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網走番外地 決斗零下30度

シリーズ第8弾だが、相変わらず面白い娯楽作品になっている。

このシリーズ、ヤクザものと言うより、通俗アクションものと言った方が近いだろう。

健さん演じる橘真一は、妙におっちょこちょいな部分もある軽い感じのチンピラと言った感じで、後年の寡黙で渋い健さんではない。

その軽い健さんが、正義感のために、地元の悪と戦うと言う、小林旭の「渡り鳥シリーズ」にも似た展開になっている。

その健さんを助けるのは、手品師まがいの怪しさを持つ凄腕のガンマン吉岡と、どこからともなく現れる「鞍馬天狗のおじちゃん」みたいなアラカンの鬼熊。

吉岡を演じているのは、朱実役の三原葉子同様、監督の石井輝男と共に、新東宝から移籍してきた吉田輝雄。

敵役は、いかにも憎々しい安部徹と、ちょっとユーモラスな味わいを併せ持つ田崎潤のコンビと言う申し分ない配役。

本作では特に、チエと言うませた口を聞く幼女と健さんの取り合わせが珍しく、優しいお兄ちゃんとしての橘が描かれている。

チンピラと純真な子供との組み合わせと言えば、座頭市シリーズの何作や「男はつらいよ 寅次郎物語」など、類似の物語も多い。

ラストの別れの哀しさも共通している。

シリーズ当初から出ている丹波哲郎だが、今回は又、一段とかっこ良く描かれている。

格好良さでは、健さんを食ってしまっているかのように見えるほど。

その反面、大原麗子扮する妹路子や、愛人朱実を演じる三原葉子の存在感は若干弱い気もする。

鉱山の中に入ってツルハシをふるう健さんの姿は、後年の「海峡」などを連想させる。

しかし、「渡り鳥シリーズ」の銃撃戦などもそうなのだが、クライマックスでドスを振り回して敵を斬っている健さんは、シリーズものの主人公としてどうなのだろう?

明らかに胸を突き刺している描写等もあり、殺人罪になるのではないかと心配になる。

鬼熊が、その辺の処理は巧くやってくれていると言うことなのかもしれない。

今回、テレビ放映で観たこともあり、後半、万屋に、鬼熊や吉岡、橘が全員揃っている場面などは唐突過ぎる印象があり、その前の部分がカットされていたのかもしれない等と想像する。

他にも、カット部分はありそうだが、取りあえず、テンポ良く観る事が出来る痛快作になっている。

余談だが、本作の中で、健さんが「豚もおだてりゃ木に登る」と言うギャグを言っていることに注目したい。

巷間、70年代から始まったTVアニメの「タイムボカンシリーズ」で使われ始めたと言われていることも多いこの言葉で、実は自分もそう信じ込んでいた部分があったのだが、1967年のこの作品に使われていると言うことは、もっと前から使われていた言葉であったことが分かる。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1967年、東映、伊藤一原案、石井輝男脚本+監督作品。

コートを着た橘真一(高倉健)は、町中を抜け、とある事務所に入ると、どちらさんですか?と立ち上がった舎弟を無視し、奥の部屋にいた男に、秩父の親分さんですか?と聞くと、龍神一家の橘真一と言うもんですが、千弥のお礼に来ましたと言いながら近づき、日本刀で叩き斬る。(モノクロ画面)

裁判で、懲役5年に処す!と言われた橘は、とある店の中で、サングラスをかけ、「七つの子」を口笛で吹きながら現れた男と対峙する。

良く逃げなかったなと、日本刀を持った立花が言うと、飯を食ってたんだ。あんな最低な親分でも、やらなきゃならないこともあるんだと言うなり、サングラスの男も日本刀を抜き、立花と斬りあう。

がっくり膝をついた立花に、サングラスの男は、その傷は7針縫えばふさがると言うので、手加減したって言うのか?と立花が聞くと、まあね。おめえさんが気に入ったからな…と言い残すと、また「七つの子」を口笛で吹きながら、部屋を出て行く。

その直後、サングラスの男は、左脇腹を押さえ倒れる。(ここまで、黄色い着色モノクロ)

(ここからカラー)列車の中で目覚めた立花は、どこからか「七つの子」を歌う子供の声が聞こえて来たのに気づくと、その声のする席に近づいてみる。

そこには、小さな女の子が1人で乗っており、胸には「ノサップのサガレン炭鉱」と書かれた札が付けられていた。

今の歌で目が覚めちゃったよ。どこ行くの?退屈したの?などと立花は話しかけてみるが返事はない。

耳悪いのか?と呟いた立花は、寒くないか?と言いながら、ストーブに手をかざすジェスチャーをやってみせるが、何よバカみたいにと女の子が言い出したので、なんだ?聞こえるのかと立花が驚くと、変な男から話しかけられても相手をするなって言われてるのよなどと生意気なことを言う。

中別府まで一人旅か?お父ちゃんとお母ちゃん、向こうにいるの?と立花は聞くが、そんな親切そうなこと言うのが危ないんだなどと女の子は言う。

タイトル

チエ(吉野比弓)と言う女の子の隣に座っていた立花の肩を叩いてきたのは、赤い派手な服を着た女西条弓子(国景子)だった。

あんた、仕事する気ない?観た所、決まった仕事なさそうだけど…と話しかけてきた弓子は、興味を持った立花に仕事の話をしようと耳に顔を近づけた時、その顔の前にトランプを投げつけてきた者があった。

手さばきも鮮やかに、トランプをシャッフルしながら通路を近づいてきたその男は、もう1枚のトランプを投げ、荷物棚のヒモを切り、そこに乗っていたミカンを立花に落として見せると、その仕事、俺の方が適任らしいと言い出す。

あんた、どう思う?と弓子が立花に意見を求めようとすると、お嬢さん、力と勇気と正義感の他に、仕事にはここが必要なんだと言いながら、男は自分の頭を指してみせる。

それを見た立花は、じゃあ、俺は頭が悪いってのか!といきり立つが、あんた、観た所、臭い飯を食って、1度や2度脱走したように見えるが、こんな時どうする?俺が別荘の監視人だとおm所って抜いてみなと言いながら、立花の両手をコートのベルトで縛り上げる。

立花が、満身の力を込め、ベルトから両手を引き抜いてみせると、スタミナを消費するとは男のすることじゃないなどと男は嘲る。

頭に来た橘が、同じように、ベルトで相手の両手を縛ってみせると、男は簡単に両手を外してしまう。

さらに、黒い布を目の前に拡げてみせた男は、その背後から、火のついた皿を持ち出してみせる。

何だ?どうせこれも仕掛けあるんだろ?このコートに火を付けて見せろよと立花が腕を出して挑発すると、その袖口に火が燃え移ったので、あっちっち!と立花は慌てる。

観ろよ、種も仕掛けもないじゃないかと言いながら、男は火の消えた皿を自分のコートの中にしまうが、何か匂わないか?と立花が言い出す。

気がつくと、今皿を入れた、男のコートから煙が出ていた。

その時、お医者様はいませんか?女性がパンクしそうなんです!と言いながら通り過ぎて行く。

どうした?勇気と正義心を見せるときじゃねぇのか?と男が言い出したので、立花は席を立って、その臨月の女性の方へ向かってみる。

結局、列車内に医者はいなかったようで、夫らしき男は、1人の学生に助けてくれと頼んでいた。

しかし、その学生(由利徹)は、自分は獣医学校の学生なので…と断ろうとするので、片手を出し、これだけ出すからと夫は頭を下げる。

渋々と言う感じで学生が承知すると、夫が出したのは500円だったので、5万出せと学生は要求する。

夫は躊躇するが、連れの女が、パパ〜!早く〜!痛い!!などとわめくので、仕方なく5000円だけ財布から出して払う。

さっそく、カーテン代わりの毛布で席を仕切られた中に入った学生は、そこで苦しんでいた女の股間を除くが、学生は、自分の鼻の鼓膜が破れたから、もう1000円とか、目に何か入ったから、目薬代がいるので、もう1000円等と夫から要求する。

その女は、実はオカマで、腹の中から詰め物を取り外した学生、実は110番に、自分の分け前を要求する。

110番が1000円渡すと、もっとと怒りだしたので、その場でやさしく抱きしめてキスしてやる。

すると、オカマの方も、やっぱり愛してるわなどと納得してしまう。

残念ながら流産でしたと言いながら毛布の陰から出てきた110番を観た立花は、何だ、110番じゃないか!と驚き、一緒に出てきたオカマを観ると、これがあんたの女?と聞く。

亭主らしき男が、よし子ですと紹介すると、こいつ生む訳ねえよ、こいつ男だもんと、立花はバラしてしまう。

しかし、夫らしきその男は、どうかお内密にと立花に口止めをする。

そんな中、110番とよし子は、さっさと別の車両に逃げて行ってしまったので、夫は、4000円返して!と言いながら後を追って行く。

その時、列車が「サガレン」駅に着いたのに気づいた立花は、お前、ここで降りるんじゃないのか?とチエに聞き、慌てて、窓から飛び降りると、動き出した列車からチエを抱えて外に出す。

駅前に降り立つと、ちょうど、若い娘レイ子(黒沢妙子)が手綱を持った馬そりがいたので、サガレン炭坑に行く馬車は?と橘が聞くと、娘はこれがそうだから乗って行けば?と言ってくれるが、既に乗り込んでいた男客が、これは鉱夫専用なんだと威嚇してきて、娘に馬車を無理矢理出させてしまう。

取り残された橘は、嫌な匂いのする町だな〜…とぼやくが、こんな所にぼさっとしていても、問題解決しないわよと、またチエが生意気なことを言う。

こんな朝早いんじゃ、どこも開いてないよと橘が困っていると、駐在所に行けばどうにかなるんじゃない?とチエが言うので、彼女を肩車して橘は歩き始める。

すると、チエが、馬車屋がさっきあったよ等と言いだしたので、お前、字読めるのか?と橘が驚くと、馬の絵が書いてあったと言うではないか。

早く言ってくれよと橘が愚痴ると、一生懸命暖かくしてくれていたから、遠慮したのよなどとチエはすまして言う。

少し戻ると、確かに馬車屋を兼ねた万屋があった。

店に入って、鉱山行きの馬車は?と聞くと、うちしかないと言うので、乗せてってくれと頼むと、今手がふさがっていてダメだと主人英造(沢彰謙)は言う。

今から歩くと、昼頃には着くだろうさ等と言うので、畜生!あれに乗れてたら問題なかったんだ…と、先ほど乗り損なった馬橇のことを思い出し悔しがる。

その時、馬の鳴き声が聞こえたので、馬いるじゃないか、あれ貸してくれよと橘は頼むが、貸す義務はない。わしが吹雪にしたんじゃない。文句があるなら気象庁に言ってくれと主人は冷たい返事。

因業だな…と呟いた橘だったが、何?と主人が聞き返してきたので、否、因業な人が多い中、ご主人の男っぷりは良いよと橘は急におだて始め、横で聞いていたチエに、豚もおだてりゃ木に登る!と小声で伝える。

すると、主人は、貸してやっても良いが、その代わり保証金を積んでもらうと言うので、いくらと聞くと、20万と言うではないか。

そんな金持ってる訳ないじゃねえか。でも銀行に行けばあるよと橘が適当なことを言うと、そうだと思ったと破顔した主人は、馬橇は貸すが、馬に怪我でもさせたら20万円分あんたの身で返してもらう。1ヶ月1万円として20ヶ月ここで働いてもらうまでだと言うので、良し、それで行こう!と橘も承知する。

ようやく馬橇に乗り、鉱山の事務所にやって来ると、父ちゃん!と言いながらチエが飛びついて行ったのは、橘も良く知る大槻(田中邦衛)だった。

大槻!やっぱりお前か!と橘が声をかけると、大槻の方も驚いたように、兄貴!と言いながら近づいて来る。

その時、朝っぱらから、何をがたがたさせてるんだと言いながらやって来たのは、鉱山の抗夫長の蝮(田崎潤)だった。

ガキなんか連れ込みやがって!入構だ!と命じた蝮だったが、橘を見ると、勝手に現場に入り込みやがって!と文句をつけて来る。

一番方で、これから鉱山に入らなければ行けないと言う大槻に、チエとの時間を与えるために、あっしがこいつに代わって入りますよと橘は申し出るが、素人がいきなり出来るか!わざわざ中に入らなくても、ここで試してやろうと言い出した蝮は、いきなり橘を殴りつけて来る。

なるほど、これが試験って訳か…と合点した橘は、立ち上がると、猛然と蝮に殴り掛かって行き、事務所の外にまで出ると、倒れて立ち上がろうとする蝮を何発も殴りつける。

とうとう敵わないと悟った蝮は、履いていた長靴を脱いで投げつけて来る始末だった。

結局、大槻に代わって入構が許された橘だったが、梯子を下りていると、上から、もたもたすんな!このヤロー!と蝮が笑いながら、シャベルを投げ落として来る。

坑夫たちが言うには、休みもなく働かせると言うので、驚いた橘は、刑務所だって休みはあるぜと言うと、坑夫たちは、刑務所?!と驚いてしまう。

それでも、焼きを入れられるのが怖いんで我慢しているので、この仕事が終わったら、すぐに国に帰るつもりだと坑夫たちは言う。

昼飯時も、握り飯一個だけで、橘は、まるでタコ部屋だ…と愚痴る。

しかし、その間、橘は、久しぶりに父親としてチエの相手をしてやれていた。

ようやく1日の仕事を終え、橘が上に上がって来ると、お兄ちゃん!と言って駆け寄ってきたチエが、馬が死んでるよと言うではないか。

一緒にいた鉱夫仲間が、飯場の裏で死んだんですと教えるので、その場に行ってみると、確かに、ここまで朝乗ってきた馬橇の馬が死んでいるではないか。

その周囲に立っていた坑夫たちに、誰がやったんだ?と聞いて廻る橘だったが、誰も口を開こうとはしなかった。

蝮がやったに違いないと感じた橘は、事務所に乗り込んで行き、こんなあくどいことをやるのはお前しかいねえよと言いながら、いきなりその場にいた蝮を殴りつけるが、蝮は、やったのは他にいるんだ。このぬれぎぬをどうしてくれるんだ?と問いつめて来る。

証拠がなかった橘は返答に困り、好きにしてくれと答えたので、蝮はにやりと笑うと、無抵抗状態になった橘を何発も殴りつけ、倒れた橘を、子分たちに命じて雪の崖に放り投げさせる。

崖下に転がり落ちた立場の元に、チエと一緒に駆け寄ってきた大槻は、蝮が馬をやったんだと教える。

やっぱりあいつだったのか。でも、誰にもしゃべるんじゃねえぞ。子供にとばっちりかかるからなと橘は大槻に口止めをする。

その後、橘は、馬の死体を橇に乗せ、自分1人で駅前まで持ち帰ろうとするが、さすがに途中で力尽きてしまう。

俺の手には負えねえ。勘弁してくれ。すぐに迎えにきてやっから…と馬の死体に話しかけた橘は、雪原を1人で歩き始める。

夜、橇に乗って近くを通りかかった朱実(三原葉子)は、雪の中に踞っている橘を発見、ちょっとあんた、何をしてるの?酔ってるの?と話しかけながら近づく。

休憩してるんだよと言う橘に、しばれて死んじゃうよと朱実が忠告すると、橘は、知るか!とふてくされる。

仕方がないので、こんな所じゃどうにもならないよ。私についておいでと言って、近くにあったクラブ「コタン」に連れて来る。

別のホステスに熱い酒を注文した朱実に、この町ではじめて親切にしてもらったよと感謝した橘だったが、金は頂くわよと言うので、ただで飲むほどケチじゃねえよと橘も憤慨する。

そして、熱燗が運ばれて来ると、それで一息つきながら、鉱山仕切ってるのは誰だと橘は聞いてみる。

西条って社長よ。なかなかの人格者だそうよと朱実は言うので、人格者か…と橘は呆れてみせる。

その時、店にやってきたのはあの蝮で、ホステス相手に愉快そうに踊りだしたので、それを観ていると、知ってるの?蝮をと朱実は聞いて来る。

俺の顔を、こんなに壊してくれたのはあいつよと言いながら、よう!先ほどはお世話さんだったねと橘は蝮の前に立ちふさがり嫌味を言う。

橘の顔を見て、急に無表情になった蝮は、店を出ようとしたので、逃げるのかよ?仲間いねえとゴロもまけねえのかよ?と橘が挑発すると、振り返った蝮は、2本のビール瓶を互いにぶつけて割って武器にする。

その時、待ってください!困りますな、騒ぎは…と言いながら出てきたのは、「コタン」のマネジャー白木だった。

騒ぎを起こしているのはこいつの方だと蝮は言うが、こちらは素手じゃないですか。騒ぎを起こしているのは、そんなものを持っているあなたたちの方でしょうと白木が堂々と反論したので、蝮は諦め、ビール瓶を捨てると帰って行く。

その後白木は、ダンスを踊る方以外はテーブルに付いてくださいと客たちに声をかけ、店は何事もなかったかのように、元の状態に収まる。

うちのマスター、男が観てもイカすでしょう?と朱実が聞いてきたので、それほどでもねえよと橘は答える。

その時、馬泥棒!と怒鳴りながら、店に入って来たのは、万屋の英造で、それを、お父さん!となだめてついてきたのは、娘のレイ子だった。

結局、橘は、馬の弁償として、英造との約束通り、万屋で働くことになる。

ある日、店の前で働いていた橘は、駅から降りて来た娘から、「コタン」と言う喫茶店ご存知ですか?と聞かれる。

この町にそんな洒落たものがあったかな?と橘は考えるが、町外れにある…と言うので、ああ、あの「コタン」と理解する。

あんた、あの店のホステス?と聞くと、掃除婦兼賄い婦…、何でもやるつもりなのと言う。

女の足じゃ無理だよ、馬橇準備するからと橘は勧める。

橇に乗って「コタン」に向かう途中、女が馬の尻を触ろうとするので、ケツ触っちゃダメ。女だから、こいつ…と橘は注意する。

女は橘に、当ててみましょうか?あなたの過去のこと。都会の匂いがするわ。忘れたいことあってこの町に流れてきたんでしょう?根は正直で優しい人ね等と言うので、ここに流れてきたことだけ当たっているよと橘は訂正する。

「コタン」の前に到着すると、それを窓から観ていた白木は、朱実、すぐにここから出て行ってくれと側にいた女に頼むと、路子!なぜ黙ってきたんだ!と橇に乗ってきた女に声をかけながら店を出て来る。

その橇で町まで送ろうと白木は声をかけるが、白木の妹の路子(大原麗子)は、嫌!帰らないわと拒否する。

白木は狼狽し、その橇待っててくれと頼むので、言われた橘も、賛成だねと答える。

路子に、言う通りにしてもらいたい。俺と暮らしたんじゃ、幸せになれないと白木は説得するが、じゃあ、全うに生きましょうと路子は反論する。

一晩だけ泊めてやれば良いじゃないかと、横で聞いていた橘が口を挟むと、俺は御節介は嫌いなんだと白木は不快感を示したので、俺も、物わかりが悪い奴を観るとムカムカすると橘も言い返す。

カーッとなったらどうなる?と白木が挑発してきたので、橘は殴り掛かるが、白木は、そのパンチをあっさり避けてみせる。

むかついて、何度も殴り掛かる橘だったが、白木は全くパンチを受ける気配もなく、ボクシングポーズを取ると、橘を殴るポーズをして見せる。

橘は、空手のポーズで対抗するがまるで歯が立たず、転がってしまう。

朝の体操、終わり!と白木が言い出したので、お前が辞めるって言うのなら、辞めても良いと橘も負け惜しみを言いながら、雪をかじりだす。

何をしてるんだ?と白木が聞くので、咽が渇いたんだよと橘が言うと、家に帰ってゆっくり飲みなと白木は言い、お前がいる所じゃないと一晩泊まれば分かるだろうと路子に告げる。

妹を泊める気になったと知った橘は、安堵して帰路につくが、それを見送る路子は、やっぱり親切で優しい人ねと声をかけて来る。

あんたの兄さん、結構やるなと橘が聞くと、ウエルター級の元東洋チャンピオンですものと路子は言うではないか。

何だ、もっと早く言ってくれよと橘はふてくされて帰る。

あの人、ずっとここにいるの?悪いこと起きるみたいと、朱実は白木に詰め寄るが、その顔色を観ると、やっぱり私の予感が当たったようね。若い子には敵わないわ…とぼやく。

町に向かっていた橘に、お〜い!待ってくれ〜!病人なんだ〜!と背後から呼びかけてきた男があったので、橇を止めて振り向くと、近づいてきたのは、顔を知っている坑夫で、抱いていたのはチエだった。

一昨日の晩から熱が下がらないんだと言うので、2人を橇に乗せ、町に向かって走り始めた橘が、大槻は?と聞くと、一番方なのでどうにもならないと坑夫は言う。

万屋に戻って来た橘は、この子を俺の部屋で寝かせてくれと英造に頼む。

一緒にいたマリ子が、部屋代と看護代を取れば良いじゃないと言ってくれたので、英造も承知する。

その頃、鉱山の事務所にいた管理人の関野(安部徹)の所にやって来た西条弓子は、父の鉱山をお返しいただきたいのと申し出ていた。

しかし、弓子を嘗めていた関野は、お引き取り願いましょうかと言うと、子分(八名信夫)に目で合図し、追い返そうとする。

すると、前に出てきたのが列車の中で弓子に雇われたマジシャン吉岡(吉田輝雄)だった。

弁護士を連れて来ようと思ったんだけど…と弓子は言い、権利書は借金のカタに取ってあるんだとうそぶく関野に、吉岡は、もう借金は返したそうじゃねえか。目の玉飛び出るような高利かけて…と言いながら、銃を取り出して突きつける。

その顔を観る所、出す気はないと踏んだと吉岡が引き金に手をかけようとするので、鍵を別の所に置いてあるんでと関野は事務所を出ようとするが、金庫の鍵の部分をその場で撃ち抜いた吉岡は、もう鍵は必要なくなったぜと告げる。

仕方なく、金庫の中から権利書を取り出して関野が渡すと、弓子はその内容をしっかり確認する。

そして弓子は吉岡に、私を町まで送って。その後、引き渡しの時まで待ってと頼むと、関野の方には、一週間以内に引き上げて欲しいわ。すぐにうちの社員を寄越しますからと言い残し出て行く。

関野は、すぐに兵隊を集めろ!と部下に命じる。

万屋の二階では、橘がねているチエにマンガを読み聞かせてやっていたが、マンガより、お父ちゃんの方が良いな〜…とチエが言うので、お父ちゃんを呼んできてやると橘は約束する。

すると、チエは、お世話かけちゃうな〜…などと、またませたことを言う。

その頃、クラブ「コタン」で子分たちを集めた関野は、すぐに出発しろ!どんなことがあっても権利書を取り戻すんだ!と命じた後、万一戻って来ないことを考えると、西条は手も足も出ねえようにしときたいと、その場にいた白木に告げる。

その時、階段の上に朱実と路子がいるのに気づいた関野は、そんな所で何をしている!と怒鳴りつける。

白木は、最近入った子ですよと説明するが、今の話を聞かれたんじゃないかと怪しんだ関野は路子の手を掴む。

それを観ていた白木は、俺が責任を持つと言って取りなそうとするが、男って、若い子を観ると、狂っちゃうらしいわねなどと朱実が側に来て嫌味を言うので、ついビンタしてしまう。

弓子と吉岡を乗せた橇は、目出し帽をかぶった追手に追われて、追いつかれそうになったので、弓子から預かった権利書をライターを芯にして丸めた吉岡は、後で始末してくださいよと雪子に頼み、それを崖の下に投げる。

やがて、追いつかれたので、橇は停まり、追手たちは、吉岡と弓子を人質にして、崖下へ降りると、今吉岡が投げた権利書を探し始める。

その内、雪の中に落ちていた権利書を見つけた蝮は、拾おうと手を伸ばすが、側に木の陰から猟銃が突きつけられたのに気づく。

誰だ!と蝮が誰何すると、人の名前を聞く時は、御自分の名前を先に言うもんじゃありませんか?と言いながら出てきた男は、鬼寅(嵐寛寿郎)だった。

蝮が名乗り、5、60人の命知らずを束ねていると脅すと、鬼虎の方は、人様は私のことを鬼寅と呼んでおりますと丁寧に答える。

その名を聞いた蝮は、あの「8人殺し」の!とさすがに驚く。

鬼寅は、蝮が拾った権利書を奪い取る。

その頃、鉱山では落盤事故が起こり、大勢の坑夫たちが逃げ出していた。

そんなこととも知らずに、鉱山に馬橇でやって来た橘は、逃げてきた坑夫に大槻の事を聞くが、一番方だったので、まだ中だと教えられる。

すぐに構内に入った橘は、自らツルハシを奮い、埋もれた土砂を取り除こうとする。

一方、事務所では、構内の人間は出しておくと言ったじゃないかと関野に詰め寄っていた。

関野はそんな白木に、お前この頃ふらふらしてるんだって?こっちの仲間と言うことを思い知らせるため証拠を取っておいた。お前が使った爆薬の信管だと言って、ハンカチに包んだ2本の信管を見せると、もう権利書はなくても良い。保険金を取って、このボロ鉱山ともおさらばってことさと笑う。

白木が出て行こうとするので、どこへ行くんだ?と関野が問いただすと、現場を観て来るんだと白木は答える。

構内では、力尽きた橘が、他の坑夫に支えられて少し離れた場所に連れて来られ休憩していた。

橘は、近くに立っていた白木に気づくと、見物ですか?とど観てえな女にうどん粉まぶして。銭を全部吸い上げさせる。いい気なもんだと悪口を言うが、白木が黙って、切り端での穴掘りを手伝いだすと、見直したな…と橘は、驚いたように呟く。

事務所に戻って来た蝮たちは、とんでもない邪魔が入って…と関野に言い訳をしようとしたので、関野は、話は後にしろ!と叱りつける。

その後、構内に入って来た蝮たちは、白木たちに声をかけ、切り端では俺の指図に従ってくれと命じ、子分たちが仕事を代わる。

戻って来た白木に、さっきは妙なことを言ってすまなかったと橘が詫びると、お前は本当にイカす男だと白木も褒める。

そこへ、仲間の坑夫が近寄ってきて、兄貴、おかしい。あの人たちに代わって、さっぱりはかどらないんだと言うので、明らかにちんたらやっていた蝮たちの仕事を又橘が代わって穴を掘り始める。

蝮の子分たちは、まずいですねと囁きあう。

やがて、橘の懸命の掘削作業で落盤に穴が開き、倒れていた大槻たちを救助する。

何とか、外に連れ出した大槻だったが、もう虫の息の状態で、地面に横たえてやると、楽しかったな、網走の頃…などと大槻は呟く。

網走刑務所での暮らし、看守の前で裸踊りしたことなどが、橘の脳裏にも蘇って来る。

兄貴、チエ、頼むわ…と大槻が言うので、何を言うんだ!お前の顔を見たくて待ってるじゃないか!と橘は叱りつけるが、俺、年中臭え飯食って、ろくろく面倒も見れず、家出してきたんだ…。チエのことは頼むわ…と言い残し、大槻は息絶える。

橘は、その大槻の身体を抱き上げると、橇に乗せ、町に向かって走らせようとするが、その橇に、便乗させてもらうぞと言って乗り込んで来たのは白木だった。

それを観ていた関野は、子分に何やら耳打ちする。

クラブ「コタン」の前に来たので、降りないのか?と橘が聞くと、下まで送ってくれ。俺も仏さんを送りたくなったから…と白木は言う。

そんな兄の様子を、「コタン」の窓から見つめていたのは路子だった。

橇が出発するのを見届けた関野の子分は、臭えな。どこに行くつもりかな?と呟く。

側に出てきていた朱実が、裏切るとでも思っているの?と聞くと、ボスはそう睨んでいるって訳さと言い残して、子分は鉱山に戻って行く。

町に繋がる道には、鉱山での事故の知らせを聞いた坑夫の家族や消防団が、鉱山目がけて走ってきていた。

そんな中、レイ子が止めるのも聞かず、万屋を飛び出してきたチエに気づいた橘は、橇を止め、近づいて行く。

お父ちゃんは?お兄ちゃん、嘘をついたの?とチエは聞いて来るが、橘は何も答えられない。

チエは橇に近づき、その場に立っていた白木にも、お父ちゃんいない?と聞くが、やっぱり白木も何も答えられない。

やがて、橇の中を覗き込んだチエは、そこに毛布に包まれた父の姿を見つけ、お父ちゃん!と言いながら泣き出す。

チエちゃん!橘は、そんなチエをぎゅっと抱きしめてやるのだった。

それをじっと観ていた白木は、チエと橘、レイ子らが万屋には言って行くのを確認すると、外に繋がれていた馬の手綱を取り、鉱山の方へ戻って行く。

「コタン」に戻って来た白木に気づいた路子と朱実が出迎えるが、馬に乗ったままの白木は、駅前の万屋に橘って男がいるので、後で伝えてくれ。子供に言って詫びようと思ったが言えなかった。卑怯な男と笑ってくれって。朱実、みんなに本当のことを言ってくれ。人間みんな、勘定を払わなきゃいけないんだ!達者でな!と告げると、馬を走らせ鉱山の方へ向かう。

万屋にやって来た朱実と路子は、白木からの伝言を伝えると、山の事故は白木の仕業なの。犯人は関野って言う管理人なのと朱実が打ち明ける。

山で事故を起こして、その保険金を奪って逃げるつもりなのよと言ったとたん、朱実は何者かに撃たれ倒れる。

橘が窓を観ると、そこには銃の形に割れていた。

万屋には、鬼寅と吉岡もいたので、すぐに外に飛び出すと、屋根の上に上った吉岡は、猟銃で、馬で去って行く狙撃手を狙って撃つ。

一見、外れたように見えたが、吉岡はその内落ちると場所の位置を立花に告げる。

鬼寅が、下から橘に猟銃を投げて寄越してきたので、3人はそれぞれ馬に乗って、鉱山方向へ向かう。

途中、吉岡がさっき撃った眼帯の男が馬から落ちて死んでいたが、少し予言の位置とずれていたので、畜生!ちょっとずれていたなと吉岡は悔しがる。

鉱山にやって来た橘が、居合わせた坑夫に、関野たちの居所を聞くと、ペルセップの方へ馬で降りて行ったと言う。

橘はすぐに後を追うが、鬼寅と吉岡に、山を越えて近道をしようと呼びかける。

雪山を走り続けた3人は、やがて先行していた関野たちの一群を発見する。

追手に気づいた関野は、良し、野郎をバラしちまえと子分に命じ、一緒に付いて来ていた白木を撃ち落とさせる。

これで、生き証人はいなくなった訳だと笑う関野。

やがて、橘たちが迫ってきたので、来たぞ!やっちまえと命じる。

橘は、猟銃の握り部分で、子分たちと渡り合い、全員、馬から落とすことに成功する。

馬から落とされた蝮たちは、森の中に逃げ込むと、猟銃を撃って来る。

それに対し、鬼寅、吉岡、橘も猟銃で応戦する。

関野はピストルを撃ちながら雪原を逃げる。

橘はそれを追いかけ、邪魔をしてきた子分を倒すと、その胸目がけて猟銃を発砲する。

次の瞬間、橘の猟銃が、敵が打った弾で弾き飛ばされてしまう。

武器を失った橘だったが、そのまま関野に追いすがると飛びかかって行く。

そんな橘に発砲しながら接近していた蝮だったが、すぐに弾切れになる。

それで、素手で殴り掛かってきたので、橘は、関野を諦め蝮と対決するしかなくなる。

その時、馬に結びつけてきたドスを取り外した鬼寅が、鞘を抜いて橘に投げて寄越す。

ドスを受け取った橘は、それで蝮を斬りつける。

さらに、関野にも斬り掛かろうとした橘だったが、大事な商人だ!と鬼寅が声をかけて来たので、無念そうに、倒れた関野の足下の雪にドスを突き刺す。

その後、倒れていた白木の元にやって来た橘に、俺のやったことは、命いくつあっても償えねえな…と言い残し、白木は息絶える。

数日後、万屋を後にしようとする橘に、後のことは任しときなよと鬼寅が言葉をかけていた。

チエは、地元の診療所で働くことになった路子が育てることになった。

お姉ちゃんの言うこと聞くんだぞと橘がチエに声をかけると、お兄ちゃんもまじめにやれよとチエも返す。

列車に乗り込み、出発すると、ホームに見送りに来ていたチエが、お兄ち~ゃん!ちょ呼びながら追いかけて来る。

チエの目には涙が浮かんでいた。

健さんが歌う「網走番外地」の歌が重なり、雪原を走る列車が写る。