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乾杯!見合結婚

上映時間45分程度の中編。

現実世界ではなかなか恋人を作れず、見合い結婚することになった男女が、互いに結婚式の前日、青春の最後の思い出として、密かに好きだった相手を訪ねてみるが…と言う風刺劇のような内容になっている。

男女とも、片想いだった相手に会いに行くまであれこれ妄想するが、それがいかにも自分に好都合な世界になっている所が、おかしくもあり哀しい。

結婚と恋愛は別であるなどと、この時代から女性たちが割り切っていること等が分かるのも面白い。

若き仲代達矢の美貌も、平幹二朗の若々しい二枚目振りも見物。

劇中の仲代達矢は香川京子と結ばれる設定になっているが、現実は、香川京子の友人トンベー役で出ている宮崎恭子さんと結婚なさっており、仲代夫婦が共演している作品と言うのも珍しいかも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1958年、東宝、摂津茂和原作、長瀬喜伴脚色、瑞穂春海監督作品。

教会

今日は大安吉日である。(…とナレーター竹脇昌作が軽妙にしゃべりだす)

6日に1度のこの日を日本人は大変ありがたがる。

「東京ブランドホテル」

本日ここでベルトコンベアー式に行われる結婚式は20組、1組に30分以上かける訳にはいかん。交通整理役も必要でしょう。

こんなに繁盛では、経営者は笑いが止まらないだろう。

ディヨール先生も手が出なかったと言う豪華な花嫁衣装を、次々に着させて行く。

巫女は三三九度を傾けるが、アルバイトの女学生は眠くて、レコードが引っかかっているのにも気づかない。

この式から、赤の他人だった良家が親戚になるのです。

近頃では、この手の場面では女性が落ち着いており、男性の方が上がり気味。

再婚と思われる新郎は、記念写真を撮ろうとして、相手を間違えていたことに気づく。

あるフランス文学者は、この日本式結婚式こそ、達観主義の賜物であると褒め讃えたそうだ。(…とナレーターが語り終える)

レストランにやって来た戸川恵美子(香川京子)は、明日の控えた結婚式を、食事会に集まったトンベー(宮崎恭子)ミッちゃん(加代キミ子)マー公(岩崎加根子)の3人の友人たちに冷やかされていた。

恋愛結婚全盛の御時世に、私だけ見合いで気が引けるわと恵美子は恥ずかしそう。

だってエミーは恋愛できないんだものと、女友達が指摘する。

恋愛と結婚は別よねと別の友人が言う。

まだ愛情も感じない人とOKするなんて…とエミーは、まだ自虐的なことを言う。

相手はどんな人なの?と聞かれた恵美子は、どうせ見合いするような男だもの…と、全く期待していないようにため息をつく。

同じ頃、バー「キャット」の中で、笹田さんって、結婚なさるの?と聞いたのは、ママ時子(坪内美詠子)だった。

明日だってさと、笹田と一緒に飲んでいた木村(中谷一郎)がからかう。

お嫁さんって、どんな人?と時子が聞くと、どうせ見合いするような女だから、古風で平凡な女性さと笹田(仲代達矢)は気乗りしないように答える。

(回想)会社の昼休み

ビルの屋上でバレーボールをやっていた恵美子は、それたボールを長尾(平幹二朗)に拾ってもらっていた。

長尾は爽やかな笑顔の持ち主だった。

後日、会社の同僚(尾瀬俊子)とバレエの公演を観に行っていた恵美子は、同僚の隣に座って来た長尾と又出会う。

帰りは三人一緒だったが、歩きながら煙草を付けようとする長尾に、恵美子は、マッチの火が消えないように、そっと手をかざしてやる。

その後、タイプの仕事をしていた恵美子の元にやって来た長尾は、今度、大阪本社の方に転勤になることになりましたと報告するので、一緒にタイプを打っていた同僚は、ご栄転ね。係長になるって話だわと祝福し、恵美子はとっさに、持っていたペンを長尾への餞別として渡す。

長尾が去った後、女友達は、長尾さん、あなたのことが好きだったのよ。どうして追って行かないの?とトンベーは恵美子に囁きかける。

(回想明け)

トンベー(宮崎恭子)の言う通りよ、恋愛のない人は、人生の半分しか生きてないのと同じよなどと和服を着た女友達が、食事会の最後、果物をむきながら言う。

一方、バー「キャット」の方では、ママの時子が、笹田さん、ハルちゃん、好きだったでしょう?と聞いていた。

ハル子は店を辞めて、甲府に帰ったんだけど、手紙が来たのよと言うと、それまで無関心そうに聞いていた笹田の表情も変わる。

あなたを好きになりそうになり怖かったんですって。帰ったのは、言うに言えない理由があったんじゃない?と時子が教えると、真顔になった笹田は、春子の住所を時子に聞く。

横で聞いていた木村は、熱い、熱い等と冷やかす。

恵美子は、お父さんやお母さんのことを考えると…、そう言う勇気は私には…と、長尾を追って行かなかったことを言い訳していた。

一緒に帰っていた枠クの女友達は、エミの運命決めちゃうのよ。誰かの迷惑なんか考えていることないわと忠告する。

「キャット」を出て、自動車に乗り込もうとする笹田に木村は、本当に行くのか?明日の仲人は社長じゃないかと驚いたように忠告する。

笹田は、良いんだ、どうなっても。放っといてくれと言い残し、車を出発させる。

私は私の青春に悔いを残したくないわ…恵美子は呟いていた。

甲府に向かって車を走らせていた笹田は、上空を飛ぶ飛行機を観ていた。

その飛行機に乗り、大阪に向かっていた恵美子は、私がこんな所にいるとは誰も知らない…と心の中で呟いていた。

一方、運転していた笹田の方も、驚くだろうな、ハル子…、まさか飛んで来るとは…と、にやけながら考えていた。

西田ハル子(若山セツ子)は、突然、家を訪ねて来た笹田に驚いていた。

手紙観たんだよ。「キャット」のママに出した…。君なしではいられない!と家に上がり、ハル子に抱きつこうとすると、いけません!お帰りになって!とハル子は抵抗する。

ご主人でもいるの?と怪訝そうに笹田が聞くと、あの店を辞めたのも、あなたから逃げるため…。私は結婚できない!身分が違います!と言いながらハル子は泣き出す。

僕はあ、明日の結婚を捨てて来たんだよ。僕と結婚してくれ!と笹田はハル子に迫る。

その時、対抗して迫って来るトラックのクラクションの音で我に帰った笹田は、トラック運転手が浴びせた、バカヤローの罵声で、すっかり妄想状態だったことに気づく。

相手の女には気の毒したな…、どうせ見合いするような相手だから、又すぐに別の見合いをして幸福な世話女房になるに違いないと笹田は考えながら、甲府へひた走る。

その頃、恵美子の方は、大阪の長尾のアパートを訪ねていた。

踊り場で三輪車に乗った男の子が遊ぶ中、長尾の部屋の呼び鈴を押すが返事がない。

向かいの部屋の奥さん(綾川佳子)が出て来て怪訝そうな顔をしながら買い物に出かけるが、恵美子は、とうとうここまで来てしまったわ…と、自分の思い切った行動に自分で感心していた。

ドアノブを回すと開いていたので、恐る恐る中に入ると、誰かの手が床に伸びているのが見えたので、恵美子は立ちすくむ。

起き上がった手は長尾のもので、恵美子さん!と驚きながらも、ふらついているので、どうなすったの?と恵美子が近づくと、会社を早引けして来たんですが…と体調の異変を言うので、風邪よと言いながらベッドに寝かしつけると、私が来たからもう大丈夫よと笑顔で答える。

どうして急にこんな所へ来たの?と不思議そうに長尾が聞くので、あなたを訪ねて来たのよと恵美子は答えるが、だから、どうして?と長尾は問いつめる。

ふと、恵美子が長尾の机に目をやると、そこには、自分の写真が写真立てに飾ってあった。

君の友達にもらったのです。毎日、君に話しかけていたんですと長尾が言うので、恵美子は、やっぱり来て良かったわ。私、あなたの所へ逃げて来たんです。私、やっぱり、あなたが忘れられない!と恵美子は心の丈をぶつける。

「御気分でもお悪いんですか?」そうスチュワーデスから声をかけられた恵美子は、まだ自分が大阪行きの飛行機の中にいて、妄想の世界に浸っていたことに気づく。

やがて、飛行機は伊丹空港に到着し、東淀川区の光ガ丘寮を人に聞きながら向かった恵美子は、道しるべとして教えられた写真館に行き当たる。

ふと、そのショーウィンドーに目をやると、そこに貼られていたのは、長尾と見知らぬ女性との結婚写真ではないか。

呆然としている恵美子に声をかけて来たのは、買い物かごを下げた長尾だった。

恵美子さん!どうしてここに?と驚いた様子の長尾に、大阪の叔母のお見舞いに来たついでに寄ってみたんです…ととっさに嘘をついた恵美子は、奥さんがいらっしゃるんでしょう?と聞く。

ええ、家内も喜びますからと言い、長尾は恵美子を中外製薬光ガ丘寮へ連れて来る。

その団地の踊り場には、先ほど、飛行機の中で恵美子が妄想した通り、三輪車に乗った男の子がいた。

部屋に入った長尾は、洋子!と呼び掛け、出て来た妻の洋子(木村俊恵)は、決して美人タイプではなかったが、明るく愛想が良い若い娘だった。

恵美子を中に招いた洋子は、肉買って来た?と長尾に聞くが、行く途中で会ったから…と長尾が言うので、だったら、私が買って来る。一緒に食事して行ってくださいと言ってかごを持って出ようとするので、恵美子は慌てて、私、6時の飛行機で帰らなければいけませんので…と遠慮する。

すると洋子は心底残念そうに、ではコーヒーでも入れましょうと言うが、コーヒーの粉も切らしていることに気づくと、したの戸田さんに借りに行く。

結婚なさっているなんてちっとも知らなかったわ…と恵美子が言うと、3ヶ月前ですが、誰にも知らせなかったんです。部長の勧めで見合いしまして…と長尾は答える。

お幸せそうですわ…と恵美子が言うと、家内もああ言う明るい性格だから…と長尾もまんざらでもない様子。

そこに、コーヒーをもらって来た洋子が戻って来て、私の悪口言ってたんでしょうなどと茶化す。

恵美子がふと机の方に目をやると、そこには長尾と洋子が並んでうるった写真が写真て手に飾ってあり、恵美子の視線に気づいた洋子が恥ずかしがって、写真立てを裏返そうとする。

長尾は着替えると言い出し、洋子に手伝わせて丹前姿になる。

その時、応接間で待っていた恵美子は、足下に転がっていたペンを拾い上げる。

自分がプレゼントしたペンだった。

洋子は、うちはまだ東京に言ってことがありまへんねん。行ったら案内してくれはりますか?と聞いて来たので、喜んでと恵美子は答える。

すると長尾が、戸川くんは、おばさんが病気になって見舞いに来られたんだよと洋子に教える。

恵美子はいたたまれなくなって、帰ることにする。

すると、途中まで、長尾が送ってくれることになる。

その頃、笹田の方は、甲府に近づいており、最初に何と言ってやるかな…などとあれこれ思いを巡らせていたが、突然、1人の警官(田武謙三)に車を止められる。

どこまで行く?と聞かれたので、甲府までと答えると、このおばさんを途中まで乗せて行ってくれないか?産婆さんだ。自転車がパンクしてしまって…と警官は事情を話す。

巧く取り上げるんだよと産婆(都家かつ江)を車に乗せた警官は、自転車はパンクを直して俺が家まで届けてやると言う。

産婆を乗せ、出発した笹田は、随分遠くまで行くんですねと感心しながら声をかけると、この辺は今時みんな病院ばかりで、誰も産婆使わないからと産婆はぼやく。

病院ではたくさんの赤ん坊を扱うので、良く赤ん坊を取り違えるらしいと産婆は言う。

途中、馴染みの徳ちゃんに出会ったので、産婆は後部座席から声をかけてやる。

何だか長話になりそうだったので、笹田がクラクションを鳴らしてせかす。

再び走り始めると、産婆は、あの娘が、わしが開業して一番最初に取り上げた子だと言い、あんたは独身かね?と聞いて来たので、子供5人もいますよと笹田は噓を言う。

やがて、又別の奥さんとすれ違ったので、産婆は挨拶をし、また、笹田がクラクションでせかす。

今はアフターサービスの時代じゃからなどと産婆は笑って言い訳するが、その後、また、孫らしき赤ん坊を背負ったおよね婆さんと出会ったので、少し話し込む。

もう笹田はハンドルに顎を乗せ、呆れたように、急ぐんじゃないんですか?と産婆を促す。

その頃、写真館の前まで、長尾に送って来てもらった恵美子は、ご結婚の写真拝見しましたわと打ち明けていた。

実は、叔母のお見舞いなんて噓だったんです。叔母なんていませんわ。本当はあなたを訪ねて来たんです。でも、来たお陰でやっと決心付きました。明日、私、結婚しますと長尾に教え、バスに乗り込む。

夕暮れ迫る中、出発したバスを見送った長尾は、何だか呆然とした表情だった。

甲府に着いた笹田は、産婆のために、正徳寺裏の西田と言う家の前まで送った後、少し走って、角のタバコ屋で、ハル子の家を尋ねる。

すると、少し戻った所のポストのある場所から入った所だと教えられたので、言われた通りに少し戻り、ポストの所から路地を入って、「西田達夫」と言う表札をマッチの灯で照らして見つけ出す。

その時、隣の家の奥さんらしき女が出て来たので、何かあったんですか?と笹田が聞くと、ハル子さんが急に産気づいたんでなと言うではないか。

やがて、西田の家の玄関が開き出て来た産婆は、笹田に気づくと、殺気の運転手さん、熊谷病院へ言って医者を呼んで来てくれと声をかけて来る。

そんなに悪いんですか?と笹田は心配するが、亭主の西田(竹内亨)が、お願いしますと頭を下げて来たので、仕方なく、又車で病院まで行ってやることにする。

西田は、家の前の地蔵に手を合わせる。

産婆は、医者の到着を待ちわびていた。

やがて、医者と看護婦を乗せて笹田が戻って来る。

医者は、家の前で待ち受け、早く!とせかす西田に、大丈夫、大丈夫と言いながら、家の中に入って行く。

家の前に1人取り残された笹田は、所在無さげに、釜に入れたお湯を沸かしていた七輪に木等をくべてやっていたが、その時、赤ん坊の鳴き声が聞こえて来たので、静かに立ち去り車に乗って帰る。

その様子を、隣のおばさんが目撃する。

タバコを吸いながら夜道を戻っていた笹田は、途中で、自転車を押しながらやって来る警官とすれ違う。

隣のおばさんは、おかゆ、焚けたわよと西田とハル子に声をかけ、お大事になと言って家に戻って行く。

良かったな、ハル子、医者が間に合って…、そうだ!あんまり夢中になってたんで、礼を言うの忘れてた!と笹田のことを思い出した西田は、何のこと?と聞くハル子に、産婆さんを連れて来た運転手さんが、お医者さんも連れて来てくれたんだと説明する。

こんな可愛い子供が出来たら、うんと働くぞ!と西田は張り切り、寝ていたハル子も微笑むのだった。

夜遅く帰宅した恵美子は、こんな日に、今まで何をしていたの?と聞く母親(飯田テル子)に、お友達と映画を観たのよと噓を言ってごまかす。

翌日、恵美子と笹田は、無事結婚式を挙げ、何事もなかったかのように三三九度を交わす。

新郎と新婦に、どんなことがあった等、誰も知らなかったが、彼らはきっと幸せな結婚生活を送るに違いない。

お互いに、青春の義務を果たしたからである。

新婚旅行に向かう2人の後には、次の組が待っている。

だが、これらの話をするのは愚であろう。(…と、ナレーターが締める)