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聖闘士星矢

最初の劇場用作品で、夏休み「東映まんがまつり」の一作として公開された、上映時間45分の中編である。

原作やアニメを知らないので基本設定等は良く分からないながら、子供向け作品なので複雑な展開にはなっておらず、分かり易い集団勧善懲悪対決ものになっている。

5人のグループヒーローに対し、5人の対戦相手が刺客として死の世界から蘇り、夫々得意技を披露しあうと言う展開自体は、昔の忍者マンガ「伊賀の影丸」や山田風太郎の忍法帖シリーズ辺りで確立された発想だと思う。

忍者ブームの頃は、基本的に他の術者たちは全員死に、主人公だけが生き残ると言うパターンになっていたものだが、この頃では、ヒーロー自体が超人であり、しかも集団で構成されているので、最後は、愛と希望と友情を持った正義のヒーローチーム全員生き残り、勝利を手にすると言う、よりご都合主義が進行したパターンになっている。

グループヒーローを成立させるには、本当に戦って、メンバーの誰かが死んでしまっては成り立たないため、こうした展開になるしかないのだろうが、大人の目で観てしまうと、あまりにも単調過ぎるような気がする。

ストーリーが単調になった分、玩具メーカー等とのタイアップ等の関係なのか、ヒーローたちのコスチューム等は派手になっており、なおかつ、着せ替え用的な、いくつかのパターンに変化するようになっている。

アニメ映画としては、可もなく不可もなくと言った平均的な出来のように感じ、特に劇場アニメとして見応えがあると言うほどのものではないが、いくつかの作品を劇場でまとめて観られた当時の子供にとっては、思い出の作品となったであろう。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1987年、東映、車田正美原作、菅良幸脚本、森下孝三監督作品。

その昔、神々が天地を支配していた頃

戦いの神アテナとそれを守る少年たちがいた。

地上に危機が訪れようとしている時、彼らは正義のため、アテナの化身である城戸沙織と共に、クロスを身にまとい新たな聖闘士として蘇った…。

タイトル

ヨットハーバー脇の道路に面した孤児院・星の子学園。

校庭で遊んでいたマコトは、アキラが持っていた玩具の飛行機を取り上げ、子供たちの世話をしていた相沢絵梨衣(声 - 荘真由美)に注意されるが、素直に返そうとはせず、そのまま飛ばしてしまったので、その飛行機を追ったアキラは、門を飛び出し、交通量の多い道路に飛び出してしまう。

驚いた絵梨衣は、急いで後を追うが、アキラを抱きとめた時、迫って来る一台の車に気づき、悲鳴を上げる。

しかし、次の瞬間、車は絵梨衣とアキラに追突せず、1人の青年の右手で止められていた。

ペガサス星矢(声-古谷徹)、ドラゴン紫龍、アンドロメダ瞬らと共に、星の子学園に遊びに来たキグナス氷河だった。

彼は、土産として両手に持っていたスイカのうち、右手に持っていた1個を道路に落として潰してしまったと苦笑いする。

そんな氷河をはじめて観た絵梨衣は、学園に戻って、女の子たちにあやとりを教え始めても上の空で、子供たちから、今日は変と指摘されるくらいだった。

一方、この学園の出身である星矢は、子供たちに、自分の魂の根本であるコスモス、小宇宙を爆発させると強くなれるし、そのコスモスは、みんな1つずつ持っているものなんだと教えていた。

子供たちは星矢の話に夢中になり、力を見せてくれ等と言いながら、星矢を追いかけ回す。

その夜、絵梨衣と2人きりで外に出た氷河は、絵梨衣もまた、親も兄弟もいない孤児である事を知ると、自分には星矢たち、仲間がいると伝える。

その時、2人は、夜空を流れる流れ星を発見するが、絵梨衣はそれを見たとたん、見入られたようになり、僕の生まれた国では流れ星は不吉な事の前兆なんだけど、日本では願い事をするらしいねなどと話しかける氷河の言葉等聞いていないようだった。

その流れ星から、黄金のリンゴが地上に落下した事は誰も気づかなかった。

氷河は、1人になりたいと言う絵梨衣に促され、先に帰ることにする。

流れ星が通り過ぎたとある山中の一角から、幾筋もの光の帯が空に向かって立ち上がる。

そして、ギリシャ神殿のような建物が地底から出現する。

いつしか、その山中の朽ちた船内に迷い込んでいた絵梨衣は、そこにあった黄金のリンゴを手を触れると、扉が開く。

山の中に白馬に乗った城戸沙織(声-潘恵子)がやって来て、そこにいた絵梨衣に声をかけるが、すぐに、その女性が絵梨衣ではない事に気づく。

次の瞬間、絵梨衣に似た女は、白馬の足を骨折でもさせたのか、馬は転び、載っていた沙織は地面に投げ出されてしまう。

その後、地底から出現した棺から、何者かが蘇る。

翌朝、星の子学園に泊めてもらっていた氷河と氷河の部屋にやって来たミホは、沙織さんの姿が見えなくなったと知らせる。

地底から出現した棺桶の蓋が次々に開いて行く。

寝心地はどう?

そう、絵梨衣の姿をした女は、山中に出現した神殿の中に縛られていた沙織が目覚めた事に気づくと声をかける。

絵梨衣?違う…、私をどうしようと言うの?と沙織が聞くと、絵梨衣の身体を借りた何者かは、黄金のリンゴを取り出すと、アテナは今、私の手の中にあるのだから…とほくそ笑む。

今、星座も同じ絵梨衣の身体に乗り移り、沙織の正体を知っているのは、争いの女神エリスだった。

しかし、沙織は動じる事もなく、私には守ってくれる聖闘士がいると教えるが、エリスは、気に食わないアテナご自慢の聖闘士が、目の前でやられるのを見せましょうと言うなり、持っていた杖から、一筋の光線が放たれ、それは、星の子学園の部屋の中の壁面に到達する。

その光線によって壁に浮かび上がったのが、古代ギリシャ文字だと気づいた星矢と氷河だったが、ドラゴン紫龍は、これはエリスから我々に対する挑戦状だ!と解読する。

その頃、神殿の中にいたエリスの元に集まって来た5人がいた。

サジッタ(矢座)の魔矢(声 - 小林通孝)、琴座(ライラ)のオルフェウス(声 - 三ツ矢雄二)、サザンクロス(南十字星座)のクライスト(声 - 中尾隆聖)、オリオン座のジャガー(声 - 水島裕)、楯座(スキュータム)のヤン(声 - 難波圭一)…

待ちかねたぞ、ゴースト5!とエリスは喜ぶ。

彼らこそ、聖闘士の死刑執行人として、地中深く埋められていた棺桶の中から蘇って来た亡霊聖闘士たちだった。

エリスは、十字に縛られた沙織に、この黄金のリンゴがお前の瑞々しい生命力を私に引き込んでくれると言いながら差し出したリンゴが、沙織の心臓の上に付着する。

すると、沙織は急に苦しみだすのだった。

そろそろ道化者たちが現れる頃だ、アテナ、本当の苦しみが始まるのだ…とエリスが不気味に笑う。

神殿に向かう山中、争いの神が復活すると言う伝説は本当だったんだと星矢が緊張気味に言うと、瞬は、一輝兄さんがいてくれくれれば…と悔しそうに呟く。

星矢の前に立ちふさがったのは、「狙った獲物は決して外さぬ必殺の矢を持つ死の狩人」サジッタの魔矢だった。

星矢は、相手が、エリスがさし向けた刺客だと気づき、ペガサス流星拳をお見舞いするが、魔矢の方は、「アテナの戦火」と叫ぶと、無数の矢の雨が星矢に降り注いで来る。

このままでは避けきれないと悟った星矢は、自ら向かい撃つしかなく、ペガサス流星拳を再び撃ち込む。

倒れた魔矢に近づき、沙織さんとエリスはどこだと聞いた星矢だったが、相手が答えるはずもなかった。

星矢は、自分の左脇腹に刺さっている1本の矢に気づくが、そのまま気にせず立ち去るが、倒れていた魔矢が、1本で十分だ。いずれ思い知る…と呟いた事に気づかなかった。

キグナス氷河を待ち伏せしていたのは、サザンクロスのクライストだった。

氷河がダイヤモンドダストをお見舞いすると、サザンクロス・サンダーボルトで応酬、共に相打ちだった。

クライストは、お前が、絵梨衣の心に焼き付いた氷河か!と言いながら立ち上がったクライストは、氷河に組み付いて行き、首を絞め始める。

その戦いの背後に出現したエリスは、杖を投げ、背中を向けていたクライストの背中を貫いた杖は、氷河の胸に到達する。

心臓部分に黄金のリンゴを当てがわれた沙織は、生気を吸い取られ、苦しんでいた。

その頃、神殿部分に近づいていた星矢は、頭がふらつく事に気づき、近くの川で顔を洗っていた。

ドラゴン紫龍の前に現れたのは盾座のヤンだった。

ヤンは、ボーン・クラッシュ・スクリューを浴びせ、紫龍の手を撃ちくが、水の中に突っ伏した紫龍は、全コスモスを爆発させ、廬山昇龍覇を披露、紫龍は、砕けた手でヤンの盾を撃ち砕き倒す。

しかし、力を出し尽くした紫龍の方も、後は頼んだぞ…と仲間たちに呟くと、その場に倒れる。

キグナス瞬は、美しい竪琴の音色に気づく。

竪琴を弾いていたのは、伝説の吟遊詩人ライラのオルフェウスだった。

この曲は君のためのレクイエム…、ストリンガー・レクイエム!と言ったかと思うと、オルフェウスの竪琴の糸が瞬の身体に向かって伸び絡み付く。

その時、突如出現したのは、兄のフェニックス一輝だった。

兄さん!やっぱり来てくれたんだねと喜ぶ瞬。

しかし、オルフェウスは、余計な手出しをして楽に眠れなくしただけだ…と嘲る。

一輝の幻魔拳を受けたオルフェウスは、地獄の光景を観るが、死の世界から蘇ったゴースト5の1人であるオルフェウスには通用せず、地獄など第二の故郷…とうそぶく。

魂を邪悪な神に売ったか?聖闘士には一度観たものは二度は通じない!と叫んだ一輝は、オルフェウスの技を交わし、倒す。

星矢じは、何とか神殿内に縛られていた沙織の元にたどり着くが、沙織の心臓の上に張り付いた黄金のリンゴを観て驚く。

待ち受けていたエリスは、黄金のリンゴは新鮮な生気を私に与える。やがて、日が沈む頃、私は完全に復活し、代わりにアテナは息絶えると教えると、ジャガーを呼び寄せる。

星矢の様子を見たエリスは、お前は魔矢の必殺の毒矢を受けており、後は死を待つだけだと嘲る。

確かに、視覚も聴覚も失っていた星矢だったが、流星拳をぶつけようとする。

その時、待て!星矢!と制したのは、駆けつけた一輝だった。

その身体ではこいつは倒せんと言う一輝の言葉の直後、星矢はその場に倒れてしまう。

そんな聖闘士たちの姿を観たアテナは、がっかりしたでしょうね?と沙織に聞くが、いいえ、聖闘士たちはきっと守ってくれると分かっていますと沙織は、自分の苦しみも我慢して答える。

そんな沙織の態度にいら立ったエリスは、無駄よ!星矢は五感を失い、目も見えないはずだからと教える。

ジャガーの攻撃を受けた星矢は、それでも必死に、沙織さんを助けなきゃ…と耐え忍ぶが、ひと思いに楽にさせてやる!とジャガーから崖下に蹴落とされてしまう。

ジャガーは果敢に挑んで来る一輝に、なぜ星矢を助ける?と不思議そうに尋ねるが、仲間だから…。俺たちは平和を守るアテナと友のために戦う!

崖下に落下した星矢は、もはや視力も聴力も失っていたが、あなたは希望の聖闘士のはずだと言う沙織からの声が心に届く。

他の聖闘士たちも、皆、傷だらけの肉体に鞭打って、神殿に近づこうとしていた。

死ぬのは簡単なはずだ…、俺たちはまだ戦っているぞ…、星矢、立つんだ!僕たちも皆一緒だ!そうした仲間の声も、星矢の心に届いていた。

いつしか起き上がった星矢は、崖を這い昇り、再び神殿に舞い戻って来る。

確かに今の俺は、何も見えないし聞こえない。でもこの世に希望がある限り、俺は戦う!完全燃焼だ!

そいう叫んだ星矢は、空中に浮かぶと、至上のコスモを持つものだけに許される、射手座の黄金聖闘衣は、俺を選んだのだ!今の俺は、五感を超えた最高のコスモを手に入れたのだ!と歓喜の声を挙げる。

しかし、エリスは、もう遅い。アテナから資格を失わされた聖闘士たちが今蘇ろうとしている、世界中の墓から…、人間が恐怖する神々の最後の贈り物…と答える。

星矢は、射手座の黄金聖闘衣(ゴールドクロス)を身に纏っていた。

メガトン・メテオ・クラッシュ!で飛びかかったジャガーだったが、星矢は、燃えろ!俺のコスモ!ペガサス流星拳!と応じ、ジャガーを倒すと、もうお前を守る聖闘士はいないとエリスに迫る。

しかし、エリスは、もう遅いわ。アテナは死に、私は完全に復活した!と嬉しそうに叫ぶ。

世界中の地底に埋められていた棺桶の蓋が開きかける。

沙織さんが!アテナが死ぬ!この世が邪悪に支配される!焦った星矢は、黄金の弓を引き絞り、沙織の心臓に張り付いた黄金のリンゴを狙う。

それを観たエリスは、わずかでも狙いが外れれば、お前自身が自分の命を止める事になるのよと嘲る。

しかし、瀕死の沙織は、星矢、何をためらっているのです。勇気を持って矢を射なさいと伝える。

今度は俺が仲間たちを助ける!そう叫んだ星矢は、矢を射る。

放たれた矢は、沙織の前に立ちふさがっていたエリスの額の飾りを射抜き、沙織の胸の上に張り付いていた黄金のリンゴに見事突き刺さる。

エリスは倒れ、神殿は山崩れと共に崩壊して行く。

必死に山を駆け下りた星矢と一輝は、崩れた山を観ながら、沙織さん!と呼びかける。

その時、星矢!兄さん!と呼ぶ声が聞こえて来る。

すると、崩壊した岩山の一角が光り、穴が開くと、そこから、埋もれたはずの沙織、瞬、紫龍、氷河らが出て来る。

エリス、あなたの負けです。私と私の聖闘士たちは希望を持って戦い続けるでしょう…と沙織は語るのだった。