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お姐ちゃんはツイてるぜ

「お姐ちゃんトリオ」が活躍するシリーズ第6作。

お姐ちゃんトリオが、ひょんな事から互いの彼氏をクルクル取り替えていく事になり、やがては仲間割れの危機に…という他愛のないラブコメ仕立てになっているが、今回の3人娘の設定は、従来のものとはかなり違っている。

パンチは編集者ではなく、テレビ局のディレクターらしい。

ピンチは自動車教習所の教官で、センチはデザイナー志望のブティックの店員と言う設定になっている。

パンチがケチで金儲けにどん欲と言う辺りや、ピンチが運転が趣味と言う辺りは残っているが、センチが踊りが得意…と言う設定は表立っては説明されておらず、かろうじて最後の最後で唐突に披露すると言う奇妙な展開になっている。

途中で、滝を舞台に出してくれと頼むピンチに、自分を舞台に出してくれる訳でもないのに…とセンチがぼやく部分が、唯一、センチが踊りに興味を持っているようなセリフなのだが、今までのシリーズを観て来たファンならともかく、この作品で初めてセンチを知る観客には、訳が分からないクライマックスなのではないだろうか。

ピンチ役の中島そのみは、同じく歌えるスターの高島忠夫とデュエットシーンがあるが、どうもこの頃になると、彼女特有の甲高いキンキンしたアニメ声は影を潜め、割と普通の女性の歌声に変化しているような気がする。

ピンチは声だけではなく、これまでの子供っぽいお茶目キャラも、少し大人びた女性に変化して来ているようだ。

銀座のビル群の窓が一斉に光り輝く幻想的なシーンは、お馴染みの東宝技術課の仕事だろう。

ピンチのボーイフレンド役として登場している瀬木俊一は、「侍とお姐ちゃん」で登場する「スリー・ガイズ」の1人。

そんな中、本作の見どころは、何といっても、前衛舞踏家を演じる若きファンファン(岡田眞澄)だろう。

それまで、日活で活躍して来たファンファンだが、この年辺りから他社作品にも出るようになったようだ。

「復活の日」の草刈正雄そっくりな顎ヒゲ姿で、そのギスギスに痩せたスマートな身体!

全編に渡り、不可思議なビート族(後のヒッピーみたいな若者たち)の生態を見せてくれる。

彼が、本作で一番目立っている事は確か。

ボン(高島忠夫)は、有名人に関するつまらないものを集めているのが趣味…という設定で、相撲の朝潮(先代)や野球の長嶋の胸毛を集めていたり…と、現在でいえば「やくみつる」的収集家。

殺人小説の人気作家が登場するのは、翻訳ミステリーやサスペンスなどが当時流行っていた証拠だろう。

パンチが担当している番組が生放送で、CMも生と言うのも興味深い。

テレビ業界自体が、既に花形職業として認知され始めていたと言う時代性も出ている。

貧しいドヤ街の生活とか、妖し気な雰囲気のアングラパーティの描写等、これまでの明るいだけの印象だったシリーズとはひと味違った雰囲気の作品になっている。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1960年、東宝、白坂依志夫脚本、筧正典監督作品。

オシロスコープの波形をバックにタイトル

朝、団地の屋上に寝そべって、ラジオを聞きながら美容体操をしていたのは、ピンチこと長島園江(中島そのみ)と、センチこと影山季里子(重山規子)の2人、一緒に同居暮らししているパンチこと淡涼子(団令子)はテレビ局勤めなので、夕べも夜遅くご帰還、まだ寝ている最中だった。

2人してあられもない格好で足をあげて動かしている時、歯を磨きながら1人の住民が上がって来て、2人の姿を観て目を丸くしたので、2人は、エッチね!見せもんじゃないわよ!とドスを利かす。

その頃、それぞれの机の上に、彼氏の写真を飾ってある共同部屋の中のベッドでまだ寝ていたパンチは、彼女が勤めているVV-TVテレビ局の石岡チーフディレクター(柳沢真一)から電話を受け、自分が担当している婦人番組「女の窓」の本日のゲスト予定、流行作家の水上水太郎を昼までに迎えに行ってくれと頼まれるが、生返事をして又寝てしまう。

一方、石岡の方は胃腸が弱いのか、今日も腹を下して薬を飲むはめになる。

センチとピンチが部屋に戻って来ると、電話の受話器が外れたままだったので、センチが受話器を戻し、ピンチは、昨日食べ残した果物の皮をジューサーにみんな入れて、朝食用のジュースを作る。

確か今日は、お昼から番組があるって言ってたと気づいたセンチだったが、どう呼びかけても起きないパンチに呆れたピンチから、お金の話をすると目を覚ました事があるので、パンチって、いくらくらい溜め込んでいるのかしら?20万くらい?預金通帳どこにあるのかな?などと話し始めると、予想通り、パンチは目を覚ます。

チーフから電話をもらった夢見ちゃったなどとパンチが言うので、それって本当にあったんじゃない?あんた、はずれた受話器抱いたまま寝ていたわよとセンチが教えると、急に慌て出し、ボーイフレンドであるアモーレ化粧品宣伝部の大津(高島忠夫)に連絡をとりに電話を入れ、今日の提供番組のゲストなので、野獣作家の水上水太郎を11時までにテレビ局までそそって来て欲しいと頼む。

ピンチは、慌てて出かける準備を始めたパンチに、今日、自分の彼氏のボクサーが出る拳闘の試合の切符を渡し、センチは自分の机の前に貼ってある髭もじゃの彼氏の写真に投げキッスをして、パンチと一緒に仕事先に向かう。

あごひげを生やした前衛舞踏家の滝靖男(岡田真澄)ら3人組のビート族が、道行く女性たちをからかいながら、銀座にあるセンチの勤めるブティックにやって来る。

ブティック内では、デザイナーとして成功するには、金持ちのパトロンを見つける事、フランスに行って帰って来る事と、先輩女店員の奈美(長谷きよみ)から教わっていたセンチは、早くもデザイナーになる夢を諦めかけていた。

そんなブティックに滝たち3人がやって来たので、センチは奥の部屋で、握り飯とシャケの朝食を食べていたマダム朝丘の所へ向かう。

日頃、朝食は珈琲にクロワッサンなどとマスコミに話しているマダム朝丘は、人が来たので一瞬慌てるが、やって来たのが従業員のセンチだと知ると安堵する。

センチが、前衛舞踏家の彼氏のステージ衣装をデザインして頂けないかと相談すると、その彼氏って二枚目?とマダム朝丘は聞いて来る。

好みでしょうけど?とセンチはごまかすが、店に戻りそこにいた滝には、マダムは色キ○ガイだから気をつけた方が良いと耳打ちする。

そんなマダムは、滝の奇矯な行動と容貌を観て一目で気に入ったようで、あなたの芸術に協力しますと即答をする。

しかし、一緒に滝の様子を観ていた奈美はセンチに、あなたの彼氏って、ちょっとパーみたいねと囁きかける。

その頃、日の丸自動車教習所で、ボーイフレンドのボクサー空谷ヒロシ(瀬木俊一)に運転を教えていたピンチは、わざと下手に運転してよ!と命じていた。

ここでの教習が、2人のデート代わりだったからだ。

ピンチは、今日、友達を誘って、あんたの試合を観に行くわと話していたが、あんまりのろのろ走るので、2人の乗った車は、他の車に囲まれて身動きが取れなくなってしまう。

ピンチは、他の車に向かい、この人、運神(運動神経)ゼロ!教えるのも大変なのよ!と叫ぶと、皆同情して許してくれる。

教習が終わり、雑誌の星占いを読んでいたセンチに会ったピンチは、自分の占い部分を読み、今の恋人に絶望を感じると書いてあったので不機嫌になる。

しかし、取りあえず、センチに空谷を紹介した後、今度はセンチに運転を教える事にする。

教習所から出ての実習だったが、まだ未熟なセンチに夢中でピンチがあれこれ教えているうちに、2人が乗った車は、十字路に入って来た別の車の側面に衝突してしまう。

その頃、パンチのテレビ局に売り込みにやって来ていた滝等だったが、チャオ!と声をかけても、今日は仕事はないとパンチからあっさり断られてしまう。

ピンチとパンチが乗っていた車が衝突した車に乗っていたのは、人気作家水上水太郎(一竜斎貞鳳)をテレビ局に送る途中だった大津だったが、大破した車の方に乗っていたピンチとセンチは何ともないのに、何故か、水上は異常に痛がり、パトカーと救急車が近づいて来たので、これは面倒になりそうだと感じた2人は、その場を逃げ出す事にする。

11時45分になっても水谷がテレビ局に到着しないので、いら立っていたパンチに、大津が電話をして来て、水谷は自動車事故で入院した。相手は当たり屋ヌーベルバーグだと思うなどと説明する。

パンチは、番組に穴を開けたら私も首になるし、あんただって出世の妨げになるのよと脅し、電話を切ると、その場にいた滝等に「婦人の窓」と言う番組に出てくれ。ただ、司会者と対談してくれれば言いからと言い含めスタジオに向かわせる。

その時、トイレから石岡ディレクターが出て来るが、まだ腹の調子が悪そうなので、パンチは、番組の方は何とかやっておきますとごまかすのだった。

スタジオでは、波子、武夫と呼び合う男女タレントが、スポンサーであるアモーレ化粧品の男性用グリーンポマードと、女性用アモーレ・ウーピンクの生CMをやっていた。

それを本社で観ていたアモーレ化粧品社長国(上原謙)と宣伝部長(多々良純)は、今日のゲストは、30枚で30人殺すと評判の作家水上水太郎だったね等と確認しあっていた。

ところが、画面に司会者の女性と共に登場したのは、前衛舞踏家の滝と紹介され、ビート族の話をお聞かせくださいと司会者が振ると、悪徳政治家を倒せ!などと意味不明な事を叫んだ滝は、急にその場で踊り出し、そこにメンバー2人も加わって、意味不明な踊りを始めたので、何だ!醜悪な!下等な!うちはホルモン剤を売っているんじゃないよ、化粧品を売っているんだ!こんな番組を流したら、全国の女性たちから総すかんを食ってしまうではないか!と怒り出す。

調整室で観ていたパンチや同僚の女性は面白いわと喜ぶが、そこに大津がやって来る。

その頃、アモーレ化粧品の社内では、宣伝部長が宣伝課長を叱りつけ、責任を取れと詰め寄っていた。

宣伝課長は係長(佐田豊)に同じ事を言って叱りつけ、係長は、番組担当の大津を探す。

その頃、その大津は、パンチの機転を褒めていたが、そこに係長からの電話が入り、責任を取れと叱られたので、急に、君があんなゲテモンを出したからだ!とパンチに文句を言い始める。

パンチの方も、作家を事故に遭わせ、来させられなくしたのはあなたの方じゃない!と言い返し、口喧嘩の果てに、大津は君とはもう絶好だと言い残してテレビ局を出て行ってしまう。

そんなパンチの所に上機嫌でやって来た滝は、今晩お暇?と聞き、多々今暇になったわと言うパンチをデートに誘う。

センチとピンチは、空山の試合を観に来ていたが、そのパンチの隣の席に座ったのは、パンチから拳闘のチケットを譲り受けていた大津だった。

3人は互いに顔を見あわせると、どこかで会ったことがありますよね?と考え始める。

大津の顔を見ていたセンチとパンチは、大津は、パンチの机の上に貼られた写真の主だと気づくが、大津の方は、朝方の事故の車から逃げた2人だと気づき怒り出す。

しかし、ピンチは、そんな大津を無視し、自分が半分食べかけていたパンを差し出す。

大津は食欲ゼロ…と言って、失恋の痛手で落ち込む。

リング上では、大日本帝国拳闘クラブ所属の空谷と、対戦相手の東洋拳闘クラブ所属の荒井熊五郎選手の紹介が始まる。

ところが、ピンチの応援に気を取られたのか、空谷は、試合開始後11秒KOという日本最短記録の早さでノックアウトされ負けてしまう。

そのふがいなさに愛想を付かせたピンチは、そのまま大津を連れ出してデートに出かけるが、負けた空谷に同情したセンチの方は、控え室で寝ていた空谷を見舞いに行くと、傷ついた男性って母性本能をくすぐるわなどと声をかけ、今日は占いで、恋に恵まれていると書かれていたのなどと積極的に迫って来たので、大したことなかった空谷も、わざと痛がってみせたりする。

その夜、パンチは、食事に誘われた滝に連れられて、怪し気なドヤ街へとやって来ていた。

その中の1軒のホルモン屋に入った滝は、ここだったら、腹が裂けるほど食っても50円もしないと自慢し、モツ煮と焼酎を2人分注文する。

そして滝は、ドヤ街の食べ物や暮らしに興味津々のパンチを、君にはビートの素質があるなどと褒め始める。

そんな店に突然、場違いな紳士風の一団が入って来る。

パンチはその中心人物が、厚生大臣の原野黒介(田島義文)と気づく。

原野は、モツ煮をわざとらしく注文すると、それを旨そうに食ってみせ、店にいた連中と付いて来た記者に向かい、この待ちを立派なアパート街にしてみせます等と演説を始める。

完全に、選挙民向けのパフォーマンスだった。

そこにやって来た地元の老人(池田生二)が、肉を持って来たので買ってくれと主人(安芸津広)に頼む。

今日の肉は何だ?と主人が聞くと、わしと同じでよいよいの状態の猫で、皮膚病を患っていたのか、皮と身が剥がれていた等と言いながら、持って来たバケツの覆いを撮って中味を見せようとしたので、さすがの滝も口を押さえ、大臣たちも真っ青になって逃げ出して行く。

一方、ピンチと大津は、近くの公園に来ていた。

大津は、そこかしこで抱き合っているカップルの様子を覗き込みながら、我が社の化粧品がどのくらい使われているか匂いを嗅いでいたんだと教える。

自分は今の日本人と同じく、10代でロカビリーにかぶれ、20代で全学連、30代でしがないサラリーマンさなどと自己紹介した大津に、これからのあなたの夢はとパンチが尋ねると、あれですよと大津が指差したのは、銀座のビル群だった。

そのビルの窓窓は、一斉に輝き始める。

社長ね!とパンチが言うと、大津は突然、僕が社長になったなら〜♬を歌い出し、パンチもそれに唱和する。

歌い終わった大津が落ちていた小石を蹴飛ばすと、それが当たったカップルから怒鳴られたので、慌てて謝りながら退散する。

ある日、3人娘が住む団地の下にやって来たご用聞きたちが、最上階の窓から突き出している女性の足に目を留め集まって来る。

それは、ペディキュアを乾かしていたセンチだったが、窓から下の様子を見たパンチは、持っていたインク瓶の中味を窓から下に振りまくと、そんな事辞めなさいよと注意する。

下に集まっていた男たちの中には、近くの巡査まで混じっていたが、全員、窓から振って来たインクをかけられ、悔しそうに散らばって行く。

パンチは、下に停まっているポンコツ車は何なのか聞くと、この前事故った車で、教習所からピンチが2万900円で引き取らせられたものだと言う。

センチは、その金を3人で払わないか?そうしないと、ピンチは仕事を辞めなければ行けなくなると言い出すが、ケチで有名なパンチは、車は維持費やガソリン代がかかるので損をすると言って、話に乗って来ない。

それを聞いていたピンチは、ガソリン代くらい野郎たちに払わせるのよと言い、車を買って、パンチに運転をさせ送らせ、それをタクシー代としてテレビ局に請求すれば良いのよなどと言うセンチの言葉を聞いていたパンチは、良いじゃない!と急に乗り気になり、車代を3分の1払うと約束する。

そして、さっそく、自分がテレビ局に行くついでにセンチを送ってやるから等と言い出し、運転代を要求すると、パンチとセンチは出かけて行く。

1人部屋に残り、掃除機をかけていたピンチは、突然訪ねて来た滝の格好を観るなり、不審者と思い追い出そうとするが、良く観るとセンチの机の前に飾ってある写真の主だと分かり、部屋に招き入れると、ゴミが付いているわ等と言い、掃除機を滝のひげにくっつけて吸い始める。

滝の方は、そんなピンチの突飛な行動も気に入ったようだったが、ピンチ特有の甲高い声を大いに気に入ったようで、君の声はビートの素質があると褒め讃えると、今夜、パーティを開くので、僕らの芸術に協力してくれと頼み、自分は今日からここに停めてもらう等と勝手な事を言い出す。

あんたの芸術ってどう言うの?とピンチが聞くと、滝はいつも持ち歩いているボンゴを取り出し、むちゃくちゃに叩き出す。

それを聞いたピンチは、泣かすじゃない!と気に入り、その場でリズムに合わせて踊り出す。

そると、他の部屋の奥さんが赤ん坊を抱いてやって来て、うるさいじゃない!赤ん坊が引きつけを起こしちゃうわよ!と苦情を言う。

それでも、すっかり意気投合した滝とピンチは、室内での演奏と踊りを止めなかった。

一方、空谷がパンチンブボール相手で練習中だった拳闘クラブにやって来たセンチが声をかけると、その途端に、空谷の集中力は途切れ、跳ね返って来たパンチングボールにぶつかって倒れてしまう。

驚いたセンチが駆け寄ると、おれは今絶望しているんだと言い出した空谷は、熊五郎に負けたときも、昼飯の事なんか考えていた。おれは精神を1つにことに集中させる事が出来ないんだ!と床に倒れたまま嘆くので、だったら禅でもやってみたら?とセンチは勧める。

パンチは、入院中の作家水上水太郎を見舞っていた。

水上は、体温を測りに来た看護婦に金をそっと渡し、平温であるのに、7度8分あると言わせていた。

それを横目で観ていたパンチは、水上が仮病を使い、アモーレ化粧品から治療費を出させて、病室で安楽な執筆活動を続けている事に気づく。

水上はそれを指摘されても平気なようで、パンチに、ミッキー・チャンドラー著の「キルミー・ナイト」の翻訳本を病室に持ち込んでいた本の中から探させると、その一部を引用して自分の小説に利用していた。

パンチは、パクっているんですね?と言う意味の指を鍵型に曲げてみせると、今度自局で連続ミステリドラマを始めたいので、先生にはお名前だけを拝借したいと申し出る。

しかし、水上は平然と、原作より良くなるんだから言いでしょう?とパクっている事を恥じないばかりか、脚本はパンチの方で用意するので、先生は何もなさらずにギャラの半分を貰えるのですと聞くと、水上は薬瓶の中に入れたスコッチ等飲みながら、上機嫌で承知する。

その時、アモーレ化粧品の国社長がやって来た事に気づいたパンチがそう教えると、水上は慌てて、パンチに口述筆記をやれと言い出す。

国社長が宣伝部長と共に病室に入って来ると、水上は小説の最後の部分を「邦彦はガウンを脱ぐと女に向かい、婉然と微笑みながら銃を撃つと、冷たく笑いながら呟いた。これで俺の復讐は終わった…と」などと喋り出し、パンチがそれを筆記している風に装う。

国社長は、水上の容態を聞き、まだ少し足が痛むと噓を言う相手に、著書を差し出すと、9つの娘が先生の殺人小説の大ファンですので、これにサインを頂きたい等と言い出す。

その時、パンチは、今度滝靖男の前衛部当の舞台をやるので、スポンサーになって頂けませんか?と口を出すが、それを聞いた宣伝部長が、この前のテレビに出ていたキ○ガイですと教えると、国社長も思い出したようで、あれはいけません。不潔なキャラクターが売れたら化粧品が売れなくなりますと言って拒否する。

すると、パンチは、本にサインを追えた水上に、味方してくれなければ仮病の事をばらすわよと耳元で囁き、水上は慌てて、パンチを弁護するような事を国社長に言い出すのだった。

その頃、空谷はセンチと2人で禅寺で修行をしていた。

空谷はすぐに雑念を抱き、姿勢を崩すので、隣で一緒に座禅をしていたセンチは、雑念を捨てるのよ。隣の外国人を見習いなさい。さっきからびくともしないわよと教える。

やがて太鼓の音が聞こえ、修行が終了した事を知った2人は立ち上がるが、隣の外国人ゲイリー・ジェイムス(ジョージ・ルイカー)がまだ座禅を続けているので、もう終わったのよとセンチが声をかけると、分かってるが、足がしびれて動けないのだと言う。

そんなゲイリーは、ニューヨークからベニスを経由して来日したと寺の外で2人に教える。

ゲイリーは、とても禅に詳しいようだったので、空谷があなたから色々話を聞きたいと申し出ると、我々のパーティが今夜あるのでいらっしゃいと誘ってくれる。

一方、大津は、パンチから車の運転を習っていたが、生来の不器用なのか、ちっとも上達しないので、パンチが叱りつけると、いきなり大津は、道路交通法の事を詳細に語り始める。

それでもやはり運転は下手で、廻り中を他の車に囲まれて身動きが取れなくなってしまったので、パンチは、元ロカビリーなのに、知識だけで実技がダメな運痴ねと侮辱する。

さすがに、1教程に500円も出しているのに!と怒った大津は車を降りると、教習所を後にしようとする。

それを追って来たパンチは、自分が頭弱いから、知識のある人にコンプレがあるのよなどと、分かったような分からないような言い訳をして謝る。

すると大津は、自分のコレクションだと言う、全学連が国会に初めて投げ込んだ石なるものを取り出してピンチに見せる。

大津は変わったものを集めるコレクターだと明かし、他にも、ハリー・ベラフォンテが払ったチップとか、七味唐辛子に入っていた毛長粉蜱(けながこなだに)とか、相撲の朝潮(先代)や野球の長嶋の胸毛を集めているのだと自慢気に言う。

それを聞いたピンチは、今夜ビート族のワイルドパーティがあるので、何か出物があるかもよと参加を勧める。

階段のない地下室のような場所でそのワイルドパーティは行われていた。

1人の女性桃子(ヨネヤマママコ)が不思議な踊りを踊っている中、めいめい、勝手なファッションで集まったビート族の男女たちが、奇妙なポーズで座ったり踊ったりしていた。

ピンチは滝に、カエルの鳴き声って48通りもあるってねと言いながら、自らその鳴き訳を演じてみせていた。

その横で1人浮いていたのが大津だった。

ちっとも周囲の雰囲気に馴染めず、じっと座っているだけ。

そこにパンチも取材でやって来るが、いきなり見知らぬ男から手を引かれ、その場でダンスを踊ることになってしまう。

体育座りしていたピンチは、他の女性たちのように、男たちからその膝を拡げられようとしていたが、必死に絶えるゲームをやっていた。

やがて、トイレに立ったピンチに、大津が、いつまでおれを放っておくんだよと文句を言うが、相手にされなかった。

そこに、空谷を連れたセンチもやって来て、滑車から下がった紐に吊られた手製のエレベーターのようなものに乗って地下室に降りる。

空谷の方は1人で下に飛び降り、着地に失敗してしこたま腰を強打してしまう。

ゲイリーは、そんな空谷に、何か薬のようなものを入れた飲み物を飲まされそうになるが、踊りつかれたパンチが近づいて来て、そのグラスを勝手に受け取って自分が飲み干してしまう。

それを観ていた滝が、君、何も感じないかい?と問いかけると、パンチは急に部屋が廻り始めた事に気づく。

気がつくと、パンチは床に寝かされていた。

目が覚めた事に気づいた空谷は、メキシコのシャボテンから採った麻薬だったんだ!あいつらそんなもの飲ませようとしやがって!と憤慨していた空谷は、パンチが気絶した時、ビート族の連中が持っていた煙草に触れたらしく、手のひらの一部をやけどしている事に気づくと、何を思ったか、自分の手のひらにもタバコの火を押し付け、君と同じ苦しみを共有したい等と言い出す。

大津の方は、ちっとも求めるお宝が見つからないので腐っていたが、その話を聞いたセンチは、うちのマダムならその手のものを持っているはずで、確か、クリスチャン・デオールが死ぬまで飲んでいた肝臓の薬があったはずと言うと急に興味を持ったようだった。

パンチは滝に、麻薬を飲ませるとはどう言う事?と詰め寄ると、ピンチが近づいて来てパンチに、私の彼に何を言うのと文句を言う。

すると、センチも近づいて来て、ピンチに欲張り!と責める。

パンチが近くに置いてあったスパゲティをパンチの顔に投げると、パンチもパイのクリームを顔に塗りたくられる。

センチには鳥の丸焼きが投げられ、彼女たちを守ろうと大津や空谷も加わり、場内は、その騒ぎをきっかけに大混乱に陥ってしまう。

その後、アパートに戻って来たセンチはピンチに、こんなキ○ガイの写真やるわと言って、自分の机の前に飾っていた滝の写真を渡すと、ピンチは空谷の写真をパンチに渡し、パンチは大津の写真をセンチに渡す。

もう喧嘩状態になっていた3人は、同居生活を解消しようと云う事になり、ピンチは、この部屋の敷金の3分の1を返してとパンチに迫る。

実は、このアパートを借りる時、代表してパンチが敷金を集めて支払っていたからだった。

しかし、パンチは、ない袖は触れないわと言って払おうとしないばかりか、あのポンコツ車の権利を放棄するから、2人で半分ずつ取れば?などと提案する。

センチはピンチに、自分の分の敷金返してよと言い出し、残りの品物はジャンケンで取り合う事にする。

かくしてアパートを出たピンチは、滝と一緒に暮らす事にしたドヤ街のベッドハウスにやって来る。

ピンチが持ち込んだ掃除機をベッドにかけていると、他の住人たちが興味深そうに見守る。

そこにやって来た滝に、ピンチは、ベッドの上に置いた花瓶に飾った花を見せて、どう?と聞くが、こんなものは植物の生殖器に過ぎないじゃないか!と言って滝は花を捨ててしまう。

彼がいら立っていたのは、今度やる舞台のための前売券を2000枚も売らなくてはいけなくなったからだった。

劇場から押し付けられた前売券をどうやって売りさばこうかと悩む滝にピンチは、犬の脳みそでも食べれば良い知恵が出るかもと言い、取りあえず一緒に食事に出かけることにする。

その後、ベッドハウスに残っていた老人や宿泊者たちは何事かを相談しあう。

マダム朝丘のブティックでは、センチが奈美に、夢の島で拾った古雑誌のファッションをコピーすればアイデアはただで済むなどと、マダムの手法をからかっていたが、そこに顔を出したマダムは、先日作った滝のステージ衣装代がまだ未払いだけどどうするつもり?と請求書をセンチに見せて聞いて来る。

あの人、セックスしようと迫ると、急に座禅をし出してごまかすのよと言うマダムは不機嫌そうだった。

そこに例のもの、手に入った?と言いながら、大津がやって来たので、センチは、まだだけど、取りあえず、ピンチを脅してデザイン料を滝から手に入れるのが先決なのよと答える。

一方、アパートで1人暮らしを始めていたパンチは、石岡ディレクターから、今日は8時からミステリドラマの撮りがあるんだよと電話で聞かされ、慌てて出かける支度を始める。

そこにやって来たのがアパートの管理人(沢村いき雄)で、今月分の部屋代と、先月までに溜まっていたガスや水道、電気、ゴミ収集費、テレビやラジオ代等全部支払ってくれと言う。

そんなものまで全部私が払うの?とパンチは驚くが、今はあんたしかいないじゃないかと言われると反論できず、私は民間TV局に勤めているのにNHK代まで払うの?とさらに食い下がっても、法律で決まっているんだから仕方ないでしょう!と管理人から叱られてしまう。

ピンチがいてくれたら、立て替えておいてもらえたのに…とぼやきながら、パンチは全額自分が支払うしかなかった。

さて出かけようとしたパンチだったが、車もなくなった事に気づく。

つまり、タクシー代まで出さなければいけなくなったのだ。

がっくりしているパンチの部屋にやって来たのは空谷だった。

パンチは、今日は暇なので…と言う空谷に、部屋の掃除をやっておいてと頼んで出かけて行くので、1人部屋に残された空谷は、おれは男お手伝いさんか!と怒る。

その頃、ドヤ街のベッドハウスでは、常連客たちが酒を飲んで踊っていた。

そこに戻って来たピンチは、ベッドの上に置いておいたはずの掃除気がなくなっている事に気づき、滝の方もバッグに入れておいたボンゴもなくなっているので、あんたたち…、この宴会の元手は、私たちの掃除気なの!?と詰め寄る。

しかし、老人たちは、知らないと言い、何かが盗まれるのは、こんな所に置きっぱなしにしている方が悪いんだなどと言い出したので、ピンチと滝はがっかりしてしまう。

そこに、ポンコツ屋が二級酒をぶら下げて上機嫌で帰って来ると、今日は一日歩いても何も見つからず、がっかりして、このベッドハウスの前まで帰って来ると、目の前に高級もんのポンコツの山が落ちていたので、それを仕切り屋に売って来たと愉快そうに話しながら、全員に酒を注いで廻る。

それを他人事のように笑って聞いていたピンチだったが、滝は嫌な予感がすると言い出し、宿の表に出ると、そこに置いてあったピンチのポンコツ車がなくなっていることに気づく。

滝は、ここは愛と絶望の町だよ…とピンチに哀しそうに呟くが、その直後、あの前売券は!と思い出し、宿の中に駆け込もうとするが、ピンチが、誰があんなものを盗むと言うの?と言って落ち着かせるが、ピンチはもう5円しか持っておらず、滝に至っては無一文だと打ち明け、その場で座禅ポーズを取るしかなかった。

翌朝、ブティックにやって来たセンチは、「俺が殺ったんだ」と書かれた看板の前でへたり込んで座っていたピンチを発見し、取りあえず店の中に連れて来る。

夕べから歩き通しで何も食べてないと聞くと、奈美が、先生が食べ残したシャケと冷やご飯ならあると言ってくれたので、ピンチは丼でシャケ茶漬けにして平らげる。

デザイン料を滝さんに払ってもらわなければ困るのだとセンチが言うと、ひげの踊りの前売券売ってやってよとピンチが反論して来たので、私を舞台にあげてくれるならともかく…とセンチは戸惑う。

せめて、パンチのTVに出してくれたら出演料はいるのにな…とピンチはぼやく。

そのパンチは、ミステリドラマの2回目のビデオ撮りの最中だった。

石岡ディレクターは、まだ腹の調子が悪いようで、現場の事はパンチに丸投げの状態だったが、脚本もどうせ自分が書いてるんですものとぼやいて局を後にし、アパートに帰り着いたパンチは、また埃だらけのアパートで水上先生の代筆か…、前途暗いわなどと嘆きながら部屋に入ると、中は見違えるほどきれいになっていた。

パンチが驚いていると、お帰りなさいと言いながら、ピンチとセンチが食事の支度をして出て来たではないか!

ピンチは、元の通り3人で暮らさない?管理人のおじさんに聞いたの。敷金を返し、それでガス代その他の支払をしましょう。私たち、3人1セットでやっと1人前ですものね等と言うので、パンチもその通りだと実感する。

さらに、ひげのTV出演の渡りを付けてよとピンチが頼んで来たので、パンチは、アモーレ化粧品が降りると言っていると事情を打ち明ける。

3人は揃って、アモーレ化粧品お宣伝部にいた大津の元に出向くと、デザイン料が入ると肝臓の薬も手に入るのよと説得し、滝の公演のスポンサーをやって協力するように頼む。

大津に連れられ、国社長の部屋の前まで来た3人だったが、部屋の前に座り込んでいた空谷と出会う。

何でも、今、部屋の中で国社長と会っている人物の用心棒役で付いて来たのだと言うではないか。

部屋の中にいたのは、「先行タイムス」と言うごろつき新聞を発行している西条(左卜全)と言う男とその子分たちだった。

西條は、アモーレ・ウーピンク等と言う下品な商品をTVで流しているのはけしからん。うちの新聞に広告を載せてくれたらその辺は不問してやると言う態の良い脅しを国社長に突きつけていた。

部屋の前では、拳闘クラブで練習をしていたら、知りあいの暴力団の男が来て、1日千円で働かないかと誘われたが、雇い主がごろつき新聞だったとは知らなかったのだと言う。

広告料が100万円もすると聞いた国社長は困惑するが、中の会話を外で聞き、強請の手伝いをしている事に気づいた空谷は突然部屋に乱入して来ると、純真なおれを欺きやがって!と言いながら、次々と子分たちを殴り倒して行く。

子分たちと西條は、形勢不利と感じ、そそくさと逃げ帰って行く。

ピンチは改めて空谷に惚れ直したように、あんたやっぱり実力あるのねと、嬉しそうに声をかける。

その時、部屋の中にいた国社長は、その場にいた3人娘に気づいたので、大津が僕の友達ですと紹介する。

私たち、お願いがあって来たんですと3人が打ち明けると、国社長は、助けてもらったんですから何でもしますよと約束してくれる。

それを聞いた3人娘は、思わず、私たち、ツイてるわ!と叫んで喜びあう。

いよいよ、滝の前衛舞踏の公演の日、大津はパンチと一緒に準備を手伝いながら、久しぶりだね、君と一緒に仕事をするのも…と声をかけていた。

会場の入口で、入場者の数を数えていたピンチとセンチの元に、空谷が一緒に観ないかと言いながらやって来たので、パンチは空山と連れ立って会場に入ってしまう。

1人残されたセンチは、今の人数は何人だったっけ?と迷いながらも、入場者を数え始める。

すでに、1000人以上が入場していた。

そんな中、今日踊る予定だった桃子の様子がおかしいので、楽屋で仲間たちが額に手を当てると、高熱を出している事に気づく。

驚いた仲間は、入口で入場者を数えていたセンチに、主役の踊子が急病なんだ!君が代わりに出てくれ!と声をかけに行く。

突然の話しだし、練習も何もしていないセンチは困惑するが、どうせ、訳分からない芸術なんだからと押し切られ、そのまま楽屋に連れて行かれてしまう。

いよいよ舞台が始まり、ピンチがあらかじめ録音していた声がステージに響き渡ると、滝が踊り始めていた。

それを客席から観るピンチと空山、パンチと大津はすっかりよりを戻して、良いムードになっていたが、続いて舞台に出て来た踊り手がセンチだと気づくと驚いてしまう。

舞台上では、センチと滝が即興の踊りながら、ぴったり息を合わせていた。

思わずピンチは、そんなセンチに応援の声をかけていた。

後日、ピンチとパンチは、仮免許を取得したセンチが運転する車に乗って銀座に繰り出していた。

やがて、歩道をやって来る空山、滝、大津の3人を見つけるが、パンチは、あんな手あかがついたんじゃなくて、もっと新鮮なの引っ掛けようよと言い出す。

パンチとセンチも賛成し、周囲を観渡すと、良い男が歩いていたので、声をかけようとするが、その時突然、車がストップしてしまう。

センチは原因が分からないようで、立ち往生した彼女たちの車は十字路のど真ん中に停まってしまい、四方からの交通の妨げになってしまったので、急遽、空山、滝、大津の3人を呼び寄せた彼女等は、エンストを起こした車を彼らに押させて脇に避けさせるのだった。