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顔役('71)

暴力団に果敢に挑むはみ出し刑事を描く刑事物。

冒頭から、クローズアップの連続、意味ありげな挿入イメージ、丁寧に描かれるヤクザの儀式など、勝新独特の一種異様な雰囲気で描かれている異色作になっている。

話の内容そのものは、良くある展開のような気がするし、リアルタッチとは言え、公開当時はともかく、今観てビックリすると言うほどの映像でもない。

今となっては、山崎努、前田吟、大滝秀治、蟹江敬三らの若さに驚くくらいだろうか。

特に、大滝秀治の無表情で冷酷そうな上司役がなかなか印象的。

単なる憎まれ役ではないことも分かり、好感が持てる。

山形勲は、白髪の頭を後ろに撫で付けるような感じではなく、風呂上がり、そのままセットせずにいるような自然体なスタイルと言うこともあるのか、さほど怖い感じには見えない。

対する入江組組長に扮している江波多寛児も、普段は小者風の悪を演じている人だけに、こちらも迫力不足。

最後は、若山富三郎がちらり登場し、存在感だけで見せているような感じがある。

太地喜和子は、この当時、勝新に気に入られていたのか、座頭市の方でも共演しているが、今観ても、その色っぽさはただ事ではない。

何となく、あっけないラストのような気がするし、見応え感も今ひとつなのは、やはり、骨格となっている話そのものが、ちょっと単純過ぎるからのような気がする。

シンプルはシンプルなりに、もっと映画的な見せ場を用意してあれば、それなりに面白かったような気もするが、予算の少なさをアップ映像でごまかしているように見えなくもなく、その辺が、今ひとつ食い足りなさに繋がっているのではないかと思う。

色々やろうとしていることは感じられるが、映画としては、今ひとつ盛り上がりに欠ける印象が残る。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1971年、勝プロダクション、菊島隆三脚本 、 勝新太郎脚本+監督作品。

花札賭博の練習をしているヤクザたち。

その隣の部屋にいた入江組の組長健次(江波多寛児)は、戻って来た子分に首尾を聞くが、どうやら1人では判断できず、親分に相談しに戻って来たと知ると、大淀の名を出したんか!取るもんも取れんのか!われ、何年極道やっとるんじゃ!初めから、信用金庫と喧嘩するつもりで行ったんやないんか!と叱りつけたので、子分は恐縮し、明日きっちり話つけてきますわ…と謝る。

盲人が盲導犬を放す。

花札賭博の練習をやっていた部屋に、刑事たちがガサ入れに入って来る。

捜査のためと言っても、ヤクザと腐れ縁を断ち切るのです!と朝の警察署長の挨拶が終わる。

今朝も来てないな?甘やかしたらいかんぞ。あいつだけは、どっちの人間か分からんからなと、刑事課長の西野(大滝秀治)が部下の刑事吉川(織本順吉)に近づいて耳打ちする。

夕べから寝てねえんだとぼやきながら、床屋の椅子に無精髭を伸ばして座ったのは大淀組のチンピラだった。

床屋が、その男の顔にタオルをかけ、剃刀を研ぎだすと、店の中にいたロンゲの若者沢本(蟹江敬三)が立ち上がり、男の顔のタオルをちょっとめくり、顔の確認をした直後、男の側頭部に銃口を向け、発射する。

すぐに警察に通報が入り、ヤクザ同士の喧嘩らしいと刑事部屋にも報告が入るが、立花良太(勝新太郎)刑事は、机に足を乗せ、水虫の薬を付けるのに夢中で、動こうとする気配を見せない。

そんな橘の様子を、西野課長は、じっと無言で見つめていた。

どうせ極道同士の喧嘩やろ?その内誰か出して来る。

ヒッピー風の男が、ドヤ街のような通りに置かれていた乳母車の中の赤ん坊の顔を触る。

ビルの上から、紙切れを落とす男。

ストリップ小屋の裏の階段で、一週間後やないの?また、1日休まなならん!もう!と話し合っているストリッパー嬢らしき女の横を通り抜け、男子便所越しに、さっき殺しがあったんやと話しかけた立花は、相棒の和田(前田吟)と一緒に、小屋の中に入ると、かぶり付きでストリップ見物をしていた3人組のヤクザに、床屋殺しお前らと違うんかい?と話しかける。

誰やお前ら?とヤクザが振り向いてドスを利かせると、和田が警察手帳を差し出したので、立花は、横からそれを払い落とす。

証拠があるんなら持ってこんかい!とヤクザたちが粋がると、やっとらんと言う証拠持ってこんかい!と橘は言い返す。

ヤクザたちが席を立つと、立花と和田は、彼らが戻って来るのを待つ間、そのまま椅子に座ってストリップを見物する。

ストリッパーが、パンツに手をかけようとすると、楽屋裏から、支配人の赤松(伴淳三郎)が、ダメダメと言うように手を振って知らせて来るが、橘がやらんかいとドスを利かせると、ストリッパーは、舞台上でパンツを脱いでしまう。

戻って来たヤクザたちと楽屋裏の廊下で会った立花は、撃たれたん、うちのもんやで。これで良いか?と言われたので、それ以上追求することも出来ず、仕方なく帰すしかなかった。

外に出た和田は、立花さん、あんな前スト許して良いんですか!と憤るが、あのオヤジさんとは、借りたり貸したりする仲やと立花は答える。

大淀専用と名札が立った駐車場。

エレベーターに乗り、「大淀エンタープライズ」と言う会社にやって来た立花と和田は、幹部の杉浦俊夫(山崎努)に、床屋の件、カッコ付けるんかい?と聞く。

すると、あの床屋で発砲した青年を連れて来て、沢本言いますねん。これがハジキですわと実行犯と狂気の両方を差し出す。

和田が、沢本の腕に手錠をかけようとすると、そんなもんかけんで良い。署に入る前にかけたらんかいと和田に注意する。

ヤクザのメンツを立ててやれと言うことだった。

親分に…、社長に会わせてくれまへんか?入江の方も出て来たんで、横から手出したんと違うか?と立花は迫るが、あいつらのしのぎ方としのぎ方が違いますのやと杉浦は答える。

社長には会えそうにもなかったので、よろしくなと言い残して、立花たちは帰る。

大和不動産のエレベーターに乗り込んで来た入江組のヤクザは、先に乗っていた社員に、大淀付いてる思うて、調子のったらあかんどと脅し、社長に会うと、手に入れた帳簿を見せ、元お前ん所におりよった経理の女、今、わいのかかや!と脅迫する。

支店長は1週間待ってくれと頼むが、ヤクザが聞かないので、2日と言い直し、ヤクザは、2日やな!と念を押しながら、サツにたれ込んでもええんやでと言い残し、社長のヅラをはぎ取ると帰って行く。

何言ってやがる、バカヤロー!と呟いた社長は、すぐに、トルコ風呂に入っていた大淀組の社長尾形千造(山形勲)に電話を入れる。

尾形は、事情を聞くと、あんたんとこにはうちが付いとるやないか、大淀が付いとるやないかと鷹揚に返事をする。

風呂から上がった尾形に、そろそろけじめ取らな、あきまへんか?と子分が囁きかける。

その後、北町通りの車道を渡ろうとしていた入江組のヤクザは、反対側からやって来た大淀組のヤクザに刺され、その場に倒れる。

その事件を知った刑事部屋では、黒板の前に立った吉川が、事件の概要を刑事たちに説明していた。

本町信金に恐喝やっとる連中だったので、内偵中だったんだが、床屋の事件も同じで、入江組が不正融資を嗅ぎ付けたのを、大淀組が消しにかかったようで、床屋の一件では、詮索させんように沢本と言う子分を差し出して来た。

大淀組の恐喝に持って行くか…、組織暴力撲滅月間でもあるし、やろうと思うと、横で聞いていた西野課長は言いだす。

しかし、吉川は、信金側から被害届け出ません。自分の所の不正経理が明るみになりますからと意見を言う。

君はどう思う?と西野課長が立花に聞くと、止めといた方がよろしおすな。波の手段では被害届が出ない。向こうには大臣なんかが付いてると立花は答える。

途中で圧力に屈しているくらいなら…と言う立花の話を聞いていた西野課長は、最初からやらない方が良い、と言うんだな?接待に責任持つと言ったらやるか?と問いかける。

やっても良いですが条件がありますのやと言い出した立花、捜査の途中打ち切りだけはせんといておくんなはれやと課長に念を押す。

河の浚渫工事をやっている橋の上に来た立花は、相棒の和田に、あれ観てみいと河の泥を指す。

なんぼ掬うても泥後を絶たへん。わいら、機械やろ?スイッチ斬られたら動かへんようになる。そしたら、国中泥だらけや。スイッチ切れても動く機械ないやろか?と立花は呟く。

その後、2人はメガネ屋により、14000円のサングラスを10000円に値切って購入する。

本町信金の栗原支店長(藤岡琢也)は、支店長室に何度もかかって来る電話に出る旅に無言電話なので苛ついていた。

次にかかって来たのは、今からおんどれのとこ行くさかい、待っとれ!と言うドスの利いた脅し文句だった。

そこに女子社員がお茶を持って来るが、栗原はいらないと不機嫌そうに拒否したので、慌てた女子社員はお茶をこぼして、慌てて部屋を出て行く。

次にかかって来た電話は、娘のマミからのもので、明日本当に連れてってよとおねだりするものだった。

妻がすぐに代わって、勝手に娘に電話をかけさせたことを詫びるが、その時、2人のサングラスをかけた強面が部屋に入ってきたので、栗原は急いで電話を切る。

どちらさんですか?と栗原が聞くと、大淀組やないか!と怒鳴りつけたのは、サングラスをかけた立花だった。

その場で、すぐに尾形に電話を入れた栗原は、先月も600万、今月も500万出してるのに、若いもん、ちょろちょろ来られたらあかんでと苦情を言う。

何のことだ?と戸惑っていた尾形だが、栗原から受話器を奪い取った立花は、尾形はん、又会いましょうと言って電話を切ると、こっちの狙いは大淀組や。あんたの不正融資じゃないと言いながら、今、栗原が尾形に電話をした内容をこっそり録音していたテープを再生してみせる。

このことは、金井も子供のシラないんでね…と栗原は弁解するが、あんたの協力がないと、暴力団つぶせへんと立花は説得する。

警察署の裏口から連れて来られる杉浦。

警察署のトイレで、隣り合った西野課長が、臭いもの嗅ぎ付けたか?と立花に聞くが、立花は、人をセパードみたいに言わんといてくださいと答えて出て行く。

3500万、独り占めにしたのか!と和田が取調室で杉浦に聞くが、競馬、競輪、皆様に寄付した。ええことした時は、みんな忘れましたなどと杉浦はとぼけるので、和田は怒りだすが、怒ったらあかん、怒ったら負けやと一緒に取調室に座っていた立花が諭す。

俺をパクっただけでも点数稼げるんと違うんかい?と杉浦が言うと、今の警察は、なんぼ点数稼いでもあかんのや、昇進試験ちゅうのを受けな出世できへん。お前ら追うとったら、試験受けられへんやないか!と立花は答える。

警察の方に組織あるのか知れんけど、わしらの方にも組織あるねんと杉浦は答える。

翌日、栗原支店長は、まだ幼い娘のマミと妻を車に乗せ、ドライブに出かけていたが、途中、事故ってしまい家族全員死亡する。

現場検証にやって来た立花は、ひっくり返った車の中を覗き込んで顔をしかめる。

わしらの方にも組織あるんやと言う杉浦の言葉が脳裏を横切る。

女の唇のアップ

警察署に留置中の杉浦に会いに来た愛人の滝川真由美(太地喜和子)は、和田から、当分面会できないと聞かされ、あんた、本当に刑事さん?良い男ねと色目を使い、仕方なく帰りかけた廊下で、立花とすれ違う。

取調室では、真由美から差し入れられた豪華な食事を食べている杉浦と、出前のラーメンをすする和田が対面していた。

男の死体

真由美のマンションの部屋にやって来た立花は、刑事さんって良いわね。人んちにやって来て何でも調べられるからと真由美から嫌味を言われるが、寝とったんか?1人にしてはえらい乱れとるななどと返し、化粧台の引き出しの二重底の下から預金通帳を見つける。

それを慌てて奪い取った真由美は、あいつとこれ、何の関係もないのよ。この金、私の身体で稼いだんだから!と言うと、あんたの欲しいもの何でも上げるわと言い出したので、ほんまかい!と立花が乗りかかると、これ以外によと、手にした通帳を振ってみせる。

その後、ベッドで赤いパンティを脱ぐ真由美。

女に覆いかぶさる裸の男の姿が、電気を消して、立花が窓を閉めた真由美の部屋の窓に映る。

取調室で杉浦に会った立花は、お前のスケ、ええタマやの?と褒めた後、自分の若い奴が勤めに行っている間、親分はそのスケ、可愛がってもええのか?これ、親分のと違うか?真由美の机に置いてあったと言いながらパイプを見せる。

確かにそのパイプ、親分のや…と杉浦は驚いたようだったが、わいがここ出られんのに、信用できるか!と怒りだす。

わしにこんなもんくれよった…と言いながら、立花が真由美からもらって来た赤いパンティを杉浦の頭の上に乗せると、桜の代紋背負ってるからって、調子に乗るなよ!と杉浦は切れる。

背負ってなかったら、どうやと言うんや?と立花が挑発すると、二度としゃべれんようにしたるわい!と杉浦は粋がる。

すると立花は杉浦を外に連れ出し、その場に警察手帳を捨てると、杉浦と殴り合いを始める。

路上に踞る猫と、路上に落ちた警察手帳のアップ

キャバレーで、新人歌手が歌っているのを客席から見守る尾形。

横に座っていた子分の筒井(深江章喜)が舞台裏にいた支配人に、もっと客が喜ぶこと考えんかい!と叱りつける。

その後、支配人や歌い終わった歌手が、尾形に挨拶に来る。

子分らは、女便所に入っていたホステスを無理矢理外に出すと、尾形を便所に案内する。

キャバレーの前で、車に乗り込もうとしていた尾形は、周囲に立っていた護衛たちが、いきなり通りかかった車の中から撃たれた直後、自分も右肩を射抜かれその場に倒れる。

医者や!日本一の医者を呼ばんかい!怒声が響く。

尾形はその後、麻酔もかけずに、右肩に入った弾丸を取り出す手術をする。

弾飛んで来たら、盾になるのがお前らの仕事だろ!避けてどうするんだ!指詰めたくらいじゃ敵わんぞ!と、尾形は護衛たちに怒鳴りつける。

手術室の前では、撃たれた護衛が手当をしてくれとドアをそっと開けてジェスチャーで中に呼びかけていたが、中にいた子分に無視するようにドアを閉められてしまう。

尾形が手を回したんじゃないか?他に理由はないな…、刑事部屋で西田課長が層説明していた。

あれだけ約束していたのに、またしても捜査の中止が上から言い渡されたのだった。

みんな命がけで働いとるんや!わしらこき使いやがって…と立花は猛抗議するが、それが上司に言う言葉か!と西野課長が怒鳴りつけて来たので、代紋返したら五分と五分だ。このままやと日本中泥だらけになる思うとるからやっとるんや!と言い残し、警察手帳をその場に置いて、立花は刑事部屋を後にする。

西野課長は、そんな立花を無視して書類を読む。

その後、部下たちを集めた西野課長は、一課と四課は親と子のようなもの。後任は教務課長の米倉君にやってもらおうと思うと紹介する。

便所にやって来た吉川は、署長はわしに任せると言った。あいつに会ったら、これ渡してやってくれと言い、その場にいた和田に警察手帳を託す。

ドヤ街の道を、若者がふらふら歩く。

ストリップ小屋にやって来た和田は、赤松を呼び出すと、立花さん探しているんだ?来てないか?昼間まで一緒にいたはずだが…と尋ねると、ここんとこ来まへんわと赤松は言うので、仕方なく他へ向かうことにする。

楽屋裏に戻った赤松は、やりかけの麻雀に加わるが、そのメンバーに立花は加わっていた。

メンバーから、いくら今持っていると聞かれた赤松が18000円しかないと言うと、財布を確認され、28000円持っとるやないかと言われたので、2日もやったら目もかすむわとぼやいてみせる。

立花があがり、勝負は立花の勝ちとなり、賭け金25万を手に入れる。

他の客が帰ると、10万出さんかいと立花は赤松にねだると、今日なんか?と赤松がとぼけるので、手帳に書いてるやないかと立花は、手帳に書かれた借金の書き込みを見せる。

赤松は冷蔵庫からビールを取り出して飲みだすと、桜の代紋外したらしいなと聞きながら、立花にもビールを注いでやる。

前の奴、いっぺんきれいにしてもらいたい。代紋外したら、もう何も面倒観てもらえんもんなと赤松は言い出す。

40と赤松が言うので、立花はその場で札束を渡してやる。

その後、立花はトルコへ行き、金を出して女(横山リエ)にサービスをねだる。

代紋外したら、もう何も面倒見てもらえんもんな…、今聞いた赤松の言葉が、寝ていた立花の脳裏をかすめる。

その後、入江に公衆電話から電話した立花は、お前んとこの若いもん取っとるど、コンクリートにして河に沈めたろか?と脅す。

すると、大淀組からの挑発と思い込んだ入江は、待っとれ!お前んとこも同じようにしたるわい!と怒鳴り返す。

その後、女とベッドに入っていた筒井の部屋に乗り込んで来た入江の子分は、うちの若いもん取ったそうやな?と話しかける。

パンツくらい履かしとかんかい!と言いながら、パンツを履こうとしたとたん、筒井は女の目の前で銃殺される。

立花は、大淀区美の方にも入江の名を騙って、同じような挑発電話を入れる。

事務所で猟銃をいじっていた入江は、事務所の前を走り抜けた車が、何か箱のようなものを落としていったのに気づく。

子分たちが、箱の廻りに集まった時、突如その箱は爆発を起こす。

倒れた子分たちの身体の上に、割れた水槽から飛び散った金魚の死体が乗っている。

そうした子分たちの様子を、近所の主婦たちが無表情に見守っていた。

そうした抗争劇は新聞紙上に大きく報道され、入江組と大淀組は一発触発の状況になる。

もう、斬った貼ったの時代やないんやないか?入江なんか、あんたの腹に収めとくこっちゃと尾形に言っていたのは、二代目と呼ばれていた星野(若山富三郎)だった。

そら、二代目にお任せしますがなと尾形は神妙に答える。

兵隊にしろい着物着せる気か?それとも赤い着物着せる気か?わいがおるのや、夏のぼたもちやないけど、長持ちせんのと違うか?と、同じように星野から言い渡された入江の方も、二代目はんにお任せしますと頭を下げる。

かくして、星友会仲介のもと、入江組と大淀組の手打ち式が執り行われる。

お神酒改めが行われ、両方の組の親分衆は羽織の前の結びをほどく。

盃を一旦飲んだ後、諍いを起こせば、今後敵と見なしますと宣言し、両方の代表が盃の酒を飲む。

その盃を白紙に包んだものを受け取った星野が、自分の懐の中に入れる。

ヤクザ映画を観ている誰か。

和田は、まだ立花を探して町中を歩き回っていたが、工事現場に来た時、ふと振り向くと、その立花が通り過ぎる所だったので、慌てて追いかけて、嬉しそうに話しかけながら警察手帳を返す。

その後、尾形の大淀エンタープライズの事務所に又やって来た立花は、手打ちのこと聞いたけど、話だけでも聞かしてくれんか?今度の喧嘩、入江の方から仕掛けたことやと、着替えをしていた尾形に話しかける。

事情聴取と称して警察に連れて行くことにしたのだった。

そして、和田を先に返すと、行きまひょか?と尾形を誘う。

水しぶきが降り掛かるイメージ

気遣ってもらってすまんなと、下の駐車場で自分の車の後部座席に乗った尾形が、運転する立花に感謝する。

キーン!と言う不愉快な音が重なる。

あほらしゅうなった…、なんぼパクっても、すぐ出てきよると立花が愚痴ってみせると、そのくらいの甲斐性はあるんで…と尾形は苦笑する。

そして、一匹狼になったらどうや?狼には狼の生きる場所があるやろ?と尾形は立花に話しかける。

立花の脳裏には、犠牲になった栗原支店長の幼い娘の姿や、和田と歩き回ったこれまでの苦労が蘇っていた。

車はいつの間にか、警察署ではなく、無人の埋め立て地のような場所に到着していた。

尾形がいぶかしそうに周囲を見渡していると、いつの間にか運転席にいた立花の姿も消えていた。

ドアロックが降りて行く。

車は何故か、少しずつ前進していた。

立花が車の後ろから押していたのだった。

驚いた尾形は脱出しようとするが、ドアが開かない。

次の瞬間、車は、穴の中に落下する。

額から血を流した尾形が、助けを求めるように後部窓から空を見上げると、そこに土砂が降り注いで来る。

立花がスコップで、周囲の土砂を穴の中に落としていたのだった。

やがて、後部窓から見えていた空が砂で覆い隠されてしまう。

立花は、埋め終わった穴の上をしっかり踏み固めていた。

緑色の「勝プロダクション」と言う会社ロゴ