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空かける花嫁

老害になりつつある祖父と孫娘が、互いに相手を幸せにしてやろうとあの手この手の作戦を実行しあい、結果思惑とは別の方向に行ってしまう顛末を描いたユーモアもの。

少なくとも、この時代の松竹喜劇は、後年ほどベタベタしたお涙頂戴ではないし、からっとしているのが心地よく、今観てもそこそこ楽しいのだが、この手のものは、映画人口が多かった時代ならともかく、今の時代だと地味過ぎて、まず客があまり入らない種類の映画のような気がする。

テレビの出現で松竹が大打撃を受けたのも、こうした大船調と呼ばれた地味なホームドラマやコメディのようなものを好む女性層と年配層が、ごっそりテレビの方に移行したためらしい。

当時の松竹も、この映画の七兵衛のような老害ムードが会社内にはびこっていたらしく、その後、新しいことにおっかなびっくり取り組もうとするが、急に巧く方向転換が出来るはずもなく、結局保守派路線に戻ってしまい、徐々に往年の勢いを失って行ったような印象がある。

この作品では、ヒロイン役の有馬稲子さんが、終始ものうげな表情と言うか…、暗い顔をしているのがミソのような気がする。

彼女が恋と向学心の間で悩んでいると言う設定だし、しかも、負けん気が強いため、妙に意固地になる傾向があり、これが後半のサスペンスを生んでいる。

特に、ラスト間際の展開は、正に手に汗握る…と言っても過言ではないほど見事などんでん返しになっているだけではなく、単純なハッピーエンドではなく、この後どうなる?と言う想像力をかき立てるような締め方になっているのに感心する。

今の感覚としてちょっと気になるのは、この映画には、いわゆる「二枚目」が登場していないことだろう。

コメディとは言え、恋愛絡みの話なのに、これはどうしたことだろう?

分かり易い娯楽映画だけに、記号的な二枚目が恋人役になるのが普通のような気もするが、まるめのお相手役の高橋貞二さんは、どう観ても脇役顔の方。

リアルと言えばリアルなのだろうが、当時の女性ファン等は、このキャスティングに疑問は持たなかったのだろうか?

タイトルや内容からして、若い女性層がターゲットはずなのだが…?

地味とは言ったが、今の地味な低予算映画とは違い、金をかけるべき所は一応ちゃんとかけているようで、画面からチャチな感じは全く受けない。

セット撮影も丁寧だし、屋外ロケもきちんと撮られている。

特に、当時の浅草近辺の風景が珍しく、この当時はまだ賑わっていたことが良く分かる。

お金にまつわる話なので、当時の物価が随所に出て来るのも興味深いし、大学4年生のまるめは、現役合格だとすると22歳くらいのはずで、それから渡仏し3年経つと、もうお嫁の貰い手がいなくなるかもしれない等と心配している所等も時代を感じさせる。

ゲストとして、シャンソン歌手丸山(美輪)明宏、ロカビリー歌手山下敬次郎、ジャイアンツの水原監督等が登場しているのも、今となっては貴重な映像である。

この当時の美輪さんは、濃い眉も凛々しい、普通にハンサムな顔立ちの男性で、服装もタキシード姿だが、腰をくねくねさせるセクシーな動きで「メケメケ」を歌う様は、後年のジュリー等に相通ずる不思議な色気を感じさせる。

柳家金語楼さんの息子さんである山下敬二郎さんも若い!

水原監督の登場も、唐突と言えば唐突なのだが、映画動員目的の出演だったと言うことだろう。

 

ちなみにこの作品のタイトル、キネ旬データでは『「花粉」より 空かける花嫁』となっているが、画面上には「空かける花嫁」としか、出て来なかったような気がする。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1959年、藤沢桓夫「花粉」原作、館直志+笠原良三劇化、番匠義彰監督作品。

赤い地に白地でタイトル

人形劇をバックに、「お江戸日本橋」をアレンジしたようなテーマ曲と共にスタッフ、キャストロール

東洋女子大の構内にある掲示板の前に集まった数人の女子大生。

掲示板に貼られていた「第5回文部省 フランス留学試験合格者 4年 七宮まるめ」と書かれた通知を読み、親友のまるめが自分たちには教えなかった罰として、とっちめてやろうか?などと盛り上がっていた。

その頃、喫茶「ボンジュール」でお茶していたまるめにルームメイトの塩見和枝(小山明子)は、七宮商店の娘だからお金の心配はないわね。私なんか、バーに勤めながら大学行っているのにと羨んでいたが、旅費とか結構かかるし、うちのおじいちゃんが頑固だからと、当のまるめは浮かぬ顔。

そこに、先ほどの友人たちがやって来て、これまで黙っていた罰として何かおごって等と言い出す。

和枝は、そんな不経済なことやらないで、私たちのアパートへ来ない?みんな持ち寄ってと提案し、みんなそれに賛成する。

そんな喫茶店にスクーターでやって来たのは、「七宮商店」の半纏を着た店員の山田(桂小金治)で、見せの中に入って来ると、勝手に和枝の水を飲みながら、お店にお嬢さんを連れて来いって言われて来たとまるめに伝える。

おじいちゃんが?今日ご機嫌悪い?とまるめが、祖父のことを聞くと、今日は店の前で、車とうちのオート三輪がぶつかったりでご機嫌悪いですと聞くと、憂鬱そうな顔をしながらも、山田について行くことにする。

店の前に出て、山田のスクーターに乗ろうとしていた時、声をかけて来たのは、ベレー帽をかぶったフランスかぶれの助教授、本間練之(須賀不二男)だった。

フランス留学決まったんだって?おめでとう!と近づいて来た本間は、ちょっとした祝いをしたいので、今日うちに来ないかと言う。

今日は約束があるので…とまるめが断ると、じゃあ、明日ならどうです?僕がフランスに行ってきた話をしてあげましょうと勝手決めて去って行く。

まるめは、又もや浮かない表情になり、山田のスクーターの後ろに横座りになり、呉服屋「七宮商店」の店の裏の玄関先まで乗せて来てもらう。

家に入ると、母親のさよ子(沢村貞子)が出迎えるが、おじいちゃんは今、月給を渡している所だと言う。

七宮商店を一代で立ち上げたまるめの祖父七兵衛(志村喬)は、店員たちを1人ずつ部屋に招き入れ、給料を渡していた。

仕入部の池田(林家珍平)が入って来ると、べったり油を塗りたくった髪型に文句をつけ、一体油代に1ヶ月にいくら使っている?と聞くと400円だと言うので、2800円の給料のうち400円も使うのなら、その分貯金に回したらどうかとアドバイスをする。

次に入って来た対外部の田中(吉野憲司)を観た七兵衛は、君は太り過ぎだと注意する。

これで、全部かな…と金庫を閉めかけた七兵衛だったが、息子の吉太郎(十朱久雄)が、お父さん、私がまだですが…と、机の前に立って戸惑う。

お前は最近、小唄等やっとるらしいが、そんな暇があるのなら、算盤の一つでも覚えろ!と叱りながら給金を手渡す。

そこへ、お嬢さんが来られましたと言う知らせが来たので、相好を崩した七兵衛はいそいそと廊下に出るが、陰に隠れていたまるめが、横からわっと言って脅かし、会うたびに若くなっているわなどと見え透いたお世辞を言って来たので、何か魂胆があると分かりながらも、自室に連れて行き、お前のために羊羹買っといたぞ、1本90円もする上等なものだなどと自慢する。

まるめは、そんな七兵衛に、数千人に4、5人しか選ばれない文部省留学試験にパスして、フランスに行くことになったのだと伝える。

いつの間にか、両親もやって来てその話を聞いていたので、父親の吉太郎は、さすがに私の子だと自慢するが、七兵衛は、この子は私の血を継いどる、隔世遺伝と言うのだなどと自慢する。

うちに取っては名誉なことだとみんな喜び、まるめが、授業料は全部免除されるのだと言うと、ケチなことで有名な七兵衛はさらに喜ぶ。

しかし、旅費と生活費は自分持ちだけど、全部おじいちゃんに出してもらっては悪いから、自分がこの中の48300円は自分が出すわと、作って来た請求書を七兵衛に渡すと、羊羹を持ってさっさと帰ってしまう。

和枝と同居している「つぐみ荘」に帰って来たまるめは、「良く帰って来てくれたね!」と言う声を聞いて足を止める。

隣に住んでいる劇作家の秋山次郎(高橋貞二)が、新作の脚本のセリフを自分で一人芝居している最中だと分かり、そっとドアを開け中を覗き込む。

すると、案の定、秋山が、男女2人のラブシーンのセリフを1人で演じ分けている。

壁には、彼が所属している浅草の劇場「ペリカン座」のポスターが貼ってある。

入口でまるめが観ているのに気づいた秋山は照れるが、まるめは、あんな大きな声だしてたら聞こえるわと言い、自分用に持って帰って来た羊羹を手みやげとして秋山に渡す。

そして、自分の部屋に戻ったまるめは、どうだった?と首尾を聞いた和枝に、請求書だけ見せてすぐ帰って来たと教える。

その頃、算盤で、まるめから渡された請求書を勘定していた七兵衛は、その場に残っていた吉太郎に、円とフランのレートを聞き、総額約400万も出さなければならない事を知り唖然としていた。

しかし、お前たちが悪い。何とかあの子にフランス行きを諦めさせなさいと責められた吉太郎やさよ子は、自分たちにはどうしようも出来ない。お金は自分たちの自由にならないのだからと平然と言い返す。

それを聞いた七兵衛は、もう良い!私がきっぱり止めさせます!と宣言する。

「つぐみ荘」では、集まった女子大生たちが、陽気に歌を歌っていたが、隣室では、原稿を書いていた秋本がうるさがっていた。

その時、まるめと和枝の部屋のノックの音が聞こえたので出てみると、そこにいたのは七兵衛だった。

女子大生たちは、まるめに話しに来た七兵衛が送迎会に来たものと思い込み、勝手に七兵衛が手にしていたお土産の果物に礼を言うと、シャンパンを振るまい、また歌い始める。

その時、ドアの所にやって来た秋山が、うるさいと文句を言いに来る。

和枝は、そんな秋山も一緒に参加しないかと誘うが、秋山は締め切りがある仕事をしているのだと断る。

そんな秋山の態度を観ていた七兵衛は、いきなり秋山に、何かまるめに含む所でもあるのか!何千人に1人と言う試験に受かったんだ。下らんひがみ根性持った奴はすっこんでろ!と抗議し、秋山の身体を押し出す。

見直しちゃったわ、おじいさま!などと女子大生たちにおだてられた七兵衛は、調子に乗って、あんな若造に嘗めらない。景気直しに、私が国の歌でも歌うよと言い出し、ソーラン節等歌いだす。

そんな中、まるめは1人、浮かない顔をしていた。

部屋に戻った秋山は、毛布を頭からかぶって原稿に向かうしかなかった。

翌日、本間の家を訪れたまるめは、本間から、自分がフランスに行った時に撮ったスライドショーを見せられていた。

そんな本間に、いい加減にお食事にしたら?と不機嫌そうに言って来たのが、本間の妻のみを子(福田公子)、台所に向かうと、フライパンで料理を作っていた書生の折村秀夫(大泉滉)に、あんたはそんなことしなくて良いから、本間の側にいなさいと命じる。

仕方なく、折村は、本間とまるめがいる部屋に入り、奥様が先生の側にいるようにと言われまして、いないと奥様に叱られます…と申し訳なさそうに隅の方に立つ。

その時、本間を訪ねて来たのは、学生時代からの友人の秋山だった。

秋山は、そこにまるめがいることに気づくと、アパートの隣同士だと本間に教える。

秋山が帰ろうとすると、みを子が時々いらしてねと見送るだけではなく、門の所まで追いかけて来て、本間の浮気、何とか言って。今日もあんな娘を連れ込んで…、浅草の踊子からもしょっちゅう電話があるのよと頼み、私、あんたと結婚すれば良かったわなどと言い出す。

一方、銀座のバー「ドラポー」に出勤した和枝は、昨日の君の遅刻で2150円損をしたなどと、バーテンダーの高沢哲夫(高野真二)から注意される。

2人は結婚の約束をしており、細かいことを言わないと結婚資金が溜まらないよと高沢は言う。

そこに秋山が来たので、和枝は、この前の送迎会の後、まるめがしょげてたわよ、電話だけでもしてあげてと伝える。

七宮商店では、店員たちが野球チームを作らせて欲しいと願い出ていたが、七兵衛はとんでもないと反対している所だった。

その時電話がかかって来たので、それに出た七兵衛は、秋山からまるめにかけた電話だと分かったので、用件を尋ねると、何となくかける羽目になりましたなどと秋山が言うので、わしらの頃は、10円あれば夫婦2人暮らせたのだ!と説教し、一方的に電話を切ってしまう。

電話を置いた後も、今の若いもんは金の使い方を知らん!と、部屋に集まっていた店員や吉太郎らにぼやく。

さこにまるめが帰って来て、野球チームを作りたがっている店員たちの話を聞くと、良いじゃない。これくらいの店にはチームくらいないと…、ジャイアンツの水原監督でも連れて来て強くしましょうよなどと無責任なことを提案する。

そんなまるめに、話があるからと自室に呼んだ七兵衛に、まるめは、世間ではおじいちゃんのことを何と呼んでいるか知ってる?ケチ宮ケチ兵衛って言ってるのよとまるめは先制攻撃をする。

しかし七兵衛は、そんなことは気にしていない様子で、フランスへはどうしても行くのか?と念を押して来る。

まるめが、エールフランスに連絡しておいたし、行くのは来月中頃よと教えると、この年になって、1人しかいない孫に会えなくなるのは寂しいし、あっちの男は髪や目の色も違うぞ。世界を見て回りたければ、「80日間世界一周」と言う映画を観れば良いなどと七兵衛は説得しようとする。

そして、さっき秋山から電話があったが、切ってやったと七兵衛が伝えると、ウ〜ン、失礼しちゃうわとまるめは憤慨しながら帰ってしまう。

さよ子、秋山と言う男を知っとるかと七兵衛が聞くと、さよ子は、浅草の芝居の本を書いているって時々噂してましたわと教える。

浅草三社祭に、中国風の龍踊りが登場する。

まるめは七兵衛に誘われ、見物に来ていたが、向こうにはこんな祭りはなかろうと自慢するので、パリ祭と言うのがあるわよとまるめが教えると、そんな毛唐の祭り、つまらんに決まっとる!と七兵衛は憤慨する。

そんな七兵衛、いきなり、こないだ、怒鳴り込んで来た男の芝居小屋この辺じゃないか?と聞くので、まるめはペリカン座よと教える。

ペリカン座の舞台では、踊子の椿千枝子(九條映子)が、フラフープを使ったダンスを踊っている最中だったが、客席には本間が来ており、舞台中央で踊っている椿千枝子に手を振って笑いかける。

その本間の席に近づいて来たのは書生の折村で、先生のいらっしゃる所にはどこまでも付いて行くように奥様のご命令なんですと言うので、本間はしらけてしまう。

舞台が終わって楽屋裏に帰って来た千枝子は、秋山に本間のことを聞き、今度、私のために良い脚本書いてくださいね。踊りだけじゃなく芝居もやりたいのなどと伝える。

そんな秋山に面会でやって来たのが七兵衛だった。

七兵衛は、先日の詫びをすると、ちょっと話があるので…と外に誘い出すが、喫茶店にでもと誘う七兵衛に、コーヒー1杯50円も取られるので、お話だけなら良い場所がありますと言う秋山は、劇場ビルの屋上へと案内する。

あんたは、まるめのフランス行きに反対のようだな?と七兵衛が切り出すと、家庭に入って良いお母さんになった方が…と秋山が言うので、そうですとも、400万も使って売れ残りになる不経済だ!あんた、止めさせてくれんか?わしは昔からまるめには弱い。それに比べ、あんたはずけずけ言っていたから。あの子はあんたに気がある。この前のしょげ方はただ事ではない。フランス行きを諦めさせてくれたら、4000万の年利子28万に色をつけて、30万出します。1本30万の芝居を書くと思ってよろしく!などと、困惑顔の秋山を他所に一方的に頼み込む。

浅草寺で龍踊りを1人で見学していたまるめは、いつの間にか消えていた七兵衛が戻って来たので安心する。

その七兵衛、秋山さんに偶然会った。この前の仲直りがしたいとおっしゃるので来てもらったと言いながら、秋山とまるめを強引に引き合わせると、昼ご飯でもごちそうしよう等と言い出したので、まるめは仰天する。

七兵衛が2人を連れて来たのは「鰻屋」だったが、応対に出て来たおその(浪花千栄子)は、七兵衛を良く知っている様子だったので、まるめはさらに驚く。

ここのはコクがあるんだなどと七兵衛は、いかにも馴染み風に言うし、おそのも、その店は関西風で脂抜いてないんですよなどとまるめたちに紹介する。

七兵衛は、松400円、竹300円…と書かれたメニュー表を観て、松…と言いかけ、竹にしとこうと注文したので、梅じゃなくて良いの?とまるめが皮肉を言うと、梅も竹も対して変わりゃしないと答える。

この店良く来るの?とまるめが聞くと、あまり来ないと七兵衛はとぼけるが、やって来たおそのが、肝吸い、いつものようにお付けしますか?と七兵衛に確認に聞きに来たので、やはり常連であることがバレてしまう。

その後、バー「ドラポー」に来たまるめから、鰻屋の話を聞いた和枝は、老いらくねと即断し、おじいちゃん、1人で寂しいんじゃない?と聞く。

おばあちゃんが死んで10年になるから…とまるめが答えると、その鰻屋の人と巧くまとめてやったら?と和枝が言い出したので、そうすれば、フランスへ行かなくても言いかもとまるめは意外なことを話す。

実は、試験には受かったものの、フランス行きにはあまり乗り気がないとまるめは本音を打ち明けたので、トリックだったのねと気づいた和枝は、鰻屋のおばさんの話をまとめるためなら、何でもやってあげると協力を申し込む。

その日、「つぐみ荘」に帰って来たまるめに、廊下で会った秋山は、シャンソンのチケットが2枚手に入ったから一緒に行きませんかと誘って来る。

それは、三越で行われる「丸山明宏のシャンソンリサイタル」のチケットだった。

タキシード姿の丸山明宏(美輪明宏)が、ステージ上で、身体をくねくねさせながら「メケメケ」を歌っている。

まるめは、最前列の良い席で、嬉しそうにステージを観ていたが、秋山の方はあまり乗っていないようだった。

リサイタルが終わり、たまにはシャンソンも良いねなどと秋山が言いながらロビーに出た2人だったが、そこには、本間と千枝子のカップルも来ていた。

千枝子は、秋山先生に頼んで頂けました?と、役をもらえるよう仲介してくれと本間に聞くが、まだだ、その内になどと言うので、もう1度念を押して頼む。

千枝子がジュースを買いに行っている間、本間は秋山とまるめのコンビを見つけ、同席して来る。

ジュースを買って来た千枝子は、席に本間がいなかったので周囲を見渡し、秋山らの席にやって来る。

そして、秋山に、ハルミの役は私にやらせてくださいと、新しい芝居のヒロイン役を欲しがる。

先に、劇場を出ようとした秋山とまるめは、そこに書生の折原が立っており、先生はここにいませんでしたか?と聞いて来たので、いるよと秋山が教えると、入口の所から、オペラグラスでロビー内を監視し始める。

その後、好演をぶらついてデートしていた秋山とまるめだったが、おじいちゃん置いて、フランスに行くの、可哀想な気がするなどと秋山が言い出す。

すると、まるめの方も、私もおじいちゃんや秋山さんと3年も会えないと寂しいわなどと言うではないか。

そんな弱気なまるめの様子を見た秋山は、急に心変わりしたのか、この際、思い切って行った方が良いよ。3年なんてすぐ経つよなどとフランス行きを進める。

まるめは、そうね…と決心したようで、一緒に記念撮影しようと言い出し、腕を組んで来る。

一方、和枝は七兵衛に会い、まるめが銀座の私の店「ドラポー」に来て欲しいそうですと頼む。

それを聞いた七兵衛は、わしの思った通りになりそうだ。これで400万使わずにすむ…とほくそ笑みながら、さよ子に手伝わせて出かける仕度を始める。

ところが、「ドラポー」に行ってみると、店で待っていたのは、同じくまるめから招待されたと言うおそのだったので、七兵衛は戸惑う。

和枝に誘われるまま奥のボックス席におそのと座り、酒を飲み始めた七兵衛は、徐々に上機嫌になり、10年も若返ったような気がすると言う始末。

そして、外国の酒を飲ませてやろうと言い出した七兵衛は、カウンターに向かうと、バーテンの高沢に、何と言ったか?と酒の名前を思い出そうとする。

いくつか迷った末、シャンペンですか?と高沢が辺りを付けると、そうだと思い出す。

その時、まるめが秋山を連れやって来たので、和枝は、私たちも一緒に乾杯しないと提案する。

そんな中、秋山は七兵衛に、僕お断りしたい…と伝え、男の約束だと七兵衛も抵抗し、こそこそ話をするが、高沢が全員分のグラスにシャンペンを用意したので、みんあで乾杯することにする。

その後、隅田川を臨む、デパートの屋上の回転式展望遊具に乗った秋山は、フランスに行って欲しくないんだと言い出し、まるめも、私もフランスへは行かないかもしれない。3年経ったら、もう誰もお嫁にもらってくれないかもしれないと答える。

翌日、「七宮商店」にやって来た高沢は、大旦那様にお目にかかりたいと、反物を巻いていた山田に頼む。

山田は、銀座のバー「ドラポー」から請求書を持ってきましたと聞くと、旦那様の間違いじゃないのか?大旦那様がそんな所に行くなんて…?と首を傾げながらも取り次ぎに行く。

すると、七兵衛の方も怪訝そうな顔をして高沢の元へ来るが、お勘定を頂きに来ました。まるめ様が大旦那様から頂くようにと…と高沢から聞くと、取りあえず自室へ招き入れることにする。

そして、渡された請求書の額、33150円と言う金額はベラボーじゃないかとそろばんを弾きながら抗議する。

すると、高沢の方も、持って来たミニ算盤と計算尺を器用に操り、まるめ様は、店を6時間借り切っておられましたから25000円となり…などと、正統な請求額であることを証明しだす。

その見事な計算を観ていた七兵衛は、気に入った!君、ここの会計係をやらんか?と言い出す。

こういう店に来た方が良いと思うが…と言われた高沢の方も、頭の中で素早く損得勘定を計算し、その場であっさり承知することにする。

すると、七兵衛は、勘定は、入社祝いと言うことで半額にしなさい等と言い出す。

その直後、羊羹を手みやげにまるめが七兵衛の元にやって来る。

そして、場合によっては、フランス行きを止めても良いと思ってるの。ただし条件があるのよとまるめが言い出したので、自動車でも買ってもらいたいのかねと七兵衛が聞くと、店の実権をお父さんに譲って、おじちゃんは本当に隠居して欲しいの。そして、お仕着せを止めて、店員たちには休暇もちゃんと与える。野球チームも作ること。新しい七宮商店をやりたがっているお父さんが可愛そうよとまるめが言うので、そんなことをしたら、店がやっていけんと七兵衛は断る。

ダメなら、私、フランスへ行くだけだわとまるめが強気で攻めると、わしは一切止めないことにしますと七兵衛も抵抗する。

本当に止めない?じゃあ、行く。やっぱり行く!断然、行っちゃうんだから!とまるめも強情を張り、帰ってしまう。

そんなまるめの様子を見た七兵衛は、こりゃ、断然、効き目が出て来たわいと喜ぶのだった。

ペリカン座では、千枝子が舞台で踊っていた。

楽屋にいた秋山の元にやって来た七兵衛は、昨日、まるめが来て、フランス行きを止めても良いと言って来た。だが、隠居をやれとか、お仕着せを止めろとか、野球チームを作れなど条件をつけて来たので断ってやったと報告する。

それを聞いていた秋山は、まるめさんをフランスへ行かせたくないのなら、その条件を飲んだらどうです?安いもんだと思いますが…と困惑するが、もう一押しじゃ。その前渡し分もちゃんと持って来ているんだと、金を用意して来た様子だったので、断ろうとした秋山だったが、そこに舞台を終えた千枝子がやって来て、この前の役どうなりました?と聞くので、ちょっと遅かった。曙君に決まっちゃったんだと教える。

すると、千枝子は不機嫌になり、本間先生、全然誠意ないわと、仲介をあれだけ頼んだのに効果がなかったことを悔しがる。

大学で、クラスメイトたちが、もうフランス行きの準備はできた?などと言いながら、まるめと一緒に歩いていると、外務省の役人と会っておいた方が良いですねなどと話しかけて来た本間が、まるめを連れて行く。

しかし、本間が連れて来たのは、ステージで、山下敬次郎が歌っている音楽喫茶だった。

そんな店内にも追って来た折原は、コンパクトカメラで、まるめと本多が同じテーブルに座っている所を何枚を撮った後、本間の妻みを子に電話をして、もう20円しか手持ちの金がなくなったので、これ以上の尾行は無理だと報告する。

そして、その後、帰宅して来た折原は、2人は晩ご飯に行ったようですとみを子に教える。

その時、ブザーが鳴り、玄関に現れたのは、踊子の椿千枝子だった。

本間先生にお目にかかりたいと言うので、不在だとみを子が言うと、では、お帰りになるまで待たせて頂きますと言い、図々しくも、勝手に上がり込んで、応接室のソファに座り込むと、とっちめてやりたいことがあるのよと言う。

さすがに、これには耐えかねたみを子は、さっさと着替えをすると、こんなうちにいられるものですか!と慌てる折原に言い残し、家を飛び出してしまう。

秋山が帰宅してみると、自分の部屋から音楽が聞こえて来たので、不思議に思って中に入ると、何と、本間の妻のみを子がいるではないか。

下の管理人のおじさんに頼んで入れてもらったのだと言う。

うちを飛び出して来たの。今夜ペリカン座の踊子が撃つに来たの。さしあたり、今夜ここに泊めてもらうわ等と言いだしたので、秋山は面食らい、それは困ると断る。

そんな「つぐみ荘」までまるめを送って来た秋山は、部屋の前まで送ると言い、2階に上がって来る。

一方、秋山は、みを子はここに泊まって良いから、自分は管理人室に寝かせてもらうと言いながら、部屋を出たので、それを追って来たみを子共々、まるめと一緒にやって来た本間を鉢合わせしてしまう。

本間とまるめの方も、秋山の部屋からみを子が出て来たので驚き、まるめは、何故、独身音魂も部屋にいらっしゃるんです?とみを子に問いかける。

秋山は、元はと言えばお前の浮気が原因じゃないか!と本間に抗議するが、その本間は、こんな独身男の部屋に入ったら、何をさせるか分からないぞ!などとみを子を叱りつけたので、それを聞いた秋山はかっと来て、本間を殴りつけてしまう。

すると、みを子は本間に駆け寄り、いきなり暴力を使うなんて、秋山さんって横暴だわ!と怒りだし、夫を助け起こして、2人で帰って行く。

後に残ったまるめは、見直しちゃったと秋山に話しかけると、あんな奴と付き合ったりするから、ついカーッとなっちゃったんだと秋山は照れる。

私のためねと感激したまるめは、秋山の部屋の中に入って来ると、秋山に抱きつき、私、前から好きだったの!と告白する。

秋山も方も、僕も前から好きだったと答える。

その時、ノックの音がし、入って来たのは「七宮商店」の法被を着た高沢だった。

店で働くことになったと説明した高沢は、大旦那からこれを秋山さんに渡すように言われてきましたと言い、40万円の札束を置いて帰ろうとする。

これは断ったはずだと秋山は返そうとするが、領収書はいらないそうですと言い残して高沢はさっさと帰ってしまう。

その様子を観ていたまるめは、何か隠しているのね?と問いつめて来たので、実はおじいちゃんから、何とか君のフランス行きを止めてくれって頼まれたんだと正直に打ち明け、でも断ったんだよと秋山は言い訳するが、知らなかったわ…、バカにしないでよ!あなたまで私を騙したのね!私、フランスに行く!断然行っちゃうから!と怒りだし、部屋を出ると、自分の部屋に帰る。

秋山が後を追ってドアの前に来ても、嫌い!二度と顔を見たくない!とまるめの声が聞こえて来るだけだった。

深夜、もう寝ていた七兵衛の部屋の電話が鳴りだしたので、起きて電話に出ると、それはまるめからで、おじいちゃんに言われた通り、フランスに行きます。断然行くわ!と宣言する。

その電話を、部屋で聞いていた和枝は、興奮状態のまるめを観て、どうしたの?と声をかけて来る。

呆然としていた七兵衛は、玄関に秋山がやって来たと知り降りて行くと、先ほど哲夫君が置いて行ったものですが、頂くことは出来ません!と言って、40万円をその場に置くと、まるめさん、フランスに行きますよ。事情を知られたんです。僕ももっと純粋な立場でおつきあいしたかった…、そうすれば良かった。僕はまるめさんが好きだったんです。これ以上誤解されたり、軽蔑されたくありませんから…と言い残し、帰って行く。

七兵衛は慌てて、後を追おうとするが、もう秋山は遠ざかっていた。

がっかりして玄関口に戻って来た七兵衛に、夫と共に何事かと起きて来たさよ子が、話を聞いたときから、こんなことになるんじゃないかと思ってましたよ…と告げて去って行く。

後に1人玄関口に残った七兵衛は、自分がやったことの愚かさに今さらながら気づき、考え込んでしまうのだった。

数日後、七宮商店の前には、珍しく「本日臨時休業」の札が下がっていた。

ついに七兵衛が許可した野球チーム「七宮グロッキーズ」が発の対外試合をすることになったのだ。

挨拶に立った吉太郎は、今日は特別に水原監督に花を添えて頂くことになりましたと挨拶し、招待していた、ジャイアンツの水原監督に始球式を頼む。

山田が代表して水原監督にジャイアンツの皆さんによろしくと礼を言い、水原監督は、横に座って、試合を観戦することになる。

そんな中、七兵衛は、まるめ来ないな…と残念がっていた。

一方、「つぐみ荘」で、荷造りの手伝いをしてやっていたさよ子は、お前がちょっとでも行ってやれば喜ぶのに…、おじいさん、お前に顔向けできないから店にいないのよ。何もかも、お前の言った通りになっているんだよ。本当は行きたくないのなら、何も意地はって行かなくても良いのよ。秋山さん、本当に好きだったらしいのよ。どこ行ったんだろうね…と、あれ以来姿が消えた秋山のことを案じる。

その後、鰻屋にやって来た七兵衛に、おそのは観音様のお守りをもらっておいたと言い、いくつものお守りを七兵衛に渡しながら、実はおみくじを引いたら、嫌なことが書いてあったもので…と言う。

気になった七兵衛が、そのおみくじを見せてもらうと、「西の方に災難あり」と書かれているではないか!

フランスは西だったね?とおそのに確認した七兵衛は、今さら、フランス行きを止めさせるわけにはいかないんでしょうね?と心配するおそのに、すっかりつむじを曲げて、うちにも寄り付かんと打ち明ける。

あのお金のことさえなければ、巧く行ったのに…。こうなったら、秋山さんを捜して会わせるしかないのだが、皆目行方が分からんと七兵衛は嘆く。

その時、秋山さんにフランスに追いかけて行ってもらったら?とおそのが言い出したので、そんなことをしたら、予算が倍かかると七兵衛が、又金のことを言うので、行って、すぐに連れ戻して来たら、そんなにかからないのではありませんか?とおそのは説明する。

そこへ夕刊が届き、そこに、スイス山中で旅客機が墜落したと言うニュースが載っていたので、ますます狼狽して来た七兵衛は、観音様にご祈祷してもらおうと言い出し、鰻の注文を取り消すと、おそのと共に出かける。

いよいよ、まるめのフランス行きの当日がやって来る。

七宮商店では、空港には高沢だけが行けると知った山田が、うらやましがっていた。

今では実権が吉太郎に移行し、すっかり店の中の様子も様変わりし、山田も高沢たちも法被ではなく、お揃いのジャンパー全員来ていた。

そこに、まるめがやって来る。

山田は店員たちを代表して、お餞別として、「お江戸日本橋」の曲が流れるオルゴールを手渡し、日本を時々思い出してくださいと挨拶する。

二階の自室で、仏壇を拝んでいた七兵衛の所にやって来たまるめは、これから行ってまいります。一生懸命勉強してまいりますと挨拶をする。

七兵衛は、一言、おじいちゃんを許すと言っておくれ。みんなわしが悪かった…と詫びるが、まるめは返事をしない。

さよ子は、お前は扁桃腺が弱いんだから、気をつけてとまるめに伝える。

観音様のお守りを渡しながら、まるめに何事かを耳打ちする七兵衛。

そんな七兵衛に、時々鰻でも食べて元気出してねとまるめが言うと、早く行かないと飛行機に乗り遅れて、飛行機代を損するぞ。わしは送らんからな。どこで送っても同じことだなどと言って七兵衛はまるめを追い出すと、部屋に残って1人さめざめと泣き出す。

そんな七兵衛の事を心配したまるめは、部屋に戻って来ると、3年くらいちょっとよと行って慰めようとするが、早くお行きと七兵衛は追い立てる。

その時、電話が鳴ったので、七兵衛が出てみると、相手は和枝からで、秋山さんが見つかった、今、ペリカン座にいる。信州に帰っていたんですってと言うではないか。

七兵衛は、今すぐ飛行場へ送りに行かせてくれと頼むが、それが、秋山さん、お昼の汽車で大阪に行くんですってと和枝は言う。

一計を案じた七兵衛は、女中に、車に乗り込みかけていたまるめを呼び戻させると、電話口の和枝には、私の話に合わせてくださいと頼む。

何事かとまるめが部屋に戻って来ると、七兵衛は、何ですって?秋山さん、急性肺炎で危ない?40度8部の熱があるんですか?などと一人芝居始める。

最初は、七兵衛の考えを良く飲み込めなかった和枝は、え?秋山さんは元気ですよと返事をしていたが、仕事で大阪に行って危篤なんですか?などと必死に七兵衛が芝居を続けるので、ようやく事情を察し、ええ、危篤ですと話を合わせ始める。

大阪の泊まり先はステーションホテル?飛行機で行けば間に合う?と芝居を続けた七兵衛は、受話器をまるめに手渡す。

和枝は、もう注射が効かないんですってなどと適当なことを伝え、七兵衛は、暗くなったまるめから受話器を取り上げて、早く行きなさい!飛行機が出てしまう!とまるめを急がせる。

まるめは戸惑いながらも、じゃあ、行ってきますと挨拶するので、大阪か?と七兵衛が聞くと、フランスよと答えたまるめは、私の代わりにおじいちゃん行っといて。お守り1つ上げるから…と言い、自分がもらったたくさんのお守りの中から1つ渡すと、ごきげんようと言って店を出て行く。

畳の上には、転がった受話器から、もしもし?と呼びかける和枝の声が聞こえていた。

山田たちが、バンザイして見送る中、まるめが乗り込んだ車は一路飛行場へと向かう。

がっかりした七兵衛だったが、何か思いついたのか、秋山に電話を入れると、すぐに羽田に来てください。まるめにえらい嘘をついてしまった。あなたが元気な姿を見せてやってくださいと頼み込む。

アンカレッジ経由のエアフランス機が待機する羽田空港に、タクシーで到着した七兵衛、秋山、和枝の3人。

しかし、彼らが見送り台へ到達した時、すでにエアフランス機は飛び立った後だった。

間に合いませんでしたわね…とがっかりする和枝。

しかし、その時まるめは、日本航空の国内線の方に乗っていたのだった。

展望台に来ていたさよ子は、夫の吉太郎に、見送りの方たちにはお詫びを行って帰ってもらいましたからと報告すると、一緒に来ていた高沢に、おじいちゃんに電話して来てちょうだいと頼んでいた。

がっかりして展望台から帰りかけていた和枝、秋山、七兵衛は、電話をかけに行く高沢を見かけたので呼び止め、見送りの人たちはどうしたんだ?と聞くと、高沢の方も驚いて、秋山さん、あなた、大阪で危篤なんじゃ?と聞いて来る。

まるめがやおおあり、大阪行きの国内便に乗っていると知った七兵衛は、高沢に、何としてでも、大阪までの切符を1枚頼むと命じると、秋山には、あの飛行機に乗ってください。どうせ、仕事で大阪に行くんでしょう?婚約旅行のつもりで行ってください、ふつつか者ですが、1つよろしくと頭を下げる。

そして、その飛行機!ちょっと待ってくれ!と叫びながら、吉太郎とさよ子がいる場所にやって来る。

出発間際の国内便に何とか滑り込んだ秋山は、ちょうど空いていたまるめの横の席に座る。

それを見たまるめは、あなた、危篤だったんじゃなかったの!?と驚くが、国に帰って頭を冷やしてたんだと秋山が説明すると、酷いわ!と怒りだし、立ち上がって飛行機を降りようとする。

しかし、もう出発の時間なのでと、スチュワーデスが、お席に着いてください!と制止し、秋山も必死になだめる。

ようやく、大阪行き日本航空機は羽田を飛び立って行く。

それを見送った七兵衛は、1人満面の笑顔で、ばんざ〜い!と叫ぶのだった。