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迷走地図

松本清張原作の映画化だが、ミステリと言うよりは政治家の内幕ものと言った内容になっている。

一般庶民が、政治家とはこんな感じなのでは?と、薄々想像するようなことが描かれているため、観客側としては、やっぱりか!と妙な安心感や、皮肉な展開に快感を感じるのだが、実は、そう思わせることが作者の狙いなのだろう。

綿密な取材もやっているに違いないから、部分部分にはモデルとなるようなエピソードもあるはずで、冒頭に出て来る、2000万円の入ったバッグを平田満演じる大串なる人物が拾ってマスコミの話題になるのは、1980年に銀座で起こった「1億円拾得事件」をヒントにした物であろう。

群像ドラマのような感じなので、特定の主役と言うべき人物は見当たらないのだが、あえて言えば、岩下志麻演じる寺西の妻文子か?

相変わらず、無表情で、何を考えているのか分からないような女性を演じている。

反面、勝新の影は意外と薄い。

この時期の勝新は、後年、物まねされるようになった、モゴモゴした不明瞭なしゃべり方になって来ている。

外見は政治家風に見えなくはないが、しゃべっているセリフは、いかにも普段言い慣れない言葉を使っていると言う、若干たどたどしさを感じるし、アドリブらしきセリフも今ひとつ精彩がない。

唯一、勝新らしいシーンと言えば、朝食を一心不乱に食べる所。

本当に、勝新がものを食べるシーンは、いつ見ても巧い!

板倉退介を演じている伊丹十三は、絶えず扇子をばたばたやっている所や、しゃがれた話し方など、明らかに田中角栄の物まねである。

出来の悪い二世議員川村を演じている津川雅彦と、軽薄なタレント議員を演じている朝丘雪路は、夫婦共に生き生きと演じており、意外と印象に残る。

ぎすぎすにやせ細ったその風貌が、何やら、エヴェンゲリヲンを連想させる宇野重吉と、ルポライター役の寺尾聰と言う親子出演も楽しい。

いしだあゆみは、この時期らしく、いかにも不幸を1人で背負っていますと言うような幸薄そうな存在だし、クラブのママを演じる松坂慶子も、この時期らしく、濃いメイクのお色気キャラである。

岩下志麻と言い、この時期の女優さんたちは、総じてステレオタイプな役ばかり演じている印象がある。

キャスティングする側の女性に求める物が、そういったワンパターンだと言うことなのだろう。

土井の事務所で、速記係をやっている女性がちょっと観、誰だか分からなかったが、にっかつ等で活躍した片桐夕子だと知り、意外な感じがあった。

この作品では全く、ロマンポルノ等を連想させるようなお色気演技などはなく、彼女は意外と美味しい役をもらったのではないだろうか?

全体としては、派手な見せ場等はないものの、そこそこ楽しめる出来になっているような気がする。

大作感や意外性も、あるような、ないような…と言った、やや中途半端な印象ではあるが…

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1983年、霧プロ+松竹、松本清張原作、古田求脚本、野村芳太郎脚本+監督作品。

国会議事堂

衆議院第二議員会館

議員秘書が、陳情団の来訪を大臣に知らせる一方、学生の就職の手配から、交通事故の処理などめまぐるしく働く姿をバックにスタッフロール

石川県の陳情団がやって来る。

タイトル

5:00AM

代議士の妻寺西文子(岩下志麻)は、自室で、気付け代わりにウィスキーを一息に飲むと、台所で準備中のお手伝いたちに、今日は紅茶の後でメロンを出してと指示を出す。

5:30AM

文子は、夫であり通産大臣でもある寺西正毅(勝新太郎)を起こすと、各社の新聞の主立った政治記事を読んで聞かせる。

6:00AM

神棚に手を打つ寺西

7:00AM

朝食を取る寺西

その後、寺西は、応接室で、近々、ルポライターの土井伸行(寺尾聰)と速記担当の佐伯昌子(片桐夕子)の取材を応接室で受けていた。

寺西は、次期総理大臣の有力候補の1人だった。

今の桂総裁は話し合いで決まったと言う噂がありますがと聞かれた寺西は、自分は入江君から2年待てと言うことだったし、桂君は2つ年上なので花を持たせてやったと言うことだよと説明する。

9:00AM

庭で待機していた後援会の真ん中に座って一緒に記念撮影をすると、秘書が、これから彼らを国会、NHKから浅草見物に連れて行くと聞き、自動車に乗り込むと自宅を出発する。

その後、寺西家にやって来た織部里子(松坂慶子)と言う銀座のクラブママに応対した文子は、秘書の外浦卓郎(渡瀬恒彦)が取り出した紙包みを手渡す。

お預かり証はどうしましょう?と里子が聞くと、文子は必要ないと答えると、お店に、その内、一度行っても良いかしら?主人にはクラブは無理なので、戸浦さん、ボディガードを兼ね、案内してくださらない?と秘書に頼む。

紙包みをバッグに入れ、寺西家を出て坂道に差し掛かった里子は、背後から猛スピードで接近して来た自転車の男から、バッグをひったくられてしまう。

転んだ際、怪我をした里子は、地面に落ちたバッグを拾い、逃げて行く男の後ろ姿を見つめるしかなかった。

寺西邸にいた外浦は、自宅から電話と言われて受話器を取ると、それはついさっき帰った里子だと分かる。

里子は、自分が言うことに何も返事をしないでと指示をした後、事故に会ったので、今、坂を降りた右の4丁目のタバコ屋にいるの。私、怪我をして動けないんですと伝える。

その後、里子の元にやって来たのは、外浦ではなく、後輩の土井だった。

外浦は動かない方が良いだろうと言う判断だった。

入院した里子を最初に見舞ったのは、友人の波子(早乙女愛)だった。

あの紙袋には、2千万は入っていた。和久さん、損するだけよ。何か言われたら、別れると言えば良いのよなどと里子はしょげた風もなく話していた。

そこに、外浦がやって来たので、波子は遠慮して座を外す。

相手はどんな奴か観ましたか?と外浦が聞いて来たので、若い学生みたいでしたと答える里子。

最初から付けられているような感じでしたか?と聞かれても、はっきりした返事は出来ない。

あのバッグに名刺や免許証は入っていましたか?と聞かれたので、身元が分かるようなものは何も持ってなかったと答えた里子は、盗まれたお金が自分が立て替えると申し出る。

しかし、キャッシュで2000万となると…と考え込んだ戸浦は、和久さんと相談してみます。今回の件は事故だ。君のミスじゃないと戸浦は慰める。

土井伸行事務所に、議員秘書の鍋屋健三(加藤武)がやって来て、スピーチの草稿を依頼する。

外浦さんと同じ東大法学部の後輩で、全共闘では理論派だったそうじゃないですかと鍋屋から言われた土井は、僕は中退ですから…と苦笑する。

鍋屋は、川村正明をご存知ですか?と聞いて来たので、革新クラブのリーダーでしょう?と土井が答えると、7人の小派閥ですが、川村はノールスで…と言うので、土井が「ノールス」の意味を尋ねると、「脳が留守」と言う地元の言葉だと言う。

大臣を3度勤めた土井公平が父親で、親の七光りと、ちょっとした面の良さ、42歳と言う若さで、婦人会等では人気があるのだが理論は持たんので、理論を付ける名スピーチをお願いしますと鍋屋は頼む。

第二議員会館

やって来た川村正明(津川雅彦)に、待っていた男(三谷昇)が話しかけようとするが、川村は無視してエレベーターに乗り込んでしまう。

議員部屋では、電話をかけていた鍋屋が、やって来た川村に、指宿旅館組合の人だと待っていた4人の客を紹介する。

川村は上機嫌に4人と談笑をした後、奥の部屋の別の客に会いに行く。

その直後、受付から来客を知らせる電話があったので、1階に降りた鍋屋は、タレント議員の星さゆり(朝丘雪路)ともめている秘書に出くわす。

何でも、後援会をすっぽかされたのだと言う。

タレント議員はダメだねと呆れた鍋屋は、受付に面会人のことを聞く。

面会人はバッグの写真を鍋屋に見せると、2000万の包みが入ったバッグが経堂近くの路上に落ちていたらしいと教える。

それが何か?と鍋屋が不思議がると、バッグは78万もする高級品で、日本橋のデパートで売られたものとすぐに分かったが、その支払に川村さんの名前があったと言う。

事件は既にテレビでも取り上げられており、バッグを拾ったちり紙交換業の大串(平田満)なる男が、最初はビックリカメラじゃないかと思った等と発見時の状況を記者たちに話していた。

5日も経って届けがない訳ないって。犯罪が絡んだ金だったりしてね。謝礼で金受け取ったとたん、ピストルで撃たれたりして…などと、大串は饒舌にしゃべっている。

戸浦から依頼を受けた元警視庁長官で法務大臣の三原伝六(大滝秀治)は、第二議員会館から警視総監に電話し、あのバッグは拾い得で良いから…と頼んでいたが、川村のことはどうするのかと聞かれたらしく、川村?と問いかけすが、すぐに戸浦が、織部のママにプレゼントした男ですと耳打ちしたので、その男は関係ないようだよ。とにかく、これ以上事件を大きくしないでくれと依頼する。

織部里子は自宅にいたが、波子に電話で、来るのよ川村さんが。断れないでしょ。バッグのことがあるし…と伝えていた。

自宅の近くに停まった車から降りた川村に、助手席に座っていた鍋屋が、気をつけてくださいよ。あの女に、パトロンがいないはずないからと注意して見送る。

家にやって来た川村を迎えた里子は、バッグは友達に貸していたので…と謝るが、その友達は、どうして被害届を出さなかったんだい?どうせ、何か裏があるんだろう?と皮肉を言った川村は、刑事にはママの名前は言わなかったからねと、自分が事情聴取されたときのことを恩着せがましく説明し、抱きついてキスをすると、寝室に誘い込もうとする。

里子は、時計を観ながら、何かを待っている様子だったが、寝室の川村にせかされて仕方なく入って行く。

その直後、電話で呼ばれていた波子が部屋に入ってきて、里子の名を呼びながら、里子を探す振りをして寝室を覗き込み、服を脱ぎかけていた川村と里子を慌てさせる。

里子の計画通り、川村は慌てて服を着て帰るしかなかった。

その夜、「川村正明君を励ます会」が催され、川村は、寺西の代理でやって来た文子に礼を言う。

次いで、板倉退介政調会長(伊丹十三)と、和久宏東方開発会長(内田朝雄)もやって来る。

大勢の参加者の中、文子がまず壇上に立ち挨拶をする。

次いで、板倉がマイクの前に立ち、川村を褒めそやす。

会場には、里子も出席していた。

川村は、マイクの前に立つと、感極まって泣く演技をし、土井が書いたスピーチを暗記したのであろう、小難しい言葉を使ってみせる。

文子は外浦と一緒に車で会場を後にするが、後部座席で外浦の手を握り、とっても疲れているみたいと慰めの言葉をかける。

その後、川村、文子、外浦らは、里子のクラブ「オリベ」で飲んでいた。

里子は途中で席を立ち、外浦が車に乗せ帰らせる。

クラブに外浦が戻って来ると、川村と文子が「星影のワルツ」をカラオケでデュエットしていた。

里子は自宅マンションに帰って来ると、そこには、パトロンの和久が待っていた。

お金のことで怒ってらっしゃるの?と里子が声をかけると、どうして連絡して来なかったと和久は不機嫌そうに答える。

そんなことまで一々、外浦さんにお伺いを立てなくちゃいけなかったの?外浦さんに焼きもち焼いてる?パパが一番信頼している人じゃない!私のことなんかちっとも考えてくれないじゃないなどと泣きまねを始める。

そして、パパ、あの2000万、私に手切れ金にちょうだいとねだると、安いな…、2000万くらいで忘れられるんならと冷たく言う。

このマンションだって、お店だって、パパ買ってくれたじゃないと里子はさらに甘えてみせる。

里子、浮気は構わんよ。わしに分からんようにやれと言いながら、和久は里子の身体をベッドで愛撫するが、里子の方は、嫌そうな顔つきでそれに耐えていた。

その後、入江首相急死の報が流れる。

東南アジア外遊中だった寺西も、急遽帰国。

記者会見で、大恩ある入江先生のご臨終に間に合わなかった。この際、人心一新するのが急務であろうなどと演説する。

この際、桂君を総理として…などと話す寺西に、公選と言う声をありますが…と記者が質問すると、公選にすれば、裏で買収や裏切りが横行する恐れがあるのは諸君が一番ご存知だろうと寺西は反論する。

桂重信(芦田伸介)は、桂会の定例総会に出席していた。

TVインタビューに答える板倉退介は、公選やむなしとの発言をしていた。

その後、桂はゴルフをしていた。

一方、寺西は料亭で、東南アジアで桂が抱いた女を調べて来た。評判悪い。ダラ助、役立たずなどと、芸者や、和久、三原相手に、桂の陰口を叩いていた。

三原は、そんな寺西の股間に手を突っ込み、あんたのこれは元気か?などと笑う。

その後、芸者と2人きりになった寺西は、座敷で女を抱いていた。

新幹線で京都にやって来た和久と里子を出迎える外浦は、その後、望月稲右衛門(宇野重吉)に会いに行く。

望月は、座敷で座っていた和服姿の里子を立たせると、帯が合わない。買うてもらいなさいなどと話しかけた後、庭に出て、緋毛氈を敷いた縁台に座る。

里子も側の石椅子に腰を降ろし、話を聞くことを許される。

和久は、20億出して欲しい。東南アジアで500億のプラントが手に入りそうなので、と頼む。

政治資金とは違う。後の責任取ってくれますか?どこぞの土地でも担保に…、望月はん、赤坂氷川の土地を知ってますか?と和久は問いかける。

さらに望月は、里子はん、あそこへ赤坂の出店作りまへんか?わてが肩入れしますでなどと話しかける。

その後、入手した20億を、車で板倉邸に運び入れる。

板倉は、寺西先生のために使わせて頂くと外浦に告げ、受け取る。

その仕事の後、外浦は、寺西邸で休みたいと言い出す。

それを聞いた寺西は、バカ言え!と驚くし、文子も、和久さんと相談したの?と問いかける。

俺は絶対辞めさせんぞ!と寺西は訴えるが、外浦は、部屋を出ると、秘書のバッジを外し、出て行こうとするので、文子は、寺西のために辞めて欲しくないのと慰留するが、すみません、さようなら…とだけ言い残し、外浦は寺西邸を出て行く。

その後、寺西と飲んでいた和久は、あの男は切った方が良いだろう。近頃、やり過ぎだ。この辺が潮時だろう。テヘランの東邦開発に送ることにした。あそこならどうにだってなる…と打ち明ける。

その頃、外浦は、酒を土産に土井の事務所を訪ねていた。

速記担当の佐伯昌子が帰宅すると、寺西先生の秘書を辞めることにしたと打ち明ける。

中近東辺りに行ってみようと思う。僕は東邦開発の社員だよと言うので、やりたかったの、政界だったんじゃないんですか?と土井は問いかける。

君に頼みがあって来た。2年は戻れない。個人用金庫の代理人になって欲しいんだ。女房に知られたくないものが入っている。印鑑を貸してくれないか。明日、銀行の手続きして送り返す。これで、間違いなく、政権党内閣の総理大臣がなる。そのために4年間やって来た…と話し終えた外浦は、不思議だね。気持ちが変わると酒の味も変わると言いながら、土井と持って来た酒を酌み交わす。

すっかり泥酔した外浦を、土井はマンション前でタクシーに乗せて帰らせる。

もしものことがあって、君が金庫の中の物を観ることがあったら、役に立つと思ったら使ってくれ。いらなかったら焼いてもらって構わないと土井に託した外浦は、走り出したタクシーの窓から身を乗り出して、土井の方に手を振った外浦は、ダー!と嬉しそうな奇声を発していた。

日本政憲党本部で、寺西と板倉は、記者たちに会っていた。

後日、新聞の片隅に、東邦開発のテヘラン支社で働いていた外浦卓郎が、交通事故で死亡した記事が小さく載る。

土井は、東邦開発に電話をかけ、自動車が街路樹に激突して、外浦は即死だったようだ。奥さんは明後日、テヘランに出発すると聞く。

寺西邸では、外浦から届いた絵はがきを文子が読んでいたが、そこにやって来た寺西が読んでくれと言うので、社交辞令的な内容を文子は読んで聞かせる。

死んだ人間から手紙が来ると言うのもおかしなものだな…などと寺西は行って出かけて行く。

1人になった文子は、自室で、ウィスキーを飲む。

土井は、預かった鍵を手に、貸金庫へやって来て、外浦のケースの中味を確認する。

中には、土井へ宛てた手紙と、封筒の束が入っていた。

土井君、僕は恋人を野心のために使った。君は僕を軽蔑するだろう。彼女は純真だった。俺の野心に気づかなかった。僕には利用できなかった。取っておいたのは、灰にするには惜しいからだ。君の良心に任せるよ…と言うような趣旨の内容が書かれてあった。

束になっていた封筒の差出人を確認すると、そこには「文子」と書かれてあった。

そこには、夫の目を盗み、宿先で、文子が外浦の部屋に来て抱き合う様子や、自宅で時々、外浦相手にヒスを起こしたことを詫びる内容等が綿々と綴られていた。

土井はその後、テヘランから帰国した外浦の妻節子(いしだあゆみ)に出会う。

事故は外浦の居眠りが原因とかで、ハンドルが胸に突き刺さっており、心臓と肺がめちゃめちゃになっていたそうです。あちらで解剖したそうですが、外浦は胃がんにかかっていたそうで、肝臓や肺にも転移していたようです。外浦自身が、病気を知っていたのだとしたら、随分意気地がないですね…と節子は、テヘランで知りえたことを土井に教える。

土井さんはどうお考えですか?貸金庫の鍵預かってるほどの仲なんでしょう?私、外浦のこと、良く分からない…。政界のことと始めてから、人間が随分変わってしまったと節子は遠い物を観るような表情で話す。

そんな節子を連れ、土井は貸金庫に案内する。

外浦のケースを開けた節子が観たのは、一札のノートだけだった。

献金メモのようですが、筆跡が…、似ているような物もあるのですが…、節子は戸惑っているようだった。

そのノートを観た寺西と三原に、文子は、奥さんが今朝方持ってきましたと伝える。

とにかく調べてみましょうと言って持ち帰る。

外浦の葬儀には、土井の他に、板倉退介も秘書(稲葉義夫)を引き連れて弔問に訪れる。

節子に悔やみを言いに来た板倉に付いてきた秘書は、何か節子から聞きだしたそうだったが、板倉に制されて、一緒に帰って行く。

後日、文子がいきなり1人で節子の自宅にやって来る。

外浦の仏前に手を合わせた文子は、節子と向き合い、ノートのことをお伺いに来たと切り出すと、本当にあれだけだったんでしょうか?あれはそれほど重要なものではない。きっと他に何か…と問いつめる。

貸金庫の代理人は土井さんで…、主人が私に見せたくないものが入っていたとしか…と節子が説明し、おかしいですね。奥様がお考えになっていることを申しましょうか?手紙でしょう?主人の留守に見つけたことがあります。ラブレターでした。奥様のお名前が入っていましたと文子に教える。

卑怯ね、奥様、2度と観たくありません。帰ってください!と節子が興奮すると、今のような根も葉もないことを他の方に言ったりなさると、訴えますよ!と言い残して、文子は帰って行く。

その後、土井を事務所に呼び寄せた文子は、いくらです?といきなり切り出す。

土井は、外浦さんが僕にくれたものです。好きなように使って良いとのことでした。ご自分の病気のこと、知っていたんでしょう。野心…、自分が政界に入る時の武器にしようとしていたんです。

政界の毒に感染したのでしょう。あれを読んで、あなたに同情していたのですが、今日お会いして、そんな同情なんて吹っ飛んでしまいましたと土井は嘲るように答える。

あの手紙を持って何が出来ると思ってるの?もみ消すことが出来ないとでも?お金をも立っておく方がお得なんじゃありません?と文子が言うので、土井は思わず、1億!ご返事は5日間待ちますと言い残して事務所を立ち去って行く。

ある日、板垣はクラブ「オリベ」にやって来て、店の億で何事か里子に伝える。

川村は里子とホテルに来ており、ことが終わった後、もういっぺん会おうよとねだっていた。

里子は、いくらもらったのよ、桂は?中間派や寺西派から離れさせるために…、そう言うのを、サントリーとかニッカとか言うんでしょう?などとからかう。

その後、エレベーター前で、里子に川村がいちゃついているとき、近くに潜んでいた雑誌のカメラマンがシャッターを押し、2人の密会現場を雑誌に掲載する。

議員会館の廊下で、川村に近づいて来た板倉は、東邦開発の会長で、山藤グループのパイプ役、君のことを怒っておられると耳打ちして去って行く。

土井事務所に出社して来た佐伯昌子は、室内が荒らされ、柱等に、学生運動でお馴染みの赤い文字が書きなぐられていることに気づく。

恐る恐る寝室を覗き込んだ昌子は、ベッドの上で斬殺されている土井を発見し、腰を抜かして悲鳴を上げる。

すぐさま刑事たちが駆けつけ、付近住民から当時のことを聴取するが、鉄パイプを持った連中を観たと言う目撃談が出て来る。

ルポライター殺害は報道され、国から、年老いた母親と昌子が警察に遺体を受け取りに来る。

担当の刑事課長は、過激派同士の内ゲバと思い込んでいるらしく、つまらん息子持ったねと母親に告げるが、一緒についていた昌子は、犯人は過激派とは思いません。3年間も速記の仕事をやって来たが、1度も過激派が来たことはなかった。ちゃんと調べて欲しいんですと訴え、母親も、伸行殺した人を見つけてつかあさい!と刑事に頭を下げる。

議員会館の中で、以前、川村に会いに来た男が、再び鍋屋に近づくと、いくらもらったんです?革新クラブ引き上げて、寺西派離れるんでしょう?と探りを入れて来る。

川村議員の部屋に入った鍋屋は、騙されてるんですよ。裏切って、寺西さん離れるなんて!と川村に抗議するが、川村が聞こうとしないので、辞めさせてもらいます!と言い出す。

板倉さんは、農林大臣の椅子を取ってあるって言うんだと自慢げに笑う。

その後、寺西は板倉と料亭で会うことにする。

板倉は、総理の席、後一期お待ちになりませんか?桂先生に、後一期任せて…と言って来る。

寺西は、20億渡しているじゃないか!と憤るが、板倉は、使いました、色んな所に…と言い、こういう物が出回っていては、まとまるもんもまとまらんと言いながら、文子が外浦に出したラブレターの束を取り出して見せる。

こういうスキャンダルはマスコミが喜びますから…、宜しければお持ちくださいと言うので、この手紙、桂派の仕業か!と寺西は興奮する。

とにかく、後2年、ほとぼりの冷めるまで…、寺西さんのためにもその方が…と言い残して、板倉はさっさと帰って行く。

こっちにも打つ手あるぞ!と寺西は、板倉の背中に負け惜しみを言うしかなかった。

帰宅後、部屋にやって来た文子に、寺西は持っていた手紙の束をぶつけ、お前の手紙だ!読みなさい!と激高する。

読まないなら、俺が読んでやる!と言い、一枚の便せんをひったくるように拾い上げると、一節読んで、文子の顔に叩き付ける。

一国の総理の妻になる者が書く手紙か!

20億で買い戻して来たんだ!もう一期待てと言われて来たと寺西が怒鳴りつけると、され化が作った偽物だと言います。外浦は死んでいます。マスコミには私が否定しますと文子は答え、あなたは私のこと、愛したことがおありになりますか!と逆に問いかける。

愛?お前と俺、何回寝た?と寺西が答えると、あなた、もう総理になれないと思っているのね!と文子が責めると、貴様は総理夫人になることだけを考えている女だ!と寺西は突きつける。

出て行きます!と文子が怒ると、出て行け!この手紙を持って出て行きなさい!マスコミは大喜びだろうと寺西は嘲る。

あなたが総理になれなかったら、この寺西家にいても何の意味もないの!と文子は訴える。

そのとき、三原先生がお見えになりましたと秘書が伝えに来たので、寺西は出て行き、文子は畳に散らばった手紙をかき集める。

応接室に待っていた三原は、どうにも困った、外浦の奥さんを抱き込んでいると言うので、何故、こんなことに…と寺西は悔しがる。

板倉が寝返ったとしたら金しかないと寺西は考え込む。

その後、寺西は、今回の総裁選は桂現総裁を支持することにしたと記者発表する。

総裁選を降りられたと言うことですね?と記者が確認する。

VIKテレビで、桂首相再選のニュースが流れる。

そのテレビニュースを家で観ていた節子は、学校から帰って来た娘が、急に背後から脅かして来たのに、過剰に反応してしまう。

鍋屋は、川村の秘書を辞め、タレント議員の星さゆりの秘書に鞍替えしていた。

ゆかりは、ベテラン秘書の鍋屋のお国訛や脂性をバカにしたり不潔視しながら、玉三郎のパーティに出かけるが、そうした屈辱を鍋屋はじっと我慢するしかなかった。

第2次桂内閣発足のニュースが流れる。

衆議院第二議員会館

川村は、大臣指名の電話を待ちながら上機嫌だった。

そこに、板倉の秘書がやって来て、ちょっと2人んで…と人払いを頼む。

そして、川村と2人になった秘書は、入閣は見送られることになったと伝える。

川村は驚愕し、約束が違う!とわめくが、ポストの空きがないのだと秘書は言う。

川村は合点がいかず、直接、板垣に電話を入れようとするが、それを押しとどめた秘書は、次は必ず入閣させると言ってくれてる。我慢してくれたまえと言い残し、秘書や支持者が固まっていたろうかに出ると帰って行く。

汚いよ…、部屋に残っていた川村は落ち込んで泣き出す。

お前さんが甘かったんで!気の強そうな妻良江 (中島ゆたか)が、そう一言叱りつける。

内閣には、板倉と三原が入閣していた。

東邦開発会長の和久は、東南アジアプラント計画からの撤退と同時に自身の会長辞任を役員たちに発表する。

ネグリジェ姿の里子は、ベッドの上で、同じくネグリジェ姿の波子からマッサージされていた。

川村のこと、500万で、板倉が仕掛けたのよ。「オリベ」のママも、安く観られたものね。じゃあ、可哀想な和久さんのため、乾杯!などと言って、波子とグラスにビールを注ぐと、波子は口移しで里子に飲ませてやる。

2人はレズ関係のようだった。

ベッドから京都の望月稲右衛門に電話を入れた里子は、おじいちゃん?私!この間は楽しかったわ。今度のお休みの時、京都へ行きたいんだけど、ホテル取ってくださる?などと、早くも新しいパトロンに甘える。

寺西邸では、その日の朝も、起床した寺西が神棚に手を合わせていた。

その後、パレンバンに落下傘部隊が降下した時の事を、応接室に来ていた記者たちに話し、アジアは日本に手を伸ばしていると強調する。

そこに、メロンを持った文子がにこやかにやって来る。

板倉の大蔵大臣に関してはどう思いますか?と記者から聞かれた寺西は、皮肉めいた批評をすると、自分のことに話を移し、雲一つない大宇宙みたいなものだ。時代の方が俺を要求して来る時が必ず来る!と強調する。

その話をにこやかに聞いていた文子は、廊下に出ると、無表情になって歩いて行く。

国会議事堂が写る。