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娘の冒険

大映オールスター作品だが、古き良き時代のロマンチックコメディとも言うべき佳作になっている。

特に、登場する女性たちが、皆現代的で知的で明るく元気に描かれており、観ていて気持ちが良い。

一方、男たちは、女上位の風潮に押され気味の、消極的でだらしなくダメな存在として対比的に描かれているのも面白い。

どちらも今に通じる感じがするからだ。

これはもちろん風刺であり、現実はこんな風に丸く収まることばかりではないだろうが、大人のロマンチックコメディとして、嫌味なく楽しむことが出来る。

特に魅力的なキャラクターになっているのが、元気一杯のわがまま娘と行った感じの京子を演じる野添ひとみ。

当時の流行だったのかもしれないが、上下のマスカラが濃く、ちょっと観、チャップリンの女性版のような印象を受けなくもない。

可愛らしいコメディエンヌとして、存在感は抜群である。

対する川口浩も、まだ大学生の学生服が似合う坊やと言った感じ。

注目すべきは、上原謙の義母を演じている北林谷栄。

この当時、まだ47歳くらいだったはずで、上原謙の方が2つくらい年上だったはずだが、濃いメイクで厳格そうな老婆を演じている。

時折、Why?などと、外交官夫人だった頃の癖が残っており、英単語を出してしまうと言う、これ又憎めないキャラクターになっている。

いかにも気の弱そうな馬鹿旦那役を演じる船越英二(船越英一郎さんの実父)や、これ又気が弱そうなキャラを演じさせたら右に出るものがない十朱久雄(十朱幸代さんの実父)、肥満気味の肉体を逆手に取って、ユーモラスなスポーツウーマンになってみせた轟夕起子など、あまりにもハマり過ぎで笑ってしまうようなキャスティングが楽しい。

もちろん、京マチ子、若尾文子、山本富士子の美貌は絶品。

ただ、ストーリー的にはやや分かりにくい所もあり、特に気になったのが、上原謙にしつこく迫るネリーと言う敵役の存在。

上原謙とバーで知り合ったと言うだけで、あれだけしつこくつきまとうのが解せないと言えば解せない。

何か、彼女と上原謙の出会いのエピソードがカットされているのではないかと疑いたくなるほど。

若尾文子が扮している秀子と言うキャラクターも、分かるような分からないような妙な設定になっている。

基本、職業は婦人記者らしいが、冒頭では、姉が病気だとかで、キャバレーのマダムの代理を勤めている。

元々、柳橋近辺で育ったと言う設定なのか、それとも取材で知り合ったのか、芸者の玉竜とか、落語家の仙之助や小唄の師匠であるますとも顔なじみらしいし、恋人役の菅原謙二は、蕎麦屋の長男で蕎麦職人をやっているはずなのに、本当は作家志望らしいことが最後になってほのめかされている。

この辺の人間関係も、分かるような分からないような複雑さである。

それでも、話を追って行くうちに、何となく観客も自己流の解釈で納得してしまうような設定とも言えなくもない。

品川隆二が、気取った歌手役でちらり登場しているのも興味深い。

余談になるが、この映画の冒頭に付いている会社クレジット。

通常、大映マークは、朝日が昇る雲海をバックに、会社マークと会社名が出ているのだが、この映画では、エンジに近い赤一色のバックにマークと会社名が出て来る。

この時代はそれが普通だったのだろうか?

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1958年、大映、中野実「パパの青春」原作、長谷川公之脚色、島耕二監督作品。

赤字に大映マークと会社名と言う会社クレジット

タイトル

私はあなたなしでは生きられない!私はあなたの赤ちゃんが欲しい!と必死に、英ちゃんこと伊丹英一(川口浩)に迫っていたのは、大学生の演劇部で、今回、はじめて、場末のキャバレーのホステス役に挑む長島京子(野添ひとみ)

しかし、その稽古を観ていた演出家の大山(根上淳)は、ダメダメ、そんなんじゃ、骨までしゃぶるメリー感じは出ないよ。「骨シャブ」って言うくらいなんだからとダメ出しをする。

でも、私、酔っぱらったことないんですもの!経験ないと演じられないわ!と京子は口を尖らせる。

その時、風が部屋に吹き込んで来て、台本等が飛ばされたので、大山は、今日の稽古はこれまでと言い出すと、英ちゃん、車持ってるか?といきなり聞き、君と京子は付いて来るんだ!と命じる。

大勢の楽団が楽器を吹きまくった後、あっという間に帰って行ったバーにやって来た大山は、京子、経験しろよ。演技の新しい道を切り開くんだ!と言いながら、酒を勧める。

京子は物怖じせず、私、酔っぱらった色気のある女になりたいの!等と言いながら、2杯立て続けに飲み干した後。その場に伸びてしまう。

背後のドアが強風で開く中、大山と英ちゃんで、伸びた京子をテーブルの上に寝かせる。

京子はもうろうとしながら、私、お色気出た?と口走り、大山は呆れたように、出たよ、ものすごく出たと言って聞かす。

京子の自宅では、元外交官夫人である祖母春子(北林谷栄)が、女中のきく(仁木多鶴子)に、京子はまだ帰らないのかいと聞いていた。

きくが恐縮して、今日も演劇の稽古があると…と答えると、あなたを叱っている訳じゃないから…と言いながらも、春子は、宏二さんは?と聞く。

きくは、又もや恐縮そうに、旦那さんもまだ…と答える。

その頃、京子の父である宏二(上原謙)は、知人の風見代議士(見明凡太朗)と、キャバレーで飲んでいた。

風見代議士は、宏二に、そろそろ再婚しろよと勧めるが、宏二にその気はないようだった。

ステージに、男性歌手ビリー三田(品川隆二)が出て来て歌い始める。

テーブルに挨拶に来た婦人記者の北原秀子(若尾文子)に、姉さん病気で君もマダム代わりで大変だねと声をかける。

十何年間もやもめ生活を続けているのはどう言う訳だい?姑さんに遠慮してるんだろ?と風間代議士が宏二に聞くと、いつも家柄がどうのって言うんで、僕は婿養子だから気になるんだと宏二は答える。

暗くなった中、酔いが少し冷めた京子は、英一に車で自宅近くまで送ってもらい、もうお色気出せるわと自慢する。

暗がりで、英一がキスをしようとするが、近所のシェパードが吼えたので邪魔される。

その時、宏二の乗った車が通り過ぎたのに気づいた京子は慌てて帰宅する。

玄関前では、運転手の巻原(石井竜一)がきくに、プレゼントをしている所だった。

きくは喜びながらも、高かったでしょう?結婚したら、こんな無駄遣いさせないわと、早くも手綱を引き締めていた。

帰宅した京子を呼び止めた春子が縁談の話を持ちかけたので、私、断然いやよ!と拒否すると、あなたのじゃないの、パパのこと考えてるのよと春子は言う。

すると、京子はがらりと態度を変え、パパを喜ばせるために結婚賛成だわ!パパの決めた人なら大歓迎よと無責任に喜ぶ。

宏二の書斎に入って来た京子は、春子から預かって来た見合い写真をトランプのように開き、1枚引かせようとする。

しかし、宏二は、京子の第2のママを作るためなら、とっくに再婚していたよとつれない返事なので、どなたか好きな人いるんでしょう?と京子は探りを入れながら、宏二の机に座り、机の上のインク吸い取り器に、「田村ます様」と書かれた文字が裏返しに転写されているのを発見する。

田村ますさんって誰なの?と京子が聞くと、宏二は慌てて、上着の内ポケットの中の手紙をそっと確認しながら、取引先の奥様だよと答える。

しかし、京子は、机の引き出しに入れられていた、紙に包んだ半衿を発見する。

自分の部屋に戻った京子は、下で車を洗っていた巻原を呼ぶと、給料いくら?といきなり聞く。

1万円で、今着ている服も月賦ですと恥ずかし気に答える巻原に、それで良く4000円もするブローチをきくさんに買ってあげられるわね?誰かがチップはずんでいるんでしょう?と皮肉を言う。

京子は、英一の車に乗せてもらい、宏二の尾行をすることにする。

宏二がとあるビルでタクシーを停めて降りたので、京子も降りて、ビルの周囲を廻りながら窓から中の様子を覗き込んでいたが、宏二は、そんな京子には気づかず、裏口から出て、別のタクシーを捕まえて乗り込む。

走り出したタクシーに宏二が乗っていることに気づいた京子は、慌てて、英一の車を呼び寄せると、再び尾行を始める。

柳橋で降りた宏二が入って行った家の前にやって来た京子は、表札が「田村ます」と「田村仙之助」の2つ掛かっていることに気づく。

中からは小唄の三味線の音が聞こえて来る。

その家の下の部屋では、田村仙之助(二代目中村鴈治郎)がおかね(浦辺粂子)と暮らしていたが、その2階では、小唄の師匠田村マス(京マチ子)が宏二を前に稽古を始めようとしていた。

しかし、宏二は、今日はちょっと急いでますから…と言いながら、持って来た半衿をマスに手渡す。

そんな二階の部屋の真下に忍び込んだ京子と英一は、中の会話を聞こうとする。

宏二はモジモジしながらも、結局、何も言わないまま帰ってしまう。

その直後、京子と英一は、田村家に入り込むと、こちらのお弟子に入りたいと仙之助に告げる。

取りあえず、仙之助の部屋で待っていた2人だったが、そこに、同じくますの弟子らしい若旦那風の浅井明(船越英二)が、一升瓶を手みやげにやって来る。

京子は浅井に、大山京子と偽名を名乗る。

浅井は、踊りの切符を持って来た等と仙之助に見せる。

先に、2階に招かれた京子と英一は、そこに、夕べ父の書斎で観たのと同じ半衿が置いてあるのを発見する。

そんな2人を前に、ますは、新奇のお弟子さんをお断りしようと思っているの、実は小唄の師匠を辞めようと思っているのですと打ち明ける。

しかし、京子は、教えてくださらないとハンストやります!と言い出し、英一も、結婚なさるんでしょう?などと聞くので、ますは面食らってしまう。

辞めるまで、私たちをお弟子にしてください!都合が悪くなったら、いつでも首にしてくださいと京子は申し出る。

では、どちらから教えますか?と聞かれた京子たちは、2人一緒にお願いしますと言い、「虫の音」と言う曲をますに合わせて歌い始めるが、英一は大きな声をがなり立てるだけで、京子は、ちょっと、英ちゃん!(ますの歌が)聞こえないよ!と怒る。

稽古を終えた京子と英一は、銭湯帰りの仙之助を待ち伏せ、どこかで一緒に飲みませんか?と誘う。

仙之助は、今日は、貰い物があるので…と遠慮しかけるが、2人が強引に誘うので、それでは…と、馴染みの鰻屋「かわ村」に連れて行く。

看板娘のおたき(叶順子)が出迎え、柳橋のおじさん来たよ!と、母のうめ(浪花千栄子)を呼ぶ。

うめは、馴染みの仙之助が、見慣れぬ若い2人連れなのに驚きながらも喜ぶ。

仙之助は京子らに、高座に出れば飲み代くらい稼げるんだが、実はこれでも噺家だったんだが、ますの奴が、年が年だから引いてくれって言うものだから…と自己紹介する。

京子は、お師匠さんには好きな人いるんじゃない?と探りを入れ、英一も、浅井って人はどうなの?などとぶしつけな質問をする。

すると仙之助は、株屋の若旦那だよと答えるが、ねえ、他にいない?とさらに京子は聞く。

それらしいのがいるよ…と仙之助は思い出し、あんたらの知らない人だ。長島さんと言う貿易会社の社長さん。だが、気が弱い。うるさい姑と先妻の娘がいるらしいんだが、これがとんだロカビリー娘らしい!長島さんの娘もあんたみたいだと良いんだけど…と京子を目の前に教える。

その時、うめが、二階に同好会が集まっていると仙之助を誘いに来る。

うめの息子でウナギ職人の芳夫(菅原謙二)は、姉さんの病気が治ったので、今日から私は無罪放免と言いながら恋人の北原秀子がやって来たので、用意しておいたうな丼を出す。

秀子がその丼を食べ終えた頃、たきが、兄さん、二階が呼んでいるわよと芳夫に言いに来たので、仕方なく芳夫は秀子と一緒に二階へ上がると、そこでは、ひょっとこやおかめの面をかぶった仙之助やうめが、仲間と一緒にバカ踊りに興じていた。

仙之助は、芳夫を手招きして、一緒にやろうと誘うが、芳夫は、今、飯を食ったばかりで、腹が一杯だからダメとジェスチャーで答える。

その間、1階でうな重を食べていた京子は、どうしたら良いの?と英一に聞き、浅井を牽制するか…と作戦を練る。

柳橋芸者玉竜(山本富士子)が舞台で踊りを披露していた。

浅井は、なかなかやって来ない隣の席に来るはずのますを待っていた。

すると、視線に、白い着物が見えたので、安心して横を観ると、そこに座ったのは見知らぬ若い女性だった。

怪訝そうにしていた浅井だったが、やがて、そのとなりの女性が自分の手を触って来たではないか!

浅井は自然と、その女性とロビーに出ることにする。

その女性とはもちろん京子だった。

京子は、私、浅井さんとおつきあいしたいの。師匠さんから切符を譲ってもらって来たのなどと馴れ馴れしい態度で甘え始める。

いつかの大学生さんは?と浅井が聞くと、大学生なんて魅力ないですと京子は答えるが、柱の後ろには、スーツ姿の英一が隠れて2人の様子をうかがっていた。

そこにやって来たのが、玉竜の踊りを観に来た女性記者の北原秀子で、浅井を観かけると、もう踊り終わったの?と話しかけ、こちらの方は?と京子のことを聞く。

京子は自ら、姪の京子ですと挨拶したので、突然、姪御さんが現れたわねと秀子は浅井に皮肉を言って場内に入る。

浅井は、その後もべたついて来る京子に、本気にしますよなどとにやけながら、売店の土産物等いじっていたが、英一はその売店の中に潜り込み、店員に詫びながら監視を続けていた。

その頃、宏二は、ますの立てたお茶を飲んでいたが、これ、付けてみましたのよとプレゼントされた半衿を身につけているのを見せ、どうして長島さんは再婚なさらないの?と聞く。

もう11、2年にもなりますからね。一度つまらない女に引っかかったことがあり、母にとっちめられまして…。でも最近ちょっと思い直してるんですよ…等と宏二は打ち明けながらも、今日もちょっと友人と会う約束があるものですから…と言い残し、稽古もせずに帰ってしまう。

浅井は京子を料亭の座敷に連れ込み、僕も最近近代感覚に目覚めましてね…などと言いながら、じりじりと側に近づこうとしていた。

京子の方も、そんな浅井から離れようとしながらも、私、何だかお師匠さんに悪くて…、浅井さん、お師匠さんしか眼中にない癖に…、玉竜さんのこともね等と言いながら演技は続けていた。

英一は、その座敷の外にかがみ込むと、下障子に指で穴を開けて中の様子を覗き込む。

そして、京子の目の合図に気づいた英一は、急に障子を開け、それが近代感覚ですか?自分は警察のもので、未成年者の補導をやっている。本官と一緒に署まで来た前!と偉そうに告げる。

英一は付けヒゲを付けて変装していたが、京子を連れ部屋の外に出た時、そも付けヒゲがとれてしまったので慌てて逃げ出し、アッ、君!と、そのヒゲを拾った浅井は英一の正体を見破る。

英一の車で家の近くまで帰って来た京子は、降りてから、面白かったわねと英一に話しかけ、今度はどうすれば良いの?と聞くが、英一は、キスさせれば教える等と言いながら顔を近づけるが、又しても近所の犬に吼えられてチャンスを逃がす。

君のパパが積極的になれば良いのだが…と、英一は次なる作戦を考えだす。

温泉宿の4畳半なんかが良いらしいと英一が言うと、パパの縁談まとめられるの、私たちだけよと京子は真剣な目で訴える。

家の中では、宏二が原光子(轟夕起子)と言う体格の良い女性が写った見合い写真を持った春子から、勇蔵の持って来た話で、体育大の先生をやってるそうよと紹介されていた。

唖然としつつも宏二が書斎に入ると、そこで待っていたのは、着物姿の京子だった。

どこへ行ってたのだい?と聞かれた京子は芸者さんの踊りよと答え、猟銃を手入れし始めた宏二に、猟に行くの?いつ?と聞く。

宏二は、土曜、日曜と答えるが、京子が何時としつこく聞くので、何か企んでいるのかい?と笑いながら警戒する。

ところが、翌日、社長室に出向いた宏二は、猟に同行する予定だった風見から急に行けなくなったと電話を受ける。

そこにやって来た叔父の勇蔵(十朱久雄)は、あの写真観てくれたかい?女子体育大の先生だよ、宏二君と聞いて来る。

君くらいの年だと、常に男性を意識しているはずなんだが?と言うので、おじさんも男性を感じますか?と宏二が聞くと、2日に1度くらいは…と言って、何を言わすんだ!と憮然とする。

その時、電話がかかって来て、パパ、私よ、こないだバーで会ったじゃないと言う女性の声が聞こえて来たので、宏二は、目の前にいる勇蔵を気にして、あいにく今日は都合が悪くて…と、思わず他人行儀な返事をして電話を切ってしまう。

公衆電話から宏二に電話をしていたのはネリー小池(若松和子)と言う派手な女だったが、宏二の返事に合点が行かなかったのか、直接会社を訪れることにする。

宏二は、ネリーが押しかけて来ることを予期し、さっさと猟に出かけてしまう。

その直後、ネリーが社長室は入り込み、机の下に落としたパイプを探していた勇蔵を宏二と勘違いし、尻をバッグで叩く。

驚いて立ち上がった勇蔵の顔を観たネリーは人違いに気づき慌てるが、勇蔵の方は、女性から知りを叩かれたりすると男性を感じるよなどと鼻の下を伸ばし、宏二君なら猟に出かけたよと教え、自分の名刺を渡す。

その時、秘書が、奥様がお見えになられましたと知らせに来たので、ネリーは、社長室の別のドアから出て行く。

勇蔵の妻、安代(村田知栄子)は、あなたのために湯たんぽを買って来たと言って取り出す。

この安代が春子の妹であり、勇蔵も又婿養子なのであった。

宏二は猟に出かけたと夫から聞いた安代は、また、あそこね…と言いながら、壁にかけられていたホテルの写真を見る。

そのホテルから出て来たのは、京子と英一に誘われて付いてきたますだった。

英一が、適当に猟銃を撃つと、京子が走って行って、あらかじめ用意しておいた鳥の剥製を取り出して見せる。

ますは、来て良かったと喜んでいた。

そんなますを、目指す獲物がいるはずなんだが…等と言いながら、紅葉が始まった林の中に誘い込んだ京子と英一は、近くから銃声が聞こえると、さっと身を隠す。

突然、先行していた2人の姿を見失ったますは、大山さ~ん!と京子の偽名を呼んで周囲を探し出す。

しゃがんで身を隠していた京子は、巧く行くと良いわねと英一に話しかける。

ますがそこで出会ったのは、猟犬を連れた宏二だったので、ますは驚く。

宏二の方も意外な邂逅に感激したようで、連れとはぐれたと聞くと、一緒に大山の名を呼びながら、ますと一緒に探し始める。

それを観ていた英一も、良かったなと京子に話しかける。

ますは宏二に、私、この山の麓で生まれたんですと歩きながら話す。

宏二は、見つかりませんよ。もしかしたら帰ったのかもしれませんねと言い、ホテルに戻ってみることにする。

その頃、先に部屋に帰っていた英一は、部屋の電気のスイッチをわざと壊し、電気が付かないようにしていた。

そして、ムードの方は僕が引き受けると言いながら、トランジスタラジオを手に、庭から外へ出て行く。

そこにますが戻って来て、京子の姿を観ると、やっぱり帰ってたのねと安心する。

お邪魔かな?と思って、浅井さんなんか問題じゃないでしょう?などと、面食らっているますに一方的に話しかけた京子は、ノックの音が聞こえたので、あの人だわ!私かくれるわと言って、急いでクローゼットの中に身を隠す。

そこに宏二が入って来て、食堂の準備ができてないようですから、ここで待たせてもらっても良いですか?とますに尋ねる。

ますは、髪を直してきますと言って、化粧室へ入る。

ソファに腰掛けた宏二は、暗くなったので部屋の電気を付けようとするが、スイッチを押しても付かない。

外の木に登っていた英一は、トランジスタラジオのスイッチを入れ、ムーディーな音楽を流し始める。

宏二は、山の空気でも嗅いでくださいと言いながら窓を開け放つと、寒くありませんか?とますに気遣いを見せる。

良い雰囲気になって来たと、クローゼットの中に身を潜めていた京子は喜んでいた。

そんなホテルに、あのネリーがやって来る。

その時、クローゼットの中にいた京子の目の前に蜘蛛が降りて来たので、思わず声をあげかけるが、かろうじて手で防ぐ。

しかし、宏二は、何かがいるみたいですねと気づいたらしく、クローゼットに近づこうとしたので、ますは慌てて、こちらはじめてですか?と話をそらす。

しょっちゅう来ていますと宏二は答えクローゼットから離れると、あなたは、どうして結婚なさらないんですか?とますに問いかける。

怖いんですとますは答える。

以前、これはと言う縁談があったんですけど、精彩じゃなくて二号さんだったものですから…、男の人って怖いわ。それ以来、男の方を警戒してますのと言うので、でも、それで結婚を諦めたって訳じゃないでしょう?と宏二は聞き返す。

本当に私を愛してくださる方がいれば…と、ますが答えかけた時、いきなり部屋に乗り込んで来たネリーが、パパ、酷いわ!再婚するつもりなのね!と宏二に詰め寄ったので、ますは、この方はお嬢様?と聞くが、宏二は答えようがない。

ネリーは、この人、まだパパに未練がありそうな情熱的な目をしているわなどとますのことを睨むので、ますは怒って、お二人とも出て行ってください!と宏二とネリーを追い出す。

クローゼットから出て来た京子は、意外な展開に狼狽しながらも、先生、これは何かの間違いですわとますを落ち着かせようとするが、ますは、いいえ、帰ってこうなった方が私のためには良かったのよ。長島さんのことを諦めることが出来て…と言い出したので、計画がおじゃんになった絶望感から、京子は泣き出してしまう。

それを観たますは、長島さんのお嬢さんが、そんなに優しかったら…と言いながら京子を慰める。

ロビーにネリーを連れて来た宏二は、君には愛情を感じてないので帰ってくれたまえ!ときつく言い放つ。

しかし、その言葉に逆上したネリーは、断然、邪魔しちゃう!と言うと、ホテルの中に戻って行く。

それを追いかけようとした宏二だったが、知り合いの先生から声をかけられたので、その場で立ち話をするはめになる。

ますの部屋に入って来たネリーは、暗がりの中に立つ男に気づく。

それは、英一だったのだが、先にラジオでムード音楽を流している中、待ってくれ!僕は君を待っていたんだ!と、部屋を間違えたと思い帰りかけたネリーを呼び止める。

ネリーは、何言ってるの?と全く相手にしなかったが、英一は演劇部で学んだ演技力で、君は全く魅力的だ!などと必死にネリーを引き止めていた。

ロビーでは、帰り支度をしたますが、ボーイに上り列車の時刻を聞いていた。

英一は、あなたの赤ちゃんを産みたい!などと、いつの間にか、京子が言っていたセリフを言っていた。

そのセリフを聞いてしまった京子は、英一が浮気をしたと思い込み、英一を蹴飛ばすと、自分もロビーに来て、先生帰りましょうとますを誘う。

これは?とバッグを渡そうとしたますだったが、京子は、それは英ちゃんの!と言いながら、ソファーに投げ捨てて、最終バスに乗るためホテルを出て行く。

後日、長島家では、春子が、今日は大切なお客様なんだから、猫は持って行きなさい!と、今の椅子の上にいた猫を女中たちに持って行かせていた。

その時、いきなりピアノでウエディングマーチを弾き始めた京子には、まだ着替えもしてないんですか!あなたにとっても大事なお見合いなんだからと春子は叱りつける。

京子は、パパ、本当にその原さんと結婚なさるの?と聞くと、猟から帰って来たら、急に宏二さんの気持ちが変わったのよ。反動みたいなものじゃないかしら?今日、床屋に行きましたよ。男が床屋に行くときは、気分爽快な証拠ですと春子は断言する。

やがて、勇蔵、安代と一緒に、原光子がやって来る。

今日は良い天気ですね。スポーツ日和と申しますか…などと席に着いた光子は、いかにもスポーツウーマンのような爽やかな発言をする。

勇蔵が、砲丸投げをしている光子の写真を春子に披露すると、春子は、その写真を、着席した宏二に見せる。

それは、片足をあげ、今正に砲丸を投げんとする、豊満な光子の姿の写真だったので、宏二は見て見ぬ振りをするしかなかった。

さらに、毎日、こうやって身体を鍛えていますと言いながら、光子がバッグから取り出してみせた写真は、バーベルを上げている写真だったので、宏二は、大したものですね。あなたがいれば110番はいりませんね等と皮肉を言うが、その時、ヒャッホーと奇声を上げながら、2回から階段の手すりをまたいで降りて来たのは京子だった。

パパ、私、酔っぱらっちゃった…と甘えながら宏二の側に近づいた京子は、ジョニ黒の瓶を持っていた。

そして、おじちゃま、抱いて~等と言いながら、勇蔵に抱きつく。

バカなことをするんじゃありません!と宏二は叱りつけ、安代は、呆れてものの言えません。光子さん、帰りましょう!と言うと、まだ未練がありそうな光子と勇蔵をせかして帰ってしまう。

京子は、まだ未練がありそうね…と、帰って行った光子のことをからかったので、バカ!と言って宏二はビンタする。

京子は鳴きながら二階へ駆け上がるが、残されていたジョニ黒の匂いを嗅いだ宏二は、それが酒ではないことに気づく。

京子が、再婚を妨害するために一芝居打ったんだと感じた宏二は、二階の京子の部屋に来ると、ベッドで布団に包まっていた京子に、私が悪かった。京子がパパを誰にもやりたくないんなら、パパもママなんか欲しくないと優しく言い聞かす。

すると、布団の中から、「パパスキヨ」と書かれたスケッチブックが出て来る。

パパはもう一生結婚はしないと宏二が宣言すると、違うのよ!と泣きながら、起き上がった京子が抱きついて来る。

その頃、北原秀子が仙之助の家にやって来て、日暮れまで大変ねと、ますの稽古のことを言うと、ここの所、浅井さん見えます?と尋ねる。

ここんとこ、結婚の打ち合わせで…、あいつ、山から帰って来ると、結婚しても良いと言い出してね…と、意外そうに仙之助は言う。

二階に上がった秀子を観たますは、懐かしいわねと久々の再会を喜ぶ。

お父さんには「かわ村」のバカ踊りで、しょっちゅう会うんだけど…と秀子もますとの対面を喜ぶ。

お願いがあって来たの。浅井さんと結婚なさるんですって?その結婚に反対なの…と秀子は切り出す。

本日売り切れと札がががかった「かわ村」にやって来たのは、ますから呼び出された浅井だった。

奥から出て来たたきに、田村ますさんいます?と聞くと、たきは座敷に案内する。

その時、現れたますは、何故か、浅井の座敷には近づかず、テーブルに1人座る。

次いで、玉竜が奥から出て来て、これ又別のテーブルに座る。

入口近くには、芳夫、うめ、仙之助、たきらが立っていた。

その前に登場した北原秀子は、これから裁判を始めます。まず控訴提起しますと切り出すと、被告人浅井明は、柳橋のNo.1玉竜さんと良い仲になっているにも拘らず、最近ますさんと結婚しようとしている。

ますさん、玉竜さんのことをご存知ですか?と検事のような口調で聞く。

ますは、いいえ、今日、はじめて秀子さんから聞きましたと答える。

秀子は、被告人は、1年半ほど前、株で損した時、玉竜さんから助けてもらっていますね?と聞き、浅井は、金はもう返したし、他に色々プレゼントしていますと弁解する。

秀子が玉竜にそのことを確認すると、今日は、全部、お返ししようと思って…、浅井さんとの中を清算しようと思うんですと言いながら、持っていた風呂敷を開けると、中には真珠のネックレス等がたくさん入っていた。

これを被告人にお返ししますと言った秀子は、その後、ますさんに弟子入りをしたのは転身でしょう?と鋭く斬り込むと、ますに対し、被告人は小唄には熱心でしたか?と聞く。

ますは、あまり熱心ではなかったような気がします。私も何本、三味線の糸を切ったことかなどと答えたので、それまで黙って聞いていた芳夫が、検事!フェアじゃありません。男ってものは、好きな女性がいても、きれいな女性に心惹かれるものなんだよ。家の花壇にきれいな花があっても、外できれいな花を観たら感動するだろう?それと同じさ。同じ男性として、被告人を弁護しますと反論する。

すると秀子は、りゅうちゃん、あなたにはそんなことを言う権利はないわよ!私の誕生日を2回もすっぽかしたじゃない!と素に戻って文句を言うと、とにかく、男性のエゴイズムに挑戦するわ!と意気込む。

陪審員の厳正なるご判断をと秀子から振られた仙之助 は、玉竜さんが愛しているかだと言い、うめは、浮気なんて言うのは、一種の熱病みたいなものだから、きついお仕置きをと言い、たきは、新聞に謝罪文を!と主張する。

それを黙って聞いていた玉竜は、あの人はそんな悪い人じゃありません。気が弱くてお坊ちゃんで…と言い出したので、二度と浮気をさせないために!と秀子が口を出すと、ますは、本当の愛情を分からせるために、玉竜さんしかいないんじゃないのでは?と話をまとめる。

玉竜は、皆さんが認めてくださるのなら…と恥ずかしがり、浅井も、玉竜…、俺が悪かったよ。今度こそ目が覚めました。お師匠さんにもお詫びしますと謝ると、これから一生、玉竜を幸せにしますと約束し、それを聞いていた全員が拍手する。

裁判終了後、二階に芳夫を連れて上がって来た秀子は、まだ続きがあるのと言い出し、庭にきれいな花が咲いていても、他にきれいな花を見つけちゃダメよと睨みつける。

さっきは、立場上ああ言っただけで…と芳夫が弁解すると、小説書けた?と聞いた秀子は、結婚したら巧く書けるかもしれないわね?協力のない人生ってないわと言い出したので、良いこと知ってるなと芳夫も笑顔になる。

山から帰って来た後、大学で京子に会った英一は、浮気をしたと思い込んで不機嫌な京子に、あの翌日一番で帰って来たんだぜと弁解して寄り添おうとするが、頑な京子は、私、英ちゃんよりかなり有力な人見つけたわと振り離す。

京子が目をつけたのは、風見代議士だった。

パパとその師匠を一緒にしてやりたいんだろ?と、中華料理屋で落ち合った京子からの依頼を受けた風見は合点する。

問題はあのおばあちゃんか?第難関だね…と悩む風見に、ねえ、おじ様良いでしょう?良いと言ってくれたら、私この饅頭全部食べてみせます!と宣言し、テーブルに盛られていた中華まんを頬張りだす。

後日、風間代議士は、ますの写った見合い写真を持って、長島家に乗り込むと、春子に見せる。

春子はいつも通り、家柄さえ確実なら…と言い出す。

一緒に話を聞いていた安代は、お父さんのお仕事は?と聞いて来る。

高座で落語…と言いかけた風間は慌てて、江戸文学の研究をしている。江戸文学講座をやっとられ、名誉教授ですと噓を教えてしまう。

主人なら知ってるでしょうが、あいにく今日は遅くまで重役会議があると申しまして…と安代は残念がる。

その頃、当の勇蔵は、「かわ村」の座敷でネリーと向かい合っていた。

仙之助 も別の座敷でうめと飲んでおり、年寄りは年寄り同士…などと話しかけると、うめも、仙ちゃん、楽しみにしてるよと嬉しそうに答える。

そこに、膨れっ面の京子と英一がやって来て、英一は酒一升持って来てくれ等と言いだしたので、たきは大学生のくせにそんなに飲んでいいの?などと言いながら、お銚子10本持って来る。

しかし、コップに御銚子の酒を移して飲もうとした英一は、どのお銚子にも、少ししか酒が入ってないことを知り怒りだす。

つまみは?と英一が注文すると、鼻でもつまんでいれば!とたきはつっけんどんに答えたので、調理場で聞いていた芳夫は、失礼なこと言うな!と妹を叱りつける。

そんな英一に気づいたのは、座敷から出て来たネリーだった。

こないだ私に恥じかかせた人!とネリーが言うと、英一の方もネリートの再会に驚き、僕のこと、この人と怪しいって言うんだ!と京子を指してぼやく。

芳夫は呆れ、喧嘩なら奥の座敷でやってくれと口を出すが、奥の座敷では、京子に気づいた勇蔵が、障子の隅で見つからないように隠れていた。

私を置き去りにして!とネリーが言うと、それを聞いた京子は笑い出す。

ネリーは、帰りましょう、おじいちゃん。私不愉快だわ!と怒って、奥の座敷の勇蔵に声をかけるが、勇蔵は出るに出られず、障子の下のガラス戸からこちらの様子をうかがっていたが、それに気づいた京子が、あら?おじいちゃま、どうしたの?と言いながら、奥の座敷の勇蔵の方にやって来る。

後日、京子の学校で演劇発表会が開かれる日が来る。

その日は、宏二の二度目のお見合いの日でもあり、勇蔵、安代夫婦も長島家に来ていた。

まだ行かなくて良いのとせかす春子に、新しいママと発表会に来てくれるんでしょう?と京子は念を押していた。

そして勇蔵には、「協力セヨ」「バラスワヨ」と書いたノートをこっそり見せていた。

そこに、風間代議士にともなわれ、ますと仙之助がやって来たので、京子が玄関に出て迎える。

京子の姿を観たますと仙之助は驚く。

ごめんなさい、噓ついて。長島京子ですと頭を下げた京子は、ご幸運を祈りますと言って居間に2人を送り込む。

そして、2階から降りて来ていた宏二にも、パパ、グッドラック!と言葉をかける京子。

居間に降りて来た宏二は、テーブルに腰掛けて待っていた見合い相手がますである事を知ると固まってしまう。

安代は、和服姿のますと仙之助を観て、こちら日本趣味ですわね?江戸文学をご研究だとか?と探りを入れて来る。

江戸文学?と戸惑う仙之助を観た風間代議士が、居間は、趣味で落語の方を…と助け舟を出す。

どちらの大学に口座をお持ちですの?と安代がさらに突っ込むと、ほうぼうから…と風間が口を挟む。

田村さんと言う教授をご存知ですの?と夫の勇蔵に安代が聞くと、いや…と答えかけた勇蔵は、京子に弱みを握られていることを思い出したのか、すぐに、もちろん!と答え直す。

しかし、一連の話を聞いていた不思議がっていたますが、風間さんがそんなことを申し上げたか存じませんが、うちの父は、寄席に出ていたただの噺家ですと打ち明ける。

それを聞いた春子は固まり、これはどうしたことです!と厳しい口調で言い出す。

すると、それまで黙っていた宏二が、自分が今まで再婚しなかったのは、心の底にこの人があったからですと言い出す。

長島家の家憲はご存知ですね?と春子は言い、安代も、誰が何と言っても、この縁談はダメですからねと猛反対しだす。

その時、居間を通って、京子が行ってきますと出かけて行く。

分かりますわね、宏二さんと春子は言い聞かそうとするが、その時、ますが、私にもこれまでいくつか縁談はありました。でも長島さんと付き合って、私の方が勝手にお慕いしたのです。今日、急に、風間さんの方からお話をうかがい、こんな夢みたいなことが起こるのだろうかと感激しました…と話し始める。

横で聞いていた仙之助も、私も、こんな棚ぼたがあるのかな?と。相手には鬼婆みたいな婆さんと、ロカビリー娘がいると…、こりゃ失礼!と口を挟む。

長島さんの心も分かっていました。長島さんの心だけを慕って来たのです。でも、人間には分相応と言うものがあります。私は身分違いの女と分かっています。浅はかな女とお笑いくださいとますは謝罪する。

安代は、間違いに気がつけば、それで良いのですと横柄に答える。

その時、宏二は、お母さん、僕、家を出ます!と言い出す。

大学では「トミーとメリー」の開幕直前までヒロイン役の京子が来なかったので、代役にメイクを始めさせていたが、そこに杏子がやって来たので、大山は安心する。

ところが、メイク台に座った京子が泣き出したことに気づいたので、早く顔を作って!めそめそしてたんじゃ、キャバレーの女なんて出来やしないと励ます。

長島家では、凍り付いたテーブルで、うめがテーブル上のベルを鳴らし、女中に皆さんにお茶を差し上げて…と命じていた。

舞台上から客席を見渡した京子に、来ないのかい?バカだな大人って奴は?と英一が呆れたように耳打ちする。

雪が降っている設定の劇が始まる。

通りすぎようとするトミー役の英一に、メリーよ、どうしたの?忘れてしまったの?と迫るメリー役の京子。

俺の心を踏みにじったくせに!俺を捕まえてこう言うんだろ?あなたの赤ちゃんが欲しい!って…。骨シャブリのメリーなんて言うんだ?売女め!とトミーは冷めたように答える。

この格好観て頂戴。天罰を受けてるわ。クリスマスだと言うのに、朝から何も食べてない…とメリーが訴えると、哀れみながら、トミーは財布から金を出して渡そうとする。

止してよ!コ○キじゃないわ!今では、誰にも恥ずかしくない生活をしてるのよ!骨シャブと言われていた私が愛したのはたった1人の人だった…とメリー。

本当なのか?もう1度言ってくれ!とメリーに近づき抱きしめるトミー。

その時、客席に、ますと宏二、そして春子がやって来て、空いていた椅子に三人並んで座る。

じゃあ、許してくれるんだね?僕も絶対君を離さない!とトミーがメリーに誓う。

ますと宏二の間に座っていたうめが、気を利かして、宏二に席を譲る。

かくして、ますの隣に宏二が座ることが出来た。

それを舞台上から確認した京子は、春子にウィンクをする。

それに春子が小さく手を振って答える。

トミー、嬉しいわ!とメリーが感激すると、トミーも、幸せになろうね。雪が止んだねと答える。

夜が明けたのよ。私たちを祝福して太陽が上がったわ!とメリーが言うと、行こう!とトミーがメリーの肩を抱き、舞台袖に歩いて行く。

猫が舞台を通り過ぎる。