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黄金を抱いて翔べ

正直な所、懐かしの青春グラフィティ的な映画以外で感心したものがなかったこれまでの井筒監督作品だが、これは原作が面白いからなのか、なかなかテンポ良く仕上がったクライム映画の快作になっている。

明らかに低予算なので、クライマックスのビル襲撃シーンがやや安っぽく感じる以外は、そつなくまとめられていると思う。

ブッキーこと妻夫木の暗い過去を背負ったキャラクターもなかなか悪くない。

チャンミンも健闘していると言った感じだが、その他の出演者同様、ビックリするほど存在感があると言うほどでもない。

元々、この手の犯罪ものと言うのは大体パターンが決まっていて、周到に計画していても、実行に移す時にはトラブルが起きて…と言う「犯罪は割に合わない」と言うラストになるのが定番の展開なのだが、そう言う王道パターンだと最初から割り切って楽しむのが一番だと思う。

現作があり、筋立てがしっかりしているので、普通に撮っていればそう破綻すると言う内容でもないと思うが、ベテラン監督だけに、まずまず楽しめる作品に仕立て上げている。

後半のビル襲撃のシーン、若干、各階の位置関係が不鮮明で、国際部の下の階には一体何があるのかとか分かりにくい部分もないではない。

余談だが、モモが働いている商店街の豆腐屋にブッキーが買いに来るシーン、撮影日は当初日曜日で、スタッフが通行人のエキストラを現地の商店街で調達しようとした所、誰かがその情報をネット上に流してしまったため、現場に1000人近い野次馬が集まり、その日は撮影中止になると言うトラブルがあったそうだが、そのせいもあってか、その商店街のシーンを始め、群衆が登場するシーンがほとんどなく、全体的に、役者だけがちまちま芝居をしているような印象を受けるのは惜しいと思う。

もっとカメラを引いた情景描写とか、エキストラシーンも有効に使えば、もっと絵に広がりが出ただろうに…と感じないでもないが、人気者を使った映画を撮ると、なかなか思うように出来ない現場の事情があったのだろう。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2012年、「黄金を抱いて翔べ」製作委員会、吉田康弘 脚本、 井筒和幸脚本+監督作品。

人間のいる土地は全て嫌いだ…

人間のいない土地が残っているはずだ…

おれはそこで人間をやめる…

そう決めていた…

タイトル

地下街にいたチョウ・リョファン(チャンミン)は、サラリーマン風の男に気づくと逃げ出すとするが、すぐに捕まったので諦め、喫茶店で向き合う。

サラリーマン風の男はチョウの兄だった。

お前に国に帰るよう忠告したいんだと言う兄に、教師はやめたのか?とチョウが聞くと、兄は、娘は地質学の大学生だと答え、チョウに封筒を手渡すと帰って行く。

歩道橋で再び兄に会ったチョウは、兄が取り出した拳銃を奪い取ると、その銃で兄を射殺する。

トラックの助手席に乗っていた幸田弘之(妻夫木聡)、車窓に見える大阪の町並みに目をやりながら、幼い頃に母が死んだ火事の事を思い出していた。

懐かしいか?と声をかけて来たのは、トラックを運転していた北川浩二(浅野忠信)だった。

5歳の事だからな…そう答えた幸田を地元に呼び寄せたのも、大学時代の友人だった北川だった。

北川が用意していたアパートの部屋に幸田を案内して来ると、うちの倉庫で肉体労働があると教え、あらかじめ用意しておいたスーツも渡す。

明日の朝10時、肥後橋駅でと約束し、携帯を幸田に渡した北川は帰ろうとするが、近所にたこ焼き屋あるの?と幸田から聞かれたので、食うならてっちりだろうと笑うが、駅前に、「ザ・たこ焼き」と言う店があると思い出したようで教える。

幸田は、ベランダから双眼鏡で川向こうのアパートを観察していたが、そこに帰って来たチョウを見つける。

翌日、スーツを着た幸田と北川は、大阪の銀行にやって来る。

待合室のソファに腰を降ろした北川は、隣に座った幸田に、金の延べ板観た事があるかと聞いて来る。

観たことがあると幸田が答えると、この銀行に240億円の金塊があると小声で北川が教える。

240億円分の警備もだろう?と公だが答えると、有事は金だろ?政治家や商社はたっぷり儲けているんだと北川は言い、方法を聞かれると、これから考えるよと言う。

その後、倉庫会社に北川に連れて来られた幸田は、そこでトラックの荷物の上げ下ろしをやる仕事につく。

その夜、幸田は、北川の家に夕食に呼ばれに行く。

てっちりを用意していた北川には、圭子(中村ゆり)と言う妻と、始終、カピバラの事を話す幼い息子がいた。

さらに、鍋を前に、もう1人見知らぬ男も座っていた。

銀行と同じビル内にある会社でコンピューターのアフターケアの仕事をしている野田(桐谷健太)と北川から紹介される。

食後、北川の部屋に集まった幸田と野田は、北川が外に聞かれないように音楽の音を大きめにすると、銀行強盗の計画について話し始める。

非常ベルのケーブルの根本、潰すんやと計画を話す野田は、エレベーターの操作に関しては、昨年までその銀行に勤めていた爺さんがいる。昔、国鉄で労働組合をやっていた奴だと言う。

爆弾魔はいるか?と北川が聞くと、1年ちょっと前、東京で会った桃太郎みたいな奴を知っていると幸田が教える。

その桃太郎みたいな奴とは、近所の商店街の豆腐屋でバイトをしていたチョウの事だった。

客として、チョウの店に豆富を買いに行った幸田は、どっかで会ったことがありますね?と聞くチョウに、昨年7月上野で、その後秋葉原で2回会っている。おれを付けていたろう?ロケット弾打込まれた事件あったけど、あんたの仕業か?と幸田が聞くと、警察の犬か?とチョウの目が鋭くなったので、逆だよと幸田は答える。

大阪で会ったのは偶然か?と言うチョウに、運命だろと答えた幸田は、又来ると言って店を後にする。

北川と野田は、ファミレスでジイちゃんこと斉藤順三(西田敏行)と落ち合っていた。

ジイちゃんは、来たときからずっとラジオの競艇の実況を聞いていたので、隣に、怖い系の2人組が座り、うるさいからやめろと声をかけて来ても、全く無視していたので、怖い系の2人組の方が呆れてしまうほどだった。

どうやら勝負に負けたらしく、300万がパーになった等とジイちゃんは言う。

アパートにやって来た北川に幸田は、日当3万円?信用できるのかよ?とアル中のジイちゃんを引き入れる事に不安を感じていたが、春樹に計画がバレた…、家を飛び出て、ミナミの賭博場にいるらしいと北川は打ち明け、モモさんの方は頼りになるのか?と聞いて来る。

桃太郎のような奴と幸田が形容したチョウの事だった。

双眼鏡で、川向こうのアパートに帰って来たモモことチョウの姿を確認した幸田は、すぐ近くに停まっている車を発見し、ハエがたかってやがる…と呟く。

車の中にいる2人の人影は、明らかにチョウのアパートを監視しているようだったからだ。

ミナミの賭博場前に、ホステスらしき女を何人も乗せたライトバンを運転していたモヒカン頭のキング(青木崇高)は、店の中に入ると、その日、勝ち続けている奴がいるとボーイから耳打ちされたルーレット台に座っている若者に目をやる。

その若者こそ、北川の弟で家出していた自殺願望が強い春樹(溝端淳平)だった。

春樹は、周囲が自分を警戒していると気づくと、ナイフを取り出し自分の手首を斬りつけると、下に置いた灰皿に流れ出た自分の血を受け止め始める。

その異様な行動にビビった隣の男は立ち上がるが、てめえ、何してるんだ!とキングが春樹に詰め寄り殴りつける。

そこに割って入って来たのが幸田で、こいつの保護者だとキングに名乗ると、春樹のナイフを受け取り、春樹を店から連れ出す。

自分のアパートに連れて来た春樹と、翌朝、朝飯を食べる事にした幸田だったが、春樹は携帯をなくしちまって…と言い訳しながらも、ナイフを返してくれよ。落ち着きたいから…と頼む。

倉庫会社の事務所では、テレビで、頭部を撃たれた朝鮮国籍の男の死体が引き上げられたと言うニュースが流れていた。

その日、その兄を撃ったモモことチョウから幸田に電話が入る。

あんたとは似た者同士だと思った…、チョウに会った幸田がそう言うと、北のスパイとでも思ったのか、騙したのか?とチョウは警戒し、これはあんたのか?と言いながら銃を突きつけられたので、そんなもの必要ないよと幸田は答える。

兄貴を殺した…、やらなければおれが殺されていた…とチョウは打ち明ける。

いまだに国で貧しい生活をしている妹の事を思い出したチョウは、いきなり銃を自分のこめかみに付けて自殺しようとするが、それを観た幸田は、ここまでだな…と諦めたように呟く。

翌日、北島のトラックの運転席に乗り込んだ幸田は、そのモモは、脱北してるんだろう?と聞いて来て、おれは28億が欲しいんだ。モモを手放すってことは28億捨てるってことなんだと幸田を説得する。

あんた、やっぱジャイアンだわと幸田が北川の事を当てこすると、何とでも言えよ、のび太!と北川も応じる。

翌日、2人は幸田のアパートのベランダから、チョウのアパート前に停まっていた車の男2人の事を双眼鏡で観察しながら、あれは公安じゃないぞと北川は断定する。

そこに帰って来た春樹が、兄ちゃん、仲間に入れてくれよと北川に頼んで来るが、北川は、帰れよ、圭子が心配しているからと諭す。

その時、川向こうのアパートに、仕事を終えたチョウが帰って来る。

北川は、そのアパートに様子を見に行っていたが、車から降りて来た男のハゲの方が、いきなり北川目がけて撃って来る。

幸田も撃ち返し、その援護を受けながら、チョウは、その騒動に気づき、二階の部屋から飛び降りていたが、その二階のチョウの部屋に入りかけた北川は、ヤバい!プロパンに穴が開いてガスが漏れてる!と言うと、自分も下に降りてチョウを連れて逃げ出す。

幸田もその後から逃げ出す。

その直後、チョウのアパートの部屋はガス爆発を起こす。

アパートからかなり離れた場所まで逃げて来た3人だったが、火の方向を観察した北川は、ちょうど1部屋分だ、プロだな…と、明らかにチョウを消す目的で仕掛けられた爆発事故に感心したようだった。

おれは、007とゴルゴ13だけは全てチャックしてるんだが、これは何と言うんだと銃の事を聞き、その場は帰ることにする。

幸田とチョウを、ジイちゃんのマンションに連れて来たのは野田だった。

朝早い港湾の仕事のためか寝ていたらしいジイちゃんは、いきなり部屋にやって来た3人に驚いたようだったが、初対面のチョウは桃太郎ですと自己紹介し、幸田も名乗る。

仲間の顔見せをすませた野田は、ジイちゃんにもう寝ててと告げる。

野田は帰るが、ジイちゃんのマンションのリビングにそのまま残ったチョウは、泥棒なんてやる気ないと断って来るが、幸田は、モモさん、寝てくれよと頼む。

翌日、車の中で幸田とモモに会った野田は、自分の女に子供が出来てしまい国に帰らせたが、3500万必要なんだと打ち明ける。

モモは、人から誘われたのは始めただと呟いていた。

ジイちゃんの部屋に集まった5人は、焼き肉を食べた後、銀行の見取り図を拡げると、金塊強奪の計画を練り始める。

エレベーター操作盤の暗証番号は毎日変わると教えたジイちゃんは、屋上の操作室でおれがやると言う。

保安人員は2人、守衛は2人が常時巡回していると分かる。

銀行の側にある中之島変電所の写真を取り出した北川は、警察の目をごまかすためにここを亡き者にする。やれるか?と聞くと、モモはダイナマイトがいると言う。

早朝、中之島変電所を下見に出かけた幸田とモモは、入口にはしっかり施錠してあったので、モモがニトログリセリンを取り出して見せる。

その帰り、幸田は、川岸の道路を掃き掃除しているジイちゃんを観かける。

アパートに帰って来ると、春樹が帰りてえよとごねていたので、少しは寝かせとよと頼む。

色んなもん引きずって生きているが、おれはいらねえよ、こんな人生!と世をすねていた。

その後、コーヒーショップで北川と会った幸田だったが、その場に一緒にいた圭子と息子は、これから天王寺動物園に行くのだと言って、2人は店を出て行く。

北川は、ダイナマイトを輸送する車の輸送ルートをどこかから加入して来ていた。

早朝、ダイナマイト輸送車は工場を出発する。

それを尾行していたのは、北川が運転し幸田が乗った車と野田とモモが乗った車だった。

野田は携帯から、1本松射撃場を爆破すると言う予告状をメール送信する。

この偽の爆破予告によって、名阪高速道路は封鎖される事となり、輸送車も含め渋滞する中、幸田の乗った車と野田たちの車は、強引に車の列に割り込むが、それに怒ったのか、後ろの車がクラクションを鳴らして威嚇して来たので、野田は処分しようと呟く。

停まって待っていると、後ろの車から降りて来た、いかにもオタク風のデブが、携帯を持ちながら、写真をアップするぞなどと因縁をつけて来たので、その携帯を取り上げた幸田は遠くに投げ捨てるのだった。

その後、幸田は車の後部座席付近にガソリンを撒く。

輸送車が山道に差し掛かって人気がなくなったのを見計らうと、北川は車のスピードを上げ輸送車の前に回り込むと、わざと事故を装い横転してみせる。

目の前で車が横転した様を観た輸送車は慌てて急ブレーキをかけるが、後ろに近づいていたモモと野田の車がクラクションを鳴らしてせかす。

輸送車の運転手(石倉三郎)と助手は、仕方なく降りて、幸田の車の様子を見ようとするが、その時、隠れていた多摩川電気サービスと書かれたユニフォーム姿の北川と幸田が、2人に運転手と助手を殴りつけ昏倒させると、輸送車の後部扉をこじ開けると、中に積んであったダイナマイトをモモたちの車の方に移し替える。

後日、倉庫会社の事務所に幸田宛の電話が入る。

相手は、山岸(田口トモロヲ)と言う男で、90kgのダイナマイトが盗すまれた話をすると、チョウ・リョファンって知ってるだろう?と聞いて来る。

我々に、チョウを紹介しろよと言って来るが、幸田は黙って電話を切ってしまう。

映画館で仲間たちと落ち合う事になっていた幸田が、途中、公衆トイレに入ると、横に立ったハゲがいきなり襲撃して来る。

ゾンビ映画を観ていたモモと春樹に、尾行がいるから今日は中止だと幸田は教え、2人を逃がすと自分も逃げ出す。

そこにやって来た野田は、狼狽しながらもヤバいと感じ逃げ出す。

幸田と共に、とあるビルの屋上に逃げて来た野田は、何で、泥棒が左翼に揺すられなあかんねん!と訳が分からないように聞く。

2年前、迫撃弾の調達を頼まれたんだと幸田は教えるが、野田がビビって計画から降りたいと言い出したので、払えるのか?3500万点、もう始まっているんだよ!途中下車はなしやと迫る。

後で、その話を聞かされた北川は、今頃、共産主義かよと呆れていた。

何してたんだ?桃太郎さんと北川が聞くと、国でコシヒカリでも食ってたんだろと幸田は冗談で返す。

そこにそのモモがやって来たので、春樹の奴が、ミナミで尾行と間違えておっさん殴ったと北川は呆れたように教え、今夜、見張りに春樹も連れて行ってくれ。あいつ、サツに捕まったかもな…と頼む。

夜中、マンホールの周囲に工事中の偽装を行った幸田とモモは下水道に降りる。

モモは仕事を楽しんでいるようだった。

やがて3人は、中之島変電所の中のマンホールから構内に出る。

その頃、見張り役として外で待っていた春樹は、暴走族から襲撃されていた。

さらに、暴走族の兄貴分であるキングまでやって来たので、春樹は金属パイプで相手を殴りつけると、戻って来た幸田をバイクに乗せてその場を逃走する。

春樹は、あいつ、おれを付けてたんだと言い、焚き付けたのは山岸だろうと幸田は推理する。

北川のアパートに来た幸田は、俺たちの中にたれ込み屋がいる。モモの事を外に漏らしていると北川に告げる。

幸田が帰ると、北川は1人で飲み始めるが、そこに近づいて来た圭子が、何か最近変やで…、何か不安やわと北川の行動に不信感を抱いているようだったので、その場で圭子の背後から犯し始める。

アパートに戻って来た幸田は、春樹が自分の本を読んでいた事に気づく。

その後、モモの新しいアパートに行ってみた幸田だったが、部屋から顔を出したのは女性だったので、思わず部屋を間違えたかと思って、失礼と言いながら立ち去ろうとするが、その女性は、モモの女装だった事に気づく。

改めてモモの部屋に入った幸田は、あんたの事を外にバラしている奴がいると教える。

するとモモは知ってるよと言うので、いつ気がついた?と幸田が尋ねると、ジイちゃんが末永(鶴見辰吾)と言う男と会っているのを観たことがある。

末永は二重スパイだよ。情報を公安にも流していると言うので、それでお前の兄貴が来たのか?と幸田は合点がゆく。

昔なら、末永の頭、ぶち抜けばすんだが、もう私、スパイ辞めたから…とモモは言う。

その後、北川が、春樹が拉致されたと幸田に知らせに来る。

山岸か…と幸田は呆れる。

北川は、殺す!と呟く。

夜、表を歩いていた山岸にさりげなく近づいた幸田と北川は、停めてあった車の中に山岸を連れ込むと、手錠をかける。

山岸は、あの爺さん、公安に寝返ったんだぞ、と自分がはじめて教えるように言うと、末永の中間搾取は反革命的だとわめくので、あんた等が勝手にやったんだな?消されるぞ。北川春樹に1億出す。払えない時はチョウを渡すと幸田は脅し、山岸が変装していたヒゲをむしり取る。

素顔が暴かれた山岸は、それでも、信じるぞ!と虚勢を張って、車を降りて行く。

翌朝、川岸の通路を履いていたジイちゃんに会いに行った幸田が、モモ売ったろ?相手は末永だろうが!と詰め寄ると、ジイちゃんは動揺も見せず、モモ、さらって行った。おれには関係ねえよとうそぶくと、あんた、吹田に昔いたろう?おれもあの長屋にいたんだ。教会の神父、覚えてねえか?おれの所に訪ねて来て、女と子供を探しているって言ってた。2人がどっかに行ったと言っていたが、あんたと母さんの事だろ?と聞いて来る。

聖職者のくせに…と幸田が悔し気に呟くと、あの男、あんたとお母さんのこと忘れられねえようだったが…、あれから母さん、どうした?とジイちゃんは聞くので、おれは叔父に引き取られたから知らんと幸田は答える。

火をつけたのは、あの神父だと言う噂が立ったから、警察に電話してやったとジイちゃんは教える。

モモに何かあったら、あんた責任取れよ!と吐き捨てた幸田の脳裏には、教会の中で抱き合う神父と母親のイメージがフラッシュバックで浮かび上がる。

その夜、後援にモモと来た幸田は、5歳の時、あの教会に火を付けたんだよ。神父さんが俺の代わりに罪をかぶってくれたんだ…と遠くに見える教会を眺めながら告白する。

それを聞いたモモは、いつか行ってみようか?と幸田に語りかける。

キングが公園内に立ち小便しに来たのを待ち受けていた北川は、背後から素早く近づき、手首をキングの首に巻き付けると、今度身内に手出ししたら殺すぞ!と脅しながら、締め付ける。

サラリーマンの野田は、カレンダーの8日の日に印をつけていた。

ある日、幸田は、産婦人科から出て来た圭子と息子にばったり出会う。

2番目の子供が出来たと圭子は恥ずかし気に言うと、幸田さんは結婚しませんの?と聞いて来る。

幸田は答えず、圭子はそのまま息子を連れ歩き始めるが、次の瞬間、後ろから走って来た車にはね飛ばされ、そのまま車は走り去ってしまう。

道路に転がった圭子の身体に、北島が半狂乱になって圭子の名前を呼びながら駆け寄る。

その車を運転していたのはキングだった。

幸田は、モモのアパートで、ダイナマイトを使った爆破装置を作っていた。

そこに、奥さんの実家に行った北川の様子を観て来た野田がやって来て、北川さんはしっかりしていたわと報告する。

幸田がその後、北川と会うと、始末は付ける…と北川は何かを決意したようだった。

しかし、その直後、春樹が事故を起こしたと言う連絡が入り、幸田と北島が事故現場に向かうと、ちょうど春樹が救急車に収容される所で、事故現場には、衝突のショックで大破した春樹のバイクと、春樹がぶつかった相手の死体がビニール袋に入れられていた。

春樹が轢き殺したのはキングだった。

春樹が入院した病院で、北島は、警察が待ってるな…と呟く。

後日、幸田は倉庫会社を辞める事になり、女性事務員が、少し早いけど…と言いながら、クリスマスプレゼントとして手袋を渡してくれる。

アパートに戻ると、北川とモモ、じいちゃん等が待っていた。

北川は、パスポート取ったか?と幸田に聞くと、舞鶴に漁船が用意できた。モモのコネだと教える。

日本でやり残した事ないか?と幸田が聞くと、モモは、鯖寿司が食ってみたかったな…と意外なことを言う。

その時、それまで当日は参加しない予定だったジイちゃんまで、俺もやっぱり行くわ…と言い出す。

エレベーターの調整室に行くと言う事だった。

北川は、1台だけ8階にも止めれるようにしといてくれ。ルパンも屋上から逃げるやろとジイちゃんに頼む。

その後、モモのアパートにやって来た幸田は、銃を所持しており、モモに、外にいるんだと、北のスパイが見張っている事を教える。

その直後、機関銃を持ったハゲが室内に入って来て、乱射し始める。

幸田は撃たれ、モモも末永の撃った銃弾を受けてしまうが、敵はすぐさま引き上げてしまう。

幸田は出血のため寒さを感じていた。

側についていたモモは、モルヒネを打っておいたからなと告げる。

この部屋から出ようと幸田は言い、吹田の教会へ逃げ込む。

やっと来たな…とモモが呟く。

幸田は、母親の思い出がフラッシュバックのように浮かんでいた。

幸田は、モモのアパートに来る時買って来ていた鯖寿司を取り出すと、2人一緒に食べ始める。

翌朝、目覚めた幸田は、椅子の横でモモが既に死んでいる事に気づく。

計画のその夜、北川はモモが死んだ事を知るとくそ!と悔しがっていた。

野田の方は、銀行ビルの管理センターの前まで来ていた。

保安要員たち相手に、帰省切符が取れないとか、俺は神戸やなどと雑談していた。

重傷にも関わらず計画に参加した幸田は中之島変電所に来て、かねて用意していた合鍵で入口を開けていた。

マンホールの蓋を開けた北川はその周囲に工事中の偽装をしておく。

その後、川沿いのベンチで先に待っていた幸田と合流した北川は、幸田が倉庫会社の女事務員から貰った手袋をしていたので、革の手袋の方が良いぞと自分が持って来た手袋を渡す。

幸田は、新しい手袋を受け取ると、女から貰った手袋は、背後のゴミカゴに捨ててしまう。

野田は、鍵を忘れたので、スペアキーを撮りに行くと保安要員に告げて、エレベーターに戻ると、エレベーターの調子がおかしいと保安要員に教える。

保安要員はメンテナンス会社に電話をするが、その後、車でやって来たメンテ会社の社員を途中で待ち構えていたジイちゃんと北川が襲撃する。

メンテ会社のユニフォームに着替えた北川とジイちゃんは、メンテ会社の車に乗り込むと、そのままビルの地下に入って行く。

車の後部座席には、幸田が隠れて乗り込んでいた。

一方、ビルを退社した野田は、急いで工事人のユニフォームに着替えると、北川が先ほど準備していたマンホールの所にやって来る。

保安要員は、昔顔なじみだったジイちゃんと北川がやって来たので、怪しまずビルの中に入れる。

ジイちゃんは、作業のため、エレベーターが停まるかもしれんよと保安要員に告げて、北川を助手のような感じで一緒に連れて行く。

ライトバンの後部座席で隠れていた幸田は、痛みを抑えるために、モモが持っていたモルヒネを自分で注射していた。

そして、縛って一緒に車に乗せていた、気絶していた本物のメンテナンス作業員にもモルヒネを打って、さらに眠らせておく。

ジイちゃんが、エレベーター止めるよと呼びかけると、確認しに近づいて来た保安要員の松田を隠れていた北川が殴りつけ、気絶させるとガムテープで口を塞ぐ。

その後、同じようにもう1人の保安要員も呼び出すと、北川がスパナで殴りつけ、気絶させる。

ビル内でまだ仕事をしていた国際部の社員が、エレベーターで帰ろうとすると、動いてない事に気づく。

その時、幸田も、作業に加わり、3人目の保安部員も倒す。

その頃、マンホールから下水道に侵入していた野田は、セットしておいた爆弾の最終チャックをしていた。

北川が、8時きっかりに第2エレベーターを動かすとジイちゃんに指示を与えると、それで俺の役目は終わりだね?と聞いて来る。

8時、中之島変電所で爆発が起きる。

国際部に残っていた社員たちは、窓から見える変電所の火災現場を見に集まる。

エレベーターの操作室にいたジイちゃんが、第2エレベーターを動かす。

到着したそのエレベーターに、金塊を運ぶためのバッグを積み込む北川。

ビル内を巡回していた守衛が保安室にやって来て、松田と中島の姿が見えないので、中之島を観に行ったんか?と呆れる。

そんな守衛に、北川が、何かあったんですか?と話しかける。

一方、スイッチを横に起き、次の爆破のタイミングを待っていた野田が、うっかり転んでスイッチを押してしまい、計画よりわずかに早く爆発を起こしてしまう。

タイミングがずれた事に気づいた北川は、目の前の守衛に襲いかかるしかなかった。

国際部では、誰か保安室に連絡しろ!と課長が部下に命じていた。

幸田と北川はエレベーターに乗り登って行く。

保安室との連絡が取れず、らちがあかないと感じ階段を降りて来た国際部の課長は、そこに倒れている守衛を発見、その瞬間、金庫室の扉が大爆発を起こし、爆風で課長は吹き飛ばされる。

幸田と北川は、金庫室の前に来ていたが、ドアが2つあったので左の方を開けると、急に非常ベルがなり出す。

北川は慌てて、ブザーの配線を壊して音を止める。

幸田は、用意していたプラスチック爆弾を金庫室前の扉のノブ部分に付け爆発させる。

すると、その中に、もう一枚扉がある事に気づく。

巡回していた守衛は、倒れていた課長に気づき助け起こす。

幸田は、2枚目の扉も、爆破で破っていた。

課長の所に階段で降りて来た部下たちが、消防を呼びましたと伝える。

とうとう金庫の前に来た幸田は、出血でもうろうとしながらも、何とか工具を使って金庫を開ける。

課長たちの所にやって来たもう1人の守衛(でんでん)も、下が偉いことになっていると伝える。

ビルの前には、警官2名も駆けつけて来る。

幸田と北川の2人は、バールを使って金庫をこじ開けると、中には、想像通り金の延べ板がぎっしり詰まっていた。

500枚の金塊を用意していたバッグに詰め込み始める。

幸田、お前、今でも人間のいない土地に行ってみたいか?と尋ねる北川は、次はダイヤモンドだ!とうそぶく。

守衛は入口にいた警官に、下でもう1人寝てるんやわ…と告げる。

世界一幸せなウォッカだと言いながら、飲み干したウォッカの瓶を、空になった金庫の上に置いておく幸田。

ところが、停めていたエレベーターにバッグを詰め込んだ2人は、エレベーターが動かない事に気づく。

北川は、まだジイちゃんが残っているかもしれんと気づき、エレベーター操縦室に電話を入れてみると、幸いな事にジイちゃんはまだその場に残っていたので、第1エレベーターを8階に動かしてくれと頼む。

エレベーターが動きだし、屋上にやって来た北川は、空が真っ赤だぞ!と興奮気味に叫ぶ。

中之島変電所が燃え盛っていたからだ。

そしちぇ、幸田と一緒に金塊の入ったバッグ数個を屋上の道路側の方へ運び、下を見下ろすと、そこに野田が乗って来た軽トラが計画通りに停まっていた。

幸田は、ジイちゃんにちょっと話があるんだと言って、1人下に降りて行き、残った北川は数個のバッグの握り部分にロープを通し、繋ぐ作業を終えると、作業服を着たまま、1階に降り、警官や消防等が入り乱れていた玄関口をさりげなく通り過ぎあっさり外に出る。

幸田は銃を手に、エレベーターの操縦室に入って来るが、そこの机に聖書が置かれている事に気づく。

さらに、部屋の中でジイちゃんが、首を吊って死んでいるのも発見してしまう。

残っていた写真に写っていたのは、神父時代のジイちゃんだった。

父さん!…、幸田はジイちゃんの死体にそう呼びかける。

幸田は屋上に戻って来ると、手袋をはめながら泣き出していた。

やがて、最期の力を振り絞って、ロープで繋がれたバッグをビルの縁に置くと、下に落とす。

ロープに繋がった金塊が入ったバッグは、次々に、北川と野田が待ち受けていた下に落ちて行く。

北川は、ロープを切断すると、野田と2人で急いでバッグを軽トラの荷台に詰め込む。

幸田は、もうろうとなりながらも、自分もロープを伝って下へ下り始めるが、もう力が残っておらず、ずるずると滑り落ち始めると、途中でロープから手が離れ、地上へ叩き付けられる。

驚いた北川と野田は、幸田の身体も荷台に乗せると、野田は車を出発させる。

荷台の上で瀕死の幸田に北川は話しかけていた。

幸田には、漁船に乗って海に逃げるイメージが脳裏に浮かんでいたが、やがて息絶える。

翌朝、まだ誰もいない大阪の川に、毛布に包んだ幸田の遺体をそっと流す北川の姿があった。