明ける。

フェラーズはその日、自分で運転すると言って、ジープに乗り帰って行く。

(回想)鹿島は、警察がうろついている。君は帰りなさいとフェラーズに知らせる。

フェラーズは、アヤ!と呼びかけるが、鹿島は、無理な願いだと首を振る。

フェラーズが乗り込んだ車を、門前で見送っていたアヤだったが、車が走り出すと、私も連れて行って!逃げないで!と車を追おうとするが、それを鹿島が引き止める。

(回想明け)フェラーズは、その鹿島と再会していた。

鹿島は、自分は戦時中、サイパン、沖縄など激戦地で司令官だったと告白する。

任務だったが、人間性を失っていたとも打ち明ける。

鹿島は、又日本人論を語った後、小さな箱を持って来ると、中味はみんな君宛てだと言う。

蓋を開けてみると、中に入っていたのは、フェラーズへの手紙を綴った紙や栞の束だった。

「あなたは幸福を下さったが、私の選択は敵わなかった。結局、ここが私の居場所…、愛を込めて aya」

そうした言葉が書かれた紙の束を、そっと手で抱え上げたフェラーズは泣き出す。

フェラーズは、床の間に置かれていたアヤの遺影に線香をあげる。

そこには、初めてこの家に来たとき出迎えてくれた鹿島の妻と、軍服姿の息子たちの遺影も置いてあった。

立派な死だった…と鹿島が呟く。

本部に戻ったフェラーズは、報告書を打ち上げる。

翌日、東京湾で、日本軍の兵器の廃棄処理を見学していたマッカーサーは、その場にやって来たフェラーズが差し出した報告書に目を通すが、証拠がないと指摘する。

フェラーズは、仕方ありません。天皇を有罪にする理由がないんです。降伏するなら天皇制を存続させると言う条件のもと、彼らは降伏した…と答えるしかなかった。

それなら会おう、ワシントンに電話する前に…と、いきなりマッカーサーが言い出す。

日本の今日は昨日のワシントンだと、マッカーサーは両国に時差があることを指摘する。

しかし、その知らせを受けた関屋は、陛下はうかがいません!と拒否する。

それを知った高橋は、マッカーサー陛下の公邸なら?と提案する。

天皇が「GHQ」に出向くと言う形ではなく、社交上の訪問と言う形ならいけそうだとフェラーズも考える。

関屋は、渋々その提案に従うことにするが、陛下は英語をお話になるが、一応通訳もつかせること。外国人の家を訪問なさるのは始めてであること。陛下は握手をなさいません。陛下の目を観たり、名前を呼んでは決していけませんなど、こまごまとした条件を言って来る。

そうしたことを聞いたマッカーサーは、初めて神と会う…とフェラーズに告げる。

その際、フェラーズは、ある人を守るために、自分が日本空爆計画の中から静岡を除外するよう手を回したことを正直に打ち明ける。

マッカーサーは、そのことはリクターから聞いたが、今更蒸し返す必要もないし、リクターはお払い箱だと言ってくれる。

後日、昭和天皇は車で、フェラーズや高橋も待ち構えていたマッカーサーの公邸にやって来る。

家に入って来た昭和天皇(片岡孝太郎)に、待っていたマッカーサーは自ら手を差し出し、陛下もそれに応じて握手をなさったので、随行して来た関屋宮内次官は驚き、いけません!と制止しようとするが、マッカーサーはそんな言葉に耳を貸さず、あらかじめ用意していたカメラマンに、天皇と並んだ写真を撮らせる。

関屋は狼狽し、止めさせようとするが、昭和天皇はそんな関屋を下がらせる。

フェラーズも退室するが、その際、ドアを少し開けて、中の様子を聞くことにする。

マッカーサーと2人きりになった昭和天皇は、全ての懲罰は私1人で受けますと申し出られる。

マッカーサーは、そんな天皇に感謝し椅子を勧めると、これは懲罰とは関係ありません。陛下、陛下のお力が必要です。我々は共に、日本の再興の為に尽くしましょうと提案する。

それを聞いたフェローズはそっとドアを閉める。

(回想)竹林の中で、赤い服を着たアヤと会っていたフェローズは、その場に寝転んで、青空を見上げていた。

(回想明け)屋敷の外に出たフェローズは、宿舎へと言葉をかけて来た高橋に、今日は飲もうと誘う。

廃墟と化した東京の中を走る車。

この後、東條英機は絞首刑に処せられた。

近衛文麿は服毒自殺をする。

木戸幸一は、死刑を免れ、終身禁固刑になるが、晩年病死。

関屋貞三郎は、一切責任を問われなかった。

ボナー・フェラーズは、後に、日本政府より、勲 二等瑞宝章を受ける。

ダグラス・マッカーサーは、日本最高には成功したが、大統領選には失敗した。

昭和天皇は、戦後、人間宣言した後、1989年まで在位した。