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悲しき60才

坂本九や森山加代子主演のアイドルミュージカル

脚本は「昭和ガメラ」でお馴染みの高橋二三だし、ショー構成は青島幸男なので、ファンタジックな内容で、ヒット曲満載と言う事もあり、当時のテレビのバラエティショー的な雰囲気は味わえる。

しかも、ジェリー藤尾が出ているので、ちんぴら絡みの泥臭い展開になっていたりする。

劇中に次々に登場するタイアップ商品名にも驚かされる。

当時の日活等が、経費節減のため、こうしたタイアップを積極的にやっていたのは知っていたが、大映作品でもこうあからさまにやっていたとは…

ペプシコーラのマーク入りバッグをわざとらしく持って歌う石川進とか、チキンラーメン(画面に映ったチキンラーメンは、今のように円柱形に成形してなくて、「ベビースターラーメン」のようにバラバラに崩れているのだが、これは撮影用にわざとそうしているのだろうか?)を作る森山加代子、「じんじろげ」のセットには「テイジン」の文字、九助がランニングする道の横には「東レ リバーロフト」なる商品名が書かれた大看板が画面一杯に映し出される等等…、まるでCM映画である。

よほどの低予算で作ったらしく、スタジオセットはどれも急ごしらえのベニア板にペンキを塗ったようなチープなものばかり。

話も、何だかつじつまが合っているようないないような怪し気な展開。

タイトルバックでトルコ風の衣装を着ていたムスターファ九三衛門が、本編が始まると、急に日本人として来日したり(羽田空港に見立てているが、どう観ても調布飛行場)、西部劇のシーンでは、九ちゃんとジェリーの対決シーンになるのかな?と期待させておいて、急に現実の話に戻ったりと、編集ミスか、カットされているのか?ナンセンスなのか、良く分からなかったりする。

おそらく、人気絶頂で売れっ子だった九ちゃんを、スケジュールが空いた時に少しずつ撮りためて行ったカットを後で適当に繋ぎあわせた…と言う風にも見えなくもない。

九ちゃんは相変わらず、終始ニコニコしているだけで主体性がない青年キャラ。

森山加代子も同様に、終始ニコニコしているだけのアイドル演技。

でも、一見ハチャメチャそうで、アイドル映画としては、それなりに楽しめる出来にはなっているように思う。

この映画で一番の見所は、森山加代子のヒット曲で、意味不明な事ではきゃりーぱみゅぱみゅも真っ青ではないかと思われる謎の歌「じんじろげ」の歌謡シーンが出て来ることではないだろうか?

とは言え、このシーンもシュールと言う他はなく、おさんどんに扮した森山加代子が、丁稚姿の九ちゃんと、ギターを持った五人囃子風のパラキンの前で歌い、そこに何故か、鍾馗様が乱入して来て暴れると言う訳の分からなさ。

調べてみたら、この「じんじろげ」と言う曲、今では放送禁止歌になっているらしい!何がまずいのだろうか?

大映のミュージカル、大映ファンタジー自体が珍しいので、この作品も、当時のプログラムピクチャーの一端を知る上で、非常に貴重な作品ではないかと思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、大映、高橋二三脚本、寺島久監督作品。

「ジェリー藤尾」と書かれたフリップを手に画面に登場した坂本九ちゃん(本人)

同じように、「森山加代子」と書いたフリップを手にしたジェリー藤男と「坂本九」と書かれたフリップを手にした森山加代子が登場し、それぞれのフリップの間違いに気づき、あたふたしながら画面から退場。

背後に後ろ向きに立っていたカンカン帽の人物が振り向くと、それは水森亜土ちゃんで、画面一杯のガラスに英文字を白いマジックで書いて、それに重なるようにタイトル文字

昔のトルコ風のセットで、貧しい青年ムスターファ九三衛門役の九ちゃんが「ムスターファ」を歌いながら、奴隷として、奴隷商人(ジェリー藤尾)から鞭打たれている加代(森山加代子)に同情する。

加代ちゃんを何とか救い出そうと、ムスターファ九三衛門は市場で商人として金儲けを始める。

やがて、トルコ1の大富豪になったムスターファ九三衛門は、召使いたち(ダニー飯田とパラダイスキング)が持つ輿に乗って加代ちゃんに会いに来るが、出迎えた加代も九三衛門も、すでに白髪の60才になっていたのであった…(ここまで、スタッフ・キャストロール)

セスナに乗って、出迎えた大勢の親戚たちが待つ日本にやって来た九三衛門は、セスナ機を降りた時に、すれ違った作業員とぶつかり、倒れた弾みに肩に背負っていたバッグを落としてしまう。

そこからは大量の札束がこぼれ落ちたので、駆け寄って来た親戚一同はその金にたかろうとする。

そんな中、白髪の九三衛門に、40年間も待ちかねたよと言いながら抱きついたのは、60才になっていた加代婆さんだった。

九三衛門は、この金で、もう1度、人生をやり直そう!と加代婆さんに告げる。

かくして、九三衛門と加代婆さんは、東京タワーや銀座、皇居等東京見物に出かけるが、行く先々で見せつけられたは、若いカップルのキスシーン。

あっけに取られ、口を開いた九三衛門は、思わず入れ歯を落としてしまう。

その後、がっくり来て立ち寄った「回転おにぎり屋」のカウンターで、九三衛門はすっかり落ち込んでいた。

入れ歯を落とすようじゃもう遅い!九三衛門は、失った若さはもう取り戻せないことを悔いていたのだった。

そんな九三衛門に、加代は持って来た手作りのおにぎりを手渡すのだった。

喜んだ九三衛門は、その大きなおにぎりにかぶりつくが、次の瞬間、目を白黒させ倒れてしまう。

入れ歯が咽に詰まって窒息したのだった。

長い紐のブランコに乗った女性天使が何人もいるのは天国でしょうか?

大勢の男天使たち(パラダイスキング)が「聖者の行進」を楽しそうに歌っている。

そこに、札束の詰まったバッグを担いでやってきたのは九三衛門。

1人の天使(ジェリー藤尾)に、ごめん下さいと声をかけると、今は天国もレジャーモードなんだよ等と迷惑そうに答える。

それでも、九三衛門が新しい死者らしいことに気づくと、大きな死亡報告書を開き、氏名確認をする。

入れ歯が咽につっかえたんだなと確認した天使に、九三衛門は、持っている全財産をあげるから、もう1度生き返らせてくれないかと頼み込む。

札束を観た天使は、お前さんは生きている間、食うものも食わず働いたんだってな?と感心する。

必要なのは若さなんですと九三衛門は訴える。

天使は欲に目がくらんだのか、本当に1銭もいらないの?と九三衛門に念を押すと、今日辺り、寿命が尽きそうな男を調べてやると良い、死亡報告書をめくる。

そして、側の壁面に付いていた大きなブラウン管の所に行くと、九三衛門に、これは有料テレビなので10円くれと言う。

仕方なく、九三衛門が10円渡すと、天使はそれを「5」と「10」と書かれたコイン入れの「10」の方に入れる。

ブラウン管の下には、「木星」「火星」「地球」「宇宙」等と書かれたスイッチが並んでおり、天使はあらかじめ、「地球」の所を押していたのだった。

すると、画面には、どうやら地球の風景のようなものが現れるが、画質がおかしい。

天使は、これはカラーなのでもう10円と手を出したので、九三衛門は嫌そうにもう10円渡す。

その10円玉を「10」のコイン入れに投じると、画面にはっきり、バイクに乗った青年坂田九助(坂本九)が、鹿のマーク、かっこ良くて〜♬等と歌いながら崖の上の道を走っている所が写る。

その九助は、犬を連れたご婦人を見かけたので、そちらに気を取られた瞬間、ハンドルを切り損ねて、崖から下の墓場に落下、そのまま九助は倒れてしまう。

その映像をブラウン管で観た天使は、今の青年を生き返らせて、青春やり直すってのはどう?ただし、金には全然縁がないよと九三衛門に聞き、了承を得たので、復活スイッチを押す。

すると、事故現場に駆けつけて覗き込んでいた医者や警官の前で、九助は目覚める。

その頃、九助が働いている森山電気店では、女主人のふみ(倉田マユミ)に、金田(春本富士夫)と言う人物が、借金300万の返済を迫っていた。

そこに、集金に出かけていた九助が戻って来たので、お金は?と聞いたふみだったが、九助は燃えてしまいましたと報告する。

崖から墜落したとき、集金していた金が全部燃えてしまったのだった。

そんな中、電気店の娘加代(森山加代子)が出かけたので、彼女のことに気があるらしき金田も、後を追って行く。

そんな2人の様子を表で見かけたのは、九助の兄、坂田藤夫(ジェリー藤尾)だった。

夕食時、藤夫は、死んだ親爺の遺産でおばさんの借金を穴埋めしようと調べたら、遺産が一銭もなくなっていたと不思議そうに話す。

それを聞いた九助も、僕が買って当たっていたはずの宝くじの番号が、さっき観たら、1番違いになっていた。俺たちかねに縁がないんだな…と報告する。

それを聞いたふみは、テキサスにいるおばさんが来ないかって言ってくれたるので、いざとなったら行くつもりだけど、テキサスなんて、インディアンでも出そうで怖いのと言うと、テキサスか…と藤夫と九助は妄想を始める。

(空想シーン)テキサスらしきセットに、「この物語は真実である。ただ一つ違いがあるとすれば、インディアンが日本語をしゃべることである。 ジョン・フォート」と書かれた看板が立っている。

インディアン(ジェリー藤尾)が、部族の仲間たちと共に歌を歌っている。

外でガンマンが撃ち合っていた西部の酒場では、可愛らしい娘(渡辺トモコ)が「愛しのクレメンタイン」を歌っていた。

その後、酒を配っていたウエイトレス加代(森山加代子)にちょっかいを出す紳士姿のイヤミな男(春本富士夫?)。

他にも、2人のガンマンが加代に手を触れようとして喧嘩になるが、表で勝負をつけようと言うことになり、3人は酒場の外に出る。

しばらくすると、外から撃ち合う銃声が聞こえ、最初に酒場に戻って来た紳士風の男が、にやりと笑って倒れ込むと、次のガンマンがにや付きながら、スイングドアを開けて酒場に入りかけ、又もや倒れる。

最後に入って来たガンマンが勝者らしかったが、ウィスキーを頼み、入口付近で一気飲みした後、その場に倒れる。

その直後、カウンターに矢が飛んで来て刺さり、先ほど歌っていたインディアンが入って来る。

同時に、全身黒づくめのガンマン(坂本九)が加代の隣にやって来て、嬉しそうにする。

又もや、1人の女に2人の男同士と言う事になる。

(空想シーン明け)、浦島拳闘ジムでボクシングの練習に励んでいた藤夫の様子を厳しい顔つきで眺めていたのは、藤夫の才能を見込み、チャンピオンにするため鍛えている会長の浦島(安部徹)だった。

事務所に藤夫を呼んだ浦島は、最近、調子出てないようだが、何か困っている事でもあるのか?と聞く。

すると、藤夫は、実は金がないんですと打ち明けたので、浦島は、自分の財布から数万取り出して藤夫に渡してやる。

そんな2人の様子を窓の外から覗いていたのは、チンピラの三吉(三角八郎)だった。

三吉は、女性ランジェリーショップで働いていたサユリ(弓恵子)に声をかけると、奥の部屋に入る。

そこは、「日本アイデアセンター 理想社」と言う会社で、社長の星山(潮万太郎)は、三吉を客だと勘違いし、5台ある色違いの電話の1台の受話器相手に、「理想社は、アイデアを商品化する会社です」と説明し、違う受話器を持ち上げると「理想社は、あらゆる賭け事のお相手をいたします」などと説明していたが、話の途中に三吉だと知ると、客寄せの真似をやってしまったじゃないか!と怒りだす。

しかし、三吉が、今仕入れて来た、ボクサーの坂田藤夫が金に困っていると言う情報を聞くと、急に目の色を輝かせるが、入って来た娘のサユリが、もうペテンは辞めてちょうだいと父親の星山を叱りつけると、これでペテンは辞める。15年前、お母さんに愛想付かされたように、今又、お前に愛想を尽かされそうだ。しかし、もう一回だけやらせてくれ!と頼み込む。

しかし、娘のサユリは、ダメよ!と釘を刺す。

その夜、アパートの階段を降りて来た藤夫の前に拳銃とナイフを手に現れたのは星山と三吉だった。

今度のタイトルマッチで負けてくれと星山が頼むと、300万円くれと藤夫はさらりと答える。

さすがに、その金額要求に黙り込んでいた星山に、三吉が、まずいサユリさんが来たと教え、2人は慌てて去って行く。

そこにやって来たのがサユリで、今の2人が何かおかしなことを言いませんでしたか?と言うので、藤夫はいいやと否定する。

去りかけたサユリは、胸に付けていたブローチを落としたので、さりげなくそれを拾い上げた藤夫は、にっこり微笑みながらサユリに手渡す。

やがて、藤夫とライト級チャンピオン熊本三郎(土方孝哉)とのタイトルマッチ

九助、加代、ふみ、星山、三吉、サユリらが客席で見守る中、藤夫の戦いは始まるが、結果は敗戦だった。

浦島会長は試合後、5ラウンドで力を抜いたな?なぜだ?お前の才能に期待していたのに…、今日限り、縁がないものと思ってくれと言い残して、藤夫の元から去って行く。

藤夫に近づいていたふみたちは、その言葉を聞いて、どうしたの?まさか、八百長でもしたんじゃないだろうねなどと心配する。

藤夫は、俺の選手生命は終わったよと自嘲し、でも金が入るんだと教え、金田が借金の催促に来ると、ふみはころっと態度を変え、藤夫ちゃん、お金頂戴と手を差し出す。

その後、星山のアパートへ向かった藤夫だったが、星山は刑事らに連行されていく所だった。

被害者に密告されたのだと言う星山は、後の事はあんたを男と見込んで頼みます!と藤夫に頭を下げ警察へ向かう。

それを見送るサユリと三吉に、金はどうなったんだ?と聞くと、300万は没収されたのだと言うではないか。

困惑する藤夫に、今、お父さんが後を頼むって言ったでしょう?お店手伝って!と言い出す。

ある日、加代は、店の前で、金田から車の運転を教わっていた。

いよいよ2人乗り込んで、出発させようとしたとたん、タイヤがパンクして動けなくなる。

金田は、愉快そうにバイクで走り出した九助の仕業と気づいて睨みつけるが、九助はもう走り去っていた。

ツンタタッタ、ツンタタッタ、ツンタタッタ…♬と九助は歌いながらバイクを走らす。(バイクを住宅地で走る実写映像に、作業服姿のパラダイスキングが参加したセットでの歌唱シーンが加わる)

モテモテの歌に呆れた石川進が、冗談じゃねえや!と言って、九助を殴る。

水森亜土のイラストの絵から、大きな満月の夜、大きなキノコやハイヒールのセットの中に入った昆虫の扮装をした加代が、大きな森の中に〜♬と歌い始める。

そこに、同じく昆虫の扮装をした九助が寄り添って来る。

サユリのランジェリー点では、「ゴキゲンセール」と書かれたビラがショーウィンドーに貼られ、大勢の女性客で溢れていた。

そこに、釈放された星山が帰って来る。

事務所で星山を出迎えたサユリと藤夫だったが、留守中の事を頼まれていただけなので…と言い残して藤夫が去ろうとすると、サユリが、あんたはうちに300万貸している事になるんだから、取り返さなくていいの?と言い、止める。

一方、森山電気店の方では、どうしても300万の借金が返せそうもないふみに、再婚をしようと思うので、加代ちゃんを頂く。そうすれば、300万は花嫁の支度金として棒引きにしてやると言い出していた。

その話の途中、店員の九助は、ラジオペンチをかざして、金田を追い返すが、加代は、金田さんと結婚すれば、私も幸せになれるかもしれない等と言い出したので、それを聞いた九助は慌て、文部省は、修身を復活させるべきだと宣言する。

そんな電気店の話を聞いていた近所の作業員(石川進)は、金がないと困るけど、あり過ぎても悩みの種になるよ等と口出しし、そこにやって来たトモ子(渡辺トモコ)と共にペプシコーラのバッグを持ちながら、ピカピカ新車のキャデラック♬と歌い始める。

その後、喫茶店に呼び出された九助は、浦島会長から、九ちゃんなら、兄貴の血を引いているような気がするんだ。ボクサーになってみないか?と誘われる。

九助はその気になり、早速、浦島拳闘クラブで練習を始める。

それを見守る浦島会長は「タイミングだ!」とアドバイスする。

タイミング!ティカティカティカ♬と九助は歌いながら練習を続ける。

加代も、ランニングに自転車で並走してくれたり、兄の藤夫も弟の練習の手伝いをしてくれるようになる。

俺がチャンピオンになれなかった夢をお前が代わりに果たしてくれるのかと藤夫は嬉しそうだったが、九助は、そうじゃないよ。僕はお金が欲しくてボクシングを始めたんだとあっさり答える。

早くチャンピオンになれる方法を教えてと九助が聞くと、相手を1万円札だと思うんだと藤夫は教える。

その効果があったせいか、九助はどんどん勝ち進んでいき、新聞には「殺人パンチの新人現る!」「鉄腕!」などとはやし立てられる。

そしてとうとう、全日本フェザー級チャンピオンの調印式に望んだ九助

相手は、兄と戦った因縁の熊本三郎だった。

帰宅した九助に、加代は、チキンラーメンを作って勧めるが、減量中の九助は食べられないのだと言う。

クラブで浦島会長から渡される昼飯は、小さなおにぎり1個と水だけだった。

その様子を又もや窓の外から覗いていた三吉は、すぐさま星山の元に知らせに来る。

それを聞いた星山のペテン師としての本性が出て来る。

九助をレストランに誘った星山と三吉は、山のようなごちそうを食べさせようとする。

九助は、今は食べられないんだと断るが、君くらいの若さなら、1日トレーニングをすれば、すぐに元に戻るよなどと星山はおだて、何とか食べさせようとするが、どこで聞きつけたのか、藤夫とが突然やって来て、お前は食べちゃ行けないと九助に言い、自分が席を代わって座ると、テーブルに置かれたチキン等をむしゃむしゃ食べ始める。

星山は、5700円の請求書を恨めし気に見つめる。

試合前日の夜、加代は布団の中で、九ちゃん、勝ちますように!と祈りながら眠りにつくのだった。

夢の中で、おさんどん(下女)になっていた加代は、歌を歌いながら「王将」と書かれた額の鳥居の神社にやって来る。

じんじろげやじんじろげ〜♬

社の中に入ると、そこには「テイジン」と書かれたひな壇に、三人官女と五人囃子風に、エレキギターを抱えた面々(パラダイスキング)が並んでいた。

お内裏様(坂本九)とお雛様(森山加代子)もいる。

すると、鍾馗様がいきなり乱入して来て、剣を振り回し始める。

五人囃子たちは、その鍾馗様と戦う。

加代は、大福帳を持った小僧風のじんじろべえ(坂本九)と一緒に、じんじろげやじんじろげ〜♬と歌い続ける。

やがて、歌い終わったおさんどんとじんじろべえは、五人囃子たちに手を振りながら、神社を後にする。

藤夫は星山に、弟には手を出さないで下さい。九助だけにはチャンピオンにさせたいんだと頼み込んでいた。

星山はそれでも、俺は借金を払いたいんだと言い訳する。

そんな会話を店で聞いていたサユリが、この店売って、3人で何とかしましょうと提案すると、三吉が嬉しそうに寄り添って来るが、3人たって、相手が違うのよ!と言いながら、サユリは藤夫の手を取る。

そんな娘の姿を観た星山は、二度とイカサマに手を出さないと約束する。

ところが、その直後、星山はギャングの権藤(守田学)に会い、熊本三郎が絶対に勝つと保証し、大金を受け取っていた。

いよいよタイトルマッチの日、サユリと藤夫が店を臨時休業にして、九助の応援に出かけようとしていた時、戻って来た星山が、急いで逃げる仕度をしろ!夜逃げだ!と2人に告げる。

サユリは驚いて、又イカサマをやったのね!と憤慨するが、してないから夜逃げしなくてはいけないんだ。権藤から資金を借りた。権藤を騙したんだ。俺は金が欲しかったんだと言う星山に、貧乏してでも、3人で仲良く暮らすって言ったじゃない!と抗議する。

どっかに内緒の人でも作ったんじゃない?と藤夫が小指を立ててみせると、俺はサイテーな男だ、これからそこに連れて行くと2人に言うと、タクシーで出かける。

着いた先は「森山電気店」だった。

タクシーから降りて来た星山を観たふみは、あなた!と驚く。

あっけにとられている加代に、お父さんよと告げるふみ。

死んだんじゃないの?と驚く加代に、15年前、山のような借金を作ったから…と言い訳する星山。

感激の再会のはずの姉のサユリと、妹の加代は口喧嘩を始めてしまう。

それを仲裁する藤夫。

そっと店の裏手に出た星山は、済まねえ。本当に長い間苦労をかけたな…と言いながら、再婚の話もあったんだろうなと問いかけるが、そんな話に耳を傾けると思っているの?あんたこそ、新しい女でも作っているんでしょう?と聞く。

星山は今でも独身だと言いながら、持って来た300万をふみに手渡すが、そこにやって来た藤夫が、残念ながらこれはイカサマで手に入れた金なので、俺が返して来てやると言い、金を受け取ると、路地裏に去っていく。

その後を追っていくサユリ。

しかし、そんな藤夫とサユリの前に立ちふさがったのは、権藤と、その仲間になっていた三吉たちだった。

藤夫は、持っていた300万返せば良いんだろうと言いながら渡すが、これだけじゃすまねえんだ。何しろ熊本三郎に賭けたんで、弟が勝ったらその賭け金がパーだ。その時は覚悟してもらいたいと権藤は薄ら笑いを浮かべる。

いよいよ始まったタイトルマッチの日、試合前の身体チャックを受けていた九助のトランクスの中から、レフリーが、お守りとして加代が渡した紐に何枚も連なった木札を引き抜く。

試合会場には、加代、ふみ、星山たちが観に来ていたが、藤夫の姿が見えないので、どこに行ったのかしら?とサユリは心配していた。

サユリと藤夫は、試合会場内のとある部屋に権藤たちに連れて来られていた。

権藤は、リングサイドに行って、負けるように九助に行って来いとサユリに命じる。

しかし、藤夫は、俺が指を詰めるよと権藤に頭を下げるが、100万賭けているんだ、指1本くらいで済むか!と権藤は怒鳴る。

藤夫は、俺は新でも、九助には勝つよう行って来るんだ!と声をかけたので、部屋を出るサユリは決断に迷う。

しかし、リングサイドにやって来たサユリは、九ちゃん、負けて!勝っちゃ行けない!負けないと藤夫さんが殺されるのと声をかける。

それを聞いた浦島会長は、すぐに警察に知らせるんだ!とサユリに語りかけるが、そんな事したら殺されちゃう!九ちゃん、負けてね!とサユリは言う。

その頃、藤夫の方は、九助負けるな!兄ちゃんがなれなかったチャンピオンになるんだ!と祈っていた。

加代も、九ちゃん、勝って!と声をかけるが、隣に座ったサユリが、負けて!と声をかけるので、お姉ちゃん!何よ、その態度!と切れる。

客席でポップコーンを食べながら試合の様子を見守っていた三吉は、権藤のいる部屋に来ると、九助の試合は一進一退の状態だと報告する。

それを聞いた藤夫はいきなり子分たち相手に殴り合いを始める。

リングサイドの席では、加代が、勝って、勝って、勝つのよ九ちゃん!と応援すると、負けて、負けて、負けるのよと隣のサユリが声をかける。

そんな相反する声援で迷っていた九ちゃんは、浦島から、九ちゃん、兄ちゃんを助けたいんだろう?だったら、相手を倒せば試合は終わるじゃないかと声をかける。

それを聞いた九ちゃんは、そうだね!と納得し、再びリングに戻る。

「タイミングだ!」と叫ぶ浦島会長。

その頃、別室では、藤夫がギャングの子分たちに痛めつけられていた。

九ちゃんは、熊本をノックアウトし、勝利者になる。

サユリは絶望のあまり泣き出し、加代は大喜びをするが、姉ちゃん、ごめんなさい!と謝る。

チャンピオンベルトを付けてもらった九助は、すぐにリングを降りると、別室に向かう。

藤夫は、ギャングたちに床にねじ伏せられていたが、九助が飛び込んで来ると、立ち上がりしっかり握手する。

そして、2人でギャングたちを殴り始めた所に、浦島会長と、加代、サユリ、ふみたち、そして警察隊が乱入して来る。

その時、ギャングの1人が、ジャックナイフを投げ、それは九助の心臓に突き刺さる。

倒れた九助は、駆け寄った藤夫やサユリに、試合に勝ってごめんよ。このチャンピオンベルトは兄ちゃんがもらうはずだったものだと言いながら、ベルトを手渡す。

その時、医者が駆けつけて来て九助の脈を診るが、もう助からないと言う風に首を振る。

九助!言いたい事があったら何でも言ってくれ!と藤夫が声をかけると、最後に一言…、皆さん、刃物を持たない運動にご協力くださいと言って、九助は目を閉じるのだった。

天国のテレビでこの様子を観ていた天使に、九三衛門は、わしの方はどうなっちょるんじゃ?と聞く。

スイッチを回すと、布団に寝かされた九三衛門の廻りに加代婆さんと親戚一同が集まっていた。

診察をしていた医者は、九三衛門の口の中に詰まっていた入れ歯を抜き、これは何とか持ちそうですな…と言うので、それを聞いた親戚一同は、これで遺産は大丈夫だと喜ぶ。

その状況を観た九三衛門は、もう1度、九助の最後の様子を写させると、わしはもう生きなくても良いから、あの若者を生き返らせてやってくれんかのと天使に頼む。

それを聞いた天使は、じゃあ、あんたの寿命をあっちに移すかと言ってスイッチをひねる。

布団に寝かされていた九三衛門は、医者に何事か囁きかけると息絶える。

医者は親戚たちに、全財産はお加代婆さんに譲ると言う遺言があったと言いながら、九三衛門が残していた遺言状を取り出して見せる。

一方、担架で運び出されかけていた九助は、急に目覚めたように起き上がる。

その様子をテレビで観た天使は、これでめでたし、めでたし、あんたも天国に行けると九三衛門に告げる。

「天国への階段」と書かれた鉄柵が開くと、その先には長い階段が見えた。

それを静かに登りだす、白髪の九三衛門。

それを見送る天使は、さよなら!元気でね!と手を振る。

地上では、森山電気店の裏に集まった九助や加代たちが、空に向かって手を振っている。

それを観た九三衛門は、満足そうに天国への階段を登って行くのだった。