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ギターを持った渡り鳥

小林旭主演で有名な「渡り鳥シリーズ」の第1作である。

元々このシリーズは、小林旭主演の「南国土佐を後にして」(1959)の大ヒットがきっかけで生まれたらしいのだが、風光明媚な地方都市の風景と、風来坊的な旭が、町の悪を倒して去って行くと言うパターンを踏襲している。

8月公開だった「南国土佐を後にして」に継ぎ、この作品は同年10月に公開されている所からも、ブームの火が消えぬうちに、矢継ぎ早に…と言う戦略を感じさせる。

シリーズでお馴染みの、浅丘ルリ子、宍戸錠、金子信雄、渡辺美佐子、白木マリなどのメイン役者は、この時点で全て揃っている。

このシリーズでは踊子等、準ヒロイン的な役柄が多い白木マリは、もちろん、後年の「必殺シリーズ」での中村主水の妻りつである。

金子信雄演じる秋津の妹澄子役で出ている中原早苗は、深作欣二監督の奥様であり、深作健太監督のお母様でもある。

シリーズ途中から「無国籍アクション」と言われるようになった本シリーズだが、この第一作目を見る限り、取り立てて荒唐無稽さは感じられない。

最後まで見ると、ごく普通の通俗アクションものであることが分かる。

荒唐無稽さが少ない分、今観ると、若干地味な印象もないではないが、若い小林旭や浅丘ルリ子の輝くような若さには、やっぱり惹き付けられるものがある。

この作品では、滝の過去が多少語られている。

彼が何故、拳銃の名手なのかといった疑問は、これで説明されている。

話の内容自体はありふれたもので、正直、今の感覚からすると、この映画の何が当時の観客に受けたのか良く分からなかったりするが、函館のロケーションはきれいに撮れており、観光映画としては成功しているように思える。

とにかく、この当時、日活の石原裕次郎映画と小林旭映画の動員振りは圧倒的で、その後、この2人に匹敵する動員力を持ったスターが生まれなかったのが、日活衰退の最大の要因とも言われるくらいらしい。

とにかく、まだあどけなさが残る、痩せた小林旭も、ふっくらとした浅丘ルリ子も宍戸錠も、髪の毛ふさふさの金子信雄も、とにかく全員若い!

いかにも、日本映画全盛時代の勢いを感じさせる魅力を持った作品だといえよう。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1959年、日活、小川英原作、山崎巖+原健三郎脚色、斎藤武市監督作品。

荷車を曳いた馬車がやって来る。

起きてください、函館はあっちですよと、馬から降りた男が荷車の中で寝ていた青年滝伸次(小林旭)に声をかける。

ありがとうと礼を言って降りた滝は、ギターを持って歩き始める。

タイトル(函館の町の昼の光景から夜景へと変化する)

函館の繁華街にある「BAR ビオン」では、流しのサブ(野呂圭介)と源次(近江大介)が、酔った2人の外国人船員から、女はどこだと因縁を吹っかけられていた。

自分で思い出すんだなとその船員にカウンターから声をかけたのは滝だった。

船員2人が滝に近づいて来たので、滝は飲んでいた酒を相手の顔を浴びせ、喧嘩が始まる。

店の中を壊し回った後、外に出て殴り合っていた船員たちと滝だったが、パトカーのサイレンが近づいて来たので、サブが、兄貴ヤバいぞ!と声をかける。

滝は慌てて逃げ出すが、廻り回って追って来る警官を避けているうちに、1人の女性がドアを開け中に入れてくれる。

女性は、ガラス代高いわよと滝に話しかけて来たので、殺気の店の裏口だと滝も悟る。

女は、店のママリエ(渡辺美佐子)だった。

フロアで、踊子(白木マリ)が踊っているのを観ながら、滝はリサに社長室にいた秋津礼三郎(金子信雄)に会わせられる。

秋津は、礼を言わねばならん。君が助けたのはうちの若いもんだと言い、酒を勧める。

滝が一気に飲み干すと、飲みっぷりもなかなか良い。もっと早く君のことを知りたかったよと秋津は滝を気に入ったようだった。

さっき町に着いたばかりなんでねと滝が答え、目的も別にないと言うと、いっそのこと私の所で働かんか?と秋津は勧め、リサも、秋津さんもああ言っているんだからと声をかけて来るが、俺は一つ所に居着かない性分なんですと滝は答える。

秋津は、気に入った。なかなかはっきりしている。いつでも来なさいと言い、滝は、ママさん、ガラス代は、いつ鎌田弁償しますと言い残して帰って行く。

夕方、港でギターを弾く滝。

翌朝、小舟の中で眠っていた滝は、突然、近くにやって来たモーターボートの音で目を覚まし、慌てて立ち上がったのでバランスを崩し、海に落ちてしまう。

バカヤロー!と滝が怒鳴ると、ボートを操縦していた娘由紀(浅丘ルリ子)が、ごめんなさい!誰も乗ってないと思って近づいてしまったの…と詫びて来る。

突堤に上がり、服を乾かすことにした滝に、由紀は付いて来る。

野宿していたら流されたんだと滝が説明すると、失業者ってこと?仕事、紹介しましょうか?と由紀は言う。

ただし条件がある。のんびりできて、酒をたんまり飲める所と滝が無茶なことを言うと、かなり満足できると思うわと答えた由紀は、滝を乗せて車で自宅に帰って来る。

そこで、由紀を出迎えたのは、夕べの秋津だったことを知った滝は、車を降りると、夕べ、あんたのお父さんをお琴割ったんだと由紀に告げ、立ち去って行く。

園後ろ姿を観ている由紀に、無駄だよと話しかける秋津。

七財橋の所で、風船を買った男の子が転んで風船を飛ばしてしまい泣いていた。

そこにやって来た滝は、坊やに風船と黄金飴を買って渡そうとするが、気がつくと、もうその男の子は、母親らしき女性に連れられ遠ざかっていたので、ちょっとがっかりする。

その夜、滝はその風船をギターの先に付けて、流しをやっていた。

すると、そんも店の縄張りだった流しの2人が因縁をつけて来たので、外で喧嘩になる。

その時、地元の流したちに、止めろ!お前らの敵う相手じゃないと声をかけて来たのは秋津だった。

近くの飲み屋に誘われた滝は、秋津から、私の身内をからかわんでくれ。あそこは清水と哲の縄張りだ。あんたがここで商売をやるとなると、身内の奴らが騒ぎ出す。この土地にいる気なら話し合う必要があると言われる。

のんびりできて酒が飲める仕事なんて滅多にないぞと、娘の由紀に聞いたらしことを言い出した秋津は、手を貸してもらいたい仕事があると言うので、弱い奴を虐めるのはご免だぜと滝が牽制すると、そんなことをやる奴はいくらでもいる。もっと大きな仕事だ。わしにも借りがあると頼んで来る。

その頃、サブたち、秋津の若い連中は、地元の店が借金を返せないことを笠に着て、暴力を奮い、立ち退きを迫っていた。

しかし、1軒だけ、サブと源次が叩き出された会社があった。

それを知った幹部の馬場(弘松三郎)は、秋津からの指示を受け、その場にいた滝に出向いてくれと頼む。

滝は出向き、あっさり先方の腕利きを叩き出すと、明日までに立ち退いてもらうと言い残して来る。

秋津の自宅にサブと共にやって来た滝は、由紀が弾いていたピアノの曲に耳をすます。

マッサージ中だった秋津が待たせている間、滝は、由紀の弾いていたショパンの曲に一カ所ミスがあると指摘し、自ら弾いてみせる。

プライドを怪我された友紀はむっとして出て行く。

やがてやって来た秋津に仕事の報告を滝がすると、ご苦労。いい腕だな、滝…と、一緒にやって来た馬場が褒める。

秋津は、娘のピアノは聞いてくれたか?7つの時からやっているが、函館でも1、2の腕だそうだ。今度ゆっくり聞いてくれと頼み、もう一つやってもらいたいことがあると言い出す。

馬場が函館の地図を拡げ、今、観光客は、函館港から立待岬の方へ移動しているが、その途中の場所にアミューズメントセンターを作り、物好きな客を集めたい。岸壁のすぐ側なんだが、障害が1つあり、現在うちが建っていると秋津が説明する。

買収するんですか?と滝が聞くと、潰すんだ!手は打ってあると秋津は言う。

その後、サブと源次と共に車で目的の港へやって来た滝は、港に接岸している船の持ち主が相手だと源次から聞く。

相手の事務所に入ると、出て来たのは、先日は氏の所で出会った男の子だった。

滝は、お父ちゃんは?と聞き、そこに出て来たのが庄司明夫(木浦佑三)だった。

秋津が融資した500万の返却期限が今日だが?と滝が用件を持ち出し、松陽丸が担保になっているが?と言うと、庄司は、予定日になっても船が帰って来ないので、もうしばらく待ってくれと言う。

今そこに横付けしているのを観て来た所だと滝が言うと、庄司は、今日の所はこれで…、船員たちに給料を払った残りなんだと言って、札束を持って来る。

さらに一ヶ月待ってください等と言うので、滝は冷淡に、この家を明け渡してもらいますかと告げる。

すると庄司は、5代も続いた古い家なんですと言うので、滝は呆れてしまう。

そこにやって来たのは、さっき、船の側にいた女で、金を借りる時止めれば良かった。どうせ兄さんのことだから、こんなことをするんじゃないかと思っていたわと言うので、兄さんとは誰のことですかと滝は聞く。

すると、事務員の安川(青山恭二)が、そんなことも知らないで来たのか!秋津さんのことですよと言うではないか。

女は、庄司の妻で、秋津の妹でもあった澄子(中原早苗)だった。

「BAR ビオン」の2階にあるビリヤード場にいた秋津の元へ戻って来た滝は、相手は妹さんじゃないですかと呆れたように報告する。

すると秋津は、本当の所、アミューズメントセンターの1つくらい建てんでも良いんだ。しかし、あいつは、意気地のない男の所へ、家出同然で出て行って嫁に行った。俺の面目は丸つぶれだ。今回の件は当然の見せしめだと吐き捨てる。

その時、下から物が壊れる音がしたので、馬場が覗いてみると、カウンターで飲んでいた踊子が酔って荒れている所だった。

そうやら、ジョージと言う惚れた男を捜してこの町へやって来たが、そのジョージに出会えないのでヤケになっているらしかった。

翌日、下宿先で寝ていた滝は、突然車でやって来た由紀からカーテンを開け放たれ、無理矢理起こされる。

明日は、私の誕生会だから来てと誘っただけではなく、これから買い物に行くので用心棒代わりについて来るように言われる。

仕方なく、ランニングにパンツに、パジャマのズボンだけ履いていた滝は、ズボンを降ろして着替えようとするが、さすがに由紀は目線をそらすのだった。

ところが、ついて行った先は買い物ではなく、箱館山の頂上だった。

滝さん、何をしていたの?ずっと流しをしていたなんてダメよ。そんな人がショパンなんて知ってるはずないわと由紀が聞いて来る。

好きな人がいたんだよ、その人がショパンを好きだったんだと滝が打ち明けると、帰ろうかな、私なんかと遊んでも楽しくないでしょう?その人の所へ行ったら良いわと由紀がすねると、遠過ぎるよ、あそこさと言って滝上挙げたのは空に浮かぶ雲だった。

亡くなったの?と由紀は驚き、2年前にね…と滝が答えると、ごめんなさい、嫌なことを思い出させて…と由紀は詫びる。

思い出すってことは忘れているってことだ。俺は忘れたことはない。だから、思い出すこともないと滝は答える。

どんな人だったの?と好奇心から由紀が聞くと、ミスユニバースよりきれいでおしとやかで教養があって…、でも何故聞くんだい?と滝は聞く。

分からないわ、聞くまいと思っても、つい聞いちゃうのと由紀も正直に打ち明ける。

その後、函館の店で踊ることになるが、滝は、僕なんかと付き合うんじゃない。君とは違う世界の人間だ。それに僕は流れ者だよと忠告する。

もう遅いからと、由紀を送って帰ろうとした滝は、バーテン相手に凄んでいる馬場に気づき、馬場さん、止めなよと言葉をかける。

どうやら、この店も潰そうとしているらしかったが、馬場は由紀に気づくと、そうか…、お楽しみだな…と滝をからかい、先に帰る。

由紀を連れ、店を出ようとした滝は、見知らぬ男を見る。

それは、沼田刑事(二本柳寛)だった。

店を出た由紀は、今の人誰なの?と聞いて来たので、滝は知らないと言うと、相手はあなたを知っていたわと由紀は食い下がり、馬場さんもあそこで何をしていたの?馬場さんの一存であんなこと出来ないわ。パパもやっているの?と問いつめる。

しかし、滝は、馬場さんは酒癖が悪いだけだ、後で良く言っとくよとごまかして、秋津の事務所に向かう。

そこには、馬場も戻っており、その報告を受けたらしい秋津が、滝、ほどほどにしろ!いつから娘を連れ出す身分になったんだ?今後は近づくな!私の大事な1人娘だ。分かったなと言い聞かす。

その時、ソファでコートを頭からかぶり寝ていたらしい左頬に傷がある男が目覚める。

秋津は、神戸の田口組から来たジョージ(宍戸錠)だと滝に紹介し、ジョージにも身内の滝だと教える。

滝?と、その名を聞いたジョージは、滝の顔を観ながら、何か考えているようだった。

ジョージを連れ、カウンターに出向いた秋津だったが、ジョージは、滝にダイスの賭け勝負を挑んで来る。

滝が先に振り、ジョージが続くが、勝負はジョージの勝ちだった。

ところが、賭けた金を取ろうとしたジョージの手を押さえた滝は、ジョージが出したサイコロの一つをその場で割ってみせる。

イカサマサイコロだった。

良い腕だよ、すり替えるのもな…と滝が皮肉ると、お前の身元を確かめたかったのさ。どっかの賭場で会ってるな…と笑いながらジョージは滝の顔を凝視する。

その時、ママのリエが滝を踊りに誘う。

ジョージは秋津に、奴はいつから身内になったのか聞き、つい最近で、それまでは流しをやっていたと知ると、ギターを弾く奴に関係はない。どっか別の所で会っているんだ…とジョージは考え込む。

そんなジョージは、ヤクの密輸を手伝って欲しい。ハマの方は監視が厳しくなっているんだ。船は沖合に泊めるので、船を一艘用立てて欲しいと秋津に依頼する。

田口からの頼みだと知った秋津は、金はいらん。俺は麻薬はやらん。だが田口さんからの頼みなら、何とかあんたの顔を立てよう。ちょうど良い船がある。良い潮時だし…と答える。

良い潮時とは?とジョージが聞くと、何、こっちのことだと秋津は言葉を濁す。

由紀の誕生パーティの最中、自宅に帰って来た秋津は、由紀から、滝さんご一緒じゃなかったの?と聞かれたので、知らんよと言うと、私、誕生日にご招待したのと由紀が言うので、そう。じゃあ来るだろうと言ってごまかす。

その後、二階の自分の部屋に入った秋津は、待っていた馬場に、これで、田口の顔も立つし、丸正は潰れる…、一石二鳥だと上機嫌で報告するが、馬場は、三鳥でしょう、アミューズメントセンターのめども立ちますと言う。

後は、ジョージと流れ者が勝手に共謀したことにすれば良いと秋津はほくそ笑む。

由紀は、招いた友達を前に歌を披露していた。

そんな中、やって来た澄子は、秋津の部屋に入って来ると、あんまり酷いと思わない?船を取られるのはともかく、船員まで引きずり降ろすなんて、あの人たちこれからどうやって食べて行けば良いの!と文句を言う。

そんなことは庄司が心配すれば良いことだ。考えてみなさい。あんな意気地なしの所へ行かなければ、お前も今頃は、由紀と同じように暮らせたんだ。丸庄はもう潰れるよ。地主にはもう手は売ってある。あそこにはアミューズメントセンターが建つんだ。早く帰って来なさい。お前がやる仕事はたくさんあると秋津は言い聞かせようとするが、私は丸庄から離れません!と澄子が言い放つと、歯向かうのか!やれるもんならやってごらんと秋津は冷酷に答える。

その頃、庄司から奪った船に乗り沖合に向かっていたジョージは、ビールを飲みながら、空を飛ぶカモメを銃で撃ち落としていた。

ジョージは、一緒に乗っていた滝の姿を観ると、ダイスが出来て、ハジキが使えないなんてあるかいと言い、ハジキの勝負を申し込む。

しかし滝は、ダメだ。俺はハジキを持ったことがないと言って相手をしないので、お前が代わりをやれ。当たれば2万円だと、銃を渡され命じられたサブがカモメを撃って見るが丸で当たらない。

ジョージは、飲み終えたビールの空き缶をサブに放らせ、それを撃ってみせるが、その弾いた空き缶をさらに空中で弾いた銃声が聞こえる。

銃を手に、サブの代わりさ…と言ったのは滝だった。

その姿を観たジョージは、思い出した!こいつは神戸市警のデカだ!俺の仲間を殺したんだ!と思い出す。

それを聞いた船員たちが滝の廻りに集まって来る。

パクれるのに、何故殺した?賞金が欲しかったのか?奴の仇はおれが討つと、船員たちを制止したジョージは、誰か合図をしろ!と命じ、滝と一対一の決闘をやろうとする。

仕方なく、サブが撃て!と声を出すと、両者は互いに相手の銃を撃ち落とし相打ちの格好になる。

しかし、ジョージは、船員から、左手に別の拳銃を渡されると、それで滝をゆっくりな振り殺しにしようとする。

その時、サブが、巡視艇だ!と海を見ながら叫ぶ。

ジョージは、運の良い奴だ。みんな隠れろ!と船員たちに命じる。

船に乗り込んで来た海上保安官は、室蘭まで行くと言う船長の言葉を聞いた後、船内を点検し始める。

サブと同じ部屋で、ギターを弾いて歌っていた滝の部屋に来た海上保安官は、奥の扉のカーテンが動いたのに気づくが、それを知った滝は立ち上がり、奥の部屋に向かって、おい、何をしてるんだ?早く飯にしてくれよと声をかける。

そこには、銃を持ったジョージが隠れていたのだが、滝の機転で、海上保安官たちは奥の部屋を調べることもせず帰って行く。

ジョージは感謝しながらも、それですんだと思ったら大間違いだと滝に語りかける。

そこへ船員が神戸からの電報を持って来て、嵐で行かれぬ。連絡を待たれよと言う内容だったので、今回の仕事は中止としたジョージは、滝には逃げるなよと釘を刺す。

その頃、庄司は、500万くらいで船を取られるなんて!秋津に抗議をしに行こうとしていたが、妻の澄子が必死に止める。

すると庄司は、さてはお前も秋津とグルなんだな?俺にはちゃんと分かっているんだ!などと言いがかりをつけたので、その場にいた安川が、庄司の顔を叩き、旦那、姐さんが間に入って苦しんでいるのを知らないんですか?元はと言えば、あんたが意気地がないからこんなことに…と言い聞かせる。

その夜、澄子や息子が寝た中、1人遅くまで酒を飲んでいた庄司は、外が嵐だと言うのに、雨合羽を来て外出する。

それを外で待ち受けていたのは馬場だった。

馬場は、大雨が降る中、出かけた庄司の後を付いて行く。

翌朝、港に、庄司の水死体が浮かんでいた。

それを見る野次馬の元にやって来たのは滝だった。

そんな滝の側に近づいたのは、いつかバーで出会った沼田刑事で、久しぶりだなと滝に挨拶する。

人気のない坂道にやって来た沼田は、今は秋津の所にいるんだってな?たいそう羽振りが良いらしいじゃないか?変われば変わるもんだなと滝に話しかけ、ただ話をしたかったんだ。神戸市警の昔の部下とね…と言う。

何しに来たんだ?と滝が聞くと、ある男を捜しているんだ。ジョージと言うが、君にとっては辛い名だろう。この町に来ているんだ。奴が来る目的は麻薬と殺し以外にないだろう。知っているなら教えて欲しいと沼田は頼むが、ジョージなんて知らない。例え知っていても、俺は今秋津の下で働いているんだ。知っていても言えませんなと滝は答える。

そんな滝に、君は気の毒だった。奴らのお抱え弁護士のために首になって…と昔話をしようとするが、無関心そうに滝は帰ってしまう。

庄司の葬式には、秋津の関係者も出席していた。

焼香をすませた秋津は、妹の澄子に、全く気の毒したな。庄司はいつからそんな大酒飲みになったんだと話しかける。

いたたまれなくなった滝は座を外すが、そんな滝に、話があると近づいて来たのは安川だった。

2人が出かけるのを、葬儀に出席していた由美は観かける。

港にやって来た安川は、いきなり、バカヤロー!貴様それでも人間か!と言いながら滝に殴り掛かって来る。

俺は知ってる。旦那をあんな目に会わせやがって!と安川は何度も滝に殴り掛かる。

姐さんの気持ちを考えろ!たった一隻の船だけでなく、旦那まで!と興奮している安川に、俺じゃないよと滝は答えるが、安川は容赦なく組み付いて来る。

そこに由紀が近づいて来たので、それに気づいた安川は立ち去る。

起き上がった滝に近寄って来た由紀は、どうしたの?何故喧嘩なんてしたの?と聞く。

君には関係ないよと滝は答えるが、あるわ!少しでもあなたのことが知りたいのよと由紀はすがりつく。

世の中にはあなたが知らないことはたくさんあると滝は言い聞かそうとするが、パパのために、あなた、何かしたのね?あなたは、正しいことなら、相手を徹底的に追及する人よ。でも嫌い、そんな勇気のない今の滝さんなんて…と言い残して去って行く。

自宅に帰って来た由紀は、出かける仕度をしていた秋津に、パパ、おっしゃって!パパが今までやって来たことを!と迫るが、由紀、私は、お前の幸福のためにやっているんだよと言うだけで、秋津は出かけて行ってしまう。

ベッドに腰掛けた由紀は、無力な自分に絶望するかのように沈み込んでしまう。

その夜、アコーディオンを持って流していたサブは、ばったり滝と出会う。

滝は、サブ、嵐の日の事で聞きたいことがある。付き合ってくれと声をかける。

キャバレーにやって来た滝は、そこにいた馬場から、よう、元刑事さんとからかわれるが、秋津はジョージと一緒に出かけたのか?と確認する。

その頃、ジョージは「BAR ビオン」の二階のママの部屋で、リサを無理矢理抱こうとしていた。

そこに秋津がやって来る。

部屋に入ってきた秋津は、2人の様子を見て、お楽しみの邪魔をしてすまなかったと無表情に詫び、あんたが、この女に思し召しがあるとは知らなかったとジョージに告げる。

そして、神戸の田口さんから電話があった。今夜10時、蓮おところに船が来るそうだ。それまで時間があるとジョージに伝えると、下のカウンターへと降りて行く。

そこには滝が座っていた。

来てたのか?と言いながら横に座った秋津に、滝は、聞きましたよ、サブにねと答える。

で?どうだと言うんだと平然と秋津が言うと、何も聞かない。何も言わない。だから、妹さんに船を返してやってください。寝覚め悪くないですか?と滝は頼む。

その言葉を聞いた秋津は、私が間違っていたのかもしれん。考えてみれば、船は妹に返してやるのが良いのかもしれんと言い出す。

そこにやって来て一緒に話を聞いていたジョージが、今夜の仕事は?と聞くと、仕事が終わった後だと秋津は答える。

帰れるかどうか分かりませんぜとジョージが不気味に笑うと、それとも、俺が帰れないか…と滝も無表情に言う。

その後k、事務所で馬場に拳銃を渡した秋津は、ドジを踏むなよ。2人とも消すんだと命じていた。

船はその夜出航するが、甲板上では、滝がギターを弾いて、聞き慣れない歌を歌っていた。

ジョージが近づいて来て曲の名を聞くと、人殺しの歌だと滝は答える。

歌いな、二度と聞けねえとジョージは促し、やっぱり殺すには惜しい度胸だぜ…と感心する。

そんな2人の様子を、船室の上から見張っていたのは馬場だった。

その頃、ジョージに寝取られたリエは、秋津の目の前で、子分たちから拷問を受けていた。

それを恐ろし気な目で観ていたサブは、リエが店から追い出されると、俺ももう秋津組なんているもんか!と言い、哀れなリエをいたわる。

カウンターに座っていた秋津は、これで邪魔者はみんないなくなった。みんな今夜は大いに飲めと子分たちに勧めていた。

密輸船と遭遇した後、船の上では、歌い終わった滝に、銃を渡したジョージが、分からねえ。お前のような奴が、どうして背中を撃った?女のためか?と聞いていた。

それもある…と滝は答える。

だが、俺はあの時刑事だった…と言う滝の言葉を遮るように、女なんかいねえ。お前はしくじったんだと話しかけたジョージは、俺が負けたら、麻薬をボスに届けてくれと頼み、滝と銃を向けあう。

その時、突然、滝が撃たれ海に落下する。

何をしやがるんだ!と驚いて馬場に銃を向けたジョージだったが、馬場は、ボスの命令だと答える。

「BAR ビオン」では、踊子が愉快そうに踊りまくっていたが、その踊子の顔から笑顔が消える。

店に入って来た馬場の姿を観たからだった。

カウンターに座っていた秋津も、ヨロヨロとステージに近づいて来る馬場の姿に異様なものを感じ、黙って見守っていた。

馬場は突然吐血すると、胸ポケットからハンカチを取り出し、口元を拭った後、その場に倒れる。

ホステスたちの悲鳴が上がり、驚いた秋津や子分たちは、どこからともなく聞こえて来る口笛を聞く。

それはあの、人殺しの歌のメロディだった。

階段上に姿を現したのは、右手を血で染めた滝だった。

秋津さん、あんたには悪いが、ご覧のように生きてますからと言いながら、階段を降りて来た滝は、今まで、色々あくどい奴を観て来たが、お前みてえな奴ははじめてだ。さあ、俺と一緒に警察に行こう。みんな俺がバラしてやるぜと言いながら秋津に近づこうとするが、部下たちが一斉に飛びかかったので殴り合いを始める。

そんな部下たちに銃撃を浴びせ、牽制したのはジョージだった。

二階の事務所に逃げた秋津を追って滝が駆けつけると、既に銃を向けていた秋津は、今度は俺が殺す番だと笑う。

その時、横の入口から銃を持って現れたのは、先ほど店を追い出されたリエだった。

リエは発砲するが、その前に秋津に射殺されてしまう。

そして、もう1度、秋津が滝に狙いを定めた時、横の窓からジョージが発砲し、秋津を仕留める。

部屋に入ってきたジョージは、これで船での借りは返したぜ。今度はお前と水入らずだと滝に告げる。

ビリヤード室にやって来た2人は、2つのビリヤード台の前にそれぞれ立ち、銃を台の上に置くと、滝は赤い玉、ジョージは白い玉を持つ。

その時、踊子が、ジョージと言いながら部屋の入口の所へ駆けつけ、2人の勝負に気づくと、動こうとはせず、じっと見つめる。

その時、パトカーのサイレンが近づいて来たので、窓の外を観ながら、邪魔が入った。早くやろう。3つ数えて…と言うと、1つ、2つ、3つと言い、2人とも握っていた玉を台に置くと同時に銃を取り上げ発砲しあう。

滝は左手で、発砲し、ジョージの銃を弾き落とすと、その後も数発、ジョージの前のビリタード台を撃ってみせる。

俺の負けだ!とジョージは認める。

そこに、沼田刑事と地元署の警官たちが乱入して来て、ジョージを逮捕して行く。

その後を踊子も付いて行く。

翌日、滝と2人になった沼田は、もう1度考えろ。俺と一緒に神戸に帰らんか?ずっとこの町にいるのか?と聞く。

大塚刑事に聞いたが、娘は父親と違って、なかなか良い娘出そうじゃないかと沼田が言うと、秋津は俺のために殺されたようなものだ。そんな俺がここにいられると思いますか?佐渡へでも言ってみようと思いますと滝は答える。

死んだ女の里なんですどうってことないんですが、一度くらい、墓参りしてやらないとね…と滝は笑う。

港にタクシーでやって来た滝を待っていたのは、由紀と安川と澄子だった。

安川は、滝の正体を知ったのか、ちょっと恥ずかしそうだった。

由紀さん、俺はあんたに何と言って詫びたら良いのか…と滝が由紀に話しかけると、良いの…、みんな父が悪かった。私も悪かったんです。今度お会いするときは、素直な娘になっていますと由紀は答える。

伸次さん、きっと又いらしてくださいね。待ってますわ、私たち…と澄子も滝に声をかける。

連絡船に滝が乗り込み、やがて船は出港するが、それを見送りながら、澄子は由紀に、あの方、又きっと来るわと言葉をかける。

しかし由紀は、船を見つめながら、2度と来ない…と言い切る。

どうして?と澄子が聞くと、分かる。あの人のことは何でも分かる…と由紀は答える。

甲板から海を見つめる滝。

見送っている中には、沼田刑事の姿もあった。

歌が重なり、連絡船は遠ざかって行く。