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青春ア・ゴーゴー

ジュリー(沢田研二)やショーケン(萩原健一)等が登場する「GS(グループサウンズ)ブーム」直前の「エレキ(テケテケ)ブーム」の頃、大人たちが嫌うエレキに夢中な若者たちがバンドを結成して、テレビの番組で優勝した後、元の日常を取り戻すまでを描く、数ヶ月間くらいの青春の1ページを描いた作品。

言わば、リアルタイムの「青春デンデケデン」みたいな映画と言えるかもしれない。

話自体はたあいない展開だし、何だか全体的に大人の視点で描いた若者の生態と言ったような印象で、明るい音楽映画と言うより、青春文芸ものみたいなまじめな雰囲気になっている。

当時、エレキを弾く若者は不良と呼ばれていたし、冒頭で登場するテレビ討論会での「エレキ騒音説」みたいな意見は確かにあり、一般の大人たちばかりでなく、当時の著名文化人たちの中にも、エレキなんて音楽ではなく騒音でしかないと言っていた人は何人もいたはずである。

そうした時代背景を知って観ていると、全くつまらない…と言うほどでもないのだが、あまりにもロックやポップスには似つかわしくない、まじめな七三分けや角刈り風の短髪、タイトルにもなっている歌のメロディ等が、あまりにも古くさくあか抜けないような気がして、今ひとつ乗り切れないのも正直な感想である。

山内賢の方は、見た目もお坊ちゃん風だし、ギターも歌もそれなりにこなせそうなので、この作品の主役をやっている事は理解できるのだが、もう1人の浜田光夫の方がやや違和感がある。

従来の映画から、下町のまじめな労働青年のような役のイメージが強い人だけに、エレキ等とは結びつかず、バンドの1員をやっている事自体が似合ってないように思える。

劇中でも、歌謡曲が好きな普通の青年と言うようなキャラクターとして説明されているが、かなり無理矢理演じているように見えなくもない。

ただし、当時のエレキブームを支えていたのは、こうした街のあか抜けない普通の青年たちだったのだろう。

だから、エレキブームは長く続かず、すぐに、大手の芸能プロが作り出した人工的なアイドルバンド「GS」に人気を奪われてしまったのかも知れない。

と言う訳で、この作品、映画としては可もなく不可もなく…と言った印象なのだが、登場する意外な人物の方には思わず目を見張ってしまう。

まずは、冒頭から最後まで頻繁に画面に登場している「ザ・スパイダース」だが、ボーカルはマチャアキこと堺正章であり、その向かって右側に、ムッシュことかまやつひろしがいる。

ドラムはリーダーの田邊昭知、キーボードの大野克夫、井上堯之、加藤充らの姿も確認できる。

だが、井上順の姿がない。(ナイトクラブでの練習シーンで、一瞬、加瀬邦彦の姿も見えたような気がするが自信はない)

1966年の作品なのに、井上順が参加していないと言うのがどうも解せない。(井上順は1964年にはメンバーになっているはず)

劇中に登場する「アマチュアエレキ合戦 ビートビートショー」のモデルとも言うべき「勝ち抜きエレキ合戦」(1965〜1966)と言う番組は実在したし、スパイダースも出演した事があるらしいので、1966年公開のこの作品の背景としてはおかしくない。

そのスパイダースがせっかく出ているのに、コメディ要素が全くないのも、この作品の物足りない部分かもしれない。

スパイダース主演映画ではないので仕方ない部分かもしれないが、ゲストと言うには画面に出ている時間が多過ぎる気がする。

山内賢の妹役で、大学受験を前に勉強に励む現役女子高生村木悠子を演じている太田雅子とは梶芽衣子の事である。

さすがに彼女が歌を歌ったり、ゴーゴーを踊ったりするシーンこそないが、メガネをかけてガリ勉風のお嬢様イメージになっているシーンや、兄貴を口で言い負かす負けん気の強い女の子のキャラクターになっている。

時代を反映して、「シェー!」などと言っている梶芽衣子と言うのも、今となっては貴重な映像だろう。

さらに驚かされたのは、途中からバンドに合流する謎のユリ子と言う少女。

ぱっと見、誰なのか判別できなかったが、中国語のようなセリフをまくしたてる所で、ジュディ・オングと気づいた。

歌はこの当時から抜群にうまい。

ラストで彼女がスパイダースの一員に加わると言う展開になっているので、最初からマチャアキと順の2人ボーカルがいたのでは、さすがにボーカルが多過ぎると言う判断で、順が出ていなかったのかもしれない。

悪役等も良くやっていた菅井一郎が、珍しく、とぼけた老人役を演じているのも珍しいような気がする。

人気漫才コンビ晴乃チック、タック(高松茂雄)の流行語「良いじゃない!」とか、浩が劇中で言うてんぷくトリオの流行語「びっくりしたなあ、もう!」なども懐かしい。

冒頭のテレビ司会者として登場する三木鮎郎や、クライマックスのフェスティバルの司会をしているのが「おひょいさん(藤村俊二)」だったりするのも驚かされる。

冒頭からたびたび挿入されている、当時の駅の雑踏や車の流れ等の映像も、今となっては当時を知る貴重な時代資料かも知れない。

 

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1966年、伊奈洸+ 千葉茂樹脚本、森永健次郎監督作品。

川面に写る若い女性たちと黄色い声援

車で溢れる都会の様子

テレビでは、「エレキは是か否か」と言う討論番組が流れていた。

エレキ容認派の若者たち(吉田毅、市村清、浜口竜哉、浜川智子、進千賀子、杉山忠彦)と、エレキは騒音だと言う飯塚某(高野誠二郎)と言う老人の評論家らしき人物が熱っぽく話し合っていたが話は平行線。

司会者(三木鮎郎)が、両者の意見の相違は世代の差ですか…等と平凡なまとめ方をしている。

それをエレキを弾きながら自宅で観ていたのは、金持ちの長男村木賢一(山内賢)通称サンブルと、その賢一の妹悠子目当てに遊びに来ていた、小学校からの長い友人松本悟(浜田光夫)通称パンチだった。

2人とも大学浪人中の予備校生だったが、このままだと1つ年下の悠子が現役で大学生になってしまい、同級生になる恐れさえあった。

悟が妹を好きな事を知っている賢一が、あいつはエレキが好きだから、レコードをかけてボリュームを上げてみろよ。喜んで来るぞとアドバイスしたので、悟は真に受けてレコードを大音量でかけ始めると、受験勉強をしていた悠子(太田雅子=梶芽衣子)が、止めて!と怒って部屋に来ると、漏っていた水鉄砲の水を悟にかけると、自分の勉強部屋に戻って行く。

騙されたと知った悟は、噓を教えた賢一に飛びかかって行く。

タイトル

音楽喫茶で歌うスパイダースの面々

朝の雑踏の中、予備校に一緒に向かう賢一と悟は、これだけの大人数で一斉にエレキを弾いたらすげえだろうなとかくだらない話をしていた。

悟は、もっと田舎の予備校新けば良かった等と、都会の予備校通いを悔んでいる様子だったが、賢一の方は、バンド作りたいな。エレキは1人じゃダメなんだとぼやいていた。

そんな彼らが通る道筋にあるとある電器屋の二階にある物干し場で、1人朝からドラムを叩いていたのは増田浩(和田浩治)だった。

朝食だと母親よし子(佐々木すみ江)に呼ばれて下に降りた浩を、先に卓袱台の前に座っていた父親増田豪造(下條正巳)は、朝から太鼓なんか叩いてばかりいるから、お前はビリなんだと叱る。

しかし浩は、俺の後ろにはまだ2人いると平然と反論する。

おしゃべりしながら歩いていた賢一と悟は、トラックに荷物を積んでいたバイトの若者とぶつかり、荷物の本を道に落としてしまったので、賢一らは謝りながら、落ちた本の荷積みを手伝うが、その本が、自分たちが使っている参考書だと知り驚く。

その後、今度は、遅刻しそうになり慌てて電器屋から飛び出して来た浩とぶつかってしまった賢一は、浩が落としたドラムスティックを拾って渡した後、慌てて学校へ向かう浩こそ、いつも物干し台でドラムを叩いている青年だと気づく。

先ほど、トラックの荷を積んでいたバイトの2人橋本一郎(木下雅弘)と江川勇(杉山元)は、運転していたトラックが渋滞にぶつかってしまいぼやいていた。

その日の午後、音楽喫茶ではスパイダースが歌っていたが、そこに林昌子(西尾美枝子)と来ていた浩だったが、昌子は、勉強しなくちゃと言いながらさっさと帰ってしまい、1人ぼっちになっていた。

そんな浩に声をかけたのは、近くのテーブルに座っていた賢一と悟だった。

今朝はどうも!こっちに来ない?と賢一に誘われた浩は、同じテーブルに合流する。

賢一が悟と自分の本名とあだ名を自己紹介すると、浩も、あだ名はドラムのドラだと教える。

賢一は、パンチの従兄弟がスパイダースのマネージャーをやっているんだと言う。

その時、店に入って来たのは、朝ぶつかった運送のバイトをしている江川と橋本だったので、賢一は彼らにも声をかけ、同じテーブルに誘う。

彼らも名前とハッピー、エンストと言うあだ名を自己紹介する。

賢一が、君たちエレキは弾く?と聞き、弾くと聞くと、一緒にバンドをやらないか?と誘う。

悟以外はすぐに承知するが、どうにも興味が湧かない様子の浩も、悠子が喜ぶぞと賢一に言われると、渋々承知するしかなかった。

賢一の自宅では、足が悪く車椅子に乗っている祖父の村木巌(菅井一郎)が、いきなり2階から聞こえて来たエレキの音に驚いて文句を言うが、浪人をやっているのに、あれだけ元気なのは見込みがない訳ではないと少し感心もしていた。

学校から帰って来た悠子は、そんな祖父の姿を観ながら兄の部屋に来ると、今度こそ大学受かってよ。このままでは私の方が先に通ってしまうわよ。1つ違いの兄妹だから困っちゃうわなどと文句を言うと、賢一は、お前、パンちゃんの事嫌いか?などと逆に質問をする。

その頃、そのパンちゃんこと悟は、従兄弟のマネージャー堀井治郎(波多野憲)を訪ね、一度自分のエレキの歌を聴いてくれないかと頼んでいた。

しかし、堀井は、大学入ってから相談しよう。今はそんな事より、女の子でも見つけろよなどと軽くいなしていた。

電器屋の前には、水前寺清子の歌を流す宣伝カーが走っていたので、不景気になると、ああやって大騒ぎしないと売れないんだねなどと、よし子と近所の主婦が雑談をしていた。

その時、またも上の物干し台から浩のドラムの音聞こえて来たので、よし子はバツが悪くなるが、ちょうどそこへ配達にやって来た2人の若者(晴乃チック、タック)は、浩のドラムに気づくと、「いいじゃない!」などと言いながら、楽しそうに見上げる。

その頃、運送のバイトをしていた江川と橋本は、今度、新しい楽器を買おうと思っているんだなどと話し合っていた。

ベートーベンがかかるクラシック喫茶で悠子と会った悟は、悠子の為にバンドをやる事を伝えようとしていたが、その真意が巧く伝わらず、近くの席の客から静かにと言われた事もあり、ベートーベンは嫌いだよ!と癇癪を起こしてしまう。

予備校「駿河台ゼミナール」にやって来た賢一と悟は、壁に貼りだされているテストの順位表に女子ばかりの名前が載っているのを観て不満を漏らす。

賢一は、明日、バンドの会合があるから来いよと悟に言葉をかけて別れるが、数学の授業をしている講師の姿を目にすると、何故か、バンドを始める高揚感に取り憑かれ、思わず笑顔になるのだった。

浩は、公園の隅で「花」を歌っている女学生たちの姿を観て、何で女の子ってあんな古くさい歌が好きなんだ?女の子ってなんでテンポがないんだろう?と1人いら立っていた。

音楽喫茶にやって来た悟は、ステージ上で歌っていたスパイダースのマチャアキ(堺正章)と手を振って挨拶し合っていた。

バンドのメンバーが全員集まったので、まずリーダーは誰にしようと?と賢一が発言すると、色々金がいるだろうから、サンブルがリーダーで良いんじゃないかとあっさり悟が提案する。

次に、毎週集まって練習したいが、どこか良い場所はないかな?とみんな考え始め、それもサンブルの家で良いんじゃないか?と悟は言い出すが、その時、増田と橋本が、会社の倉庫なら日曜日、誰もいないし広井から良いんじゃないかと意見を言う。

一応、守衛に付け届けだけでも渡しておこうと賢一も賛成し、明日、倉庫前で10時に集合する事に決定する。

その時、浩が、テレビのアマチュアバンド番組に出ようよと言いだし、バンド名は何にしようか?と聞いて来たので、賢一は、それなら考えてあり、「ヤング&フレッシュ」ではどうだい?と提案し、全員賛成したので、コーラで乾杯する。

翌日、倉庫にやって来た賢一らは、守衛の横山(衣笠真寿男)に差し入れの煙草を渡し中に入るが、中で火を焚かないと言った手前、持って来た暖房用の電気ストーブを横山に気づかれないように隠して持ち込む事にする。

倉庫の中で、取りあえずアドリブ演奏してみるが、すぐにコツを掴み、全員、息が合い始める。

「青春ア・ゴーゴー」と言う曲の楽譜を渡されたボーカル担当の悟も、自分は歌謡曲が好きなんだと言いながら最初は戸惑いながらも、徐々に歌を歌い出すとノリ始める。

表では、倉庫から突然聞こえて来た音楽に興味を持った通行人が野次馬のように集まりだしたので、守衛の横山は慌てて追い払う。

自宅でも歌の練習を続けていた悟は、悠子から電話だと聞くと、慌てて下に降りようとして階段を滑り落ちてしまう。

その後、バンド練習以外の日はまじめに勉強するようになっていた兄の賢一に、パンちゃん歌歌ってたんだって。でも肩や手足が痛いんだって、変なの…などと報告しながらも、賢一のノートを覗き込み、四元の法則で答えをあっさり出してしまい、兄から追い払われると、「シャー!」等と言いながら自分の部屋に逃げ去る。

浩は昌子とボウリングをしていたが、日曜日は会えなくなったと言うと、チー坊とデートしてるんじゃないの?等と昌子から嫌味を言われる。

次の日曜日、又倉庫に集まった一行だったが、守衛の横山の姿が見えなかったのでそのまま倉庫内に入って練習を始めようとするが、そこにやって来た横山が、この前の事、偶然外を通りかかった係長に聞かれてしまい、怒られたので、今日からここは使えなくなったんだと聞かされる。

仕方なく外に出た賢一らだったが、このまま帰る気にもならず、時間もあるので、取りあえず、賢一の自宅に向かう事にする。

うるさい悠子がいないはずだと思った賢一は仕方なく自宅へ向かうが、車椅子の祖父はうたた寝をしていたので、それを起こさないように、そっと2階へ上がろうとする。

しかし、最後に上がろうとした浩が持っていた大きなドラムが祖父の頭に当たってしまい、祖父は目覚めてしまう。

それでも取りあえず、賢一の部屋で演奏を始めかけるが、いないと思っていた悠子が、不機嫌そうに、出て行って!と文句を言うので、全員、家を後にする事にする。

もはや、遠くの山の中か湖かにでも出かけなければ、練習の場所はなさそうだった。

誰も来ないような場所ないかな…と全員で悩んでいた時、浩がある!ボウリング場に行く途中に!と言い出す。

それは、大分前に閉鎖されて廃墟と化していた教会だった。

入口には「立ち入り禁止」の札が貼ってあったが、浩に案内され、横から中に入り込む。

取りあえず、浩は店にコンセント類を持って来ると言うので、他のメンバーたちも、夜に向け、蝋燭や食品等の調達に向かう。

夜、準備が整ったので、まずは賢一が歌を歌い始める。

歌い終わると、いきなり拍手の音が聞こえたので全員驚いて、その方に目をやると、そこには見知らぬ少女がいた。

どっから来たの?と聞くと、あっちと言うので、頭が弱い女の子かと全員疑うが、それに気づいたらしい少女はいきなり聞き慣れない言葉で文句を言いだす。

そして、「セイ ママ」歌おう?と言い出したので、すぐに曲の事だと理解したメンバーたちは、その曲を演奏し始め、その女の子が歌いだすが、それは見事な歌唱力だった。

(幻想シーン)彼女入江ユリ子(ジュディ・オング)は、まるでスパイダースの面々と一緒に歌っているような気分だった。

(幻想開け)賢一も百合子の実力を気に入り、明日の夜も練習をやろうと言い出す。

悟は、翌日も、スパイダースの事務所に向かうと、マチャアキと握手し、マネージャーで従兄弟の堀井に、自分たちの歌を聴いて欲しいと頼み、スパイダースの面々には、アマチュアエレキ勝ち抜きに出るつもりだと教えると、それを聞いていた堀井は、どうせ出るからには優勝してみせろよと悟に言う。

賢一の祖父村木巌は、家でお手伝いたちと一緒にテレビの「アマチュアエレキ合戦 ビートビートショー」を観ていたが、下らん!と吐き捨て、悠子に賢一はどこに行った?と尋ねていたが、その時、テレビに写ったステージの上に登場した「ヤング&フレッシュ」のメンバーの中に賢一の姿を発見したので、執事を始めその場にいた全員が驚く。

巌等、慌てて、パパとママを呼びなさいと悠子に命じるが、いないと知ると、テレビ画面に出ている賢一を観て、なかなか良い。賢一もわしの若い頃に似て、なかなか美男子だ等と褒め始める始末。

5週勝ち抜いていたアドヴェンチャーズを相手に、「リトル・ロビー」を歌うユリ子と「ヤング&フレッシュ」の演奏はあっさり勝ってしまう。

教会に集まった賢一たちは、ユニフォームをそろえようと言う話になり、おじいちゃんが特別なルートを持っているので、僕に任せてくれと賢一が引き受ける。

翌週からも、ユリ子と悟がデュエットして「青春ア・ゴーゴー」を歌い、順調に勝ち進んで行く。

そんなある日、いつもの音楽喫茶に行った賢一はユリ子と会ったので、年を聞いてみると、ユリ子は16だと答える。

その日、店にはスパイダースは出ていなかったが、「アマチュアエレキ合戦 ビートビートショー」で10週勝ち進むと憧れのスパイダースと共演できるので、5週勝ち抜いていた賢一らは、後5勝でその夢が叶うと張り切っていた。

しかし、その頃、橋本と江川は、そろそろ飽きて来たな…などとバンド活動に見切りをつけたがっていた。

ある日、「駿河台ゼミナール」にやって来た健一と悟は、模試の順位発表の最後に自分たちの名前が載っているのを発見、喜ぶが、悟は、2人とも全く同点である事を不思議がる。

すると賢一は、だって俺たち答案を互いに見せ合ったじゃないかと耳打ちするのだった。

その頃、増田電気店に製品を運んで来たいつものコンビの配送人が、浩がテレビで勝ち進んでいる事を観ているらしく、店番をしていたよし子に、優勝したら賞金が出るんでしょうね?良いじゃない!などと羨ましそうに話しかけていた。

それでもよし子は、うちの人は色々文句が多いんですよなどと客に愚痴っていた。

そんな中、浩はいつものように物干し台で、1人ドラムの練習に励んでいた。

テレビに出演し出してから2ヶ月経過し、「ヤング&フレッシュ」は7週勝ち抜きを達成していた。

教会に集まった彼らは、この2ヶ月が早かったな〜、みんな本当にエレキが好きなんだな…などと感傷的になっていた。

そんな中、ユリ子が突然「夕焼け小焼けの〜♬」と、同様の「赤とんぼ」を歌いだす。

それに釣られ、メンバーたちもコーラスに加わるが、歌い終わると、浩が、この曲もエレキでやってみようよと言い出す。

その時、パトカーのサイレン音が近づいて来たので、自分たちがここにいる事がバレたと思い込んだ彼らは、ろうそくの火を消し、暗闇に身を隠すが、パトカーは通り過ぎてしまい、ここがバレるはずないか…と、全員笑い合うのだった。

いよいよ「ビートビートショー」で10週目の戦いが始まる。

その日ゲストのスパイダースの面々も会場に来ていたが、一緒にいたマネージャーの堀井は、「ヤング&フレッシュ」のメンバーの中のユリ子に目をつける。

いよいよ公開番組収録が始まり、会場には悠子も観に来ていた。

賢一の祖父の巌や浩の父親の増田豪造も、夫々の家のテレビの前で画面に見入っていた。

日頃、浩のドラムに文句ばかり言っていた豪造は、喧嘩と勝負事には黙っていられないんだ!と、呆れた様子の女房のよし子に言い訳していた。

八田圭介司会で始まった番組で、対戦相手のドンキーズが演奏を終えた後、「ヤング&フレッシュ」はいつもの通り「青春ア・ゴーゴー」を披露する。

舞台袖にいた堀井は、ボーカルを務めているユリ子の様子をジッと観察していた。

試合の結果は「ヤング&フレッシュ」が勝ち、とうとう番組史上初の10週勝ち抜きを達成する。

賞金以外の副賞として、エコーアンプやVANジャケットなどが貰えた彼らは、日比谷公園の噴水前に集まり、勝利を喜び合う。

プロになりたい賢一や悟は、堀井さんに聞きに行こうか?等と相談し合うが、控え室にはいなかったので、明日夕方、会いに行ってみようと言う事になる。

翌日、スパイダースと外国人ダンサーチーム「ラスベエガス・ゴーゴー・ダンサーズ」が合同練習をしていたナイトクラブに賢一と悟はやって来るが、忙しいと言う事で、堀井から見学だけ許され、明日の晩、うちに来てくれと言われる。

翌日、堀井のマンションを訪れ、プロになりたいと相談する賢一と悟に、堀井は、アマとプロには線があり、今の君たちがプロになっても半年や1年くらいはやっていけるかもしれないが、プロになると言う事は一生の仕事にすると言う事だと説明しだす。

エレキは一時の流行に過ぎず、プロは色んな才能の可能性を持っていなくてはダメだ。今回のテレビコンクールでの優勝の事を大きく考えない方が良い。もう少し待ってみろよと大人の対応をし、その日、彼らを昨日のナイトクラブに連れて行ってくれると言う。

その途中、車を運転していた堀井は、ユリ子の事を聞いて来て、あの子をしばらく貸してくれないか?あの子はものになると賢一らに伝える。

ナイトクラブでは、昨日練習をしていた「ラスベエガス・ゴーゴー・ダンサーズ」がスパイダースの演奏で踊っており、テーブル席で観ていた悟は、いきなりダンサーの女性からステージに引っ張りだされそうになったので、賢一も連れて行き、2人はステージ上で、慣れないモンキーダンスを踊らされるはめになる。

その帰り道、賢一は、何だか気が抜けちゃった感じだな…と、手近な目標を失った寂しさを打ち明ける。

悟も、みんなの前で歌いてえやと言う。

その後、教会に集まったメンバーたちに堀井の話を聞かせると、プロになりたがっていた浩はふてくされる。

ユリ子がいなくなるとなると、「ヤング&フレッシュ」の活動も終焉を迎えそうだったからだ。

さらに、話を聞いていた橋本、江川が、4月から本採用に決まりそうなんで、これまでのようにバンド活動できそうもないと言いだす。

浩は、俺は1人でもやるよと我を張り続ける。

せっかくバンドで集まったみんなが、また元のバラバラの状態になりそうだった。

後日、賢一は1人で絵画館前でユリ子と会う。

ユリ子は、自分がバンドを抜ける事を気にしていた。

そんなユリ子に賢一は、みんなの事等気にする必要はない。君は自分がやりたいようにやれば良いんだと諭し、春になったら、又仲間を集めてやらないか?その頃までに色んな歌を覚えておこうと言う。

ユリ子は、みんなの事、好きなんだと…と打ち明ける。

浩は、次の日曜日に、昌子と久々にボウリングを楽しんでいた。

もう太鼓は叩かないの?と昌子が聞くと、浩はドラマーになるつもりなんだと言うので、大学には行かないの?本気なの?と昌子は聞き返す。

浩は、行くけど…と大学への未練も残しながら、いつかはプロになるんだ!と決意を述べるのだった。

予備校通いに戻った悟は、悠子ちゃんと同じ大学受けてみようと思うと賢一に打ち明ける。

しかし賢一は、高望みするな。それに、俺たち小学校からずっと一緒だったじゃないか。大学も同じじゃないとバンドできないぜと説得する。

自宅でまじめに勉強するようになった賢一の部屋にやって来た悠子は、パンちゃん、この頃来なくなったねと話しかける。

そんな悠子に、あいつがバンドをやっていたのには深い意味があるんだとそれとなく悟の片想いの事を匂わすが、悠子は気づかない様子。

その時、その悟から電話が入ったと言うので、部屋を出ようとした賢一は、お前も無理をするなと悠子に言い聞かす。

悟の用件は、ユリ子がプロと一緒のフェスティバルでデビューする事になったので、「ヤング&フレッシュ」で送り出したらどうだって堀井さんが言って来た。ビックリしたな〜、もう…と言う話だった。

賢一は一も二もなく承知する。

その後、悟から電話を受けた浩、橋本、江川たちも、喜んで参加を承知する。

いよいよ、その「'66 ゴーゴーフェスティバル」開催の日

会場には、賢一の祖父の巌と悠子もやって来ていた。

その日ゲストのスパイダースのマチャアキが、悟たちを励ましてくれる。

マネージャーの堀井は、緊張気味のユリ子に、思い切ってやってくれよと励ましていた。

「'66 ゴーゴーフェスティバル」の第2部が始まり、司会者(藤村俊二)が、スパイダースの紹介と共に、今日、入江ユリ子がデビューしますと観客たちに告げる。

そして、ユリ子が所属していた「ヤング&フレッシュ」に面々も紹介され、ステージ中央に招かれた賢一が曲の説明をする。

曲は、お馴染みの「青春ア・ゴーゴー」と、いつも自分たちが歌っていた歌のアレンジを交えたものですと賢一は説明し、曲が始まる。

演奏の途中に挟まれたのは、いつか教会でユリ子が歌った「赤とんぼ」の曲だった。

しっとりした同様が終わると、スパイダースのリーダー田邊昭知と浩のドラム合戦が始まる。

続いて、両バンドのエレキ合戦が始めり、会場を埋め尽くした観客は興奮のるつぼと化す。

興奮した巌は、思わず立ち上がってステージ上に上がると、孫の賢一に抱きついたので、賢一は「おじいちゃん!歩いた!」と驚いてしまう。

「フェスティバル」の終演後、会場前で待っていた堀井は、賢一たちに別れを告げるユリ子に、今日から君はスパイダースのメンバーなんだと声をかけ、移動バスに乗るように勧め、賢一たちには、春になったら、また、相談しようと言い残して去って行く。

橋本と江川が先に帰って行き、浩もタクシーを呼び止めて帰って行く。

最後に残った賢一と悟は、みんな行っちゃった…、でも前と違うよ。1つの事に熱中したって気がすると満足感を味わっていた。

ほっとしていた悟は、道の向こうに1人佇んでいた悠子に気づくと、悠子ちゃん!と呼び掛け、賢一と共に駆け寄って行く。

悠子と合流した賢一と悟の姿に、太陽の映像がオーバーラップする。