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るろうに剣心

ワーナー・ブラザース製作の時代劇で、人気コミックスの映画化らしい。

原作は知らないので、あくまでも映画だけの感想であるが、実に良く出来ている。

同じワーナーの日本映画「最後の忠臣蔵」にも感心したが、本作も傑作と言っても良い出来だと思う。

脚本も良く練られている印象だし、画面的にも安っぽさがあまり感じられない。

とは言え、コミックス原作なので、時代小説原作もの等よりはけれん味もあり、話もシンプルで、新しい時代の痛快チャンバラ映画として若い層にも受け入れ易く描かれている。

特に、日本のアクションものでは物足りなさが残りがちなクライマックスも、過不足なく見せ場が作られており、これなら海外でも受けるのではないかと思う。

剣心を演じている佐藤健の優しい表情の部分は、仮面ライダー電王等でもお馴染みだったが、鬼のような厳しい表情も出来るとは驚いた。

「必死剣鳥刺し」でも手強い敵役を演じた吉川晃司が、今回もその恵まれた体格を活かした、迫力ある敵役を演じている。

香川照之は、個性(アク)の強いキャラクターを楽しそうに演じているし、江口洋介の役柄もなかなか魅力的。

女優陣は…、まあこんなものではないだろうか。

元々、男性が描くマンガに出て来る女性像自体が不自然な場合が多いので、その実写化キャラにちょっと違和感があったとしても、それは致し方ない部分のような気もする。

それを言い出せば、男のキャラの方も同様だろう。

映画の中でそれなりに活きていれば、そのキャラは成功と言えるような気がする。

原作を知らないので何だが、個人的には、典型的なヒロイン像である薫よりも、複雑な境遇の恵の方が、キャラ的にはこれで良いのかな?と言う違和感が若干残らないでもないが…(好みもあると思う)

それでも、全体的には、ヒットした事も頷けるパワーを感じる作品になっている。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2012年、「るろうに剣心」製作委員会、 和月伸宏原作、藤井清美脚本 、大友啓史監督作品。

今から140年前の幕末動乱期

「人斬り抜刀斉」と呼ばれ恐れられていた男がいた…

1868年1月 戊辰戦争

京都 賭場伏見の戦い

くわえ煙草で、敵軍を斬りながら、人斬り抜刀斉どこにいる!と叫んでいたのは、新選組三番隊組長斎藤一(江口洋介)だった。

一方、その人斬り抜刀斉こと緋村剣心(佐藤健)も、官軍相手に戦っていたが、そんな剣心と斎藤が対峙した時、官軍が勝った!との雄叫びが上がり、錦の御旗が翻ったので、戦いが終わった事が分かった戦士達は皆一斉にどよめく。

斎藤は、来たぞ、新しい時代が…、やっと…、緋村剣心!と呼びかけると、これで戦いが終わったと思うなよ。例え時代が変わろうと、剣に生き、剣に死ぬし以外に俺たちに道はない!と呼びかける。

しかし、それを黙って聞いていた剣心は、無言で自らの刀を地面に突き刺すと、そのまま戦場から立ち去って行く。

雪が舞う戦場で、なぜだ?なぜ、俺は生き残った?と不思議そうに、屍の中から立ち上がった鵜堂刃衛(吉川晃司)は、地面に突き刺さった刀の柄を握りしめると、何だこれは?と怪訝そうな顔つきになり、これが人斬り抜刀斉の…?と呟く。

タイトル

1978年 明治11年 東京

山県有朋(奥田瑛二)が、陸軍軍人たちを前に、新政府の威光はあまねく広がり、我が国に安寧をもたらした…と挨拶をしていた。

その頃、人間は弱いものだ。口では偉そうな事を言っていても、3つの前には獣になる。1つは自分、2つ目は自分、そして3つ目は快楽だ…と、屋敷の自室の中で話していたのは、貿易商の富豪、武田観柳(香川照之)だった。

その時、部屋に入ってきた高荷恵(蒼井優)と男たち数名のアヘン製作班を観た観柳は、成功だ、良くやったと褒める。

アヘン製作班は全員廊下に出て行こうとするが、恵ともう1人の男が出ようとした所で、観柳の手下の1人が扇子を差し出して足止めをする。

廊下に先に出ていた男たちは、恵が中に残されてドアが閉められたので、何事かと狼狽するが、その時、観柳の不気味な3人の用心棒が彼らを取り囲む。

恵は、廊下側のガラスに血しぶきが飛び始めたので、自分の仲間が殺されている事に気づく。

観柳は、そんな恵ともう1人の男に、作り方を知ってる人間は1人で良いと言いながら、指でどちらにしようか…と言う風に、交互に指し始める。

そして、男の方を指差したので、男は、ありがとうございますと感謝するが、恵が観柳に抱きつくと、観柳の指はその恵の方を指し直す。

助からないと悟った男は、庭側の窓ガラスに突っ込み、そのまま下に飛び降りてしまう。

しかし、観柳は慌てず、あいつは抜刀斉に任せると手下たちに伝える。

祭りの神輿で賑わう町中にやって来た剣心は、団子を1本買っていた。

その頃、警視庁の警官になっていた斎藤一改め藤田五郎は、斬殺された死体を検分していた。

その男は、武田観柳の屋敷に潜入させていた潜入警官だった。

死体の側には、血染めの手形が押された人斬り抜刀斉の名が入った斬奸状が残されていた。

もはや、その表情に、かつての「人斬り」の気配は微塵も残っていなかった。

団子を手にして嬉しそうに歩き始めた剣心だったが、ふと、気になる人相書きに目を留める。

そこには、「人斬り抜刀斉」と言う殺人鬼の似顔絵が描いてあり、説明を読むと、神谷活心流の使い手と書かれていた。

似顔絵は、剣心とは全くの別人の顔だった。

誰かが彼の名を騙って、人殺しを繰り返しているらしい事が分かった。

その時、そこの男!廃刀令を無視して刀を持ち歩いている所を観ると、抜刀斉か!と言いながら、いきなり木刀を突きつけて来た、道場着姿の娘がいた。

神谷活心流道場を継ぐ神谷薫(武井咲)であった。

香の勢いに思わず尻餅をついた剣心は、拙者はるろうに…、あてのない旅を続ける身でござると必死に抗弁しながら立ち上がるが、腰に差している刀を問われると、これは逆刃でござると言いながら、抜いてみせる。

その刀は、反りの腹の方は峰になっており、背の方が刃になっている奇妙な作りで、到底これでは人は斬れない代物だった。

薫はちょっとバツが悪くなったのか、袴についた土を払っていた剣心に、手ぬぐいを渡してやる。

それより、あの人相書き…と剣心が指摘すると、この半年、家の流派を名乗り、斬奸状を残して行く人殺しがいる。時代は変わったの…と香は嘆く。

夏の盛り、広い庭先に置かれたテーブルに座り、足を水鉢で冷やしていた武田観柳の元にやって来たのは、藤田五郎だった。

藤田は、死体現場に残されていた血染めの斬奸状を観柳に突き出してみせながら、潜入捜査官が殺されたと知らせ、新橋の倉庫では何をしている?と聞く。

しかし、観柳の背後に控えていた手下たちが、あそこは今は使っていない。これ以上調べるつもりなら、正式な手続きを!と迫って来たので、藤田は、調子に乗んなよ!と観柳に小声で脅す。

その時、庭に大勢の食い詰めたような元士族たちが、メイドが用意したにぎり飯目がけて集まって来る。

どうやら、観柳が集めた連中らしく数百人はいた。

腹を空かせた犬は何に噛み付くか分かりませんからね…とうそぶいた観柳は、あたなも元お侍ですか?と斎藤の事を皮肉る。

しかし藤田は、警察は証拠、証拠と言うけれど、俺は違う!と凄んでみせると、その場は引き上げて行く。

屋敷の中に戻った観柳は、金を握らせた警察からの情報として、恵が逃げ出し、警察に駆け込んだとの報告を聞き、あの女を連れ戻せ!あの女の頭には、蜘蛛の巣の精製法が入っている!と命じる。

俺がやる!とそれに応じたのは、偽抜刀斉を名乗っていた鵜堂刃衛だった。

警察署に保護されていた恵だったが、事情を聞かれても全く口を開こうとはしなかった。

その時、急に、廊下の方から騒ぎが聞こえて来て、部屋の中にいた警官たちが全員そちらに向かったので、嫌な予感がした恵も様子を見に行くが、想像通り、警察内に侵入して警官たちを斬っていたのは観柳の用心棒の1人、鵜堂刃衛だった。

警官たちは、鵜堂の事を本物の抜刀斉と思い込んでいるようだったが、鵜堂は相手を睨みつけると、心理的に弱い相手を金縛り状態にする「二階堂平法、心の一方(しんのいっぽう)」と言う特殊な術を使っており、魔法をかけたように警官を手玉に取っていた。

恵は恐ろしくなり奥へと逃げ込み、隠れていた。

その頃、薫は、小さな橋の下を通る道を歩いていたが、道ばたにいたネコを見つけたので嬉しくなり、思わず抱き上げていたが、その時、目の前の橋の上に斬られた警官が倒れ込むのを観てしまう。

さらに、その後から、編み笠をかぶって、血まみれの刀を手にした異様な風体の男が橋の上にやって来たので、お前が抜刀斉ですか?!何の目的で、神谷活心流を騙るのです!と、気丈にも香は下から声をかける。

それに気づいた鵜堂は、橋から下の道に飛び降りて来ると、木刀で、しかも女か…、こんなもので何が出来る?と薫を嘲る。

血を浴びてこそ刀…、あの世で思い知れ!と言いながら、薫を斬ろうと迫るが、その時、どこからともなく薫の身体に飛び降りて来て、鵜堂の前に立ちはだかったのは剣心だった。

驚く薫に対し、剣心は、忘れ物でござるよ…と言いながら、先ほど渡された手ぬぐいを差し出す。

その傷、その早さ…、お前が抜刀斉なのか?と鵜堂は剣心に尋ねる。

剣心の方も、目の前にいるのが偽抜刀斉と気づいたようで、両者はにらみ合うが、そこに鵜堂を追って来た警官隊が近づいて来たので、剣心は薫の手を引いて逃げ出す。

やがて、薫の方が剣心をこちら!と導き、自分の道場へと連れて来る。

別に助けてもらうつもりではなかった…などと薫は負け惜しみを言うが、その左手に傷を負っている事を知っている剣心は、早く手当をした方が良いでござると勧めたので、薫は井戸の水を汲み上げる。

無人の道場内を覗き込んだ剣心は、師範代として壁に掛かっていた薫の名札を目にする。

それに気づいた薫は、死んだ父を慕って、たくさんの人がここで稽古をしていたんだけど、半年前、抜刀斉騒ぎが始まって、家の流派の名前が出ると…、一刻も早く奴の凶行を止めないと…と話す。

しかし、それを聞いていた剣心は、止した方が良い。あの男は薫様よりはるかに強い。流儀の威信なんて、命を賭けて守るほど重いものではござらぬよとなだめようとする。

それでも薫は、剣は人を殺すための道具に非ず、人を活かす剣こそが神谷活心流、たかがるろうに風情にこの気持ちは分かるまい!と詰め寄る。

それを聞いた剣心は、人を活かす剣…と意外そうに呟くが、どのみちその傷では夜回りは無理でござる。亡き父上も、娘を犠牲にしてまで流儀を守ろうとは思っておられぬでしょうと諭す。

その頃、警察署では、浦村署長(斉藤洋介)が、犠牲になった警官達の惨状を目の当たりにして、警察に挑戦状を叩き付けたに等しい抜刀斉に対して激怒していた。

その後、薫の剣術道場に、1人の薄汚い少年がやって来る。

今や、道場に通うただ1人の門弟となった明神弥彦(田中偉登)だった。

その直後、見知らぬ若者たちが、勝手に外したらしき道場の看板を背負って道場内になだれ込んで来る。

あるお方が、高い金でここを買うと言っている。てめえの道場から人殺しまで出しやがって…などと、そいつらは勝手な事を言いながら、道場を壊し始める。

弥彦は、そんな若者たちを止めようと飛びかかるが、簡単にはね飛ばされ、偉そうな事は強くなって言いなさいとからかわれてしまう。

彼らは土足のまま道場内に上がり込んで来ると、薫の目の前で、道場の看板を蹴り割ってしまう。

さすがに薫は激怒し、許さん!と気色ばむが、その時、前に出たのは剣心だった。

確かにその方が言っているのは、一度も手を血で汚した事がない人間の言うきれいごとでござる。しょせん刀は人殺しの道具…。しかし今は、そんな真実よりも、甘っちょろいきれいごとの方が好きでござるよと剣心は、若者たちに伝える。

いきなり現れた剣心に戸惑いながらも、粗暴な若者たちは気にせず挑みかかって来るが、あっという間に剣心は木刀で彼らを打ち据えてしまう。

さらに、残った首領格の若者も、逆刃の剣の峰の部分で叩きのめしてしまう。

剣心は、唖然としている薫と弥彦に、自分の流派は、古流剣術飛天御剣流(ひてんみつるぎりゅう)であると教える。

薫は、あなたが…と絶句する。

そこに、近所の町民たちが、騒ぎを聞きつけて集まって来る。

さらに警察もやって来たので、薫は事情を説明しようとするが、それを制すように、剣心自らが、何もかもこんもるろうにの拙者のせいでござるよ。この道場には何の関係もない事でござるよと自ら名乗り出たので、彼はそのまま警察署に連行されてしまう。

薫は、連行されて行く剣心に対し、るろうにさん、名前くらい教えなさいと声をかけたので、緋村剣心と答える。

剣の心?薫もそう不思議そうに呟き返す。

警察署に来た剣心は、鉄製の牢に入れられる。

そんな剣心を、先に牢に入っていた男が、じっと見つめていた。

その直後、久しぶりだな、人斬り抜刀斉!と言いながら、牢の前にやって来たのは藤田五郎だった。

賭場伏見の戦い以来の再会だな?話がある、出ろ!と言い、藤田は剣心を牢から出してやる。

人斬り抜刀斉だと?先ほどから剣心を見つめていた男が驚いたように言う。

剣心が連れて来られたのは、山県有朋のいる部屋だった。

久しぶりだなと剣心を迎えた山県有朋は、腕の立つるろうにがいると聞けば探させていたのだが…と、以前から剣心を探していた事を証す。

そして、斎藤一は藤田五郎と名を変えて、自分の下で力を貸しているとも事も教える。

その藤田が、今、巷にアヘン、通称「蜘蛛の巣」と呼ばれる薬が出回っており、これを放置しておけば、やがて日本も、清のようにイギリスの植民地になってしまうかもしれん。これを広めている奴は、もっと大それた事を考えているに違いないと剣心に教える。

山県は、剣心も陸軍の要職に付き、維新を成し遂げるため、自分に力を貸してくれぬかと誘う。

しかし、剣心は、人斬り稼業をやっていたものが要職に就くなんて…と、拒否したので、ふぬけになったのか!何だ、この無様ななりは!と、剣心の逆刃の剣を観て藤田はいら立つ。

そして、きれいごとを言う前に、まずは自分の身を守ってみろ!と言いながら、斬り掛かって来る。

縁側から、雨の降る庭先に蹴落とされた剣心は、必死に逆刃の剣で応戦するが、藤田の剣は、その逆刃の剣を剣心の右肩に押し付けて来る。

お前に向いた刃は、やがて、お前を苦しめる事になるぞと嘲る藤田の言葉通り、逆刃なので、剣心の刀は相手に押されれば押されるほど、自分の右肩に食い込んで来る。

それでも、剣心は、拙者は過去を捨てた身、もう人は斬らん!と必死に耐え忍ぶ。

見かねた山県は、もう良い!すまなかったと詫びて、剣心を放免してやる。

道場で薫の姿が見えない事に気づいた弥彦は、外に探しに出るが、その時、警察署から逃げ出して来た高荷恵とぶつかる。

恵は、お願い!助け!と言うので、弥彦はやむなく道場へ連れて行く。

東京警視庁第四署を釈放されて出て来た剣心は、雨の中、薫が傘を持って迎えに来ているのに気づく。

行く所ないんでしょ?うちに来て…、助けてくれたから…と薫は誘うが、剣心は、分かったでござろう…、拙者が人斬りだったと言う事が…と顔を曇らせる。

しかし薫は、知らないわ、そんなの…、私があったのは剣心と言うるろうに。誰だって騙りたくない過去の1つや2つはある…と理解を示す。

道場に戻って来た薫は剣心に、改めて、弥彦を、口は悪いけど筋は良いのと紹介する。

弥彦は、俺が先輩だからなと偉そうに威張るので、剣心は苦笑しながら、よろしくでござると挨拶する。

その時、私にも紹介してよと言いながら、庭先の風呂場から出て来た恵に、薫は唖然とする。

るろうにの剣心だと挨拶すると、恵も高荷恵と名乗り、弥彦は薫に、申し訳なさそうに恵を道場に連れて来た事情を説明する。

その後、薫は、剣心の着替えとして、父親が来ていた緋色の着物を持って来る。

あなたに合うの、大柄な父の若い頃のしかなくて…、派手かしら?と案ずる薫であったが、剣心は、結構でござるよと感謝しながら、その着物を身につける。

緋色の着物を着て、道場の庭先に立った剣心は、また、人を活かす剣…と呟く。

薫は、剣心に助けてもらった礼として、牛鍋屋に連れて来るが、剣心の横に当たり前のように恵が座って、図々しくも自分もごちそうになるだけでなく、親し気に剣心の世話まで焼くので、どうしてあなた、ここにいるの?とつい嫌味を言ってしまう。

牛鍋屋で働いている妙(平田薫)と言う娘も、道場、大変やったわねと、顔なじみの薫に言葉をかけて来る。

そこにやって来たのが、武田観柳とその手下たちだった。

それに気づいた恵は、厠へ行く振りをして、奥に姿を隠す。

道場を1人で守った英雄だってね?そう馴れ馴れしく言いながら、剣心に近づいて来た観柳は、貿易商をやっているものだと名刺を渡すと、鞄に詰めて来た金を見せびらかしながら、自分の用心棒になってくれないかと頼む。

しかし、剣心は、お断りするでござると即答したので、これでは不満かな?と観柳は、鞄の中の金を示しながら、武士は食わねど高楊枝ですか?士族は見る見る落ちぶれている。今や盗賊全員士族崩れ。自分が侍だったって事忘れて、楽しく生きる事、覚えろや?と居丈高に言って来るが、その時、俺を雇ってくれ!と脇から声をかけて来たものがいた。

店に入って来たのは、警察から釈放された喧嘩屋相楽左之助(青木崇高)、牢の中で剣心をじっと観察していた男だった。

この金に見合うだけの腕があるのか、試してみるかい?伝説の緋村抜刀斉様よ…と左之助は、剣心を挑発する。

その様子を、奥から恵はジッと観察していた。

剣心は、店の中では迷惑になるので…と言いながら、左之助を外に連れ出し、橋の上で対峙する。

左之助は、斬馬刀と言う、昔戦で馬を斬ったと言う巨大な刀を見せながら、錆び付いているが、叩き潰すには今でも使える。長州藩のために働いていた14〜19歳までのお前だが、この10年、お前の姿を観たものはいねえ!と言いながら、斬馬刀で攻撃して来るが、ひらりひらりと身を交わす剣心は、通りかかった船頭が使っていた竿を手にすると、それを使って、向こう岸に飛び移る。

そんな身軽な剣心にいら立った左之助は、力任せに斬馬刀を振り回して追って来るが、刀を収めるでござる。御主とは剣を合わせたくない。剣を合わせる理由がないと言いながら、剣心は、橋の欄干に飛び移る。

あんな男のためにその腕をくれてやるでござるか?と剣心は、この勝負を興奮気味に見つめている観柳の事を左之助に問いかける。

その観柳、喧嘩屋!さっさとぶっ潰せ!と叫ぶが、少し気持ちが醒めたらしい左之助は、また、警察に引っ張られるのはしゃくだからな…と言うと、終わりだ、終わりだ!と周囲の野次馬たちに声をかける。

剣心は、心配して駆け寄って来た薫や弥彦に、お騒がせいたしたと謝る。

その後、屋敷に戻って来た観柳は、あれは本物だ。巧くやってくれ。決して抜刀斉の怒りを買わぬように…と、偽抜刀斉役の鵜堂刃衛に頼む。

刃衛は、血が足りない…、まだまだ血が足りない…と呻く。

偽抜刀斉の辻斬りは続いた。

その事件現場を調べる藤田。

たまたま、その現場を通りかかった剣心は、同行していた薫と弥彦に、一度人を殺めると後戻りできなくなる。それが人斬りと言うものでござるよ…。先に戻っていて下さいと頼む。

剣心に気づいた藤田は、被害者は、道場を襲った男たちだと言い、お前があの時斬っていれば、、護衛の警官まで巻き添えをにならずにすんだのだと悔し気に言い聞かす。

その時、斬られた警官の妻らしき女が駆けつけて来て、遺体にすがって泣き始める。

その姿を観た剣心は、14年前の京都で、誰もが安心して暮らせる新時代のために…と頼まれて、人斬りをやって来た時分の事を思い出す。

(回想)桜が散る春の日、祝言を迎える花婿とその友人たちを路地で待ち構えていた剣心は、ためらう事なく、友人達全員と花婿を斬る。

しかし、その花婿は、死ねない…、死にたくない…、俺には大事な人がいる…、死ぬわけにはいかないんだ…と呻きながら立ち上がったので、剣心は、再びたちを浴びせるが、花婿はそれでもなお立ち上がろうとする。

何度も斬りつけた剣心は、思わぬ相手の抵抗で左頬に傷を受けてしまう。

怒りの気持ちも込め、剣心は、その瀕死の花婿にとどめを刺すが、その後、駆けつけて来た花嫁が、雨の中、倒れた夫にすがりついて号泣する様を、野次馬に混じって剣心も観てしまう。

俺のしている事は正しいのか?俺はただの人斬りだ…、剣心の心に迷いが出た瞬間だった。

(回想明け)竹林の中で佇んでいた剣心は、左頬に残る十文字の傷をそっとなでてみる。

そこに、薫が近づいて来て、戻って来ないから…、どっかに行っちゃったんじゃないかと思って…と、いじらしいことを言うので、剣心は、わざと快活に、腹が減ったでござると言ってごまかす。

その頃、武田観柳では、外国から届いた木箱を開けている所だった。

中に入っていたのは、新品のガトリング銃であった。

それを観た用心棒、牧師姿の戌亥番神(須藤元気)、ドクロの仮面をかぶった(綾野剛)も、こんなものが本当に存在するとは…と目を丸くしていた。

観柳は、地図を拡げると、薫の道場辺りを指し、あの辺りを潰して港を作り、日本中に、否、世界中にアヘンを売るんだ。

アヘンで儲けた金で武器を買えば天下が取れる。言わば観柳帝国だ。俺が新政府に取って代わると言い放つ。

始まるぞ、目を覚ませ抜刀斉…、鵜堂刃衛は不気味に囁く。

道場の庭にある井戸の所にいた恵は、外印に見つかり、こんな所にいたとはな…。お前がアヘン精製に加わった事はまぎれもいない事実…、俺たちと一蓮托生だと告げ、仲間だから教えてやろう。気をつけろ!と言い残して去って行く。

その日の道場での夕食は、分担制で作ったが、薫が焼いた魚はこげていたので、稽古した方が良いぞ。結婚するなら料理のうまい女って言うからなと弥彦がからかう。

薫がむっとしていると、戸を叩く音が聞こえ、ぐったりした子供絵を抱えた近所の夫婦ものが道場に入って来る。

急に身体がしびれたって!と言うので、医者は?と薫が聞くとm、この辺の医者は行方が分からなくなっていると言うではないか。

恵は、何故か、1人、井戸で水を口に含んでいた。

屋敷にいた武田観柳は、これで道場が手に入る…とほくそ笑んでいた。

道場には、喧嘩屋相楽左之助も手伝って、次々に具合が悪くなったらしき町民たちを道場内に運び入れて来る。

流行病か?誰か医者を呼べ!と左之助が叫ぶが、それに応じるように、医者ならいるわ…と答えたのは恵だった。

殺鼠用の毒物に違いないが、井戸水はダメ!毒が混入されている。ひまし油を買って来て!水は煮沸して使う!近所の漢方医を捜して!などと指示を出し始める。

取りあえず、道場内に、病人達を寝かせ、呼ばれた漢方医は、必死に薬を調合し始める。

取りあえず、治療が一段落し、近くの川縁で恵が一服していると、そこに剣心がやって来る。

許せない!人の命を何だと思っているの!怒っている恵に対し、そろそろ本当の事を話してくれませんかと剣心が話しかける。

その頃、童女でまだ薬を作っていた漢方医は、あの人が高荷恵さんでしたか。医者をやっていて高荷家の名を知らんものはいない。由緒ある家柄だったが、会津線の時、みな戦死したと聞いていたと薫に教える。

川縁の恵は、あんた人斬りでしょう?と剣心に逆に問いかけ、人に話を聞く前に、自分から話すのが筋じゃないかしらと応じていた。

その剣で、さぞ何人もの命を奪って来たんでしょうね?その傷はご自慢の傷?何かの勲章かしら?と剣心の左頬の傷をからかうと、この傷は、若い侍に付けられたものでござる。もう一つの傷は、その男の妻になるはずだったものが付けたもの…。数えきれぬほどの人を殺めてきましたと剣心は正直に教える。

すると、恵の方も心を開いたのか、私は親もいない。頼るべき親戚もいない。観柳に拾われて、あいつの女になった…と自分を語り始める。

お互い利用しあっただけなの。あいつはアヘンで儲けるため。私は生きるため…、いつしか恵は、アヘンの実験で多くの犠牲者を出した過去を思い出し泣き出していた。

剣心も、観柳の為に病気で苦しめられた人々や、目の前で泣いている恵、250人もいると言う観柳の私営団の事等を思い浮かべていた。

私営団は、みんな腕利きの士族崩れのはずだった。

道場に一旦戻り、観柳の屋敷に出向こうと決意した剣心に、事情を察した左之助も付いて行くと言い出す。

その時、薫が、恵の姿が見えないと言って来る。

まさか…、剣心が案じたように、恵は、これ以上、犠牲者を増やすまいと、自ら、武田観柳の屋敷に舞い戻っていた。

薫と弥彦も一緒に行くと申し出るが、剣心は、2人は道場を守ってくれと言い聞かす。

部屋に連れて来られた恵を観た観柳は、必ず戻ると思っていました。あなたの帰る所はここしかありませんからねと笑いかける。

しかし、恵は、私が戻って来たのは、あなたを殺すためです!これが私の償い!と言いながら、隠し持って来た短刀を突き出すが、あっさり手下たちから止められ、観柳は恵を蹴り付ける。

その時、屋敷の門を開く音が聞こえて来たので、付いたようだな…と、事の予想をしていた鵜堂刃衛が呟く。

ベランダから庭先を見下ろした観柳は、あの男だ!緋村抜刀斉!と叫ぶと、剣心と左之助に飛びかかった私営団の連中に、殺れ!と命じながら札束を撒き始める。

分からん…、何の理由があって…、何の得があって…と観柳は、剣心たちの行動の意味が分からない様子だったが、損得で動く男なら、今頃、維新の幕閣にでも出世していたでしょうと外印が答える。

観柳は、手下に鞄を渡すと、自分に代わって札束を下に撒き続けさせる。

鵜堂は恵に、お前に一つ頼みがあると言いながら迫る。

大格闘の末、私営団を全滅させた剣心と左之助は、洋館の中に入って来る。

そこには、用心棒の戌亥番神と外印が待ち構えており、俺の相手はどっちだ!と戌亥番神が吼える。

拳には拳!喧嘩屋の出番だ!早く言ってくれ!と左之助が名乗り出たので、剣心はかたじけないと礼を言い、二階に上がる。

お前が抜刀斉か?と聞いて来た外印に、恵殿はどこだ!と聞く剣心。

助ける価値あるのか?と嘲って来た外印に、助ける価値のない人間なんていない!なぜ、観柳に魂を売ったんだ!と剣心は問いかける。

ドクロの面を取った外印は、金髪の青年だった。

平和な時代では食って行けないからだ!と答える外印。

下の台所では、戌亥番神と左之助の壮絶な殴り合いが続いていた。

外印は、拳銃を撃って来たので、素早く身を交わす剣心。

台所では、左之助が倒れるが、何とか立ち上がると、その場にあった肉をいきなり食い始める。

相手にも投げてやろうとするが、俺は菜食主義者だと番神が言うので、酒を投げてやった左之助は生卵を飲む。

腹がくちくなった2人は、再び殴り合いを始める。

二階では、ナイフに武器を変えた外印が、散々人を斬ってきたお前が、逆刃の剣等使うな!と言いながら、素早い身のこなしで、剣心に迫っていた。

台所では、楽しかったぜ!と言いながら、左之助が番神をバックドロップで気絶させていた。

二階では、ようやく本気を出して来たな…と外印が剣心を挑発していた。

何が、殺さずの誓いだ!殺さずして、この戦いを終われるか!と挑んで来る外印に、終わらせてみせるよと応じる剣心は、相手の腹を叩いて倒す。

そこに、下から左之助が上がって来るが、その場の惨状に、派手にやっちまったな…と呆れてみせる。

倒れた外印は、待て!まだ勝負はついてないぞ!と挑むが、起き上がれない相手を観た剣心は、もう勝負はついたでござるよと言い残し、左之助と共に観柳の部屋の前まで来る。

その時、部屋の中からいきなり、ガトリング銃を乱射して来たので、2人は素早く脇へと飛び退く。

ヒュ〜!たまんねえ〜!と喜んだ観柳は、手下から葉巻を受け取ると、それに火をつけようとするが、また、剣心が動こうとしたので、ガトリング銃を撃ちながら、煙草くらいゆっくり吸わせろよとぼやく。

その時、あいつを斬るのなら手を貸すと言いながら、剣心に近づいて来たのは藤田五郎だった。

お前ん所の子供が教えに来たと言う。

弥彦が知らせに行ったらしい。

あの銃は、狙って撃つ方向の反対側が死角になる…と、藤田は銃の弱点を教える。

それを聞いた左之助は、負けたよと言いながら、入口に姿を現すと、剣心も、降参でござるよ…と入口に姿を現したので、観柳はどちらに銃を向ければ良いのか迷いながら、剣を置け!俺に謝れ!俺にひれ伏せ!着物を全部脱いでひれ伏せ!と怒鳴る。

それに対し、調子に乗るな!と左之助が叫びながらものを投げつけると、そちらに観柳が気を取られた隙に、藤田も部屋に入って来る。

そちらに観柳が気を取られた瞬間、大きくジャンプした剣心はシャンデリアを落とし、ガトリング銃の上に降り立ち、剣を観柳に突きつける。

これでは、観柳はどうしようもなくなる。

金で買えないものが何だか分かるか?今お前が乞うているもの。命だ!と言った剣心は、一振りで、観柳のかけていたメガネを斬り落としてみせる。

1人残っていた手下も、左之助が蹴り倒す。

これでやっとお前を殴れるって訳だと言いながら、観柳に近づいた藤田は、これからは俺の仕事だ、行け!と言ってくれたので、かたじけないと礼を言った剣心と左之助はその場を立ち去り、恵の元へと来ると、待たせたでござると言葉をかけるが、恵は焦ったように、急いで!薫さんが人質になる!と叫ぶ。

目が覚めたようだな…、そう、かがり火が焚かれた森の中で目覚めた薫に声をかけて来たのは鵜堂刃衛だった。

道場から薫を拉致して来た鵜堂は、お前を人質にすれば、抜刀斉は来る…、そろそろお出ましのようだ…と呟くと、はたして、剣心が近づいていた。

怒っておるな?と鵜堂がからかうと、薫殿を巻き込んだお前と、それを阻止できなかった俺自身にな…と剣心は答える。

俺が殺せるか?鵜堂が嘲るように、剣心に斬り掛かる、剣心が酒場の剣を逆手にして斬り返すと、鵜堂もまた、同じように返してみせる。

まだだな〜!まだお前は昔の抜刀斉には遠く及ばねえ!と鵜堂。

両者の技量はほぼ互角のようだった。

鵜堂は、縛られて転がっていた薫の目を睨みつける。

「二階堂平法、心の一方(しんのいっぽう)」をかけた瞬間だった。

薫は急に苦しみだす。

保ってせいぜい2分、時間がないぞ!と鵜堂は剣心に知らせる。

「心の一方」とは、一旦かけるともう俺にも解けん。

解く方法は2つ、1つは自力で解くか、術者を殺して剣命を断ち切るかしかないと鵜堂が言うので、ならば…と応じた剣心は、必死に鵜堂に斬り掛かる。

その間、身体が動かない薫は、近くに落ちていた懐中時計の針を必死に見つめていた。

遊びは終わりだ…、殺してやるから掛かって来い…、そう言う剣心の顔つきは、今までの優し気なものではなく、鬼気迫っていた。

大きく跳んだ剣心の剣が、鵜堂の頭を勝ち割る。

血まみれの顔で、剣心に投げキッスをしてみせる鵜堂は、それでも倒れない。

剣心は、刀を鞘に収めるが、これが抜刀流の構えか?と喜ぶ鵜堂に対し、刀と鞘を同時に抜くと、鞘の方で相手の右手を打ち砕く。

飛天御剣流(ひてんみつるぎりゅう)!これでお前の息の根も!薫殿を守るため、俺は今一度、人斬りに戻る!剣心の顔が鬼になった瞬間、止めて!と叫ぶ薫の声が響く。

それに気づいた鵜堂は、解きやがった…と驚く。

薫は自力で「心の一方」を解いたのだった。

ダメ!殺したら…、殺しちゃダメ!剣心…、必死の薫の願いが響く。

あなたが…、殺してしまった人のために…、あなたが…、今まで助けた人のために…、人を斬らなくても、誰かを助ける事は出来る…。それがあなたが…、剣心が目指した新しい世の中でしょう?

薫殿…、剣心の顔に生気が戻る。

決着をつけるぞと、まだ必死で歯向かおうとする鵜堂に、もう止せ、左腕しか使えん御主に勝機はござらん…と諭す剣心。

終わっちゃいねえよ。御主の本心は同じ人斬りが知ってるぞ。いつまで人斬りをせぬと言えるのか?地獄の縁で待っていてやる!

そう言い残した鵜堂は、左手に持った剣で、自らの胸を突いて自決する。

まだ身体の自由が効かない薫の身体を抱いて、山を下りかけた剣心の前に、警官隊と藤田五郎がやって来る。

思い知ったか?殺さずのるろうになどとほざいていても恨みは残る…と藤田が嘲ると、その恨みを斬るのが、この逆刃でござる…と剣心は答える。

いつまでそんなきれいごとを言っているつもりか?と呆れた様子の藤田は、またるろうにの旅か?と剣心に問いかける。

弱者の逃げ道か?剣に生き。剣に死ぬ。それ以外、俺たちの道はないと教える藤田だった。

館から、警官達に連行されていた武田観柳は、この場に及んでも、金で警官を買収しようとしていた。

わしは帰って来るぞ〜!と叫ぶ観柳

道場で目覚めた薫は、道場内を探すが、剣心の姿が見えないので台所に来る。

そこには、弥彦と恵がいたが、剣心は?と聞いた薫は、急に顔色を変えて、そんなバカな!と言いながら、入口の方へと駆け出して行く。

そこで、野菜を抱えて戻って来た剣心とばったり鉢合わせする。

目覚めたでござるか?と優しく尋ねる剣心。

薫を追って縁側に出て来た弥彦が、今夜の夕食は剣心が作ってくれるってさと話しかけ、今やすっかり道場に居着いていた左之助も、ああ、腹減った!と背伸びする。

時分の早合点だったと気づいた薫は、急に笑顔になって、お帰りなさいと声をかける。

それを聞いた剣心は、照れくさそうに、ただいまでござると答えるのだった。